説明

炎症イメージング用の新規な混合配位子コア/シェル型酸化鉄ナノ粒子

(1)無機ナノ粒子コア、(2)無機ナノ粒子コアに結合した、第1の鎖長を有する第1の配位子であって、電荷を有する第1の配位子、及び(3)無機ナノ粒子コアに結合した、第2の鎖長を有する第2の配位子であって、親水性である第2の配位子を含んでなるナノ構造体が提供される。第2の鎖長が第1の鎖長より長い結果、第1の配位子のモルパーセント量の変化がナノ構造体の流体力学的直径を実質的に変化させない。これらのナノ構造体の製造方法並びに炎症状態の磁気共鳴イメージング及び管理におけるそれの使用も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ構造体、ナノ構造体の製造方法、及び哺乳動物における炎症状態のイメージング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージング用のナノ粒子系イメージング剤を開発する際に繰り返して起こる問題は、総合ナノ粒子サイズに顕著な影響を及ぼすことなしにMR活性ナノ粒子の表面電荷を制御することである。ナノ粒子は非常に大きい表面エネルギーを有するのが通例であり、その結果として極めて容易に凝集体を形成する。表面安定化配位子の不存在下で製造されたナノ粒子は、溶液中で容易に凝集体を形成する。この凝集体は、ナノ粒子の表面に配位子を結合することで防止できる。これらの配位子は、立体反発又は静電反発によって凝集を防止できる。
【0003】
通例、ナノ粒子の表面電荷は、ナノ粒子の表面に結合する安定化配位子が異なれば変化し得る。異なる帯電安定化配位子は異なる長さを有することが多く、その結果として、配位子の違いはナノ粒子の総合サイズに影響を及ぼす。
【0004】
公知のナノ粒子系薬剤は、デキストラン、デンプン又は炭水化物のような生体適合性コーティングによって安定化された酸化鉄コアを含んでいた。通例、酸化鉄コアの直径は約3〜約10nmの範囲内にあり、コア及びコーティングを合わせた直径は約10〜約100nmの範囲内にある。Feridex.RTM.及びResovist.RTM.のような公知ナノ構造体は、負に帯電していて短い血中滞留時間(約1時間未満のヒト血中半減期)を有し、取込みが遅い組織へのアクセスが妨げられる。したがって、短い血中滞留時間を有する薬剤は、かかる組織及び内皮下腔(例えば、血管内膜)のイメージングのためにはあまり適さない。既存の超常磁性粒子造影剤もまた、広いサイズ分布、アグロメレーション、不安定性及び毒性のような様々な不利益を有している。
【0005】
デキストランコーティング及び15〜30nmの直径を有するCombidex.RTM.は、各種の動物疾患モデル及びヒトにおける磁気共鳴イメージングに関して評価されている。小さいサイズを有するので、Combidex.RTM.は長い血中滞留時間(24〜36時間のヒト血中半減期)を有している。
【0006】
炎症組織のイメージングで使用するために炎症応答細胞によって効率よくインターナライズ(internalize)されかつ炎症部位にトラフィック(traffick)され得る、適当な溶解性、生体適合性、サイズ及びコーティング特性をもったナノ構造体に対するニーズが今なお存在している。インビボ用途のために設計されたナノ粒子の生体分布特性がナノ粒子の総合サイズ及び表面電荷によって強く影響を受けることを考えれば、ナノ粒子のサイズを変化させずにナノ粒子の表面電荷を変化させ得ることは望ましい。これは、様々な表面電荷をもった同一サイズのナノ粒子によれば、ナノ粒子の生体分布に対する表面電荷の効果をサイズ効果からデカップル(decouple)することができるからである。
【発明の概要】
【0007】
若干の態様では、本明細書中に開示される実施形態によれば、(1)無機ナノ粒子コア、(2)無機ナノ粒子コアに結合した、第1の鎖長を有する第1の配位子であって、電荷を有する第1の配位子、及び(3)無機ナノ粒子コアに結合した、第2の鎖長を有する第2の配位子であって、親水性である第2の配位子を含んでなるナノ構造体が提供される。第2の鎖長が第1の鎖長より長い結果、第1の配位子のモルパーセント量の変化がナノ構造体の流体力学的直径を実質的に変化させない。
【0008】
他の態様では、本明細書中に開示される実施形態によれば、これらのナノ構造体の製造方法が提供される。本方法は、(1)無機ナノ粒子コアを、電荷を有する第1の配位子と反応させる段階であって、第1の配位子はカルボキシレート、スルホネート、ホスフェート及びトリアルコキシシランからなる群から選択される官能基を介してナノ粒子コアに結合する段階、並びに(2)無機ナノ粒子コアを親水性の第2の配位子と反応させる段階であって、第2の配位子はカルボキシレート、スルホネート、ホスフェート及びトリアルコキシシランから選択される官能基を介して無機ナノ粒子コアに結合する段階を含んでなる。第1の配位子+第2の配位子と無機ナノ粒子コアとのモル比は約1:1〜約20:1である。
【0009】
さらに他の態様では、本明細書中に開示される実施形態によれば、哺乳動物における炎症状態のイメージング方法が提供される。本方法は、哺乳動物において上述のナノ構造体をインビボ又はエクスビボの炎症細胞中に導入する段階、炎症細胞を炎症組織に移行させる段階、及び磁気共鳴を用いて炎症組織のイメージングを行う段階を含んでなる。
【0010】
有利には、本明細書中に開示されるナノ構造体は、炎症状態の可視化及び管理に際して使用できる磁気共鳴イメージング剤として有用であり得る。
【0011】
上述の記載は、以下に示す本発明の詳細な説明が一層よく理解できるようにするため、本発明の特徴をむしろ大まかに概説したものである。本発明の追加の特徴及び利点は以下に記載するが、これらは本発明の特許請求の範囲の主題をなしている。
【0012】
本発明及びその利点を一層完全に理解するためには、添付の図面を参照しながら以下の説明を考察されたい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、シラン結合した短い帯電配位子L1及び長い親水性配位子L2を有する磁気共鳴(MR)イメージング剤の一般構造を示している。
【図2】図2は、正に帯電した配位子を有する例示的なMRイメージング剤を示している。
【図3】図3は、負に帯電した配位子を有する例示的なMRイメージング剤を示している。
