説明

炎症性免疫アレルギー成分を含みうる角化障害に関連した皮膚病変の治療のためのネパフェナクまたはその誘導体の使用

本発明は、炎症性免疫アレルギー成分を含みうる角化障害に関連した皮膚病変の治療における使用のための製薬組成物の製造のための、ネパフェナクまたはその誘導体の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一つの式(I)の化合物またはその誘導体、好ましくはネパフェナクの、炎症性免疫アレルギー成分を含みうる角化障害に関連した皮膚病変、特に酒さ、ざ瘡、乾癬、またはアトピー性皮膚炎(湿疹)の治療における使用のための製薬組成物の製造のための使用に関する。
【背景技術】
【0002】
酒さは、血管不安定性に関連する、一般的な慢性且つ進行性の皮膚病である。これは、顔の中央部分を侵し、且つ顔の赤らみもしくは顔面紅潮、顔面紅斑、丘疹、膿疱、及び血管拡張症によって特徴付けられる。重篤な場合、特に男性においては、最も一般的には鼻の軟組織の膨張の形態で、鼻瘤として既知の球状膨張を発生する、象皮病を発現しうる。
【0003】
酒さは、一般的に25歳乃至70歳の年齢に起こり、顔色の白い人において格段に頻繁にみられる。この病変は一般的には男性においてより重篤であるものの、特に女性の方がいっそう罹患しやすい。酒さは、慢性であり、且つ、悪化の時期と回復の時期とを伴って長年に亘り継続する。
【0004】
酒さの病理は、良く理解されていない。多くの要因が、必ずしもこの病理を誘発することなく含まれうる。これらは、例えば、精神的要因、胃腸障害、環境要因(日光、温度、湿度への暴露)、感情的要因(ストレス)、食事要因(アルコール、スパイス)、ホルモン要因、または血管性要因、あるいはまたピロリ菌への感染である。
【0005】
酒さの軽微な形態は、局所処置、例えばメトロニダゾール、アゼライン酸、過酸化ベンゾイル、またはレチノイン酸を用いて治療可能である。この病変のより重篤な形態については、これらはサイクリン類を用いる一般的な抗生物質治療によく反応する。しかしながら、これらの治療は患者にとって不快な副作用、例えば炎症または不耐性現象を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許5,475,034号明細書
【特許文献2】米国特許4,313,949号明細書
【特許文献3】国際特許出願WO02/13804号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
さらにまた、要因が多数である酒さの特徴のため、この病変のためには非常に多数の治療が存在するが、患者にとって危険性のない有効な治療の探索が継続されている。
【0008】
ざ瘡は、皮脂腺の多い皮膚(顔、肩甲領域腕、及び間擦領域)に罹患する、多数要因の一般的な病理である。これは、最も一般的に起こる皮膚病の形態である。下記の五つの行理容院が、ざ瘡の形成において決定的役割を担う。
1. 遺伝的疾病素質
2. 皮脂の過剰生成(脂漏症)
3. 男性ホルモン
4. 毛孔性角化障害(面ぽう生成)
5. 細菌定着及び炎症性要因
【0009】
ざ瘡には数種類の形態が存在し、これら全てに共通する要因は、毛包脂腺小胞の攻撃である。特に、集簇性ざ瘡、襟首のざ瘡ケロイド、薬物性ざ瘡、再発性粟粒ざ瘡、壊死性ざ瘡、新生児ざ瘡、月経前ざ瘡、職業性ざ瘡、酒さ性ざ瘡、老人性ざ瘡、日光性ざ瘡、及び尋常性ざ瘡を挙げてよい。
【0010】
多形性若年性ざ瘡としても既知である尋常性ざ瘡が、最も一般的である。これには、四つの段階が含まれる。
・ 段階1は、面ぽう性ざ瘡(comedonal acne)に相当し、多数の開放性及び/または閉塞性の面ぽう並びに多数の小嚢胞によって特徴付けられる。
・ 段階2、もしくは丘疹膿疱性ざ瘡は、軽度から中等度の重篤度のものである。これは、多数の開放性及び/または閉塞性の面ぽう並びに多数の小嚢胞によって特徴付けられるが、のみならず、赤い丘疹及び膿疱によっても特徴付けられる。これは、主に顔が罹患するものであり、わずかな瑕を残す。
・ 段階3もしくは丘疹性ざ瘡は、より重篤であって、且つ背中、胸部、及び肩に拡がる。これは、多数の瑕を伴う。
