説明

炭化水素合成方法

炭化水素の合成方法(10)は、水素および一酸化炭素を含むガス状供給原料(18)を、3相低温触媒フィッシャートロプシュ反応工程である第1フィッシャートロプシュ反応工程(12)に供給するステップと、炭化水素を生成させるために第1反応工程(12)で水素と一酸化炭素とを一部触媒的に反応させるステップとを含む。第1反応工程から得た未反応水素および一酸化炭素を含むテールガス(32)の少なくとも一部を、2相高温触媒フィッシャートロプシュ反応工程である第2フィッシャートロプシュ反応工程(42)に供給する。水素と一酸化炭素とを第2反応工程(42)で少なくとも一部触媒的に反応させてガス状炭化水素を生成させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は炭化水素合成に関する。本発明は特に炭化水素合成の方法に関する。
【発明の詳細な説明】
【0002】
本発明により炭化水素合成の方法が提供され、その方法は、水素および一酸化炭素を含むガス状供給原料を、3相低温触媒フィッシャートロプシュ反応工程である第1フィッシャートロプシュ反応工程に供給するステップと、水素と一酸化炭素とを第1反応工程で炭化水素を形成するように一部触媒的に反応させるステップと、第1反応工程から得た未反応の水素および一酸化炭素を含むテールガスの少なくとも一部を、2相高温の触媒的フィッシャートロプシュ反応工程である第2フィッシャートロプシュ反応工程に供給するステップと、水素および一酸化炭素の少なくとも一部を第2反応工程で触媒的に反応させてガス状炭化水素を生成させるステップとを含む。
【0003】
通常、第1反応工程には、キャリア液に懸濁させた固体粒状フィッシャートロプシュ触媒のスラリー床が含まれ、その低い位置でガス状の供給原料がスラリー床に入る。
【0004】
第1反応工程においてスラリー床を用いる場合、水素と一酸化炭素とがスラリー床の中を上方へ通過するときに触媒により反応して、その反応により液状炭化水素生成物およびガス状生成物を生成し、その結果前記液状炭化水素生成物はスラリー床のキャリア液を構成する。
【0005】
本発明の方法には、通常、第1反応工程から液状炭化水素生成物およびガスおよび蒸気を抜き出すステップと、前記ガスおよび蒸気を冷却してその中に含まれる液状炭化水素および反応水を凝縮させ、第1反応工程から得た未反応の水素および一酸化炭素を含むテールガスを生成させるステップとが含まれる。典型的には、凝縮した液状炭化水素、反応水およびテールガスは、分離容器の中で分離し、そこから抜き出し、抜き出したテールガスは第2反応工程に供給する。
【0006】
その結果、第1反応工程からのテールガスには、通常、未反応水素、未反応一酸化炭素および第1反応工程で生じた、凝縮せずにテールガスから分離されなかったCOを含むガス状生成物が含まれる。このテールガスには、通常少量のC−炭化水素が含まれる。このように第1反応工程では水性シフト反応によって二酸化炭素が生成することになる。
【0007】
本発明の方法は、第1工程テールガス中におけるH/(2CO+3CO)の比を調節したのち、調節した第1工程テールガスを第2反応工程へ供給することを含むことができる。第2反応工程へ供給する第1工程テールガス中におけるH/(2CO+3CO)の比は、0.8と1.05との間であることが好ましい。
【0008】
本発明の一実施形態においては、H/(2CO+3CO)比を、H高濃度ガス、例えばメタンの水蒸気改質によって得たH高濃度ガス、を第1工程テールガスに加えることにより調節する。
【0009】
本発明のもう一つの実施形態においては、H/(2CO+3CO)比を第1工程テールガス再循環から過剰のCOを除くことによって調節する。
【0010】
本発明のさらに別の実施形態においては、H/(2CO+3CO)比を、第1工程テールガス中のCOの一部を、水性ガスシフト反応CO+HO←→CO+Hに従ってHおよびCOを生成させる水蒸気との反応によって変化させることにより調節する。その後、過剰のCOを除いてから、調節した第1工程テールガスを第2反応工程に供給する。
【0011】
本発明のさらにまた別の実施形態においては、過剰のCOをCOへ変換する逆水性ガスシフト反応と組み合わせて、第1工程テールガスにH高濃度ガスを加えることによって、H/(2CO+3CO)比を調節する。
【0012】
ガス状炭化水素、残存すれば未反応水素、未反応一酸化炭素およびCOのようなガス状副生物も第2反応工程から抜き出して、1種または複数の凝縮液状炭化水素ストリーム、反応水ストリームおよび第2工程テールガスに分離することができる。
【0013】
第1反応工程で使用されるフィッシャートロプシュ触媒は、例えば鉄触媒などのシフト触媒でよく、好ましくは助触媒添加鉄触媒(promoted iron catalyst)である。典型的には、触媒は沈殿させた触媒である。触媒には、活性および/または選択性のために助触媒を添加することができる。しかし、助触媒添加鉄フィッシャートロプシュ触媒(promoted iron Fischer−Tropsch catalyst)を使用する反応工程には、COおよびHの1回通過転化率が増大すると反応工程生産性が急速に低下するという弱点があることが知られている。それ故、第1反応工程は、COおよびHの1回通過転化率を低く約30%と約50%の間にして実施すれば有利である。
【0014】
「シフト触媒」とは、本発明の炭化水素合成方法の実施条件で、1反応工程を通過するCOの2%より多くを、COへ転化させる炭化水素合成触媒の意味である。
【0015】
本発明の方法は、第1工程テールガスの一部を第1反応工程へ再循環することを含むことができる。第1工程テールガスの再循環は第1工程のCOおよびHの総転化率を約65%以下の値に、好ましくは約60%以下の値に、さらに好ましくは約50%以下の値に増大させるために使用することができる。再循環を使用する場合、ガス状供給原料と再循環第1工程テールガスとの比は、典型的には、約1:1であるが、ガス状供給原料の組成に依存して変わり得る。しかし、この比が約2:1を超えることはあまりない。
【0016】