【図4】図4A〜4Fは、注射前(A及びB)、PEG−SA剤注射から24時間後(C及びD)並びにPEG−AEPTES剤注射から24時間後(E及びF)のT2*重み付きMR画像(A、C及びE)及びT1重み付きMR画像を示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の説明では、本発明の実施形態の完全な理解を可能にするため、特定の数量、サイズなどの具体的な細部が記載される。しかし、本発明がかかる具体的な細部なしでも実施できることは当業者にとって自明であろう。多くの場合、かかる考慮事項などに関する細部は省略されている。これは、かかる細部が本発明の完全な理解を得るためには不必要であると共に、関連分野の当業者の技術の範囲内にあるからである。
【0015】
図面全般について述べれば、図示は本発明の特定の実施形態を説明するためのものであって、本発明をそれに限定する意図はないことが理解されよう。
【0016】
若干の実施形態では、本開示はイメージング剤として有用であり得るナノ構造化材料に関する。図1を参照すれば、かかる目的のためのナノ構造体100は無機ナノ粒子コア110を含んでいる。無機ナノ粒子コアは、一般に、磁気共鳴(MR)活性実在物(即ち、MR用信号源)として役立ち得ると共に、ナノ構造体100の総合電荷/サイズ/極性に影響を与える化学的修飾のためのプラットホームとして役立ち得る任意の材料である。ナノ構造体100の電荷及びサイズは、一般に無機ナノ粒子コア110に結合される配位子によって左右される。これらの配位子は、最小限として第1の配位子120及び第2の配位子130を含んでいる。第1の配位子120は第1の鎖長を有し、無機ナノ粒子コア110に共有結合し得る。第1の配位子110は、正又は負に帯電したものであり得る。第2の配位子130は第2の鎖長を有し、無機ナノ粒子コア110に共有結合し得る。第2の配位子130は親水性であり得ると共に、第2の鎖長は第1の鎖長より長い結果、第1の配位子120のモルパーセント量の変化がナノ構造体100の流体力学的直径(DH)140を実質的に変化させない。このように、一方の長さが他方の長さから十分に異なる少なくとも2種の配位子を組み込むことにより、流体力学的直径140を実質的に変化させずに帯電配位子の量を変化させることができる。図1では、第1の配位子120及び第2の配位子130はシラン部分を介して結合しているように示されているが、無機ナノ粒子コア110に対するシラン結合は、以下に一層詳しく記載されるように1つの例示的な実施形態にすぎない。
【0017】
本明細書中に使用される用語の大部分は当業者にとって認識し得るものであろうが、それでも本開示の理解を助けるために以下の定義を示す。しかし、明確に定義されない場合、用語は当業者によって現在容認されている意味を有するものと解釈すべきであることを理解すべきである。
【0018】
本明細書中で定義される「ナノスケール」とは、一般に1μm未満の寸法をいう。
【0019】
本明細書中で定義される「ナノ構造体」とは、一般に少なくとも1つの寸法がナノスケールである構造体をいう。特に、本明細書中に開示されるナノ構造体は磁気共鳴イメージングにおいて有用であり得る。
【0020】
本明細書中で使用される「ζ電位」、「表面電位」及び「表面電荷」という用語並びに「ζ」という略語は、粒子の表面付近における静電ポテンシャルの測定値をいう。ζ電位は溶媒及び溶媒のイオン強度によって影響を受けるので、本明細書中に報告されるすべてのζ電位値は、特記しない限り、10mM NaCl水溶液を溶媒として用いて測定されている。したがって、本発明の陽イオン性ナノ構造体は約0〜約+60mVのζ電位を示す。
【0021】
本明細書中で使用される「鎖長」とは、無機ナノ粒子コアに結合された配位子の最長原子鎖をいう。
【0022】
本明細書中で使用される「流体力学的直径」及び「流体力学的サイズ」という用語並びに「DH」という略語は、動的光散乱(DLS)によって測定した場合にナノ粒子の拡散係数に等しい拡散係数を有する球状粒子の直径をいう。DH値は、測定すべき薬剤を分散させた媒質に応じて変化し得る。したがって、特記しない限り、本明細書中に記載されるDH値は、薬剤をmM NaCl水溶液中に分散させたDLSを用いて測定された。
【0023】
無機ナノ粒子コア110は、磁気共鳴信号を与えると共に、ナノ構造体のサイズ及び電荷を変化させるための化学的修飾を施すことができる任意の材料であり得る。かかる構造体には、常磁性材料、超常磁性材料などがある。超常磁性無機ナノ粒子コアには、(1)酸化鉄(例えば、ヘマタイト、フェライト及びマグネタイト)、(2)一般式MFe24(式中、Mは特に限定されないがマンガン、コバルト、銅、ニッケル及びマグネシウムをはじめとする金属である。)を有する混合スピネル型フェライト、並びに(3)これらの組合せがある。若干の実施形態では、無機ナノ粒子コアは超常磁性酸化鉄(SPIO)薬剤を含んでいる。ナノ構造体は、一般式[Fe2+3]x[Fe2+3(M2+O)]1-x(式中、1≧x≧0である。)を有する超常磁性酸化鉄結晶質構造体を含み得る。M2+は、鉄、マンガン、ニッケル、コバルト、マグネシウム、銅又はこれらの組合せのような二価金属イオンであり得る。金属イオン(M2+)が第一鉄イオン(Fe2+)であって、x=0の場合、ナノ構造体はマグネタイト(Fe34)であり、x=1の場合、ナノ構造体はマグヘマイト(Fe23、γ−Fe23)である。
【0024】
一般に超常磁性は、不対スピンの結晶含有領域が磁区といわれる熱力学的に独立した単一ドメイン粒子と見なし得る程度に大きい場合に生じる。これらの磁区は、それの個々の不対電子の和より大きい正味の磁気双極子を示す。磁場が印加されていなければ、すべての磁区がランダムに配向していて正味の磁化はない。外部磁場の印加はすべての磁区の双極子モーメントを再配向させ、その結果として正味の磁気モーメントが生じる。若干の実施形態では、ナノ構造体は透過型電子顕微鏡(TEM)分析で示されるようにスピネル型結晶構造を示す。
【0025】
無機ナノ粒子コアは、一実施形態では約1〜約100nm、別の実施形態では約1〜約10nmの範囲内の直径を有する概して球状の形状を有し得る。無機ナノ粒子コアに関しては、完全な球状の幾何学的形状からはずれる不規則性が通例存在することは当業者に認められている。
【0026】
