説明

炭化水素の製造と回収のための方法

本発明は、化学物質、特に炭化水素を発酵媒体から製造し回収する方法に関し、溶剤含浸キャリアを利用するものである。したがって、本発明は、発酵液体から炭化水素を製造する方法を提供し、その方法は、生体触媒を利用して発酵液体から炭化水素を生成する工程と、発酵液体を多孔性の溶剤含浸キャリアと接触させ、多孔性の溶剤含浸キャリアの密度を発酵液体とは異なるようにして、生成された炭化水素を溶剤含浸キャリアに吸収させる工程と、溶剤含浸キャリアを再生し、炭化水素流を得る工程と、再生された溶剤含浸キャリアを再利用する任意の工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発酵媒体から化学物質、とくに炭化水素を製造し、回収する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発酵による炭化水素出発原料の製造は、石油から製造する方法の代替手段として用いられている。発酵は、再生可能資源を利用しており、また、生成される危険廃棄物がはるかに少ない。数種類の化学物質が発酵により製造されるとの報告がある。これは、残念ながら、多くの所望の化合物に対する商業的に実行可能な代替手段でない。なぜなら、生体触媒有機体によって少量の化合物しか製造できないためである。所望の化合物を多量に製造するために遺伝学的に生成された有機体を用いた場合でも、商業的なバイオ発酵方法を開発するために必要な投資を行うためには十分な高濃度の製品を製造できない場合がしばしばある。これは、とくに、製品が組織にとって有毒であったり、ネガティブ・フィードバック機構によって規制される場合に顕著であり、このような場合には発酵媒体中の製品の潜在的濃度が制限される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
WO−A−00/18942には、発酵によって4ヒドロキシ安息香酸(PHB)を製造する方法が記載されている。この方法によると、少なくとも発酵のある期間、発酵媒体をPHBを結合するアニオン交換樹脂を通らせることによって製品としてのPHBを発酵により取り除く。次に、アニオン交換樹脂は、結合されたPHBを取り除くために抽出される。この周知の方法により、生体触媒を用いた製品回収の向上と、製品の大量生産を実現できるとされているが、多くの欠点が残っている。まず最初に、イオン交換樹脂は、充填層の形態で用いる必要があるが、これは充填層の著しい圧力低下と汚染を招く可能性がある。さらに、イオン交換樹脂は生体触媒(すなわち、微生物類)に対して毒性を有する場合があるため、これらの生体触媒に悪影響を与える可能性がある。また、これらの樹脂が生体触媒に必要な養分と結合する可能性もある。また、イオン交換樹脂の粒子は群も生物付着の影響を受けやすい。これらおよび他の種々の理由のため、媒体からの製品の抽出は、媒体をインストリーム(つまり発酵槽の外)で樹脂と接触させることによって行い、樹脂と生体触媒との接触を最小限としている。さらに、とりわけ、樹脂の汚損(すなわち、樹脂の表面に生体触媒が付着することによる樹脂の収着能の低下)のために、この方法を連続的に実施することができない。これらの理由で、WO−A−00/18942に記載の製品生成方法は、他の周知の製品生成方法と同様に、限定されたものとなっている。
【0004】
さらに、WO−A−00/73485には、膜でカプセルに包まれた溶剤を用い、液体培地から発酵製品を抽出する方法が記載されている。しかしながら、この方法は、膜を用いて発酵工程から製品を回収する他の方法と同様に、膜によって引き起こされる物質移動バリアの結果として起こる遅い吸収動態が障害となる。さらに、これらのカプセル吸収剤(absorbentia)の再生は難しい。その上、カプセル封入溶剤の準備は厄介である。
【0005】
液体培地を直接、製品のための溶剤に接触させる液液抽出を行うことも、代替の手法にはならない。これは、通常、後に合体して重力によって分離できるようになる、望ましい溶剤の懸濁滴にはならず、乳濁液を生成することになってしまうためである。これらの乳濁液は非常に安定しているので、溶剤から製品を得ることが非常に難しい、もしくは不可能である。
【0006】
本発明の目的は、例えば、4ヒドロキシ安息香酸、およびベンズアルデヒドといった炭化水素を製造する方法であって、上述したような難点を少なくとも部分的に克服する方法を提供することである。本発明によって製造可能な炭化水素の他の例としては、カテコール(例えば3メチルカテコール)と、ベンジルアルコールと、ケイ皮酸と、これらおよび他の炭化水素の混合物である。商品価値のある各化合物は、一般に、最適な溶剤を用いて抽出可能である。
【0007】
発酵工程において液体培地から製品を分離するために、溶剤が含浸された多孔性のキャリア粒子を利用することによって(粒子は液体培地に浮かぶあるいは沈むものであるが)、上記目的を達成できることがわかった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、本発明の第1の態様は、発酵液体から炭化水素を製造する方法に関し、
