説明

炎症を軽減するためおよび胃腸毒性の処置または予防のための抗炎症性薬学的組成物

【課題】胃および/または小腸の潰瘍性障害に対し患者を予防的および/または治療的に処置するために使用されるホップ(Humulus lupulus)抽出物またはその誘導体を提供すること。
【解決手段】潰瘍性障害は、化学的誘発、環境的誘発、感染誘発、および/またはストレス誘発によるタイプのものであってもよい。本発明はまた、ホップ抽出物またはその誘導体の有効量を、鎮痛化合物および/または抗炎症化合物と組み合わせて含む製薬組成物を提供する。本発明はさらに、胃および/または小腸の潰瘍性障害を著明に緩和する、および/または治療的に処置する用法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
本発明は、ホップ(Humulus lupulus)の抽出物またはその誘導体を含む製薬組成物に関する。本発明はまた、胃病、特に、非ステロイド性抗炎症剤によって引き起こされるがそれに限定されない胃病の治療、予防、または緩和のために用いる、ホップから得られた、または誘導された組成物の使用法に関する。
【背景技術】
【0002】
プロスタグランジン(PG)は、細胞の周辺環境における多様な生理的変化に影響を及ぼすパラクライン性およびオートクライン性の介在因子として働く遍在的ホルモンである。PGの多様な生理的変化としては、炎症反応、例えば、関節リューマチおよび変形性関節症、血圧調節、血小板凝集、分娩誘発、および、疼痛と発熱の悪化が挙げられる。30年前、アスピリンおよび他の非ステロイド性鎮痛剤がPG産生を抑制することが発見されたが、この発見によって、PG合成が薬剤開発の標的になることになった。現在、PGAからPGIと表される9種の異なる化学的クラスに分類される、少なくとも16種類のPGがある。PGは、プロスタサイクリン、トロンボキサン、およびロイコトリエンが含まれ、20炭素原子含有化合物からなるエイコサノイドと呼ばれるさらに大きいファミリの一部である。生産される一連のPG類は、ある特定の細胞タイプにおける下流の酵素機構によって異なる。例えば、内皮細胞は主にPGIを生産するが、血小板は主にTXAを生産する。
【0003】
全てのPG類の生合成においてアラキドン酸が主要基質となる。シクロオキシゲナーゼ(プロスタグランジンエンドペルオキシド合成酵素、EC1.14.991、COX)は、アラキドン酸からプロスタグランジンH(PGH)への代謝における律速段階を触媒し、プロスタグランジンHはさらに代謝されて様々のプロスタグランジン類、プロスタサイクリン、およびトロンボキサンAを生産するのであるが(図1参照)、この行程において、1990年代初期、COXには二つのアイソフォームがあることが明らかにされた。これらは一般にCOX−1およびCOX−2と呼ばれる。その後、COX−1およびCOX−2タンパクは、鳥類および哺乳類の遥か以前に分かれたそれぞれ別々の遺伝子から誘導されることが確かめられた。COX−1およびCOX−2経路を通じて生産されるPGは同一分子であり、従って同じ生物作用を有する。しかしながら、COX−1およびCOX−2は、独自のパターンの、異なる量のエイコサノイド類を生産する可能性があり、従って、この二つのアイソフォームの活性の相対的変化は、全く異なる生物学的反応をもたらす可能性がある。現在では、COX阻害剤の有効性のみならず副作用においても、COX−1およびCOX−2の組織分布および調節の差が決定的に重要であると考えられている。
【0004】
一般的に支持されている概念(COXドグマ)は、COX−1は大抵の組織に構成的に発現されるが、COX−2は、マイトゲン、サイトカイン、および細菌性リポポリサッカリド(LPS)などの前炎症刺激が、インビトロでは細胞において、インビボでは炎症部位において誘因となって誘発される酵素である。主にこの発現性の差に基づいて、COX−1はハウスキーピング酵素に分類され、胃粘膜の細胞保護、腎血流の調節、および血小板凝集の調節のような生理的機能の維持に関わっていると考えられている。COX−2の方は主に炎症を媒介すると考えられている。ただし、脳、腎臓、および消化管ではCOX−2の構成的発現が認められる。
【0005】
プロスタグランジン(PG)は、ヒトの胃粘膜のホメオスタシスの維持に重要な役割を果たしていると考えられている。現在のドグマでは、COX−1は、正常な胃粘膜において粘膜のホメオスタシスを維持するためPGの合成を担っており、COX−2は、正常な胃粘膜でも低レベルで発現されているが、潰瘍治癒過程において内毒素に曝されたり、サイトカインによって刺激されると発現が誘発されるとしている。現在では、COX−1もCOX−2も、正常な胃粘膜において重要な生理的役割を果たしていると考えられている。
【0006】
COXによるPGの産生を阻害する化合物は、疼痛および炎症の沈静において重要な薬剤となっている。これらの薬剤はまとめて、非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)と呼ばれるが、その主な適応症は変形性関節炎および関節リューマチであり、特に、アスピリンの用途は、心臓血管系疾患の予防にまで拡張されている。過去10年間、COX−2の酵素活性に対する直接の阻害剤である新規の分子を開発するためにかなりの努力が払われてきた。これは、もしもそのような化合物が得られたならば、それは慢性的に使用しても胃に対する刺激作用が比較的少ないだろうという推測に基づくものであった。
【0007】
COX−2選択性(すなわち、胃に対する低刺激性)を確かめるうえでの主要な問題点は、定量法における違いが、得られる結果に深刻な影響を及ぼすことがあり得ることである。表1に、多くのインビトロアッセイの分類を示す。これらは、COX−1およびCOX−2に対する、NSAIDおよび天然化合物の相対的抑制活性を調べ、比較するためにこれまでに開発されたものである。これらの試験システムは、三つのグループに分類することが可能である。すなわち、(1)動物酵素、動物細胞または細胞株を用いるシステム、(2)ヒト細胞株、またはヒト血小板および単球を用いるアッセイ、および、(3)ヒト細胞を用いる最近開発されたモデルであって、NSAIDおよび食物サプリメントの抗炎症作用および副作用の標的細胞を表すモデルである。一般的に、ヒトの細胞株、またはヒトの血小板および単球を用いるモデルが現在の標準であり、有効性を確認された標的細胞モデルはすぐに採用される趨勢には無い。胃に対する刺激可能性の評価を可能とするヒト胃細胞株に対する需要は重要かつ切実である。
【0008】
使用される酵素は、動物起源、またはヒト起源であってもよく、生得のものであっても組み換えによるものであってもよく、ミクロソーム標本において精製酵素として使用されてもよく、全体細胞アッセイで使用されてもよい。他のシステム変数としては、アラキドン酸の供給源が挙げられる。PG合成は、内因的に放出されたアラキドン酸、または、外から添加されたアラキドン酸に基づいて測定することが可能である。後者の場合、様々の実験室で様々な濃度が用いられている。
【0009】
COX−2選択性に関する理想的なアッセイがもしあるとするならば、それは下記の特性を持つものであろう。すなわち、(1)発現に関して正常な生理的調節下にある、生得のヒト酵素を含む全体細胞が使用されること、(2)その細胞は、化合物の抗炎症作用および副作用について標的細胞でもあること、(3)COX−2は、構成的に発現される点ではなく、むしろ誘発されて炎症過程を促進する点を見なければならないこと、および、(4)PG合成は、外来的に添加されたアラキドン酸に基づいてではなく、内在性保存体から放出されたアラキドン酸に基づいて測定すること、である。
【0010】
(表1. 抗炎症化合物のCOX−2選択性を評価するインビトロアッセイのための試験システムの分類)
【0011】
【表1】

+Pairet,M.and van Ryn,J.(1998)Experimental models used to investigate the differential inhibition of cyclooxygenase−1 and cyclooxygenase−2 by non−steroidal anti−inflammatory drugs.Inflamm.Res 47,Supplement 2S93−S101より引用。なお、引用することにより本明細書に含める。
【0012】
COX−2選択性に関する理想的アッセイを開発した研究室はまだない。処方(Rx)製剤および一般向け(OTC)製剤のためにもっとも広く使用される全細胞システムとしては、ウィリアムハーベイ研究所が開発したヒト全血アッセイがある[Warner,T.D.et al.(1999)Nonsteroid drug selectivities for cyclo−oxygenase−1 rather than cyclo−oxygenase−2 are associated with human gastrointestinal toxicity:a full in vitro analysis.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96,7563−7568]。これまでの所、どの方式よりもこのアッセイ方式が、臨床関連を支持する数多くのデータを生み出している。しかしながら、正常胃粘膜におけるCOX−2の構成的発現の役割に関する新しい研究から、COX−2が存在しない場合のCOX−1抑制をモデル化するのに血小板を用いる意味の再検討が求められている。血小板研究に基づいて胃毒性を外挿するやり方は、もはや健全な分子的基盤に基づいていないことが明らかである。シクロオキシゲナーゼ阻害剤の標的組織に対する毒性の可能性を確かなものとするためには、ヒト胃粘膜細胞株においてその有効性が明らかにされなければならないということは、安全で効果的な抗炎症剤を開発するためには必要不可欠な要件である。
【0013】
炎症治療用の理想的処方がもしあるとすれば、それは、胃粘膜細胞においてPGE合成を抑制することはないが、COX−2の誘発と活性は抑制するものであろう。しかしながら、従来の非ステロイド性抗炎症剤は、胃のPGE合成に影響を及ぼすことなくCOX−2を抑制するという特異性を欠いており、長期に渡って使用した場合消化器系に損傷を与える危険性があった。事実、最近開発された抗炎症剤、例えば、ロフェコキシブ(Vioxx(登録商標)、メルク社)やセレコキシブ(Celebrex(登録商標)、ファイザー社)は、誘発性自然出血および延引する胃潰瘍治癒という形で、胃に対する毒性作用をもたらしている。
【0014】
(NSAID毒性)
NSAIDは、重大な健康上の問題、例えば、胃出血および腎損傷を含む問題を引き起こすことが知られている。米国には、千3百万人を超えるNSAIDの常用者がおり、毎年7千万通のNSAID処方箋が書かれており、かつ、毎年3百億個の一般大衆薬のNSAID錠剤が売られている。NSAID誘発性疾患は、年間10万3千件の入院事例の原因となっており、毎年推定1万6千5百の死亡例の原因となっている。NSAIDの慢性的服用者全体の内の20%が胃潰瘍を発症すると予想される。NSAID服用者は、上部消化器出血、穿孔、またはその両方を患う危険度がより高く、3倍〜4倍高い。重篤なNSAID誘発性合併症による入院患者の内の81%は、それ以前に消化器症状がなかった。60歳を超える人々の場合、NSAID服用に伴う合併症に罹る確率は有意に高い。さらに、米国では、薬剤による全ての毒性反応の内の21%は、NSAID服用によるものである。
【0015】
セレコキシブやロフェコキシブのような新規の選択的COX−2阻害剤は、大抵のNSAIDに対してより安全な代替薬となることがこれまでにも示されている。しかしながら、最近の研究によって、選択的COX−2阻害剤は、消化器毒性を完全に除去するものではないことが明らかにされている。実際、消化管の炎症または潰瘍の場合、COX−2の処方阻害剤は潰瘍の治癒を遅らせる。
【0016】
上記から、胃粘膜において、PGEの合成にはほとんど、または全く影響を及ぼすことはないが、COX−2によるプロスタグランジンの合成を特異的に抑制または阻止する化合物の天然処方を特定することができたならば、それは有用なことであろう。このような処方がもし得られたならば、関節組織の健康の維持に、関節炎、またはその他の炎症性病態の治療のために有用と考えられるが、そのような処方はこれまで発見されていない。「特異的または選択的COX−2阻害剤」という用語は、COX−1に対してよりはCOX−2の方を選択的に阻害する化合物または化合物の混合物を包括するように造られたものである。しかしながら、しかじかの計算された選択性から、胃に対する低い刺激性が得られるという含意があっても、試験試料が胃細胞において評価されていない限り、「選択的COX−2阻害剤」という用語は、消化器細胞に対する安全性の保証とはならない。標的組織、炎症細胞、および胃粘膜細胞における化合物の作用を調べて始めて、低い胃刺激作用の可能性を持つ薬剤が特定される。
【0017】
従って、炎症細胞においてCOX−2酵素活性の発現は特異的に抑制または阻止するが、一方、胃粘膜細胞におけるPGE合成に対してはほとんど、または全く影響を及ぼすことがなく、そのために消化器不調を伴わずにその処方薬を服用することが可能な組成物を特定することができたならば、それは有用であろう。さらに、このような処方剤は、胃における、既存の潰瘍性病態の治癒も考慮するものでなければならない。本発明は、この要求を満足するものであり、それと同時に関連する利点をも提供するものである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0018】
(発明の要旨)
本発明は、消化器刺激作用を伴う胃病および/または胃腸病を緩和、抑制、または予防するための、ホップから単離または誘導した画分を用いた組成物および方法を提供する。この組成物は、所期の作用を強化し、かつ、別成分、例えば、非ステロイド性抗炎症剤、スパイス、またはその他の消化器刺激性薬剤の不快作用を抑制するために、他の成分と組み合わせることも可能である。本発明はまた、胃腸病、または、潰瘍性障害を含む胃毒性を低減するための方法を提供する。
例えば、本発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
ホップから単離または誘導された画分、および、非アスピリン、非ステロイド性抗炎症化合物を含む組成物。
(項目2)
ホップから単離または誘導される画分は、α酸、イソα酸、還元型イソα酸、テトラヒドロイソα酸、ヘキサヒドロイソα酸、β酸、およびホップかすからなる群より選択される、項目1の組成物。
(項目3)
ホップから単離または誘導される前記画分は、下式:
【化1】


を持つ上位分子種の化合物を含み、
式中R’は、カルボニル、ヒドロキシル、OR、およびOCORからなる群より選択され、Rはアルキルであり、
R”は、CH(CH、CHCH(CH、およびCH(CH)CHCHからなる群より選択され、
R、T、X、およびZは、H、F、Cl、Br、I、およびπ軌道からなる群より独立して選択されるが、ただし、もしもR、T、X、またはZの内の一つがπ軌道である場合、隣接のR、T、X、またはZもπ軌道であって二重結合を形成することを条件とする、
、項目1の組成物。
(項目4)
ホップから単離または誘導される前記画分は、下式:
【化2】


を持つ分子種Aの化合物を含み、
式中R’は、カルボニル、ヒドロキシル、OR、およびOCORからなる群より選択され、Rはアルキルであり、
R”は、CH(CH、CHCH(CH、およびCH(CH)CHCHからなる群より選択される
、項目1の組成物。
(項目5)
ホップから単離または誘導される前記画分は、下式:
【化3】


を持つ分子種Bの化合物を含み、
式中R’は、カルボニル、ヒドロキシル、OR、およびOCORからなる群より選択され、Rはアルキルであり、
R”は、CH(CH、CHCH(CH、およびCH(CH)CHCHからなる群より選択される
、項目1の組成物。
(項目6)
ホップから単離または誘導される前記画分は、フムロン、コフムロン、アドフムロン、イソフムロン、イソコフムロン、イソアドフムロン、ジヒドロ−イソフムロン、ジヒドロ−イソコフムロン、ジヒドロ−イソアドフムロン、テトラヒドロ−イソフムロン、テトラヒドロ−イソコフムロン、テトラヒドロ−イソアドフムロン、ヘキサヒドロ−イソフムロン、ヘキサヒドロ−イソコフムロン、およびヘキサヒドロ−イソアドフムロンからなる群より選択される化合物を含む、項目1の組成物。
(項目7)
前記組成物は、約0.5〜10000mgの、ホップから単離または誘導される前記画分を含む、項目1の組成物。
(項目8)
前記組成物は、約50〜7500mgの、ホップから単離または誘導される前記画分を含む、項目7の組成物。
(項目9)
前記組成物は、約0.001〜10重量パーセントの、ホップから単離または誘導される前記画分を含む、項目1の組成物。
(項目10)
前記組成物は、約0.1〜1重量パーセントの、ホップから単離または誘導される前記画分を含む、項目9の組成物。
(項目11)
前記非アスピリン、非ステロイド性抗炎症化合物は、サリチル酸、サリチル酸メチル、ジフルニサル、サルサラート、オルサラジン、スルファサラジン、アセトアニリド、アセトアミノフェン、フェナセチン、メフェナム酸、メクロフェナム酸ナトリウム、トルメチン、ケトロラク、ジクロフェナク、イブプロフェン、ナプロキセン、ダプロキセンナトリウム、フェノプロフェン、ケトプロフェン、フルルビオプロフェン、オキサプロジン、ピロキシカム、メロキシカム、テノキシカム、アムピロキシカム、ドロキシカム、ピボキシカム、フェニルブタゾン、オキシフェンブタゾン、アニトピリン、アミノピリン、ジピロン、セレコキシブ、ロフェコキシブ、ナブメトン、アパゾン、ニメンスリド、インドメタシン、スリンダク、およびエトドラクからなる群より選択される、項目1の組成物。
(項目12)
前記非アスピリン、非ステロイド性抗炎症化合物は、サリチル酸、サリチル酸メチル、イブプロフェン、ナプロキセン、ダプロキセンナトリウム、フェノプロフェン、ケトプロフェン、フルルビオプロフェン、およびオキサプロジンからなる群より選択される、項目1の組成物。
(項目13)
前記組成物は、製薬学的に受容可能なキャリアをさらに含む、項目1の組成物。
(項目14)
前記組成物は、経口的、局所的、非経口的、または直腸経由の投与用に処方される、項目1の組成物。
(項目15)
ホップから単離された還元型イソα酸、および非ステロイド性抗炎症化合物を含む組成物。
(項目16)
還元型イソα酸は、ジヒドロ−イソフムロン、ジヒドロ−イソコフムロン、およびジヒドロ−イソアドフムロンから選択される、項目15の組成物。
(項目17)
哺乳動物において鎮痛および抗潰瘍作用をもたらす方法であって、該哺乳動物に対し、鎮痛および抗潰瘍作用をもたらすのに十分な量の、ホップから単離または誘導された画分と、非ステロイド性抗炎症化合物とを投与することを含み、ホップから単離または誘導された前記画分の投与によって、前記非ステロイド性抗炎症化合物に伴う胃毒性が緩和される、方法。
(項目18)
ホップから単離または誘導される前記画分は、下式:
【化4】


を持つ上位分子種の化合物を含み、
式中R’は、カルボニル、ヒドロキシル、OR、およびOCORからなる群より選択され、Rはアルキルであり、
R”は、CH(CH、CHCH(CH、およびCH(CH)CHCHからなる群より選択され、
R、T、X、およびZは、H、F、Cl、Br、I、およびπ軌道からなる群より独立して選択されるが、ただし、もしもR、T、X、またはZの内の一つがπ軌道である場合、隣接のR、T、X、またはZもπ軌道であって二重結合を形成することを条件とする、
、項目17の方法。
(項目19)
ホップから単離または誘導される前記画分は、下式:
【化5】


を持つ分子種Aの化合物を含み、
式中R’は、カルボニル、ヒドロキシル、OR、およびOCORからなる群より選択され、Rはアルキルであり、
R”は、CH(CH、CHCH(CH、およびCH(CH)CHCHからなる群より選択される
、項目17の方法。
(項目20)
ホップから単離または誘導される前記画分は、下式:
【化6】


