説明

炎症性および免疫介在疾患の処置のための、ラパマイシンまたはその誘導体とピメクロリムスの組み合わせを含む、医薬組成物

本発明は、例えば、炎症性疾患および自己免疫疾患を含む免疫介在疾患の処置に有用な、ラパマイシンまたはラパマイシン誘導体および式Iの化合物の組み合わせを含む、薬組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、例えば、炎症性疾患および自己免疫疾患を含む免疫介在疾患の処置に有用な、医薬組成物に関する。
【0002】
一つの局面において、本発明は、ラパマイシンまたはラパマイシン誘導体と式
【化1】

〔式中、
は式(a)
【化2】

(式中、
はクロロ、ブロモ、ヨードまたはアジドであり、
はヒドロキシまたはメトキシである)
の基であり、そして
はヒドロキシであり、そして10、11位の間に一重結合が存在するか;または存在せず、そして10、11位の間に二重結合が存在するか
または
が式(b)または(c)
【化3】

(式中、
は上記で定義の通りである)
の基であり、そして
はヒドロキシであり、そして10、11位の間に一重結合が存在し、
はオキソであり、23、24位の間に一重結合が存在する;所望により保護されているヒドロキシであり、そして23、24位の間に一重結合が存在するか;または存在せず、そして23、24位の間に二重結合が存在し;
はメチル、エチル、プロピルまたはアリルである。〕
の化合物の組み合わせと、他に少なくとも1個の薬学的に許容される賦形剤を含む、医薬組成物を提供する。
【0003】
ラパマイシンまたはラパマイシン誘導体および式Iの化合物の組み合わせを含む医薬組成物を、以後、“本発明の(にしたがった)組成物”と呼ぶ。
【0004】
他の局面において、本発明は、式Iの化合物が、式
【化4】

である、本発明の医薬組成物を提供する。
【0005】
ピメクロリムス(INN推奨)(ASM981;ElidelTM)、すなわち
{[1E−(1R,3R,4S)]1R,9S,12S,13R,14S,17R,18E、21S,23S,24R,25S,27R}−12−[2−(4−クロロ−3−メトキシシクロヘキシル)−1−メチルビニル]−17−エチル−1,14−ジヒドロキシ−23,25−ジメトキシ−13,19,21,27−テトラメチル−11,28,ジオキサ−4−アザトリシクロ[22.3.1.0(4,9)]オクタコス−18−エン−2,3,10,16−テトラオンは、例えばEP427680(実施例66aの33−エピ−33−クロロ−FR520)に記載されている。
【0006】
他の局面において、本発明は、ラパマイシン誘導体が、式
【化5】