生体触媒を利用して発酵液体から炭化水素を生成する工程と、
発酵液体を溶剤を含浸させた多孔性キャリアと接触させ、生成された炭化水素を溶剤含浸キャリアに吸収させる工程と、
溶剤含浸キャリアを再生し、炭化水素を含む流れを得る工程と、
再生された溶剤含浸キャリアを再利用する任意の工程とを含む。
【0009】
再利用とは、再生された溶剤含浸キャリアの少なくとも一部を、発酵液体を多孔性の溶剤含浸キャリアに接触させる工程へ送ることを意味する。
【0010】
ここで使用される用語「吸着」は、溶剤における吸収、および吸収と抽出または溶解、さらにはこれらの組み合わせも含む。この用語はまた、吸収、または溶剤中の製品成分の化学反応の結果としての吸収も含むことを意図している。この化学反応は、反応抽出を容易にするために溶剤中に添加物を含ませることによって助長される。
【0011】
Serp et al(Biotechnology and Bioengineering、82(2003)103−110)は、複合樹脂の使用について記載しており、これは、ポリエチレンの高分子基質に閉じ込められた有機溶媒(ジブチルセバケート)を含み、実験設備において2フェニルエタノールの生産性を増進させるものである。発酵液体培地は、発酵液体培地を樹脂粒子の固定床を通すことによって複合樹脂と接触する。この文献には、多孔性の含浸キャリアについては開示がない。
【0012】
Cao el al (Huaxue Gongye Yu Gongeheng/Chemical Industry and Engineering 18(2001)300−302)は、固定床で溶剤を含浸した多孔質媒体を使用した抽出法について記載している。
【0013】
Guan el al(Kangshengshu 15(1990)90−96)は、溶剤含浸樹脂の生成について記載している。ここでも、固定床設備のみが開示されている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明を実施するために適した構成を概略的に示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明において、多孔質粒子を使うことによって得られる非常に重要な利点は、その浮遊作用を制御可能である点であり、これについては以下に詳細に説明する。これにより、発酵液体培地から粒子を効果的に分離することができ、工業規模で採用可能な方法が実現できる。
【0016】
本発明によると、溶剤含浸多孔性キャリアの密度は、発酵液体の密度とは異なる。実際には、キャリア粒子が液体中で上昇し、液体上に浮いて発酵槽の上部から容易に回収できることを意味し、あるいは、キャリア粒子が沈んで発酵槽の底に沈殿し、底部から容易に回収できることを意味する。すなわち、キャリア粒子の浮遊作用もしくは沈殿作用は、適切な多孔質材料を選択することによって制御できる。すなわち、適切な見かけ密度(固形物の気孔率と密度に起因)、および適切な溶剤(密度)の選択によって制御できる。その上、媒体の密度はキャリア粒子の上昇もしくは沈降速度、特にガスホールドアップに影響を及ぼす。さらに、多孔性含浸キャリアの直径も浮遊または沈殿作用に影響を与える。
【0017】
浮遊または沈殿作用はさらに、本発明による方法の実施中に、発酵槽を例えば攪拌装置によってかき混ぜることによっても影響を受ける。
【0018】
本発明によって使用される溶剤含浸キャリア(担体)(本願発明者によって「solvent impregnated smart carrier」の頭文字である「SISCA」と呼ばれることもある)は、多孔性キャリアと、多孔性キャリア中で固定化された溶剤とを有する。キャリアは、通常、直径が数十ミリから数ミリの小粒子の形態であることが望ましく、例えば0.3mmから20mm、望ましくは0.4mmから5mmの直径である。このような直径であると、物質移動の特性と、発酵培地からの製品を含んだSISCAの分離の容易さとの最適なバランスを実現できる。溶剤は、非生物分解性を有し、溶剤と結合して溶剤を十分に固定化できる結合力を有するあらゆる材料から生成できる。
キャリア材料は疎水性である。キャリア材料は、さらに、再生状態、例えば蒸気により再生を行う場合は高温の蒸気に対する耐性が必要である。また、発酵槽が異質な微生物類によって悪影響を受けることを避けるために、キャリア材料は分解することなく殺菌できるものでなければならない。
【0019】
溶剤含浸キャリアの気孔率は、粒子の孔直径の平均が25Å(2.5nm)〜50μm、より望ましくは0.02μm〜25μmとなるように選択することが望ましい。WO−A−02/16030には、これらの適切な孔直径を有する溶剤含浸キャリア粒子を得る方法が記載されている。
【0020】
