説明

炎症性肺疾患の予防及び治療薬

【課題】炎症性肺疾患の予防又は治療薬を提供する。
【解決手段】治療有効量の、赤血球産生活性を有する、ヒトエリスロポエチン及び/又はヒトエリスロポエチン類似体を含有する炎症性肺疾患の予防又は治療薬。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトエリスロポエチン又はその類似体を使用して炎症性肺疾患を予防又は治療するための医薬に関する。
【背景技術】
【0002】
肺は、気道(鼻腔、口腔、咽頭、喉頭、気管、気管支、細気管支)と肺胞(肺胞道、肺胞)から成る器官である。肺の急性の疾患には、吸引性肺炎、細菌性・ウイルス性肺炎、成人呼吸切迫症候群(ARDS)、間質性肺炎などがあり、慢性の疾患には気管支炎、肺気腫、肺繊維症、喘息などの疾患がある。
【0003】
これらの疾患においては、好中球などの炎症性細胞から種々のサイトカイン(インターフェロンやインターロイキンなど)、成長因子(PDGFなど)、メディエーター(ロイコトリエンやPAFなど)、蛋白分解酵素(エラスターゼなど)が産生・放出され、肺間質や肺胞などの肺組織を破壊する。さらに、肺組織の破壊が進むと、肺炎や気道の閉塞による呼吸障害が生じる。例えば、閉塞性肺疾患は気管支炎、肺気腫、喘息またはこれらの併発により惹起される閉塞性換気障害を特徴とする疾患である。閉塞性換気障害は気管支炎による気道病変と肺気腫に起因する肺胞病変とがさまざまに組み合わさって起こるものであり、通常、閉塞性肺疾患による閉塞性換気障害は緩徐に進行し、不可逆的である。気管支炎は、慢性または反復性に喀出される気道分泌物の増加状態の継続が認められる病態を示す。肺気腫は呼吸器官支障壁または肺胞壁の破壊と、終末細気管支より末梢の気腔の異常拡張を特徴とする。肺気腫における細胞破壊を修復することは困難で、対策としては、進展の阻止、合併症としての感染、喘息治療、急性増悪の的確な治療が問題となる。
【0004】
閉塞性肺疾患の治療手段としては、気管支拡張剤(β刺激薬、抗コリン薬)、副腎皮質ホルモン、抗生剤の投与、酸素療法などが用いられている(例えば、特開2004-307351、特開2003-221335、特開2003-104890、特開2002-326957、特開2002-138090、特表2002-512193、特表2002-508313)。また、びまん性肺疾患の予防又は治療薬の例が、特開2002-220343、再表99/024069号公報に記載されている。
【0005】
エリスロポエチン(以下「EPO」とも略称する)は、赤血球前駆細胞の赤血球への成熟に必要な糖タンパク質ホルモンである。それは腎臓で産生され、循環中の赤血球のレベルを調節するのに必須である。低い組織酸素レベルによって特徴付けられる状態がEPOの産生増加のシグナルを伝達し、ついで、赤血球産生を刺激する。例えば慢性腎不全症(CRF)で見られるように腎機能が喪失すると、その結果一般に、EPOの産生減少と、それと同時の赤血球の低減が起こる。ヒト尿EPOは、再生不良性貧血症の患者からMiyakeら(J. Biol. Chem., 252:5558 (1977))により精製されたが、この供給源から得られた精製EPOタンパク質の量は治療用途には不十分であった。ヒトEPOをコードする遺伝子の同定とクローニング、並びに組換えタンパク質の発現が、Linに対する米国特許4,703,008に開示された。また、細胞培地からの組換えヒトエリスロポエチンの精製方法は、Laiらに対する米国特許4,667,016に開示された。哺乳動物宿主細胞からの生物学的に活性なEPOの製造技術は、治療用途に適したEPO量を初めて入手可能にした。
【0006】
ヒト尿由来EPO(Miyakeら、上記)及び哺乳動物細胞内で発現された組換えヒトEPOはともに、糖タンパク質の総分子量の約40%からなる3つのN結合オリゴ糖鎖及び1つのO結合オリゴ糖鎖を含む。N結合グリコシル化は、24位、38位及び83位に位置するアスパラギン残基で起こるが、一方、O結合グリコシル化は、126位に位置するセリン残基で起こる(Laiら, J. Biol. Chem., 261:3116 (1986); Broudyら, Arch. Biochem,. Biophys., 265:329 (1988))。オリゴ糖鎖は、末端がシアル酸残基で修飾されており、N結合鎖は一般に1鎖あたり最高4つのシアル酸を有し、またO結合鎖は最高2つのシアル酸を有することが示されている。したがって、EPOポリペプチドは、最高で合計14個のシアル酸を収容することが可能である。
【0007】