・ 段階4もしくは嚢胞性ざ瘡は、多数の瑕を伴う。これは、嚢胞を呈し、更に大型の、痛みを伴う、紫色を帯びた膿疱を有する。
【0011】
上述の様々な形態のざ瘡は、活性剤、例えば抗脂漏薬及び抗感染薬で、例えば過酸化ベンゾイル(特にPierre Fabre社により市販の製品Eclaran(登録商標))で、レチノイド、例えばトレチノイン(特にGalderma社により市販の製品Retacnyl(登録商標))またはイソトレチノイン(Laboratoires Rocheにより市販の製品Roaccutane(登録商標))で治療可能である。
【0012】
しかしながら、これらの治療によっては、多数の副作用(特に、皮膚及び粘膜の乾燥、唇の痛み及び腫れ、皮膚の剥離、掻痒)が誘発される。然るに、患者に対して如何なる危険性ももたらさない、有効な治療が求められている。
【0013】
同様に、アトピー性皮膚炎あるいはアトピー性湿疹は、悪化を経て発展する、痒疹性の、慢性の紅斑小水疱性−紅斑落屑性の炎症性皮膚炎であり、これは原則的に幼児が罹患するものである。急性期は、経時的に、
・ 紅斑期、その後の
・ 皮膚が脆い外観を有する小嚢期、
・ 浸出及び疥癬期、その後の
・ 落屑期
によって特徴付けられる。
【0014】
これら全ての時期は、時間と共に急速に段階を進め(concertina)、アトピー性皮膚炎は、乾燥した乾燥落屑性の皮膚、ひび割れ、及び病斑の苔蘚化を伴って慢性になる。
【0015】
診断のための主な普遍的基準は、掻痒症である。しかしながら、以下の基準もまたこの病理を識別するために使用することができる。折れ曲がり部分の皮膚科病歴、足首または首の前面の罹患;乾燥症の病歴(皮膚の乾燥);喘息または鼻炎の個人的病歴;4歳未満の幼児における、折れ曲がり部分の皮膚炎、または頬、額、及び手足の外部表面の湿疹;2歳以前に発症する:魚鱗癬及び/または毛孔性角化症及び/または小皺の多い掌、皮膚感染し易い傾向、乳首湿疹、口唇炎、再発性結膜炎、デニー・モーガン皺、円錐角膜、前嚢下白内障、眼窩周囲色素沈着、白色粃糠疹(乾燥した白色斑)、首前面の皺の炎症、発汗誘発性掻痒症、羊毛及び脂質溶媒への不耐性、白色皮膚描記症もしくは擦過に対する白色線の出現の遅延、環境及び感情要因の影響下での病斑の悪化。
【0016】
アトピー性皮膚炎は、おそらくは汚染によっても悪化するが、逆説的に、皮膚バリアを損なう洗剤の使用を伴う、優れた衛生状態によって悪化する。ある場合には、悪化は食事要因(卵アレルギー、ピーナッツアレルギー、または牛乳蛋白質に対するアレルギー)、空中要因(コナダニ、花粉、動物鱗屑)、または接触要因(硬水による炎症または香料もしくは金属に対する接触アレルギー)によって起こりうる。
【0017】
この皮膚炎についての処置は、炎症及び掻痒を制御して患者を楽にさせることを目的とする対症療法である。皮膚処置は、毎日行われるべきであり、然るに患者による良好な順守:非洗剤製品での洗浄、湿疹への皮膚コルチコイドの適用及びそれ以外の身体部分への保湿剤の適用が要求される。このように、酒さについては、患者に対して如何なる危険性も伴わない、有効な治療の探索が継続されている。
【0018】
掻痒症は、十分に限定された、しばしば掻痒性の、浸潤紅斑落屑性病斑(痒みを伴う)によって特徴付けられる慢性の皮膚病である。掻痒症は、暑い地域に住む患者には普通に存在するが、欧州北部の患者の20乃至30%に見られるのみである。掻痒症の好発部位は、肘、膝、大腿、あるいは摩擦または微視的損傷の領域、更に頭皮である。掻痒症の病理は複雑である。掻痒症の病斑は、角化細胞の増加を伴う表皮過剰増殖並びに中程度の真皮及び表皮の炎症によって特徴付けられる。
【0019】
掻痒症は、炎症性過程に関連する遺伝子異常に起因しうる。しかしながら、真皮−表皮相互作用に関与する信号は、依然として明確に理解されてはいない。
【0020】
抗掻痒症治療の目的は、皮膚病の重篤度を軽減して患者の身体的及び精神的な健康を回復させることである。現行の局部処置は中程度の形態の掻痒症に使用され、全身的処置は重篤な形態のために留保される。しかしながら、ほとんどの抗掻痒症治療は、有効性が不定であり、多少によらず重篤な副作用を有し、時には利用が不快なものである。したがって、患者に対する如何なる危険性も伴わない、有効な治療が依然として求められている。