本発明の方法は、第2反応工程のCOおよびCO総転化率を高くするために、第2工程テールガスの一部を第2反応工程へ再循環することを含むことができる。第2反応工程として、CO+CO総転化率は少なくとも65%でよく、好ましくは少なくとも80%でよく、さらに好ましくは少なくとも85%でよい。第2反応工程への第1工程テールガス供給と第2反応工程テールガス再循環との比は、典型的には約1:1であろうが、第2反応工程へ供給する第1工程テールガスの組成に依存して変わり得る。この再循環比が約2:1を超えることはあまりない。
【0017】
第1反応工程は280℃未満の温度で実施するとよい。典型的には、第1反応工程は160℃と280℃との間、好ましくは220℃と260℃との間、例えば約250℃で実施する。このように第1反応工程は高鎖成長の、典型的にはスラリー床の反応工程で、予め設定した10〜50barの範囲の実施圧力で実施する。
【0018】
第2反応工程は少なくとも320℃の温度で実施するのがよい。典型的には、第2反応工程は、320℃と350℃との間の温度、例えば約350℃で、および10〜50barの範囲の実施圧力で実施する。
【0019】
第2反応工程はこのように低鎖成長反応工程で、典型的なものは、2相流動床反応装置を使用する。スラリー床反応装置中で連続液状生成物相を維持できることによって特徴づけられうる第1反応工程とは対照的に、第2反応工程は流動床反応装置で連続液状生成物相を形成することができない。
【0020】
第2反応工程で使用されるフィッシャートロプシュ触媒はシフト触媒、例えば鉄触媒であってよく、好ましくは助触媒添加鉄触媒である。典型的な触媒は溶融触媒である。同じ種類の触媒を第1および第2反応工程で使用してよい。しかし、助触媒の組成および量と触媒の物理的性質例えば密度とは、通常、第1および第2反応工程で相違する。
【0021】
第1反応工程へのガス状供給原料は、水素と一酸化炭素を、約0.4と約2.4との間、好ましくは約0.7と約2.0との間のモル比で含むことができる。このようにして、第1反応工程において、好ましくないメタン生成を抑制し、しかも所望のオレフィン系炭化水素生成物の生成を増強または促進するために、炭化水素合成に対する化学量論的必要量を超える過剰のCOが存在することが望ましい。
【0022】
本発明の方法は、第1および第2反応工程でC−炭化水素を生じさせるステップ、第1反応工程で生じたC−炭化水素を第2反応工程に通すステップ、および第2反応工程からのC−炭化水素を回収するステップを含むことができる。このように、本発明の方法は、軽質炭化水素例えばC〜C炭化水素およびC+炭化水素ストリームを第2工程テールガスから分離するための分離工程を含むことが望ましい。1−ヘキセンをこのC+炭化水素ストリームから分離することができる。これらの分離した軽質炭化水素は、エチレン、プロピレンおよびブチレン製品を製造するために使用できる。分離工程は、炭化水素合成工程で生成した他のストリームから軽質炭化水素を分離するためにも使用できる。
【0023】
第1反応工程からの液状炭化水素は主としてワックスを含むことがある。換言すれば、第1反応工程からの液状炭化水素の少なくとも約50質量%がC19+炭化水素からなっていることがある。このワックスはワックス処理工程で処理して高品質の潤滑油基油および/または高価値のワックス製品を高収率で与えることができる。ワックス処理工程は副生ナフサ例えばC〜C10副生ナフサ、ディーゼル生成物例えばC11〜C19ディーゼル生成物およびディーゼル炭化水素生成物よりも重質の、例えばC20+の炭化水素生成物も生成する。このようにワックスを処理して、ディーゼル留分、ナフサ、潤滑油または特殊ワックスの1種または複数を製造できる。
【0024】
本発明の方法は、第1反応工程からの凝縮液状炭化水素および/または第2反応工程からの凝縮液状炭化水素を処理して、炭化水素各留分、例えばC〜Cナフサ留分、C〜C13炭化水素留分、ディーゼル留分および軽ガス留分を供給することを含むことができる。
【0025】
第1反応工程からの凝縮液状炭化水素からのC〜C13炭化水素留分(オレフィン含有ストリーム)は、処理して酸素化された炭化水素を除去し、次にアルキル化して分離工程にかけ、直鎖アルキルベンゼンおよび場合によりC〜C13パラフィンを製造することができる。このように本発明の方法は製品として直鎖アルキルベンゼンを製造できる。この場合、第1反応工程からの凝縮液状炭化水素からの残存分離成分は、第2反応工程からの分離炭化水素留分と合わせて適当な方法で処理してよい。
【0026】
本発明の方法は、流動接触分解上昇管反応装置を使用して、ナフサ製品の1種または複数を処理し、主な副生物としてエチレンとガソリンを含む、プロピレンからなるオレフィン製品を製造することができる。
【0027】
接触分解装置は中間生成物として生成した重質炭化水素からガソリンを製造するために使用することができる。このようにして、本発明の方法は、流動接触分解上昇管反応装置を使用して、ディーゼル留分よりも重質の生成物(C20+炭化水素)を処理してガソリン含有生成物を製造することができ、そのガソリン含有生成物を処理してガソリンおよびディーゼル生成物を製造できる。
【0028】
本発明の方法で製造したオレフィンを低重合して、それによりディーゼル留分生産を増加させるために、COD装置(オレフィンをディーゼル留分に転化する装置:Conversion of Olefins to Diesel unit)が使用できる。COD装置は、ナフサを低重合して副生物のパラフィン系ナフサと共にディーゼル生成物を製造することができるゼオライト触媒を充填した反応装置を備えることができる。
【0029】
本発明の方法は、本発明の方法によって製造された1種または複数のディーゼル生成物から高品質のディーゼルエンジン燃料を製造するために、ディーゼル留分水素処理工程を含むことができる。
【0030】
本発明の方法はワックスストリームを製造することができ、ワックスストリームは本発明によって製造される炭化水素全体の少なくとも10重量%を占める。
【0031】
本発明の方法は、中間または第1次製品としてLPガス、ナフサおよびディーゼル留分を製造できる。
【0032】
本発明の方法のメタン選択率は20%以下であり、COおよびCOの総転化率は少なくとも70%である。
【0033】
ここで、本発明を、添付の略図化した図面および実施例を参照にして、もっぱら実施例によって説明することにする。
【0034】
図面において、図1は、炭化水素合成を目的とする本発明の方法の一実施形態を示すものであり、また、図2は、炭化水素合成を目的とする本発明の方法のもう一つの実施形態を示す。