様々な実施形態に従えば、無機ナノ粒子コアに結合した配位子は少なくとも、電荷を有する第1の配位子及び帯電していないが一般に親水性を有する第2の配位子を含んでいる。若干の実施形態では、かかる親水性配位子は構造体全体に生体適合性を付与すべきである。生体適合性を付与し得る化学構造の例には、特に限定されないが、PEG誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリL−リシンなどがある。生体適合性は、一般に水への溶解性並びに非毒性を含んでいる。
【0027】
第2の親水性配位子は、帯電配位子の量の変化がナノ構造体の総合サイズ(本明細書中では流体力学的直径と表現される)を顕著に変化させないように、第1の帯電配位子より長い鎖長を有するべきである。これらのイメージング剤の生体分布を効果的に調査するため、そのサイズを顕著に変化させずにナノ構造体全体の電荷を変化させ得ることが望ましい。
【0028】
第1の配位子は、例えばカルボキシレート、スルホネート、ホスフェート及びシランを含む各種の官能基によって無機ナノ粒子コアに結合することができる。図1〜3は、シラン化学による無機ナノ粒子コアへの配位子結合の例を示している。与えられた無機ナノ粒子コアの官能基と係合する他の共有結合モチーフは、当業者には容易に認められよう。例えば、無機ナノ粒子コア上のペンダントOH基に関しては、スルフィネート、スルフィット、ホスフィネート、ホスホネート、チオスルフェート、さらにはエーテル結合も可能である。無機ナノ粒子コアに結合する官能基及び配位子の官能性末端(即ち、帯電基又は親水基)は、2つの部分を連結する介在基を介して連結できる。介在基の構造は実質的に変化し得るが、当業者には、ナノ構造体の総合特性が悪影響を受けないようにかかる結合基について最小のサイズを使用することの利益が理解されよう。
【0029】
若干の実施形態では、第1の配位子は負に帯電していてよい。例えば、下記式Iの化合物から導かれる第1の配位子を用いて、図2に示されるナノ構造体200を生み出すことができる。
【0030】
【化1】

【0031】
シランIを結合し、次いで無水物部分を加水分解すれば、負に帯電した第1の配位子220のジカルボキシレート構造が得られる。ナノ構造体200は、PEG部分を有する第2の配位子230を導入することで完成する。配位子の結合順序は重要でなかろう。例えば、第1の配位子220及び第2の配位子230は任意の順序で無機ナノ粒子コア210に結合でき、さらには同時に導入することもできる。
【0032】
第1の配位子は正に帯電していてよい。例えば、下記式IIの化合物から導かれる第1の配位子を用いて、図3に示されるナノ構造体300を生み出すことができる。
【0033】
【化2】

【0034】
シランIIを結合し、続いてアミノ官能基をプロトン付加すれば、正に帯電した第1の配位子320が得られる。ナノ構造体300は、PEG部分を有する第2の配位子330を導入することで完成する。この場合にも、配位子の結合順序は重要でなかろう。例えば、第1の配位子320及び第2の配位子330は任意の順序で無機ナノ粒子コア310に結合でき、さらには同時に導入することもできる。
【0035】
若干の実施形態では、第2の配位子はPEGポリマーを含んでいる。PEGポリマーは、一般に約500〜約5000ダルトンの範囲内の分子量を有する。第2の配位子の一部として有用であると証明できる他の他のホモポリマー及びコポリマーには、ポリビニルピロリドン、ポリL−リシンなどがある。
【0036】
第1の配位子の量及び電荷タイプを変化させることで、約−50mV乃至約+50mVの範囲内の非ゼロ表面電荷をナノ構造体上に導入できる。若干の実施形態では、表面電荷は約−25mV乃至約+25mVの範囲内の非ゼロ表面電荷を有する。他の実施形態では、表面電荷は約−5mV乃至約−15mVの範囲内にあり、さらに他の実施形態では、表面電荷は約+5mV乃至約+15mVの範囲内にある。当業者には、標的化すべき組織タイプ、血中半減期、細胞取込み速度及びクリアランス経路のような因子に応じて表面電荷を調整し得ることの価値が理解されよう。
【0037】
本開示は、上述したナノ構造体の製造方法を提供する。かかる方法は、一般に、無機ナノ粒子コアを、カルボキシレート、スルホネート、ホスフェート又はトリアルコキシシラン結合基を介して電荷を有する第1の配位子と反応させる段階、及びナノ粒子コアを同様な結合基(同じ結合基である必要はない)を介して親水性の第2の配位子と反応させる段階を含んでいる。配位子の導入の順序は重要でなく、さらには名目上同時に導入することもできる。第1の配位子+第2の配位子と無機ナノ粒子コアとのモル比は、約1:1〜約20:1の範囲内にあり得る。モル比は標的化表面電位及び最終ナノ構造体のための用途に依存する。通例、無機ナノ粒子コアは超常磁性酸化鉄である。
【0038】
表面電荷が望ましくは負である場合、導入される第1の配位子は下記式Iの構造から導くことができる。
【0039】
【化3】

【0040】
ナノ構造体の表面電荷が望ましくは正である場合、導入される第1の配位子は下記式IIの構造から導くことができる。
【0041】
【化4】

【0042】
親水基を有する第2の配位子は、例えば下記式IIIの構造によって導入することができる。
【0043】
【化5】

【0044】
最後に、本開示は、哺乳動物における炎症状態のイメージング方法であって、哺乳動物において上述のナノ構造体をインビボ又はエクスビボの炎症細胞中に導入する段階を含む方法も提供する。かかる方法は、炎症細胞を炎症組織に移行させる段階、及び磁気共鳴を用いて炎症組織のイメージングを行う段階を含んでいる。可視化方法と共に、炎症状態の管理を統合することもできる。
【0045】
本明細書中に記載されるナノ構造体は、起こり得る毒性を最小限に抑えるため、生理学的に許容されるキャリヤー中に分散させることができる。即ち、ナノ構造体は約6〜約8のpHを有する生体適合性溶液中に分散させることができる。若干の実施形態では、ナノ構造体は約7〜約7.4のpHを有する生体適合性溶液中に分散させる。他の実施形態では、ナノ構造体は約7.4のpHを有する生体適合性溶液中に分散させる。
【0046】
ナノ構造体は、化合物を水性媒質中に懸濁又は溶解するために製薬業界で常用されている添加剤と混合することができ、次いで懸濁液又は溶液を当業界で公知の技法によって滅菌できる。ナノ構造体又はその薬学的に許容される塩は、選択された投与経路に適合した各種の形態で(ヒト被験体を含む)被験体に投与できる。即ち、ナノ構造体は、局所適用(即ち、組織又は粘膜への投与)、静脈内注射、筋肉内注射、皮内注射及び/又は皮下注射によって導入できる。注射のために適する形態には、無菌水溶液又は水性分散液、並びに無菌注射用溶液、分散液、リポソーム製剤又はエマルジョン製剤を調製するための無菌粉末がある。いずれの場合にも、形態は無菌であり、注射器による投与を可能にする程度の流動性を有するべきである。吸入用途のために適する形態には、無菌エアゾル中に分散させたナノ構造体がある。局所投与のために適する形態には、クリーム、ローション、軟膏などがある。
