説明

炭化微粒子入り紙

【課題】 先行技術に原料を湿式抄紙法でシート状に形成した繊維状炭化物からなる炭シートがある。シート状の炭化物を微粉末にする手段の省略と、木炭の微粉砕の粒径調整の手間の回避と、作業環境悪化の回避を意図する。しかも、品質・特性・効能の均一化の面においてバラツキが考えられるのでこれを改良する。
【解決手段】 抄紙工程で炭化微粒子を混入して構成した炭化微粒子入り紙で、炭化微粒子は、古紙を高温焼成して生成される廃棄物資源の再利用で形成されるカーボンサンドを粉砕した廃棄物資源の再利用で、また紙は古紙パルプ、再生パルプ及び/又は新パルプ等のパルプ原料を個別又は混合して生成する再利用方法であり、炭化微粒子が紙にランダムに混入した炭化微粒子入り紙である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、古紙パルプ、再生パルプ及び/又は新パルプ等のパルプ原料と、カーボンサンド微粒子(炭化微粒子)とを混合して抄製してなる炭化微粒子入り紙に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、資源の有効利用を図ること、また資源の有効利用に、当該資源の特性とを融合し、より商品価値の高い品物を製造すること等が重要な要素になりつつある。そして、この特性を人の健康に役立てること、また健康の増進及び/又は快適な生活環境の達成に役立てること等が望まれている。
【0003】
本発明は、これらの要望と資源の有効利用を意図し、古紙パルプ、再生パルプ及び/又は新パルプ等のパルプ原料と、炭化微粒子とを混合して抄製してなる炭化微粒子入り紙を提供する。そして、この種の炭化微粒子入り紙を意図する発明が検索されたので、その一例を次に説明する。この先行発明を文献(1)と文献(2)とする。
【0004】
文献(1)は特開2000−54284の「繊維状炭化物からなる炭シート及びその製造方法」であり、この発明は、繊維原料を繊維状に離解した繊維状物を炭化処理して得られた繊維状炭化物を原料とし、湿式抄紙法によりシート状に形成する繊維状炭化物からなる炭シートである。従って、この発明では、従来の課題であった、例えば、シート状の炭化物(木炭等)を微粉末にする必要があるため、木炭の微粉砕による粒径調整に多大な手間を必要とすること、又は微粉末の飛散等による作業環境の悪化があったこと等を回避できる特徴がある。
【0005】
また文献(2)は特開2004−76200の「機能性和紙の製造方法および機能性和紙」であり、この発明は、和紙原料を叩解する叩解工程において、パック詰めの機能付与材の微細粉末を破袋し、この微細粉末を投入した後に5分〜15分間叩解して機能付与材の微細粉末を繊維に均一に分散させ、ついでその紙料水をネリと撹拌して混合溶液とし、しかる後に抄造して製造した機能性和紙の製造方法および機能性和紙である。従って、環境浄化機能、除菌機能、消臭機能等の各種機能が均一に付与されてなる和紙を簡易に製造できること、また機能性和紙の製造方法と、機能性和紙を提供できること等の特徴がある。
【0006】
【特許文献1】特開2000−54284
【特許文献2】特開2004−76200
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記文献(1)では、繊維状の炭化物を直接パルプ繊維に混入して処理する製造方法である。従って、製造が容易で、また微粉末の飛散等による作業環境の悪化等の弊害は防止できる。しかし、この繊維状の炭化物の寸法、繊度等において均一化に欠ける虞があり、品質・特性・効能の均一化の面においてバラツキが考えられる。また厳格な品質・特性・効能の達成が要求される分野での使用に際し、問題が発生する可能性があり、少し改良の余地がある。
【0008】
また文献(2)では、古紙パルプ、再生パルプ等の再生パルプ原料と、再生機能付与材の微細粉末とを混合して抄製してなる活性炭入りシート製品ではないので、一面的な改良に留まっているのが現況であり、例えば、資源の有効利用と、コストの削減化、又は環境保護の達成等を考慮した場合には、少し問題を残すものと考えられる。また実施態様において、分散剤を採用する例は、品質の向上が図れる。しかし、工程の複雑化、コストの上昇を招くこと等の少し改良の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、廃棄物資源でなるカーボンサンド(炭化物)を粉細粒子と、古紙パルプ、再生パルプ及び/又は新パルプ等の主として再生パルプ原料とを利用して炭化微粒子入り紙の抄製を図ること、またこの炭化微粒子入り紙の抄製に対し、資源の有効利用と、コストの削減化、又は環境保護の達成等を図ることを意図する。またこのカーボンサンドは、品質・形状が一定で、かつ連続気泡(気孔)を備えた再生炭化物とすること、そして、このカーボンサンドは、二重構造のロータリーキルン炭化装置を利用し、無公害で製造すること等を意図する。さらに炭化微粒子は、カーボンサンドの特性である連続気泡を備えたことを利用し、抄製した炭化微粒子入り紙に吸水性、吸臭性、吸着性等の特性を付与することを意図する。