〔式中、
はCHまたは(C3−6)アルキニルであり、
はH、−CH−CH−OH、3−ヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)−2−メチル−プロパノイルまたはテトラゾリルであり、そして
Xは=O、(H,H)または(H,OH)である。
ただし、Xが=Oであり、かつRがCHであるとき、RはH以外である。〕
の化合物、または、Rが−CH−CH−OHであるとき、そのプロドラッグ、例えば生理学的に加水分解可能なそのエーテルである、本発明の医薬組成物を提供する。
【0007】
式IIの代表的ラパマイシン誘導体は、本明細書に出典明示により包含させる例えばWO96/41807およびUS5256790に記載のような例えば32−水素化ラパマイシン、例えば32−デオキソラパマイシン、16−ペント−2−イニルオキシ−32−デオキソラパマイシン、例えばその内容を出典明示により本明細書に包含させるWO94/02136、WO95/16691およびWO96/41807に記載のような16−O−置換ラパマイシン、例えば16−ペント−2−イニルオキシ−32(SまたはR)−ジヒドロ−ラパマイシン、16−ペント−2−イニルオキシ−32(SまたはR)−ジヒドロ−40−O−(2−ヒドロキシエチル)−ラパマイシン、例えばすべて出典明示により本明細書に包含させるUS5258389、WO94/09010、WO92/05179、US5118677、US5118678、US5100883、US5151413、US5120842、WO93/11130、WO94/02136、WO94/02485およびWO95/14023に記載のような40−O−置換ラパマイシン、例えば40−[3−ヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)−2−メチルプロパノエート]−ラパマイシン(CCI779とも呼ばれる)または40−エピ−(テトラゾリル)−ラパマイシン(ABT578とも呼ばれる)を含む。好ましい化合物は、例えばWO94/09010の実施例8に記載のような、例えば40−0−(2−ヒドロキシエチル)−ラパマイシン(以後、化合物A)、または、32−デオキソラパマイシン、または、例えばWO96/41807に記載のような、16−ペント−2−イニルオキシ−32(S)−ジヒドロ−ラパマイシンである。ラパマイシン誘導体はまた、例えばWO98/02441およびWO01/14387に記載されているような、(エピ)ラパログ(rapalog)、例えば化合物AP23573、AP23464、AP23675またはAP23841;または誘導体、例えば、バイオリムス7またはバイオリムス9も含み得る。ラパマイシン誘導体はまたTAFA93のようなラパマイシンのプロドラッグを含み得る。
【0008】
適当なラパマイシン誘導体は、例えばまたUS3929992およびUS5258389に記載されている。好ましくは本発明の組成物は、シロリムスとしても既知のラパマイシン(ラパマイシン;Rapamune(登録商標))および/またはラパマイシン誘導体エベロリムス(化合物A、RAD001;40−O−(2−ヒドロキシエチル)−ラパマイシン;Certican(登録商標))を含む。
本明細書に引用するすべての特許文献は、出典明示により本明細書に包含させる。
【0009】
他の局面において、本発明は、40−O−(2−ヒドロキシエチル)−ラパマイシンおよびピメクロリムスの組み合わせと、それ以外に少なくとも1個の薬学的に許容される賦形剤、例えば充填剤、結合剤、崩壊剤、流動調節剤、滑剤、糖および甘味剤、香料、防腐剤、安定化剤、湿潤剤および/または乳化剤、可溶化剤、浸透圧調整用塩および/または緩衝剤を含む、例えば適当な担体および/または希釈剤を含む医薬組成物を提供する。
【0010】
本発明の組み合わせの化合物、すなわち式Iの化合物、例えばピメクロリムスは遊離形、塩形、溶媒和物形または塩形かつ溶媒和物形(塩および/または溶媒和物が存在するとき)であってよい。
【0011】
他の局面において、本発明は、式Iの化合物が塩形である、本発明の組成物を提供する。
【0012】
本発明の組成物は、1個またはそれ以上のラパマイシン誘導体、好ましくはラパマイシンまたは1個のラパマイシン誘導体と、1個またはそれ以上の式Iの化合物、好ましくは1個、例えばピメクロリムスを含んでよい。
【0013】
本発明の組成物は、適当に、ラパマイシンまたはラパマイシン誘導体、例えば式IIの化合物、および式Iの化合物、例えばピメクロリムスの、エマルジョン、ミクロエマルジョン、エマルジョン・プレコンセントレートまたはミクロエマルジョン・プレコンセントレート、または固体分散体、とりわけ油中水型ミクロエマルジョン・プレコンセントレートまたは水中油型ミクロエマルジョンに基づく。
【0014】
本発明の組成物は、さらなる薬学的活性化合物をさらに含んでよい。このようなさらなる活性化合物は、例えば抗炎症剤および免疫調節剤を含む。
【0015】
他の局面において、本発明の医薬組成物はさらに抗炎症剤および/または免疫調節剤を含む。
【0016】
本発明の組成物は
−式Iの化合物、例えばピメクロリムス、およびラパマイシンまたはラパマイシン誘導体、例えば式IIの化合物、例えば化合物Aが同じ製剤中にある、固定された組み合わせ;
−別々の製剤中の式Iの化合物、例えばピメクロリムス、およびラパマイシンまたはラパマイシン誘導体、例えば式IIの化合物、例えば化合物Aが同じ包装で、例えば併用投与の指示書と共に売られているキット(=複数部分のキット);および
−式Iの化合物、例えばピメクロリムス、およびラパマイシンまたはラパマイシン誘導体、例えば式IIの化合物、例えば化合物Aが別々に包装されているが、同時または連続投与の指示が与えられている、自由な組み合わせ
を含む。
【0017】
他の局面において、本発明は、ラパマイシンまたはラパマイシン誘導体、例えば式IIのラパマイシン誘導体、例えば化合物A、および式Iの化合物、例えばピメクロリムスと、その他に同時または連続投与の指示書を含む、薬学的キットを提供する。
【0018】
我々はまた驚くべきことに、式IIの化合物の化合物を含むラパマイシンまたはラパマイシン誘導体、例えば化合物A、および式Iの化合物、例えばピメクロリムスの固定された組み合わせを活性剤として含む、錠剤のような固体の医薬組成物、例えば経口用医薬組成物を発見した。
【0019】
他の局面において、本発明は、ラパマイシンまたはラパマイシン誘導体、例えば化合物A、および式Iの化合物、例えばピメクロリムス、および担体、例えばセルロースを、所望により上記の賦形剤の存在下に含む、固体分散体の形の、固定された組み合わせとしての医薬組成物、例えば経口用医薬組成物、例えば固体経口組成物を提供する。
【0020】
固体分散体の形の組成物は、任意の慣用の形、例えば錠剤、カプセル、顆粒または粉末形で投与できる。
【0021】
経口用医薬組成物を含む本発明の医薬組成物は、適当に、例えば慣用の方法または本明細書に記載の方法にしたがい、例えば準じて、製造できる。
【0022】
本発明の固定された経口用組成物または組み合わせ、例えば錠剤の製造のために、式Iの化合物、例えばピメクロリムス、およびラパマイシンまたはラパマイシン誘導体、例えば式IIの化合物、および担体、例えばセルロース、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む固体分散体を使用し得る。固体分散体は既知であるか、または、適当に得ることができる。錠剤は、例えば活性剤を、担体および所望によりさらなる賦形剤と混合し、さらなる賦形剤の添加前または後に乾燥させ、得られた混合物を圧縮することにより得ることができる。さらなる賦形剤は、例えば
−滑剤、例えばMg−ステアレート、
−充填剤、例えば糖、例えばラクトース、
−流動化剤、例えば、二酸化ケイ素、例えばアエロジル、
−崩壊剤、例えばポリビニルピロリドン、例えばポビドン、クロスポビドン(N−ビニル−ピロリドンのホモ−またはコ−ポリマー)
を含む。
【0023】
本発明の経口用組成物中の式Iの化合物、例えばピメクロリムス、およびラパマイシンまたはラパマイシン誘導体、例えば式IIの化合物の重量比は厳密ではなく、例えば約1:10から800:1の重量比を、例えば含む。化合物ピメクロリムスおよび化合物Aを活性剤として使用するとき、ピメクロリムスを好ましくは過剰に使用し、例えばピメクロリムス:化合物Aの適当な重量比は、例えば約10:1から800:1の重量比を含む。
【0024】
他の局面において、本発明は、
−活性剤としての化合物Aおよびピメクロリムス、例えば固体分散体の形、
−担体としてのセルロース、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース、
−所望により崩壊剤、例えばポリビニルピロリドン、
−所望により流動化剤、例えばアエロジル、
−所望により滑剤、例えばMg−ステアレート、
−所望により充填剤、例えばラクトースのような糖