【0047】
若干の実施形態では、好ましい量のナノ構造体を被験体に簡便に送達しかつ所望形態の容器にパッケージするため、ナノ構造体は濃縮される。かくして、若干の実施形態では、ナノ構造体は生理学的に許容される溶液中に分散させ、薬剤のFe含有量として被験体の体重1kg当たり約0.1〜約50mg(即ち、約0.1〜約50mg Fe/kg bw)の濃度でナノ構造体を投与することを容易にする容器内に小分けされる。他の実施形態では、ナノ構造体は、約0.5〜約2.5mg Fe/kg bwの濃度でナノ構造体を投与することを容易にするようにしてパッケージされる。
【0048】
若干の実施形態では、開示されるナノ構造体は、局所適用、血管内注射、筋肉内注射又は間質内注射を含む様々な方法によって被験体に直接投与することができる。若干の実施形態では、約0.1〜約50mg Fe/kgのナノ構造体が被験体に投与される。他の実施形態では、約0.5〜約2.5mg Fe/kgの薬剤が被験体に投与される。同様に、開示されるナノ構造体を含む炎症応答細胞を、血管内注射、筋肉内注射又は間質内注射を含む様々な方法によって被験体に投与することもできる。
【0049】
若干の実施形態では、ナノ構造体又はナノ構造体を含む炎症応答細胞を投与してから約3時間後又はそれ以内に標的組織のイメージングが行われる。別の実施形態では、ナノ構造体又はナノ構造体を含む炎症応答細胞を被験体に投与してから約24時間後又はそれ以内に標的組織のイメージングが行われる。他の実施形態では、ナノ構造体又はナノ構造体を含む炎症応答細胞を被験体に投与してから約5日後又はそれ以内に標的組織のイメージングが行われる。
【0050】
別の一連の実施形態では、本発明は、ナノ構造体を用いて炎症応答細胞の浸潤及び蓄積に関連する状態のイメージング方法を提供する。ナノ構造体をエクスビボの炎症応答細胞中に導入し、続いて被験体中に導入することができる。即ち、炎症応答細胞を被験体から抜き取り、ナノ構造体を炎症応答細胞中に導入し、ナノ構造体を含む炎症応答細胞を被験体に投与した後にイメージングを行う。ナノ構造体を炎症応答細胞中に導入する段階は、任意には、例えば磁気ビーズ、密度剤及び/又は遠心を用いて炎症応答細胞を分離する段階を含み得る。特定の実施形態では、炎症応答細胞は、血液中を循環する単球、組織中のマクロファージ細胞、樹枝状細胞(DC)、多核単球(PNM)、好酸球、好中球及びT細胞からなる。
【0051】
炎症応答細胞の浸潤及び蓄積に関連する状態の管理方法は、被験体を処置して炎症を低減させる前、その後又はその前後に標的組織のイメージングを行うことを含み得る。かくして、炎症応答細胞の浸潤及び蓄積に関連する状態の開示管理方法は、(a)標的組織のイメージングを行って炎症状態に関する基線情報又は診断情報を得る段階、(b)被験体を処置する段階、及び(c)被験体のイメージングを1回以上行って炎症状態に関する追加の情報を得る段階を含み得る。医療専門家は、最初に炎症組織の特定決定を行い又は事後に炎症組織を評価するための他の技法に頼ることで、処置の前後に被験体のイメージングを行わないことを選択できる。かくして、代替実施形態では、炎症応答細胞の浸潤及び蓄積に関連する状態の管理方法は、磁気共鳴以外の技法によって同定された炎症状態を処置する段階、及び処置に続いて標的組織のイメージングを行う段階を含んでいる。同様に、別の代替実施形態では、炎症応答細胞の浸潤及び蓄積に関連する状態の開示管理方法は、被験体又は標的組織のイメージングを行って炎症状態に関する情報を得る段階、及び続いて標的組織の再イメージングを行うことなしに炎症状態を処置する段階を含み得る。
【0052】
疾患管理が処置の効果を判定することに向けられる場合、かかる方法は、処置の適用前に対象組織のイメージングを行って処置前評価を得る段階、次いで処置を適用する段階、及び処置に続いて対象組織のイメージングを1回以上行って対象組織の処置後評価を得る段階を含んでいる。処置前評価及び処置後評価を比較することで、炎症応答細胞の浸潤及び蓄積に関連する状態に関して炎症の低減又はその他の症状の軽減の有無を判定することができる。処置の効果を判定する方法はさらに、処置前評価及び処置後評価の比較に基づき、特定の処置を止めるか否かを決定する段階、並びに処置の頻度、強度及び/又は用量を増加するか否かを決定する段階を含み得る。
【0053】
疾患管理が処置の全体的又は全身的適用ではなく炎症組織に局限された処置(例えば、外科手術又は放射線療法)を含む場合、疾患管理方法は、炎症組織の空間位置確認を行って処置(例えば、切除又は照射)すべき特定領域を画定する段階を含み得る。
【0054】
上記に記載された方法は、炎症状態のイメージング前、その後又はその前後において、炎症を低減させるための処置で使用できる。イメージングの結果は、炎症状態の管理で使用できる。特に対象となる炎症状態はマクロファージ蓄積に関連するものであって、特に限定されないが、自己免疫状態、血管状態、神経学的状態及びこれらの組合せを含む。
【実施例】
【0055】
以下の実施例は、上記に開示された実施形態の一部を一層詳しく例示するために示される。当業者であれば、以下の実施例中に開示される技法は、本発明の実施のための例示的な形態をなす技法を表していることが理解されるはずである。しかし当業者であれば、本開示に照らせば、開示された特定の実施形態に数多くの変更を加えることができ、それでも本発明の技術思想及び技術的範囲から逸脱せずに同様又は類似の結果が得られることが理解されるはずである。
【0056】
【化6】

【0057】
5nm SPIOナノ粒子の合成