EPOのシアル酸含量とin vivo生物学的活性との関係は、単離されたEPOイソ形のin vivo活性の測定を通して開示された(特表平4-502331号公報)。EPO分子あたりのシアル酸含量を段階的に増加すると、それに相応して段階的に、in vivo生物学的活性が増加することが見出された。この活性は、等モル濃度の単離EPOイソ形が正常マウスのヘマトクリット値を高める能力によって測定された。より高いシアル酸含量をもつこれらのEPOイソ形は、より長い血清半減期を示すが、EPO受容体に対する親和性を減少した。これによって、血清半減期が、in vivo生物学的活性の重要な決定指標であることが示された。
【0008】
EPOは、透析及び前透析を欠かせない慢性腎不全症の治療、並びに、癌の化学療法治療に対する続発性貧血症や、HIV感染のジドブジン(zidovudine)治療に関わる貧血症の治療に使用されている。また、EPOを用いて、早産、鎌状赤血球貧血症、関節リウマチ及び骨髄移植に関わる貧血症が治療されている(Markhamら, Drugs, 49: 232 - 254 (1995))。
【0009】
さらにまた、新規のEPO類似体も開発されている。この類似体は赤血球産生刺激タンパク質と称されており、遺伝子組換え技術を用いて生産されたヒトEPOのアミノ酸配列中に、過剰にグリコシル化されるようにアミノ酸残基の変異を含むEPO変異体である(特許第2938572号)。
【0010】
【特許文献1】特開2004-307351
【特許文献2】特開2003-221335
【特許文献3】特開2003-104890
【特許文献4】特開2002-326957
【特許文献5】特開2002-138090
【特許文献6】特表2002-512193
【特許文献7】特表2002-508313
【特許文献8】特開2002-220343
【特許文献9】再表99/024069号公報
【特許文献10】米国特許4,703,008
【特許文献11】米国特許4,667,016
【特許文献12】特表平4-502331号公報
【特許文献13】特許第2938572号
【非特許文献1】J. Biol. Chem., 252:5558 (1977)
【非特許文献2】J. Biol. Chem., 261:3116 (1986)
【非特許文献3】Arch. Biochem,. Biophys., 265:329 (1988)
【非特許文献4】Drugs, 49: 232-254 (1995)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
肺疾患の治療薬として、気管支拡張剤(β刺激薬、抗コリン薬)、副腎皮質ホルモン、抗生剤の投与、酸素療法などの治療薬が従来用いられてきた。これらの治療薬は肺における炎症を抑制したり、気道を拡張したりすることによって、肺疾患を治療する治療薬である。
【0012】
しかしながら、肺疾患はインフルエンザなどとの合併症により重症に陥る例などもあることから、新たに有効な治療用医薬が望まれていた。
【0013】
本発明の目的は、肺疾患、特に炎症性肺疾患、の新しい予防又は治療薬を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、エリスロポエチンを投与することにより、炎症性肺疾患症状として示される平均肺胞壁間距離の増大および肺胞表面積の減少に対し、それぞれ有意な減少と増加を確認し、エリスロポエチンが肺疾患の抑制又は軽減に有効であることを見出した。
【0015】
本発明を以下に要約する。
【0016】
本発明は、治療有効量の、赤血球産生活性を有する、ヒトエリスロポエチン及び/又はヒトエリスロポエチン類似体を含有する炎症性肺疾患の予防又は治療薬を提供する。
【0017】
第1の実施形態にいて、炎症性肺疾患が閉塞性肺疾患である。
【0018】
第2の実施形態において、閉塞性肺疾患が肺気腫である。
【0019】
第3の実施形態において、ヒトエリスロポエチン類似体が、ヒトエリスロポエチンと比べて、そのN結合型及びO結合型合計炭水化物鎖が増加したものである。
【0020】
第4の実施形態において、ヒトエリスロポエチン類似体が、ヒトエリスロポエチンのアミノ酸配列中88位のトリプトファン残基がアスパラギン残基で置換された少なくとも1つの付加的グリコシレーション部位を含み、かつこの部位に炭水化物鎖が結合されているものである。
【0021】
第5の実施形態において、ヒトエリスロポエチン類似体がさらに、ヒトエリスロポエチンのアミノ酸配列中87位のプロリン残基のセリン又はバリン残基への置換及び90位のグルタミン酸残基のトレオニン残基への置換を含むものである。
【0022】
第6の実施形態において、ヒトエリスロポエチン類似体がさらに、ヒトエリスロポエチンのアミノ酸配列中30位のアラニンのアスパラギン残基への置換を含むものである。
