説明

炭化水素油の分解方法

【課題】軽質化の難しい重質熱分解油、接触分解軽油、脱硫デカンテッド・オイル及びエキストラクト等の炭化水素油を、コークスを発生させること無く分解する方法を提供する。
【解決手段】4A族元素を酸化物として70重量%以上含み、かつ、アルミニウム酸化物、セリウム酸化物、リン酸化物及びイットリウム酸化物から選択される少なくとも1種の酸化物を含む触媒と、水との存在下で、重質熱分解油、接触分解軽油、脱硫デカンテッド・オイル及びエキストラクトから選択される少なくとも一種の炭化水素油を、水に対する該炭化水素油のモル比(原料炭化水素油/水)が0.01〜100、温度280〜580℃、圧力22.1〜50.0MPaの条件下で分解させることを特徴とする炭化水素油の分解方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素油の分解方法に関し、特には軽質化の難しい重質熱分解油、接触分解軽油、脱硫デカンテッド・オイル及びエキストラクト等の炭化水素油を、コークスを発生させること無く分解する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、原油に対して常圧蒸留、減圧蒸留等を施すことによって、原油を各留分に分留して、各留分をそれぞれの用途に応じて使用している。これら留分の中でも、沸点の高い重質分は、接触分解装置で接触分解されることで軽質化され、ガソリン等に配合されている。ここで、該接触分解で得られる留分の中でも接触分解軽油は、ライトサイクルオイル(LCO)とも呼ばれ、一旦接触分解を受けた油であるため、分解反応に対して非常に安定であり、更に軽質化することが難しい。
【0003】
また、上記接触分解装置の精製塔のボトム油であるデカンテッド・オイル(DO)は、接触分解における未分解油が主体の油である。そして、該デカンテッド・オイルを更に水素化精製し、接触分解装置の微小な触媒を除去して得た脱硫デカンテッド・オイル(DS−DO)は、上記接触分解軽油よりも更に重質であるため、更に軽質化することが求められる。しかしながら、該脱硫デカンテッド・オイルも、一旦接触分解を受けた油であるため、分解反応に対して非常に安定であり、更に軽質化することが難しい。
【0004】
また、原油の常圧蒸留、減圧蒸留等においては、多量の残渣油成分が生成する。そして、更に該残渣油成分を熱分解して油分を回収して使用しているが、尚重質熱分解油の収率が高く、また、重合物であるコークスが大量に発生する。ここで、重質熱分解油(HFO)とは、重質油留分に熱を加えて、ラジカル反応を主体にした反応により得られた油であり、例えば、ディレードコーキング法、ビスブレーキング法あるいはフルードコーキング法等により得られる留分をいう。該重質熱分解油も、一旦熱分解を受けた油であるため、分解反応に対して非常に安定であり、更に軽質化することが難しい。
【0005】
一方、例えば、潤滑油原料製造用の減圧蒸留装置において原油の常圧蒸留残渣油を減圧蒸留して得られる留分を、フルフラール等で溶剤抽出して得られエキストラクト(EXT)は、芳香族分が多く溶解性が高いため、重油調合剤、ゴムの配合油等に使用されているものの、昨今、該エキストラクトを軽質化して他の用途に使用することが求められことがある。しかしながら、該エキストラクトは、芳香族分が多いため、分解反応に対して非常に安定であり、更に軽質化することが難しい。このため、これら炭化水素油の軽質化には大量に水素を必要とする水素化分解が一般的である(非特許文献1)。
【0006】
また、オイルサンド等の重質油の改質方法として、超臨界水を用いた改質方法(特許文献1)や、重質炭素質源と水を含む改質方法(特許文献2)が知られている。
【特許文献1】特開平6−270763号公報
【特許文献2】特開2002−155286号公報
【非特許文献1】Hydrocracking of pyrolysis oil, Hung. J. Ind. Chem., vol.17, No. 1, page 31-40, 1989
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述のように重質熱分解油、接触分解軽油、脱硫デカンテッド・オイル及びエキストラクト等の炭化水素油は、分解反応に対して非常に安定であり、更に軽質化することが難しい。これに対して、反応温度を上昇させる等して分解反応の条件を厳しくすると、コークスが発生してしまう。
