説明

炭化水素油の接触分解用触媒組成物

【課題】耐ニッケル性が高い炭化水素油の接触分解用触媒組成物を提供する。
【解決手段】 結晶性アルミノシリケートゼオライトと、アンモニウムドーソナイト又はアンモニウムドーソナイト由来のアルミナと、無機酸化物マトリックス前駆体とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐ニッケル性を有する炭化水素油の接触分解用触媒組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
流動接触分解(FCC)に使用される脱硫常圧残油(DSAR)、脱硫減圧残油(DSVR)等の重質の炭化水素油(以下、「原料油」ともいう)中には、ニッケル(Ni)及びバナジウム(V)が多量に含まれている。なお、ニッケルは接触分解用触媒(FCC触媒)に沈着して、原料油の脱水素反応を起こす。これによって、水素及びコークの収率が増加すると共に、液収率(特に、ガソリン収率)が低下する。
ここで、アルミナは、ニッケルと反応して複合酸化物であるニッケルアルミネート(NiAl)を形成して脱水素活性を抑制し、水素及びコーク収率の増加を抑えると共に、液収率を増加させることが知られている。このようにして、アルミナは、ニッケルによる収率の低下を抑える効果(耐ニッケル性)をFCC触媒に付与することができる。そこで、アルミナとして擬ベーマイト型のアルミナ水和物(以下、単に「擬ベーマイト」ともいう)を含有する接触分解用触媒組成物が知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平9−164338号公報
【特許文献2】特開平11−50063号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、通常、擬ベーマイトの結晶は、電子顕微鏡写真から任意に選んだ50〜1000本程度の結晶の幅方向の長さの測定値の平均が20nm未満であり、複数の擬ベーマイトの結晶により形成される隙間(細孔)の孔径、及び容量等が小さく、形成された細孔に保持されるニッケルの量が少ない、すなわち、耐ニッケル性が比較的低いという問題があった。
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、多量のニッケルを含む重質の炭化水素油を処理することができる接触分解用触媒組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的に沿う第1の発明に係る炭化水素油の接触分解用触媒組成物は、結晶性アルミノシリケートゼオライトと、アンモニウムドーソナイトと、無機酸化物マトリックス前駆体とを含む。
ここで、アンモニウムドーソナイトは、アンモニウムアルミニウムカーボネートハイドロオキサイドともいわれ、[NHAl(OH)CO]で示される物質である。アンモニウムドーソナイトは、繊維状の結晶である擬ベーマイトよりも、結晶の幅方向の長さ(いわゆる結晶の太さ。以下、「結晶サイズ」ともいう。以下同様である。)が大きい棒状の結晶であり、複数のアンモニウムドーソナイトの結晶により形成される細孔は、擬ベーマイトにより形成される細孔よりも細孔径、容量等が大きくなり、より多くのニッケルをその細孔内に保持することができる。
また、結晶性アルミノシリケートゼオライトとしては、通常、炭化水素の接触分解触媒用組成物に使用されるゼオライトを用いることができ、例えば、X型ゼオライト、Y型ゼオライト、モルデナイト、ZSM型ゼオライト等の合成ゼオライトや、天然ゼオライトが使用できる。無機酸化物マトリックス前駆体としては、アンモニウムドーソナイトの他に、バインダー成分、カオリン、メタル補足剤等がある。ここで、バインダー成分としては、アルミナゾル、シリカゾル、シリカ−アルミナ等が使用できる。また、メタル捕捉剤としては、酸化ランタン、水酸化ランタン、炭酸ランタン、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム等が使用でき、これらは、特に原料油中に含まれるバナジウムを捕捉することを目的としている。
【0006】
第1の発明に係る炭化水素油の接触分解用触媒組成物において、前記アンモニウムドーソナイトは、結晶の幅方向の長さ(結晶サイズ)の平均値が20〜200nm、好ましくは40〜150nm、より好ましくは50〜100nmである。