【0023】
第7の実施形態において、ヒトエリスロポエチン又はヒトエリスロポエチン類似体が、1分子あたり9以上のシアル酸数のイソ形からなる混合物である。
【0024】
本明細書で使用する用語は、以下のように定義される。
【0025】
「ヒトエリスロポエチン」という用語は、ヒト型エリスロポエチンの成熟アミノ酸配列(配列番号1の28位〜193位の166/165アミノ酸)と同じ配列を有する糖タンパク質を意味する。炭水化物鎖の構造及び組成は、天然型及び非天然型のいずれでもよい。また、ヒト型配列と赤血球産生活性を有する限りその製法には限定されないものとし、例えば天然(例えばヒト尿)から精製された天然型ヒトエリスロポエチンであってもよいし、あるいは遺伝子組換え技術等によって人工的に作製された組換え型ヒトエリスロポエチンでもよい。遺伝子組換え技術による場合、宿主細胞としてヒトを含む哺乳動物細胞によって産生される組換え型ヒトエリスロポエチンが好ましい。ヒトエリスロポエチンの炭水化物鎖(又は糖鎖)は、通常、3つのN結合型炭水化物鎖と1つのO結合型炭水化物鎖からなる(Miyakeら, J. Biol. Chem., 252:5558 (1977))。
【0026】
「ヒトエリスロポエチン類似体」という用語は、ヒトエリスロポエチンのヒト型成熟アミノ酸配列中の少なくとも1つのアミノ酸残基が置換、欠失及び/又は付加(挿入を含む)された、かつ赤血球産生活性を有する、ヒトエリスロポエチン変異体を意味する。ヒトエリスロポエチン類似体の炭水化物鎖は、ヒトエリスロポエチンの合計炭水化物鎖と比べて、同じであるか、又は増加しているか、又は減少しているが、好ましくは増加している。このようなヒトエリスロポエチン類似体には、後述の赤血球産生刺激タンパク質(NESP)が含まれる。
【0027】
「ヒトエリスロポエチン及び/又はヒトエリスロポエチン類似体」という用語は、ヒトエリスロポエチン又はヒトエリスロポエチン類似体のいずれか一方、あるいはその両方を含むことを意味する。
【0028】
「炎症性肺疾患」という用語は、炎症性細胞から放出される種々のサイトカイン、成長因子、メデイエーター、蛋白分解酵素などによって肺組織に生じた炎症性疾患を指す。
【0029】
「治療有効量」という用語は、ヒトエリスロポエチン及び/又はヒトエリスロポエチン類似体を患者に投与したときに、肺の症状を軽減又は回復させるなどの治療に有効な量を意味する。
【0030】
「赤血球産生活性」という用語は、骨髄細胞による網状赤血球及び赤血球細胞の産生を増進するインビボ生物活性を意味する。
【0031】
「イソ形」という用語は、単一等電点(pI)を有しかつ同じアミノ酸配列有するエリスロポエチン調製物を意味する。異なるイソ形同士は、1分子あたりのシアル酸数が互いに異なる。
【発明の効果】
【0032】
本発明のヒトエリスロポエチン及び/又はヒトエリスロポエチン類似体を有効成分とする予防又は治療剤は、炎症性肺疾患、とりわけ閉塞性肺疾患、例えば肺気腫の予防又は治療のために有効に使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明は、治療有効量のヒトエリスロポエチン及び/又はヒトエリスロポエチン類似体を含有する肺疾患の予防又は治療薬を提供する。
【0034】
本発明において対象となる肺疾患は、炎症性肺疾患であり、以下のものに限定されないが、例えば閉塞性肺疾患(例えば、肺気腫、気管支炎、喘息などの気道の閉塞を伴う疾患など)、肺炎(例えば、細菌性肺炎、マイコプラズマ性肺炎、ウイルス肺炎、間質性肺炎、好酸球性肺炎など)、サルコイドーシス、Langerhans肉芽腫症、肉芽腫性血管炎、Wergener肉芽腫症、Churg-Strauss症候群、Goodpasture症候群、肺血管閉塞症、成人呼吸切迫症候群(ARDS)、肺結核症、肺真菌症などの疾患である。好ましい疾患は、肺気腫、気管支炎、喘息などの閉塞性肺疾患、間質性肺炎などの肺の炎症を伴う疾患、ARDS(ショック肺、急性肺不全、急性呼吸不全としても知られる)であり、より好ましくは閉塞性肺疾患(例えば、肺気腫)又はARDSである。
【0035】
本発明の予防又は治療剤の有効成分として使用可能なヒトエリスロポエチン又はその類似体には、例えば以下のものが含まれる。
【0036】
(1)上記定義の天然又は組換え型ヒトエリスロポエチン、
(2)上記定義の赤血球産生活性を有するヒトエリスロポエチン類似体、
(3)ヒトエリスロポエチンと比べて、そのN結合型及びO結合型合計炭水化物鎖が増加したヒトエリスロポエチン類似体、
【0037】
(4)ヒトエリスロポエチンのアミノ酸配列中88位のトリプトファン残基がアスパラギン残基で置換された少なくとも1つの付加的グリコシレーション部位を含みかつこの部位に炭水化物鎖が結合されたヒトエリスロポエチン類似体、
