説明

炭化物及びその製造方法、並びにゴム組成物及びタイヤ

【課題】高分子系廃棄物からトルエン着色透過度の高い炭化物を回収することが可能な炭化物の製造方法を提供する。
【解決手段】高分子系廃棄物1が収容された熱分解炉2内で、該高分子系廃棄物1を熱分解させて熱分解ガスを発生させる工程と、前記高分子系廃棄物1に、沸点が150℃〜400℃の範囲の液状炭化水素を滴下して添加する工程とを含むことを特徴とする炭化物の製造方法である。また、前記高分子系廃棄物1の熱分解反応が終了するまで、前記液状炭化水素の供給を継続的に行うことが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化物及び該炭化物の製造方法、並びに該炭化物を配合してなるゴム組成物及び該ゴム組成物を用いたタイヤに関し、特には、高分子系廃棄物からトルエン着色透過度の高い炭化物を回収することが可能な炭化物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、機能性の材料を開発する目的で、ゴム材料や樹脂材料等、様々な高分子系材料の工業化がなされているが、他方で、高分子工業の発展は、汎用材料の大量生産、大量消費をもたらし、高分子系廃棄物の処理は早急に解決すべき重要課題となっている。そして、この課題を解決するためには、高分子系材料の再利用化、リサイクル化等の技術的進展が肝要となる。例えば、ゴム材料であるタイヤは、モータリゼーションの発展と共に自動車必需部材として大量生産、大量消費がなされ、使用済みタイヤの数が膨大になっていることから、使用済みタイヤのリサイクル化・有効利用の研究が進められ、特に有用材料の回収が大きな課題となっている。
【0003】
例えば、実用新案登録第3095293号公報(特許文献1)では、熱分解方法として広く利用される乾留方式が開示されている。しかしながら、特許文献1に記載の乾留方式は、空気を遮断して乾留炉を加熱するものの、熱分解反応により発生するガスを系外に逃がす必要があるため、乾留炉内を完全な密閉状態にすることが困難である。また、特許文献1に記載の乾留方式は、燃焼炉によってガスが系外へ放出される構造となっている。高分子系プラスチック類の分解が終了に近づくと、ガスの発生が少なくなり、乾留炉内の圧力が系外より低くなることがあるため、大量の空気が逆流して乾留炉内に流入した場合、爆発の危険がある。また、特許文献1に記載の乾留方式では、高分子系プラスチック類の分解が終了しても、生成される炭化物中に分解油が残留し易いため、乾留炉内が高温である場合には、空気の逆流により分解油に着火して爆発を起こすおそれもある。従って、不活性ガスを系内に絶えず導入し、系内の圧力を外圧より高い状態に保つことが理想的であるが、不活性ガスを系内へ常に導入することは、熱分解のコストを上昇させる要因となる。
【0004】
また、近年では、使用済みタイヤ等の高分子系廃棄物の熱分解方法として、該高分子系廃棄物の熱分解によって生成される熱分解ガスから油分を除去し、該油分が除去された熱分解ガスを再加熱・再循環させることで、熱分解反応の熱源として利用する手法も多用されている(例えば、特表2002−523552号公報(特許文献2)参照)。この方法では、反応器内に収容された内容物の間を常にガスが流通するため、内容物の熱分解が速く、熱分解終了時に得られる炭化物中に分解油が残留することもなく、更には爆発の危険も少ない。しかしながら、このような方法では、熱分解ガスを再加熱するための加熱器を反応器(熱分解釜)と離れた位置に設置するため、熱が逃げ易く、熱利用効率が悪い。また、熱分解ガスを循環させるための送風機(又はポンプ)の前後で圧力差が生じ、これにより、熱分解に使用する釜のシール部分より空気が系内に入り易い。更に、熱分解で得られる炭化物は、該空気の流入によって酸化され、最終的に得られる炭化物の酸性度が上昇し、補強性能を付与するゴム配合用炭化物としては適さないものとなり易い。
【0005】