25mLの三つ口シュレンク(Schlenk)フラスコに、130mmビグルー(Vigreux)カラム上に堆積した凝縮器、及び熱電対を取り付けた。凝縮器には窒素入口を取り付け、系中に窒素を流した。シュレンクフラスコ及びビグルーカラムはガラスウールで断熱した。トリメチルアミン−N−オキシド(Aldrich社、0.570g、7.6mmol)及びオレイン酸(Aldrich社:99+%、0.565g、2.0mmol)を10mLのジオクチルエーテル(Aldrich社:99%)中に分散させた。分散物を約20℃/分の速度で80℃に加熱した。混合物が約80℃に達した後、シュレンク継手を通して265μLのFe(CO)5(Aldrich社:99.999%、2.0mmol)を撹拌溶液中に急速に注入した。溶液は、白色の「霧」を激しく発生しながら、即座に黒色になった。溶液を急速に約120〜140℃に加熱した。6〜8分以内に、反応ポットは100℃に冷却し、その温度に保ちながら75分間撹拌した。約100℃で75分間撹拌した後、温度を約20℃/分の速度で約280℃に高めた。溶液を75分間撹拌した後、加熱マントル及びガラスウールを取り除いて反応物を室温に戻した。
【0058】
PEG−750(モノメチルエーテル)トリメトキシシランカルバメートの合成
CH2Cl2(100mL)に溶解したPEG−750(モノメチルエーテル)(50.49g、66.0mmol)を含む溶液に、3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン(12.54g、61.1mmol)を添加し、次いでジブチルスズジラウレート(3.86g、6.11mmol)を添加した。得られた溶液を室温で16時間撹拌し、溶媒を真空中で除去した。得られた残留物をMeOH(100mL)中に再懸濁し、ヘキサン(4×100mL)で洗浄した。MeOH層から溶媒を真空中で除去したところ、59.3g(100%)の生成物がオフホワイトのろう状固体として残った。1H NMR(CDCl3)δ 3.58−3.53(m,68H),3.47(s,9H),3.37(s,3H),3.16(m,2H),1.61(m,2H),0.62(m,2H)ppm;13C NMR(CDCl3)δ 156.4,72.5,71.7,70.3,69.4,63.5,61.3,58.7,50.0,49.6,43.1,22.9,6.0ppm;IR(塩プレート上でニート)2871,1719,1533,1456,1348,1273,1249,1108,951,821,733,701cm-1
【0059】
PEG−1900(モノメチルエーテル)トリメトキシシランカルバメートの合成
CH2Cl2(50mL)に溶解したPEG−1900(モノメチルエーテル)(20.0g、10.5mmol)を含む溶液に、3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン(1.83mL、9.55mmol)を添加し、次いでジブチルスズジラウレート(0.603g、0.955mmol)を添加し、得られた溶液を室温で14日間撹拌した。溶媒を真空中で除去し、残ったオフホワイトの固体をMeOH(150mL)に溶解し、ヘキサン(4×100mL)で洗浄した。次いで、MeOHを真空中で除去したところ、20.10g(100%)の生成物がオフホワイトの固体として得られた。1H NMR(CDCl3)δ 4.21(m,2H),3.54−3.82(m,166H),3.49(s,9H),3.31(s,3H),3.16(m,2H),1.62(m,2H),0.64(m,2H);IR(塩プレート上でニート)2875,1719,1452,1267,1102,737cm-1
【0060】
PEG−SA(PEG−SA;5:1)被覆SPIOの合成
ヘキサデカン中のSPIO(11.2mg Fe/mL)を乾燥THFで1mg Fe/mLに希釈し、一晩超音波処理した。PEG−750モノメチルエーテルトリメトキシシランカルバメート(10.69g、10.74mmol)を100mLの上記SPIO溶液(100mg Fe、1.79mmol)に溶解した。この暗色透明溶液に3−(トリエトキシシリル)プロピルコハク酸無水物(SA)(0.601mL、2.11mmol)を添加し、一晩超音波処理した。1M HCl(0.24mL)を撹拌しながら滴下し、混合物をさらに6時間超音波処理した。水(2.0mL)を添加し、反応物を室温で一晩撹拌した。次いで、トリス/NaCl緩衝液(10mMトリス、150mM NaCl、pH約7)を混合物(100mL)に添加した。すべての色が水性層中に移行するのが認められ、水性層をTHF(4×100mL)で洗浄した。相分離を容易にするための必要に応じてヘキサン(約5mL)を添加した。残留する有機揮発分を、穏やかに加熱しながら真空中で除去した。6つの100kDa分子量カットオフ遠心フィルターを4000×gで使用しながら、得られた暗色の水溶液を150mM食塩水(4×7mL/管)、1:1 IPA/150mM食塩水(5×7mL/管)及び150mM NaCl(5×7mL/管)で洗浄することで精製した。最終の洗浄後、暗褐色の水溶液を150mM NaClで約5mg Fe/mLの濃度に希釈した。DLS(150mM NaCl)DH=19.0nm、ζ電位(10mM NaCl)ζ=−10.0mV。
【0061】
PEG−SA(PEG−SA;2:1)被覆SPIOの合成
ヘキサデカン中のSPIO(11.2mg Fe/mL)を乾燥THFで1mg Fe/mLに希釈し、一晩超音波処理した。PEG−750モノメチルエーテルトリメトキシシランカルバメート(8.52g、8.78mmol)を100mLの上記SPIO溶液(100mg Fe、1.79mmol)に溶解した。この暗色透明溶液に3−(トリエトキシシリル)プロピルコハク酸無水物(SA)(1.31mL、4.33mmol)を添加し、一晩超音波処理した。1M HCl(0.24mL)を撹拌しながら滴下し、混合物をさらに6時間超音波処理した。水(2.0mL)を添加し、反応物を室温で一晩撹拌した。次いで、リン酸緩衝食塩水(PBS)(154mM NaCl、10mMリン酸ナトリウム、pH=7.4)を混合物(100mL)に添加した。すべての色が水性層中に移行するのが認められ、水性層をTHF(4×100mL)で洗浄した。相分離を容易にするための必要に応じてヘキサン(約5mL)を添加した。残留する有機揮発分を、穏やかに加熱しながら真空中で除去した。6つの100kDa分子量カットオフ遠心フィルターを4000×gで使用しながら、得られた暗色の水溶液を水(1×7mL/管)で洗浄することで精製した。得られた溶液をNH4OHでpH10に調整し、室温で3日間撹拌した。6つの100kDa分子量カットオフ遠心フィルターを4000×gで使用しながら、得られた暗褐色の水溶液を1:1 IPA/PBS(5×7mL/管)及びPBS(5×7mL/管)で洗浄することで精製した。最終の洗浄後、暗褐色の水溶液をPBSで約5mg Fe/mLの濃度に希釈した。DLS(PBS)DH=20.1nm、ζ電位(10mM NaCl)ζ=−10.6mV。