【0010】
請求項1は、抄紙工程で炭化微粒子を混入して構成した炭化微粒子入り紙であって、
この炭化微粒子は、古紙を高温焼成して生成される吸水性、吸臭性、吸着性等の特性を備えた廃棄物資源の再利用で形成されるカーボンサンドであり、このカーボンサンドを粉細した廃棄物資源の再利用を可能とし、
また紙は古紙パルプ、再生パルプ及び/又は新パルプ等のパルプ原料を個別又は混合して製造可能とし、
前記炭化微粒子が前記紙にランダムに混入し、かつこの炭化微粒子の特性を発揮可能とした炭化微粒子入り紙である。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1の目的を達成すること、この目的を達成するに最適なカーボンサンドを提供すること等を意図する。
【0012】
請求項2は、請求項1のカーボンサンドは、比表面積30〜80m/g、嵩密度0.3〜0.35g/cc、吸水性100〜150Wt%、PH9〜10、真発熱量略1100kcal/kg、融点略1150℃の物性を備える構成とした炭化微粒子入り紙である。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1の目的を達成すること、この目的を達成するに最適な炭化微粒子入り紙を提供すること等を意図する。
【0014】
請求項3は、請求項1に記載の炭化微粒子入り紙は、接触時の汚色を回避するために、この炭化微粒子入り紙の接触面側に、保護シートを重畳して使用する構成とした炭化微粒子入り紙である。
【0015】
請求項4の発明は、請求項1の目的を達成すること、二重構造のロータリーキルン炭化装置を利用し、無公害で製造できる炭化微粒子を利用した炭化微粒子入り紙を提供すること等を意図する。
【0016】
請求項4は、請求項1のカーボンサンドは、二重筒構造の炭化炉を採用したロータリーキルン式炭化装置を利用し、連続製造可能とする構成とした炭化微粒子入り紙である。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明は、抄紙工程で炭化微粒子を混入して構成した炭化微粒子入り紙であって、
炭化微粒子は、古紙を高温焼成して生成される吸水性、吸臭性、吸着性等の特性を備えた廃棄物資源の再利用で形成されるカーボンサンドであり、カーボンサンドを粉細した廃棄物資源の再利用を可能とし、
また紙は古紙パルプ、再生パルプ及び/又は新パルプ等のパルプ原料を個別又は混合して製造可能とし、
炭化微粒子が前記紙にランダムに混入し、かつ炭化微粒子の特性を発揮可能とした炭化微粒子入り紙である。
【0018】
従って、請求項1は、廃棄物資源でなるカーボンサンドを粉細粒子と、古紙パルプ、再生パルプ及び/又は新パルプ等の主として再生パルプ原料とを利用して炭化微粒子入り紙の抄製ができること、またこの炭化微粒子入り紙の抄製に対し、資源の有効利用と、コストの削減化、又は環境保護の達成等が図れること等の特徴を有する。またこのカーボンサンドは、品質・形状が一定で、かつ連続気泡(気孔)を備えた再生炭化物とすること、そして、このカーボンサンドは、二重構造のロータリーキルン炭化装置を利用し、無公害で製造できること等の特徴がある。さらに炭化微粒子は、カーボンサンドの特性である連続気泡を備えたことを利用し、抄製した炭化微粒子入り紙に吸水性、吸臭性、吸着性等の特性が付与できること等の特徴を有する。
【0019】
請求項2の発明は、請求項1のカーボンサンドが、比表面積30〜80m/g、嵩密度0.3〜0.35g/cc、吸水性100〜150Wt%、PH9〜10、真発熱量略1100kcal/kg、融点略1150℃の物性を備える構成とした炭化微粒子入り紙である。
【0020】
従って、請求項2は、請求項1の目的を達成できること、この目的を達成するに最適なカーボンサンドを提供できること等の特徴を有する。
【0021】