【0035】
図1を参照すると、参照番号10は炭化水素合成を目的とする本発明の方法を一般的に示す。図1に示した本発明の方法10は、天然ガスを供給原料として使用するのに適しているが、若干の改良で、石炭などの炭素質原料から誘導されるガス状供給原料で使用することができる。
【0036】
本発明の方法10は、第1フィッシャートロプシュ反応工程12を備え、場合により前に加熱器14があり、後ろには冷却器16がある。ガス状供給原料ライン18が加熱器14に入り、加熱器14から第1反応工程12に通じている。第1反応工程12からガス状生成物ライン20が冷却器16へ導かれ、また液状生成物ライン22はワックス処理工程24へ導かれる。
【0037】
冷却器16の後ろに分離装置26があり、冷却器16は分離装置26にガス状生成物ライン20によって連結している。分離装置26から、反応水ライン28、炭化水素凝縮液ライン30および第1工程テールガスライン32が出ている。第1工程テールガス再循環ライン34は第1工程テールガスライン32から出てコンプレッサー36を通ってガス状供給原料ライン18に戻っている。H高濃度ガスライン38は第1工程テールガスライン32に供給している。
【0038】
第1工程テールガスライン32は、場合により設けられる加熱器40に入り、次に加熱器40から第2フィッシャートロプシュ反応工程42に入る。ガス状生成物ライン44は第2反応工程42から洗浄塔46へ、次に洗浄塔46から冷却器50を通って分離装置48へと通じている。
【0039】
洗浄塔46はポンプ52および冷却器54を備えており、これら両者は重油再循環ライン56中に置かれている。重油再循環ライン56は、洗浄塔46の底部から出る重油ライン58から取る。
【0040】
反応水ライン60、炭化水素凝縮液ライン62および第2工程テールガスライン64は、分離塔48から出ている。炭化水素凝縮液の還流ライン66は、炭化水素凝縮液ライン62から取り、洗浄塔46へ戻るように通じている。
【0041】
第2工程テールガスライン64は冷却工程68に、さらにそこから分離工程70に通じている。テールガス水性凝縮液ライン72、テールガス炭化水素凝縮液ライン74および湿テールガスライン76が分離装置70から出ている。湿テールガスライン76は、CO除去ライン76.2を備えるCO除去工程76.1に入る。CO除去工程76.1から湿テールガスライン76は乾燥機78に入る。ここから乾燥テールガスライン80は熱交換器82および膨張タービン84を通って分離装置86に通じている。軽質炭化水素ライン88および低濃度(lean)テールガスライン90が分離装置86から出て、低濃度テールガスライン90は熱交換器82を通過する。任意の再循環ライン92が低濃度テールガスライン90から分岐している。テールガス炭化水素凝縮液ライン74は場合により1−ヘキセン回収工程103へ通じていてよく、そこから1−へキセン低濃度炭化水素ライン75および1−ヘキセン製品ライン77が出ている。
【0042】
第2工程テールガスライン64、第2工程テールガス再循環ライン65は、コンプレッサー67を通って第1工程テールガスライン32へ戻る。
【0043】
本発明の方法10には、さらに適宜C〜C13オレフィンをベンゼンと反応させて直鎖アルキルベンゼンを製造するための酸素化物除去およびオレフィン転化工程102が任意に含まれ、水蒸気リボイラー98を備えた蒸留塔96、ディーゼル留分水素処理工程100、第1流動接触分解上昇管反応装置104、第2流動接触分解上昇管反応装置106、冷却器108および水蒸気リボイラー112を備えた蒸留塔110が含まれる。蒸留塔96および110は図1には示されていない還流コンデンサーおよび関連配管を備えている。
【0044】
ワックス処理工程24から出るC〜C10副生ナフサライン114、C11〜C19副生ディーゼル留分ライン116、ディーゼル留分よりも重質の炭化水素ライン118および1種または複数の特殊潤滑油基油および/またはワックス留分製品ライン120が、後でもっと詳しく述べる種々の行き先に通じている。
【0045】
蒸留塔96のスチームリボイラー98にはスチームライン121が供給している。蒸留塔96から、炭化水素凝縮液の重質留分ライン122、ディーゼル留分ライン124、C〜C13炭化水素ライン126、C〜Cナフサライン128および軽質ガスライン130が、後でもっと詳しく述べる種々の行き先に通じている。
【0046】
〜Cナフサライン128およびテールガス炭化水素凝縮液ライン74あるいは1−ヘキセン低濃度炭化水素ライン75は、場合により、第2流動接触分解上昇管反応装置106に供給する。C〜C13炭化水素ライン126は第1流動接触分解上昇管反応装置104に通じている。
【0047】
本発明のもう一つの実施形態においては(図示していない)、望むならば、C〜Cナフサを第2流動接触分解上昇管反応装置106に供給するのに先立って、C〜Cナフサから1−ヘキセンを抽出するために1−ヘキセン回収工程を備える。
【0048】
直鎖アルキルベンゼン製品ライン136は酸素化物除去およびオレフィン転化工程102から出ている。ベンゼン供給ライン138は、工程102でオレフィンと反応するベンゼンを、直鎖アルキルベンゼンを生産するために供給する。
【0049】
空気供給ライン140によって空気を供給される再生装置105に第1および第2急速接触分解上昇管反応装置104、106の触媒が運ばれる。これらの装置の塔頂からオレフィン含有製品ライン142およびガソリン含有製品ライン144が出ている。燃焼排ガスライン146も再生装置105から出ている。
【0050】
ガソリン含有製品ライン144は冷却器108へ入り、そこから蒸留塔110に至る。軽質ガスライン111、ガソリン製品ライン148、ディーゼル留分ライン150および重油製品ライン152が蒸留塔110から出て、ライン150はディーゼル留分水素処理工程100に通じている。ライン111はライン142に入る。
【0051】
水素供給ライン154は、蒸留塔96からのディーゼル留分ライン124および蒸留塔110からのディーゼル留分ライン150と一緒にディーゼル留分水素処理工程100に入る。ディーゼル生成物ライン156はディーゼル留分水素処理工程100から出て、ワックス処理工程24からのC11〜C19副生ディーゼル留分ライン116と合流する。