【0062】
PEG−SA(PEG−SA;1:1)被覆SPIOの合成
ヘキサデカン中のSPIO(11.2mg Fe/mL)を乾燥THFで1mg Fe/mLに希釈し、一晩超音波処理した。PEG−750モノメチルエーテルトリメトキシシランカルバメート(6.36g、6.56mmol)を100mLの上記SPIO溶液(100mg Fe、1.79mmol)に溶解した。この暗色透明溶液に3−(トリエトキシシリル)プロピルコハク酸無水物(SA)(2.00mL、6.56mmol)を添加し、一晩超音波処理した。1M HCl(0.24mL)を撹拌しながら滴下し、混合物をさらに6時間超音波処理した。水(2.0mL)を添加し、反応物を室温で一晩撹拌した。次いで、リン酸緩衝食塩水(PBS)(154mM NaCl、10mMリン酸ナトリウム、pH=7.4)を混合物(100mL)に添加した。すべての色が水性層中に移行するのが認められ、水性層をTHF(4×100mL)で洗浄した。相分離を容易にするための必要に応じてヘキサン(約5mL)を添加した。残留する有機揮発分を、穏やかに加熱しながら真空中で除去した。6つの100kDa分子量カットオフ遠心フィルターを4000×gで使用しながら、得られた暗色の水溶液を水(1×7mL/管)で洗浄することで精製した。得られた溶液をNH4OHでpH10に調整し、室温で3日間撹拌した。100kDa分子量カットオフ遠心フィルターを4000×Gで使用しながら、得られた暗褐色の水溶液を1:1 IPA/PBS(5×7mL/管)及びPBS(5×7mL/管)で洗浄することで精製した。最終の洗浄後、暗褐色の水溶液をPBSで約5mg Fe/mLの濃度に希釈した。DLS(PBS)DH=20.1nm、ζ電位(10mM NaCl)ζ=−30.5mV。
【0063】
PEG−AEAPTES(PEG−AEAPTES;5:1)被覆SPIOの合成
ヘキサデカン中のSPIO(11.2mg Fe/mL)を無水テトラヒドロフランで1mg Fe/mLの濃度に希釈し、この溶液をVWR 150Tモデルソニケーター中で一晩超音波処理した。PEG750モノメチルエーテルトリメトキシシランカルバメート(15.9g、16.1mmol)をSPIO溶液(150mL、2.68mmol)に溶解し、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン(0.86mL、3.22mmol)を添加し、暗色の混合物を17時間超音波処理した。1.2M HCl(0.3mL)を添加し、混合物をさらに9時間超音波処理した。水(3mL、2%(v/v))を添加し、反応混合物を室温で15時間撹拌し、次いで10mMトリス/150mM NaCl水溶液(150mL)で奪活した。層を分離し、暗色の水性層をテトラヒドロフラン中5%ヘキサン(6×100mL)で抽出した。残った水性混合物をさらに減圧下30℃で1時間濃縮した。100kDa分子量カットオフフィルターを4000×gで使用しながら、SPIO溶液を無菌150mM NaCl(4×)、1:1 イソプロパノール/150mM NaCl(4×)及び無菌150mM NaCl(5×)で洗浄することで精製した。残った濃縮溶液を無菌150mM NaCl(pH3)で希釈し、Perl試薬(K4Fe(CN)6水溶液;50mg/mL)を用いて鉄濃度をUV吸収により測定した。最終の濃度は10mg Fe/mLを目標とした。DH(150mM NaCl、pH3)=18.2nm、ζ電位(10mM NaCl、pH7)ζ=10.6mV。
【0064】
PEG−AEAPTES(PEG−AEAPTES;2.5:1)被覆SPIOの合成
ヘキサデカン中のSPIO(11.2mg Fe/mL)を無水テトラヒドロフランで1mg Fe/mLの濃度に希釈し、この溶液をVWR 150Tモデルソニケーター中で13時間超音波処理した。PEG750モノメチルエーテルトリメトキシシランカルバメート(10.6g、10.7mmol)をSPIO溶液(100mL、1.79mmol)に溶解し、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン(1.14mL、4.30mmol)を添加し、暗色の混合物を16時間超音波処理した。1.2M HCl(0.2mL)を添加し、混合物をさらに24時間超音波処理した。水(2mL、2%(v/v))を添加し、反応混合物を室温で24時間撹拌し、次いで10mMトリス/150mM NaCl水溶液(100mL)で奪活した。層を分離し、暗色の水性層をテトラヒドロフラン中5%ヘキサン(5×100mL)で抽出した。残った水性混合物をさらに減圧下40℃で15分間濃縮した。100kDa分子量カットオフフィルターを4000×gで使用しながら、SPIO溶液を無菌150mM NaCl(4×)、1:1 イソプロパノール/150mM NaCl(4×)及び無菌150mM NaCl(5×)で洗浄することで精製した。残った濃縮溶液を無菌150mM NaCl(pH3)で希釈し、Perl試薬(K4Fe(CN)6水溶液;50mg/mL)を用いて鉄濃度をUV吸収により測定した。最終の濃度は10mg Fe/mLを目標とした。DH(150mM NaCl、pH3)=21.9nm、ζ電位(10mM NaCl、pH7)ζ=19.74mV。
【0065】
PEG−AEAPTES(PEG−AEAPTES;10:1)被覆SPIOの合成
ヘキサデカン中のSPIO(11.2mg Fe/mL)を無水テトラヒドロフランで1mg Fe/mLの濃度に希釈し、この溶液をVWR 150Tモデルソニケーター中で15時間超音波処理した。PEG750モノメチルエーテルトリメトキシシランカルバメート(11.2g、11.4mmol)をSPIO溶液(106mL、1.90mmol)に溶解し、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン(0.3mL、1.14mmol)を添加し、暗色の混合物を17時間超音波処理した。1.2M HCl(0.212mL)を添加し、混合物をさらに8時間超音波処理した。水(2.1mL、2%(v/v))を添加し、反応混合物を室温で17時間撹拌し、次いで10mMトリス/150mM NaCl水溶液(100mL)で奪活した。層を分離し、暗色の水性層をテトラヒドロフラン中5%ヘキサン(5×100mL)で抽出した。残った水性混合物をさらに減圧下40℃で15分間濃縮した。100kDa分子量カットオフフィルターを4000×gで使用しながら、SPIO溶液を無菌150mM NaCl(4×)、1:1 イソプロパノール/150mM NaCl(4×)及び無菌150mM NaCl(5×)で洗浄することで精製した。残った濃縮溶液を無菌150mM NaCl(pH3)で希釈し、Perl試薬(K4Fe(CN)6水溶液;50mg/mL)を用いて鉄濃度をUV吸収により測定した。最終の濃度は10mg Fe/mLを目標とした。DH(150mM NaCl、pH3)=21.8nm、ζ電位(10mM NaCl、pH7)ζ=3.39mV。