更に、特許文献2に記載の熱分解ガスの循環方式は、系内に送風機(又はポンプ)を設置し、該送風機の前後に発生する圧力差によって熱分解ガスを循環させるものである。例えば、特許文献2に開示の模式図では、送風機が、油分を回収するための凝縮器の下流側で且つ再加熱するための熱交換器及びヒーターの上流側に(即ち、ガス温度が常温に近い場所に)設置されている。ここで、熱交換器及びヒーターは、熱利用効率を向上させるため、通常、その配管に多くの湾曲部分が設けられている。そのため、この部分での圧力損失が大きく、釜内が最も低圧となるため、通常、1kPa程度又はそれ以上の負圧となる。そして、この程度の圧力差でも、釜のシールが完全でないと、系外より空気が僅かではあるが流入する。該空気の流入が長時間にわたって起こると、釜内の炭化物は酸化を受け易くなる。特に、熱分解により生成される炭化物の炭素含有割合が高くなるほど、該炭化物は酸化され易く、この空気の流入によって酸性度が上昇し、ゴム配合用炭化物として適さなくなる。
【0006】
また、熱分解釜では、タイヤを投入するための作業や、熱分解後の炭化物やスチールコード、スチールワイヤ等を取り出すための作業が行われるため、これらの作業と並行して、釜の蓋を取り外したり、取り付けたりする作業も必要となる。このため、釜蓋のシールは傷み易く、シール不良になり易い。更に、熱分解釜内の温度は400℃以上の高温になることが多く、これによってシール部が変形や変質を起こし易い。このように、熱分解釜とその蓋の間に位置するシール部を常時完全なものにしておくことは、非常に困難なことである。
【0007】
一方、特開平7−310076号公報(特許文献3)には、元の高次集合構造に近い状態のカーボンブラックを回収する方法として、加硫ゴムを水素供与性溶媒の存在下で加熱分解することを特徴とする液状炭化水素及びカーボンブラックの製造方法が提案されており、具体的には電磁攪拌式オートクレーブに、使用済みタイヤから得た30メッシュの粉末ゴム23g及びテトラリン57.5gを添加し、窒素ガス初圧20kg/cm、反応温度440℃で、1時間反応させた後オートクレーブを冷却し、ガス生成物及びスラリー状生成物を得た後、このスラリー状生成物をろ過して、カーボンブラック及び液状物質を得、更にこの液状物質を蒸留することによって、複数の成分を含有する液状炭化水素(分解オイル)を得ている。しかしながら、特許文献3とは熱分解条件が全く異なる高分子系廃棄物が収容された熱分解炉内で、該高分子系廃棄物を熱分解させて熱分解により生成した炭化物を回収する工程において、前記高分子系廃棄物を水素供与性溶媒の液状炭化水素に浸漬させることなく熱分解炉内に添加しながら熱分解反応を実施する場合において、どのような効果を発現するのか、またどのような反応生成物が得られるのかは全く記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実用新案登録第3095293号公報
【特許文献2】特表2002−523552号公報
【特許文献3】特開平7−310076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、熱分解反応により得られた炭化物の酸化による劣化を効果的に防止するという技術的課題を解決し、高分子系廃棄物からトルエン着色透過度の高い炭化物を回収することが可能な炭化物の製造方法を提供することにある。なお、トルエン着色透過度の数値は、熱分解反応で得られた炭化物中に含まれる、完全には分解されていない炭化水素成分の多寡を評価する指標であり、この数値が低い場合には、未分解炭化水素成分の含有量が多いことを意味する。炭化水素成分の含有量が多い場合、ゴム成分への配合時にゴム表面への染み出しによる汚れが発生する可能性があり、加えて炭化水素成分中に含まれる芳香族炭化水素による健康面及び環境面への影響が懸念されるので、この数値は高いことが好ましい。また、本発明の他の目的は、上記製造方法により得た炭化物、該炭化物を配合してなるゴム組成物、及び該ゴム組成物を用いたタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、高分子系廃棄物の熱分解反応において、該高分子系廃棄物に、沸点が150℃〜400℃の範囲の液状炭化水素を滴下して添加することによって、トルエン着色透過度が高く、かつ酸化度を低位に制御した炭化物が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