【0008】
そこで、本発明の目的は、軽質化の難しい重質熱分解油、接触分解軽油、脱硫デカンテッド・オイル及びエキストラクト等の炭化水素油を、コークスを発生させること無く分解する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、炭化水素油を水と特定のモル比で混合し、得られた混合物を特定の触媒の存在下、水の超臨界状態で分解反応させることにより、コークスを発生させること無く分解して軽質化できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
即ち、本発明の炭化水素油の分解方法は、4A族元素を酸化物として70重量%以上含み、かつ、アルミニウム酸化物、セリウム酸化物、リン酸化物及びイットリウム酸化物から選択される少なくとも1種の酸化物を含む触媒と、水との存在下で、重質熱分解油、接触分解軽油、脱硫デカンテッド・オイル及びエキストラクトから選択される少なくとも一種の炭化水素油を、水に対する該炭化水素油のモル比(原料炭化水素油/水)が0.01〜100、温度280〜580℃、圧力22.1〜50.0MPaの条件下で分解させることを特徴とする。
【0011】
本発明の炭化水素油の分解方法においては、前記炭化水素油と水との混合物を水の超臨界状態で30秒〜60分間分解反応させることが好ましい。また、本発明の炭化水素油の分解方法においては、前記触媒中の4A族元素がジルコニウムであることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の炭化水素油の分解方法によれば、超臨界水がケージエフェクト(Cage Effect)により熱分解反応で発生した熱分解フラグメントをかご(Cage)のように取り囲んで安定化させることにより、熱分解フラグメントの再重合を抑制するため、コークスの発生を防止しつつ、重質熱分解油、接触分解軽油、脱硫デカンテッド・オイル及びエキストラクトから選択される少なくとも一種の炭化水素油を分解して軽質化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(炭化水素油)
本発明で用いる原料の炭化水素油は、重質熱分解油、接触分解軽油、脱硫デカンテッド・オイル及びエキストラクトから選択される少なくとも一種である。
【0014】
ここで、重質熱分解油(HFO)とは、重質油留分に熱を加えて、ラジカル反応を主体にした反応により得られた油であり、例えば、常圧蒸留残渣、減圧蒸留残渣、タールサンド、オイルシェール、ビチューメン、シェールオイル、天然重油などを原料としたディレードコーキング法、ビスブレーキング法あるいはフルードコーキング法等により得られる留分をいう。なお、本発明で用いる重質熱分解油は、硫黄分が0〜0.3質量%であることが好ましく、0.01〜0.2質量%であることがより好ましく、0.04〜0.15質量%であることが最も好ましい。密度(15℃)は0.90〜1.20g/cmであることが好ましく、0.99〜1.10g/cmであることがより好ましく、更には1.0〜1.06g/cmであることが最も好ましい。50℃での動粘度が3.0〜10.5mm/sであることが好ましく、3.5〜10.2mm/sであることがより好ましく、更には3.9〜10.0mm/sであることが最も好ましい。
【0015】
また、接触分解軽油とは、原油の常圧残油を脱硫した留分又は常圧残油をさらに減圧蒸留及び脱硫して得られる重質軽油留分などの重質油を原料として、これらを接触分解装置で接触分解して得られる軽油留分であり、石油精製では、一般にライトサイクルオイル(LCO)と呼ばれる。なお、本発明で用いる接触分解軽油は、硫黄分が0〜1.5質量%であることが好ましく、0.1〜1.0質量%であることがより好ましく、0.33〜0.75質量%であることがもっとも好ましく、密度(15℃)が0.90〜1.20g/cmであることが好ましく、0.92〜1.10g/cmであることがより好ましく、更には0.95〜1.05g/cmであることがもっとも好ましく、50℃での動粘度が5.0〜16.5mm/sであることが好ましく、6.0〜14.0mm/sであることがより好ましく、更には7.8〜13.0mm/sであることが好ましく、また、5容量%留出温度が260〜280℃、10容量%留出温度が290〜310℃、90容量%留出温度が385〜405℃の範囲内にあることが好ましい。