を含む、経口投与用の錠剤を提供する。
【0025】
他の局面において、本発明は、重量%で:
−ピメクロリムス:2から8%、例えば4%;
−化合物A:0.05から0.25%、例えば0.13%;
−ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えば3cps):10から30%、例えば21.4%;
−ラクトース(例えば200メッシュ):0.6から2.0%、例えば1.2%;
−ブチルヒドロキシトルエン:0.005から0.025%、例えば0.013%
−噴霧乾燥ラクトース:25.0から70.0%、例えば50.8%;
−クロスポビドン:10.0から40.0%、例えば20.0%;
−コロイド状二酸化ケイ素(Aerosil 200(登録商標)):0.5から2.5%;例えば1.5%
−ステアリン酸マグネシウム:0.5から2.0%、例えば1.0%
を含む、本発明の錠剤を提供する。
【0026】
このような錠剤は、例えば約10から60mgのピメクロリムス、例えば30mg、および0.1から2mgの化合物A、例えば1mgを、例えば含み得る。
【0027】
他の局面において、本発明は、式IIの化合物を含むラパマイシンまたはラパマイシン誘導体、および式Iの化合物、例えばピメクロリムスの組み合わせの医薬としての使用を提供する。
【0028】
他の局面において、本発明ラパマイシンまたはラパマイシン誘導体、例えば式IIの化合物、および式Iの化合物、例えばピメクロリムスの組み合わせの、炎症性腸疾患およびそれに関連する疾患の処置用薬剤の製造における使用を提供する。
【0029】
ヒトにおけるIBDは、多くの慢性炎症性または自己免疫疾患と同様に、感受性遺伝子、環境および免疫系の間の相互作用の集約の結果として見られる。これらの因子が相互作用する程度は、疾患の徴候;クローン病(CD)または潰瘍性大腸炎(UC)および重症度および位置により決定される種々の臨床的サブグループを決定するであろう。IBDの病因における最先端の現在の仮説は、正常腸内細菌抗原に対する異常調節された免疫応答である(例えばKirsner JB, Inflammatory Bowel Disease. 5th ed; W.B. Saunders, p. 208-39, p. 299-304; p. 305-14およびp. 315-25参照)。CDおよびUCの両方において、基底膜Tリンパ球の数が増加する(例えばSelby et al, (1984), Gut; 25 (1): 32-40参照)。T細胞のサプレッサーサブセットが腸で出会う正常叢に対する反応を阻止するという、大部分SCID−IBDモデルのような実験モデルからの、証拠が存在する(例えばGroux H, et al, (1999), Immunol.Today; 20 (10): 442-5参照)。IBDにおいて、このバランスが崩れ、その結果として起こる炎症性カスケードが慢性応答に発展する。高レベルのCD45RBを発現する同系CD4T細胞(CD4CD45RBHi)のSCIDマウス(SCID−IBD)への移植は重度の大腸炎および消耗病を誘発し、それは通常病理学的CD4CD45RBHiT細胞の移植後4−8週以内の、マウスの死亡をもたらす(例えばPowrie F et al (1993), Int.Immunol.; 5 (11): 1461-71参照)。大腸炎のこの重症モデルは、ヒトIBDの多くの特性を共有し、実際、1990年代からヒトにおけるこの疾患のさらなる理解の促進に使用されており、他のモデルよりもIBDを反映すると見なされている。これらは、外的動因の投与によりまたは遺伝子操作により誘発される(例えばBlumberg RS et al, (1999) Curr.Opin.Immunol.; 11 (6): 648-56; Strober W et al, (1998), Ann.Intern.Med.; 128 (10): 848-56; Strober W et al, (1998), Scand.J.Immunol.; 48 (5): 453-8参照)。SCID−IBDモデルを使用して、TNFα、IFNγおよびIL−12に対する抗体が、一過性で部分的に優れた効果を示している(例えばPowrie F et al (1994), Immunity.; 1 (7): 553-62; Simpson SJ, et al (1998), J.Exp.Med.; 187 (8): 1225-34; Mackay F et al (1998), Gastroenterology; 115 (6): 1464-75参照)。より最近、CD134リガンド(OX40Lに対する、例えばMalmstrom V et al (2001), J.Immunol.; 166 (11): 6972-81参照);CD154に対する(例えばLiu Z. et al, (2000), J.Immunol.; 164 (11): 6005-14; De Jong YP et al (2000), Gastroenterology; 119 (3): 715-23参照)およびβ7インテグリンまたはMAdCAM−1に対する(例えばPicarella D et al, (1997), J.Immunol.; 158 (5): 2099-106参照)に対する抗体でも優れた効果が報告されている。これらのデータを合わせると、本疾患は、TNFαを含む主要な炎症性メディエーターおよび/またはTh1タイプ分化の中和およびエフェクター機能に関与するサイトカインの中和の阻害により、または、リンパ節において発生する抗原提示段階またはこれらの細胞の白血球帰巣の工程の妨害により排除できる。
【0030】
他の局面において、本発明は、ラパマイシンまたはラパマイシン誘導体、例えば式IIの化合物、例えば化合物A、および式Iの化合物、例えばピメクロリムスの組み合わせの、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎およびさらなる湿疹性皮膚疾患、脂漏性皮膚炎、接触過敏症、扁平苔癬、天疱瘡、類天疱瘡、表皮水疱症、蕁麻疹、血管性浮腫、脈管炎、紅斑、皮膚好酸球増加症およびアクネからなる群から選択される疾患の処置用薬剤の製造における使用を提供する。
【0031】
例えば、得られた結果を考慮して、本発明本発明の組み合わせまたは組成物は、ピメクロリムスを含む式Iの化合物、および/またはラパマイシンまたはラパマイシン誘導体が薬学的に活性である疾患、例えばアレルギー状態、例えば、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎およびさらなる湿疹性皮膚疾患、脂漏性皮膚炎、接触過敏症、扁平苔癬、天疱瘡、類天疱瘡、表皮水疱症、蕁麻疹、血管浮腫、脈管炎、紅斑、皮膚好酸球増加症、アクネ、喘息;乾癬、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、炎症性腸疾患(IBD)、多発性硬化症、インスリン依存性糖尿病、シェーグレン症候群、内因性後部ブドウ膜炎、橋本甲状腺炎、脈管炎を含む、例えば炎症性疾患および自己免疫疾患を含む免疫介在疾患のための薬剤としての使用;または腎臓または肝臓移植を含む、異種移植片の拒絶反応;または移植片対宿主病に、好ましくはIBDおよびIBDに関連する疾患の予防に適応される。
【0032】
他の局面において、本発明は、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎およびさらなる湿疹性皮膚疾患、脂漏性皮膚炎、接触過敏症、扁平苔癬、天疱瘡、類天疱瘡、表皮水疱症、蕁麻疹、血管性浮腫、脈管炎、紅斑、皮膚好酸球増加症およびアクネからなる群から選択される疾患の処置法であり、このような処置を必要とする対象に本発明の組成物または本発明のキットを投与することを含む、方法を提供する。
【0033】
他の局面において、本発明は、炎症性腸疾患およびそれに関連する疾患の処置法であり、このような処置を必要とする対象に本発明の組成物または本発明のキットを投与することを含む、方法を提供する。
【0034】
本発明の組成物は、任意の適当な経路で、例えば式Iの化合物、例えばピメクロリムスおよびラパマイシンまたはラパマイシン誘導体、例えば式IIの化合物の投与に準じて投与できる。
【0035】
本発明の組成物は、適当に、例えば慣用の方法に準じて、例えば式Iの化合物、例えばピメクロリムス、およびラパマイシンまたはラパマイシン誘導体を組み合わせでまたは各々別々に、その他に少なくとも1個の薬学的に許容される賦形剤と共に混合することにより製造できる。
【0036】
我々はまたラパマイシンまたはラパマイシン誘導体と組み合わせたFK506を含む化合物クラスが、炎症性および免疫介在疾患の処置に有用であることも発見した。
【0037】
他の局面において、本発明は、ラパマイシンまたはラパマイシン誘導体、例えば式IIのラパマイシン誘導体、例えば化合物A、および式
【化6】