【0052】
ディーゼル留分よりも重質の炭化水素ライン118はワックス処理工程24から、および炭化水素重質油留分ライン122は蒸留塔96から来て、第1急速接触分解上昇管反応装置104に入る。同様に洗浄塔46からの重油ライン58が第1急速接触分解上昇管反応装置104に入る。
【0053】
使用にあたって、水素および一酸化炭素を含むガス状の合成ガス供給原料は、ガス状供給原料ライン18を通して、および適宜加熱器14で加熱して供給し、第1フィッシャートロプシュ反応工程12に入れる。ガス状の合成ガス供給原料は、天然ガスから誘導するときは、通常天然ガスを水蒸気対炭素の比を低くして実施する部分酸化改質工程または自己熱改質工程にかけて、H:CO比が2.4未満の合成ガスを生成させることによって得る。第1反応工程12は、典型的には10barと50barとの間の圧力および典型的には220℃と260℃との間の温度で実施する1基または複数のスラリー床反応装置を備えている。これらの3相スラリー床反応装置は各々、液状炭化水素生成物(多くの場合ワックス)中に懸濁された固体粒状沈殿助触媒添加鉄フィッシャートロプシュ触媒のスラリー床を備えている。ガス状の合成ガス供給原料は低い位置でスラリー床に入り、水素と一酸化炭素は、それらが各スラリー床を上向きの通過するとき触媒的に反応して、その反応によって液状炭化水素およびガス状生成物を生ずる。液状生成物は、液状製品ライン22を通して抜き出され、ガス状生成物および未反応供給原料は、ガス状製品ライン20を通して第1反応工程12から出す。反応工程12などの3相低温触媒フィッシャートロプシュ反応工程の運転は、当業者に知られているもので、それ故本明細書でこれ以上詳細に説明しないことにする。
【0054】
ガス状生成物は、通常250℃以下の温度で冷却器16に入れ、分離装置26に供給する前に従来の方法で約30℃と約80℃との間の温度例えば70℃に冷却する。冷却装置26で3相分離が起こり、凝縮反応水は反応水ライン28に流して除去され、オレフィンを含むC〜C13留分を含む炭化水素凝縮液は炭化水素凝縮液ライン30を通して取り出され、分離装置26を出る第1工程テールガスは第1工程テールガスライン32を通して出される。
【0055】
望むならば、第1工程テールガスの一部を、第1工程テールガス再循環ライン34およびコンプレッサー36によって第1フィッシャートロプシュ反応工程12へ再循環してもよい。使用に際して、ガス状供給原料と再循環第1工程テールガスとの比は通常約1:1であって、約2:1を超えることは稀であろう。
【0056】
分離装置26からの第1工程テールガスは、場合によっては第2フィッシャートロプシュ反応工程42に入れる前に、加熱器40で加熱する。しかし、第2フィッシャートロプシュ反応工程42に入る前に、第1工程テールガスの組成を、H/(2CO+3CO)比が約1と1.05の間になるように調節する。図1に示した本発明の方法の実施形態においては、この比は、H高濃度ガスをH高濃度ガスライン38によって第1工程テールガスライン32に加えることにより調節する。
【0057】
第2フィッシャートロプシュ反応工程42は、典型的には320℃と350℃の間の高いフィッシャートロプシュ合成反応温度で実施する通常1基または複数の2相流動床反応装置を備えている。これらの流動床反応装置において、一酸化炭素と水素とが反応してガス状炭化水素を生成し、生成したガス状炭化水素はガス状製品ライン44を通って第2フィッシャートロプシュ反応工程42を出る。第1フィッシャートロプシュ反応工程12における場合のように、第2フィッシャートロプシュ反応工程42で使用する触媒は助触媒を添加した鉄触媒で、通常溶融触媒であろう。第2フィッシャートロプシュ反応工程42などの高温フィッシャートロプシュ反応工程の実施もまた、当業者によく知られているもので、これ以上詳細には述べないことにする。
【0058】
第2フィッシャートロプシュ反応工程42からのガス状炭化水素は、分離装置48からの重油、および炭化水素凝縮液を洗浄液として使用している洗浄塔46に入る。重油はポンプ52によって再循環し、第2フィッシャートロプシュ反応工程42からのガス状炭化水素により持ち込まれる熱を冷却器54で除去する。
【0059】
洗浄塔46を通過するガス状炭化水素は、ガス状製品ライン44により洗浄塔46を離れ、分離装置48に入る前に冷却器50で冷却される。分離装置48に入る前にガス状炭化水素は、このように約30℃と80℃との間、例えば約70℃の温度に冷却される。冷却器50および分離装置48中で反応水は凝縮し、反応水ライン60を通して除去する。若干の炭化水素も凝縮して炭化水素凝縮液となるが、炭化水素凝縮液ライン62を通して取り出す。残存するガス状炭化水素は第2工程テールガスとして第2工程テールガスライン64を通って分離装置48を去る。
【0060】
第2フィッシャートロプシュ反応工程42において、第2フィッシャートロプシュ反応工程42に入るCOおよびCOの少なくとも85%が炭化水素に転化することが好ましい。そのような高い転化率を達成するために、第2工程テールガス再循環ライン65およびコンプレッサー67によって、第2工程テールガスの一部を第2フィッシャートロプシュ反応工程42へ再循環する。通常、第2フィッシャートロプシュ反応工程42へ供給する第1工程テールガスと第二工程再循環テールガスとの比は約1:1であり、2:1を超えることは稀である。
【0061】
第2フィッシャートロプシュ反応工程42へ再循環しない第2工程テールガスは、冷却工程68で通常約5℃の温度に冷却する。冷却した第2工程テールガスは、それから分離装置70に入れて分離し、分離した水性テールガス凝縮液はテールガス水性凝縮液ライン72を通して除去し、テールガス炭化水素凝縮液はテールガス炭化水素凝縮液ライン74を通して取り出し、また湿テールガスは湿テールガスライン76を通して取り出す。
【0062】