式を持つ分子種Bの化合物を含み、
式中R’は、カルボニル、ヒドロキシル、OR、およびOCORからなる群より選択され、Rはアルキルであり、
R”は、CH(CH、CHCH(CH、およびCH(CH)CHCHからなる群より選択される
、項目17の方法。
(項目21)
ホップから単離または誘導される前記画分は、フムロン、コフムロン、アドフムロン、イソフムロン、イソコフムロン、イソアドフムロン、ジヒドロ−イソフムロン、ジヒドロ−イソコフムロン、ジヒドロ−イソアドフムロン、テトラヒドロ−イソフムロン、テトラヒドロ−イソコフムロン、テトラヒドロ−イソアドフムロン、ヘキサヒドロ−イソフムロン、ヘキサヒドロ−イソコフムロン、およびヘキサヒドロ−イソアドフムロンからなる群より選択される化合物を含む、項目17の方法。
(項目22)
前記組成物は、約0.5〜10000mgの、ホップから単離または誘導される前記画分を含む、項目17の方法。
(項目23)
前記組成物は、約50〜7500mgのホップ誘導体を含む、項目22の方法。
(項目24)
前記組成物は、約0.001〜10重量パーセントのホップ誘導体を含む、項目17の方法。
(項目25)
前記組成物は、約0.1〜1重量パーセントのホップ誘導体を含む、項目24の方法。
(項目26)
前記非ステロイド性抗炎症化合物は、サリチル酸、サリチル酸メチル、ジフルニサル、サルサラート、オルサラジン、スルファサラジン、アセトアニリド、アセトアミノフェン、フェナセチン、メフェナム酸、メクロフェナム酸ナトリウム、トルメチン、ケトロラク、ジクロフェナク、イブプロフェン、ナプロキセン、ダプロキセンナトリウム、フェノプロフェン、ケトプロフェン、フルルビオプロフェン、オキサプロジン、ピロキシカム、メロキシカム、テノキシカム、アムピロキシカム、ドロキシカム、ピボキシカム、フェニルブタゾン、オキシフェンブタゾン、アニトピリン、アミノピリン、ジピロン、セレコキシブ、ロフェコキシブ、ナブメトン、アパゾン、ニメンスリド、インドメタシン、スリンダク、およびエトドラクからなる群より選択される、項目17の方法。
(項目27)
前記非ステロイド性抗炎症化合物は、サリチル酸、サリチル酸メチル、イブプロフェン、ナプロキセン、ダプロキセンナトリウム、フェノプロフェン、ケトプロフェン、フルルビオプロフェン、およびオキサプロジンからなる群より選択される、項目26の方法。
(項目28)
前記組成物は、製薬学的に受容可能なキャリアをさらに含む、項目17の方法。
(項目29)
前記組成物は、経口的、局所的、非経口的、または直腸経由で投与される、項目17の方法。
(項目30)
ホップから単離または誘導された前記画分が、前記非ステロイド性抗炎症化合物と同時に投与される、項目17の方法。
(項目31)
ホップから単離または誘導された前記画分が、前記非ステロイド性抗炎症化合物の投与後に投与される、項目17の方法。
(項目32)
ホップから単離または誘導された前記画分が、前記非ステロイド性抗炎症化合物の投与前に投与される、項目17の方法。
(項目33)
非ステロイド性抗炎症化合物に伴う胃毒性を緩和する方法であって、非ステロイド性抗炎症化合物による治療を受ける個体に対してホップから単離または誘導された画分を投与することを含む方法。
(項目34)
胃腸病を緩和する方法であって、胃腸病に関連する徴候または症状を呈する個体に対しホップから単離または誘導された画分を投与することを含む方法。
(項目35)
前記胃腸病は潰瘍形成を含む、項目34の方法。
(項目36)
前記潰瘍形成は、食物、香草、細菌、真菌、または薬剤によって誘発されたものである、項目35の方法。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、シクロオキシゲナーゼ−2の誘発、および、シクロオキシゲナーゼ酵素によるアラキドン酸およびその他のエイコサノイド類への代謝を示す。非ステロイド性抗炎症剤の作用は、シクロオキシゲナーゼ酵素を直接抑制することによる。
【図2】図2は、ホップから得られる画分および化合物の概略を示す。
【図3】図3は、ホップから単離または誘導される例示の画分を示す。図3Aは、α酸分子種(AA)および、代表的な分子類、フムロン(R=−CHCH(CH)、コフムロン(R=−CH(CH)、およびアドフムロン(R=−CH(CH)CHCH)を示す。図3Bは、イソα酸分子種(IAA)、および代表的分子類、イソフムロン(R=−CHCH(CH)、イソコフムロン(R=−CHCH(CH)、およびイソアドフムロン(R=−CH(CH)CHCH)を示す。図3Cは、還元型異性化イソα酸分子種(RIAA)、および代表的分子類、ジヒドロ−イソフムロン(R=−CHCH(CH)、ジヒドロ−イソコフムロン(R=−CH(CH)、およびジヒドロ−イソアドフムロン(R=−CH(CH)CHCH)を示す。図3Dは、テトラヒドロイソα酸分子種(THIAA)、および代表的分子類、テトラヒドロ−イソフムロン(R=−CHCH(CH)、テトラヒドロ−イソコフムロン((R=−CH(CH)、およびテトラヒドロ−イソアドフムロン(R=−CH(CH)CHCH)を示す。図3Eは、ヘキサヒドロイソα酸(HHIAA)分子種で、代表的分子類は、ヘキサヒドロ−イソフムロン(R=−CHCH(CH)、ヘキサヒドロ−イソコフムロン(R=−CH(CH)、およびヘキサヒドロ−イソアドフムロン(R=−CH(CH)CHCH)である分子種を示す。
【図4】図4は、ヒトAGS胃粘膜細胞におけるCOX−1およびCOX−2の構成的発現を示す代表的イムノブロットである。ヒトAGS胃細胞株は、6−ウェルプレートにおいて、加湿インキュベーターで5%COを通じながら37℃で24時間培養した。細胞は、氷上で溶解バッファーにて溶解し、タンパク濃度を定量した。細胞溶解物の50μgを可溶化し、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含む10%ポリアクリルアミドゲルにて分画し、ニトロセルロース膜に転送した。この膜をブロッキングバッファーにインキュベートし、次に、それぞれの一次抗体と室温で1時間インキュベートした。一次抗体とのインキュベーション後、ブロットをTrisバッファー生食液で3回洗浄し、二次抗体と1時間インキュベートした。タンパクバンドは、増強化学発光を用いて視像化した。
【図5】図5は、対数IC50比(AGS/WHMA COX−2)の比較を示す。0の右側の数値は、消化器作用の確率が減少することを示し、一方、0の左側の数値は、消化器作用の確率の増大を示す。
【図6】図6は、代表的分子種Aの還元型異性化α酸(RIAA)分子による、AGS胃粘膜細胞におけるPGE生合成の抑制パーセントを示す。図6Aは、イブプロフェン、およびRIAA:イブプロフェン併用において、試験材料が5μg/mL(灰色バー)、および0.5μg/mL(白色バー)の場合を示す。図6Bは、アスピリン、およびRIAA:アスピリン併用において、試験材料が5μg/mL(縞状バー)、および0.5μg/mL(白色バー)の場合を示す。
【図7】図7は、代表的分子種Bのテトラヒドロイソα酸(THIAA)分子およびNSAIDによる、AGS胃粘膜細胞におけるPGE生合成の抑制パーセントを示す。図7Aは、イブプロフェン、およびTHIAA:イブプロフェン併用において、試験材料が5μg/mL(灰色バー)、および0.5μg/mL(白色バー)の場合を示す。図7Bは、アスピリン、およびTHIAA:アスピリン併用において、試験材料が5μg/mL(縞状バー)、および0.5μg/mL(白色バー)の場合を示す。
【図8】図8は、対数IC50比(AGS/COX−2)の比較を示す。図8Aは、イブプロフェン、RIAA、および、RIAA:イブプロフェンの1:1併用を示す。図8Bは、アスピリン、RIAA、および、RIAA:アスピリンの1:1併用を示す。0の右側の数値は、消化器作用の確率が減少することを示し、一方、0の左側の数値は、消化器作用の確率の増大を示す。
【図9】図9は、対数IC50比(AGS/COX−2)の比較を示す。図9Aは、イブプロフェン、THIAA、THIAA:イブプロフェンの1:100併用、および、THIAA:イブプロフェンの1:1併用を示す。図9Bは、アスピリン、THIAA、THIAA:アスピリンの1:100併用、および、THIAA:アスピリンの1:1併用を示す。0の右側の数値は、消化器作用の確率が減少することを示し、一方、0の左側の数値は、消化器作用の確率の増大を示す。
【図10】図10は、ホップ抽出物と抗炎症剤とを含む組成物を比較する臨床治験の模式図である。26人の被験者をスクリンーニングし、23人の被験者が治験に参加し、21人の被験者が治験を完了した。治験を完了しなかった者の内、3名は個人的な理由で抜けた。その2名はアーム2から、1名はアーム1から抜けた。訪問は下記のように行われた。訪問1回目(V1)、投薬Aが0日。V2は、投薬Aが7±1日。V3は、投薬Aが14±1日。休薬期間、21±1日。V4は、投薬Bが0日。V5は、投薬Bが7±1日。V6は、投薬Bの後14±1日。
【図11】図11は、臨床治験を完了した被験者(N=21)の個々のカルプロテクチン濃度を示す。基礎値1は、V1の平均値であり、基礎値2は、21日間の休薬期間後の値である。IP2003−001CTおよびナプロキセンに関する7日および14日データも示してある(参照範囲<50μg/g大便)。
【図12】図12は、臨床治験を完了した被験者(N=21)におけるカルプロテクチンのプールデータの平均(±標準偏差)を示す。基礎値1は、V1の平均値であり、基礎値2は、21日間の休薬期間後の値である。基礎値1と基礎値2の間には有意な差は見られなかった。また、基礎値1とIP2003−001CT投薬7日および14日の間にも有意差は見られなかった。一方、ナプロキセンの7日および14日投薬時の数値は、基礎値1よりも有意に上昇していた(p<0.05)(参照範囲<50μg/g大便)。
【図13】図13は、その基礎値が、<50μg/g大便という参照範囲内にある被験者(N=15)の個々のカルプロテクチン濃度を示す。基礎値1は、V1の平均値であり、基礎値2は、21日間の休薬期間後の値である。IP2003−001CTおよびナプロキセンに関する7日および14日データも示してある。
【図14】図14は、その基礎値が、<50μg/g大便という参照範囲内にある被験者(N=15)のカルプロテクチン平均(±標準偏差)濃度を示す。基礎値1は、V1の平均値であり、基礎値2は、21日間の休薬期間後の値である。IP2003−001CTおよびナプロキセンに関する7日および14日データも示してある。
【図15】図15は、その基礎値が、>50μg/g大便という参照範囲上にある被験者(N=6)の個々のカルプロテクチン濃度を示す。基礎値1は、両V1の平均値であり、基礎値2は、21日間の休薬期間後の値である。IP2003−001CTおよびナプロキセンに関する7日および14日データも示してある。
【図16】図16は、その基礎値が参照範囲を上回る、すなわち、>50μg/g大便である被験者(N=6)の便中カルプロテクチンの平均濃度を示す。基礎値1は、両V1値の平均であり、基礎値2は、21日間の休薬期間後の値である。IP2003−001CTおよびナプロキセンに関する7日および14日データも示してある。
【図17】図17は、臨床治験を受けた被験者におけるカルプロテクチンのプールデータの(平均±標準偏差)を示す。基礎値1は、V1基礎値の平均であり、基礎値2は、全ての休薬期間後の値の平均である。IP2003−001CTおよびナプロキセンに関する7日および14日データも、それぞれ、この分析のためにプールされた。基礎値1、基礎値2、およびIP2003−001の間には有意差は観察されなかった。一方、ナプロキセンによるカルプロテクチンの濃度は、投薬後有意に上昇した(p<0.05、Wilcoxon/Kruskal−Wallis順位和)。
【図18】図18は、AGS細胞モデルにおいてUltraInflamX(登録商標)によるPGE合成に対する抑制濃度中央値を示す。
【図19】図19は、AGS細胞モデルにおいてUltraInflamX成分によるPGE合成に対する抑制濃度中央値の期待値と観測値を示す。IC50値は、3回の独立アッセイの平均に基づいて計算した。AGS細胞はプレートに撒き、80%集密度に達するまで育成した。細胞を洗浄し、試験材料を、A23187による処理の60分前に加えた。30分後、培養液を取り出し、PGE定量のために用いた。複合体におけるIC50観測値および期待値は、全体サンプル(9種成分)の重量に基づき、複合活性体のIC50観測値および推定値は、複合体サンプルにおける4種の活性成分のパーセント重量に基づく(45.3%)。
【図20】図20は、処方薬(Rx)、一般大衆薬(OTC)、および、栄養補助食品健康教育法(DSHEA)の化合物のCOX−2選択性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(発明の詳細な説明)
本発明は、非ステロイド性抗炎症剤(NASAID)の消化器毒性を修飾するための組成物および方法を提供する。特に、本発明は、ホップ(Humulus lupus)から単離、または誘導された成分の精製物であって、NSAIDの消化器毒性に対する修飾作用を有する物質を提供する。具体的に言うと、ホップ誘導体は、NSAIDによる胃のPGE抑制を下げ、NSAIDの治療係数を好転させる。本発明の組成物および方法は、ホップ誘導体は、炎症を起こした、標的細胞に対する、NSAIDの作用を強化するという利点を持ち、この点でNSAIDの治療係数をさらに向上させる。ホップ誘導体はまた、NSAIDの投与によって誘発される胃潰瘍の治療、寛解、または予防のために投与することも可能である。
【0021】
本発明は、胃および/または小腸の潰瘍型障害について患者を予防的におよび/または治療的に処置するのに使用されるホップ(Humulus lupulus)抽出物およびその誘導体を提供する。潰瘍性障害は、化学的に誘発されるタイプおよび/またはストレスによって誘発されるタイプであってもよい。本発明はまた、ホップ抽出物またはその誘導体の有効量を、鎮痛剤および/または抗炎症化合物と組み合わせて含む製薬組成物を提供する。本発明はさらに、胃および/または小腸の潰瘍型障害を著明に低減する、および/または治療的に処置する、ホップ抽出物またはその誘導体の用法を提供する。
【0022】
本明細書の開示によれば、ホップ誘導体は、胃粘膜細胞のPGE合成に対するNSAIDの抑制作用を効果的に下げる。さらに、イブプロフェン、アスピリン、およびインドメタシン、またはその他の化学薬品のような鎮痛剤および/または抗炎症剤によって造り出される、化学的誘発による潰瘍形成が、上記薬剤を、ホップ誘導体と組み合わせて投与することによって著明に低減されることが判明している。さらに、例えば、サリチル酸のような有機酸、およびその他の鎮痛剤および/または抗炎症剤の毒性が、ホップ抽出物と組み合わせて投与されると相当なレベルにまで低下することが認められている。本発明の組成物および方法は、上記鎮痛剤および/または抗炎症剤をそのホップ誘導体と組み合わせて用いても、そのことによって、鎮痛剤および/または抗炎症剤本来の有利な活性が悪影響を被ることが無い点において有利である。
【0023】
本明細書におけるさらに別の開示によれば、ホップ誘導体は鎮痛活性を持つこと、および、ホップ誘導体と鎮痛剤の併用によって鎮痛効果の増大がもたらされることも判明している。さらに、ホップ誘導体を含む製剤は、ストレス誘発性消化器潰瘍形成の予防または緩和においても著明な効果を持つことが判明している。さらにまた、ホップ誘導体は、潰瘍の治癒に有効であることも判明している。さらに、ホップ誘導体を潰瘍の治療に用いる場合には何時でも、ホップ誘導体の前記鎮痛活性が、潰瘍に伴う疼痛の解除にも効果的であることが理解されるであろう。
【0024】
ホップ誘導体の急性毒性は極めて低い。従って、要すれば、相対的にかなり高用量のホップ誘導体であっても、ホップによる毒性作用を呈することなく使用することが可能である。毒性用量は、本発明に従って考慮される治療用量よりはかなり高い。
【0025】
本発明は、胃および/または小腸の潰瘍型障害について患者を予防的におよび/または治療的に処置するのに使用されるホップ抽出物およびその誘導体を提供する。潰瘍性障害は、化学的に誘発されるタイプおよび/またはストレスによって誘発されるタイプであってもよい。本発明はまた、ホップ抽出物またはその誘導体の有効量を、鎮痛剤および/または抗炎症化合物と組み合わせて含む製薬組成物を提供する。本発明はさらに、胃および/または小腸の潰瘍型障害を著明に低減する、および/または治療的に処置する、ホップ抽出物またはその誘導体の用法を提供する。
【0026】
本明細書で使用される「食物サプリメント」という用語は、生理学的に構造または機能変化をもたらすように食される組成物を指す。「治療組成物」という用語は、病気の処置または予防のために、または、病気に関連する徴候または症状を緩和するために投与される化合物を指す。
【0027】
本明細書で使用される「有効量」という用語は、選択された結果を実現するのに必要な量を意味する。この量は、従来技術において通常の錬度を有する当業者であれば面倒な実験をせずとも簡単に確定することが可能である。
【0028】
本明細書で使用される「実質的に」という用語は、大部分は指定された通りであるが、全体は必ずしもそうではないことを意味する。
【0029】
本明細書で使用される「COX阻害剤」という用語は、COX−2酵素の活性または発現を抑制することが可能な、または、疼痛および腫脹を含む、重篤な炎症性反応の程度を抑制または低減することが可能な、化合物からなる組成物を指す。
【0030】
本明細書で使用される「誘導体」という用語、または「誘導された」物質とは、別の物質と構造的に関連する化学的物質、および、その別の物質から獲得することが理論的に可能とされる化学的物質を指す。誘導体は、化学反応を介して獲得される化合物を含んでもよい。化合物の誘導体を製造する方法は当業者にはよく知られている。
【0031】
本明細書で使用される「炎症細胞」という用語は、炎症信号、例えば、インターロイキン、腫瘍壊死因子、ブラディキニン、ヒスタミン、または細菌由来成分に反応してプロスタグランジンの合成に関与する、免疫系における細胞構成員、例えば、Bリンパ球とTリンパ球、好中球またはマクロファージを指す。
【0032】
本明細書で使用される「標的細胞」という用語は、その細胞においてPGE、またはその他のプロスタグランジン合成の抑制が望まれる細胞集団、例えば、炎症細胞または腫瘍細胞を指す。別に、「非標的細胞」とは、その細胞においてPGE、またはその他のプロスタグランジン合成の抑制が望まれていない細胞集団、例えば、胃粘膜細胞、神経細胞、または腎臓細胞を指す。
【0033】
本明細書で使用される「ホップ抽出物」という用語は、(1)ホップ植物産品を溶媒に暴露すること、(2)溶媒を、ホップ植物産品から分離すること、および、(3)溶媒を除去すること、によって得られる固体材料を指す。
【0034】
本明細書で使用される「溶媒」という用語は、ホップ植物産品から固体材料を抽出するのに必要な特性を有する、水性または有機性の液体を指す。溶媒の例としては、水、水蒸気、過熱水、メタノール、エタノール、ヘキサン、クロロフォルム、塩化メチレン、超臨界液体CO、液体N、または上記物質の併合体が挙げられるが、ただしこれらに限定されない。
【0035】
本明細書で使用される「CO抽出物」という用語は、ホップ植物産品を、液体または超臨界CO調製品に暴露し、次いでCOを除去することによって得られる固体材料を指す。
【0036】
本明細書で使用される「消費されたホップ」という用語は、ホップ抽出物から得られる、固体で、好水性の残渣を指す。
【0037】
本明細書で使用される「α酸」という用語は、一括してフムロンという名前で呼ばれる化合物であって、ホップ植物産品から単離が可能な化合物、特に、フムロン、コフムロン、アドフムロン、フルポン、およびイソプレフムロンを含む化合物を指す。
【0038】
本明細書で使用される「イソα酸」という用語は、ホップ植物産品から単離され、その後、異性体誘導によって得られる化合物を指す。α酸の異性体誘導は、煮沸のように熱的に行われてもよい。イソα酸の例としては、イソフムロン、イソコフムロン、およびイソアドフムロンが挙げられるが、ただしこれらに限定されない。
【0039】
本明細書で使用される「イソα還元酸」という用語は、ホップ植物産品から単離され、その後異性体誘導によって調製され、還元されたもので、シスおよびトランス形を含むα酸を指す。イソα還元酸(RIAA)の例としては、ジヒドロ−イソフムロン、ジヒドロ−イソコフムロン、およびジヒドロ−イソアドフムロンが挙げられるが、ただしこれらに限定されない。
【0040】
本明細書で使用される「テトラヒドロイソα酸」という用語は、あるクラスのイソα還元酸を指す。テトラヒドロイソα酸(THIAA)の例としては、テトラヒドロイソフムロン、テトラヒドロイソコフムロン、およびテトラヒドロイソアドフムロンが挙げられるが、ただしこれらに限定されない。
【0041】
本明細書で使用される「ヘキサヒドロイソα酸」という用語は、あるクラスのイソα還元酸を指す。ヘキサヒドロイソα酸(HHIAA)の例としては、ヘキサヒドロイソフムロン、ヘキサヒドロイソコフムロン、およびヘキサヒドロイソアドフムロンが挙げられるが、ただしこれらに限定されない。
【0042】
本明細書で使用される「β酸画分」という用語は、一括してルプロンという名前で呼ばれる化合物であって、特に、ルプロン、コルプロン、アドルプロン、テトラヒドロイソフムロン、およびヘキサヒドロコルプロンを含む化合物を指す。
【0043】
本明細書で使用される「必須油画分」という用語は、複数成分、特に、ミルセン、フムレン、β−カリオフィレン、ウンデカン−2−オン、および2−メチル−ブツ−3−エン−オルを含む複数成分からなる複合混合物を指す。
【0044】
本明細書で使用される、複数化合物の「接合体」とは、モノ−またはジ−サッカリド、アミノ酸、硫酸塩、コハク酸塩、酢酸塩、およびグルタチオンからなる群より選択される一つの化合物に共有的に結合される、または共役結合される化合物を意味する。このモノ−またはジ−サッカリドは、グルコース、マンノース、リボース、ガラクトース、ラムノース、アラビノース、マルトース、およびフルクトースからなる群より選択される一つの化合物であってもよい。
【0045】
本発明は、NSAIDの投与に関連する毒性を低減させるためのホップ抽出物の用法に関する。何らかの形でのホップ抽出は、150年前19世紀初期に遡る。当時、水とエタノールによる抽出が先ず試みられた。今日でも、エタノール抽出物はヨーロッパでは市販されているが、際立って広く行われている抽出物は、有機溶媒(例えば、ヘキサン)抽出物およびCO(超臨界および液体)抽出物である。CO(通常60バール気圧で50〜10℃)は液状であり、ホップの軟性樹脂および油分に対して極めて特異的な、比較的穏やかな、非極性溶媒である。臨界点、典型的には300バール気圧および60℃であるが、この点を超えると、COは、気体と液体両方の性質を兼ね、遥かに強力な溶媒となる。各種抽出物の組成を表2において比較する。
【0046】
もっとも単純な場合、ホップ抽出は、粉砕、ペレット成形、そのホップの再粉砕によるルプリンの展開、充填カラムに対する溶媒通過による樹脂成分の収集、そして、最後に溶媒の除去による全体または「純粋」樹脂抽出物の生産を含む。
【0047】
(表2. ホップ抽出物(パーセントw/w))
【0048】
【表2】

