説明

炭化水素油の製造方法

【課題】熱分解油を処理するに当たり、水素化処理工程において炭素析出を防止しつつ、経済的に接触改質用の原料油を提供する。
【解決手段】熱分解油を含有する第1の炭化水素油を水素化処理して第1の水素化処理油を得る第1工程と、得られた第1の水素化処理油を分留して特定の蒸留性状を有する第2の炭化水素油を得る第2工程と、得られた第2の炭化水素油をさらに水素化処理して第2の水素化処理油を得る第3工程と、得られた第2の水素化処理油を分留して特定の蒸留性状を有する接触改質用の原料油である第3の炭化水素油を得る第4工程を含む炭化水素油の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱分解油を含有する炭化水素を効率的に水素化処理して接触改質するのに好適な炭化水素油を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ベンゼン、トルエン、及びキシレン(BTX)は、ポリマー及び他の石油化学合成のために非常に重要な石油化学原料である。BTXに対する世界的な需要は常に成長している。BTXは典型的にはナフサ留分の接触改質によって製造できる。
重質な石油留分を熱分解することによって製造される熱分解油に含まれるナフサ留分は、他のナフサ留分に比べ経済的に製造できるが、熱分解油に含まれるナフサ留分には多量の不飽和分、硫黄分及び窒素分が含まれるため、接触改質原料としては好適に使用することができなかった。
【0003】
一般的に、接触改質原料中に不飽和分が含まれていると接触改質触媒上にコークが堆積しやすく、そのため改質触媒の活性が低下して触媒再生の再生温度や再生頻度などを上げる必要が生じ、また、硫黄分や窒素分が含まれていると接触改質触媒の貴金属や酸点を被毒して活性低下を招くことが知られている。そのため、熱分解油を接触改質原料として用いる場合には、熱分解油中に含まれる不飽和分や硫黄分及び窒素分を接触改質原料として受容できるレベルまで水素化脱硫などの方法により除去する必要がある。
【0004】
熱分解油の一般的な処理方法としては、多段階の水素化脱硫が知られている(特許文献1〜3)。しかし、不飽和分を水素化するとオクタン価が低下する。不飽和分の損失を防ぎオクタン価の損失を少なくするために、低圧で反応を行うと硫黄分や窒素分の低減が十分でなく、接触改質原料として受容できるレベルではなかった。
水素化脱硫条件のシビアリティーを上げると、熱分解油中に含まれる不飽和分の重合反応などにより、炭素析出を起こしやすく、反応器や熱交換器の閉塞(ファウリング)、急激な触媒の劣化を起こすという課題があった。
【特許文献1】特表2003−528942号公報
【特許文献2】特表2005−516078号公報
【特許文献3】特表2006−508196号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するもので、熱分解油を処理するに当たり、水素化処理工程において炭素析出を防止しつつ、経済的に接触改質原料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは熱分解油の処理について鋭意研究した結果、熱分解油を他の重質原料と特定比率で混合して、特定の水素化条件化で2段の水素化処理を行うことにより、ファウリング等を起こさずに好適な接触改質原料を得ることができることを見出し本発明に想到した。
【0007】
すなわち、本発明の炭化水素油の製造方法は、熱分解油を1〜25容量%含有する第1の炭化水素油を水素化処理して第1の水素化処理油を得る第1工程と、第1工程で得られた第1の水素化処理油から5%留出温度が30℃以上、95%留出温度が180℃以下である第2の炭化水素油を得る第2工程と、第2工程で得られた第2の炭化水素油をさらに水素化処理して第2の水素化処理油を得る第3工程と、第3工程で得られた第2の水素化処理油から5%留出温度が80℃以上、95%留出温度が180℃以下である第3の炭化水素油を得る第4工程を含む炭化水素油の製造方法である。
【0008】