請求項3の発明は、請求項1に記載の炭化微粒子入り紙が、接触時の汚色を回避するために、炭化微粒子入り紙の接触面側に、保護シートを重畳して使用する構成とした炭化微粒子入り紙である。
【0022】
従って、請求項3は、請求項1の目的を達成できること、この目的を達成するに最適な炭化微粒子入り紙を提供できること等の特徴を有する。
【0023】
請求項4の発明は、請求項1のカーボンサンドが、二重筒構造の炭化炉を採用したロータリーキルン式炭化装置を利用し、連続製造可能とする構成とした炭化微粒子入り紙である。
【0024】
従って、請求項4は、請求項1の目的を達成できること、二重構造のロータリーキルン炭化装置を利用し、無公害で製造できる炭化微粒子を利用した炭化微粒子入り紙を提供できること等の特徴がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の態様(形態)を説明する。
【0026】
図面の説明をすると、図1はカーボンサンド(登録商標第4517505号はカーボサンド)を製造する過程を示したフローチャートを、図2はカーボンサンドを製造する二重構造のロータリーキルン炭化装置を示した拡大模式図を、図3は炭化微粒子入り紙を製造する工程の一例を示したフローチャートを、図4は炭化微粒子入り紙を示した一部欠截の拡大斜視図、図5は炭化微粒子入り紙の使用の一例を示した拡大模式図をそれぞれ示す。
【0027】
先ず、本発明のポイントとなるカーボンサンドを製造するに際し、好ましい一例を図1、図2に基いて説明する。そして、現実には、本出願人の会社がこのような装置を利用して製造する。そこで、その概要を説明すると、カーボンサンドの原料となるスラッジ、有機系の木材、間伐材、草、製紙スラッジ、活性汚泥、脱水屎尿、糞等の廃棄物・廃材、又は無機系のスラッジ、金属屑等の廃棄物(廃棄物とする)をホッパーA又はBに投入する。この廃棄物は同質及び/又は異質の何れでも可能であり、適宜調整して最良のカーボンサンドWを製造する。このホッパーA又はBより排出された混合廃棄物は、搬送手段を介して造粒機Cに搬送され、この造粒機Cを利用して適宜の粒径の混合廃棄物(造粒廃棄物)が製造される。この造粒廃棄物は、搬送手段及び/又は図示しない整粒機を介して略均一な造粒廃棄物を生成する。この造粒廃棄物は、その後、二重筒構造のロータリーキルン式の炭化炉(ロータリーキルン式炭化装置D)に搬入されるが、このロータリーキルン炭化装置Dは二重構造(内部間接加熱方式)となっていることから、当該造粒廃棄物は、その外筒D1内に導かれる。尚、内筒D2内には燃焼ガス(熱風)が供給される。この導入された造粒廃棄物は、略500℃〜800℃程度において高温焼結されて炭化造粒物、即ち、略1時間〜2時間程度の処理でカーボンサンド素材W1が製造される。図中Eは燃焼室、E1は循環ファン、E2は燃料タンクを示す。この生成されたカーボンサンド素材W1はその後、冷却手段F及び/又は振動篩G・選別手段H等の適宜の処理を得た後に、炭化微粒子入り紙の原料となるカーボンサンドWが製造される。そして、この例では、製品タンクIに粒径ごとに収容される。図中Jは付帯設備を示す。
【0028】
尚、このカーボンサンド1の特性の一例を、請求項2に記載した。即ち、比表面積30〜80m/g、嵩密度0.3〜0.35g/cc、吸水性100〜150Wt%、PH9〜10、真発熱量略1100kcal/kg、融点略1150℃の物性を備えていることから、当該カーボンサンド1は、保護シート(後述する)を介して吸水性、吸臭性、吸着性等の特性と、虫の忌避効果が発揮できる。
【0029】
次に炭化微粒子入り紙1の製造工程の一例を説明する。例えば、図3に示したフローチャートを基に説明すると、古紙を基にしたパルプ原料(泥状又は乾燥状態の何れでも可能である)と、炭化微粒子入り紙1を粉細(粉砕)して炭化微粒子とを適量混合して撹拌工程に送り、この撹拌工程において十分に撹拌混合し、する。この撹拌工程において混合されたパルプ原料と炭化微粒子により泥状(ペースト状態)の炭化微粒子入り紙原料の溶液(撹拌溶液とする)が生成される。この撹拌溶液は抄製工程に搬送され、この抄製工程で炭化微粒子入り紙の抄製素材(紙抄製素材とする)が生成されるので、続いて、この抄製素材を圧搾工程に搬送し、この圧搾工程で当該抄製素材の水分を絞り出し、炭化微粒子入り紙の素材(紙素材とする)を生成する。この紙素材を乾燥工程に搬送し、この乾燥工程で水分を飛ばして炭化微粒子入り紙1を製造する。この炭化微粒子入り紙1は通常はロール巻き形態を確保する(ロール巻き炭化微粒子入り紙)か、又はその後、定寸法に切断する(定寸切断工程)かの手段を採用し、最終的には出荷の運びとなる。