主な有機性の抽出媒体は強力な溶媒であり、実質的に全てのルプリン成分の他に、植物色素、クチクルワックス、水、および水溶性物質を抽出する。
【0049】
超臨界COは、有機溶媒よりも選択性が高く、タンニンおよびワックスの抽出量はより少なく、水分の抽出量も、従って水溶性成分の抽出量も少ない。超臨界COは確かに、若干の、クロロフィルのような植物色素を抽出するのであるが、有機溶媒の抽出量よりは少ない。液体COは、ホップ市販のために使用される溶媒の内でもっとも選択性が高く、従って、全体樹脂および油分抽出物としてもっとも純粋なものを生産する。液体COは、硬い樹脂またはタンニンをほとんど抽出せず、植物ワックスの抽出レベルは遥かに低く、植物色素は全く抽出せず、水分および水溶性物質の抽出量も低い。
【0050】
このように選択性が高く、溶媒性が穏やかであるために、液体COの絶対収率、すなわち、単位重量当たりのホップの抽出物は、上述の他の溶媒を用いた場合よりも少ない。さらに、液体COによるα酸の収率(89−93%)は、超臨界CO(91−94%)、または有機溶媒(93−96%)の場合よりも低い。抽出の後では、溶媒除去の過程があり、これは、有機溶媒の場合、加熱して蒸発させることを含む。それにも拘わらず、抽出物の中には微量の溶媒が実際に残る。一方、COの除去は、単に圧を解除してCOを揮発させるだけである。
【0051】
図3に示すように、ホップのCO抽出物は、ホップ油分、β酸、およびα酸を含む複数の成分に分画することが可能である。ホップ油分としては、フムレン、β−カリオフィレン、ミクレン、ファルネセン、γ−カジネン、α−セリネン、およびα−カジネンが挙げられるが、ただしこれらに限定されない。β酸としては、一括してルプロンと呼ばれる、ルプロン、コルプロン、アドルプロン、テトラヒドロイソフムロン、およびヘキサヒドロコルプロンが挙げられるが、ただしこれらに限定されない。β酸は、異性体誘導し、還元することも可能である。β酸を還元すると、テトラβ酸が得られる。α酸としては、フムロン、コフムロン、アドフムロン、フルポン、およびイソプレフムロンが挙げられるが、ただしこれらに限定されない。α酸は、異性体誘導し、還元することも可能である。イソα酸を還元して、還元型イソα酸、テトラヒドロイソα酸、およびヘキサヒドロイソα酸が得ることも可能である。
【0052】
ホップ抽出物において骨再吸収の抑制因子としてフムロンが特定されたことがTobe等によって報告されている(Biosci.Biotech.Biochem 61(1):158−159(1997))。同じ研究グループによるその後の研究によって、フムロンの作用メカニズムは、TNFαによるMC3T3、El細胞刺激後のCOX−2遺伝子の転写抑制によることが明らかにされた(Yamamoto,FEBS Letters 465:103−106(2000))。フムロン(humulone)(humulonとも書く)の作用は、グルココルチコイドのものと類似するが、フムロンは、グルココルチコイド受容体を介して機能するものではないことが結論された。これらの結果は、フムロンが、MC3T3細胞(骨芽細胞)において遺伝子レベルでPGE合成を抑制することを明らかにしたものではあるが、当業者であれば、この結果が、免疫炎症細胞、またはその他の細胞株でも見られるとは必ずしも限らないと考えるであろう。本明細書で開示されるように、ホップ化合物および誘導体は、標的および非標的細胞において高度の組織選択性を示す。さらに、本発明において記述されるホップ誘導体は、α酸フムロンとは構造的に異なる。
【0053】
本発明は、ホップ(Humulus lupulus)から単離または誘導された少なくとも一つの画分を含む組成物を提供する。ホップから単離または誘導された画分の例としては、α酸、イソα酸、還元型イソα酸、テトラヒドロイソα酸、ヘキサヒドロイソα酸、β酸、および消費されたホップが挙げられる。ホップから単離または誘導される画分としては、コフムロン、アドフムロン、イソフムロン、イソコフムロン、イソアドフムロン、ジヒドロ−イソフムロン、ジヒドロ−イソコフムロン、ジヒドロ−イソアドフムロン、テトラヒドロ−イソフムロン、テトラヒドロ−イソコフムロン、テトラヒドロ−イソアドフムロン、ヘキサヒドロ−イソフムロン、ヘキサヒドロ−イソコフムロン、およびヘキサヒドロ−イソアドフムロンが挙げられるが、ただしこれらに限定されない。好ましい化合物はさらに、置換基、例えば、ハロゲン、エーテル、およびエステルを担持していてもよい。
【0054】
ホップから単離または誘導される画分の化合物は、下記の上位分子種によって表すことが可能である。
【0055】
【化7】

式中R’は、カルボニル、ヒドロキシル、OR、およびOCORからなる群より選択され、Rはアルキルであり、R”は、CH(CH、CHCH(CH、およびCH(CH)CHCHからなる群より選択され、かつ、式中R、T、X、およびZは、H、F、Cl、Br、I、およびπ軌道からなる群より独立して選択されるが、ただし、もしもR、T、X、またはZの内の一つがπ軌道である場合、隣接のR、T、X、またはZもπ軌道であって二重結合を形成することを条件とする。
【0056】
別の実施態様では、ホップから単離または誘導される画分の化合物は、下記の分子種によって表される。
【0057】
【化8】

式中R’は、カルボニル、ヒドロキシル、OR、およびOCORからなる群より選択され、Rはアルキルであり、R”は、CH(CH、CHCH(CH、およびCH(CH)CHCHからなる群より選択される。例示の分子Aの構造は、イソα酸、例えば、イソフムロン、イソコフムロン、イソアドフムロン等のイソα酸、および、還元型イソα酸、例えば、ジヒドロ−イソフムロン、ジヒドロ−イソコフムロン、ジヒドロイソアドフムロン等の還元型イソα酸、および、二重結合のエーテルまたはエステル接合体またはハロゲン化修飾体を含む。
【0058】
さらに別の実施態様では、ホップから単離または誘導される画分の化合物は、下記の分子種によって表される。
【0059】
【化9】

式中R’は、カルボニル、ヒドロキシル、OR、およびOCORからなる群より選択され、Rはアルキルであり、R”は、CH(CH、CHCH(CH、およびCH(CH)CHCHからなる群より選択される。例示の分子Bの構造は、ヒドロイソα、例えば、テトラヒドロ−イソフムロン、テトラヒドロ−イソコヒムロン、およびテトラヒドロ−イソアドフムロン等のようなヒドロイソα、ヘキサヒドロイソα酸、例えば、ヘキサヒドロイソフムロン、ヘキサヒドロ−イソコフムロン、およびヘキサヒドロ−イソアドフムロンのようなヘキサヒドロイソα酸、および、エーテルまたはエステル接合体を含む。
【0060】
図3に示すように、ホップから単離または誘導される成分の化合物の例としては、フムロン、コフムロン、アドフムロン、イソフムロン、イソコフムロン、イソアドフムロン、ジヒドロ−イソフムロン、ジヒドロ−イソコフムロン、ジヒドロ−イソアドフムロン、テトラヒドロ−イソフムロン、テトラヒドロ−イソコフムロン、テトラヒドロ−イソアドフムロン、ヘキサヒドロ−イソフムロン、ヘキサヒドロ−イソコフムロン、およびヘキサヒドロ−イソアドフムロンが挙げられるが、ただしこれらに限定されない。好ましい化合物は、前述の式で示しように、置換基を担持してもよい。
【0061】
ホップ誘導体は、植物中に自然に見られ、食品や飲み物にも認められる既知の化合物である。この誘導体は、既知の抽出および処理法から任意に選ばれる方法によって調製することが可能である。ホップ誘導体は、任意の既知のやり方で植物材料から直接調製することが可能である。ホップ誘導体は、従来技術で既知の方法によって、例えば、有機水溶性溶媒、例えば、水溶性アルコールからの再結晶によって精製することが可能である。ホップ誘導体の合成修飾体は、薬剤修飾に関する製薬技術で既知の方法に従って調製することが可能である。
【0062】
本発明はまた、鎮痛性および/または炎症性化合物または薬剤、例えば、NSAID、および、ホップから単離または誘導された画分または化合物を含む組成物を提供する。例えば、本発明は、本明細書に開示されるような、ホップから単離または誘導される画分または化合物、および、1種以上の鎮痛性および/または炎症性化合物または薬剤、例えば、NSAIDを含む組成物を提供する。ある特定の実施態様では、本発明は、ホップから単離されたイソα酸または還元型イソα酸、および、非ステロイド性抗炎症剤を含む組成物を提供する。このイソα酸は、イソフムロン、イソコフムロン、およびイソアドフムロンの内から選んでもよい。本発明の別の実施態様では、還元型イソα酸は、ジヒドロ−イソフムロン、ジヒドロ−イソコフムロン、およびジヒドロ−アドフルムロンの内から選ぶことが可能である。
【0063】
例示の鎮痛性および/または抗炎症性化合物または薬剤としては下記の物質が挙げられる。すなわち、サリチル酸塩アルピリン、サリチル酸、サリチル酸メチル、ジフルニサル、サルサラート、オルサラジン、およびスルファサラジン;パラ−アミノフェノール誘導体アセトアニリド、アセトアミノフェン、およびフェナセチン;フェナム酸塩メフェナム酸、メクロフェナム酸、およびメクロフェナム酸ナトリウム;ヘテロアリール酢酸誘導体トルメチン、ケトロラク、およびジクロフェナク;プロピオン酸誘導体イブプロフェン、ナプロキセン、ダプロキセンナトリウム、フェノプロフェン、ケトプロフェン、フルルビオプロフェン/フルルビプロフェン、およびオキサプロジン;オキシカムによって代表されるエノール酸誘導体ピロキシカム、メロキシカム、テノキシカム、アムピロキシカム、ドロキシカム、およびピボキシカム;ピラゾロン誘導体フェニルブタゾン、オキシフェンブタゾン、アニトピリン、アミノピリン、およびジピロン;コキシブ類、セレコキシブ、およびロフェコキシブ;ナブメトン;アパゾン;ニメンスリド;インドメタシン;スリンダク;エトドラク;ジフルニサル、イソブチルフェニルプロピオン酸、および、疼痛および炎症性病態の治療に用いられ、消化器損傷の原因となる、または増悪する他の任意の物質が挙げられるが、ただしこれらに限定されない。本明細書で用いる場合、非アスピリン性、非ステロイド性抗炎症化合物は、アスピリン、アセチルサリチル酸を特定的に除く。
【0064】
さらに本発明によれば、ホップ誘導体の有効量を、要すれば随意に製薬希釈剤またはアジュバントと組み合わせて含む製薬組成物が提供される。さらに本発明によれば、ホップ誘導体の有効量を、有効で、かつ、耐用される量および濃度の、1種以上の鎮痛化合物および/または抗炎症化合物(単数または複数)と組み合わせて含む製薬組成物が提供される。
【0065】
本発明はさらに、ストレス病態の治療に効果的な1種以上の適合的化合物(単複)と組み合わせて、有効量のホップ誘導体を含む製薬組成物を提供する。このような組成物は、例えば、化学的に誘発されたものであれ、ストレスによって誘発されたものであれ、潰瘍の治療のために、また、消化器潰瘍の形成を抑制するために使用することが可能である。
【0066】
(用量)
さらに本発明によれば、ホップ誘導体の有効量を含む経口剤形の製薬処方が提供される。この経口剤形は、消化管の所望の部位、例えば、胃および/または十二指腸のいずれかにおいて、既知の処方技術を用いて、例えば、徐放性錠剤を用いて活性成分を放出するように構成される。さらにまた本発明によれば、有効量のホップ誘導体と、潰瘍形成を予防するのに有効な既知の化合物および/または潰瘍を治療的に処置するのに有効な既知の化合物および/または潰瘍と関連する症状を緩和するのに有効な既知の化合物(単複)、例えば、好酸剤、例えば、水酸化アルミニウムとを含む製薬組成物が提供される。毒性が低いために、有効な結果を生ずるために、要求される特定の作用に応じて高用量のホップ誘導体を用いることが可能である。
【0067】
ホップ誘導体は経口投与に特に好適である。従って、ホップ誘導体は、経口服用用に処方されてもよい。すなわち、錠剤、被覆錠剤、糖剤、カプセル、散剤、顆粒剤、および可溶性錠剤、および、液状剤形、例えば、懸濁剤、分散剤または溶液、要すれば随意にさらに別の活性成分と一緒に、例えば、1種以上の鎮痛剤および/または抗炎症化合物(単複)と組み合わせて処方してもよい。
【0068】
本発明は、本明細書に開示されるような製薬組成物の調製法、および、そのように調製された場合の組成物にも拡張される。組成物は、ホップ誘導体を、製薬学的に受容可能なキャリアまたは補助剤と、また、要すれば随意に鎮痛剤および/または抗炎症物質および/またはその他の化合物(単複)と共に混合することを含む方法によって製造されてもよい。製薬組成物を調製する方法は当業者には既知である(例えば、Genarro,ed.,Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th ed.,Mack Publishing Co.,Easton,Pennsylvania(1990)参照)。
【0069】
選択される用量レベルは、特定の組成物の活性、投与ルート、治療または予防される病態の重度、および、治療される患者の病態および既往に依存する。しかしながら、組成物の用量を、所望の治療効果を発揮するのに必要とされるものよりも低いレベルから始め、所望の効果が実現されるまで用量を徐々に増していくことは、従来技術の範囲内にある。要すれば、1日当たりの有効量は、投与のために複数用量に分割してもよい。すなわち、1日当たり2回〜4回の別々の用量に分割してもよい。しかしながら、いずれの患者であれ特定の患者における特定の用量レベルは、様々の因子、例えば、体重、一般的健康状態、食事、投与時間とルート、他の組成物との組み合わせ、および、治療または予防の対象となる特定の病態の重度を含む多様な因子に依存することが理解されよう。有効用量は、胃病を引き起こすNSAIDの前に、一緒に、または、後で投与してよい。
【0070】
本発明は、ホップ画分、ホップ化合物、またはホップ誘導体を、単独で、または、1種以上のNSAIDと組み合わせて輸送することを含む方法を提供する。例えば、本発明の組成物の1日当たり用量は、ホップ画分、例えば、α酸、イソα酸、還元型イソα酸、テトラヒドロイソα酸、ヘキサヒドロイソα酸、β酸、ホップかす、またはその他の画分を、1日当たり約0.5〜約10,000mg輸送するように処方されてもよい。特に、組成物の1日当たり有効用量は、ホップ画分、例えば、α酸、イソα酸、還元型イソα酸、テトラヒドロイソα酸、ヘキサヒドロイソα酸、β酸、ホップかす、またはその他の画分を、1日当たり約50〜約7500mg輸送するように処方されてもよい。例えば、組成物の1日当たり有効用量は、約100mg〜約5000mg、約200mg〜約3000mg、約300mg〜約2000mg、約500〜約1000mgのホップ画分を1日当たり輸送するように処方されてもよい。ある実施態様は、1日当たり、約0.5〜約500mgのイソα酸または還元型イソα酸、例えば、約50〜約300mg、または約100〜約200mgのイソα酸または還元型イソα酸を含む組成物を提供する。別の実施態様では、本発明は、1日当たり、約10〜約3000mgの還元型イソα酸、テトラヒドロキシイソα酸、またはヘキサヒドロイソα酸、例えば、約50〜約2000mg、約100〜約1000mg、約200〜約750mg、または約250〜約500mgの還元型イソα酸、テトラヒドロイソα酸、またはヘキサヒドロイソα酸を含む組成物を提供する。さらに別のある実施態様は、1日当たり、約50〜約7500mgのホップかす、例えば、約100〜約6000mg、約200〜約5000mg、約300〜約3000mg、約500〜約2000mg、または約1000〜約1500mgのホップかすを含む組成物を提供する。
【0071】
局所塗布用実施態様の組成物は、約0.001〜約10重量パーセント、約0.01〜約5重量パーセント、または約0.1〜約1重量パーセントのホップ誘導体を含んでもよい。このような組成物は、血清濃度として、約0.0001〜約10μMの範囲の、例えば、約0.001〜約5μM、約0.01〜約1μM、または約0.1〜約0.5μMの、ホップから単離または誘導される画分、またはその接合体をもたらすことが可能である。
【0072】
(処方)
本発明の組成物は、食物サプリメントまたは製薬組成物として投与することが可能である。本組成物は、望むままに、適当な剤形において、経口的に、局所に、経皮的に、経粘膜的に、非経口的等のルートを通じて投与してよい。食物サプリメント用の組成物は、各種の添加物、例えば、中間代謝産物、ビタミンおよびミネラルのような他の天然成分を始め、不活性成分、例えば、錠剤やカプセルの製造における標準的賦形剤であるタルクおよびステアリン酸マグネシウムのような添加物を含んでもよい。例えば、一つの実施態様は、本発明の組成物からなる活性成分を、グルコサミンまたはコンドロイチン硫酸と組み合わせて含む。
【0073】
本明細書で用いる「製薬学的に受容可能なキャリア」とは、固体に投与することが適切な、溶媒、分散剤、コーティング、等張剤および吸収遅延剤、甘味剤等を含む。これら製薬学的受容可能なキャリアは、広範な材料、例えば、希釈剤、結合剤および接着剤、潤滑剤、崩壊剤、着色剤、充填剤、芳香剤、甘味剤、および雑補助剤、例えば、特定の治療組成物を調製するのに必要とされるバッファーおよび吸収剤等の材料から調製されてもよい。製薬学的活性物質のためにこのような媒体および薬剤を使用することは従来技術でよく知られる。処方は、活性成分と適合する成分を含むことは理解されている。一つの実施態様では、タルクおよびステアリン酸マグネシウムが処方に含まれる。本発明の組成物を、食餌バーまたは機能食品として製造する場合に影響を及ぼすことが知られる他の成分としては、芳香剤、糖類、アミノ糖類、タンパク、および/またはでん粉修飾体を始め、脂肪および油分が挙げられる。
【0074】
本発明の実施態様の食物サプリメント、ローション、または治療組成物は、当業者に既知の任意のやり方で処方することが可能である。一つの実施態様では、組成物は、当業者に利用可能な技術を用いて、カプセルまたは錠剤として処方される。カプセルまたは錠剤形では、成人ヒトまたは動物に対して好ましい1日当たり用量は、1〜6個のカプセルまたは錠剤に含めることが可能である。組成物はまた、他の適当な剤形、例えば、注入液または懸濁液、スプレー液または懸濁液、ローション、ガム、ローゼンジ、食品、またはスナック品目のような形に処方することも可能である。食品、スナック、ガム、またはローゼンジ品目は、摂食可能な成分、例えば、甘味剤、芳香剤、油分、でん粉、タンパク、果物または果物エキス、野菜または野菜エキス、穀粒、動物脂肪またはタンパクを含む、任意の摂食可能成分を含むことが可能である。従って、本発明の組成物は、シリアルや、チップス、バー、ガムドロップのようなスナック品目、チューイングキャンディーまたはゆっくり溶けるローゼンジとして処方することも可能である。本発明の組成物は、急性、慢性両方の炎症性疾患の治療に使用することが可能である。本発明の組成物の処方の内特に有用なものは、炎症反応を緩和し、患部組織の治癒を促進し、あるいは、患部組織に対するそれ以上の損傷を予防することが可能である。製薬学的に受容可能なキャリアも、本発明の組成物および処方において使用が可能である。
【0075】
本発明はまた、胃および小腸の潰瘍型障害に対して、特に、急性および慢性の胃および十二指腸潰瘍および関連病態を患っている、または、そのような潰瘍および病態に対して過敏である患者の治療法であって、その患者に対して、ホップ誘導体の有効量を、要すれば随意に、添加活性成分、例えば、鎮痛性および/または抗炎症性化合物または薬剤のような添加成分と一緒に投与することを含む治療法を提供する。
【0076】
本発明の成分は、例えば、被験体の炎症の治療のために、および、その他の炎症関連性障害、例えば、疼痛および頭痛の治療のための鎮痛剤として、あるいは、発熱の治療のための解熱剤として使用することも可能である。本発明の組成物は、関節炎、例えば、関節リューマチ、脊椎関節障害、通風関節炎、変形性関節炎、全身性エリテマトーデス、および若年性関節炎を含む関節炎を治療するために使用することが可能である。
【0077】
本発明の成分は、哺乳動物におけるNSAID誘発性胃病の予防または治療に使用することが可能である。例えば、アスピリンの慢性的経口投与は、潰瘍の発生を伴う。本発明の組成物と共に投与されると、潰瘍発生は緩和または回避される。
【0078】
本明細書に開示される通り、胃のPGE生合成に対するNSAID抑制は、ホップ誘導体に対して同時に暴露されると著明に緩和される(実施例5および6を参照)。本明細書においてさらに開示されるように、ホップ誘導体とNSAIDの併用は、治療係数の増加を示す(実施例7および8を参照)。ホップ誘導体はまた、潰瘍形成を低減し、NSAID誘発性の胃損傷を抑制することが判明した(実施例9および10参照)。従って、NSAIDの抗炎症作用に否定的影響を及ぼすことなく、胃潰瘍形成を緩和、予防、または留保することが可能である。本発明の組成物はNSAID胃障害に干渉することが可能なので、実施態様は、各種疾患、例えば、自己免疫疾患、炎症性疾患、神経疾患、感染および循環器病、および、ガンのような各種疾患(ただしこれらに限定されない)の治療および予防に有効である可能性がある。
【0079】
本発明は、本明細書に開示されるように、ホップから単離または誘導された画分を、第二成分と組み合わせて含む組成物を提供する。一つの実施態様では、本発明は、ホップから単離または誘導された画分と、非アスピリン非ステロイド性抗炎症化合物とを含む組成物を提供する。ホップから単離または誘導される画分は、α酸、イソα酸、還元型イソα酸、テトラヒドロイソα酸、ヘキサヒドロイソα酸、β酸、およびホップかすからなる群より選択されてもよい。
【0080】
ホップから単離または誘導される画分は、下式を有する上位分子種化合物であってもよい。
【0081】
【化10】