【0016】
また、脱硫デカンテッド・オイル(DS−DO)とは、上記接触分解装置の精製塔ボトム油であって、接触分解における未分解油が主体の油であるデカンテッド・オイル(DO)を更に水素化精製し、接触分解装置の微小な触媒を除去して得たものである。なお、本発明で用いる脱硫デカンテッド・オイルは、硫黄分が0.24〜0.57質量%であることが好ましく、密度(15℃)が1.00〜1.10g/cmであることが好ましく、50℃での動粘度が64.0〜70.0mm/sであることが好ましく、また、5容量%留出温度が275〜305℃、10容量%留出温度が310〜325℃、90容量%留出温度が440〜480℃、95容量%留出温度が490〜510℃の範囲内にあることが好ましい。
【0017】
また、エキストラクト(EXT)とは、一般に溶剤抽出法により、溶剤中に溶解分離された油を言い、石油精製では、特に潤滑油の溶剤精製装置で、例えばフルフラールによって抽出分離される油をエキストラクトと称している。該エキストラクトは、上述のように、芳香族分が多く溶解性が高いため、主として重油調合剤、ゴムの配合油等に使用されている。なお、溶剤によって抽出されない油分をラフィネートといい、潤滑油基油等として使用されている。本発明で用いるエキストラクトは、密度(15℃)が0.95〜1.20g/cmであることが好ましく、0.99〜1.10g/cmであることがより好ましく、更には1.00〜1.06g/cmであることが最も好ましい。75℃での動粘度が15.0〜20.0mm/sであることが好ましく、16.0〜19.5mm/sであることがより好ましく、更には17.5〜18.8mm/sであることが最も好ましい。
【0018】
(触媒)
本発明に使用する触媒は、4A族元素を酸化物として70重量%以上含み、かつ、アルミニウム酸化物、セリウム酸化物、リン酸化物及びイットリウム酸化物から選択される少なくとも1種の酸化物を含む。かかる触媒の存在下、水の超臨界状態において、上記炭化水素油を分解した場合、酸化物の複合化作用によって、炭化水素油の軽質化を促進することができる。4A族元素としては、チタン、ジルコニウムが挙げられるが、これらの中でも、超臨界状態を含む高温高圧水蒸気中での金属酸化物の結晶構造維持の観点から、ジルコニウムが好ましい。なお、4A族元素の酸化物としての含有量が70重量%未満の場合、4A族元素の酸化物が他の酸化物を保持する担体としての効果が薄れるため好ましくない。ここで、4A族元素の酸化物としての含有量は70〜98重量%の範囲が好ましく、70〜95重量%の範囲が更に好ましい。
【0019】
本発明に使用する触媒がアルミニウム酸化物とジルコニウム酸化物を含む場合、アルミニウム酸化物の含有量は1〜20重量%の範囲が好ましく、1〜15重量%の範囲が更に好ましく、1〜10重量%の範囲が特に好ましい。また、この触媒の比表面積は、反応に実質的に寄与する活性点数の維持の観点から、10〜500m/gの範囲が好ましく、20〜400m/gの範囲が更に好ましく、50〜300m/gの範囲が特に好ましい。さらに、この触媒のジルコニウム酸化物の正方晶の結晶子径は、複合する金属酸化物の担体としての観点から、5〜30nmの範囲が好ましく、8〜25nmの範囲が更に好ましく、10〜20nmの範囲が特に好ましい。
【0020】
本発明に使用する触媒がセリウム酸化物とジルコニウム酸化物を含む場合、セリウム酸化物の含有量は1〜30重量%の範囲が好ましく、10〜30重量%の範囲が更に好ましく、15〜30重量%の範囲が特に好ましい。また、この触媒の比表面積は、反応に実質的に寄与する活性点数の維持の観点から、50〜500m/gの範囲が好ましく、70〜400m/gの範囲が更に好ましく、100〜300m/gの範囲が特に好ましい。さらに、この触媒のジルコニウム酸化物の正方晶の結晶子径は、複合する金属酸化物の担体としての観点から、3〜30nmの範囲が好ましく、4〜20nmの範囲が更に好ましく、5〜15nmの範囲が特に好ましい。
【0021】