溶剤含浸キャリアの気孔率は、望ましくは30〜80vol.%である。80vol.%より高い気孔率は、一般に粒子の吸収能を向上させるが、粒子の機械的安定度を低下させることもある。30vol.%より低い気孔率では、適用条件によっては吸収能が低すぎる可能性がある。気孔率は40〜60%の範囲、例えばおよそ50%であることがより望ましい。
【0021】
キャリアはポリマ材料を含むことが望ましいが、ある種のセラミック材料、例えばシリカ、ジルコニア、アルミナまたはアルミノシリケート(例えばゼオライト)を使用することも可能である。キャリアは架橋ポリマ材料、例えばジビニルベンゼンと架橋した重合体(DVB)を含む。好ましい重合体は、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、およびポリプロピレンが任意に架橋されたものである。他の適切なポリマ材料は、アンバーライト(登録商標)樹脂、例えばスチレンとDVBの疎水性の重合体によるXAD4やXAD16などの高分子樹脂である。通常、キャリアは(重合)材料の押出によって得られる。
【0022】
キャリア粒子の気孔は、望ましくは、0.01〜50μm、より望ましくは0.02μm〜25μm、例えば0.03〜20μmの範囲の直径を有する。キャリア粒子の気孔率は、望ましくは30〜80vol.%、例えば約65〜約80vol.%で、70〜75vol.%などである。
【0023】
本発明において使用するのに適した溶剤は、キャリアと十分に固着できるものであり、つまり、溶剤には、適切な表面張力がなければならない。その上、溶剤には、炭化水素を媒体から回収するのに十分な親和力が必要であり、つまり、適した分配係数を有する必要がある。溶剤は、発酵媒体との接触中に溶剤の損失を避けるために水難溶性であるべきである。溶剤は、蒸発をできるだけ避けるために揮発性が高すぎないほうがよく、また、爆発物であってはならない。また、使用状況下において、原則として生物分解性でないほうがよい。溶剤は再生工程に耐えることができなければならない。そのうえ、必要に応じて、溶剤を殺菌可能であることが望ましい。
【0024】
溶剤は、一般に、水非混和性である非水溶性溶媒が適している。最適な溶剤は、ジイソデシルフタレート(di-isodecylphtalate、DIDP)、ヒマシ油、オクタノール、デカノール、クメン、石油エーテル、ヘキサン、オクタン、ベンゼン、パーム核油、大豆油、およびこれらの混合物を含む。通常、溶剤は多孔性キャリア吸着材対溶剤の重量比が0.1〜2、例えば0.2〜1の範囲で使用される。発酵製品の吸収を容易にするために、錯生成剤を溶剤に加えてもよい。
【0025】
本発明において使用される適切な微生物類(生体触媒)は、通常、バクテリア、イースト、およびかびである。より具体的には、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)、大腸菌(Escherichia coli)、サッカロミセス・セルビシェ(Sacharomyces cerevisiae)、ラクトバシラス(Lactobacillus)種、および黒色アスペルギルス(Aspergillus niger)等の一つ以上を利用することができる。また、ある酵素類など、上述した微生物の生化学的に関連する成分のみを利用することも可能である。
【0026】
本発明の利点の1つは、生化学反応と分離によって統合した製造を行うことができる点である。したがって、これらの工程は、簡単な単位操作に統合可能であり、設置および運転費用を大幅に低減できる。これにより、生体触媒の生産物阻害がもはや起こらない、もしくは限定的にしか起こらないため、本来あるべき位置で製品の吸収が行われる。これは反応条件としては最適である。
【0027】
本発明で使用される溶剤含浸キャリアは、周知の方法により生成してもよい。例えば、キャリア重合体を、溶剤と、第2のより揮発性の高い溶剤との混合物と接触させることにより、簡単に溶剤を含浸させることもできる。含浸の後に、揮発性の溶剤を減圧、および/または温度上昇した状態で蒸発させ、溶剤含浸キャリアを得る。また、高温で重合体キャリアを溶かして、次に溶融ポリマを溶剤と任意のキャリアと混合させることも可能である。冷却中、多孔性の高分子基質が形成され、この気孔が溶剤で満たされる。これにより、溶剤含浸粒子が生成される。
【0028】