式中R’は、カルボニル、ヒドロキシル、OR、およびOCORからなる群より選択され、Rはアルキルであり、R”は、CH(CH、CHCH(CH、およびCH(CH)CHCHからなる群より選択され、かつ、式中R、T、X、およびZは、H、F、Cl、Br、I、およびπ軌道からなる群より独立して選択されるが、ただし、もしもR、T、X、またはZの内の一つがπ軌道である場合、隣接のR、T、X、またはZもπ軌道であって二重結合を形成することを条件とする。
【0082】
さらに別の実施態様では、ホップから単離または誘導される画分は、下式を持つ分子種Aの化合物を含んでもよい。
【0083】
【化11】

式中R’は、カルボニル、ヒドロキシル、OR、およびOCORからなる群より選択され、Rはアルキルであり、R”は、CH(CH、CHCH(CH、およびCH(CH)CHCHからなる群より選択される。
【0084】
さらに別の実施態様では、ホップから単離または誘導される画分は、下式を持つ子種Bの化合物であってもよい。
【0085】
【化12】

式中R’は、カルボニル、ヒドロキシル、OR、およびOCORからなる群より選択され、Rはアルキルであり、R”は、CH(CH、CHCH(CH、およびCH(CH)CHCHからなる群より選択される。
【0086】
さらに別の実施態様では、ホップから単離または誘導される画分は、フムロン、コフムロン、アドフムロン、イソフムロン、イソコフムロン、イソアドフムロン、ジヒドロ−イソフムロン、ジヒドロ−イソコフムロン、ジヒドロ−イソアドフムロン、テトラヒドロ−イソフムロン、テトラヒドロ−イソコフムロン、テトラヒドロ−イソアドフムロン、ヘキサヒドロ−イソフムロン、ヘキサヒドロ−イソコフムロン、およびヘキサヒドロ−イソアドフムロンからなる群より選択される化合物であってもよい。本発明の組成物は、本明細書に開示されるように、特定範囲の複数の活性成分を含んでもよい。
【0087】
ホップから単離または誘導される画分を含む本発明の組成物は、非アスピリン性、非ステロイド性抗炎症化合物と組み合わせてもよい。そのような化合物は、サリチル酸、サリチル酸メチル、ジフルニサル、サルサラート、オルサラジン、スルファサラジン、アセトアニリド、アセトアミノフェン、フェナセチン、メフェナム酸、メクロフェナム酸ナトリウム、トルメチン、ケトロラク、ジクロフェナク、イブプロフェン、ナプロキセン、ダプロキセンナトリウム、フェノプロフェン、ケトプロフェン、フルルビオプロフェン、オキサプロジン、ピロキシカム、メロキシカム、テノキシカム、アムピロキシカム、ドロキシカム、ピボキシカム、フェニルブタゾン、オキシフェンブタゾン、アニトピリン、アミノピリン、ジピロン、セレコキシブ、ロフェコキシブ、ナブメトン、アパゾン、ニメンスリド、インドメタシン、スリンダク、およびエトドラクからなる群より選択され得る。本発明の組成物はさらに、製薬学的に受容可能なキャリアを含んでもよい。このような組成物は、経口用、局所用、非経口用、または直腸経由用の投与のために処方されてもよい。
【0088】
別の実施態様では、本発明は、ホップから単離された還元型イソα酸、および非ステロイド性抗炎症化合物を含む組成物を提供する。この還元型イソα酸は、例えば、ジヒドロ−イソフムロン、ジヒドロ−イソコフムロン、およびジヒドロ−イソアドフムロンであってもよい。
【0089】
本発明はさらに、本明細書に開示される、本発明の組成物を使用する方法を提供する。一つの実施態様では、本発明は、哺乳動物において鎮痛および抗潰瘍作用をもたらす方法であって、該哺乳動物に対し、鎮痛および抗潰瘍作用をもたらすのに十分な量の、ホップから単離または誘導された画分と、非ステロイド性抗炎症化合物とを投与する方法を提供する。この方法では、ホップから単離または誘導された画分の投与によって、該非ステロイド性抗炎症化合物に伴う胃毒性が緩和される。本明細書に開示されるように、ホップから単離または誘導された画分は、非ステロイド性抗炎症化合物と同時に投与することが可能である。あるいは別に、ホップから単離または誘導された画分は、非ステロイド性抗炎症化合物の投与後に、または、非ステロイド性抗炎症化合物の投与前に投与してもよい。
【0090】
別の実施態様では、非ステロイド性抗炎症化合物によって現に治療されている個体に対しホップから単離または誘導された画分を投与することによって、非ステロイド性抗炎症化合物に伴う胃毒性を緩和する方法を提供する。さらに、本発明は、胃腸病に関連する徴候または症状を呈する個体に対しホップから単離または誘導された画分を投与することによって胃腸病を緩和する方法を提供する。この胃腸病は、例えば、潰瘍形成を含んでもよい。この潰瘍形成は、例えば、食物、香草、細菌、真菌、または薬剤によって誘発されたものであってもよい。本発明の方法は、本明細書に開示される通り、胃病、胃腸病、消化器刺激因子に伴う胃の不調または不快を緩和するのに使用が可能である。
【0091】
一つの実施態様では、本発明は、NSAIDのような非ステロイド性抗炎症化合物に伴う胃毒性を緩和する方法であって、非ステロイド性抗炎症化合物によって現に治療される個体に対してホップから単離または誘導された画分を投与することによって胃毒性を緩和する方法を提供する。この方法は、消化器刺激因子に伴う胃毒性または胃腸病を緩和するためにも同様に使用が可能である。非ステロイド性抗炎症化合物に伴う胃毒性を緩和するためには、ホップの各種誘導体、またはホップから単離または誘導される画分の使用が可能である。ホップから単離または誘導される画分、例えば、イソα酸または還元型イソα酸を、NSAIDのような非ステロイド性抗炎症化合物と同時に投与することが可能である。このような同時投与は、同じ処方として、または別々の処方として行われてもよい。あるいは別に、ホップ誘導体、またはホップから単離または誘導された画分は、非ステロイド性抗炎症化合物が投与された後に、例えば、非ステロイド性抗炎症化合物の投与後、数分から数時間、数日後に投与してもよい。ホップから単離または誘導される画分は、非ステロイド性抗炎症化合物の服用による胃病が発症してから投与してもよい。さらに、ホップ誘導体、またはホップから単離または誘導される画分は、非ステロイド性抗炎症化合物が投与される前に、例えば、非ステロイド性抗炎症化合物誘発性胃病の開始の重度を予防または緩和するための予防手段として投与することも可能である。このような投与は、非ステロイド性抗炎症化合物投与の数分、数時間、数日前であることが可能である。ホップから単離または誘導された画分を、非ステロイド性抗炎症化合物の投与前に投与する場合、投与は、ホップから単離または誘導された画分の投与が、非ステロイド性抗炎症化合物誘発性胃病を緩和する、または、非ステロイド性抗炎症化合物誘発性胃病の開始の重度を低減させるのに効果的な時間枠で行われることが理解される。一般に、ホップから単離または誘導される画分は、非ステロイド性抗炎症化合物の最初の投与の前7日以内に、例えば、非ステロイド性抗炎症化合物の最初の投与前6日以内、5日以内、4日以内、3日以内、または2日以内に投与される。特に、ホップから単離または誘導される画分は、非ステロイド性抗炎症化合物投与後24時間以内に投与することが可能である。
【0092】
ヒトの治療用に有用である他に、本発明の実施態様はまた、他の動物、例えば、ウマ、イヌ、ネコ、鳥、ヒツジ、ブタ等を含む動物の治療にも有用である。炎症治療用処方は、COX−2誘発および活性を抑制することが可能であるが、胃粘膜のPGE合成にはほとんど影響を及ぼさない。過去を通覧すると、炎症治療のために用いられたNSAIDは、胃粘膜細胞のPGE合成には影響を及ぼさないが、COX−2は抑制するという特異性を欠いていた。従って、これらの薬剤は、長期に渡って服用すると、消化器系を刺激し、損傷した。このような不適応例は本発明には伴わない。従って、記載の処方は、長期に渡って服用しても、胃病は全く、またはごく限局したものしか見られない。投与は、熟練した当業者によって利用が可能な任意の方法によって、例えば、経口、局所、経皮、経粘膜、または非経口ルートによって行うことが可能である。
【0093】
本明細書で使用される「炎症を緩和する」とは、炎症反応を低減、緩和、または抑制することである。当業者であれば、炎症反応に伴う徴候または症状の低下は簡単に認識することが可能である。炎症を緩和するとは、炎症に伴う徴候または症状の重度を下げるばかりでなく、炎症に関連する症状が全く、またはほとんど見られなくなるほど炎症を抑制することを指すことも可能である。本明細書で使用される「胃病」とは胃の病気を指す。本明細書で使用される「胃腸病」とは、消化管、すなわち、口から肛門まで延び、消化や食物吸収、および残余の不用物の除去のために働く管状の通路の障害を指す。本明細書で使用される「潰瘍性障害」とは、消化器潰瘍を含む障害を指す。消化器潰瘍は、例えば、潰瘍誘発性薬物のような潰瘍性物質に対する暴露、潰瘍性環境刺激、細菌感染、例えば、Helicobacter pylori感染のような感染症、またはストレス誘発性潰瘍によって起こる可能性がある。このような潰瘍誘発性物質としては、例えば、非ステロイド性抗炎症化合物すなわちNSAIDのような薬剤または化合物、食品、香料、細菌、真菌、または、その他の、潰瘍を誘発する刺激物である可能性がある。例えば、薬剤フォスマックスは、骨粗しょう症を治療するのに用いられるが、消化器副作用を引き起こす。従って、本発明の組成物は、薬剤のような消化器刺激因子によって引き起こされる胃腸病を緩和するために用いることが可能である。本発明は、例として、NSAIDに伴う胃病を緩和する場合について説明してきたけれども、本明細書に開示される組成物および方法は、同じように、様々の消化器刺激因子に伴う胃病および/または胃腸病を緩和するために使用することが可能であることが理解される。
【0094】
本明細書に開示されるように、ホップから単離または誘導された画分を、要すれば随意に他の成分と組み合わせて含む、本発明の組成物は、胃病および/または胃腸病に伴う徴候または症状を緩和することが可能である。本発明の組成物は、化学的、環境的、感染による、および/または、感情的ストレスによる有害刺激に伴う胃腸病を緩和するために効果的に使用することが可能であることは当業者には理解される。例えば、本発明の組成物は、消化器刺激因子に関連する胃病および/または胃腸病を緩和するのに使用することが可能である。そのような刺激因子としては、例えば、食品の風味を増すために使用されるスパイス、香料、アルコール、タバコ、ストレス、またはその他のよく知られた消化器刺激因子が挙げられる。いくつかの消化器刺激因子は当業者にはよく知られるが、例えば、食品、およびスパイスを含む香料;ストレスおよび生活習慣、薬、H.pyroliのような細菌、および潰瘍形成等が挙げられるが、ただしこれらに限定されない(例えば、Myers et al.,Am.J.Gastroenterol.82:211−214(1987);Pippa et al.,Scand.J.Gastroenterol.Suppl.167:32−35(1989);Sivri,Fundam.Clinic.Pharmacol.18:23−31(2004);Bermejo et
al.,Rev.Esp.Enferm.Dig.95:621−624および625−628(2003)を参照)。
【0095】
本明細書に開示されるように、様々なスパイスが、AGS細胞モデルにおいてPGEを抑制することが判明している(実施例14−16を参照)。RIAA、またはその他のホップ誘導体と組み合わせると、これらのスパイスの胃毒性はより低くなることが予想される。例えば、RAWおよびAGS細胞モデルで分析した場合、ジンジャーもカプサイシンも抑制活性を示す。従って、RIAA、またはホップから単離または誘導されるその他の画分は、非標的細胞(例えば、胃細胞)の活性には拮抗し、標的細胞(例えば、炎症細胞)では協調することが可能である。従って、ホップから単離または誘導される画分を含む本発明の組成物は、スパイスのような胃刺激因子と関連する胃毒性および/または胃不快を低減するために使用が可能である。例えば、ローズマリーについてはIC50は4であるが、RIAAではIC50>25が観察されており、それらの組み合わせではIC50>25が得られている。これは、RIAAがスパイスの安全性を高めることが可能であることを示す。従って、本発明の組成物は、スパイスと共に摂取すること、あるいは、食物の摂取の前にスパイスと混合すること、または食物に添加することが可能である。さらに、本発明の組成物は、スパイス摂取に伴う胃不調を緩和するためにチューイングガムとして投与することも可能である。この投与は、胃毒性および/または胃病を誘発する、他の胃刺激因子に対しても同様に使用することが可能である。
【0096】
抗菌活性を有する、ホップから単離または誘導された画分を含む本発明の組成物は、潰瘍を消滅させ、胃の治癒を促進するために使用することが可能である。本発明の別の実施態様では、口内潰瘍に対する歯科的塗布を含めた、皮膚または組織の潰瘍または外傷を治療するための軟膏、低アレルゲンペーストまたはクリームとして使用することが可能である。
【0097】
本明細書で開示されるように、ホップから単離または誘導される画分は、胃病、例えば、胃または小腸に形成される潰瘍に伴う徴候または症状を緩和するために使用することが可能である。例えば、本発明は、胃病に関連する徴候または症状を呈する個体に対してホップから単離または誘導される画分を投与することによって、胃病に伴う徴候または症状を緩和する方法を提供する。
【0098】
ホップから単離または誘導される画分に加えてさらに、本発明の組成物は、第2の成分を含んでもよい。そのような第2成分の例としては、ローズマリー、またはローズマリーから得られた抽出物または化合物がある。従って、本発明の組成物は、ホップから単離または誘導された画分を含み、さらに、有効量の、ローズマリー、ローズマリー抽出物、またはローズマリーから誘導される化合物を含むことが可能である。従って、ホップから単離または誘導される画分の他に、本発明の組成物はさらに、ローズマリー、ローズマリー抽出物、または、ローズマリーまたはローズマリー抽出物の中に認められることが知られるその他の化合物を含むことが可能である。そのような化合物としては、1,8−シネオール、19−α−ヒドロキシウルソール酸、2−β−ヒドロキシオレアノール酸、3−O−アセチルオレアノール酸、3−O−アセチルウルソール酸、6−メトキシ−ルテオリン−7−グルコシド、6−メトキシルテオリン、6−メトキシルテオリン−7−グルコシド、メトキシルテオリン−7−メチルエーテル、7−エトキシ−ローズマノール、7−メトキシ−ローズマノール、α−アミリン、α−フムレン、α−ヒドロキシヒドロカフェイン酸、α−ピネン、α−テルピネン、α−テルピネニル酢酸、α−テルピネオール、α−スジョン、アピゲニン、アピゲニン−7−グルコシド、クルクメン、ベンジル−アルコール、β−アミレノン、β−アミリン、β−エレメン、β−ピネン、ベツリン、ベツリン酸、ボルネオール、ボルニル−酢酸、カフェイン酸、カムフェン、カンフル、カルノシン酸、カルノソル、カルバクロール、カルボン、カリオフィレン、カリオフィレン−オキシド、クロロゲン酸、ジオスメチン、γ−テルピネン、ヘスペリジン、イソボルネオール、リモネン、ルテオリン、ルテオリン−3’−O−(3”−O−アセチル)−β−D−グルクロニド、ルテオリン−3’−O−(4”−O−アセチル)−β−D−グルクロニド、ルテオリン−3’−O−β−D−グルクロニド、ルテオリン−7−グルコシド、メチル−ユーゲノール、ミルセン、ネオ−クロロゲン酸、ネペチン、オクタン酸、オレアノール酸、p−シメン、ピペリテノン、ローズマノール、ローズマル酸、ローズマリシン、ローズマリジフェノール、ローズマリン酸、ローズマリノール、ローズマリキノン、サビネン、サビニル酢酸、サリチル酸塩、サリチル酸−2−β−D−グルコシド、スクアレン、テルピネン−4−オル、テルピノレン、チモール、トランス−アネトール、トランス−カルベオール、ウルソール酸、ベルベノン、およびジンジベレンが挙げられる。
【0099】
ホップおよびローズマリーから単離または誘導される画分、またはそれらから誘導される抽出物または化合物を含む組成物において、該組成物は、1日当たり約0.5〜5000mgのローズマリー、ローズマリーの抽出物、またはローズマリー由来の化合物を輸送するように処方されてもよい。特に、1日当たりの有効用量は、1日当たり約5〜2000mgのローズマリー、ローズマリーの抽出物、またはローズマリー由来の化合物を輸送するように処方されてもよい。例えば、組成物は、1日当たり有効用量を、1日に1回または2回投与によって供給するように処方されてもよい。ある特定の実施態様では、組成物は、1日に1回または2回投与される、約75mgのローズマリー抽出物、またはローズマリー由来化合物または誘導体を含むことが可能である。
【0100】
本発明の組成物はさらに、オレアノール酸のようなトリテルペンを含むことが可能である。ある特定の実施態様では、組成物は、約0.01〜500mgのローズマリー抽出物および約0.01〜500mgのオレアノール酸を含むことが可能である。例えば、ある特定の実施態様は、標的組織において、組織g当たり0.1〜10μgのローズマリー抽出物、組織g当たり0.1〜25μgのオレアノール酸の濃度を実現可能とする組成物を提供する。
【0101】
さらに別の実施態様では、本発明の組成物はさらに、18−a−グリシルレチニン酸、18−β−グリシルレチニン酸、2−a−3−a−ジヒドロオキシウルス−12−3n−28−オン酸、3−a−ヒドロキシウルソール酸、3−オキソ−ウルソール酸、ベツリン、ベツリン酸、セラストロール、エブリコ酸、フリエデリン、グリシルリジン、ギプソゲニン、オレアノール酸、オレアノール酸−3−酢酸、ブクリョウ酸、ショウ(松)リョウ酸、ソフォラジオール、ソヤサポゲノールA、ソヤサポゲノールB、トリプテリン、トリプトフェノリド、ケツレイ酸、ウルソール酸、ウルソール酸−3−酢酸、ウバオール、およびβ−シトステロールからなる群より選択されるトリテルピン分子種を含むことが可能である。トリテルピン分子種は、要すれば随意に、モノ−またはジサッカリド、アミノ酸、硫酸塩、コハク酸塩、酢酸塩、およびグルタチオンからなる群より選択される物質に接合されてもよい。
【0102】
ある特定の実施態様では、組成物は、約0.5〜1000mg、または約50〜7500mgの、ホップ単離または誘導画分を含むことが可能である。さらに、本組成物は、ホップ単離または誘導画分の他に、約0.5〜5000mgの第2成分、約5〜2000mgの第2成分を含むことが可能である。ただし、この第2成分は、ローズマリー、ローズマリー由来の抽出物、およびリーズマリー由来の化合物からなる群より選択される。さらに、本組成物は、約0.001〜10重量パーセントの、ホップ単離または誘導画分を含む第1成分、あるいは、約0.1〜1重量パーセントの第1成分を含むことが可能である。本成分はまた、ローズマリー、ローズマリー抽出物、およびリーズマリー由来化合物からなる群より選択される第2成分を約0.001〜10重量パーセントで、または、第2成分を約0.1〜1重量パーセントで含むことが可能である。別の実施態様では、第1のホップ成分の、第2のローズマリー成分に対する比は、約100:1〜約1:100、または、約50:1〜約1:50の範囲にあってもよい。
【0103】
本明細書に開示されるように(実施例13参照)、ホップ単離または誘導画分を含む組成物は、消化器炎症を示すインジケーターであるカルプロテクチン便中濃度を増すNSAIDのような抗炎症剤と違って、便中のカルプロテクチンを増加させない。ホップ単離または誘導画分を含むこの組成物はまた、調べた特定の実施態様において(実施例13)、ローズマリー抽出物とオレオノール酸を含んでいた。従って、ホップ単離または誘導画分を含む組成物は、NSAID同様PGE合成を抑制し、一方消化器炎症を抑制するのに使用が可能である。
【0104】
カルプロテクチンは、カルシウム結合タンパクであって、抗菌性、抗真菌性、および抗増殖性を持ち、かつ、変形および正常細胞においてアポトーシスを増進することが判明しているタンパクである(Yui et al.,Biol.Pharm.Bull.26:753−760(2003);Pouillis et al.,J.Gastroenterol.Hepatol.18:756−762(2003))。カルプロテクチンの活性の少なくともある部分は、それが亜鉛を秘匿する能力を持ち、そのために亜鉛の局所的欠損をもたらすことと関わりがあるようである。しかしながら、データはまた、カルプロテクチンは、亜鉛独立性の活性も持っていることを示している。
【0105】
カルプロテクチンは、好中球の原形質タンパクの40%を占めるが、好中球は炎症部位に侵入し、そこにおいてカルプロテクチンを放出する(Yui et al.,上記、2003;Poullis et al.,上記、2003)。カルプロテクチンはまた、血中の単球、および急性炎症部位における組織のマクロファージの中に認められるが、一方、慢性的炎症中に存在するマクロファージや、滞在性マクロファージは、カルプロテクチンについて陰性である(Yui et al.,上記、2003)。カルプロテクチンはまた、粘膜の扁平上皮細胞や、サイトカインによって刺激された培養ケラチノサイト中にも認められている。これは、他の細胞も、炎症時にこの細胞を生産する可能性のあることを示唆する(Schjerven et al.,Br.J.Dermatol.149:484−491(2003))。
【0106】
カルプロテクチンは、血漿、尿、および、他のいくつかの体液中に検出される。正常の個人では、好中球は、その寿命の末期において消化管の粘膜を貫いて移動する。従って、低レベルの便中カルプロテクチンは全身に存在する。44.Tibble and Bjarnason,Drugs Today,37:85−96(2001)。分解に対して抵抗性を示すので、カルプロテクチンは大便サンプルにおいて定量が可能であり、その結果は再現的である。(Roseth,AG.Digest.Liver Dis.35:607−609(2003))
カルプロテクチンが、消化器炎症を患う患者において上昇することが示されて以来、診断テストとしての便中カルプロテクチンに対する興味は増している。例えば、便中カルプロテクチンは、炎症性の大腸疾患(IBD、>100μg/g大便)において有意に増加する。かつ、病気の潜伏期に渡って、活性を持つIBDとカルプロテクチンの増加の間には正の相関が観察された(Costa et al.,Digest.Liver Dis.35:642−647(2003))。研究から、便中カルプロテクチンは、結腸ガンと関連する増大する炎症反応でもあることが示された。健康な被験者と、過敏性大腸症候群(非炎症性疾患)とIBDを有する被験者との比較から、臓器疾患の存在を示すカットオフは60μg/g大便の付近にあることが示された(Costa et al.,上記、2003;Carroccio et al.,Clin.Chem.49:861−867(2003))。