(5)ヒトエリスロポエチンのアミノ酸配列中88位のトリプトファン残基のアスパラギン残基への置換の他に、87位のプロリン残基のセリン又はバリン残基への置換及び90位のグルタミン酸残基のトレオニン残基への置換をさらに含むヒトエリスロポエチン類似体、
(6)ヒトエリスロポエチンのアミノ酸配列中88位のトリプトファン残基のアスパラギン残基への置換、87位のプロリン残基のセリン又はバリン残基への置換及び90位のグルタミン酸残基のトレオニン残基への置換の他に、30位のアラニン残基のアスパラギン残基への置換をさらに含むヒトエリスロポエチン類似体、
【0038】
(7)ヒトエリスロポエチンの成熟アミノ酸配列における30、51、57、69、88、89、136および138位から選択される少なくとも1つの位置のアミノ酸残基がアスパラギン残基で、32、53、59、71、90、91、138または140位のアミノ酸残基がスレオニン残基またはセリン残基でそれぞれ置換されて少なくとも1つの付加的グリコシレーション部位を有するヒトエリスロポエチン類似体、
(8)上記のヒトエリスロポエチン又は上記のヒトエリスロポエチン類似体のカルボキシル末端に、少なくとも1つのO−グリコシレーション部位を有するアミノ酸配列からなるペプチド断片(例えば、ヒト絨毛性ゴナドトロピンのカルボキシル末端由来のペプチド)が付加された、炭水化物鎖の数の増大した赤血球産生活性を有するヒトエリスロポエチン類似体、
(9)上記のヒトエリスロポエチン又は上記のヒトエリスロポエチン類似体のカルボキシル末端に、ヒト絨毛性ゴナドトロピンのカルボキシル末端由来のアミノ酸配列:
Ser-Ser-Ser-Ser-Lys-Ala-Pro-Pro-Pro-Ser-Leu-Pro-Ser-Pro-Ser-Arg-Leu-Pro-Gly-Pro-Ser-Asp-Thr-Pro-Ile-Leu-Pro-Gln(配列番号2)
からなるペプチド断片が付加された、炭水化物鎖の数の増大した赤血球産生活性を有するヒトエリスロポエチン類似体、
【0039】
(10) ヒトエリスロポエチン又はヒトエリスロポエチン類似体の1分子あたり9以上、10以上、11以上、12以上又は13以上のシアル酸数のイソ形からなる混合物、
(11)ポリエチレングリコール(PEG)などの水溶性ポリマーで修飾された上記のヒトエリスロポエチン又はヒトエリスロポエチン類似体。
【0040】
例示した上記の(1)〜(11)のヒトエリスロポエチン、ヒトエリスロポエチン類似体及びイソ形混合物はいずれも、上に例示した炎症性肺疾患の予防又は治療に有効である。
【0041】
本発明で使用可能なヒトエリスロポエチンは、例えば、再生不良性貧血患者の尿から抽出して得られた天然のヒトEPO(J. Biol. Chem., 252:5558 (1977))、ヒトEPOのアミノ酸配列に対応するRNAを採取し、そのmRNAを利用して組換えcDNAを作製し、適当な宿主(例えば、大腸菌、酵母、植物細胞、動物細胞、哺乳動物細胞、ヒト細胞、ヒト株化細胞など)で生産させる遺伝子組換え技術により製造されたもの(例えば、特許第2140052号に記載されたヒトEPO)などである。組換え型ヒトエリスロポエチンは、EPOGEN(登録商標)(Amgen, Inc.)、エスポー(登録商標)(キリンビール、三共)などの名称で市販されているので、それを使用することもできる。
【0042】
本発明で使用可能なヒトエリスロポエチン類似体は、例えば特許第2938572号に記載される赤血球産生刺激タンパク質(NESP)などのヒトエリスロポエチン変異体である。これらの類似体は、ヒトエリスロポエチンの成熟アミノ酸配列中のある特定のアミノ酸残基をアスパラギン(Asn)残基及び/又はセリン(Ser)もしくはトレオニン(Thr)残基に置換し、これによってN結合型及びO結合型炭水化物鎖の数を増加させたものである。NESPのようなヒトエリスロポエチン類似体は、例えば特許第2938572号公報に詳細に記載されるような部位特異的突然変異誘発法によって製造できる。
【0043】
特にPCRによる部位特異的突然変異誘発法が好ましく使用できる。この方法は、目的のDNAに所望の変更配列(例えば点突然変異)を導入するのに適した迅速かつ有効な方法である。PCRによる部位特異的突然変異誘発法については、例えばAusbelら, Short Protocols In Molecular Biology, 3rd Edition, A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, Inc., USA, 1995などに記載されている。
【0044】