ここで、アンモニウムドーソナイトの結晶サイズの平均値が、20nm未満の場合には、形成される細孔の細孔径、容量が小さくなり、細孔へのニッケルの保持量が低下し、200nmを超えると、触媒の強度が低下する。なお、本発明において、アンモニウムドーソナイトの結晶サイズの平均値は、電子顕微鏡写真から任意に選んだ50〜1000本程度のアンモニウムドーソナイトの結晶の幅方向の長さの測定値の平均としている。また、前記選択した全てのアンモニウムドーソナイトの結晶において、幅方向の長さが20〜200nmである結晶が、70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上含有されているのがよい。更に、本発明のアンモニウムドーソナイトの結晶は、幅方向の長さに対する長さ方向の長さ(アスペクト比)が、2〜20倍程度、好ましくは2〜15倍、より好ましくは2〜10倍となっているのがよい。
【0007】
第1の発明に係る炭化水素油の接触分解用触媒組成物において、前記アンモニウムドーソナイトがアルミナ換算で1質量%以上、40質量%以下、好ましくは2〜20質量%、より好ましくは4〜10質量%含有されているのがよい。
接触分解用触媒組成物に含有されるアンモニウムドーソナイトが、アルミナ換算で1質量%未満の場合には、触媒に十分な耐ニッケル性を付与することができず、40質量%を超える場合には、触媒の強度が低下する。
【0008】
前記目的に沿う第2の発明に係る炭化水素油の接触分解用触媒組成物は、結晶性アルミノシリケートゼオライトと、アンモニウムドーソナイト由来のアルミナを含有する無機酸化物マトリックス前駆体とを含む。
ここで、アンモニウムドーソナイト由来のアルミナは、前記したアンモニウムドーソナイトを例えば、焼成、水熱処理等の加熱処理を行って、アンモニア、二酸化炭素、水を脱離させ、アルミナ[Al]にした棒状の結晶であり、本発明においては、アンモニア、二酸化炭素、水が完全に除去されていない中間体も含む。
【0009】
第2の発明に係る炭化水素油の接触分解用触媒組成物において、前記アルミナは、結晶の幅方向の長さ(結晶サイズ)の平均値が20〜200nm、好ましくは40〜150nm、より好ましくは50〜100nmである。
ここで、アルミナの結晶サイズの平均値が、20nm未満の場合には、形成される細孔の細孔径、容量が小さくなって、細孔に保持されるニッケルの量が低下し、200nmを超えると、触媒の強度が低下する。なお、本発明において、アルミナの結晶サイズの平均値とは、電子顕微鏡写真から任意に選んだ50〜1000本程度の結晶の幅方向の長さの測定値の平均とする。また、前記選択した全てのアルミナの結晶において、幅方向の長さが20〜200nmである結晶が、70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上含有されているのがよい。更に、本発明のアルミナの結晶は、幅方向の長さに対する長さ方向の長さが、2〜20倍程度、好ましくは2〜15倍、より好ましくは2〜10倍となっているのがよい。
【0010】
第2の発明に係る炭化水素油の接触分解用触媒組成物において、前記アルミナが1質量%以上、40質量%以下、好ましくは2〜20質量%、より好ましくは4〜10質量%含有されているのがよい。
接触分解用触媒組成物に含有されるアルミナが、1質量%未満の場合には、触媒は十分な耐ニッケル性を有さず、40質量%を超える場合には、触媒の強度が低下する。
【0011】
第1及び第2の発明に係る炭化水素油の接触分解用触媒組成物において、(a)細孔容積が、0.20ml/g以上、0.50ml/g以下、好ましくは、0.23ml/g以上、0.40ml/g以下、より好ましくは、0.25ml/g以上、0.35ml/g以下、(b)細孔直径が6〜1000nm(60〜10000Å)である細孔群の細孔容積Aに対して、細孔直径が20〜100nm(200〜1000Å)の細孔群の細孔容積Bの割合(B/A×100)が45〜70%、好ましくは、48〜67%、より好ましくは、50〜65%、及び、(c)比表面積が、150m/g以上、450m/g以下、好ましくは、170m/g以上、400m/g以下、より好ましくは、200m/g以上、350m/g以下であるのがよい。
ここで、細孔容積が、0.20ml/g未満の場合には、触媒は十分な耐ニッケル性を有さず、0.50ml/gを超えると、触媒の強度が弱くなる。なお、細孔容積は、水銀圧入法により測定した値である。また、細孔容積Aに対する細孔容積Bの割合(B/A×100)が、45%未満では、触媒は十分な耐ニッケル性を有さず、70%を超えると、触媒の強度が低下する。更に、比表面積が、150m/g未満では、十分な分解活性が得られず、450m/gを超えると、分解能が高すぎるために原料油が過分解し、製品収率が悪化する。なお、比表面積は、BET法により測定した値である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の炭化水素油の接触分解用触媒組成物においては、アンモニウムドーソナイト又はアンモニウムドーソナイト由来のアルミナを含むので、細孔径の大きい細孔が形成され、多量のニッケルが触媒に沈着しても、高い耐ニッケル性を維持することができる。