【0107】
非ステロイド性抗炎症薬剤NSAIDは、消化器損傷を誘発する可能性があり、長期の服用は、高いパーセントの患者において胃・十二指腸領域に炎症性変化を引き起こす。ある研究では、6ヶ月以上規則的にNSAIDを服用した患者の内最大65%が胃腸病を発症することが示された(Tibble and Bjarnason、上記、2001)。NSAIDを服用する場合、消化管に対する損傷は急速に起こるもののようである。例えば、一つの研究によれば、被験者の19%は、ナプロキセン服用(500mg、1日2回)後4週間以内に胃・十二指腸潰瘍を発症し、患者の41%が12週間の服用後に潰瘍を発症した(Goldstein et al.,Am.J.Gastroenterol.96:1019−1027(2001))。
【0108】
便中カルプロテクチンは、消化器炎症のインジケーターであるので、いくつかの報告が、NSAIDによる損傷を検出するのに便中カルプロテクチンの使用が可能かどうかを調べている。一つの研究において、便中カルプロテクチンが、7日間のナプロキセン服用後2倍に増加し、結果は再現的であった(Meling et al.,Scand.J.Gastroenterol.31:339−344(1996))。この著者はまた、内視鏡検査で評価した場合、カルプロテクチンの増加は、胃・十二指腸粘膜の炎症と正の相関を持つと報告している。しかしながら、ナプロキセンを用いて調べたその後の研究では、カルプロテクチンの増加は再現されたが、内視鏡所見は再現されなかった(Shah
et al.,Gut 48:339−346(2001))。便中カルプロテクチンは、NSAIDを慢性的に服用する患者の44%で増加することが判明し、この増加は、111In−標識白血球の4日間の排泄と有意に相関した(Tibble et al.,Gut 45:362−366(1999))。これらをまとめると、上記研究は、便中カルプロテクチンは、NSAID服用の場合に見られるような、炎症による胃・十二指腸損傷に関する、感度の高い、早期段階用のマーカーとなり得ることを示唆する。以上から、消化器炎症の尺度としての有効性を見るために、ホップ単離または誘導画分を含む組成物の、カルプロテクチンに対する作用を定量する目的で、臨床治験を実行した(実施例13参照)。
【0109】
(AGS細胞株によるアッセイ)
COX−2の発見は、COX−1によって胃および腎臓において造られる保護的プロスタグランジン(PG)を取り出すことなく、炎症を緩和する薬剤を設計することを可能にした。本明細書に開示されるように、本発明の組成物について、インビトロの動物細胞を用い、細胞保護作用を持ち胃・十二指腸粘膜の健康性維持において一役買っているPGEを終末点として用いてCOX−2およびCOX−1抑制作用を評価することが可能である。第二に、結果を確認するために様々な細胞タイプが使用される。特異的なCOX−2活性を持つが、COX−1抑制は限られる組成物を指示するのにスクリーニング過程を用いることが可能である。本発明の実施態様の組成物は、2種類の細胞タイプにおいて試験することが可能である。すなわち、1)一成分を超える成分を含む組成物について最適量および比を定量し特定するためのヒト肺細胞およびその他の細胞株、2)ヒト胃上皮細胞(AGS細胞株)、消化管細胞株、および、典型的にはCOX−1抑制に関連する毒性を評価するためのモデル系であって、外傷(潰瘍のような)治癒のためには必要な系。以上から、COX−2を抑制するか、COX−2誘発を抑制することが可能な、本発明の実施態様の組成物は、AGC細胞においては低い活性化しか持たないか、または全く活性を持たないが、ヒト肺細胞、または他の細胞株では良好な活性を持つ組成物を選択することによって選別することが可能である。
【0110】
本明細書に開示するように、ホップから単離または誘導された1種以上の画分の効力を示すために利用が可能なアッセイは様々ある(実施例参照)。本明細書に開示されるように、ホップの単離または誘導画分は、本明細書に例示されるものを含めて当業者に既知の様々なアッセイを用いて、その胃毒性および/または胃病の緩和活性を評価することが可能であることが当業者には理解されよう。
【0111】
下記の実施例は、本発明を具体的に説明することを意図するもので、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0112】
(実施例1)
(AGS胃粘膜細胞は、シクロオキシゲナーゼ−1とシクロオキシゲナーゼ−2の両方を構成的に発現する)
要約−本実施例は、COX−1およびCOX−2の構成的発現を示すヒトAGS胃粘膜細胞株が、シクロオキシゲナーゼ抑制性化合物による消化器毒性を評価するためのモデルとなることを実証する。
【0113】
本実施例に使用された装置は下記を含む。すなわち、OHASモデル#E01140分析用天秤、Formaモデル#F1214生物汚染保護キャビネット(Marietta、オハイオ州)、0.1〜100μLを移送するための各種ピペット(VWR、ロチェスター、ニューヨーク州)、手動細胞計数カウンター(VWR、カタログ#23609−102、ロチェスター、ニューヨーク州)、Formaモデル#F3210 COインキュベーター(Marietta、オハイオ州)、血球計数器(Hausser、モデル#1492、Horsham、ペンシルバニア州)、ライカのモデル#DMIL倒立顕微鏡(ウェッツラー、ドイツ)、PURELABプラス水純化システム(U.S.Filter、ローウェル、マサチューセッツ州)、4℃冷蔵庫(Forma、モデル#F3775、Marietta、オハイオ州)、渦巻き流ミキサー(VWR、カタログ#33994−306、ロチェスター、ニューヨーク州)、および、37℃水浴(Shel Lab、モデル#1203、Cornelius、オレゴン州)である。
【0114】
薬品および試薬−プロスタグランジンE EIAキットモノクロナールをCayman Chemical(アンアーバー、ミシガン州)から購入した。抗COX−1および抗COX−2ウサギポリクロナール抗血清を、Upstate Biotechnology(シティ、ニューヨーク州)から入手した。ロバ抗ヤギIgG−HRPを、Santa Cruz Biotechnology(シティ、カリフォルニア州)から入手した。熱で不活性化した仔牛血清(FBS−HIカタログ#35−011CV)、および、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEMカタログ#10−013CV)をMediatech(Herndon、バージニア州)から購入した。標準試薬は全てSigma(セントルイス、ミズーリ州)から入手し、市販のものの内で最高純度のものとした。
【0115】
細胞培養−ヒト胃粘膜細胞株AGSは、米国標準培養体保存施設(ATCC番号CRL−1739、Manassas、バージニア州)より入手、供給者の指示に従って準備培養を行った。通例として、細胞は、50単位のペニシリン/mL、50μgのストレプトマイシン/mL、5%ピルビン酸ナトリウム、および5%L−グルタミンを添加した、10%FBS含有RPMI1640において、5%COを通じながら37℃で培養した。指数関数的に成長する細胞を6ウェルプレートに撒き、集密化するまで育成した。培養上清の20μL分液をサンプルしPGE含量を定量した。次に細胞をPBSで洗浄し、掻き落とし、細胞溶解して、イムノブロッティングで調べた。
【0116】
タンパクアッセイ−細胞溶解物のタンパク濃度は、NanoOrangeタンパク定量キットを用い、メーカーの与えてくれた手順に従って、ウシ血清アルブミンを標準(Molecular Probes、Eugene、オレゴン州)として定量した。蛍光は、パッカードのFluoroCountモデルBF10000フルオロメーターを用いて定量した。すなわち、励起フィルターを485nmに、発光フィルターを570nmにセットし、パッカードのPlateReader3.0バージョンソフトウェアを用いて定量した。パッカードPlateReaderに付属のI−Smartプログラムを用いてタンパク濃度を計算した。
【0117】
イムノブロッティング−COX−1およびCOX−2のウェスタンブロッティングを、PAGErTM Gold Precastゲル(Bio Whittaker Molecular Applications、ロックランド、メーン州)を用いて行った。約60μgのタンパクを含むAGS細胞溶解産物を、Laemmliのサンプルバッファーと共に、合計30μL容量として、ゲルのウェルに負荷した。垂直のミニゲル電気泳動チャンバーは、Savant Instrument Inc.(Holbrook、ニューヨーク州)によって製造されたものである、モデルMV120。ゲルに、室温でプレート当たり40mA(定電流)で、ブロモフェノールの青色染色がゲルの底部に達するまで、約1時間通電した。次に、ゲルを、一晩、500mA、4℃で、フッ化ポリビニール転写膜(Pall Corporation、アンアーバー、ニューヨーク州)にブロットした。精密タンパク標準分子量マーカー、未染色、広範囲(BioRad、Hercules,カリフォルニア州)を用いた。タンパクの視像化のために、ウェスタンブロット検出用の、BioWest(登録商標)長時間化学発光基質、非放射性、西洋ワサビペルオキシダーゼ基質キットを用いた。ウェスタンブロット画像を、UVP Epi Chemi II Darkroom(BioImaging Systems)によって獲得し、分析し、LabWorks(登録商標)Image Acquisition and Analysis Software(BioImaging Systems)によって強調した。
【0118】
PGEアッセイ−PGEの定量のためには、市販の、非放射性手法を用い(Caymen Chemical、アンアーバー、ミシガン州)、メーカーの推薦する手順にそのまま従った。手短に言うと、25μLの培養液を、PGE標準サンプルの連続希釈液と一緒に、適当量のアセチルコリンエステラーゼ標識トレーサーおよびPGE抗血清と混ぜ、室温で18時間インキュベートした。ウェルを空け、洗浄バッファーで洗った後に、アセチルコリンエステラーゼの基質を含む200μLのEllman試薬を加えた。反応を、穏やかな攪拌器において室温で1時間実行し、415nmにおける吸収度を定量した。PGE濃度は、10細胞当たりのピコグラムとして表した。
【0119】
結果−図4に見られるように、AGS細胞は、COX−1とCOX−2の両方を構成的に発現するが、ただしCOX−1の発現の方が、COX−2の発現よりも約4倍大きい。18時間期間のAGS細胞におけるPGE合成は660pg/10細胞であった。従って、本実施例は、AGSヒト胃粘膜細胞株は、COX−1およびCOX−2の構成的発現を実現しており、シクロオキシゲナーゼ抑制性化合物の消化器毒性を評価するためのモデルとなり得ることを実証する。
【0120】
過去において、古典的なCOX−2仮説は、消化器粘膜におけるCOX−2発現の役割を過小評価していた。本実施例にも、文献にも証明されている通り、正常の胃粘膜においては、COX−1が主要COXアイソフォームであるが、動物においてもヒトにおいても、胃粘膜の特定部位では、検出可能な量のCOX−2 mRNAおよびタンパクが構成的に発現されるし、また、誘発可能であることを示す証拠がますます増えている(Halter et al.,Gut 49:443−453(2001))。ラットにおける最近の研究で、COX−1またはCOX−2の選択的抑制は潰瘍性ではないが、COX−1とCOX−2の両方が合わせて抑制されると、インドメタシンのようなNSAIDの作用とよく似た、重度の病巣が胃および小腸に誘発されることが示された。この観察は、消化器粘膜の健全性の維持においてCOX−2が重要な役割を果たしていることを示唆する。
【0121】
(実施例2)
(非ステロイド性抗炎症剤によるAGS胃粘膜細胞およびA549肺細胞におけるPGE合成の抑制)
要約−本実施例は、複数のNSAIDによる、AGS胃細胞およびA549肺細胞におけるPGE合成の抑制は、それらNSAIDの、観察された相対的な臨床的胃毒性と相関することを具体的に示す。
【0122】
薬品−ロフェコキシブ錠剤およびセレコキシブカプセルの市販処方を用いた。PGE
EIAキットはCayman Chemical(アンアーバー、ミシガン州)から入手した。抗COX−1および抗COX−2ウサギポリクロナール抗血清は、Upstate Biotechnology(Waltham、マサチューセッツ州)から入手し、ロバ抗ヤギIgG−HRPを、Santa Cruz Biotechnology(サンタクルス、カリフォルニア州)から入手した。熱で不活性化した仔牛血清(FBS−HIカタログ#35−011CV)、および、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEMカタログ#10−013CV)をMediatech(Herndon、バージニア州)から購入した。IL−1β、および標準薬品、および非ステロイド抗炎症剤(NSAID)は、別様に指示しない限り、全てSigma(セントルイス、ミズーリ州)から入手し、市販のものの内で最高純度のものとした。他の全ての薬品は、実施例1に記載される供給業者から入手した。
【0123】
細胞−A549(ヒト肺上皮、ATCC番号CCL−185)およびAGS(ヒト胃粘膜(ATCC番号CRL−1739)は、米国標準培養体保存施設(Manassas、バージニア州)より入手し、供給者の指示に従って準備培養を行った。通例として、細胞は、50単位のペニシリン/mL、50μgのストレプトマイシン/mL、5%ピルビン酸ナトリウム、および5%L−グルタミンを添加した、10%FBS含有RPMI1640において、5%COを通じながら37℃で培養した。実験当日、指数関数的に成長する細胞を収集し、血清無添加RPMI1640にて洗浄した。
【0124】
対数期のA549およびAGS細胞を、96ウェル組織培養プレートにおいて、ウェル当たり0.2mLの培養液で、ウェル当たり8x10個の細胞の割合で撒いた。A549細胞における試験化合物によるPGE抑制の定量については、Warner et al.の手法−WHMA−COX−2プロトコールという名前でも知られる(Warner et al.Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 96,7563−7568(1999))をそのまま用いた。手短に言うと、A549細胞をプレート撒布の24時間後に、インターロイキン−1β(10ng/mL)を加え、COX−2の発現を誘発した。24時間後、細胞を、血清無添加RPMI1640で洗浄し、DMSOおよび血清無添加RPMIに溶解させた試験物質を、最終濃度25、5.0、0.5および0.05μg/mLに達するまでウェルに加えた。各濃度について二重に試行を行った。試験ウェルに含まれるものと等量のDMSOをコントロールウェルに加えた。60分後、A23187(50μM)をウェルに加えアラキドン酸を放出させた。30分後、25μLの培養液をウェルからサンプルしPGE定量を行った。
【0125】
これらの実験では非刺激AGS細胞を用いた。96ウェル微量滴定プレートに撒布後、細胞を、血清無添加RPMI1640で洗浄し、DMSOおよび血清無添加RPMIに溶解させた試験物質を、最終濃度25、5.0、0.5および0.05μg/mLに達するまでウェルに加えた。各濃度について二重に試行を行った。試験ウェルに含まれるものと等量のDMSOをコントロールウェルに加えた。60分後、カルシウムイオノフォアであるA23187(50μM)を、最終濃度50μMに達するまでウェルに加えた。A23187添加の30分後、25μLの培養液をウェルからサンプルしPGE定量を行った。
【0126】
細胞生存率−細胞生存率は、3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)による比色定量にて評価した(Sigma、セントルイス、ミズーリ州)。PGE定量のためのサンプリング後、ウェルにMTT溶液を直接加えた。580nmにおける各ウェルの吸収度をELISAプレートリーダーにて読み取った。いずれの化合物についても試験した最高濃度においても毒性は観察されなかった。
【0127】
PGEアッセイ−PGEの定量のためには、市販の、非放射性手法を用い(Caymen Chemical、アンアーバー、ミシガン州)、メーカーの推薦する手順にそのまま従った。手短に言うと、50μLの培養上清を、PGE標準サンプルの連続希釈液と一緒に、適当量のアセチルコリンエステラーゼ標識トレーサーおよびPGE抗血清と混ぜ、室温で18時間インキュベートした。その後、PGEアッセイ微量定量ウェルを空け、洗浄バッファーで洗った後に、アセチルコリンエステラーゼの基質を含む200μLのEllman試薬を加えた。反応を、穏やかな攪拌器において室温で1時間実行し、その後、415nmにおける吸収度をBio−Tek Instrument ELISAプレートリーダー(モデル#Elx800、Winooski、バーモント州)にて定量した。このアッセイに関するメーカーの仕様として、アッセイ間変動係数<10%、PGDとPGF2α間の交差反応の可能性1%未満、10−1000pg/mLにおける直線性が与えられた。PGE濃度は、10細胞当たりのPGEのピコグラムとして表した。
【0128】
計算−PGE合成における抑制濃度中央値(IC50)は、Calcusyn(BIOSOFT、Ferguson、ミズーリ州)を用いて計算した。この統計ソフトウェアパッケージは、Chou and Talaly,Adv.Enzyme Regul.22:27−55(1984)によって記載される中央作用法を用いて、複数の薬剤用量−作用計算を実行する。なお、上記文献を参照することにより本明細書に含める。
【0129】
手短に言うと、この分析では、「用量」と「作用」を、考えられるもっとも単純な形:fa/fu=(C/Cで相関させる。式中、Cは化合物の濃度または用量であり、Cは、効果的用量の中央値で効力を表す。Cmは、中央値−作用プロットにおけるx−交点から求められる。試験物質の濃度によって影響される割合はfaであり、その濃度によって影響されない割合はfu(fu=1−fa)である。指数mは、用量−作用曲線のS字性または形を表すパラメータである。これは、中央値−作用プロットの勾配から推定される。
【0130】
中央値−作用プロットは、x=log(C)対y=log(fa/fu)のグラフであり、Chouの中央値−作用方程式の対数形に基づく。中央値−作用方程式に対するデータの適合度は、中央値−作用プロットの直線的相関係数で表した。通常、酵素または受容体システムから得られた実験データはr>0.96であり、組織培養データはr>0.90であり、動物システムのデータはr>0.85である。ここに報告される細胞使用実験では、直線相関係数は全て0.90を超えていた。実験は、三つの異なる日付において3回繰り返された。各用量におけるパーセント抑制を、その3回の独立実験について平均し、報告される抑制濃度中央値を計算するのに用いた。消化器安全性に関する治療係数(TI)は、比AGS(IC50)/A549(IC50)として計算した。AGSモデルによるインビトロのTIランキングと、臨床的に評価されたNSAID胃病のランキングとの相関の度合いを定量するために、Spearmanの順位相関rを用いた。第I種誤差の確率を指定の5%レベルに設定した。
【0131】
結果−高い特異性を持つCOX−1阻害剤であるジイソフルオロフォスフェート(DIFP)は、A549細胞において、6.5μg/mLの抑制濃度中央値を示し、AGS細胞では、25μg/mLのテストした最高濃度において僅かにPGE合成を抑制した。用量−反応曲線を外挿したところ、DIFPにおいては、359μg/mLのAGS IC50の推定値が得られた(表3)。3種のCOX−2選択的薬剤については、1よりも大きな標的細胞選択性を示した化合物はただロフェコキシブだけであった(AGS IC50/A549 IC50>1)。セレコキシブとニメンスリドは、いずれも酵素活性では高いCOX−2選択性を示したのであるが、驚くべきことにA549標的細胞におけるよりも、AGS胃細胞においてより大きなPGE抑制を示した。
【0132】
明らかにされている臨床的胃毒性と一致して、イブプロフェン、アスピリン、およびインドメタシンは全て、標的A549細胞におけるよりも、AGS細胞株においてより大きくPGE合成を抑制した。サリチル酸とアセトアミノフェンは、両方の細胞モデルにおいて比較的不活性であった。図5は、前記NSAIDについて計算された対数TIを比較し、序列化したものである。0の右側の数値は、消化器作用の確率の低下を示し、一方、0の左側の数値は、消化器作用の確率の上昇を示す。AGS胃細胞モデルにおいて、GI毒性の序列推定は、NSAIDの臨床的序列と有意に相関した。すなわち、それぞれ、r=0.933、p<0.01;0.783、p<0.01;0.683、p=0.05である。GI毒性の低いものから高いものへNSAIDを序列化すると、ロフェコキシブ<アセトアミノフェン<ニメンスリド<セレコキシブ<サリチル酸<イブプロフェン<アスピリン<ナプロキセン<インドメタシンであった。
【0133】
これらの結果は、PGE合成を抑制する可能性のある抗炎症剤の消化器毒性の可能性について評価するためにAGS胃粘膜細胞株の使用が有効であることを実証する。結果はまた、COX−抑制化合物の作用における細胞特異性を明らかにする。IC50 AGS/IC50 A549において1という比は、AGS細胞とA549細胞の両方においてIC50が同じであることを示す。この比が、IC50 AGS/IC50 A549において1よりも高い場合、PGEの抑制が、AGS細胞ではより低いことになる。AGS細胞におけるPGEの抑制が低いことは好ましい。なぜなら、AGS細胞株はより多くのCOX−1を発現することとなり、これは粘膜のホメオスタシスを維持することになるからである。
【0134】
(表3. A549(標的)およびAGS(非標的)細胞モデルにおける、選択されたNSAIDによる、PGE合成抑制濃度の中央)
【0135】
【表3】