ヒトエリスロポエチン類似体の具体例として以下のものが挙げられるが、これらに限定されない。
[Ser87Asn88Thr90]EPO、
[Val87Asn88Thr90]EPO、
[Ser87Asn88Thr90Ala162]EPO、
[Asn30Thr32Val87Asn88Thr90]EPO、
[Asn30Thr32]EPO
[Asn51Thr53]EPO
[Asn57Thr59]EPO
[Ser68Asn69Thr71]EPO
[Ser87Asn88Gly89Thr90]EPO
[Asn89Ile90Thr91]EPO
[Thr125]EPO
【0045】
また、これらの特定のヒトエリスロポエチン類似体のアミノ酸配列中の1もしくは数個のアミノ酸がさらに置換、欠失又は付加されかつ赤血球産生活性を有する変異体も、本発明のヒトエリスロポエチン類似体に包含される。さらに他の例は、特許第2938572号公報に記載されるようなヒトエリスロポエチン類似体である。ここで「数個」とは、2〜10個、2〜7個、2〜5個、2〜3個の任意の数を指す。
【0046】
さらにまた、PEG化されたヒトエリスロポエチン又はヒトエリスロポエチン誘導体は、例えば特開平2001-64300(国際公開WO02/49673)などに記載された方法に従って製造することができる。
【0047】
PEG化方法には、例えばPEGの活性エステル(例えばPEGのN-ヒドロキシスクシンイミドエステル)をヒトエリスロポエチン又はその類似体と反応させる方法が挙げられる。この反応では、エリスロポエチン上のリジン残基のε−アミノ基及びアミノ末端のα-アミノ基にPEG付加が起こる。別のPEG化方法には、PEGの末端アルデヒド誘導体と、ヒトエリスロポエチン又はその類似体とを、還元剤の存在下で反応させる方法が挙げられる。この還元的アルキル化反応では、-CH-NH-基を介してPEG基がタンパク質に結合する。いずれの方法でも、PEGが1つまたは複数結合するが、PEG基は一般にアミノ酸のα-アミノ基又はε−アミノ基においてタンパク質と結合する。
【0048】
PEGに代えて、例えばモノメトキシ−ポリエチレングリコール、デキストラン、ポリ(N-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコールなどの水溶性ポリマーを用いることもできる。水溶性ポリマーの付加方法は、PEGの場合と同様である。
【0049】
本発明で使用可能なイソ形混合物は、特許第2938572号公報に記載されるように、分取用等電点電気泳動、イオン交換クロマトグラフィー、等電点クロマトグラフィーなどの方法によって、ヒトエリスロポエチン又はヒトエリスロポエチン類似体から製造することができる。例えば、イオン交換クロマトグラフィーや等電点クロマトグラフィーを使用する方法では、粗もしくは精製ヒトエリスロポエチン又はその類似体を、エリスロポエチンイソ形の一部又は全部が樹脂に結合し得る条件下で使用し、粗調製物の場合はpH約7のカラムにタンパク質を添加するのが好ましく、精製調製物の場合は約pH4〜pH7のカラムにタンパク質を添加し得る。pH約4の緩衝液でカラムを洗浄後、緩衝液のpH及び塩濃度を増加させるか又は漸減pH及びpH約4の漸増イオン強度の勾配を使用することによって、イオン交換カラムに結合したヒトエリスロポエチン又はその類似体のイソ形を溶出させる。等電点クロマトグラフィーの場合は、漸減pHの勾配を用いるか又はカラム高濃度の塩で洗浄することによってカラムからイソ形を溶出させることができる。
【0050】
本発明のヒトエリスロポエチン及び/又はヒトエリスロポエチン類似体を有効成分とする製剤については、賦形剤、希釈剤などの担体に加えて、その投与方法や剤型に応じて必要により、懸濁化剤、溶解補助剤、安定化剤、等張化剤、保存剤、吸着防止剤、風味剤、着色剤などを添加することができる。
【0051】
賦形剤としては、例えばデンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、タルク、乾燥脱脂乳などを挙げることができる。
【0052】
希釈剤としては、例えば水、生理食塩水、エタノール、グリセロール、グリコール、プロピレン、植物油(例えばダイズ油、ゴマ油、ピーナッツ油など)、動物油、合成油、鉱油などを挙げることができる。
【0053】
懸濁化剤としては、例えばメチルセルロース、ポリソルベート80、ヒドロキシエチルセルロース、アラビアゴム、トラガント末、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート等を挙げることができる。
【0054】