前記第1工程の水素化処理において反応圧力が5.0MPaG以上であることが好ましく、また、前記第3工程の水素化処理において水素オイル比が10〜50NL/Lであることが好ましい。
さらに、第1工程の水素化処理における反応温度が第3工程の水素化処理における反応温度より40℃以上高い温度であることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように、本発明は、熱分解油を他の重質留分と特定比率で混合し、特定の水素化条件下で2段の水素化処理を行うことにより、ファウリング等を起こさずに好適な接触改質原料を得ることができる。また、その結果、直留ナフサに比べて経済的に接触改質原料を提供できる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の炭化水素油の製造方法は、熱分解油を1〜25容量%含有する第1の炭化水素油を水素化処理して第1の水素化処理油を得る第1工程と、第1工程で得られた第1の水素化生成油から5%留出温度が30℃以上、95%留出温度が180℃以下である第2の炭化水素油を得る第2工程と、第2工程で得られた第2の炭化水素油をさらに水素化処理して第2の水素化処理油を得る第3工程と、第3工程で得られた第2の水素化処理油から5%留出温度が80℃以上、95%留出温度が180℃以下である第3の炭化水素油を得る第4工程を含む炭化水素油の製造方法である。
【0011】
[熱分解油]
本発明において用いる熱分解油を得るプロセスは、熱分解装置、原料油、運転条件を特に限定するものではなく、公知の任意の製造工程を採用できる。熱分解装置は、触媒を用いることなく、常圧残渣油や減圧残渣油、接触分解残渣油などから得られる重質炭化水素を高温下で分解し、軽質炭化水素を得る装置である。例えば、石油学会編「石油精製プロセス」講談社サイエンティフィック、1998年)に記載のあるビスブレーキングプロセス、フレキシコーキングプロセス、ディレードコーキングプロセス、ユリカプロセス、HSCプロセスなどがよく知られている。
【0012】
熱分解油としては、以下の性状を有するものを好適に使用することができる。5%留出温度が40〜90℃、好ましくは50〜80℃、95%留出温度が120〜190℃、好ましくは130〜180℃であり、臭素価は15〜100gBr/100g、好ましくは20〜90gBr/100g、より好ましくは25〜80gBr/100gであり、硫黄分は、50〜15000質量ppm、好ましくは100〜13000質量ppm、より好ましくは300〜10000質量ppmであり、窒素分は、1〜100質量ppm、好ましくは3〜90質量ppm、より好ましくは5〜70質量ppmであり、密度(15℃)は、0.680〜0.770g/cm、好ましくは0.690〜0.760g/cm、より好ましくは0.700〜0.750g/cmである。
【0013】
[第1工程の原料油(第1の炭化水素油)]
本発明において熱分解油は、単独で処理を行うものではなく、重質留分と混合して第1工程で水素化処理する。熱分解油と混合する重質留分としては、例えば直留軽油、減圧軽油、熱分解軽油等が挙げられる。
重質留分としては、以下の性状を有するものを好適に使用することができる。5%留出温度が200〜350℃、好ましくは240〜320℃、95%留出温度が500〜600℃、好ましくは530〜560℃であり、臭素価は1〜20gBr/100g、好ましくは1〜12gBr/100gであり、硫黄分は、1.0〜5.0質量%、好ましくは1.5〜3.0質量%であり、窒素分は400〜2000質量ppm、好ましくは550〜1500質量ppmであり、密度(15℃)は0.850〜0.960g/cm、好ましくは0.860〜0.950g/cmである。
【0014】
前記熱分解油は重質留分と混合して第1工程の水素化処理に供するが、原料油中の熱分解油の含有量は1〜25容量%、好ましくは3〜20容量%、より好ましくは5〜15容量%である。熱分解油が25容量%を超えると、熱分解油中に含まれる不飽和分の重合反応などにより、炭素析出が起こりやすく、反応器や熱交換器の閉塞(ファウリング)、急激な触媒の劣化が起こるため好ましくなく、1容量%未満であると、実質的に熱分解油を処理できず熱分解油の処理効率が低下するため好ましくない。