+カッコ内数値は、IC50推定値の95%信頼区間である。
++DIFP=ジイソフルオロフォスフェート。
【0136】
(実施例3)
(被刺激および未刺激マウスマクロファージにおける、ホップ(Humulus lupus)化合物および誘導体によるPGE合成の抑制)
要約−本実施例は、ホップ画分および誘導体は、RAW264.7マウスマクロファージモデルにおいて、COX−1のPGE合成に対してよりも、COX−2のPGE合成の方を優先的に抑制することを具体的に示す。
【0137】
薬品および試薬−細菌のリポポリサッカリド(LPS;B E.coli 055:B5)はSigma(セントルイス、ミズーリ州)より入手した。ホップ画分(1)αホップ(1%α酸;AA)、(2)アロマホップOE(10%β酸および2%異性化α酸)、(3)イソホップ(異性化α酸;IAA)、(4)β酸液(β酸;BA)、(5)ヘキサホップ・ゴールド(ヘキサヒドロ異性化α酸;HHIAA)、(6)レジホップ(還元型異性化α酸;RIAA)、(7)テトラホップ(テトラヒドロ−イソ−α酸;THIAA)、および(8)ホップかすは、Betatech Hops Products(ワシントンD.C.,米国)から入手した。ホップかすは、等量の絶対アルコールによって2度抽出した。40℃で加熱してエタノールを除去した。これを粘ちょうな褐色残渣が得られるまで行った。この残渣をDMSOに溶解し、これをRAW264.7細胞の試験に用いた。別様に銘記しない限り、全ての標準試薬はSigma(セントルイス、ミズーリ州)から入手し、市販のものの内で最高純度のものとした。他の全ての薬品および装置は、実施例1および2に記載される通りである。
【0138】
細胞培養−RAW264.7細胞は、米国標準培養体保存施設(カタログ番号#TIB−71、Manassas、バージニア州)より入手し、イーグル培地のダルベッコの改訂版(DMEM、Mediatech、Herndon、バージニア州)で育成し、対数期に維持した。DMEM培養液は、50mLの熱不活性化FBSおよび5mLのペニシリン/ストレプトマイシン/mLを、500mLの瓶入りDMEMに添加して調製し、4℃に保存した。使用前、温水にて37℃に温めた。
【0139】
実験1日目、対数期のRAW264.7細胞を、午前中、96ウェル組織培養プレートに、ウェル当たり0.2mLの培養液に懸濁させたウェル当たり8×10個の細胞を撒いた。1日目の終わりに(撒布後6〜8時間)、各ウェルから100μLの培養液を除去し、100μLの新鮮培養液と交換した。
【0140】
RAW264.7細胞におけるCOX−2発現を誘発するのに使用されるLPSの保存液1.0mg/mLを、1.0mgのLPSを1mLのDMSOに溶解して調製した。これを、溶解するまで渦流攪拌し、4℃で保存した。使用前、これを室温で、または37℃の温水浴で融解した。
【0141】
実験2日目、試験材料を、DMSOに溶解した1000X保存液として調製した。1.7mLの微量遠心管において、FBS無添加の1mL DMEMを加え、0.05、0.10、0.5、および1.0μg/mLの試験濃度を調製した。試験材料の1000X DMSO保存液の2μLを、FBS無添加の培養液1mLに加えた。この管は、最終的に2倍に濃縮された試験材料濃度を含むことになるが、これをインキュベーターに10分置き、37℃に平衡させた。
【0142】
COX−2関連PGE合成については、1日目に調製した細胞プレートの各ウェルから100μLの培養液を除去し、試験化合物の、平衡させた2X最終濃度液の100μLと交換した。次に、細胞を90分インキュベートした。20μLのLPSを、刺激の対象となる各ウェルの細胞に加え、最終的に、10ng LPS/mLの濃度とし、細胞を4時間インキュベートした。LPS刺激後、細胞の外見を観察し、生存率を実施例2に記載したように定量した。どの化合物についても試験した最高濃度でも毒性は観察されなかった。各ウェルから25μLの培養液上清を、透明な微量遠心管に移し、培養液中に放出されたPGEを定量した。PGEは、実施例1に前述したように、定量し報告した。
【0143】
COX−1関連PGE合成については、1日目に調製した細胞プレートの各ウェルから100μLの培養液を除去し、試験化合物の、平衡させた2X最終濃度液の100μLと交換した。次に、細胞を90分インキュベートした。LPS刺激の代わりに、細胞を、100μMのアラキドン酸と15分インキュベートした。各ウェルから25μLの培養液上清を、透明な微量遠心管に移し、培養液中に放出されたPGEを定量した。細胞の外見を観察し、生存率を実施例2に記載したように定量した。どの化合物についても試験した最高濃度でも毒性は観察されなかった。各ウェルから25μLの培養液上清を、透明な微量遠心管に移し、培養液中に放出されたPGEを定量した。PGEは、実施例1に前述したように、定量し報告した。COX−1およびCOX−2による、PGE合成の抑制濃度中央値(IC50)を、実施例2に記載するやり方で計算した。
【0144】
(表4. RAW264.7細胞における、ホップ画分および誘導体によるCOX−2およびCOX−1抑制)
【0145】
【表4】

表4に見られるように、この標的マクロファージモデルにおいて、全てのホップ画分および誘導体は、COX−1に対して、COX−2の方を選択的に抑制した。これは、新しい、予期しない発見であった。ホップ誘導体IAAおよびRIAAのCOX−2選択性の程度は、それぞれ、144倍および87倍であるが、これは予想しないものであった。このRAW264.7細胞モデルでは、分子種A化合物の方が、分子種B化合物よりもCOX−2に対してより大きな選択性を示した、すなわち、それぞれ、COX−2抑制の方が116倍または16倍大きかった。α酸、β酸、およびホップかすも、高度に選択的なCOX−2阻害剤であった。すなわち、COX−1/COX−2比は、それぞれ、30、54、および24であった。このように高度のCOX−2選択性が、低い抑制濃度中央値と組み合わさって得られることは、他の供給源から得られた天然の産物では従来報告されたことがない。アロマホップは、COX−2選択性がもっとも低く、COX−1/COX−2比が2.6で、臨床的には低い胃毒性が明らかにされているNSAIDであるアセトアミノフェン(実施例2)とほぼ同等である。
【0146】
(実施例4)
(胃粘膜細胞における、ホップ(Humulus lupus)化合物および誘導体によるPGE合成抑制の欠如)
要約−本実施例は、AGSヒト胃粘膜細胞株における、ホップ画分によるPGE抑制の欠如を具体的に示すものであるが、これは、画分中の化合物の胃刺激性の低度を物語る。
【0147】
薬品および試薬は、実施例3に記載する通りに使用した。AGS細胞は、実施例2に記載する通りに、育成し、ホップ化合物および誘導体の試験に用いた。PEGは、実施例1において前述したように定量し報告した。AGS細胞におけるPGE合成の抑制濃度の中央値を、実施例2において前述したように計算した。
【0148】
(表5. AGS細胞モデルにおける、ホップ誘導体による、PGE合成に対する抑制濃度中央値(IC50))
【0149】
【表5−1】

【0150】
【表5−2】

+IC50は、3回の独立アッセイの平均に基づいて計算した。AGS細胞を撒布し、80%集密度に達するまで育成した。細胞を洗浄し、試験材料を、A23187投与の60分前に加えた。30分後、培養液を抽出し、PGEを定量した。
【0151】
AGS細胞における、ホップ誘導体によるPGE合成抑制濃度の中央値を表3に示す。一般に、分子種B構造の方が、分子種A構造およびα酸よりも抑制性が低かった。分子種Bグループでは、THIAAおよびHHIAAのIC50値は、それぞれ、51および34μg/mLであった。分子種AグループのIAA、イソリッチ、およびRIAAのIC50値は、それぞれ、16、9.2および21μg/mLであり、分子種BのIC50値よりも平均して63%低かった。比較的高いIC50値を持つ、ホップ誘導体、βスタッブ(73μg/mL)、タンニン抽出物#4411(59μg/mL)、アロマホップ(43μg/mL)、および#1115ホップかす(35μg/mL)は、胃粘膜にたいして非刺激性として順位づけされてもよいと考えられる。思いがけなくも、ホップ誘導体は、比較的新しい、COX−2に対し高度の選択性を持つ薬剤であるロフェコキシブおよびセレコキシブを含め全てが、どのNSAIDよりも、AGS胃粘膜細胞に対して実質的に抑制性が低かった。
【0152】
(実施例5)
(分子種Aのホップ誘導体とイブプロフェンまたはアスピリンの組み合わせはAGS胃粘膜細胞におけるPGE合成の抑制を低下させる)
要約−本実施例は、NSAIDであるイブプロフェンおよびアスピリンによる胃のPGEに対する抑制に対して、分子種Aのホップ分子種が拮抗作用を呈することを示す。この作用の意味は、分子種Aのホップ誘導体は、NSAIDによる胃障害を緩和するように働くということである。
【0153】
方法−薬品および試薬は、実施例2および3に記載する通りに使用した。AGS細胞は育成して、実施例2に記載するように、分子種Aホップ誘導体RIAA、および、RIAA:イブプロフェンの併用、および、RIAA:アスピリンの併用を試験するために用いた。RIAA:NSAID併用は、1、9、50、91、および99パーセントのRIAAを含むように処方した。50、5、0.5、および0.05μg/mLの試験材料の濃度は二重に定量した。PGEは、実施例1に記載するように定量し、報告した。AGS細胞におけるPGE合成に対する抑制濃度の中央値(IC50)は、実施例2に記載する通りに計算した。
【0154】
試験処方の協調作用または拮抗作用は、結合示数(CI)パラメータおよびCalcuSyn(BIOSOFT、Ferguson,ミズーリ州)ソフトウェアを用いて定量した。Chou−TalalayのCIは、複数の薬剤−作用に基づき、酵素速度論モデルから導かれる(Chou and Talalay,Adv.Enzyme Regul.22:27−55(1984))。この方程式は、協調作用または拮抗作用よりはむしろ加重作用のみを決定する。一方、本明細書で用いる協調作用は、ChoおよびTalalayによって提案される予期される加重作用を上回るもの、拮抗作用は、予期される加重作用を下回るものと定義される。同じ作用様式を持つが互いに排除的な化合物同士において、または、互いに排除的ではないが、完全に独立した作用様式を持つ薬剤同士において、加重作用をCI=1と表すことによって、下記の関係式が得られた。CI<1、=1、および>1で、それぞれ、協調作用、加重性、および、拮抗作用を示す。
【0155】
結果−図6Aおよび6Bは、AGS胃粘膜細胞における、それぞれ、イブプロフェン、RIAA、および、RIAA:イブプロフェン併用(図6A)、そして、アスピリン、RIAA、および、RIAA:アスピリン併用(図6B)によるPGEパーセント抑制を示す。思いがけず、イブプロフェンまたはアスピリンと組み合わせた僅かに1%のRIAAの併用が、いずれのNSAIDのPGE抑制作用も低下させる。RIAAとイブプロフェンまたはアスピリンにおけるCIを計算すると、RIAA:NSAID組み合わせの100:1〜1:10までの全用量−反応曲線に渡って極端に強力な協調作用のあることが示された(表6)。100:1のRIAA:NSAID組み合わせでは、用量−反応を計算するほどPGE生合成の抑制が十分ではなかった。
【0156】
(表6. AGS胃粘膜細胞モデルにおけるRIAA:イブプロフェンおよびRIAA:アスピリン併用の結合示数値)
【0157】
【表6】

+CI<1、=1、および>1は、それぞれ、協調作用、加重性、および拮抗作用を示す。
++NDRは、50、5、0.5、および0.05μg試験材料/mLの用量範囲において、50μg/mLに対する用量−反応無しを示す。
【0158】
ホップから単離または誘導された各種画分と、NSAIDのような各種非ステロイド性抗炎症化合物について同様の実験を行った。
【0159】
(実施例6)
(分子種Bのホップ誘導体とイブプロフェンまたはアスピリンの組み合わせはAGS胃粘膜細胞におけるPGE合成の抑制を低下させる)
要約−本実施例は、NSAIDであるイブプロフェンおよびアスピリンによる胃のPGEに対する抑制に対して、分子種Bのホップ分子種が拮抗作用を呈することを示す。この作用の意味は、分子種Bのホップ誘導体は、NSAIDによる胃障害を緩和するように働くということである。
【0160】
方法−薬品および試薬は、実施例2、3および5に記載する通りに使用した。AGS細胞は育成して、実施例2に記載するように、分子種Bホップ誘導体THIAA、および、THIAA:イブプロフェンの併用、および、THIAA:アスピリンの併用を試験するために用いた。THIAA:NSAID併用は、1、9、50、91、または99パーセントのTHIAAを含むように処方した。50、5、0.5、および0.05μg/mLの試験材料の濃度は二重に定量した。PGEは、実施例1に記載するように定量し、報告した。AGS細胞におけるPGE合成に対する抑制濃度の中央値(IC50)は、実施例2に記載する通りに計算した。試験処方の協調作用または拮抗作用は、実施例5に記載する通りに結合示数(CI)を用いて定量した。
【0161】
結果−図7Aおよび7Bは、AGS胃粘膜細胞における、それぞれ、イブプロフェン、THIAA、および、THIAA:イブプロフェン併用(図7A)、そして、アスピリン、RIAA、および、RIAA:アスピリン併用(図7B)によるPGEパーセント抑制を示す。THIAAのイブプロフェンとの組み合わせは、NSAIDによるPGE抑制の減衰という点では、RIAAのイブプロフェンとの組み合わせと定性的に同様であった。しかしながら、THIAA:イブプロフェンのCIは、50パーセント抑制未満の用量−応答曲線部分においてのみ拮抗作用を示した。図7Bのグラフで見られるように、THIAA:アスピリン併用は、5および0.5の試験材料濃度の両方においてAGS胃粘膜細胞におけるPGE抑制を増加させるようである。CIの計算によって、THIAA:アスピリンの併用は、PGEの抑制が40%未満となる、用量−応答曲線の低濃度末端では拮抗的であることが明らかになった。40パーセントレベルの上では、THIAAとアスピリンの併用において強力な協調作用が見られた。
【0162】
(表7. AGS胃粘膜細胞モデルにおけるTHIAA:イブプロフェンおよびTHIAA:アスピリン併用の結合示数値)
【0163】
【表7】