本発明に使用する触媒がリン酸化物とジルコニウム酸化物を含む場合、リン酸化物の含有量は1.0〜30重量%の範囲が好ましく、5〜25重量%の範囲が更に好ましく、5〜20重量%の範囲が特に好ましい。また、この触媒の比表面積は、反応に実質的に寄与する活性点数の維持の観点から、50〜500m/gの範囲が好ましく、80〜400m/gの範囲が更に好ましく、100〜300m/gの範囲が特に好ましい。さらに、この触媒のジルコニウム酸化物の正方晶の結晶子径は、複合する酸化物の担体としての観点から、5〜30nmの範囲が好ましく、6〜20nmの範囲が更に好ましく、8〜15nmの範囲が特に好ましい。
【0022】
本発明に使用する触媒がイットリウム酸化物とジルコニウム酸化物を含む場合、イットリウム酸化物の含有量は1〜30重量%の範囲が好ましく、3〜20重量%の範囲が更に好ましく、5〜15重量%の範囲が特に好ましい。また、この触媒の比表面積は、反応に実質的に寄与する活性点数の維持の観点から、10〜500m/gの範囲が好ましく、20〜400m/gの範囲が更に好ましく、50〜300m/gの範囲が特に好ましい。さらに、この触媒のジルコニウム酸化物の正方晶の結晶子径は、複合する金属酸化物の担体としての観点から、5〜30nmの範囲が好ましく、6〜20nmの範囲が更に好ましく、8〜15nmの範囲が特に好ましい。
【0023】
(反応条件)
本発明の炭化水素油の分解方法は、前記炭化水素油を前記触媒存在下で、水に対する該炭化水素油のモル比(原料炭化水素油/水)が0.01〜100、温度280〜580℃、圧力22.1〜50.0MPaの条件下で分解させる。
【0024】
本発明の炭化水素油の分解方法では、まず、上記炭化水素油と水とを均一に混合して混合物を得ることが好ましい。ここで、水に対する炭化水素油のモル比は、0.01〜100の範囲であり、0.01〜50の範囲が好ましく、0.01〜10の範囲が更に好ましく、0.02〜0.5の範囲が特に好ましい。炭化水素油に対して水が多過ぎると、炭化水素油の処理量が減って、生産性が低下し、一方、炭化水素油に対して水が少な過ぎると、超臨界流体のかご効果が低減し、コークスを大量に発生するため好ましくない。ここで、水に対する炭化水素油のモル比を算出するに当たり、炭化水素油の平均分子量は、FD−MSにより測定された平均分子量(Mn)を使用するものと定義する。
【0025】
本発明の炭化水素油の分解方法では、次に、上記炭化水素油と水との混合物を反応相に供給し、超臨界状態の水中で分解反応させる。該分解反応において、反応温度は、280〜580℃の範囲であり、330〜550℃の範囲が好ましく、380〜500℃の範囲が更に好ましく、430〜480℃の範囲が特に好ましい。また、反応圧力は、22.1〜50.0MPaの範囲であり、22.1〜45.0MPaの範囲が好ましく、22.1〜30.0MPaの範囲が更に好ましい。反応温度が高過ぎると、超臨界状態の水中での分解反応においても固形重合物(コークス)が発生し、一方、反応温度が低過ぎると、原料の炭化水素油を十分に軽質化することができない。また、反応圧力が高過ぎると、高圧の装置を設計することが必要となり、経済的でなく、一方、反応圧力が22.1MPa未満では、水が超臨界状態にならない。
【0026】
本発明の炭化水素油の分解方法においては、上記炭化水素油と水との混合物を水の超臨界状態で30秒〜60分間分解反応させることが好ましい。ここで、反応時間とは、所定温度に達してからの保持時間をいう。反応時間が30秒未満では、原料の炭化水素油を十分に軽質化することができず、一方、反応時間が60分を超えると、過分解やコーキングが発現し、目的とする炭化水素油の収率が大きく低下するため好ましくない。
【0027】
なお、上記炭化水素油/水のモル比、温度条件、圧力条件及び反応時間は、回収目的である生成物中に含まれる高付加価値成分の割合により適宜選択される。また、反応は、バッチ式で行っても、流通式で行ってもよい。
【0028】
上記水の超臨界状態では、熱分解反応及び水素添加反応が起こる。即ち、水の超臨界状態では、原料炭化水素油中の水素結合などの非共有性結合が解離して膨張し、これにより、分解反応がより進行し易くなる。また、熱分解反応では、原料の炭化水素油が単純に熱分解して低分子化する。一方、水素添加反応では、原料炭化水素油の熱分解反応中に生成した熱分解フラグメント(ラジカル)にHが付加し、これにより熱分解種が安定化される。これは、超臨界状態の水が有するケージエフェクトにより、熱分解フラグメントが超臨界水に取り囲まれて安定化されるためである。これによって、熱分解フラグメントの再重合が抑制されるため、コークスの発生を防止することができる。このように超臨界状態の水中では、熱分解反応及び水素添加反応が複合的に行われ、コークスを発生させることなく、分解反応が進行する。