即ち、本発明の炭化物の製造方法は、
高分子系廃棄物が収容された熱分解炉内で、該高分子系廃棄物を熱分解させて熱分解ガスを発生させる工程と、
前記高分子系廃棄物に、沸点が150℃〜400℃の範囲の液状炭化水素を滴下して添加する工程と
を含むことを特徴とする。
【0012】
なお、本願における「炭化物」とは、有機物を含む物質を原料とし、この原料を加熱による熱分解反応によって原料中のガス体及び液体成分を放出した後に、生成されて残った固体を指し、灰分として無機物を含むこともある。
【0013】
本発明の炭化物の製造方法の好適例においては、前記高分子系廃棄物の熱分解反応が終了するまで、前記液状炭化水素の滴下による供給を継続的に行う。
【0014】
本発明の炭化物の製造方法は、前記熱分解ガスを発生させる工程において、熱分解時の温度を300〜600℃の範囲に制御することが好ましい。
【0015】
また、本発明の炭化物は、上記の製造方法によって得られることを特徴とし、そのトルエン着色透過度は90%以上であることが好ましく、その全酸性度は0.07meq/g以下であることが好ましく、その平均粒子径が50μm以下であることが好ましい。更に、本発明のゴム組成物は、該炭化物を配合してなることを特徴とし、本発明のタイヤは、該ゴム組成物を用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、高分子系廃棄物の熱分解において、高分子系廃棄物に、沸点が150℃〜400℃の範囲の液状炭化水素を滴下して添加することによって、高分子系廃棄物からトルエン着色透過度の高い炭化物を回収することができる。これは、高分子系廃棄物に添加される液状炭化水素が高分子系廃棄物の熱分解反応を促進し、また高分子系廃棄物中の未分解成分を溶解することによりトルエン着色透過度の高い炭化物が得られるのではないかと考えている。これに加えて、液状炭化水素が加熱された熱分解炉内に導入されると、液状炭化水素が熱分解炉の空間内で蒸発して膨張し、これによって炭化物の製造装置系内での機器の作動により発生する系内空間での負圧に対する緩衝・打消し作用や、それに伴う系外からの熱分解炉への空気の流入を防ぐこともでき、生成した炭化物の酸化度を低くすることができる。従って、本発明の製造方法により回収された炭化物は、トルエン着色透過度が高いことに加えて、全酸性度も低く維持できるため、品質が劣化しておらず、ゴム成分に配合してもゴム特性を十分に維持することが可能である。更には、上記炭化物を配合してなるゴム組成物、及び該ゴム組成物を用いたタイヤを提供することができる。なお、上記炭化物を配合してなるゴム組成物は、通常のカーボンブラックを配合したゴム組成物と比較して遜色がない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施に好適な炭化物の製造装置を示す一例の概略図である。
【図2】ゴム組成物のゴム特性と全酸性度との関係を示す図である。
【図3】比較例に用いた炭化物の製造装置の一例の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、図を参照しながら、本発明を詳細に説明する。図1は、本発明の実施に好適な炭化物の製造装置を示す一例の概略図である。まず、本発明の炭化物の製造方法、即ち高分子系廃棄物の熱分解により得られる炭化物の製造方法は、高分子系廃棄物1が収容された熱分解炉2内で、該高分子系廃棄物1を熱分解させて熱分解ガスを発生させる工程を含む。これにより、高分子系廃棄物1の熱分解反応が進行し、該高分子系廃棄物1の熱分解後の熱分解炉2内に、炭化物が生成されることになる。ここで、本発明の炭化物の製造方法においては、熱分解炉2を外部から加熱する外部加熱手段3を用いて、高分子系廃棄物1の熱分解反応を行うことが好ましい。炭化物の製造装置が外部加熱手段3を備えることで、熱分解炉2内の高分子系廃棄物1を熱分解炉2の外側から間接的に加熱できるため、熱源として熱分解炉2内に導入されるガスの使用を避けることができる。これによって、熱分解炉2内から舞い上げられガス中に混入して該ガスと共に装置内を循環する固形ダスト分(高分子系廃棄物由来の微細浮遊物)の発生を抑え、窒素酸化物等の発生をも抑制することができる。