+CI<1、=1、および>1は、それぞれ、協調作用、加重性、および拮抗作用を示す。
++NDRは、50、5、0.5、および0.05μg試験材料/mLの用量範囲において、50μg/mLに対する用量−反応無しを示す。
a. IC60に対する拮抗作用;b. IC70に対する拮抗作用;c. IC65に対する拮抗作用;IC50に対する拮抗作用
e. IC40に対する拮抗作用;f. IC35に対する拮抗作用。
【0164】
ホップから単離または誘導された各種画分と、NSAIDのような各種非ステロイド性抗炎症化合物について同様の実験を行った。
【0165】
(実施例7)
(分子種Aのホップ誘導体とイブプロフェンまたはアスピリンの組み合わせは治療係数の増加を示す)
要約−本実施例は、分子種Aの代表的な分子RIAAとの併用は、イブプロフェンとアスピリン両方の治療係数を増加することを示す。
【0166】
方法−薬品および試薬は、実施例2および3に記載する通りに使用した。RAW264.7およびAGS細胞は育成して、実施例2および3に記載するように、分子種Aホップ誘導体RIAA、および、RIAA:イブプロフェンの併用、および、RIAA:アスピリンの併用を試験するために用いた。RIAA:NSAID併用は、50パーセントのRIAAを含むように処方した。50、5、0.5、および0.05μg/mLの試験材料の濃度は二重に定量した。PGEは、実施例1に記載するように定量し、報告した。AGS細胞におけるPGE合成に対する抑制濃度の中央値(IC50)は、実施例1に記載する通りに計算した。対数IC50比(AGS/COX−2)のプロットは、実施例2に記載する通りに行った。
【0167】
結果−図8に見られるように、試験処方におけるRIAAの増加と共に、胃毒性を誘発する能力は、イブプロフェン(図8A)でも、アスピリン(図8B)でも低減させられた。
【0168】
ホップから単離または誘導された各種画分と、NSAIDのような各種非ステロイド性抗炎症化合物について同様の実験を行った。
【0169】
(実施例8)
(分子種Aのホップ誘導体とイブプロフェンまたはアスピリンの組み合わせは治療係数の増加を示す)
要約−本実施例は、分子種Bの代表的な分子THIAAとの併用は、イブプロフェンとアスピリン両方の治療係数を増加することを示す。精しく言うと、ホップ誘導体のTHIAA分子種は、用量−応答曲線の40%未満の部分においてのみ拮抗的ではあるが、全体作用は、標的細胞におけるNSAIDの効力を増し、これは、NSAIDの治療係数において思いがけず大きな、正の増加をもたらした。
【0170】
方法−薬品および試薬は、実施例2および3に記載する通りに使用した。RAW264.7およびAGS細胞は育成して、実施例2および3に記載するように、分子種Bホップ誘導体THIAA、および、THIAA:イブプロフェンの併用、および、THIAA:アスピリンの併用を試験するために用いた。THIAA:NSAID併用は、1または50パーセントのTHIAAを含むように処方した。50、5、0.5、および0.05μg/mLの試験材料の濃度は二重に定量した。PGEは、実施例1に記載するように定量し、報告した。対数IC50比(AGS/COX−2)のプロットは、実施例2に記載する通りに行った。
【0171】
結果−図9に見られるように、試験処方におけるTHIAAの増加と共に、胃毒性を誘発する能力は、イブプロフェン(図9A)でも、アスピリン(図9B)でも低減させられた。
【0172】
ホップから単離または誘導された各種画分と、NSAIDのような各種非ステロイド性抗炎症化合物について同様の実験を行った。
【0173】
(実施例9)
(分子種Aおよび分子種Bホップ誘導体の、ストレス誘発性潰瘍に対する活性)
ストレス誘発性潰瘍を、ラットを焼き石膏バンデージに24時間封入することによって、ラットにおいて実験的に誘発した。化合物のストレス誘発性潰瘍の形成に対する作用を、ラットをバンデージに封入する1時間前、およびラットの封入6時間後に、試験化合物を投与して評価した。24時間後、バンデージを除き、その胃傷害を、未処置ラットと比べて評価した。ホップ誘導体は、実施例3で前述したように使用した。
【0174】
kg当たり100mgの試験材料でラットを処置すると、潰瘍スコアの全体平均値の抑制が得られた。
【0175】
(実施例10)
(ラットにおける、非ステロイド性抗炎症剤投与による胃損傷に対する分子種Aおよび分子種Bホップ誘導体の影響)
非ステロイド性抗炎症剤による胃損傷を、ある用量の試験材料の投与後に、比較的高い用量のNSAIDを投与することによって評価した。さらに5時間後、胃損傷の程度を定量し、パーセント抑制を計算した。ホップ誘導体は、実施例3で前述した通りに使用した。
【0176】
全てのホップ誘導体において、NSAID誘発性胃損傷に対する実質的な抑制が観察された。
【0177】
(実施例11)
(ラットにおける分子種Aおよび分子種Bの急性毒性)
ホップ誘導体の急性毒性をラットで調べた。10匹の、若い、Fisher344雄性ラット、平均体重100gに、5000mg試験材料/kg体重で経口投与し、14日間観察し、死亡ラットの数を定量した。ホップ誘導体の急性毒性の低いことは、ラットに対し5000mg試験材料/kg体重で経口投与した場合でも、致死率が見られないことによって示された。
【0178】
(実施例12)
(ホップ誘導体と組み合わせて投与された場合のアスピリン急性毒性の低下)
アスピリンの急性毒性を低下させる、ホップ誘導体の能力をマウスで試験した。グループ当たりの平均体重12gの、10匹の、若い、雄性・雌性マウスに対し、体重kg当たり50、100、500、1000、または5000mgの試験材料を経口的に投与し、14日間観察した。致死用量中央値を、実施例2に記載するやり方で計算した。アスピリン、または、アルピリンとホップ誘導体とを1:1比で雄性・雌性マウスに経口投与したところ、ホップ誘導体に強力な保護作用のあることが示された。ホップのアスピリンとの併用は、アスピリンの全ての用量において致死率を下げる、または阻止する。
【0179】
上記から、これまでに示した種々の処方の内でも、開示の上位分子種と記述されるホップ誘導体を第1活性成分として、第2成分としてNSAIDを含む処方が開示された。本発明の精神から逸脱することなく、明白な性質を持つ各種変更および修正を実行することが可能であることは当業者には直ちに明白であろう。そのような変更および修正としては、例えば、カプセル、錠剤、散剤、ローション、食品、またはバー製造過程を変えるために添加される無毒の成分を始めとして、ビタミン、芳香剤、およびキャリアが挙げられるが、ただしこれらに限定されない。他の、同様の変更または修正として、香草、または、本明細書に開示される好ましい実施態様の組み合わせを含む、他の植物性産品が挙げられよう。当業者には明白なように、本明細書に記載される実施態様について、その他にも、様々な修正および変更を、本発明の範囲から逸脱することなく実行することが可能である。本明細書に記載される特定の実施態様は、ただ例示の目的のためにのみ提供されるものである。
【0180】
結論として、一つの実施態様は、NSAID誘発性胃障害を治療または予防するための組成物である。本組成物は、少なくとも1種のホップ誘導体、およびNSAIDを含む。投与は経口的でも非経口的でもよい。
【0181】
(実施例13)
(ホップ抽出物を含む組成物、対、抗炎症剤の作用の比較)
本実施例は、ホップ抽出物と、非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)、ナプロフェンとを含む組成物の、便中カルプロテクチンに対する作用を評価するための、ランダム化交差試験について説明する。
【0182】
治験設計−治験は、IP2003−001CTとナプロキセンの、便中カルプロテクチンに対する作用を比較するためのランダム化交差試験である。被験者は、訪問0回目(V0)で選別した。治験参加用に選別されると、被験者は訪問1回目(V1)に再訪した。V0とV1の間に、2個の便中カルプロテクチンの基礎サンプルを獲得した。被験者をランダム化し、治験のアーム1かアーム2のいずれかに配置した。全ての被験者に対して、治験開始から、治験全期間の終了時までの1週間アルコールの摂取を断つように指示した。
【0183】
アーム1被験者は、V1に、2錠(1日当たり2回)のIP2003−001CTを割り当てられ、これを合計14日間服用した。訪問2回目(V2)はV1の1日後、訪問3回目(V3)はV1の14日後に行われた。21日間の休薬期間の後、被験者は、訪問4回目(V4)のために再訪し、ナプロキセン500mg、1日当たり2回を14日間割り当てられた。被験者は、7日後、訪問5回目のために(V5;合計42日)、合計49日後、最終訪問である訪問6回目(V6)のために再訪した。
【0184】
アーム2被験者は、V1に、ナプロキセン500mg、1日当たり2回を割り当てられ、これを合計14日間服用した。訪問2回目(V2)はV1の7日後、訪問3回目(V3)はV1の14日後に行われた。21日間の休薬期間の後、被験者は、訪問4回目(V4)のために再訪し、2錠(1日当たり2回)のIP2003−001CTを14日間割り当てられた。被験者は、7日後、訪問5回目のために(V5;合計42日)、合計49日後、最終訪問である訪問6回目(V6)のために再訪した。
【0185】
ランダム化は、コンピュータ生成ランダム表(マイクロソフト、エクセル)を用いて実行した。被験者は、治験参加時(V1)にどちらかのアームに割り当てられた。
【0186】
被験者は新聞およびラジオ広告で募集した。18〜45歳の男性について最初電話またはe−メールによって選別した。参加基準としては、ボディマス指数(BMI)が20と29kg/cmの間にあること、最近も、過去も胃腸病の徴候の無いこと、および、正規の標準血液試験によって健康と判定されたことがある。
【0187】
スクリーニング用臨床検査が、全体血球数(CBC)、腎臓または肝臓機能マーカー、または血糖値において異常を示した場合、その被験者を除外した。現在処方薬を服用している被験者、および、治験開始前の2週間内にNSAIDまたはアスピリンを服用したことのある被験者、あるいは、治験開始前の4週間内にコルチコステロイドの経口剤を服用したことのある患者は除外した。排除基準はまた、サプリメント中の成分、ナプロキセン、NSAID、またはアスピリンに対するアレルギー;胃潰瘍、胃炎、食道炎、あるいは、肝臓、腎臓、または心臓病の既往;出血性障害の既往;コントロールされていない高血圧症(血圧(BP)>140/90);糖尿病;HIV;未処置の内分泌性、神経性、または感染性障害の既往;重度の精神病の既往、または、過去10年以内の実際の自殺衝動を含んでいた。
【0188】
試験製剤−IP2003−01の各錠剤は、200mgの還元型イソα酸(Humulus lupusコーン抽出物由来のマグネシウム塩)、200mgのローズマリー抽出物(Rosemarinus officialis)、および、40mgのオレアノール酸(オリーブの葉の抽出物Olea europea)に、微小結晶セルロース、シリカ、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ケイ酸カルシウムからなる賦形剤を加えたもの、を含んでいた。錠剤の成分の内二つ、すなわち、ローズマリーおよびオレアノール酸は、米国食品薬品局(FDA)による一般に安全と見なされる物品リスト(GRAS)の中に含まれている。ホップの還元型イソ−α酸(RIAA)は、ビール製造において、天然の、泡安定化、および苦味付与化合物として用いられる食品級物質であり、安全利用の歴史を持つ。
【0189】
ナプロキセン(2−ナフタレン酢酸、5メトキシ−α−メチル−(+))は、鎮痛および解熱性を持つNSAIDである。ナプロキセンは、消化管によって急速にかつ完全に吸収される。ナプロキセンのピーク血漿濃度は投与2〜4時間後に達成され、定常状態は、通常、4〜5用量後に実現される。関節炎患者における臨床実験では、ナプロキセンは、痛みと関節の強張りを鎮める点で、アスピリンおよびインドメタシンに匹敵することが示された。ナプロキセンにおいて3%以上の出現率を見る有害反応としては、便秘、胸焼け、腹痛、悪心、消化不良、下痢、胃炎、頭痛、朦朧、眠気、浮揚感、眩暈、痒み、皮膚発疹、斑状出血、発汗、紫斑、耳鳴り、聴覚障害、視覚障害、浮腫、呼吸困難、動悸、および、渇きが挙げられる。
【0190】
臨床および検査室分析−血液を、V0において選別用臨床検査のために、V1、V3、V4、およびV6において高感度C反応性タンパク(hsCRP)用として採取した。被験者の検査基礎値を監視するためにV3およびV6に、追跡用CBC、包括的代謝パネル/完全代謝プロフィール(CMP)を実行した。スクリーニングおよびhsCRP検査時に、CBCおよび化学パネルを含む一般臨床検査をLaboratories Northwest(Tacoma、ワシントン州)が実行した。
【0191】
便中カルプロテクチンの定量を、PhiCal酵素イムノアッセイ(Great Smokies Diagnostic Laboratory、Asheville、ノースカロライナ州)を用いて行った。試験感度は、15μg/g大便(6.25ng/mLと等価)であり、試験は、250μg/g大便(100.00ng/mLと等価)まで直線的であった。試行内変動は6%変動係数(CV)であり、日変動は14%CVであった。
【0192】
被験者にはキットを与え、自宅で大便サンプルを得て、それを各訪問時に持参するようにした。大便サンプルは、メーカー(Great Smokies Diagnostic Laboratory)の支給する文献に記載される通りに行った。V1において被験者から2個の大便サンプルを、個人内変動と基礎値定量のために収集した。1個のサンプルを、V2、V3、V4、V5、およびV6に収集した。
【0193】
V1、V2、V3、V4、V5、およびV6の前に、各被験者は、朝の第1回目の尿を収集した。尿は凍結し、炎症仲介物の評価のために使用した。
【0194】
各訪問時に生命徴候および一般的身体検査を実行した。V2、V3、V4、V5、およびV6において、一般的な耐性アンケートも入手した。これは、IP2003−001およびナプロキセンに対する耐性を評価するためであった。
【0195】
統計学的方法−データは、JMP統計パッケージ(SAS Institute,Cary,ノースカロライナ州)を用いて一方向変動分析(ANOVA)によって分析した。有意差はp<0.05と定めた。生命徴候および一般臨床検査データは、別様に注記しない限り、平均±平均の標準誤差(sem)として表した。
【0196】
カルプロテクチンデータは下記のように分析した。検出限界未満の入力(<15μg/g大便)は15に変換した。データはANOVA(Wilcoxon/Kruskal−Wallis順位和テスト)によって分析した。データはまた、等分散性を確保するために対数に変換し、全ての統計試験はこの変換データに基づいて確認された。局外データについてGrubb試験を行った。その後の比較のためにTukeyのHSD試験を用いた。
【0197】
結果−被験者−26人の被験者が治験のためにスクリーニングされ、24人の被験者が参加のために選別された(図1)。被験者は全て自由意志で治験に参加し、インフォームドコンセントに署名した。これらの被験者の内、12名はアーム1に割り当てられ、11名がアーム1を終了した。12人の被験者がアーム2に割り当てられ、10名がアーム2を終了した。3人の被験者が実験から退去した。1名はアーム1から、2名はアーム2からである。退去の理由は個人的なものであった(スケジュールが合わない、および、個人的な障害)。治験の間不快事象は報告されなかった。
【0198】
アーム1の被験者の年齢は19歳〜44歳の範囲にあり、BMIでは20〜27kg/mの範囲にあった。アーム2の被験者の年齢は25歳〜45歳の範囲にあり、BMIでは24〜31kg/mの範囲にあった。被験者の人口構成を表8にまとめた。
(表8. 治験を終了した被験者における平均(±標準偏差)年齢、BMI、およびカルプロテクチン基礎値)
【0199】
【表8】

臨床観察−アーム1またはアーム2のいずれの被験者においても生命徴候(血圧または拍動)において有意な変化は観察されなかった。アーム1被験者の血圧測定値は、V1では125/68±9/8(N=12)、V6では123/68±12/8であり(N=10,一人の被験者は記録されなかった)、V1とV6の訪問時に有意な変化は無かった。アーム2の血圧測定値は、V1では123/72±7/12(N=12)、V6では119/68±7/9(N=10)であり、V1とV6の訪問時に有意な変化は無かった。体重においても臨床的に有意な変化は認められなかった。ただし、アーム1を完了した11人の被験者の内5名は、V1とV6の間に、平均3ポンドの増加に対して約5ポンドの増加を示した(表9)。
【0200】
(表9. 治験のアーム1(N=11)およびアーム2(N=10)を完了した被験者における平均(±標準偏差)体重)
【0201】
【表9】

CRP−全ての被験者−急性相反応物質、高感度c−反応性タンパク(CRP)を炎症のマーカーと考えた。CRPが<1mg/Lの数値を最適とし、一方、>3.9mg/LのCRP値を上昇と判定した。1.1mg/L〜3.9mg/Lの数値をやや上昇と判定した。
【0202】
治験を終了した被験者のV1におけるCRP値は、<0.2mg/L〜2.8mg/Lの範囲にあった。1mg/Lよりも高い値を示したのは僅かに7人の被験者だけであった。アーム1の2人の被験者を除いては、CRP値にほとんど変化は認められなかった(表10)。上記2名は、V6においてのみ上昇値を示した(19.8mg/Lと23.4mg/L)。
【0203】
(表10. 治験のアーム1(N=11)およびアーム2(N=10)を終了した被験者の平均(±標準偏差)CRP値(mg/L))
【0204】
【表10】

便中カルプロテクチン−2個の便中カルプロテクチンサンプルを、試験物質を服用し切る前に被験者から入手した。上記基礎サンプルは、相互に4日以内に入手した。便中カルプロテクチンの基礎値を表11に示す。全ての被験者における便中カルプロテクチンの平均基礎値は、37±8μg/g大便であった。10人の被験者は約40μg/g大便の平均基礎値を持ち、数人の被験者は、検出レベル未満の数値を持っていた(15μg/g大便)。
【0205】
(表11. V1前における被験者のカルプロテクチンの基礎値データ(μg/g大便)を示す。独立に4日以内に採取した大便サンプルを示す。<17または<16(検出レベル未満であることを示す)と報告されたデータは15に変換された。NDは実行せずを表す。)
【0206】
【表11−1】

【0207】
【表11−2】

治験時のアーム1被験者の便中カルプロテクチンデータを表12に示す。基礎値1(47±13μg/g大便)と、被験者がIP2003−001を服用しているV2とV3(それぞれ、36±7μg/g大便および36±6μg/g大便)の間には有意差は認められなかった。交差間における休薬期間値も、最初の基礎値と一致し、46±14μg/g大便であった。一方、ナプロキセン服用時には、便中カルプロテクチンは、それぞれ、V5およびV6において93±24μg/g大便、および77±14μg/gに増加した。
【0208】
(表12. 治験のアーム1を終了した被験者における個別のカルプロテクチンデータ(μg/g大便)。V1は2個の基礎値の平均である。V2およびV3は、IP2003−001服用時に見られたものである。V4は、21日間の休薬期間後のカルプロテクチン値である。V5およびV6は、ナプロキセン服用時に見られた。<17または<16と報告されたデータは15(最低検出レベルを示す)に変換された。)
【0209】
【表12−1】

【0210】
【表12−2】

治験時のアーム2被験者の便中カルプロテクチンデータを表13に示す。これらの被験者の基礎値1は27±6.4μg/g大便であった。V2およびV3におけるナプロキセン服用時の便中カルプロテクチン値は、それぞれ、93±32μg/g大便、および96±26μg/g大便に増加した。便中プロテクチン値は、休薬期後ほぼ基礎値1に減少し(32±5.9μg/g大便)、V4の、IP1003−001服用時にもこの値の周囲に留まった(39±7.8μg/g大便)。これらの被験者ではIP2003−001服用14日に若干の増加が認められた(64±30μg/g大便)。ただしこの値でもなお、治験のナプロキセン服用相時に観察されたものを下回っていたが、これは主に一人の被験者データによるものであった(#1517、図2参照)。被験者#1517を除外した、V6における被験者の便中カルプロテクチンの平均値は48±17μg/g大便であった。
【0211】
(表13. 治験のアーム2を終了した被験者における個別のカルプロテクチンデータ(μg/g大便)。V1は2個の基礎値の平均である。V2およびV3は、ナプロキセン服用時に見られたものである。V4は、21日間の休薬期間後のカルプロテクチン値である。V5およびV6は、IP2003−001服用時に見られた。<17または<16と報告されたデータは15(検出未満を示す)に変換された。)
【0212】
【表13−1】

【0213】
【表13−2】

各アーム毎の各投薬のデータを対合T−試験(VとVi+1)を用いて分析したところ、便中カルプロテクチンは、7日および14日のナプロキセン投薬において有意に(p<0.05)に増加することが示された。一方、IP2003−001の服用は、基礎値からの有意な差をもたらさなかった。基礎値1および基礎値2も有意に異ならなかった。プールしたデータのグラフを図2および3に示す。
【0214】
データを再見すると、ある被験者では、カルプロテクチン基礎レベルが参照範囲を超えていることが示された。ある文献は、これは、一次的な上部呼吸器感染(URI)、アルコール摂取、粘膜に影響を及ぼすその他の薬剤の服用、以前に検出されなかった消化器炎症の存在によるものであると示唆している(Tibble and Bjarnason、上記、2001;Meling et al.,上記、1996;Tibble et
al.,上記、1999)。従って、二つの基礎値が参照範囲を下回る(<50μg/g大便)被験者と、少なくとも一つの基礎値が参照範囲を超える(≧50μg/g大便)被験者とによって層化された。
【0215】
治験を完了した21人の被験者の内、15名は、二つの基礎値が参照範囲未満であった。図4と5に示すように、IP2003−001の7日および14日後には、それぞれ、30±4μg/g大便および40±11μg/g大便が示されるがいずれも有意差は認められなかった。このデータセットにおいて、ただ一人の被験者において、14日目にカルプロテクチンの著明な上昇が認められた。それとは対照的に、ナプロキセン服用後の便中カルプロテクチンは、7日および1日後に、それぞれ、76±19μg/g大便および60±10μg/g大便と有意に上昇した(図5においてデータは平均±標準偏差としてグラフ化されていることに注意)。
【0216】
治験を完了した21人の被験者の内6名は、少なくとも一つの基礎値が参照範囲を上回っていた。これらの被験者では、カルプロテクチンの基礎レベル(V1およびV4)は、74±19μg/g大便および77±20μg/g大便であった。図6および7に示すように、IP2003−001服用後の便中カルプロテクチンは、これらの被験者の基礎値同様、比較的安定しており、7日および14日値は、それぞれ、55±12μg/g大便および93±49μg/g大便であった。ただ一人の被験者は、4日目にカルプロテクチンの著明な上昇レベルを示した。このデータセットにおいて、IP2003−001服用後14日目カルプロテクチンレベルにおける上昇は、この被験者のデータが主な寄与因子であった。一方、前のグループで観察されたように、ナプロキセン投与後の便中カルプロテクチンは、7日目および14日目に、それぞれ、136±46μg/g大便および131±38μg/g大便に上昇した。ただしこの変化は有意では無かった(図7におけるデータは平均±標準偏差としてグラフ化されていることに注意)。
【0217】
最後に、7日および14日投薬データは、特定の投薬内では一致しているので、分析のために7日データと14日データをプールした。表14に示すように、基礎値の間には差は認められなかった。しかしながら、ナプロキセン投与後における便中カルプロテクチンは、基礎値から有意に上昇していた(89±11μg/g大便;p<0.05)。一方、IP2003−001投薬後の便中カルプロテクチン値は有意に上昇しなかった(40±8.2μg/g大便;有意では無い)。
【0218】
(表14. 治験被験者のカルプロテクチンのプールデータ(平均±標準偏差)。カッコ内の数字は、各状態におけるデータポイント数を示す。基礎値1は、V1基礎値全ての平均である。基礎値2は、休薬値全ての平均である。IP2003−001およびナプロキセンの7日および14日データは、本分析のためにそれぞれプールされた。*は、Wilcoxon/Kruskal−Wallis順位和試験によって基礎値と有意に異なるとされたデータである。)
【0219】
【表14】