特に、本発明の炭化水素油の接触分解用触媒組成物においては、アンモニウムドーソナイト又はアンモニウムドーソナイト由来のアルミナの結晶サイズが20〜200nmであるので、触媒の強度は低下せず、原料油中のニッケルを保持するのに十分な細孔を形成することができる。
本発明の炭化水素油の接触分解用触媒組成物においては、(1)前記アンモニウムドーソナイトを使用する場合、該アンモニウムドーソナイトがアルミナ換算で1質量%以上、40質量%以下含有され、また、(2)前記アンモニウムドーソナイト由来のアルミナを使用する場合、該アルミナが1質量%以上、40質量%以下含有されているので、触媒の強度を維持して、多量のニッケルを保持できる。
本発明の炭化水素油の接触分解用触媒組成物においては、(a)細孔容積が、0.20ml/g以上、0.50ml/g以下、(b)細孔直径が6〜1000nmである細孔群の細孔容積Aに対して、細孔直径が20〜100nmの細孔群の細孔容積Bの割合が45〜70%、(c)比表面積が、150m/g以上、450m/g以下であるので、多量のニッケルが沈着しても高い耐ニッケル性を有し、ガソリン等の液収率を増大することができ、さらに、十分な強度も有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の第1の実施の形態に係る炭化水素油の接触分解用触媒組成物は、結晶性アルミノシリケートゼオライトと、結晶サイズが20〜200nmであるアンモニウムドーソナイトを含有する無機酸化物マトリックス前駆体とを含むスラリーを噴霧乾燥して得られる。このスラリーには、結晶性アルミノシリケートが10〜50質量%、アンモニウムドーソナイトをアルミナ換算で1〜40質量%含有する無機酸化物マトリックス前駆体が90〜50質量%含まれている。得られる接触分解用触媒組成物は、細孔容積が0.20ml/g以上、0.50ml/g以下、細孔直径が6〜1000nmである細孔群の細孔容積に対して、細孔直径が20〜100nmの細孔群の細孔容積の割合が45〜70%、比表面積が150m/g以上、450m/g以下である。
本発明の第2の実施の形態に係る炭化水素油の接触分解用触媒組成物は、アンモニウムドーソナイトの替わりに、結晶サイズが20〜200nmであるアンモニウムドーソナイトを焼成、水熱処理等の加熱処理を行って得られたアルミナを使用した点が、前記した第1の実施の形態と異なっている。
【実施例】
【0014】
(実施例1)
アルミナ換算で22質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液2.27kgと、12.5%炭酸水素アンモニウム水溶液20kgとを、70℃の温水17.73kgに20分かけて添加した。そのまま50℃で10分間加熱攪拌した後、95℃で16時間静置熟成してアンモニウムドーソナイトスラリーを作った。このアンモニウムドーソナイトスラリーを減圧濾過機を用いて脱水した後、60℃の温水25Lでナトリウム等の不純分を洗浄して、アンモニウムドーソナイトケーキを得た。得られたケーキの濃度はアルミナ換算で10.6質量%であった。図1に得られたアンモニウムドーソナイトの電子顕微鏡写真を示す。ここで、電子顕微鏡写真から任意に100本のアンモニウムドーソナイトの結晶を選択し、それぞれの幅方向の長さを測定し、アンモニウムドーソナイトの結晶サイズの平均値を算出した(以下、同様である)。その結果、アンモニウムドーソナイトの結晶サイズの平均値は、66nmであった。
【0015】
アンモニウムドーソナイトケーキ1887g(Alとして200g)と、超安定化Y型ゼオライト(USY)667g(Al+SiOとして600g。)、アルミナゾルバインダー1304g(Alとして300g)、カオリン1047g(乾燥基準で900g)、及び純水95gを混合して、触媒基準で40質量%濃度の混合物スラリーを作った後、この混合物スラリーを噴霧乾燥して微小球状粒子を得た。得られた微小球状粒子を洗浄してナトリウムや塩酸根等の不純物を除いた後、希土類金属(RE)塩化物の水溶液を用いてREとして2.0%となるようにイオン交換した(触媒A)。触媒Aの性状を表1に示す。