本発明によると、炭化水素は、形成時に溶剤含浸キャリアから吸収され、および/または液体培地から吸収され、要するに、液体培地から多孔性溶剤含浸キャリアによって抽出される。これは、炭化水素が、溶剤含浸材料によって運ばれる溶剤に溶解可能であること、キャリア粒子の表面に吸着可能であること、あるいはその両方を意味する。溶剤に溶けることに加えて、炭化水素が溶剤中もしくは溶剤と化学反応を起こすことも可能であり、これにより媒体からの炭化水素の吸着性が向上する。化学反応を改良するために、溶剤内にある種の薬剤を含ませてもよい。これらの薬剤は、機械的および生物学的に安定しているべきであり、炭化水素と強く、しかも可逆的な相互作用を持たなければならない。また、他の成分と比べて、製造される炭化水素によって選択される必要があり、水に不溶性であり、溶剤には溶解しなくてはならない。さらに、十分に速い化学反応速度論に対応したものではくてはならず、再生状況に耐え得る必要がある。一般に、上述した溶剤に対するのと同様の特徴がこれらの薬剤にも要求される。これらの薬剤の例としては、アミン類等の錯生成剤、例えば、3オクチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミンである。または、ある種の有機りん(organo-phosphorus)化合物、例えばDEHPA(りん酸ジ-2-エチルヘキシル、di- (2-ethylhexyl) phosphoric acid)、DEHTPA(ジチオりん酸ジ-2-エチルヘキシル、di (2- ethylhexyl) dithiophosphoric acid)、HEHEHP(2エチルヘキシルりん酸モノ2エチルヘキシルエステル、2-ethylhexyl-phosphonic acid mono-2-ethylhexyl ester)である。
【0029】
発酵液体と溶剤含浸キャリアとの接触は、周知の方法により行うことができる。
ある実施の形態では、次のような構成を使用する。すなわち、発酵槽の底部から粒子を供給し、溶剤と発酵液体との密度差により粒子を上昇させる。したがって、この実施の形態においては溶剤含浸粒子(溶剤+キャリア)の密度は、水の密度以下であることが望ましい。より望ましくは、溶剤含浸粒子の密度は約900kg/m3以下である。
【0030】
反対に、発酵液体よりも重い粒子を使用することも可能であり、この場合、粒子を発酵槽の上部から供給し、その底部に沈殿させる。
【0031】
溶剤含浸キャリアの再生は、蒸気の利用(ストリッピング)、逆抽出、加熱、またはこれらの組み合わせによって実行可能である。ある実施の形態では、蒸気を使用して再生を行う。この場合、吸収したキャリアを、例えば100〜200℃の温度で1〜20baraの圧力の蒸気と接触させる。
【0032】
逆抽出においては、吸収した溶剤含浸キャリアを、溶剤よりも製品に対する親和力の高い別の溶剤と接触させる。製品が溶剤またはキャリア中に存在する添加物によって化学的に接着している場合、逆反応により解放して製品を回収することができる。例えば、有機酸の逆抽出の場合では、アルカリ液を使用することができる。
【0033】
図1は、本発明を実施するために適した構成を概略的に示している。図1に示す実施の形態において、出発原料(2)が、例えば連続的に発酵槽(1)に供給される。出発原料は発酵槽内において微生物類によって炭化水素に変換される。発酵槽は、例えば、CSTR、または流動層反応器を利用できる。また、例えばフェドバッチで断続的に行うことも可能である。溶剤含浸粒子は、(6)において発酵槽へ供給される。発酵槽(1)では、製品となる炭化水素に応じて選択された溶剤含浸キャリアに、製品となる炭化水素が詰め込まれる。次に、詰め込みされたキャリアが、望ましくは発酵槽の上部で回収される。そして、製品となる炭化水素(3)が詰め込まれたキャリアは再生部へ供給される。これは蒸気ストリッパー(4)の形態で行ってもよく、この場合、蒸気(5)は詰め込みされたキャリアと接触する。ストリッピング部の動作条件は、蒸気圧が最大20baraであることを含む。ストリッピングの間、溶剤含浸キャリア内の溶剤から炭化水素が蒸発する。溶剤自体はキャリアに残る。ガス状の製品流はストリッピング部を離れ、(7)で冷却された後、冷えた後に、(8)で水性留分と製品流(9)に分離される。図1の実施の形態では、溶剤含浸キャリアは発酵槽の底部(もしくはその近傍)から供給される。発酵槽内の液体培地よりも低い密度(つまり、一般に、水よりも低い密度)の溶剤含浸キャリアを選択することにより、キャリアが上昇し、製品を含むことができる。発酵槽の上部、もしくは上部近傍で、単純にキャリアをすくい取る(skimming)ことによって、非常に容易に収集できる。
【0034】
別の方法としては、水の密度より高い密度の溶剤含浸キャリアを使用することである。この場合、詰め込みされていないキャリアを発酵槽の上部もしくは上部近傍から供給し、詰め込みされたキャリアを発酵槽の底部で回収する。
【実施例】
【0035】
長さ1000μm、幅800μm、孔直径0.1〜10μm、気孔率50%、密度520kg/m3の多孔性円柱形粒子を、室温で30分間攪拌しながらオクタノールと接触させて含浸させた。
含浸の後に、粒子の密度は920kg/m3であり、水に対して低親和性となった。
【0036】
このようにして得られた溶剤含浸多孔性キャリアは、次に、発酵工程が行われる容器へ運ばれた(以前にオクタノールに適用されたシュードモナス・プチダを生産するフェノール)。発酵液体培地は、粒子を懸濁させておくために強く混ぜられた。温度は30℃であった。18時間後に発酵工程は停止し、粒子が液体培地から分離された。また、セル密度(マイクロ有機体の成長)も測定された。媒体中と粒子中のフェノールの濃度が測定された。粒子は、次に、2M NaOHの溶液を利用することで再生された。