【0019】
なお、高分子系廃棄物1は、主として有機系廃棄物を指し、具体的には、タイヤ廃棄物(例えば、スピュー、バフ粉、4〜32分割されたタイヤ)等のゴム材料廃棄物や、炭化水素モノマーの(共)重合反応により得られた高分子材料、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン−ブタジエン共重合体等、炭化水素モノマーと他のモノマーとの共重合体、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体、炭化水素モノマーのハロゲン誘導体の(共)重合体、例えばポリ塩化ビニル等の樹脂材料廃棄物が挙げられる。また、タイヤ廃棄物を熱分解処理した後の残渣には、スチールコードやワイヤ等が炭化物と混在している場合もある。
【0020】
また、熱分解炉2は、特に限定されるものではないが、例えば、釜式熱分解炉、流動床式熱分解炉、キルン式熱分解炉等が使用される。更に、外部加熱手段3としては、特に限定されず、通常のヒーターを使用することができ、より具体的には、熱分解炉を囲んで配設される炭化珪素発熱体もしくは他の発熱体を使用してもよいし、熱分解炉を囲んで配設した容器によって熱分解炉との間に空間を形成させて、この空間に熱媒体を導入したものを使用してもよい。
【0021】
本発明の炭化物の製造方法においては、不活性ガス供給ライン4を介して、熱分解炉2内に不活性ガスを導入してもよい。例えば、熱分解開始時の熱分解炉2内をパージしたり、熱分解終了時に上記液状炭化水素の供給を停止したりする際に、熱分解炉2内へ不活性ガスを導入することで、無酸素状態での熱分解がより確実なものとなり、生成される炭化物の酸化を抑えることができる。また、キャリアーとして不活性ガスを使用していないため、熱分解炉2内へ常に導入する必要がなく、その使用量は微量であり、炭化物を回収するためのコストにはほとんど影響しない。なお、不活性ガスとしては、例えば、窒素、アルゴン等を挙げることができる。
【0022】
また、本発明の炭化物の製造方法は、熱分解される高分子系廃棄物1に、沸点が150℃〜400℃の範囲の液状炭化水素を滴下して添加する工程を含む。高分子系廃棄物に滴下して添加される液状炭化水素は、高分子系廃棄物の熱分解反応を促進し、また高分子系廃棄物中の未分解成分を溶解することにより、トルエン着色透過度の高い炭化物が得られる。更に、液状炭化水素が加熱された熱分解炉内に導入されると、液状炭化水素が熱分解炉の空間内で蒸発して膨張し、これによって炭化物の製造装置系内での機器の作動により発生する系内空間での負圧に対する緩衝・打消し作用や、それに伴う系外からの熱分解炉への空気の流入を防ぐこともでき、生成した炭化物の酸化度を低く維持することができる。
【0023】
また、本発明の炭化物の製造方法は、高分子系廃棄物1の熱分解により発生した熱分解ガスから、沸点が150℃〜400℃の範囲の液状炭化水素を回収する工程を含むことが好ましい。本発明の炭化物の製造方法によれば、後述のように上記液状炭化水素を循環させながら熱分解炉2へ供給することが好ましく、この場合、熱分解ガスから上記液状炭化水素を回収する必要がある。そして、本発明の炭化物の製造方法においては、上記熱分解ガスを冷却して凝縮した油分を回収することで、上記液状炭化水素を回収することが可能となる。このため、本発明の実施に用いる炭化物の製造装置は、冷却塔(コンデンサー)を備えるのが好ましい。図1に示すように、複数の冷却塔を利用すれば、熱分解ガスから得られる油分を、その沸点に応じて分けることができる。例えば、炭化物の製造装置に、ガス流路の上流側にある第一の冷却塔5(高沸点油回収塔)と、ガス流路の下流側にある第二の冷却塔6(低沸点油回収塔)とを設ける。なお、図1に示す製造装置では、熱分解ガス供給ライン7を介して熱分解炉2から冷却塔5に熱分解ガスを導入している。また、冷却塔5は、比較的沸点の高い油分(熱分解油8)を回収するため、高温の冷却媒を導入する高温冷却媒導入ライン9及び高温の冷却媒を排出する高温冷却媒導出ライン10を備えた冷却塔からなり、一方、冷却塔6は、沸点が150℃〜400℃の範囲の液状炭化水素を含む低沸点油11を回収するため、低温の冷却媒を導入する低温冷却媒導入ライン12及び低温の冷却媒を排出する低温冷却媒導出ライン13を備えた冷却塔からなる。