【0030】
以上で製造された炭化微粒子入り紙1は図4に示した構成であり、パルプ原料100に炭化微粒子101がランダムに混入されており、この炭化微粒子入り紙1には連続気泡が形成されることから、本発明が意図する吸水性、吸臭性、吸着性等の特性が確保される。またこの炭化微粒子101は虫の忌避効果が、当該連続気泡を介して徐放されることから、比較的長い期間に亙っての効果が期待できる(効果の持続性が期待できる)等の特徴があり、図5に示した如く、畳2の下地材として利用した場合には、前述の吸水性、吸臭性、吸着性等の特性及び/又は忌避効果等が確保できる。また健康な生活が保障される。図中3は保護シートを示しており、炭化微粒子入り紙1の炭化微粒子101による汚染防止を図るために、この炭化微粒子入り紙1の両面及び/又は片面等に設ける。尚、この炭化微粒子入り紙1の炭化微粒子101により、前記の如く、吸水性、吸臭性、吸着性等の特性が確保される。またこの炭化微粒子101が虫の忌避効果を確保するためには、この保護シート3は連続気泡を有することが望ましい。尚、図示しないが、この炭化微粒子入り紙1は、壁紙(クロス)、障子、唐紙、ダンボール、箱、家具、畳、カーペット等の下地材、衣服、マット、カレンダー、椅子、袋、各種のダニ、害虫等の忌避手段等用の素材、その他の防虫・消臭資材、又は調湿資材として多目的に使用可能であり重宝する。
【0031】
そして、本発明の炭化微粒子入り紙1は、悪臭、異臭、又は有害異臭等の吸着(吸臭)特性が発揮できること、又は忌避効果があることは、試験の結果判明している。従って、トイレ・下駄箱・室内・病院・老人ホーム等の消臭に極めて有効である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】カーボンサンドを製造する過程を示したフローチャート
【図2】カーボンサンドを製造する二重構造のロータリーキルン炭化装置を示した拡大模式図
【図3】炭化微粒子入り紙を製造する工程の一例を示したフローチャート
【図4】炭化微粒子入り紙を示した一部欠截の拡大斜視図
【図5】炭化微粒子入り紙の使用の一例を示した拡大模式図
【符号の説明】
【0033】
1 炭化微粒子入り紙
100 パルプ原料
101 炭化微粒子
2 畳
3 保護シート
A ホッパー
B ホッパー
C 造粒機
D ロータリーキルン炭化装置
D1 外筒
D2 内筒
E 燃焼室
E1 循環ファン
E2 燃料タンク
F 冷却手段
G 振動篩
J 付帯設備
I 製品タンク
H 選別手段
W カーボンサンド
W1 カーボンサンド素材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抄紙工程で炭化微粒子を混入して構成した炭化微粒子入り紙であって、
この炭化微粒子は、古紙を高温焼成して生成される吸水性、吸臭性、吸着性等の特性を備えた廃棄物資源の再利用で形成されるカーボンサンドであり、このカーボンサンドを粉細した廃棄物資源の再利用を可能とし、
また紙は古紙パルプ、再生パルプ及び/又は新パルプ等のパルプ原料を個別又は混合して製造可能とし、
前記炭化微粒子が前記紙にランダムに混入し、かつこの炭化微粒子の特性を発揮可能とした炭化微粒子入り紙。
【請求項2】
請求項1のカーボンサンドは、比表面積30〜80m/g、嵩密度0.3〜0.35g/cc、吸水性100〜150Wt%、PH9〜10、真発熱量略1100kcal/kg、融点略1150℃の物性を備える構成とした炭化微粒子入り紙。
【請求項3】
請求項1に記載の炭化微粒子入り紙は、接触時の汚色を回避するために、この炭化微粒子入り紙の接触面側に、保護シートを重畳して使用する構成とした炭化微粒子入り紙。
【請求項4】
請求項1のカーボンサンドは、二重筒構造の炭化炉を採用したロータリーキルン式炭化装置を利用し、連続製造可能とする構成とした炭化微粒子入り紙。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−118063(P2006−118063A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−304294(P2004−304294)
【出願日】平成16年10月19日(2004.10.19)
【出願人】(392001391)株式会社市川工務店 (6)
【出願人】(399037612)株式会社 クリエートサン (1)
【Fターム(参考)】