〔式中、
はヒドロキシまたは保護されたヒドロキシであり、
は水素、ヒドロキシルまたは保護されたヒドロキシルであり、
はメチル、エチル、プロピルまたはアリルであり、
nは1または2の整数であり、そして
線および点線の記号は一重結合である。〕
の化合物の、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎およびさらなる湿疹性皮膚疾患、脂漏性皮膚炎、接触過敏症、扁平苔癬、天疱瘡、類天疱瘡、表皮水疱症、蕁麻疹、血管性浮腫、脈管炎、紅斑、皮膚好酸球増加症およびアクネからなる群から選択される疾患の処置用薬剤の製造のための使用を提供する。
【0038】
他の局面において、本発明はラパマイシンまたはラパマイシン誘導体、例えば式IIのラパマイシン誘導体、例えば化合物A、および式IIIの化合物の組み合わせの、炎症性腸疾患の処置用薬剤の製造における使用を提供する。
【0039】
他の局面において、本発明は、ラパマイシンまたはラパマイシン誘導体、例えば式IIのラパマイシン誘導体、例えば化合物A、および式IIIの化合物の組み合わせの使用を提供し、ここで、式IIIの化合物は、式
【化7】

の化合物である。
【0040】
我々は、式IIの化合物が種々の皮膚関連疾患、例えば、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎およびさらなる湿疹性皮膚疾患、脂漏性皮膚炎、接触過敏症、扁平苔癬、天疱瘡、類天疱瘡、表皮水疱症、蕁麻疹、血管性浮腫、脈管炎、紅斑、皮膚好酸球増加症およびアクネの処置に有用であることも発見した。
【0041】
したがって、他の局面において、本発明は、必要とする対象におけるアトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎およびさらなる湿疹性皮膚疾患、脂漏性皮膚炎、接触過敏症、扁平苔癬、天疱瘡、類天疱瘡、表皮水疱症、蕁麻疹、血管性浮腫、脈管炎、紅斑、皮膚好酸球増加症、およびアクネの処置法であって、該対象に治療的有効量の式
【化8】