【課題を解決するための手段】
【0021】
驚くべきことに、出願人は、ここに、下記式(I)の化合物(ネパフェナク)が、炎症性免疫アレルギー成分を含みうる角化障害に関連した皮膚病変の治療に適当であり、特に酒さ、ざ瘡、乾癬、またはアトピー性皮膚炎(湿疹)の治療に非常に適当であることを見いだした。
【化1】

【0022】
ネパフェナクとして既知の、式(I)の化合物−もしくは2-アミノ-3-ベンゾイルフェニルアセトアミドは、特に米国特許5,475,034号明細書及び米国特許4,313,949号明細書に記載されている。こうした化合物は、鎮痛及び解熱特性を有し、眼科病理の治療において使用可能である。しかしながら、国際特許出願WO02/13804号明細書に記載の通り、ネパフェナクもまた様々な網膜症及び癌の治療において使用可能である。
【0023】
従って、本発明の主題は、式(I):
【化2】

の少なくとも一つの化合物またはその誘導体の、炎症性免疫アレルギー成分を含みうる角化障害に関連した皮膚病変、有利には、酒さ、ざ瘡、乾癬、及びアトピー性皮膚炎(湿疹)の治療における使用のための製薬組成物の調製のための使用である。
【0024】
「式(I)の化合物の誘導体」なる語は、特に製薬品として許容される塩、酸、及び水和物を意味することを企図する。
【0025】
「塩」なる語は、特に、製薬品として許容される酸または塩基と形成された塩を意味することを企図する。式(I)の化合物の塩は、好ましくはこの化合物のアンモニウム形態(-NH3+)である。
【0026】
「酸」なる語は、好ましくは、式(I)の化合物のカルボン酸形態、すなわちアセトアミド官能基の-NH2基が-OH基で置換されたものを意味する。こうした形態は、アムフェナク(2-アミノ-3-ベンゾイルフェニル酢酸)に相当する。酸塩もまた本発明によって網羅され、こうした塩は、式(I)の化合物の酸と金属カチオン、例えばナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、銅、またはアルミニウム、好ましくはナトリウムとで形成されるものである。
【0027】
「水和物」なる語は、水との混合によって得られる化合物を意味することを企図する。
【0028】
かくして、式(I)の化合物及びその誘導体、特にネパフェナクは、製薬組成物に処方することができる。前記組成物は、製薬品として許容される媒質中に、式(I)の少なくとも一つの化合物またはその誘導体、好ましくはネパフェナクを含む。
【0029】
「製薬品として許容される媒質」なる語は、皮膚、粘膜、及び/または身体表面成長物と適合性である媒質を意味することを企図する。
【0030】
本発明による組成物は、この組成物の全重量に対して0.001乃至10質量%の式(I)の化合物またはその誘導体を含む。好ましくは、本発明による組成物は、この組成物の全重量に対して0.1乃至5質量%の式(I)の化合物またはその誘導体を含む。
【0031】
本発明により使用可能な製薬組成物は、皮膚の治療における使用のためのものであり、局所的に、非経口的に、または経口的に投与することができる。好ましくは、この組成物は局所的に投与される。
【0032】
経口的に投与される場合、この製薬組成物は、液体、ペースト状、または固体形態、粉末の形態であって良く、特に錠剤、ゲルカプセル、糖衣錠、シロップ、懸濁液、溶液、粉末、顆粒、エマルション、あるいは制御放出のための脂質もしくはポリマー小胞、またはナノスフェアもしくはミクロスフェアの形態であって良い。
【0033】
非経口的に投与される場合、この組成物は、点滴向けまたは注射向けに溶液または懸濁液の形態であって良い。
【0034】
局所投与とは、眼の結膜へではなく、皮膚への適用に特に適当である組成物を意味することを企図する。従って、この組成物は、液体、ペースト状、または固体形態、特に軟膏、クリーム、乳剤、膏薬、粉末、浸透性パッド、合成洗剤、ワイプ、溶液、ゲル、スプレー、フォーム、懸濁液、ローション、スティック、シャンプー、または洗浄ベースの形態であってよい。これはまた、制御放出のために、脂質もしくはポリマー小胞またはナノスフェアまたはミクロスフェアの懸濁液の形態、あるいはポリマーパッチの形態及びヒドロゲルの形態であってもよい。局所適用のためのこの組成物は、無水形態、水性形態、またはエマルションの形態であってよい。