分離装置70から出る湿テールガスはCO除去工程76.1に供給する。分離したCOはライン76.2を通して取り出す。次に湿テールガスは乾燥機78で乾燥して乾燥テールガスライン80により熱交換器82に供給し、そこでさらに冷却した後膨張タービン84に通すと(他の膨張または冷却技術を代わりに使用してもよい)、乾燥テールガスの温度は約−80℃に下がる。この低温乾燥テールガスは分離装置86に入れてそこで分離を行い、典型的にはC+炭化水素であるが可能性としてメタンを含む軽液状炭化水素は軽質炭化水素ライン88を通して取り出し、また炭化水素低濃度水素高濃度テールガスは低濃度テールガスライン90を通して取り出し、熱交換器82を通過させて乾燥テールガスライン80中の乾燥テールガスとの間で熱交換を行う。また、他のもっと複雑な熱交換の組合せを使用することもできる。
【0063】
軽質炭化水素ライン88中の軽質炭化水素は、当業者に知られている分離法によって、さらに分離されてエチレン、プロピレンおよびブチレン製品ならびにC〜Cパラフィン系副生物を生ずる。軽質パラフィン系副生ガスは、動力発生用ガスタービンでおよび/または工程と用役との加熱目的のための燃料ガス系で適宜使用することができる。ライン90の中の炭化水素低濃度水素高濃度テールガスは、場合により使用する再循環ライン92により、場合により部分的に第1工程テールガスライン32に再循環して、ライン38を通して供給されるH高濃度ガスを補いまたは置き換えることさえある。
【0064】
第1フィッシャートロプシュ反応工程12から取り出した液状生成物は、通常主にワックス即ちC19+液状炭化水素を含む。ワックス処理工程24においては、当業者に知られた方法(典型的には水素処理および分別蒸留)を用いて、この液状生成物を、C〜C10副生ナフサライン114を通して抜き出すC〜C10副生ナフサ、C11〜C19副生ディーゼル留分ライン116を通して取り出すC11〜C19副生ディーゼル留分、ディーゼル留分より重質の炭化水素ライン118によって取り出すディーゼル留分より重質の炭化水素生成物および参照番号120で示した多種類の特殊潤滑油基油および/または高価値ワックス留分に転化する。望むならば、液状生成物の一部または全部を、ワックス処理工程24を通さずに、第1流動接触分解上昇管反応装置104に供給することができる。
【0065】
分離装置48からの炭化水素凝縮液および分離装置26からの炭化水素凝縮液を流動ライン62および30によって合流させて蒸留塔96に供給する。蒸留塔96はスチームライン121により供給されるスチームリボイラー98を使用し、炭化水素凝縮液を蒸留して種々の留分に分ける。炭化水素重質留分は蒸留塔96から炭化水素重質留分ライン122により取り出し、第1流動接触分解上昇管反応装置104に供給する。ディーゼル留分が製造され(通常は側留ストリッパーを使用するが、図には示していない)、ディーゼル留分ライン124を通して取り出され、ディーゼル留分水素処理工程100に供給される。C〜C13炭化水素留分はC〜C13炭化水素ライン126を通して取り出し、第1流動接触分解上昇管反応装置104に供給する。またC〜Cナフサ留分は除去され、C〜Cナフサライン128により第2流動接触分解上昇管反応装置106に供給される。蒸留塔96からの軽質ガスは軽質ガスライン130を通して取り出し、工程および用役加熱の目的に向けるために、燃料ライン94中の低濃度テールガスと合流させることができる。
【0066】
酸素化物除去およびオレフィン転化工程102においては、分離装置26からのC〜C13オレフィン留分をアルキル化して直鎖アルキルベンゼン(LAB)を製造し、それを直鎖アルキルベンゼン製品ライン136により取り出す。残る炭化水素凝縮液素材はライン30を通って蒸留塔96へ行き、そこで適切に塔に供給されるか、またはこの塔から出る製品ストリームと適宜合流される。代わりに、パラフィンを分離して最終製品として販売してもよい。
【0067】
第2流動接触分解上昇管反応装置106はプロピレンを最高の収率で製造するように実施するものであり、分離装置70からのテールガス炭化水素凝縮物(低濃度1−ヘキセンと思われる)および蒸留塔96からのC〜Cナフサストリーム128が供給される。代わりに、ナフサをライン74中のテールガス炭化水素凝縮液と併せて処理しC〜Cアルファオレフィン生成物を回収し、第2流動接触分解上昇管反応装置106に送って物質収支をとることもできる。そのようなアルファオレフィンは当業者に知られている分離方法で回収することができ、プラスチック製造のための共重合用単量体として有用である。触媒再生のためには、空気供給ライン140によって流動接触分解再生装置105に空気を供給する。反応装置104、106においては、既知の触媒/ガス分離システムを流動床と併用して使用する。
【0068】
オレフィン含有生成物がオレフィン含有生成物ライン142によって第2流動接触分解上昇管反応装置106を出る。このガス状オレフィン含有生成物は、C+炭化水素を回収するためにライン64中の第2工程テールガスと、または可能なこととしてさらに好ましくは乾燥テールガスライン80中の乾燥テールガスと併せてもよい。
【0069】
第1流動接触分解上昇管反応装置104はガソリンを最高収率で供給するように実施する。このように第1流動接触分解上昇管反応装置104から、ガソリン含有生成物がガソリン含有生成物ライン144を通して冷却器108へ、またそこから蒸留塔110へと供給される。蒸留塔110がスチームライン113により供給されるスチームリボイラー112を使用して製造する、少量の副生重油はライン152から取り出し、ディーゼル生成物はディーゼル留分ライン150により取り出し、ガソリン製品はガソリン製品ライン148によって取り出し、またライン111中の軽質ガスは第2流動接触分解上昇管反応装置から出たライン142中の生成物と合わせてよい。
【0070】
反応装置104、106からの触媒は再生装置105に通し、そこで生ずる燃焼排ガスはライン146により大気へ排出する。
【0071】
蒸留塔110からのライン152中の副生重油は、原油精製の当業者に知られている数通りの方法で処理することができる。
【0072】
第1急速接触分解上昇管反応装置104にはまた、重油ライン58により洗浄塔46からの重油と、ディーゼル留分より重質の炭化水素ライン118を通して供給される、ワックス処理工程24からのディーゼル留分より重質の炭化水素と、ライン122により供給される蒸留塔96からの炭化水素重質留分とが供給される。望むならば、第1急速接触分解上昇管反応装置104へのこの供給は、第1急速接触分解上昇管反応装置104の能力を最適化するために、原油からとった供給原料で補ってもよい。
【0073】