これらの測定値から、製造されたフェノールのほぼ全てが抽出されたと結論づけることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発酵液体から炭化水素を製造する方法であって、
生体触媒を利用して発酵液体から炭化水素を生成する工程と、
前記発酵液体を多孔性の溶剤含浸キャリアと接触させ、多孔性の溶剤含浸キャリアの密度を前記発酵液体とは異なるようにして、前記生成された炭化水素を前記溶剤含浸キャリアに吸収させる工程と、
前記溶剤含浸キャリアを再生し、炭化水素流を得る工程と、
前記再生された溶剤含浸キャリアを再利用する任意の工程とを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において
前記溶剤含浸キャリアは、重合体キャリアであることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法において、
前記重合体キャリアは、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、シリコン、ポリエチレン、および(再生)セルロースの一つ以上の成分が任意に架橋されたものを含むことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、
前記溶剤含浸キャリアは、望ましくは、シリカ、アルミナ、アルミノシリケート、及びこれらの組み合わせから選択される無機キャリアを含むことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の方法において、
前記再生は、蒸気の利用、逆抽出、加熱、またはこれらの組み合わせにより実行されることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の方法において、
前記製品となる炭化水素は、4-ヒドロキシ安息香酸、ベンズアルデヒド、もしくはこれらの混合物であることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の方法において、
前記生体触媒は、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)、大腸菌(Escherichia coli)、サッカロミセス・セルビシェ(Sacharomyces cerevisiae)、ラクトバシラス(Lactobacillus)種、および黒色アスペルギルス(Aspergillus niger)から選択されることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載の方法において、
前記溶剤含浸キャリアは、前記発酵液体を含んだ発酵槽の実質的に底部もしくはその近傍から挿入され、前記発酵槽の実質的に上部もしくはその近傍で収集され、前記溶剤含浸キャリアの密度は、前記発酵液体よりも低く、
あるいは、
前記溶剤含浸キャリアは、前記発酵液体を含んだ発酵槽の実質的に上部もしくはその近傍から挿入され、前記発酵槽の実質的に底部もしくはその近傍で収集され、前記溶剤含浸キャリアの密度は、前記発酵液体よりも高いことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれかに記載の方法は、
連続的に実施されることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれかに記載の方法において、
前記多孔性の溶剤含浸キャリアの孔部の平均直径は、2.5nm〜50μmであることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれかに記載の方法において、
前記気孔率は、30〜80%であることを特徴とする方法。


【図1】
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【公表番号】特表2007−525230(P2007−525230A)
【公表日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−501734(P2007−501734)
【出願日】平成17年3月1日(2005.3.1)
【国際出願番号】PCT/NL2005/000147
【国際公開番号】WO2005/083099
【国際公開日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(506297485)ネーデルランデ オルガニサティー ヴール トゥーヘパストナツールウェテンスハペライク オンデルズーク テーエヌオー (30)
【Fターム(参考)】