【0035】
本発明の一つの好ましい変形では、本発明による局所用製薬組成物は、クリームまたはローションタイプのエマルションの形態、ゲルの形態、または溶液の形態である。
【0036】
本発明による組成物がエマルションの形態である場合には、これは少なくとも一つの界面活性剤を含む。実際のところ、従来技術に開示される通常のエマルションは、事実上均一な、二つの非混和性液体の不安定なシステムであって、その一方が他方の中に微細な液滴の形態で分散している(ミセル)。この分散物は、界面のレベルでの構造及び力の割合を調整し、これにより界面張力エネルギーを低減させることによって分散物の安定性を増大させる、界面活性乳化剤の作用によって、安定化されている。
【0037】
界面活性乳化剤は、油への親和性を有する疎水性部分と水への親和性を有する親水性部分とを有し、かくしてこれら二つの相の間のリンクを作り出す両性化合物である。イオン性または非イオン性の乳化剤は、こうして、油/水エマルションを界面で吸着し、且つ液晶のラメラ層を形成することにより安定化する。
【0038】
非イオン性界面活性剤の乳化性能は、分子の極性に密接に関連している。この極性は、HLB(親水性/親油性バランス)によって定義される。一般的に、従来のエマルションは、そのHLBが全く相違しうる界面活性剤の混合物によって安定化されるが、前記界面活性剤のこの混合物中の割合は、乳化しようとする脂肪相に必要とされるHLBに対応する。
【0039】
本発明によって使用可能な界面活性剤の中では、例として、Uniqema社によりArlacel 165FLの名で市販の、またはSEPPIC社によりSimulsol 165の名で市販のグリセリル/PEG100ステアレート、ポリオキシエチレン化脂肪酸エステル類、例えばUniqema社により市販のArlatone 983、あるいはBrij 72の名で市販のポリオキシエチレン化(2)ステアリルアルコールと組み合わせたUniqema社によりBrij721の名で市販のポリエチレン化(21)ステアリルアルコール、ソルビタンエステル類、例えばICI社によりArlacel 80の名で市販の、またはCroda社によりCrill 4の名で市販のソルビタンオレエート、ICI社によりArlacel 83の名で市販の、またはSeppic社によりMontane 83の名で市販のソルビタンセスキオレエート、あるいはまたソルビタンイソステアレート、脂肪アルコールエーテル類を挙げてよい。
【0040】
本発明による組成物は、組成物全重量に対して上限15質量%、好ましくは2乃至12質量%、特に2乃至6質量%の適当な界面活性乳化剤を有利に含む。
【0041】
然るに、エマルション形態の組成物は、
a) 脂肪物質を含む油性相;
b) 少なくとも一つの界面活性乳化剤;
c) 式(I)の化合物及びその誘導体から選択される少なくとも一つの化合物;
d) 溶媒及び/又は活性剤のための浸透促進剤;及び
e) 水
を含む。
【0042】
本発明による組成物の油性相は、例えば、植物性、鉱物性、動物性、または合成の油、シリコーン油、Guerbetアルコール、または別の脂肪物質、及びこれらの混合物を含んでよい。
【0043】
鉱物性油の例としては、例えば様々な粘度のパラフィンオイル、例えばEsso社より市販のPrimol 352、Marcol 82、またはMarcol 152を挙げてよい。
【0044】
植物性油としては、スイートアーモンドオイル、ヤシ油、大豆油、ゴマ油、またはサンフラワーオイルを挙げてよい。
【0045】
動物性油としては、ラノリン、スクアレン、魚油、またはミンクオイルを挙げてよい。
【0046】
合成油としては、エステル類、例えば特にCognis France社によりCetiol SNの名で市販のセテアリールイソノナノエート、ジイソプロピルアジペート、例えばISF社によりCeraphyl 230の名で市販の製品、イソプロピルパルミテート、例えばCroda社によりCrodamol IPPの名で市販の製品、あるいはカプリル/カプリン酸トリグリセリド、例えばHuls/Lambert Riviere社により市販のMiglyol 812を挙げてよい。