熱分解油と重質留分の混合方法に関しては、それぞれが十分に混合した状態で水素化処理装置に提供できれば良く、特に混合方法は制限されず既存の方法を使用することができる。
【0015】
本発明における第1工程の原料油(第1の炭化水素油)は5%留出温度が130〜180℃であることが好ましく、より好ましくは140〜170℃であり、95%留出温度は450〜600℃が好ましく、より好ましくは500〜550℃である。
臭素価は40gBr/100g以下が好ましく、より好ましくは30gBr/100g以下である。臭素価が40gBr/100gを超えると、不飽和分の重合反応などにより重合物を生成し、ファウリングが起こりやすくなり、反応器や熱交換器の閉塞、急激な触媒の劣化などのリスクが高まるため好ましくない。
硫黄分は5.0質量%以下が好ましく、より好ましくは3.0質量%以下、窒素分は2.0質量%以下が好ましく、より好ましくは1.5質量%以下である。硫黄分が5.0質量%を超えたり、窒素分が1.5質量%を超えると第1工程及び第3工程の水素化処理で十分に脱硫、脱窒素されず、接触分解原料として受容できるレベルに達しないため好ましくない。
【0016】
[第1工程]
本発明の第1工程の水素化処理は、通常の水素化脱硫装置より実施することができる。反応装置は、バッチ式、流通式、固定床式、流動床式等の反応形式に特に制限はないが、固定床流通式反応装置に充填された水素化処理触媒に水素と原料油とを連続的に供給して接触させる形式が好ましい。
反応温度は300〜500℃が好ましく、より好ましくは340〜450℃である。反応温度が300℃未満であると、水素化反応が十分に進行せず、脱硫、脱窒素、不飽和分の水素化の効果が低いため好ましくない。また、反応温度が500℃を超えると、水素化処理触媒の活性が急激に低下してしまうため好ましくない。
反応圧力は、5.0MPaG以上が好ましく、より好ましくは5.6〜25MPaG、さらに好ましくは7.0〜15MPaGである。反応圧力が5.6MPaG未満であると、水素化反応が十分に進行せず、脱硫、脱窒素、不飽和の水素化の効果が低いため好ましくない。また、15MPaGを超えると、装置建設費用及び運転における水素費用が増大し、経済性が低下するため好ましくない。
反応に使用する水素の純度は、60vol%以上が好ましく、より好ましくは65〜90vol%、さらに好ましくは70〜85vol%である。水素純度が60vol%未満であると、水素化反応が十分に進行せず、脱硫、脱窒素、不飽和の水素化の効果が低いため好ましくない。また、90vol%を超えると、装置建設費用及び運転における水素費用が増大し、経済性が低下するため好ましくない。
【0017】
液空間速度(LHSV)は0.5〜4.0h−1が好ましく、より好ましくは1.0〜3.0h−1である。LHSVが0.5h−1未満であると、経済性を確保できず好ましくない。また、LHSVが4.0h−1を超えると、水素化反応が十分に進行せず、脱硫、脱窒素、不飽和分の水素化の効果が低いため好ましくない。
水素/油比は100〜1000NL/Lが好ましく、より好ましくは200〜500NL/Lである。水素/油比が100NL/L未満であると、水素化反応が十分に進行せず、脱硫、脱窒素、不飽和分の水素化の効果が低いため好ましくない。また、水素/油比が1000NL/Lを超えると、経済性が著しく低下するため好ましくない。
【0018】
水素化処理触媒は、NiMo触媒を含む、少なくとも1種類の触媒からなる。ここでいうNiMo触媒とは、活性金属元素としてニッケルおよびモリブデンを含有する触媒であり、ニッケルおよびモリブデンの含有量は、好ましくはニッケルが1〜10質量%、モリブデンが2〜30質量%である。水素化触媒の製造方法に特に制限はないが、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナのような酸化物である多孔質無機酸化物担体に前述の活性金属元素を含ませて製造することが好ましい。また、リン、ホウ素、フッ素などの元素を含むものであってよい。さらに、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、trans−1,2−シクロヘキサンジアミン−N,N,N’,N’−四酢酸、ニトリロ三酢酸、クエン酸等、キレート性の有機化合物を含ませた水素化処理触媒を用いても構わない。