要約−消化器炎症のマーカー、すなわち、便中カルプロテクチンによる評価を用いて、IP2003−01の消化器健康度に対する作用を調べた。このランダム化交差試験において、21人の健康な被験者が、IP2003−001(2錠を1日2回)、または、消化器炎症を起こし、便中カルプロテクチンの上昇を招くことが報告されている対照物質、ナプロキセン(500mg、1日2回)を14日間服用した。交差服用の間に21日間の休薬期間を設けたが、カルプロテクチンレベルにおいて、この二つの基礎値の間には有意差は観察されなかった。便中カルプロテクチン評価を、治験の各アームの投薬時の7日および14日に実行し、基礎値と比較した。
【0220】
IP2003−001の投薬では、7または14日後に有意な上昇は得られなかった。ただ二人の被験者だけが、IP2003−001の服用後に、カルプロテクチン値において著明な上昇を示した。一方、ナプロキセン服用は、被験者の50%以上において、7日および14日評価のいずれにおいても便中カルプロテクチンにおいて著明な上昇をもたらした。(注:ナプロキセン服用後に観察された増加は、500mg1日2回服用で7および14日後に報告された2倍増加−Meling等、上記、1996−とほぼ同じ桁の増加である)。
【0221】
カルプロテクチンは、消化器炎症のマーカーであるから、これらのデータは、IP2003−001は、標準的NSAIDと比べて、ほとんどあるいは全く消化器炎症をもたらさないことを示し、カルプロテクチンは、一般にNSAIDがもたらす潰瘍の危険度を持たないことを示唆する。
【0222】
(実施例14)
(AGS胃粘膜細胞モデルにおいてULTRAINFLAMX(登録商標)抗炎症性成分を試験する)
UltraInflamXは、肺、関節、および消化管の慢性的炎症状態治癒用の栄養学的サポートとして設計された、低アレルギー性、栄養強化、菜食者用飲用混合液である。UltraInflamXは、包括的な削ぎ落とし、またはダイエットプログラムの一部であると同時に、抗炎症性生活習慣プログラムに参加した患者のための栄養学的サポートとして使用が可能である。UltraInflamXは、慢性的使用を意図して設計されており、その成分のいくつかは抗炎症性を有しているので、非ステロイド性抗炎症化合物に特徴的な消化器毒性を誘発する成分が、これらの成分に見つかる可能性を評価するのは興味がある。この実験の目的は、UltrainflamXの複数の抗炎症性成分同士を、組み合わせて、および、個別に、最近開発されたたヒト胃粘膜細胞株アッセイを用いて、PGE生合成の抑制作用について調べることであった。
【0223】
試験材料は、UltraInflamXの、抗炎症性活性成分、クルクミン、ジンジャー根、ローズマリー抽出物とルチン、および、それぞれ、2:1:1:2の比で処方されたこれらの成分からなる複合体を含む。最低4種の濃度、50、5、0.5、および0.05μg試験材料/mLを用い、濃度当たり二つの複製について3回の独立実験を行い、AGS細胞におけるPGE抑制に関する用量−反応曲線を計算した。カルシウムイオノフォアA23187を用いてアラキドン酸放出を誘発し、AGS細胞を試験材料に暴露60分後に加えた。95%信頼区間を含む、抑制濃度中央値(IC50)を、3回の独立実験の平均値に基づいて計算した。試験成分の協調作用または拮抗作用を、結合示数(CI)パラメータによって定量した。これについては下記にさらに詳述する。
【0224】
試験材料および薬品−クルクミン、ジンジャー根、ローズマリー抽出物、およびルチンを含む、UltraInflamXの抗炎症性成分は、Metagenics(Gig Harbor、ワシントン州)から支給された。市販のUltraInflamXにおける比(それぞれ2:1:1:2)に処方されるこれらの材料の複合体もまたMetagenicsから供給された。
【0225】
PGE EIAキットはCayman Chemicals(アンアーバー、ミシガン州)から入手した。熱で不活性化した仔牛血清(FBS−HIカタログ#35−011CV)、および、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEMカタログ#10−013CV)はMediatech(Herndon、バージニア州)から購入した。IL−1β、アスピリン、および全ての標準薬品、別様に指示しない限り、全てSigma(セントルイス、ミズーリ州)から入手し、市販のものの内で最高純度のものとした。供給業者の詳細なリストは、付属の付録の、各標準的操作手順と共に提示される。
【0226】
細胞培養−AGSヒト胃粘膜細胞株(米国標準培養体保存施設、Manassas、バージニア州)を培養し、ATCCの推薦法に従って維持した。準備培養を行ったAGS細胞を、20%FBS、50単位のペニシリン/mL、50μgのストレプトマイシン/mLを添加したIMDM中で育成し、各実験前に対数期に維持した。PGEアッセイでは、96ウェルプレートにおいて、ウェル当たり200μL培養液に懸濁した、ウェル当たり約10個の細胞を撒いた。細胞を、80%集密度に達するまで育成し、試験薬剤を添加する前にIMDAにて3回洗浄した。試験材料は、FBSまたはペニシリン/ストレプトマイシン無添加のIMDA培養液200μLに溶解して加えた。試験材料の添加60分後、カルシウムイオノフォア添加によってアラキドン酸を誘発した。
【0227】
A23187のDMSO液。37℃におけるインキュベーションをさらに30分行った。50マイクロリットルの培養液を、PGE定量のためにサンプルした。
【0228】
PGEの定量−PGEの定量のためには、市販の、非放射性手法を用い(Caymen Chemical、アンアーバー、ミシガン州)、メーカーの推薦する手順にそのまま従った。要約すると、50μLの培養上清を、PGE標準サンプルの連続希釈液と一緒に、適当量のアセチルコリンエステラーゼ標識トレーサーおよびPGE抗血清と混ぜ、室温で18時間インキュベートした。その後、PGEアッセイ微量滴定プレートを空け、洗浄バッファーで洗った後に、アセチルコリンエステラーゼの基質を含む200μLのEllman試薬を加えた。反応を、穏やかな攪拌器において室温で1時間実行し、その後、415nmにおける吸収度をBio−Tek Instrument ELISAプレートリーダー(モデル#Elx800、Winooski、バーモント州)にて定量した。このアッセイに関するメーカーの仕様として、アッセイ間変動係数<10%、PGDとPGF2α間の交差反応の可能性1%未満、および、10−1000pg/mLにおける直線性が与えられた。PGE濃度は、mL当たりのPGEのピコグラムとして表した。
【0229】
細胞生存率−細胞生存率は目視によって評価した。いずれの試験材料についても試験した濃度において細胞生存率に影響を及ぼさなかった。
【0230】
計算−最低4種の濃度、50、5、0.5、および0.05μg試験材料/mLを用い、濃度当たり二つの複製について3回の独立実験を行い、CalcuSyn(BIOSOFT、Ferguson、ミズーリ州)を用い、用量−反応曲線、および95%信頼区間を含む抑制濃度中央値(IC50)を計算した。この統計ソフトウェアパッケージは、Chou and Talalyによって記載される中央作用法を用いて、複数の薬剤用量−作用計算を実行する(Chou,J.Theor.Biol.35:285−297(1972);Chou,J.Theor.Biol.59:253−276(1976);Chou and Talalay,J.Biol.Chem.252:6438−6442(1977);Chou and Talalay,Eur.J.Biochem.115:207−216(1981);Chou and Talalay,Adv.Enzyme Regul.22:27−55(1984))。各用量における抑制割合を、3回の独立実験において平均し、それを用いて用量−反応曲線を計算し、抑制濃度の中央値を記録した。全ての実験においてアスピリンを陽性コントロールとして用いた。全ての試験材料について、0.95以下の決定係数を持つ完全な用量−反応曲線が得られた。
【0231】
試験成分の協調作用または拮抗作用は、結合示数(CI)パラメータを用いて定量した。Chou−TalalayのCIは、複数の薬剤−作用に基づき、酵素速度論モデルから導かれる(Chou、上記、1972;Chou、上記、1976;Chou and
Talalay、上記、1977;Chou and Talalay、上記、1981;Chou and Talaly,上記、1984)。この方程式は、協調作用または拮抗作用よりはむしろ加重作用のみを決定する。一方、協調作用は、予期される加重作用を上回るもの、拮抗作用は、予期される加重作用を下回るものと定義される。同じ作用様式を持つが互いに排除的な化合物同士において、または、互いに排除的ではないが、完全に独立した作用様式を持つ薬剤同士において、加重作用をCI=1と表すことによって、下記の関係式が得られる。すなわち、CI<1、=1、および>1で、それぞれ、協調作用、加重性、および、拮抗作用を示す。さらに、複合体の抑制濃度の予期される中央値の推定を、関係式:1/IC50=A/IC50A+B/IC50B+...+N/IC50Nを用いて行った。式中、A,BおよびNは、各成分の相対的割合であり、A+B+...+N=1である。
【0232】
結果−UltraInflamX成分のCOX−2抑制活性−AGS細胞モデルにおける試験材料によるPGE合成抑制濃度の中央値を表15に示す。陽性コントロールであるアスピリンのIC50は1.2μg/mL(95%信頼区間=0.37−4.1)であり、AGS細胞において以前に報告された値A23187における2.9μg/mLと一致していた。UltraInflamXの抗炎症成分については、クルクミンとジンジャー根が、最低のIC50を示し、それぞれ、2.9と4.1μg/mLであった。反応スペクトラムの他の末端では、ルチンとローズマリー抽出物が、AGS細胞においてPGE合成に対する抑制性がもっとも低く、それぞれ、IC50は20と43μg/mLであった。
【0233】
(表15. AGS細胞モデルにおけるUltraInflamX成分の、PGE合成に対する抑制濃度中央値(IC50))
【0234】
【表15】

+数値は、3回の独立アッセイの平均として計算したものである。AGS細胞をプレートに撒いた後80%集密度に達するまで育成した。細胞を洗浄し、試験材料を、A23187による処理の60分前に加えた。30分後、培養液を取り出し、PGE定量に用いた。
【0235】
実験はまた、4種の活性成分からなる複合体についても行われた。複合体については、全体サンプル(9種の成分)の重量に基づいてIC50について観察値と期待値が得られた、観察値14μg/mL、期待値11μg/mL。複合活性成分については、複合サンプルにおける4種の活性成分の重量%(45.3%)に基づいて観察値と期待値が得られた、観察値6.5μg/mL、期待値5.7μg/mLである。
【0236】
抗炎症性成分からなる複合体は、14μg/mLのIC50を示した。50、75および90パーセント抑制において計算した複合処方のCIは7.3、127、および2250であった(表16)。これらの高いCI値は、成分同士の間における極めて強力な拮抗作用を示す。このような拮抗作用は非常に望ましい。なぜならそれは、個々の成分に比べて、複合体について期待される消化器毒性の方が低下することを示すからである。各成分のIC50値と、それら成分の相対的量に基づいて、複合体の期待IC50は5.7μg/mLと推定された。この予測値は、複合体の7.0μg/mLの95%信頼区間の最低推定値を下回るが、これは、拮抗作用計算およびCI値を支持するものである(図18参照)。
【0237】
(表16. クルクミン、ジンジャー根、ローズマリー抽出物、ルチン、および、2:1:1:2の比で含むUltraInflamX複合体の用量−反応曲線について計算した結合示数(CI))
【0238】
【表16】

CIは、ヒトAGS胃粘膜細胞におけるPGE生合成に対する50、75、および90%抑制について計算した。
【0239】
2.9μg/mLのIC50を持つクルクミン、および、4.1μg/mLのIC50を持つジンジャー根は、AGS胃粘膜細胞モデルにおけるPGE合成に対する抑制作用においてアスピリンと近似していた。ルチンとローズマリー抽出物は、PGE合成に対する抑制がもっとも低く、それぞれ、20および43μg/mLであった。この成分同士の結合は、例外的に強力な拮抗作用を示すが、これは、組成物の方が、その成分に対して、期待される消化器毒性が低下することを示す。
【0240】
複合体として、UltraInflamXの抗炎症成分は、14μg/mLのAGS IC50を持つが、比較的低い胃毒性を持つものと分類されてもよいかも知れない。しかし全体的に見てみると、この値は、AGSモデルに基づいて推定した場合胃毒性の可能性を表す。なぜなら、この値は、アスピリンよりも12倍低く、ロフェコキシブよりも2.5倍低いだけだからである。
【0241】
各成分のIC50値と、それらの成分の相対的量に基づいて、複合体のIC50期待値は5.7μg/mLと推定された。50、75および90パーセント抑制において計算した複合処方のCIは7.3、127、および2250であった。これらの高いCI値は、成分同士の間における極めて強力な拮抗作用を示す。このような拮抗作用は非常に望ましい。なぜならそれは、個々の成分に比べて、複合体について期待される消化器毒性の方が低下することを示すからである。
【0242】
試験材料の成分を表17に示す。
【0243】
(表17. 複合試験材料における特に強調される成分)
【0244】
【表17】

+抗炎症成分と予想される。
【0245】
複合体サンプルは、全部で9種の成分からなる、試験材料の総計重量に基づいて14μg/mLのIC50観察値を示した。この値は、9種全ての成分の結合について期待されるIC50の推定値11μg/mLよりも大きい。IC50を、4種の、個別に試験した成分だけに基づいて計算すると、観察値は6.5μg/mLであるのに対して、IC50の期待値は5.7μg/mLであった(図19参照)。
【0246】
複合体の結合示数(CI)計算値を表18に示す。
【0247】
(表18. 完全複合材料(9種の成分)と、4種の、抗炎症作用を持つと予想される成分、クルクミン、ジンジャー根、ローズマリー抽出物、およびルチンからなる複合体の用量−反応曲線について計算した結合示数(CI))
【0248】
【表18】

CIは、ヒトAGS胃粘膜細胞におけるPGE生合成に対する50、75、および90%抑制について計算した。両方の計算組において、CI値は、IC50の開始時には協調作用を示すが、用量を増すにつれて急激に増加する。
【0249】
表19は、天然の抗炎症剤における香草の量的割合を示す。
【0250】
(表19. 天然産物による抗炎症剤における香草の量的割合)
【0251】
【表19】

+下記に挙げる賦形剤成分を含めた完全処方(1267mg)におけるサプリメントの割合を示す。
++NA=活性無し。カッコ内の数値は、IC50計算値の95%信頼区間である。
+++不活性成分、ジヒドロリン酸カルシウム(456mg)、ステアリン酸マグネシウム(75mg)、カボシル(5mg)、シロイド(245mg)、およびステアリン酸(149mg)も含んでいた。
【0252】
市販の抗炎症製剤のスパイス成分について、RAW264.7細胞系において、COX1またはCOX2活性を定量する条件下で、個別に、また、組み合わせた状態で試験した。図20に示すように、比較的高い胃毒性を持つバー(COX1を促進)はゼロの左側に現れ、胃毒性が比較的低いバー(COX2活性を促進)は右に現れる。これらのデータから、カイエンペッパー、ボスウェリン、およびジンジャーのようなペッパーは、上の分割的併用(インフラボノイドIC)で見られるものよりも、個別に予測されるCOX1活性の方が予想外に高いことが示され、また、結合作用は、各種スパイス成分の間にも存在し、COX2選択性を増し、胃毒性に対する予測値を低くすることが実証される。
【0253】
表20および21は、RIAA:ローズマリー併用において予想される胃毒性が低下することを示す。
【0254】
(表20. RAWおよびAGS細胞モデルにおける、選択された天然成分の、PGE合成に対する抑制濃度中央値(IC50))
【0255】
【表20】

+数値は、3回の独立アッセイの平均として計算したものである。AGS細胞をプレートに撒いた後80%集密度に達するまで育成した。細胞を洗浄し、試験材料を、A23187による処理の60分前に加えた。30分後、培養液を取り出し、PGE定量に用いた。
【0256】
(表21. AGS細胞モデルにおける、RIAAとローズマリーの選択された併用剤の、PGE合成に対する抑制濃度中央値(IC50))
【0257】
【表21】

+数値は、3回の独立アッセイの平均として計算したものである。AGS細胞をプレートに撒いた後80%集密度に達するまで育成した。細胞を洗浄し、試験材料を、A23187による処理の60分前に加えた。30分後、培養液を取り出し、PGE定量に用いた。
++RAW細胞における相互作用は仮定せず、個々の成分の調和平均に基づいて推定した。
【0258】
本出願を通じて、各種出版物を参照した。これらの出版物の開示は、その全体を、参照することにより本出願に含める。これは、本発明の関わる従来技術の状態をより完全に記載するためである。本発明は、前述の実施例に基づいて説明されてきたけれども、本発明の精神から逸脱することなく様々の修正の実行が可能であることを理解しなければならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非ステロイド性抗炎症化合物による治療を受けている個体において、非ステロイド性抗炎症化合物に伴う胃毒性を緩和するための組成物であって、前記組成物は、還元型イソα酸、テトラヒドロイソα酸、およびヘキサヒドロイソα酸からなる群より選択される化合物を含有し、ここで、前記組成物は、前記個体に対する投与に適している、組成物。
【請求項2】
胃潰瘍の徴候または症状を呈する個体において、胃潰瘍を治療、予防、または寛解するための組成物であって、前記組成物は、還元型イソα酸、テトラヒドロイソα酸、およびヘキサヒドロイソα酸からなる群より選択される化合物を含有し、ここで、前記組成物は、前記個体に対する投与に適している、組成物。
【請求項3】
前記胃潰瘍は、食物、香草、細菌、真菌、または薬剤によって誘発されたものである、請求項2の組成物。
【請求項4】
還元型イソα酸、テトラヒドロイソα酸、およびヘキサヒドロイソα酸からなる群より選択される前記化合物は、ジヒドロ−イソフムロン、ジヒドロ−イソコフムロン、ジヒドロ−イソアドフムロン、テトラヒドロ−イソフムロン、テトラヒドロ−イソコフムロン、テトラヒドロ−イソアドフムロン、ヘキサヒドロ−イソ フムロン、ヘキサヒドロ−イソコフムロン、およびヘキサヒドロ−イソアドフムロンからなる群より選択される化合物を含む、請求項1および2のいずれか1項の組成物。
【請求項5】
前記組成物は、0.5〜10000mgの、還元型イソα酸、テトラヒドロイソα酸、およびヘキサヒドロイソα酸からなる群より選択される前記化合物を含む、請求項1および2のいずれか1項の組成物。
【請求項6】
前記組成物は、50〜7500mgの、還元型イソα酸、テトラヒドロイソα酸、およびヘキサヒドロイソα酸からなる群より選択される前記化合物を含む、請求項1および2のいずれか1項の組成物。
【請求項7】
前記組成物は、0.001〜10重量パーセントの、還元型イソα酸、テトラヒドロイソα酸、およびヘキサヒドロイソα酸からなる群より選択される前記化合物を含む、請求項1および2のいずれか1項の組成物。
【請求項8】
前記組成物は、0.1〜1重量パーセントの、還元型イソα酸、テトラヒドロイソα酸、およびヘキサヒドロイソα酸からなる群より選択される前記化合物を含む、請求項1および2のいずれか1項の組成物。
【請求項9】
前記非ステロイド性抗炎症化合物は、サリチル酸、サリチル酸メチル、ジフルニサル、サルサラート、オルサラジン、スルファサラジン、アセトアニリド、アセトアミノフェン、フェナセチン、メフェナム酸、メクロフェナム酸ナトリウム、トルメチン、ケトロラク、ジクロフェナク、イブプロフェン、ナプロキセン、ダ プロキセンナトリウム、フェノプロフェン、ケトプロフェン、フルルビオプロフェン、オキサプロジン、ピロキシカム、メロキシカム、テノキシカム、アムピロキシカム、ドロキシカム、ピボキシカム、フェニルブタゾン、オキシフェンブタゾン、アニトピリン、アミノピリン、ジピロン、セレコキシブ、ロフェコキシ ブ、ナブメトン、アパゾン、ニメンスリド、インドメタシン、スリンダク、およびエトドラクからなる群より選択される、請求項1の組成物。
【請求項10】
前記組成物は、製薬学的に受容可能なキャリアをさらに含む、請求項1および2のいずれか1項の組成物。
【請求項11】
前記組成物は、経口的、局所的、非経口的、または直腸経由の投与用に処方される、請求項1および2のいずれか1項の組成物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate


【公開番号】特開2011−126919(P2011−126919A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−71217(P2011−71217)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【分割の表示】特願2006−533298(P2006−533298)の分割
【原出願日】平成16年5月21日(2004.5.21)
【出願人】(503465937)メタプロテオミクス, エルエルシー (19)
【Fターム(参考)】