【0066】
PEG−テトラメチルアンモニウム(PEG−アンモニウム;5:1)被覆SPIOの合成
ヘキサデカン中のSPIO(11.2mg Fe/mL)を無水テトラヒドロフランで1mg Fe/mLの濃度に希釈し、この溶液をVWR 150Tモデルソニケーター中で13時間超音波処理した。PEG750モノメチルエーテルトリメトキシシランカルバメート(7.42g、7.52mmol)をSPIO溶液(106mL、1.90mmol)に溶解し、N−トリメトキシシリルプロピル−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(メタノール中50%溶液、0.83mL、1.50mmol)を添加し、暗色の混合物を16時間超音波処理した。1.2M HCl(0.14mL)を添加し、混合物をさらに24時間超音波処理した。水(1.4mL、2%(v/v))を添加し、反応混合物を室温で24時間撹拌し、次いで10mMトリス/150mM NaCl水溶液(72mL)で奪活した。層を分離し、暗色の水性層をテトラヒドロフラン中5%ヘキサン(4×100mL)で抽出した。残った水性混合物をさらに減圧下40℃で15分間濃縮した。100kDa分子量カットオフフィルターを4000×gで使用しながら、SPIO溶液を無菌150mM NaCl(4×)、1:1 イソプロパノール/150mM NaCl(4×)及び無菌150mM NaCl(5×)で洗浄することで精製した。残った濃縮溶液を無菌150mM NaCl(pH3)で希釈し、Perl試薬(K4Fe(CN)6水溶液;50mg/mL)を用いて鉄濃度をUV吸収により測定した。最終の濃度は10mg Fe/mLを目標とした。DH(150mM NaCl、pH3)=29.6nm、ζ電位(10mM NaCl、pH7)ζ=18.41mV。
【0067】
PEG1900−AEAPTES(PEG1900−AEAPTES;5:1)被覆SPIOの合成
ヘキサデカン中のSPIO(11.2mg Fe/mL)を乾燥THFで1mg Fe/mLに希釈し、一晩超音波処理した。PEG−1900モノメチルエーテルトリメトキシシランカルバメート(2.31g、1.10mmol)を10mLの上記SPIO溶液(10mg Fe、0.179mmol)に溶解した。この暗色透明溶液にN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン(AEAPTES)(0.057mL、0.214mmol)を添加し、一晩超音波処理した。1M HCl(0.024mL)を撹拌しながら滴下し、混合物をさらに6時間超音波処理した。水(0.200mL)を添加し、反応物を室温で一晩撹拌した。次いで、トリス/NaCl緩衝液(10mMトリス、150mM NaCl、pH約7)を混合物(10mL)に添加した。すべての色が水性層中に移行するのが認められ、水性層をTHF(4×10mL)で洗浄した。相分離を容易にするための必要に応じてヘキサン(約5mL)を添加した。残留する有機揮発分を、穏やかに加熱しながら真空中で除去した。100kDa分子量カットオフ遠心フィルターを4000×gで使用しながら、得られた暗色の水溶液を150mM食塩水(4×7mL/管)、1:1 IPA/150mM食塩水(5×7mL/管)及び150mM NaCl(5×7mL/管)で洗浄することで精製した。最終の洗浄後、暗褐色の水溶液を150mM NaCl、pH3で約5mg Fe/mLの濃度に希釈した。DLS(150mM NaCl、pH3)DH=27.8nm、ζ電位(10mM NaCl)ζ=7.9mV。
【0068】
特性決定
150mM NaClを溶媒として使用しながら、動的光散乱によって流体力学的直径を測定した。精製SPIO溶液を150mM NaClで希釈し、Brookhaven ZetaPALSを用いるDLS分析に先立って100nmフィルターに通した。SPIO溶液をH2Oで14倍希釈し(最終溶液(10mM NaCl))、希釈SPIO溶液を100nmフィルターに通した後、Brookhaven ZetaPALSを用いてζ電位を測定した。結果を下記表1に示す。
【0069】
【表1】

【0070】
インビボ実験
無菌のリン酸緩衝生理食塩水中に懸濁した1%カラゲナンの0.1mLを皮下注射することで、雌のSwiss Websterマウスに肉芽腫を誘発した。注射部位は、尾の基部から約1cm上方の背面であった。肉芽腫誘発から2〜7日後、物理的に拘束したマウスに尾静脈を通してSPIO造影剤を静脈内注射した。SPIO剤は5mg Fe/mLの濃度で生理食塩水に溶解し、注射に先立って滅菌濾過し、エンドトキシンの存在について試験した。薬剤は20mg Fe/kg体重の用量で投与した。
【0071】
SPIO造影剤の注射に先立ってマウスのイメージングを行い、薬剤の注射から約24時間後に再び行った。マウスのイメージングは、注文製造の3.2cmソレノイド送信/受信RFコイルを使用しながら、臨床用の1.5T GE Signa MRスキャナー上で行った。マウスは、齧歯動物用として設計された市販の麻酔装置を使用しながら、ノーズコーンによって酸素中2%イソフルランで麻酔した。2つのパルスシーケンスの各々について、13の軸方向1mm画像スライスを採取することで肉芽腫を完全にカバーした。パルスシーケンスパラメーターは下記の通りであった。
T1重み付き:2Dスピンエコー、TE 13、TR 320、マトリックス256×192、FOV 5、位相FOV 0.75、厚さ1.0、NEX 3、BW 22.73。
T2*重み付き:2Dグラジエントエコー、TE1 9.8、TE2 25、TR 650、フリップ角45、マトリックス256×192、FOV 5、位相FOV 0.75、スライス厚さ1.0、NEX 2、BW 15.63。
【0072】
図4A〜4Fは、注射前(A及びB)、PEG−SA剤注射から24時間後(C及びD)並びにPEG−AEPTES剤注射から24時間後(E及びF)のT2*重み付きMR画像(A、C及びE)及びT1重み付きMR画像を示している。肉芽腫中に顕著なT2*コントラスト(暗領域)及びT1コントラスト(明領域)が認められ、SPIO剤が炎症病巣にコントラストを与え得ることを示している。