溶解補助剤としては、例えばポリオキシレン硬化ヒマシ油、ポリソルベート80、ニコチン酸アミド、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、マグロゴール、ヒマシ油脂肪酸エチルエステル等を挙げることができる。
【0055】
安定化剤としては、例えばヒト血清アルブミン、アミノ酸、デキストラン40、メチルセルロース、ゼラチン、亜硫酸ナトリウム、メタ亜硫酸ナトリウム等を挙げることができる。
【0056】
等張化剤としては、例えばD−マンニトール、ソルビトール等を挙げることができる。
【0057】
保存剤としては、例えばパラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、ソルビン酸、フェノール、クレゾール、クロロクレゾール等を挙げることができる。
【0058】
吸着防止剤としては、例えばヒト血清アルブミン、レシチン、デキストラン、エチレンオキサイド・プロピレンオキサイド共重合体、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリエチレングリコール等を挙げることができる。
【0059】
本発明のヒトエリスロポエチン及び/又はヒトエリスロポエチン類似体を有効成分とし、安定化剤としてある種のアミノ酸を添加することにより、ヒト血清アルブミンや精製ゼラチンを含まない安定な溶液製剤とすることもできる。このような安定なエリスロポエチン溶液製剤は特開平10-182481号公報に記載されており、本発明の製剤の調製のために利用できる。安定化剤として添加可能なアミノ酸には、遊離のアミノ酸並びにそのナトリウム塩、カリウム塩、塩酸塩などの塩を1種又は2種以上を組み合わせて添加することができる。好ましいアミノ酸は、D−、L−及びDL−体のロイシン、トリプトファン、セリン、グルタミン酸、アルギニン、ヒスチジン及びリジン、並びにそれらの塩であり、より好ましくはL−ロイシン、L−トリプトファン、L−グルタミン酸、L−アルギニン、L−ヒスチジン及びL−リジン、並びにそれらの塩である。特に好ましいものは、L−アルギニン、L−ヒスチジン及びL−リジン並びにそれらの塩である。最も好ましいのはL−ヒスチジン及びその塩である。
【0060】
優れた安定性をもつヒトエリスロポエチン及び/又はヒトエリスロポエチン類似体の予防又は治療剤を提供するために、組成物中に遊離のL-メチオニンを含有させるのがよい。含有される遊離L-メチオニンの量は、0.05mM〜50mMの範囲内である。ヒト血清アルブミン(HAS)含有組成物では、単回使用組成物中の好ましい量は0.05mM〜5mMであり、頻回投与組成物中の好ましい量は1mM〜10mMである。HSA非含有組成物では、単回使用組成物中の好ましい量は0.05mM〜5mMであり、頻回投与組成物中の好ましい量は1mM〜10mMである。
【0061】
本発明の予防又は治療剤はさらに、所望の範囲内に溶液のpHを維持するために、緩衝剤、例えばアルカリ塩(リン酸ナトリウムもしくはカリウム、又はそれらの一水素塩もしくは二水素塩)、クエン酸ナトリウム/クエン酸、酢酸ナトリウム/酢酸、並びに、当業界で公知のすべての他の医薬的に許容可能なpH緩衝剤を含むことができる。これらの緩衝剤の混合物もまた使用できる。組成物中の有用な緩衝剤の量は、使用する特定の緩衝液や、溶液のpHに大きく依存する。例えば、酢酸塩はpH6と比べてpH5で効率的な緩衝液であるので、それは、pH6と比べてpH5の溶液で少ない酢酸塩を使用できる。好ましい組成物の好適pHは、5.0〜7.0の範囲内であり、また、所望のpHを得るために、pH調整剤、例えば塩酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、又はそれらの塩もまた含有しうる。
【0062】
本発明の予防又は治療剤はさらに、限定されないがポリソルベート(polysorbate)80又はポリソルベート20などのソルビタンモノ-9-オクタデセノエートポリ(オキシ-1,2-エタンジイル)誘導体又はその代替物を含むことができる。代替物は当業界でよく知られている。これらの物質は、製剤に例えば制御放出性を付与するときなどに使用される。使用されるポリソルベート20又は80の量は、0.001%〜0.1%(w/v)の範囲内であり、その好適な量は、単回使用及び頻回投与組成物で0.005%(w/v)である。
【0063】
本発明の予防又は治療剤は、経口又は非経口、例えば静脈内、動脈内、腹腔内、直腸内、皮下、鼻腔内、皮内、筋肉内投与用に製剤化されうる。製剤の例は、溶液剤、懸濁剤、下流剤、粉末剤、座剤、軟膏、クリーム、カプセル剤、エーロゾル剤、ゲル剤、サシェ剤などであるが、これらに限定されない。また、多層構造に被覆するなどの方法によって制御放出(又は遅延放出)製剤、腸溶性製剤などの形態に製剤化してもよい。これらの製剤は、当業界で一般的に知られる方法によって製造することができる。