【0019】
[第2工程]
本発明の第2工程は、第1工程で得られた第1の水素化処理油から5%留出温度が30℃以上、95%留出温度が180℃以下である第2の炭化水素油を得る工程である。分留は通常用いられる蒸留により行うことができ、5%留出温度が30℃以上、好ましくは40℃以上となるよう、また95%留出温度が180℃以下、好ましくは160℃以下となるよう行う。5%留出温度が30℃未満であると、低級炭化水素が多く含まれるようになり、第3工程の水素化処理において低級炭化水素がガス化し、反応塔内の水素純度が低下するため好ましくない。95%留出温度が180℃を超えると、含有される硫黄分、窒素分が増加し、第3工程の水素化処理で十分に脱硫、脱窒素ができず、接触改質の原料として受容できるレベルに達しないため好ましくない。
【0020】
第2工程で得られたナフサ留分(第2の炭化水素油)は、硫黄分が1質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.3質量%以下であり、窒素分は5質量ppm以下が好ましく、より好ましくは3質量ppm以下、さらに好ましくは1質量ppm以下であり、臭素価は10gBr/100g以下が好ましく、より好ましくは5gBr/100g以下、さらに好ましくは3gBr/100g以下である。
第2工程で得られる第2の炭化水素油以外の留分については特に制限はないが、軽質留分はLPG等のガス留分として、また、重質留分は、例えば灯油原料、接触分解原料などに使用することができる。
【0021】
[第3工程]
本発明の第3工程は、第2工程で得られた第2の炭化水素油をさらに水素化処理する工程である。第3工程の原料油としては、第2工程で得られた第2の炭化水素油と同程度の沸点範囲、硫黄分、窒素分、不飽和分である油、例えば直留ナフサなどと混合して使用することもできる。
第3工程の水素化処理も、通常の水素化脱硫装置により実施することができる。反応装置は、バッチ式、流通式、固定床式、流動床式等の反応形式に特に制限はないが、固定床流通式反応装置に充填された水素化処理触媒に水素と原料油とを連続的に供給して接触させる形式が好ましい。
【0022】
反応温度は250〜350℃が好ましく、より好ましくは280〜320℃である。反応温度が250℃未満であると、水素化反応が十分に進行せず、硫黄分、窒素分、不飽和分を所定量まで低減することができなくなるため好ましくない。また、反応温度が320℃を超えると、水素化処理触媒の活性が著しく低下してしまうため好ましくない。
第1工程と第3工程の各水素化処理における反応温度は、第1工程の反応温度が第3工程より少なくとも40℃以上高いことが好ましく、より好ましくは50℃以上である。第1工程の反応温度が第3工程のより40℃以上大きくないと、第1工程で不飽和分が十分に水素化されず第3工程でファウリングやリコンビネーション反応が起こってしまうため好ましくない。
【0023】
反応圧力は、0.5〜10MPaGが好ましく、より好ましくは1〜4MPaGである。反応圧力が0.5MPaG未満であると、水素化反応が十分に進行せず、脱硫、脱窒素、不飽和分の水素化の効果が低いため好ましくない。また、10MPaGを超えると、装置建設費用及び運転における水素費用が増大し、経済性が低下するため好ましくない。
反応に使用する水素の純度は、50vol%以上が好ましく、より好ましくは55〜75vol%である。水素純度が50vol%未満であると、水素化反応が十分に進行せず、脱硫、脱窒素、不飽和の水素化の効果が低いため好ましくない。また、75vol%を超えると、装置建設費用及び運転における水素費用が増大し、経済性が低下するため好ましくない。
【0024】
LHSVは3.0〜8.0h−1が好ましく、より好ましくは3.5〜5.0h−1である。LHSVが3.0h−1未満であると、経済性を確保できず好ましくない。また、LHSVが8.0h−1を超えると、水素化反応が十分に進行せず、硫黄分、窒素分、不飽和分を多量に含有する熱分解油を含む混合油に対する脱硫、脱窒素、不飽和分の水素化の効果が低いため好ましくない。