〔式中、
はCHまたは(C3−6)アルキニルであり、
はH、−CH−CH−OH、3−ヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)−2−メチル−プロパノイルまたはテトラゾリルであり、そして
Xは=O、(H,H)または(H,OH)である。
ただし、Xが=Oであり、かつRがCHであるとき、RはH以外である。〕
の化合物、または、Rが−CH−CH−OHであるとき、そのプロドラッグ、例えば生理学的に加水分解可能なそのエーテルを投与することを含む、方法を提供する。
【0042】
本発明のこの局面に特に好ましい式IIのラパマイシン誘導体は、40−O−(2−ヒドロキシエチル)−ラパマイシン(以後化合物A)、40−[3−ヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)−2−メチルプロパノエート]−ラパマイシン(CCI779とも呼ばれる)、40−エピ−(テトラゾリル)−ラパマイシン(ABT578とも呼ばれる)、32−デオキソラパマイシン、16−ペント−2−イニルオキシ−32(S)−ジヒドロラパマイシンまたはTAFA−93である。よりさらに好ましいのは化合物Aである。
【0043】
本発明はさらに下記を提供する:
1. 上記の皮膚関連疾患の処置に使用するための、上記の式IIのラパマイシン誘導体、例えば化合物A。
2. 上記の皮膚関連疾患の処置に使用するための医薬組成物の製造に使用するための、上記の式IIのラパマイシン誘導体、例えば化合物A。
3. 上記の式IIのラパマイシン誘導体、例えば化合物Aを、1個またはそれ以上の薬学的に許容される希釈剤または担体と共に含む、上記の皮膚関連疾患の処置に使用するための医薬組成物。
【0044】
式IIのラパマイシン誘導体および上記の本発明の組み合わせの上記に示した疾患および状態の処置における有用性は、例えば、下記のような標準動物試験または臨床試験で証明し得る。
【0045】
本発明の方法の実施に必要な一日投与量は、例えば、用いる本発明の化合物の化学的性質および薬物動態データ、個々の宿主、投与の形態および処置すべき状態の性質および重症度に依存して変化する。しかしながら、一般に、大型哺乳類、例えばヒトにおいて、十分な結果を得るために指示される一日量は、式Iの化合物、例えばピメクロリムス、およびラパマイシンまたはラパマイシン誘導体が一般的に投与されている範囲と同様であるが、その低い範囲である。
【0046】
好ましい一日投与量の範囲は、1回投与量としてまたは分割投与量として、約0.1から25mgのラパマイシンまたは式IIのラパマイシン誘導体、例えば化合物Aである。適当な患者への投与量は、例えばラパマイシンまたは式IIのラパマイシン誘導体、例えば化合物Aの0.1から25mg p.o.である。
【0047】
本発明の組成物は、任意の適当な経路で、例えば式Iの化合物、例えばピメクロリムスおよびラパマイシンまたはラパマイシン誘導体、例えば式IIの化合物の投与に準じて投与できる。例えば、ラパマイシンまたは式IIのラパマイシン誘導体、例えば化合物Aは、任意の慣用の経路で、特に、経腸的に、例えば経口で、例えば錠剤、カプセル、飲用水溶液、経鼻、肺(吸入による)または非経腸的に、例えば注射用溶液または懸濁液の形で投与できる。経口投与のための適当投与単位形は、約0.05から12.5mg、通常0.25から10mgのラパマイシンまたは式IIのラパマイシン誘導体、例えば化合物Aを、1個またはそれ以上の薬学的に許容される希釈剤または担体と共に含む。
【0048】
本明細書において、“処置”または“処置する”なる用語は、防止的または予防的、ならびに治癒または疾患修飾治療の両方を意味し、疾患に罹るリスク患者または疾患に罹っていることが疑われる患者、ならびに、病気であるか、疾患または医学的状態に罹っていると診断されている患者の処置を含む。
【0049】
図面の説明
図1から図3
2×10 CD4CD45ARBHiT細胞で再構成した(reconsituted)後の、ピメクロリムス(ASM)、化合物AおよびASM+化合物で処置したまたは非処置の、SCID−IBDマウスの体重変化を示す。PBS−マウスは非移植マウスである。処置は移植1日後に開始し、毎日続ける。データは平均%体重(0日目に対する)±s.e.m.で、群あたりn=8(n=5、6または7である若干の例外が存在する)マウスであり、**p<0.01、*p<0.05は媒体処置群に対する体重減少を示す。
図1は調剤1(化合物A:0.1mg/kg/日、ASM:60mg/kg/日)を使用した結果を、
図2は調剤2(化合物A:0.1mg/kg/日、ASM:30mg/kg/日)を使用した結果を、そして
図3は調剤3(化合物A:0.05mg/kg/日、ASM:10mg/kg/日)を使用した結果を示す。
図4
種々の処置後のSCIB−IBDマウスの結腸炎症の重症度を示し、重症度スコアは実施例1に記載する通りである。
【0050】
温度は摂氏(°)で示し、未補正である。
下記の略語を本明細書で使用する:
【表1】