蒸留塔96からのディーゼル留分は、ディーゼル留分ライン124によりディーゼル留分水素処理工程100に供給され、水素供給ライン154により供給される水素で処理されて、ディーゼル生成物となり、ディーゼル生成物ライン156によって取り出される。ディーゼル留分水素処理工程100には、ディーゼル留分ライン150により、蒸留塔110からもディーゼル留分が供給される。ワックス処理工程24からのC11〜C19副生ディーゼル留分ライン116は、ディーゼル生成物ライン156に接続している。
【0074】
第1工程テールガスライン32中の第1工程テールガスの組成を調節するためにHガスを使用する代わりに、第1工程テールガスから過剰のCOを除去することによってその組成を調節することもできる。別の方法では、第1工程テールガスライン32に水蒸気を加え、その後水蒸気と第1工程テールガスとの混合物を加熱し、水性ガスシフト反応装置(示していない)に供給して水性ガスシフト反応を起こさせる。この技術は当業者に知られているもので、合成ガス供給原料が石炭から誘導されたものであれば、典型的に使われるであろう。水性ガスシフト反応の結果として第1工程テールガス中のHおよびCO濃度は、H:CO濃度比が少なくとも2.1好ましくは2.3になるように増加するであろう。水性ガスシフト反応装置から出たガスは冷却し、それに続いて従来のCO除去工程(示していない)によって過剰のCOを除去して、第2フィッシャートロプシュ反応工程42へ供給するのに適した第1工程テールガスを供給することができる。典型的には、この配置で、再循環ライン92中の炭化水素低濃度H高濃度テールガスをCO除去の下流の第1工程テールガスに戻すことになるであろう。いうまでもなく、第1工程テールガスのスリップストリーム(slipstream)は組成調節の目的で使用してよい。
【0075】
別法では、H高濃度ガスの添加を水性ガスシフト反応装置(示していない)と組み合わせて逆水性ガスシフト反応に影響を及ぼし、第1工程テールガス組成を調節する。このために使用される技術は正水性ガスシフト反応のために使用された技術と類似のものである。HとCOとが反応して水およびCOが生成する。逆水性ガスシフト反応で生成した水を除去してから、組成を調節した第1工程テールガスを第2フィッシャートロプシュ反応工程42に供給することが望ましい。このオプションは、CO除去工程76.1からのCOを、ライン32中の第1工程テールガスに一部再循環することと組み合わせて使用すると有利である(示していない)。
【0076】
図面の図2を参照すると、参照番号200は、炭化水素合成を目的とする本発明の方法のもう一つの実施形態を一般的に示す。本発明の方法200は大体において本発明の方法10と同様であり、別段の記載がない限り、同じ参照番号を同一または類似の機能を指すために使用している。
【0077】
本発明の方法10と相違して、本発明の方法200は接触分解上昇管反応装置104、106、冷却器108、または蒸留塔110を備えていない。その代わりに、本発明の方法200は蒸留塔202および204ならびにCOD装置(オレフィンを留出物へ転化する装置)206を備えている。
【0078】
洗浄塔46からの重油ライン58は洗浄塔202へ入る。重質留分ライン210は蒸留塔202の底部から出て、蒸留塔96からワックス処理工程24に通じている炭化水素重質留分ライン122に入る。ディーゼル留分ライン212は蒸留塔202から出て、蒸留塔96とディーゼル留分水素処理工程100との間に通じているディーゼル留分ライン124に入る。
【0079】
分離装置48からの炭化水素凝縮液ライン62は蒸留塔204に入る。ディーゼル留分ライン214は蒸留塔204の底部から出て、蒸留塔202からのディーゼル留分ライン212と合流する。軽質留分ライン216およびC〜Cライン218は蒸留塔204を出て、C〜Cライン218は分離装置70からのテールガス炭化水素凝縮物ライン74に合流し、その後任意に設けられた1−ヘキセン回収工程103に供給される。
【0080】
〜Cライン220は蒸留塔96から出て、ヘキセン−1回収工程103からの1−ヘキセン低濃度炭化水素ライン75と合流し、その後COD装置206に入る。
【0081】
本発明のもう一つの実施形態(示していない)においては、望むならば、C〜C留分をCOD装置206に供給する前に、ライン220中のC〜C留分から1−ヘキセンを抽出するために、1−ヘキセン回収工程を設ける。
【0082】
ナフサライン222およびディーゼル留分ライン224はCOD装置206を出て、ディーゼル留分ライン224はディーゼル留分ライン124と合流し、ナフサライン222はワックス処理工程24からのC〜C10副生ナフサライン114と合流する。
【0083】
ワックス処理工程24には再循環ライン226および軽質留分ライン228があり、それに対して酸素化物除去およびオレフィン転化工程102にはn−パラフィンライン230がある。
【0084】
使用にあたって、本発明の方法200は本発明の方法10と同様にして実施する。しかしながら、本発明の方法200は、燃料ガス、LPガス、軽質オレフィン、ナフサ、ディーゼル留分、直鎖アルキルベンゼン、潤滑油基油および場合によっては共重合用単量体を製造するが、ガソリン製品は製造しない。
【0085】
本発明の方法200において、洗浄塔46から出た重油は重油ライン58により蒸留塔202に供給され、そこで重油は重質留分およびディーゼル留分に分離される。重質留分は重質留分ライン210によりワックス処理工程24に送られ、それに対してディーゼル留分はディーゼル留分ライン212によってディーゼル留分水素処理工程100へ送られる。
【0086】
分離装置48からの炭化水素凝縮液は蒸留塔204に供給され、そこで蒸留されてディーゼル留分、C〜C炭化水素留分および軽質留分になる。軽質留分は軽質留分ライン216によって取り出し、ディーゼル留分はディーゼル留分水素処理工程100に供給するためにディーゼル留分ライン214によって取り出す。C〜C炭化水素留分(ナフサ)はC〜Cライン218によって取り出し、分離装置70からくるテールガス炭化水素凝縮液ライン74中のテールガス炭化水素凝縮液と合流し、その後1−ヘキセン回収工程103へ供給される。
【0087】