【0047】
シリコーン油としては、ジメチコーン、例えばDow Corning 200 fluidの名で市販の製品、シクロメチコーン、例えばDow Corning社によりDow Corning 244 fluidの名で市販の製品、あるいは、SACl-CFPA社によりMirasil CM5の名で市販の製品を挙げてよい。
【0048】
別の脂肪物質としては、脂肪酸類、例えばステアリン酸、脂肪アルコール類、例えばステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、及びセチルアルコール、あるいはこれらの誘導体、ワックス類、例えば蜜蝋、カルナウバワックス、またはカンデリラワックス、並びにゴム類、特にシリコーンゴム類を挙げてよい。
【0049】
油性相の成分は、例えば粘稠度に関してまたはテクスチャーに関して所望の特性を有する組成物を調製するために、当業者によって様々な方法で選択されてよい。
【0050】
好ましくは、本発明による組成物の油相は、合成油及び/又はシリコーン油を含み、合成油としてはイソプロピルパルミテート、例えばCroda社によりCrodamol IPPの名で市販の製品またはイソプロピルミリステート、例えばCroda社によりCrodamol IPMの名で市販の製品が好ましく、シリコーン油としてはジメチコーンが好ましい。
【0051】
本発明によるエマルションの油相は、組成物の全重量に対して3乃至50質量%、好ましくは6乃至20質量%の含量で存在してよい。
【0052】
式(I)の化合物またはその誘導体のための溶媒及び/又は浸透促進剤の例としては、好ましくはプロピレングリコール、アルコール類、例えばエタノール、イソプロパノール、またはブタノール、N-メチル-2-ピロリドンまたはDMSO、ポリソルベート80、フェノキシエタノール、及びこれらの混合物を挙げてよい。
【0053】
本発明の組成物は、0.1乃至20%、好ましくは1乃至10%の、式(I)の化合物またはその誘導体のための溶媒及び/又は浸透促進剤を含む。
【0054】
本発明の組成物はまた、組成物全重量に対して30乃至95質量%、好ましくは60乃至80質量%の範囲の水を含む。本発明による組成物中に使用される水は、好ましくは精製水である。
【0055】
本発明による組成物はまた、ゲルの形態であって良く、そうであれば、これは当該組成物の全重量に対して0.01乃至5質量%の範囲で一つ以上のゲル化化合物を含む。本発明による組成物中に使用可能なゲル化剤の中では、カルボキシビニルポリマー類(カーボマー類)を挙げてよく、カーボマーの非限定的例としては、Noveon社により市販の、Carbopol 981、Carbopol ETD 2020、Carbopol 980、Carbapol Ultrez 10 NF、またはPemulen TR1を挙げてよい。
【0056】
セルロース性誘導体、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはヒドロキシエチルセルロース;キサンタンガム、アルミニウム/マグネシウムシリケート類、例えばVanderbiltにより市販のVeegum KまたはVeegum Ultra、グアーガム類等、ポリアクリルアミド類、例えばポリアクリルアミド/イソパラフィンC13-14/ラウレス-7混合物、例えばSeppic社によりSepigel 305の名で市販のもの、またはSimulgel 600 PHAの名でのアクリルアミド/AMPSコポリマー分散物40%/イソヘキサデカン混合物、または一群の変性澱粉類、例えばNational Starchにより市販のStructure Solanace、あるいはこれらの混合物を挙げてよい。
【0057】
本発明の組成物は、好ましくは0.01乃至5%、好ましくは0.1乃至3%のゲル化剤を含む。
【0058】
前記組成物が溶液の形態である場合には、これは式(I)の化合物またはその誘導体に加えて、水性もしくは油性の溶液及び、任意に、上述のような活性剤のための一つ以上の溶媒及び/又は浸透促進剤を含む。
【0059】
本発明による製薬品組成物は、不活性添加剤またはこれら添加剤、例えば、