ここで、焼成減量は触媒Aを1000℃で1時間加熱した際の質量の減少率を示し、特に結晶水及び炭酸塩等の含有量を示す。また、各元素の含有量は、蛍光X線分析装置で測定した。嵩密度(ABD)はUOP法254−65により測定した。細孔容積は、水銀圧入法で測定した。表面積(SA)は、BET法で測定した。摩耗強度(CAI)は、UOP法426−65で測定した(以下同様)。
【0016】
【表1】

【0017】
(実施例2)
実施例1で得られたアンモニウムドーソナイトケーキを110℃で16時間乾燥し、乳鉢で粉砕した。このアンモニウムドーソナイト粉を600℃で2時間焼成し、粉状のアンモニウムドーソナイト由来のアルミナを得た。図2に得られたアルミナの電子顕微鏡写真を示す。また、得られたアルミナの結晶サイズの平均値を電子顕微鏡写真から算出したところ、66nmであった。
【0018】
得られたアルミナ200gと、超安定化Y型ゼオライト667g(Al+SiOとして600g)、アルミナゾルバインダー1304g(Alとして300g)、カオリン1047g(乾燥基準で900g)、及び純水1782gを混合して、触媒基準で40質量%濃度の混合物スラリーを作成した後、この混合物スラリーを噴霧乾燥して微小球状粒子を得た。得られた微小球状粒子を洗浄してナトリウムや塩酸根等の不純物を除いた後、希土類金属塩化物の水溶液を用いてREとして2.0%となるようにイオン交換した(触媒B)。触媒Bの性状を表1に示す。
【0019】
(比較例1)
比較例1は、アンモニウムドーソナイト又はアンモニウムドーソナイト由来のアルミナの代わりに擬ベーマイトを使用したことが、実施例1及び2と異なっている。以下、詳しく説明する。
Al濃度として5質量%のアルミン酸ソーダ溶液と、Al濃度として2.5質量%の硫酸アルミニウム溶液とをそれぞれ調製し、各々60℃に保持した。30Lの攪拌機付きのタンクAに、まず毎分1.7kgの流量でアルミン酸ソーダ溶液を供給し、アルミン酸ソーダ溶液の供給開始から5分後に、更に、毎分5kgの流量で硫酸アルミニウム溶液を攪拌しながら供給した。次に、タンクA中のアルミナ水和物の粗スラリーのpHが7.2となったら、粗スラリーのpHを7.2±0.2に保ちながら、アルミン酸ソーダ溶液及び硫酸アルミニウム溶液をそれぞれ毎分1.7kgの流量で90分間、攪拌しながら供給し続け、タンクAから溢れた粗スラリーを下部に設けた400Lの攪拌機付きのタンクBに受け入れた。
更に、タンクB内の粗スラリーを60℃に保ちながら1時間攪拌してアルミナ水和物スラリーを調製した。該アルミナ水和物スラリー56kgをフィルターで脱水捕集し、0.3質量%のアンモニア水70Lで洗浄した。この洗浄したアルミナ水和物のケーキを乾燥基準で1250gサンプリングし、純水を加えて12.5質量%Al濃度のアルミナ水和物の洗浄スラリーとした。この洗浄スラリーを攪拌しながら48%濃度の水酸化ナトリウム溶液を加えてpH11.0とした後、密閉式の熟成タンクに移し、95℃で24時間攪拌しながら、熟成して擬ベーマイトスラリーを調製した。図3に得られたアルミナの電子顕微鏡写真を示す。また、得られた擬ベーマイトの結晶サイズの平均値を電子顕微鏡写真から算出したところ、7nmであった。
【0020】
得られた擬ベーマイトスラリー1739g(Alとして200g)と、超安定化Y型ゼオライト667g(Al+SiOとして600g)、アルミナゾルバインダー1304g(Alとして300g)、カオリン1047g(乾燥基準900g)、及び純水243gを混合して、触媒基準で40質量%濃度の混合物スラリーを作った後、この混合物スラリーを噴霧乾燥して微小球状粒子を得た。得られた微小球状粒子を洗浄してナトリウムや塩酸根等の不純物を除いた後、希土類金属塩化物の水溶液を用いてREとして2.0%となるようにイオン交換した(触媒C)。触媒Cの性状を表1に示す。
【0021】
(比較例2)
比較例2は、アンモニウムドーソナイト又はアンモニウムドーソナイト由来のアルミナを使用しないことが、実施例1及び2と異なっている。Y型アルミノシリケートゼオライト667g(Al+SiOとして600g)、アルミナゾルバインダー1304g(Alとして300g)、カオリン1279g(乾燥基準で1100g)、及び純水1750gを混合して、触媒基準で40質量%濃度の混合物スラリーを作成した後、この混合物スラリーを噴霧乾燥して微小球状粒子を得た。得られた微小球状粒子を洗浄してナトリウムや塩酸根等の不純物を除いた後、希土類金属塩化物の水溶液を用いてREとして2.0%となるようイオン交換した(触媒D)。触媒Dの性状を表1に示す。
【0022】
(試験例1)