蒸留塔96はC〜C炭化水素留分を製造し、この留分はC〜Cライン220によって取り出される。1−ヘキセン回収工程103からの1−ヘキセン低濃度炭化水素ストリーム(ライン75)は蒸留塔96からのC〜C炭化水素ストリームに合流し、その後COD装置206に供給される。COD装置206において、C〜Cナフサ留分のオレフィン分が、ゼオライト触媒の使用により低重合されて、(ディーゼル留分ライン224により)蒸留塔202、204および96からのディーゼル生成物に加わる。ナフサはCOD装置206からナフサライン222により取り出し、ワックス処理工程24からのライン114中の副生ナフサと合流する。
【0088】
蒸留塔202および蒸留塔96から重質留分を受け入れるワックス処理工程24においては、重質留分は再循環ライン226によって消滅するまで再循環される。ワックス処理工程24から(ライン228)、蒸留塔96から(ライン130)および蒸留塔204から(ライン216)の軽質留分は燃料ガスとして使用するか、または湿テールガスと合わせて乾燥機78へ送り込むことができる。図2には示していないが、ライン80により乾燥機78を出る乾燥テールガスを、本発明の方法10の乾燥テールガスと同様なまたは同じ方法で処理して、軽質炭化水素ストリーム(LPガス)および燃料ガスを製造することができる。
【0089】
本発明の方法10と相違して、酸素化物除去およびオレフィン転化工程102は蒸留塔96からのC〜C13オレフィン供給を受け入れて、直鎖アルキルベンゼンおよびn−パラフィン製品ストリームを製造する。望むならば、オレフィン分離および転化工程102から得られるn−パラフィンをディーゼル留分水素処理工程100に供給することができる。
【実施例】
【0090】
本発明の方法200を、従来のプロセスシミュレーションソフトウェアを使用して、数学的にシミュレートした。シミュレートした本発明の方法200には、H高濃度ガス添加と第2フィッシャートロプシュ反応工程テールガスからのCO再循環の併用、CO除去および500℃での逆水性ガスシフトを使用する第1工程テールガス組成調節を含めた。
【0091】
次のプロセスパラメーターを使用した。第1反応工程のCOおよびH総転化率ならびにCOおよびH1回通過転化率はそれぞれ62%および35%とした。ガス状供給原料と再循環第1工程テールガスとの比は1:1とした。第2反応工程のCOおよびCO総転化率ならびにCOおよびCO1回通過転化率はそれぞれ69%および36%とした。第2反応工程再循環テールガスと組成調節された第1工程テールガスとの比は1.2:1とした。第1反応工程への供給のH/CO比は1.64とした。調節した第1工程テールガスのH/(2CO+3CO)比は0.93とした。
【0092】
本発明の方法は、COおよびCOの総転化率77%およびメタン選択率17%を達成した。製造された炭化水素全体の13%が第1反応工程からのワックス製品であった。
【0093】
ワックス製品に加えて、次の質量別内訳で炭化水素製品が製造された。
【0094】
【表1】



【0095】
通常、低温フィッシャートロプシュ反応工程からのテールガスが含むC−炭化水素は、量があまりにも少な過ぎて回収に費用をかけるに値しない。有利なことに、本発明の方法において、これらは通常相当な量のC−炭化水素を生成する高温フィッシャートロプシュ反応工程を通過し、そのようにして高温フィッシャートロプシュ反応工程から生ずるガス状生成物と混合するであろう。低温のフィッシャートロプシュ反応工程から生ずるこれらのC−炭化水素は、このようにして高温フィッシャートロプシュ反応工程からのC+炭化水素を回収するために通常使用される当業者に知られた方法および方式で回収される。
【0096】
本発明の方法において有利なことに、高い低温フィッシャートロプシュ反応装置の生産性は、1回通過転化率約30%と約50%の間で、テールガス再循環有りまたは無しで実施することにより得られる。低温フィッシャートロプシュ反応工程に高温フィッシャートロプシュ反応工程が続くので、未反応の水素および一酸化炭素は損失も浪費もせずに、高温フィッシャートロプシュ反応工程で、低温フィッシャートロプシュ反応工程を1回通った後で残る残存反応物質にとって低原価の任意の転化率で転化される。さらに、高温フィッシャートロプシュ反応工程の触媒消耗は、触媒毒が存在せずしかも炭素形成を阻止する望ましい供給ガス組成(高い水素分圧)により、特に少ないであろう。
【0097】
低温フィッシャートロプシュ反応工程から生ずる本発明の方法の製品の価値は、通常、高温フィッシャートロプシュ反応工程から生ずる製品の価値よりも高い。さらに、助触媒添加鉄触媒で得られた低温フィッシャートロプシュ由来の製品は、概して、担体付きコバルト触媒での低温フィッシャートロプシュ法を使用して得た製品よりも、硬質ワックス選択率が高く、メタン選択率が低く、CからC13の炭化水素製品ストリーム中のオレフィン含量が高いので、価値が高い。
【0098】
規模に関する利点の経済効果として、本発明の方法を使用する全ての主要な非燃料製品の製造原価は、供給原料の石炭または天然ガスの価格が過度に高くなく与えられれば、本出願人が知る競合先行方法による原価よりも低くなる可能性がある。原油価格が破格に低くならない限り、ガソリンおよびディーゼル燃料の製造原価もまた競争力がある。資本の出費は石炭を供給する設備の方が天然ガスを供給する設備よりも大きいので、本発明の方法のためには天然ガス供給の方が好ましい。しかしながら、本発明の方法が石炭供給の場合でも、電力供給は重要な副産物である。
【0099】
本発明の方法から得られる主要な製品は、潤滑油基油および/または高価値ワックス製品、プロピレン、エチレン、直鎖アルキルベンゼン、および高品質(硫黄を含まない)ガソリンおよびディーゼル燃料を含むことができる。場合によっては、副生物は、1−ヘキセンおよび炭化水素酸素化物、主としてエタノール、メタノール、アセトンおよびメチル−エチルケトンを含むことがある。

【図1】

【図2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素を合成する方法であって、
水素および一酸化炭素を含むガス状供給原料を、280℃未満の温度および10から50barの範囲内の圧力で実施する3相低温触媒フィッシャートロプシュ反応工程である第1フィッシャートロプシュ反応工程に供給するステップと、
水素と一酸化炭素とを第1反応工程で一部触媒的に反応させて炭化水素を生成させるステップと、