【0064】
本発明の予防又は治療薬における、これらのヒトエリスロポエチン又はその類似体の投与量については、対象となる疾患の種類や、患者の年齢、性別、体重、症状等を配慮して適宜決定できる。例示の投与量は、成人1人当たり50〜500,000IU、好ましくは500〜50,000IUである。ヒトエリスロポエチン類似体の場合は、0.25〜2500μg、好ましくは2.5μg〜250μgである。ここで、IUとは、赤血球産生単位であり、当業界で一般的に使用される定義と同じである。
【0065】
本発明の予防又は治療薬は、閉塞性肺疾患(例えば、肺気腫、気管支炎、喘息などの気道の閉塞を伴う疾患など)、肺炎(例えば、細菌性肺炎、マイコプラズマ性肺炎、ウイルス肺炎、間質性肺炎、好酸球性肺炎など)、サルコイドーシス、Langerhans肉芽腫症、肉芽腫性血管炎、Wergener肉芽腫症、Churg-Strauss症候群、Goodpasture症候群、肺血管閉塞症、成人呼吸切迫症候群(ARDS)、肺結核症、肺真菌症などの疾患の予防又は治療のために使用できる。好ましい疾患は、肺気腫、気管支炎、喘息などの閉塞性肺疾患、間質性肺炎などの肺の炎症を伴う疾患、ARDS(ショック肺、急性肺不全、急性呼吸不全としても知られる)であり、より好ましい疾患は、閉塞性肺疾患(例えば、肺気腫)又はARDSである。
【0066】
本発明の予防又は治療薬はまた、上記の肺疾患に使用される他の予防又は治療薬と同時に又は前後して併用投与することができるが、併用投与に際しては、専門医の指示に従うべきであろう。
【0067】
以下に実験例及び実施例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実験例及び実施例によって限定されるものではない。
【0068】
なお、以下の実施例では、ヒトエリスロポエチン又はその類似体を単に「EPO」と略記する。
【実施例1】
【0069】
(実験及び方法)
1-1:肺気腫モデルマウスの作製
8週齢のC57BL/6Jマウス(三協ラボサービス株式会社)に対し、豚膵エラスターゼ(シグマ社製)を気管内に投与することにより肺気腫モデルマウスを作製した(J.A. Hayesら,J. Pathology(1975)117:1-14)。実験には、豚膵エラスターゼ投与4週後のマウスを用いた。
【0070】
1-2:肺気腫モデルマウスに対するEPOの投与
豚膵エラスターゼ投与4週後のC57BL/6Jマウスに対し、200IU/kgのEPOを1匹あたり50μL、背部皮下に投与した。また、対照群として、豚膵エラスターゼ投与4週後のC57BL/6Jマウスに対し、生理食塩水を1匹あたり50μL、背部皮下に投与したものを作製した。さらに、正常C57BL/6Jマウスに対し、200IU/kgのEPOを1匹あたり50μL、背部皮下に投与した群、および生理食塩水を1匹あたり50μL、背部皮下に投与した群を作製した。なお、各群の匹数は5匹とした。
【0071】
上記のEPOまたは生理食塩水の投与は、1週間に3回行い、4週間継続した。
1-3:マウスからの肺の摘出・固定
上記1-2の方法で、EPOまたは生理食塩水を4週間投与した各群のマウスを、ネンブタールを用いて麻酔し、脱血死させた。その後、開腹し、25cmH20下で肺を10%ホルマリンにより24時間かけて拡張固定した。次に、肺を摘出し、パラフィン包埋した後、3μmの組織切片を作製した。
【0072】
1-4:組織切片の形態測定
上記1-3で作製した組織切片をヘマトキシリン−エオジン染色し、顕微鏡を用い200倍の倍率により、組織の計測を行った。次に、得られた計測結果より、平均肺胞壁間距離(mean linear intercepts;Lm)、肺胞表面積(surface area;SA)、肺胞内容積比率(volume fraction;Vvalv.air)を算出した。
【0073】
(実験結果)
結果を表1に示す。
8週齢のC57BL/6Jマウスに豚膵エラスターゼを気管内に投与することにより、正常マウスと比較し、平均肺胞壁間距離は有意に増加し(p<0.05)、肺胞表面積は有意に減少し(p<0.05)、肺気腫に認められる症状が示された。
【0074】
この肺気腫モデルマウスに対し200IU/kgのEPOを1匹あたり50μL、背部皮下に投与することにより、肺気腫モデルマウスへの生理食塩水投与群に比較し、平均肺胞壁間距離の有意な減少(p<0.05)、肺胞表面積の有意な増加が認められ(p<0.05)、EPO投与による肺気腫症状の改善が示された。
【0075】
【表1】

【0076】