ここで、冷却媒としては、水、シリコンオイル等が挙げられる。なお、低沸点油11には、沸点が150℃〜400℃の範囲である液状炭化水素以外の成分が含まれる場合もあるが、該成分は高分子系廃棄物に由来する成分であるため、これを上記液状炭化水素と一緒に熱分解炉2へ供給しても、本発明の作用に悪影響を及ぼすことはない。また、各冷却塔は、例えば、その下部で配管を通して回収タンク(図示せず)に接続され、回収した油分を貯蔵することもできる。なお、油化しないガスは、フレアスタック等の排ガス燃焼手段で焼却して清浄化されるか又は熱源として利用してもよい。
【0024】
更に、本発明の炭化物の製造方法は、沸点が150℃〜400℃の範囲の液状炭化水素を熱分解炉2に供給して循環させる工程を含むことが好ましい。上記液状炭化水素が熱分解炉2内に供給されると、加熱された熱分解炉2内で蒸発し、ガス化する。そして、ガス化した炭化水素は、該熱分解炉2内で高分子系廃棄物1の熱分解により発生するガスのキャリアーとして作用することになる。また、驚くべきことに、キャリアーとして上記液状炭化水素を利用した場合、高分子系廃棄物から回収される炭化物のトルエン着色透過度を高くすることができる。この理由としては、上記液状炭化水素が、補強性の阻害因子となり得る高分子系廃棄物中の未分解成分の溶出剤として作用することにより、高分子系廃棄物中の未分解成分が高分子系廃棄物1から溶出されると考えられる。なお、液状炭化水素の沸点が150℃未満では、熱分解炉2内に供給した瞬間に蒸発してしまう可能性が高く、熱分解により生成した炭化物との接触時間が短すぎて未分解炭化水素への溶出効果が低下するため、トルエン着色透過度を上昇させる効果が十分に得られず、一方、400℃を超えると、液状炭化水素が蒸発し難く、液状のまま炭化物表面を覆ってそのまま未分解炭化水素として残留する可能性があるため、トルエン着色透過度を上昇させる効果が十分に得られないおそれがある。
【0025】
本発明の炭化物の製造方法において、沸点が150℃〜400℃の範囲の液状炭化水素として、具体的には、イソプレン誘導体、ブタジエン誘導体、スチレン誘導体、テトラリン、灯油、クレオソート油、アロマ油等が挙げられる。
【0026】
本発明の炭化物の製造方法においては、高分子系廃棄物1の熱分解反応が終了するまで、上記液状炭化水素の熱分解炉2内への供給を継続的に行うことが好ましい。上記液状炭化水素の熱分解炉2内への供給が継続的に行われることで、高分子系廃棄物中の未分解成分を効率よく除去することができ、トルエン着色透過度を大幅に上昇させることができる。また、液状炭化水素を熱分解炉2内に滴下して導入・添加することにより、熱分解炉2内で該液状炭化水素が気化し、この相転移により熱分解炉内の圧力が上昇する。この液状炭化水素の熱分解炉内への供給を連続的に継続することにより、熱分解炉内の内部圧力は高く保持され、従来技術における熱分解炉への空気の流入や、これによる熱分解生成物の酸化という欠陥を回避することができる。なお、上記液状炭化水素の添加速度は、熱分解炉内の内部圧力の上昇が連続的な炭化水素の添加・気化により保持できる速度であることが好ましく、種々の添加速度で検討した結果、1秒間に数滴から数十滴の添加速度、即ち180〜1800ml/hrの範囲であることが好ましい。ここで、液状炭化水素貯蔵タンク15からの液状炭化水素の流量を制御するため、液状炭化水素供給用ポンプ16等を介して、上記液状炭化水素を熱分解炉2に導入することが好ましい。
【0027】
上述のように、本発明の炭化物の製造方法の好適な実施態様においては、沸点が150℃〜400℃の範囲の液状炭化水素を循環させる。これにより、該液状炭化水素を効率よく利用することができる。例えば、図1に示すように、液状炭化水素供給ライン14を介して、冷却塔6で回収された上記液状炭化水素を含む低沸点油11を熱分解炉2へ導入することで、該液状炭化水素が熱分解炉2に繰り返し戻ってくる構造が形成され、該液状炭化水素を熱分解炉2に循環させることができる。なお、高分子系廃棄物1の熱分解反応が開始するまでは、上記液状炭化水素を回収することが困難であるため、本発明の実施に用いる炭化物の製造装置は、該液状炭化水素を貯蔵する液状炭化水素貯蔵タンク15を備え、該タンク15から液状炭化水素供給ライン14を介して熱分解炉2内へ上記液状炭化水素を供給することが好ましい。