【0051】
実施例1
試験法
SCID−IBDマウスモデル
雌BALB/cJおよびC.B.17scid/scidマウス(Fox Chase SCID(登録商標), Bomholtgaard, Denmark)を換気したケージ台(Micro-vent type 84-II, Allentown Caging Equipment Co., Allentown, New Jersey, USA)に、特異的無病原体条件下に維持する。マウスで行う本実験法は、ライセンスナンバーMA1048/00(Magistratabteilung No. 58, Amt der Wiener Landesregierung)の下に承認されている。
【0052】
簡単に言うと、CD4CD45RBHiTリンパ球をBALB/cマウス脾臓から生存/死滅ゲートを通して2色FACS−選別により単離し、6−9週齢雌SCIDマウスに注射(2×10細胞/マウス、i.p.)する。ネガティブ・コントロールマウスにPBSをi.p.で投与し、1匹のこのようなマウスは、この免疫不全コロニーにおける可能性のある感染をモニターするための見張りとして各ケージに存在する(PBS−マウス)。
【0053】
SCIDマウスを最初にCD4CD45RBHiT細胞で処置し、続いて試験化合物またはコントロールとして媒体で処置する。試験化合物として、化合物A(RAD)およびピメクロリムス(ASM)を使用する。3つの異なる投与量を使用した異なる試験を行う。全3試験とも、細胞移植1日後から29日後まで、1群に、毎日の経口胃管栄養法により、媒体(プラセボ)を、1群に化合物A単独、1群にASM単独を、および1群に化合物Aおよびピメクロリムスの組み合わせを投与する、4群のマウスの同じ基本プロトコールにしたがう。
【0054】
投与する投与量:
試験1:調剤1:化合物A:0.1mg/kg/日、ASM:60mg/kg/日
試験2:調剤2:化合物A:0.1mg/kg/日、ASM:30mg/kg/日、および
試験3:調剤3:化合物A:0.05mg/kg/日、ASM:10mg/kg/日。
各マウスの体重を終始監視し、試験の終了時にマウスを秤量する。
【0055】
マウスに試験終了時に麻酔し、血液を心臓穿刺により採取し、血清に分離してそれを凍結し、−80°で貯蔵する。
血液をまた10mM EDTA中に取り、FACS分析のために調製する。
脾臓およびMLNを各マウスから取り、秤量し、単一細胞懸濁液のFACS分析のために処理する。
開放した腹腔の写真を撮り、次いで、直腸の直ぐ上の結腸の1cm腸の切片を組織学の検査のためにホルマリンで固定する。
標本をパラフィンに包埋し、切片(3μm厚)を切り、H&Eで染色する。
【0056】
4色FACS分析を、各マウスの血液、脾臓および腸間膜リンパ節(MLN)から調製した細胞懸濁液で行う。
抗体をPharmingenから得る。CD3およびCD4に2重陽性の細胞をリンパ球として計数する。Ly−6G(骨髄分化抗原)に陽性であり、かつ、CD3またはCD4に陰性の細胞は好中球である(それらの細胞特性(前方および側面散乱)は、それらを他の細胞と区別する)。
【0057】
サンプル当たりの細胞数を、各細胞懸濁液の総細胞数および、サンプル当たりの同定された陽性細胞の%(CellQuest Pro(登録商標)ソフトウエアを使用したFACS Calibur(登録商標))から計算する。
マウスの群におけるこれらの平均値をこのように計算できる。このデータをいくつかをさらに処理するために、決定した値を、非移植マウスで見られたバックグラウンド値を引くことにより調整し、プラセボ処置群に対する、平均細胞数の減少または実際増加の%を計算する。
【0058】
平均値として示すすべてのデータは、s.e.m.値により限定する。本体重データを、反復測定分析により、または、第一所見(first finding)平均AUCにより分析し、次いで、Tukey post hoc補正を有するANOVA多重比較検定に付する。組織学スコアを平均重症度スコアとして示し、正確なp値(StatXact-5ソフトウエア)およびBonferroni post hoc補正因子を有するWilcoxon-Mann-Whitney検定で比較する。すべての他のデータを最初に正規分布について分析し、次いで、多重比較のためのANOVA検定に付する。統計学的有意をp<0.05とする。
【0059】
SCIDマウスのCD4CD45RBHiT細胞の移入に対する増えていく反応は、T細胞増加が最初の事象であり、体重の重度の減少として測定することができる炎症性続発症、重度の結腸炎症および増加した血清ハプトグロビンレベルおよび好中球増加のような全身性徴候が続くことを示す。時間と共に増加するT細胞集団はまたリンパ器官の臓器の増加ももたらし、それは非移入SCIDマウスでは比較的小さい。T細胞移入28目までに炎症はマウスの群内で総体的に一貫し、これを試験化合物での処置の正確な効果を測定できるための、最低期間として採用する。単一の予防的化合物としての化合物AおよびASMの投与量の有効な範囲は、簡単に、同等な有効投与量範囲は、ASMに関して、30から100mg/kg/日投与、および化合物Aの0.1から1mg/kg/日であることが判明した。本試験において、各化合物の最大下投与量を使用し、同じ試験における単一および組み合わせ処置の効果を測定する。
【0060】
結果
SCID−IBDマウスの体重減少における化合物AおよびASMの組み合わせ処置の相乗効果
SCIDマウスへの疾患誘発CD4CD45RBHiT細胞の移入によりもたらされる最初の可視徴候は、体重の重度の減少であり、通常移入21日後に明白である。これらのマウス(これらの試験、例えば、図ではプラセボと呼ぶ)は、死ぬまで、一般的に、移入4から8週後まで、体重が減少し続ける。非移入マウス(図では“PBS(−マウス)”と呼ぶ)は、試験中、体重が一定のままであるか、増える。本明細書に記載の3つの別々の試験において、非移入および媒体−処置マウスの間の体重の平均差%は、16.3±1.8%と計算される。
【0061】
移入SCIDマウスを化合物A単独またはASM単独で処置したとき、体重減少の有意な、しかし、低い阻害が、60mg/kg/日のASMで処置したマウスでのみ見られる。一方、いずれかの化合物単独に使用したこのような投与量では体重減少にわずかな効果しかなかったが、化合物AおよびASMの組み合わせ投与は、ASM(10mg/kg/日)および化合物A(0.05mg/kg/日)の最低の投与量でさえ、有意な保護効果を有する、例えば図3参照。化合物AおよびASM単独の投与が体重減少において効果がないかわずかしか効果がなかったため、組み合わせ投与の保護効果は相加的ではなく、相乗的である。
【0062】
本発明の組み合わせの相乗効果を確認するさらなるデータ(示していない)が得られている。
短く言うと、我々は、各々ASMが60、30および10mg/kg/日および化合物Aが0.1、0.1および0.05mg/kg/日の最高下投与量を使用したとき、SCID−IBDモデルにおけるASMおよび化合物Aの組み合わせの相乗効果を発見している。ASM単独の60mg/kg/日の投与量はまだそれ自体有意な効果を引き出すが、他の1回処置群はわずかな疾患阻害しかもたらさない。
【0063】
具体的に、我々は下記の結果を得た:
−すべての3つの組み合わせ、最も顕著にはまたASMが10mg/kg/日および化合物Aが0.05mg/kg/日の最低投与量は、体重減少をもたらさなかった(データを示す、図1から3参照)
−10および0.05mg/kg/日の低投与量組み合わせで、結腸炎症における症状効果が示される。いずれの化合物単独でもわずかな効果しかなかったが、組み合わせ処置群における重症度スコアは最も緩和である(データは示していない)。
−ASMは、60および30mg/kg/日で血清ハプトグロビンレベルを有効に減少させ、一方、化合物Aは0.1または0.05mg/kg/日で弱く活性である。また、各化合物単独の減少%が32.7%(ASM10mg/kg/日)または27.4%(化合物A、0.05mg/kg/日)であるが、組み合わせ処置群は81.0%まで有意に阻害される、低投与量試験において相乗性が明白である(データは示していない)。
【0064】
−低投与量試験において、媒体−処置マウスと比較して、いずれの処置群でもリンパ球数の有意な減少はないが、組み合わせ処置群において数が減少する(各々血液、脾臓およびMLNで46.5、19.0および48.0%)。ASMおよび化合物Aを高投与量(各々30mg/kg/日および0.1mg/kg/日;試験2)で投与する試験において、リンパ球数の有意な減少があるが(各々血液、脾臓およびMLNで、73.0、80.3および90.7%)、単独処置群(各々ASMまたは化合物Aを単独投与)では減少しない。
【0065】
同様に、単独でMLNのリンパ球数を減少させる(73.5%)、高濃度のASM(60mg/kg/日;試験1)と、化合物A(0.1mg/kg/日)の組み合わせは、MLNでの増強させた減少(93.2%)に加えて、血液(65.4%)および脾臓(64.8%)での減少をもたらす。化合物A単独の0.1mg/kg/日投与量のリンパ球数に対する影響は、たとえあったとしても弱い。
【0066】
化合物Aと組み合わせたASM98は、SCID−IBDマウスにおける結腸炎症の減少に相乗的に働く
SCID−IBDマウスにおける結腸の炎症は、クローン病の結腸の病巣組織で観察される多くの特徴を共有する。SCID−IBDマウスの腸粘膜損傷を試験するために、結腸切片の組織学的試験を、定義された形態学的パラメーターにしたがい行った。IBDのこのモデルに関連する重症の結腸炎は、ところどころほとんどすべての粘膜下組織が包含される、大量の細胞性浸潤により特徴付けられる。浸潤物は混合物であり、リンパ球、マクロファージ、好中球および幾分好酸球が含まれる。また、凹窩構造(crypt architecture)の損失、広い伸長および上皮過形成も証拠である。酷く炎症を起こした結腸切片はまた凹窩膿瘍を有する。数字のスコアが以下のスキームにより示された:白血球浸潤には0から3点まであり、1点は軽度、2点は中程度および3点は粘膜下組織を含む重度である。杯状細胞枯渇に0点から2点まであり、2点は、アルシアン青染色が完全になく、0点は正常な染色の量および1点は中間である。粘膜過形成ならびに凹窩伸長、上皮過形成凹窩膿瘍の存在、腐食および上皮壊死を含む退行的変化には0点から3点まである。可能性のある最高点は8点であり、(PBS)−マウスは0点である。
【0067】
我々は、60mg/kg/日 ASM981単独が有意に有効であることを発見した。0.5mg/kg/日以下の化合物Aは有意に活性ではなく、このモデルでもそうである。しかしながら、2つの化合物は、一緒に、炎症(図5)を軽度(4点以下)まで減少させ、これは各々単独の相加効果では達成されない。
【0068】
結論として、本SCID−IBDモデルにおいて、単独ではわずかな効果しか有しない投与量で、ピメクロリムスおよび化合物Aの組み合わせ処置は、非常に有意な疾患の予防をもたらす。我々がみた体重および結腸炎症で見られた強い効果は、リンパ球数単独とは相関しない。相乗効果はリンパ球細胞に排他的でなく、リンパ球活性または機能、ならびに疾患に関与する他の細胞にも影響し得る。これらのデータは、ピメクロリムスおよび化合物Aの組み合わせが、SCID−IBDマウスモデルにおいて相乗的に作用することを確認する。
【0069】
実施例2
化合物Aおよびピメクロリムスを含む錠剤の製造
30mgのピメクロリムスの固体分散体および1.00mg化合物Aの固体分散体と、担体として160mgのヒドロキシプロピルメチルセルロース(3cps)を含む総重量750mgの錠剤を、8.90gのラクトース(200メッシュ)、0.10mgのブチルヒドロキシトルエン、381.25mgの噴霧乾燥ラクトース、150.00mgのクロスポビドン、11.25mgのコロイド状二酸化ケイ素(Aerosil 200(登録商標))および7.50mgのステアリン酸マグネシウムを混合し、得られた混合物を乾式造粒に付し、得られた造粒した混合物を総重量750mg(±10%)の錠剤に圧縮する。
経口使用のための錠剤を得る。
【0070】
実施例3
本明細書に記載の疾患および状態の処置における式IIの化合物の有用性
A)インビボ:アレルギー性またはアレルゲン−誘発接触性皮膚炎のモデルにおける局所投与後の活性
A1)オキサゾロンアレルギー(マウス):
10μlの2%オキサゾロン溶液を、マウスの腹部皮膚に感作のために塗る。8日後、10μlの2%オキサゾロン溶液への2回目の暴露を、耳介の末端の内側表面上に塗ることにより行う。2回目の暴露が攻撃反応を発生してから2時間20分後、試験溶液を2回目の暴露位置に塗る。試験物質による炎症の阻害の評価を、試験物質を溶解するのに使用した溶媒単独で処置した非処置群との比較により行う。2回目の暴露から24時間後、動物を殺し、分けた耳介を秤量する。2つの耳介の重量差を評価に使用する;試験群および溶媒コントロール群における個々の差異を統計的に比較する(単純分散分析により、続いて、正規分布しているとき、正規分布によるDunnet検定により、そうでなければKruskal-Wallis U-検定およびWilcoxion-Mann-Witney U-検定)。
【0071】
A2)ジニトロフルオロベンゼン(DNFB)アレルギー(ブタ):
接触性アレルギーを誘発するためのDNFBまたはジニトロクロロベンゼン(DNCB)の使用は古典的実験手法であり、またヒトでも使用されている(P.S.Friedmann and C.Moss, Models in dermatology, 1987, Maibach, Lowe, Ed., Vol.2, p.275-281, Karger-Basel)。ブタとヒトの皮膚の類似性から、物質の局所試験のための対応するモデルがブタで構築されており、1日目および3日目に、各100μlの10%DNFB調製物を、各々右および左腿の内部表面に塗る。14日目に各ブタを5cm直径の円状マーキング(動物あたり8マーキング)で背中の右側および左側に印をし、各150μlの5%DNFB調製物をその上に投与する。本物質をガレヌス組成物または溶液のいずれかの形で試験する。担体をいずれの場合もプラセボコントロールとして使用する。
【0072】
試験産物を注意深く4回適応する(攻撃反応の開始後最初は20分、次いで6、24および32時間後)。各投与前に、試験領域を赤味、腫脹および軟度について評価する。試験領域の着色を次いで繰り返し反射計で定量する。明度(L*)および彩度(C*)のデータから、紅斑指数を下記式にしたがい計算する:100−L*×C*。平均紅斑指数は、下記の式にしたがい、活性を反映する:
【数1】