なお、正常マウスへのEPO投与群では、正常マウスへの生理食塩水投与群と比較し、平均肺胞壁間距離および肺胞表面積に有意な差は認められなかった。また、体重および肺体積に関しては、豚膵エラスターゼの気管内投与およびEPO投与による影響は認められなかった。
【0077】
以上の結果は、EPOの肺気腫による肺機能の低下を改善する可能性を示唆するもので、EPOの肺に対する作用を示した初めてのものである。
【0078】
以下に、製剤に関する実施例を示す。
【実施例2】
【0079】
エリスロポエチン 1500単位
注射用蒸留水 2ml
上記組成比で無菌的に溶液を調製し、バイアル瓶に分注し、密封する。
【実施例3】
【0080】
エリスロポエチン 1500単位
注射用蒸留水 2ml
上記組成比で無菌的に溶液を調製し、バイアル瓶に分注し、凍結乾燥し、密封する。
【実施例4】
【0081】
エリスロポエチン 12000単位
注射用蒸留水 2ml
上記組成比で無菌的に溶液を調製し、バイアル瓶に分注し、密封する。
【実施例5】
【0082】
エリスロポエチン 12000単位
注射用蒸留水 2ml
上記組成比で無菌的に溶液を調製し、バイアル瓶に分注し、凍結乾燥し、密封する。
【実施例6】
【0083】
調製溶液1ml中に以下の成分:
EPO 750単位
ポリソルベート80 0.06mg
塩酸アルギニン 9mg
結晶リン酸二水素ナトリウム 0.25mg
を含み、pH6.0に調整した溶液を、バイアル瓶に2ml分注し、密封する。
【実施例7】
【0084】
調製溶液1ml中に以下の成分:
EPO 750単位
ポリソルベート80 0.06mg
塩酸アルギニン 9mg
結晶リン酸二水素ナトリウム 0.25mg
を含み、pH6.0に調整した溶液を、バイアル瓶に2ml分注し、凍結乾燥し、密封する。
【実施例8】
【0085】
NESP 10μg
注射用蒸留水 1ml
上記組成比で無菌的に溶液を調製し、バイアル瓶に分注し、密封する。
【実施例9】
【0086】
NESP 10μg
注射用蒸留水 1ml
上記組成比で無菌的に溶液を調製し、バイアル瓶に分注し、凍結乾燥し、密封する。
【実施例10】
【0087】
NESP 100μg
注射用蒸留水 1ml
上記組成比で無菌的に溶液を調製し、バイアル瓶に分注し、密封する。
【実施例11】
【0088】
NESP 100μg
注射用蒸留水 1ml
上記組成比で無菌的に溶液を調製し、バイアル瓶に分注し、凍結乾燥し、密封する。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明のヒトエリスロポエチン及び/又はヒトエリスロポエチン類似体を有効成分とする製剤は、従来の肺障害の治療薬と異なる機序により、肺障害の治療効果を発揮することが期待でき、しかも副作用が低く安全である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療有効量の、赤血球産生活性を有する、ヒトエリスロポエチン及び/又はヒトエリスロポエチン類似体を含有する炎症性肺疾患の予防又は治療薬。
【請求項2】
炎症性肺疾患が閉塞性肺疾患である、請求項1記載の予防又は治療薬。
【請求項3】
ヒトエリスロポエチン類似体が、ヒトエリスロポエチンと比べて、そのN結合型及びO結合型合計炭水化物鎖が増加したものである、請求項1又は2記載の予防又は治療薬。
【請求項4】
ヒトエリスロポエチン類似体が、ヒトエリスロポエチンのアミノ酸配列中88位のトリプトファン残基がアスパラギン残基で置換された少なくとも1つの付加的グリコシレーション部位を含み、かつこの部位に炭水化物鎖が結合されているものである、請求項3記載の予防又は治療薬。
【請求項5】
ヒトエリスロポエチン類似体が、前記アミノ酸配列中87位のプロリン残基のセリン又はバリン残基への置換及び90位のグルタミン酸残基のトレオニン残基への置換をさらに含むものである、請求項4記載の予防又は治療薬。
【請求項6】
ヒトエリスロポエチン類似体が、前記アミノ酸配列中30位のアラニン残基のアスパラギン残基への置換をさらに含むものである、請求項4又は5記載の予防又は治療薬。
【請求項7】
ヒトエリスロポエチン又はヒトエリスロポエチン類似体が、1分子あたり9以上のシアル酸数のイソ形からなる混合物である、請求項1〜6のいずれか一項記載の予防又は治療薬。

【公開番号】特開2006−241043(P2006−241043A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−57280(P2005−57280)
【出願日】平成17年3月2日(2005.3.2)
【出願人】(000253503)麒麟麦酒株式会社 (247)
【Fターム(参考)】