【0028】
本発明の炭化物の製造方法は、高分子系廃棄物1から熱分解ガスを発生させる工程において、熱分解時の温度を300〜600℃の範囲に制御するのが好ましい。熱分解時の温度が上記特定した範囲内にあれば、高分子系廃棄物が安定で且つ連続的な熱分解を行うことができる。該熱分解時の温度が300℃未満では、熱分解反応が十分に進行せず、これによって、分解されるべき成分が完全に除去されない炭化物を生成するおそれがあり、他方、600℃を超えると、生成した炭化物とガス中に含まれ得る成分との間で望ましくない改質反応や賦活反応が起こり、炭化物中の全酸性度を上昇させたり、又は多孔性でゴムへの補強効果に悪影響を及ぼし得る炭化物を生成するおそれがある。ここで、熱分解時の温度を制御するには、外部加熱手段3等を利用すればよい。
【0029】
本発明の炭化物の製造方法においては、高分子系廃棄物1の熱分解後の熱分解炉内に残る炭化物を回収する。なお、上述の製造方法により得られる炭化物は、例えば、タイヤ廃棄物を熱分解処理した場合、タイヤの骨材であるスチールコードやワイヤ等と混在しているため、炭化物回収手段として磁石、ふるい等を用いてスチールコードやワイヤ等と分離させることが好ましい。また、上述の製造方法により得られる炭化物は、炭化の過程で凝集した塊状部分と粉末状部分とからなるため、例えば、粉砕機等を用いた粉砕工程によって回収された炭化物を微細に壊砕し、更に分級機等を用いた分級工程によって特定の粒度を持つ炭化物を抽出することが好ましい。
【0030】
本発明の炭化物の製造方法においては、図示しないが、ガス流量を制御するため、ガス流量を測定するための流量計、その開度でガス流量を調整するためのバルブ、ガス流量を一定に保つための送風機等を用いることができる。また、本発明の炭化物の製造方法は、製造装置内の酸素濃度を1容量%以下に制御することが好ましい。該製造装置内の酸素濃度が1容量%以下であれば、熱分解後の熱分解炉内に残る炭化物の酸化をより確実に抑制でき、品質が劣化せず、ゴム成分に配合してもゴム特性を十分に維持できる炭化物をより確実に得ることができる。なお、製造装置内の酸素濃度は、例えば、固体電解質ジルコニアベースの酸素濃淡セルを用いるジルコニア式酸素センサー等により測定できる。
【0031】
次に、本発明の炭化物を詳細に説明する。本発明の炭化物は、上述の製造方法によって得た炭化物であって、そのトルエン着色透過度が高いことを特徴とし、該トルエン着色透過度が90%以上であることが好ましい。トルエン着色透過度が90%以上であれば、回収された炭化物の補強効果における性能低下は抑制され、ゴム補強用充填剤として再利用することができる。なお、炭化物のトルエン着色透過度は、JIS K6218−4:2005「ゴム用カーボンブラック−付随的特性−第4部:トルエン着色透過度の求め方」に準拠して測定される。
【0032】
また、本発明の炭化物は、上述の製造方法による熱分解炉内部の圧力上昇効果によって表面の酸化が抑制されており、ゴム用配合物として好適である。なお、炭化物の酸化の度合いを評価する指標としては、「全酸性度」があり、この値が大きいと炭化物の表面が酸化されていることを意味し、該炭化物はゴム用配合剤として適さないことが知られている。本発明の炭化物は、上述の製造方法によって得られるため、その全酸性度を0.07meq/g以下にすることができる。該全酸性度が0.07meq/g以下であれば、その回収炭化物を純カーボンブラック(100%カーボンブラック)に混合した場合、ゴム組成物の物性低下がほとんど見られず、回収した炭化物を再利用することが可能となる。なお、図2は、ゴム組成物のゴム特性と全酸性度との関係を示す図である。図2の縦軸は、GPF級カーボンブラックのみが配合されたゴム組成物の300%伸長時における引張応力を100として指数表示した場合において本発明の炭化物20質量%とGPF級カーボンブラック80質量%との混合物を配合したときの炭化物の全酸性度の変化に伴うゴム組成物の300%伸長時における引張応力の指数値を示す。