第3工程の水素化処理のLHSVは、第1工程のLHSVの少なくとも1.5倍以上、好ましくは2倍以上大きいことが好ましい。第3工程の水素化処理の反応温度が第1工程の水素化処理におけるより1.5倍以上大きくないと、第1工程で不飽和分が十分に水素化されず第3工程でファウリングやリコンビネーション反応が起こってしまうため好ましくない。
【0025】
水素/油比は10〜50NL/Lが好ましく、より好ましくは30〜45NL/Lである。水素/油比が10NL/L未満であると、水素化反応が十分に進行せず、硫黄分、窒素分、不飽和分を多量に含有する熱分解油を含む混合油に対する脱硫、脱窒素、不飽和分の水素化の効果が低いため好ましくない。また、水素/油比が50NL/Lを超えると、経済性が著しく低下するため好ましくない。
水素化処理の水素/油比を第1工程と第3工程で比較すると、第1工程の水素/油比は第3工程より少なくとも2倍以上、好ましくは3倍以上大きいことが好ましい。第1工程の水素化処理の水素/油比が第3工程より2倍以上大きくないと、第1工程で不飽和分が十分に水素化されず第3工程でファウリングやリコンビネーション反応が起こってしまい好ましくない。
水素化処理触媒は、第1工程で用いるものと同様のNiMo触媒を含む少なくとも1種類の触媒を使用できる。
【0026】
[第4工程]
本発明の第4工程は、第3工程で得られた第2の水素化処理油から5%留出温度が80℃以上、95%留出温度が180℃以下である第3の炭化水素油を分留して得る工程である。分留は通常用いられる蒸留により行うことができ、5%留出温度が80℃以上、好ましくは85℃以上、より好ましくは90℃以上となるよう、また95%留出温度が180℃以下、好ましくは160℃以下、より好ましくは150℃以下となるよう行う。5%留出温度が80℃未満であると、炭素数5以下のナフサが多く含まれるようになり、接触改質装置において効率的に接触改質を行うことができなくなる。95%留出温度が180℃を超えると、硫黄分、窒素分ともに著しく増え、接触改質の原料として受容できるレベルに達しないため好ましくない。
【0027】
[接触改質原料]
前記各工程により製造された第3の炭化水素油は接触改質原料として好適に使用するには、硫黄分は2質量ppm以下が好ましく、より好ましくは1質量ppm以下であり、特に好ましくは0.5質量ppm以下である。硫黄分が2質量ppmを超えると、接触改質触媒中に含まれる貴金属の硫黄による被毒の割合が著しく増加し、活性を損なうため好ましくない。
また、窒素分は2質量ppm以下が好ましく、より好ましくは1質量ppm以下、特に好ましくは0.5質量ppm以下である。窒素分が2質量ppmを超えると、接触改質触媒中に含まれるアルミナの酸性が中和され、活性を損なうため好ましくない。
臭素価は5gBr/100g以下が好ましく、より好ましくは3gBr/100g以下、特に好ましくは1gBr/100g以下である。臭素価が5gBr/100gを超えると、接触改質触媒上に炭素質が著しく堆積し、活性が大きく損なわれるので好ましくない。
【0028】
[接触改質]
接触改質を行う接触改質装置や、その運転条件は特に限定されるものではなく、公知の任意の製造装置、運転条件を採用できる。接触改質装置は、白金アルミナ触媒や白金にレニウム、ゲルマニウム、すず、イリジウムなどの第二の金属を添加したバイメタリックアルミナ触媒などを使用して、沸点範囲80〜180℃程度の脱硫された脱硫直留重質ナフサを処理して高オクタン価ガソリン基材であるリフォーメートやベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素を得るために広く用いられている装置である。例えば石油学会編「石油精製プロセス」(講談社サイエンティフィック、1998年)に記載のあるUOPプラットフォーミングプロセス、レニフォーミングプロセス、EREパワーフォーミングプロセス、マグナフォーミングプロセスなどがある。
【0029】