デルタ=最初の値からの差異
【0073】
B)インビボ:刺激誘発皮膚炎モデルにおける局所投与後の活性(マウス):
B1)12−O−テトラデカノイルホルボール−13−アセテート(TPA)−誘発皮膚炎:
試験動物におけるTPAでの刺激は、局所投与後のその抗炎症性活性を試験するための方法である(Maibach, Lowe, Ed. Models in Dermatology, Vol. 3, 1987, p.86-92, Karger-Basel)。NMRIマウスに10μlのTPA溶液を右耳介の内側および外側に投与する(2×10μl/マウス=2×0,5μl TPA/マウス)。左耳介は未処置のままである。処置を刺激30分後に、2×μlの試験溶液を、上記のように刺激した耳表面に塗ることにより行う。試験群の評価は、右耳介が刺激溶液のみで処置されている群および試験物質のために使用した溶媒で処置されている群の比較により行う。動物を刺激物質の投与6時間後に殺し、耳介を分け、秤量する。2つの耳介の重量の差を評価に使用し、ここで、試験群の個々の差を対照群の個々の差と比較する(A1に記載のように)。
【0074】
B2)クロトン油誘発皮膚炎
クロトン油を、TPAのように、刺激誘発皮膚炎の誘発に使用でき、そこで物質をその抗炎症性活性に関して試験できる(Maibach, Lowe, Ed., Model in Dermatology, Vol.3, 1987, p.86-92, Karger-Basel)。NMRI−マウスに、15μlの0.23%クロトン油(ジメチルアセトアミド、アセトンおよびエタノール 2/4/4の混合物中)を右耳介の内側に投与する。処置を刺激と同時に行い、試験物質を耳の試験部位に適用する刺激剤の溶液中に溶解しておく。試験群の評価は、耳介に刺激剤溶液のみを投与された群との炎症の比較により行う。動物を刺激剤の投与6時間に殺し、耳介を分け、秤量する。試験群の個々の差を対照群の個々の差と比較することにより、2つの耳介の重量の差を評価に使用する(A1に記載のように)。
【0075】
C)インビボ:アトピー性皮膚炎(ヒト):
中程度から重度のアトピー性皮膚炎の7から12名の患者(合計)のむさき、二重盲検定において、皮膚の200から1000cmの定義した症状を示す領域にわたり0.05から2重量%の式IIの化合物(組成物の総重量に基づく)を含む組成物で3週間、1日2回処置する。処置の初日と最終日の間の紅斑、浮腫および痒みの概要の得点を評価する。試験薬剤の耐容性および慣用の安全性パラメーター(血液学および臨床化学を含む)を記録する。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】調剤1(化合物A:0.1mg/kg/日、ASM:60mg/kg/日)を使用した結果を示す。
【図2】調剤2(化合物A:0.1mg/kg/日、ASM:30mg/kg/日)を使用した結果を示す。
【図3】調剤3(化合物A:0.05mg/kg/日、ASM:10mg/kg/日)を使用した結果を示す
【図4】種々の処置後のSCIB−IBDマウスの結腸炎症の重症度を示し、重症度スコアは実施例1に記載する通りである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラパマイシンまたはラパマイシン誘導体と式
【化1】