【0073】
上述の実施形態に関して上記に記載した構造、機能及び動作の一部は本発明を実施する上で必須ではなく、例示的な実施形態を完全に説明するためにのみ示されていることが理解されよう。加えて、上記に引用した特許や刊行物に記載された特定の構造、機能及び動作は本発明と組み合わせて実施できるものの、それは本発明を実施する上で必須ではないことも理解されよう。したがって本発明は、請求の範囲で定義される本発明の技術思想及び技術的範囲から実際に逸脱することなく、詳しく記載したものとは異なるやり方で実施できることを理解すべきである。
【符号の説明】
【0074】
100 ナノ構造体
110 無機ナノ粒子コア
120 第1の配位子
130 第2の配位子
140 流体力学的直径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機ナノ粒子コア、
無機ナノ粒子コアに結合した、第1の鎖長を有する第1の配位子であって、帯電している第1の配位子、及び
無機ナノ粒子コアに結合した、第2の鎖長を有する第2の配位子であって、親水性である第2配位子
を含んでなるナノ構造体であって、
第2の鎖長が第1の鎖長より長い結果、第1の配位子のモルパーセント量の変化がナノ構造体の流体力学的直径を実質的に変化させない、ナノ構造体。
【請求項2】
無機ナノ粒子コアが超常磁性酸化鉄を含む、請求項1記載のナノ構造体。
【請求項3】
無機ナノ粒子コアが約1〜約100nmの範囲内の直径を有する、請求項1記載のナノ構造体。
【請求項4】
無機ナノ粒子コアが約1〜約10nmの範囲内の直径を有する、請求項1記載のナノ構造体。
【請求項5】
約1〜約500nmの流体力学的直径を有する、請求項1記載のナノ構造体。
【請求項6】
約1〜約100nmの流体力学的直径を有する、請求項1記載のナノ構造体。
【請求項7】
約2〜約30nmの流体力学的直径を有する、請求項1記載のナノ構造体。
【請求項8】
第1の配位子及び第2の配位子が、カルボキシレート、スルホネート、ホスフェート、シラン及びこれらの混合物から選択される官能基によって無機ナノ粒子コアに結合している、請求項1記載のナノ構造体。
【請求項9】
第1の配位子が負に帯電している、請求項1記載のナノ構造体。
【請求項10】
第1の配位子が下記式Iの構造から導かれる、請求項9記載のナノ構造体。
【化1】

【請求項11】
第1の配位子が正に帯電している、請求項1記載のナノ構造体。
【請求項12】
第1の配位子が下記式IIの構造から導かれる、請求項11記載のナノ構造体。
【化2】

【請求項13】
第2の配位子がPEGポリマーを含む、請求項1記載のナノ構造体。
【請求項14】
PEGポリマーが約500〜5000ダルトンの範囲内の分子量を有する、請求項13記載のナノ構造体。
【請求項15】
約−50mV乃至約+50mVの範囲内の非ゼロζ電位を有する、請求項1記載のナノ構造体。
【請求項16】
約−25mV乃至約+25mVの範囲内の非ゼロζ電位を有する、請求項15記載のナノ構造体。
【請求項17】
約−5mV乃至約−15mVの範囲内のζ電位を有する、請求項16記載のナノ構造体。
【請求項18】
約+5mV乃至約+15mVの範囲内のζ電位を有する、請求項16記載のナノ構造体。
【請求項19】
請求項1記載のナノ構造体の製造方法であって、
無機ナノ粒子コアを、電荷を有する第1の配位子と反応させる段階であって、第1の配位子はカルボキシレート、スルホネート、ホスフェート及びトリアルコキシシランからなる群から選択される官能基を介してナノ粒子コアに結合する段階、並びに
ナノ粒子コアを親水性の第2の配位子と反応させる段階であって、第2の配位子はカルボキシレート、スルホネート、ホスフェート及びトリアルコキシシランから選択される官能基を介してナノ粒子コアに結合する段階
を含んでなり、第1の配位子+第2の配位子と無機ナノ粒子コアとのモル比が約1:1〜約20:1である、方法。
【請求項20】
無機ナノ粒子コアが超常磁性酸化鉄を含む、請求項19記載の方法。
【請求項21】
第1の配位子が下記式Iの構造から導かれる、請求項19記載の方法。
【化3】

【請求項22】
第1の配位子が下記式IIの構造から導かれる、請求項19記載の方法。
【化4】

【請求項23】
第2の配位子が下記式IIIの構造から導かれる、請求項19記載の方法。
【化5】

【請求項24】
哺乳動物における炎症状態のイメージング方法であって、
哺乳動物内に請求項1記載のナノ構造体を導入する段階、
請求項1記載のナノ構造体を炎症組織に移行させる段階、及び
磁気共鳴を用いて炎症組織のイメージングを行う段階
を含んでなる方法。
【請求項25】
さらに、炎症状態を管理する段階を含む、請求項24記載の方法。
【請求項26】
哺乳動物がヒトである、請求項24記載の方法。
【請求項27】
さらに、炎症状態のイメージング前、その後又はその前後に哺乳動物を処置して炎症を低減させる段階、及びその結果を用いて炎症状態を管理する段階を含む、請求項24記載の方法。
【請求項28】
導入段階が、薬剤を局所適用、血管内注射、筋肉内注射又は間質内注射によって投与することを含む、請求項24記載の方法。
【請求項29】
約0.1〜約50mg Fe/kgのナノ構造体がヒトに投与される、請求項26記載の方法。
【請求項30】
約0.1〜約2.5mg Fe/kgのナノ構造体がヒトに投与される、請求項26記載の方法。
【請求項31】
炎症状態がマクロファージ蓄積に関連している、請求項24記載の方法。
【請求項32】
炎症状態が、自己免疫状態、血管状態、神経学的状態及びこれらの組合せからなる群から選択される状態である、請求項24記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−516279(P2011−516279A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−549132(P2010−549132)
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【国際出願番号】PCT/EP2009/052523
【国際公開番号】WO2009/109588
【国際公開日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】