反応温度は、好ましくは400〜600℃であり、より好ましくは450〜550℃である。液空間速度は、好ましくは0.5〜5h−1、より好ましくは1〜2h−1である。反応圧力は好ましくは0.1〜2MPaGであり、より好ましくは0.2〜1.5MPaGである。反応に使用する水素の純度は好ましくは70〜90vol%であり、より好ましくは75〜85vol%である。水素/油比は好ましくは250〜500NL/Lであり、より好ましくは350〜400NL/Lである。
【実施例】
【0030】
以下に、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの例により何ら制限されるものではない。
【0031】
(実施例1)
ディレードコーキング法により重質油を熱分解した熱分解油9容量%と直留軽油、減圧軽油、熱分解軽油を混合した重質留分91容量%とを混合し、第1工程の水素化処理の原料油として第1の炭化水素油を調製した。この第1の炭化水素油を反応温度361℃、反応圧力9.3MPaG、水素純度76vol%、水素/油比232NL/L、LHSV1.7h−1の条件下、市販のNiMo触媒を充填した固定床流通式反応装置を用いて第1工程の水素化処理を実施した。
【0032】
第1工程で得られた水素化処理油を第2工程により分留処理して第2の炭化水素油を得た。第2工程で得られた第2の炭化水素油12容量%と直留ナフサ88容量%とを混合して第3工程の水素化処理用の原料油を調製した。該原料油を用いて第3工程の水素化処理を行った。
第3工程の水素化処理は、市販のNiMo触媒を使用して、反応温度305℃、反応圧力2.5MPaG、水素純度60vol%、水素/油比37NL/L、LHSV4.5h−1の条件下、固定床流通式反応装置を用いて実施した。
【0033】
第3工程の水素化処理により得られた第2の水素化処理油を第4工程により分留処理して接触改質用の原料油である第3の炭化水素油を得た。
得られた接触改質用の原料油を反応温度522℃、反応圧力0.35MPaG、水素純度81vol%、水素/油比331NL/L、LHSV1.2h−1の条件下、市販の白金アルミナ触媒により接触改質処理を実施した。接触改質反応生成物の気液分離後、液成分をスタビライザーにかけて蒸気圧を調整し、接触改質油を得た。
【0034】
第1工程から第4工程の各工程において、原料油として用いた或いは製品として得られた熱分解油、重質留分、第1の炭化水素油、第2の炭化水素油、直留ナフサ、第3工程(第2の水素化処理)原料油、接触改質原料油及び接触改質油の性状を表1に示す。
【0035】
【表1】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱分解油を1〜25容量%含有する第1の炭化水素油を水素化処理して第1の水素化処理油を得る第1工程、第1工程で得られた第1の水素化処理油から5%留出温度が30℃以上、95%留出温度が180℃以下である第2の炭化水素油を得る第2工程、第2工程で得られた第2の炭化水素油をさらに水素化処理して第2の水素化処理油を得る第3工程、第3工程で得られた第2の水素化処理油から5%留出温度が80℃以上、95%留出温度が180℃以下である第3の炭化水素油を得る第4工程を含むことを特徴とする炭化水素油の製造方法。
【請求項2】
第1工程の水素化処理において反応圧力が5.0MPaG以上である請求項1に記載の炭化水素油の製造方法。
【請求項3】
第3工程の水素化処理において水素/オイル比が10〜50NL/Lである請求項1又は2に記載の炭化水素油の製造方法。
【請求項4】
第1工程の水素化処理における反応温度が第3工程の水素化処理における反応温度より40℃以上高い温度である請求項1〜3のいずれかに記載の炭化水素油の製造方法。

【公開番号】特開2010−53235(P2010−53235A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−218928(P2008−218928)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(304003860)株式会社ジャパンエナジー (344)
【Fターム(参考)】