〔式中、
は式(a)
【化2】

(式中、
はクロロ、ブロモ、ヨードまたはアジドであり、Rはヒドロキシまたはメトキシである)
の基であり、そして
はヒドロキシであり、そして10、11位の間に一重結合が存在するか;または存在せず、そして10、11位の間に二重結合が存在するか
または
は式(b)または(c)
【化3】

(式中、
は上記で定義の通りである)
の基であり、そして
はヒドロキシであり、そして10、11位の間に一重結合が存在し、
はオキソであり、23、24位の間に一重結合が存在するか;所望により保護されているヒドロキシであり、そして23、24位の間に一重結合が存在するか;または存在せず、そして23、24位の間に二重結合が存在し;
はメチル、エチル、プロピルまたはアリルである。〕
の化合物の組み合わせの、炎症性腸疾患およびそれに関連する疾患の処置用薬剤の製造のための使用。
【請求項2】
アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎およびさらなる湿疹性皮膚疾患、脂漏性皮膚炎、接触過敏症、扁平苔癬、天疱瘡、類天疱瘡、表皮水疱症、蕁麻疹、血管性浮腫、脈管炎、紅斑、皮膚好酸球増加症およびアクネからなる群から選択される疾患の処置用薬剤の製造のための、ラパマイシンまたはラパマイシン誘導体と式Iの化合物の組み合わせの使用。
【請求項3】
式Iの化合物が、式
【化4】

である、請求項1または2のいずれかに記載の使用。
【請求項4】
ラパマイシン誘導体が、式
【化5】

〔式中、
はメチルまたは(C3−6)アルキニルであり、
はH、−CH−CH−OH、3−ヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)−2−メチル−プロパノイルまたはテトラゾリルであり、
Xは=O、(H,H)または(H,OH)である。
ただし、Xが=Oであり、かつRがCHであるとき、RはH以外である。〕
の化合物、または、Rが−CH−CH−OHであるとき、そのプロドラッグである、請求項1から3のいずれかに記載の使用。
【請求項5】
ラパマイシン誘導体が40−O−(2−ヒドロキシエチル)−ラパマイシンであり、式Iの化合物がピメクロリムスである、請求項1から4のいずれかに記載の使用。
【請求項6】
固体分散体の形のラパマイシンまたはラパマイシン誘導体、固体分散体の形の式Iの化合物および担体を含む、医薬組成物。
【請求項7】
担体がセルロースである、請求項6記載の医薬組成物。
【請求項8】
ラパマイシンまたはラパマイシン誘導体および式Iの化合物を錠剤の形で含む、医薬組成物。
【請求項9】
ラパマイシンまたはラパマイシン誘導体、式Iの化合物、担体、滑剤、充填剤、流動化剤(flowing agent)および崩壊剤を含む、請求項6から8のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項10】
炎症性疾患または自己免疫疾患を含む免疫介在疾患の処置法であり、このような処置を必要とする対象に、有効量のラパマイシンまたはラパマイシン誘導体と式Iの化合物の組み合わせを投与することを含む、方法。
【請求項11】
該疾患が、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎およびさらなる湿疹性皮膚疾患、脂漏性皮膚炎、接触過敏症、扁平苔癬、天疱瘡、類天疱瘡、表皮水疱症、蕁麻疹、血管性浮腫、脈管炎、紅斑、皮膚好酸球増加症およびアクネからなる群から選択される、請求項10記載の方法。
【請求項12】
該疾患が炎症性腸疾患およびそれに関連する疾患である、請求項10記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−515017(P2006−515017A)
【公表日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−518678(P2005−518678)
【出願日】平成16年3月16日(2004.3.16)
【国際出願番号】PCT/EP2004/002714
【国際公開番号】WO2004/082681
【国際公開日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】