触媒A〜Dの性能評価を以下のように行った。触媒A〜Dをそれぞれ600℃で2時間焼成した。触媒A〜Dについて、更に、ナフテン酸ニッケルを触媒上にNiとして1000ppm、2000ppm、3000ppmを担持したものをそれぞれ作製し、それらを750℃でスチーム分圧を100%として13時間処理した。擬似平衡化した各触媒について、小型活性評価装置(ZAYTEL社製ACE−MAT)を使用して、表2に示す反応条件で触媒活性を測定した。表3に触媒A〜Dの活性の評価結果を示す。
【0023】
【表2】

【0024】
【表3】

【0025】
表3に示すように、触媒A〜Dは、ニッケルの担持量の増加と共に、水素選択性(H/K)及びコーク選択性(Coke/K)、すなわち、水素及びコークの収率が増加している。しかしながら、本発明のアンモニウムドーソナイトを使用した触媒A及びアンモニウムドーソナイト由来のアルミナを使用した触媒Bは、擬ベーマイトを使用した触媒C及びアルミナを使用していない触媒Dと比較して、水素選択性及びコーク選択性の上がり幅が小さく、水素及びコークの収率が低くなった。また、触媒A及び触媒Bは、触媒C及び触媒Dと比較して、ガソリン収率が高くなった。
このように、アンモニウムドーソナイトを使用した触媒A及びアンモニウムドーソナイト由来のアルミナを使用した触媒Bは、耐ニッケル性が高く、これらの触媒を使用することで、多量のニッケルが沈着、すなわち、多量のニッケルが含有された原料油を処理しても、水素収率及びコーク収率の増加を抑えることができると共に、ガソリン収率の低下を抑えることができる。
【0026】
本発明は、前記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲での変更は可能であり、例えば、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組み合わせて本発明の炭化水素油の接触分解用触媒組成物及びその製造方法を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】アンモニウムドーソナイトの結晶の電子顕微鏡写真である。
【図2】アンモニウムドーソナイト由来のアルミナの結晶の電子顕微鏡写真である。
【図3】擬ベーマイトの結晶の電子顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性アルミノシリケートゼオライトと、アンモニウムドーソナイトを含有する無機酸化物マトリックス前駆体とを含むことを特徴とする炭化水素油の接触分解用触媒組成物。
【請求項2】
請求項1記載の炭化水素油の接触分解用触媒組成物において、前記アンモニウムドーソナイトは、結晶の幅方向の長さの平均値が20〜200nmであることを特徴とする炭化水素油の接触分解用触媒組成物。
【請求項3】
請求項1及び2のいずれか1項に記載の炭化水素油の接触分解用触媒組成物において、前記アンモニウムドーソナイトは、アルミナ換算で1質量%以上、40質量%以下含有されていることを特徴とする炭化水素油の接触分解用触媒組成物。
【請求項4】
結晶性アルミノシリケートゼオライトと、アンモニウムドーソナイト由来のアルミナを含有する無機酸化物マトリックス前駆体とを含むことを特徴とする炭化水素油の接触分解用触媒組成物。
【請求項5】
請求項4記載の炭化水素油の接触分解用触媒組成物において、前記アルミナは、結晶の幅方向の長さの平均値が20〜200nmであることを特徴とする炭化水素油の接触分解用触媒組成物。
【請求項6】
請求項4及び5のいずれか1項に記載の炭化水素油の接触分解用触媒組成物において、前記アルミナは、1質量%以上、40質量%以下含有されていることを特徴とする炭化水素油の接触分解用触媒組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の炭化水素油の接触分解用触媒組成物において、(a)細孔容積が、0.20ml/g以上、0.50ml/g以下、(b)細孔直径が6〜1000nmである細孔群の細孔容積に対して、細孔直径が20〜100nmの細孔群の細孔容積の割合が45〜70%、及び、(c)比表面積が、150m/g以上、450m/g以下であることを特徴とする炭化水素油の接触分解用触媒組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−160496(P2009−160496A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−340495(P2007−340495)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000190024)日揮触媒化成株式会社 (458)
【Fターム(参考)】