・保存料;
・安定化剤;
・保湿剤;
・水分制御剤;
・pH制御剤;
・浸透圧調節剤;
・UV-A及びUV-Bスクリーン;
・抗酸化剤;
の組み合わせを更に含んでよい。
【0060】
むろん、当業者であれば、本発明に本来的に付随する有利な特性が、行おうとする添加によって損なわれないかまたは実質的に損なわれないような方法で、これらの組成物に添加される任意の化合物を選択することができよう。
【0061】
これらの添加剤は、組成物全重量に対して0.001乃至20質量%で存在してよい。
【0062】
式(I)の化合物またはその誘導体の医薬としての、特に本発明による局所用製薬組成物のための使用は、特に酒さ、乾癬、またはアトピー性皮膚炎(湿疹)の治療向けである。
【0063】
式(I)の化合物及びその誘導体を含む組成物の様々な処方が、例示のために、且つその本質を全く制限することなく、ここに与えられる。
【実施例1】
【0064】
(実施例1:組成物1)
【表1】

【0065】
(実施例2:組成物2)
【表2】

【0066】
(実施例3:生物学的試験)
式(I)の化合物の評価を、アラキドン酸の溶液の、マウスの耳への局所適用によって誘発される炎症のモデルにおいて実行する。炎症反応の強度を、1、2、及び6時間の時点で、水腫反応を反映する耳の厚さを測定することによって引き続き評価する。式(I)の化合物の活性は、未処置の動物と比較した反応の抑制割合によって特徴づけられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

の化合物及びその誘導体から選択される少なくとも一つの化合物の、炎症性免疫アレルギー成分を含みうる角化障害に関連した皮膚病変の治療における使用のための製薬組成物の調製のための使用。
【請求項2】
式(I)の化合物の誘導体が、この化合物の塩、酸、及び水和物から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記組成物が、ネパフェナクまたはアムフェナクを含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
前記組成物が、経口適用に適当な形態であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記組成物が、局所適用に適当な形態であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
前記組成物が、エマルション、ゲル、または溶液の形態であることを特徴とする、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
前記組成物が、式(I)の化合物またはその誘導体を、組成物全重量に対して0.001乃至10質量%含むことを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
前記皮膚病変が、酒さ、ざ瘡、乾癬、及びアトピー性皮膚炎から選択されることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
前記皮膚病変が、ざ瘡であることを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
前記皮膚病変が、酒さであることを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の使用。

【公表番号】特表2010−513424(P2010−513424A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−542155(P2009−542155)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【国際出願番号】PCT/FR2007/052559
【国際公開番号】WO2008/084171
【国際公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(599045604)ガルデルマ・リサーチ・アンド・デヴェロップメント (117)
【Fターム(参考)】