未反応の水素および一酸化炭素を含む第1反応工程から得たテールガスの少なくとも一部を、少なくとも320℃の温度および10から50barの範囲内の圧力で実施する2相高温触媒フィッシャートロプシュ反応工程である第2フィッシャートロプシュ反応工程に供給するステップに供給するステップと、
水素および一酸化炭素の少なくとも一部を第2反応工程で触媒的に反応させて、ガス状炭化水素を生成させるステップと
を含む方法。
【請求項2】
第1反応工程がキャリア液に懸濁した固体粒状フィッシャートロプシュ触媒のスラリー床を含み、ガス状供給原料がそのスラリー床に低い位置で入り、かつ水素と一酸化炭素とがそのスラリー床を上方へ向かって通過するときに触媒的に反応し、その反応により液状炭化水素生成物およびガス状生成物を生成し、その液状炭化水素生成物がスラリー床のキャリア液を構成する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1反応工程からのテールガスがCOを含み、第1工程テールガス中のH/(2CO+3CO)の比を調節した後、調節した第1テールガスを第2反応工程に供給する請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
第2反応工程に供給する調節した第1工程テールガス中のH/(2CO+3CO)比が0.8と1.05との間である請求項3に記載の方法。
【請求項5】
高濃度ガスを第1工程テールガスに加えることによってH/(2CO+3CO)比を調節する請求項3または請求項4に記載の方法。
【請求項6】
第1工程テールガスから過剰のCOを除去することによってH/(2CO+3CO)比を調節する請求項3〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
第1工程テールガス中のCOの一部を水蒸気と反応させて、水性ガスシフト反応CO+HO←→CO+Hにより、HおよびCOを生成させることによって、H/(2CO+3CO)比を調節する、請求項3〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
逆水性ガスシフト反応CO+H←→CO+HOを用いて、過剰のCOをCOに転化することによって、H/(2CO+3CO)比を調節する、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
第1反応工程で使用するフィッシャートロプシュ触媒がシフト触媒であり、かつ第1反応工程を、COおよびHの1回通過転化率を低く約30%と約50%との間にして実施する前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
第1工程のCOおよびHの総転化率が65%以下であり、第2工程のCOおよびCOの総転化率が少なくとも65%である前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
第1工程テールガスの一部を第1反応工程へ再循環するステップと、第2反応工程からガス状炭化水素および残存すれば未反応水素、未反応一酸化炭素およびいかなるガス状副生物も抜き出すステップと、これらのガスを1種または複数の凝縮液状炭化水素ストリーム、反応水ストリームおよび第2工程テールガスに分離するステップと、第2工程テールガスの一部を第2反応工程へ再循環するステップとを含む前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
第1反応工程から液状炭化水素生成物、ガスおよび蒸気を抜き出すステップと、前記ガスおよび蒸気を冷却して、その中にある液状炭化水素および反応水を凝縮させ、第2フィッシャートロプシュ反応工程に供給する未反応の水素、一酸化炭素およびC−炭化水素を含むテールガスを製造するステップとを含む前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
第1反応工程からのテールガスと共に第2反応工程に供給したC−炭化水素を、第2反応工程で生成したC−炭化水素と共に、第2反応工程から得たガス状炭化水素から回収する請求項12に記載の方法。
【請求項14】
オレフィンを含むC〜C13炭化水素留分を製造するために第1反応工程からの凝縮された炭化水素を処理することを含む請求項12または請求項13に記載の方法。
【請求項15】
酸素化物をオレフィン含有ストリームから除去し、かつオレフィンをアルキル化して製品として直鎖アルキルベンゼンを製造する前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
−炭化水素を処理してエチレン、プロピレンおよびブチレンを製造する請求項13に記載の方法。
【請求項17】
液状炭化水素生成物を処理してディーゼル留分、ナフサ、潤滑油または特殊ワックスのうちの一種または複数を製造する請求項2に記載の方法。
【請求項18】
中間製品としてオレフィンを製造し、ディーゼル留分の生産を増やすためにオレフィンを低重合させるためにCOD装置を使用する前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
中間製品として製造した重質の炭化水素からガソリンを製造するために接触分解を使用する前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
+炭化水素ストリームを製造し、かつC+炭化水素ストリームから1−ヘキセンを回収する前記請求項のいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2007−503503(P2007−503503A)
【公表日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524496(P2006−524496)
【出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【国際出願番号】PCT/IB2004/051514
【国際公開番号】WO2005/019384
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(500159211)サソール テクノロジー(プロプライエタリー)リミテッド (25)
【Fターム(参考)】