【0029】
なお、既存の技術(例えば、気相熱分解等)では、分解温度を上昇させて高温状態で転換した場合には、熱分解フラグメントが再結合(再重合)するためコークス生成量が増加するが、上記超臨界状態の水中での分解反応はケージエフェクトにより熱分解フラグメントが安定化されるため高温状態で転換してもコークス生成量が増加することはない。但し、超臨界状態の水中での分解反応においても、580℃を超える反応温度では固形重合物(コークス)が生成するため、本発明においては、580℃以下で分解反応を行う。
【0030】
上記のようにして得られた生成物は、一般的な常圧蒸留、減圧蒸留によって、ナフサ、灯油、軽油、A重油等の油分、ガス、水、残渣に分離することが出来る。また、油分及びガスは、有効成分として所望の用途に使用され、水は超臨界水として再度使用することができる。
【実施例】
【0031】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0032】
(実施例1)
炭化水素油として、石油減圧蒸留残渣を熱分解して得られた重質熱分解油(硫黄分:2.5質量%、密度(15℃):0.9460g/cm、50℃での動粘度:18.3mm/s、FD−MS測定による平均分子量:600)を2.78g用意した。この試料と水とを試料/水のモル比が0.03の割合で混合して混合物を調製した。次に、該混合物を、第一稀元素化学工業製のAl含有酸化ジルコニウムZ−1278(触媒A)と共に反応器に供給して、温度450℃、圧力27.8MPaで10分間振とうして反応させた。なお、試験方法はバッチ式で行った。次いで、生成物の分子量、FD−MS分析における炭素数分布測定で、平均分子量を測定した。触媒の物性を表1に、反応結果を表2に示す。
【0033】
(実施例2〜4及び比較例1)
触媒Aを、第一稀元素化学工業製のセリウム含有酸化ジルコニウムZ−1174(触媒B)、リン含有酸化ジルコニウムZ−1071(触媒C)、イットリウム含有酸化ジルコニウムZ−1272(触媒D)、触媒なし、とした以外は実施例1と同様にして実施した。結果を表2に示す。
【0034】
【表1】

【0035】
【表2】

【0036】
表2から、ジルコニウム酸化物と、アルミニウム酸化物、セリウム酸化物、リン酸化物又はイットリウム酸化物とを含む触媒の存在下で分解反応を行うことで、コークスを生成させることなく、重質熱分解油が軽質化されていることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
4A族元素を酸化物として70重量%以上含み、かつ、アルミニウム酸化物、セリウム酸化物、リン酸化物及びイットリウム酸化物から選択される少なくとも1種の酸化物を含む触媒と、水との存在下で、重質熱分解油、接触分解軽油、脱硫デカンテッド・オイル及びエキストラクトから選択される少なくとも一種の炭化水素油を、水に対する該炭化水素油のモル比(原料炭化水素油/水)が0.01〜100、温度280〜580℃、圧力22.1〜50.0MPaの条件下で分解させることを特徴とする炭化水素油の分解方法。
【請求項2】
前記炭化水素油と水との混合物を水の超臨界状態で30秒〜60分間分解反応させることを特徴とする請求項1に記載の炭化水素油の分解方法。
【請求項3】
前記4A族元素がジルコニウムであることを特徴とする請求項1に記載の炭化水素油の分解方法。

【公開番号】特開2009−242467(P2009−242467A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−87983(P2008−87983)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(304003860)株式会社ジャパンエナジー (344)
【出願人】(590000455)財団法人石油産業活性化センター (249)
【Fターム(参考)】