【0033】
上記全酸性度の測定方法は、次のとおりである。まず、炭化物1gを精秤し、これを平底フラスコに移して0.002NのNaOH水溶液50mlを加え、超音波で分散させる。その後、該平底フラスコに冷却管を付け、還流させながら2時間煮沸する。該分散液を冷却し、定溶した後、その一部を0.002NのNaOH水溶液で滴定し、反応せずに残ったNaOHの残量から炭化物1gにつき中和反応に使用されたNaOH量を求める。単位は、単位質量当たりのミリ当量(meq/g)で表される。
【0034】
更に、本発明の炭化物は、タイヤ用ゴム組成物中に配合されるカーボンブラックの一部に代えて使用される観点から、該カーボンブラックの粒径程度に細かいことが好ましく、平均粒子径が50μm以下であることが好ましく、10μm以下であることが更に好ましい。
【0035】
次に、本発明のゴム組成物及びタイヤを詳細に説明する。本発明のゴム組成物は、上述の製造方法によって得た炭化物を配合してなることを特徴とする。本発明のゴム組成物には、例えば、上記炭化物及びゴム成分の他、ゴム工業界で通常使用される配合剤、例えば、充填剤、軟化剤、シランカップリング剤、ステアリン酸、老化防止剤、亜鉛華、加硫促進剤、加硫剤等を目的に応じて適宜配合することができる。これら配合剤としては、市販品を好適に使用することができる。なお、上記ゴム組成物は、ゴム成分に、上記炭化物と共に、必要に応じて適宜選択した各種配合剤を配合して、混練り、熱入れ、押出等することにより製造することができる。
【0036】
なお、本発明のゴム組成物に用いることができるゴム成分としては、特に制限はなく、天然ゴム(NR)の他、ポリイソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、ハロゲン化ブチルゴム、アクリロニリトル−ブタジエンゴム(NBR)等の合成ゴムを使用することができ、これらゴム成分は、一種単独で用いてもよいし、二種以上をブレンドして用いてもよい。
【0037】
また、本発明のゴム組成物には、上述の製造方法によって得た炭化物をカーボンブラックと組み合わせて配合することができる。該炭化物をカーボンブラックと組み合わせることで、ゴム組成物の物性低下を抑えることができる。該炭化物とカーボンブラックとの合計に占める炭化物の含有量は、1〜20質量%の範囲が好ましい。該炭化物の含有量が上記特定した範囲内にあれば、ゴム組成物の物性低下を確実に抑制することができる。
【0038】
本発明のタイヤは、上述のゴム組成物を用いたことを特徴とし、高分子系廃棄物から回収した炭化物が再利用されているにもかかわらず、タイヤの物性低下を軽減することができる。なお、本発明のタイヤは、上述のゴム組成物を用いる以外特に制限は無く、常法に従って製造することができる。また、該タイヤに充填する気体としては、通常の或いは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを用いることができる。
【実施例】
【0039】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0040】
(実施例1)
図1に示す製造装置を用いて、廃トラック用タイヤから炭化物を回収した。
詳細には、熱分解炉2(容量:0.5m3)内に廃トラック用タイヤの32分割裁断品(高分子系廃棄物1)約100kgを投入し、製造装置内を窒素ガスで置換した後、外部加熱手段3としてのヒーターの電源を入れ、液状炭化水素貯蔵タンク15から白灯油(沸点範囲:150〜280℃;新日本石油(株)製;ENEOS灯油)を1L/hrの速度で熱分解炉2内に滴下した。熱分解炉2内の温度を約500℃まで上昇させて、この温度を保持した。ヒーターの電源を入れてから1時間で、低沸点油11が冷却塔6に溜出し始めた。ヒーターの電源を入れてから約4時間後に冷却塔5,6への溜出量の増加分が一定となったので、熱分解反応が完了したと判断し、液状炭化水素供給用ポンプ16の運転を停止して液状炭化水素貯蔵タンク15から白灯油の供給を止め、熱分解炉2内に不活性ガス供給ライン4を介して窒素ガスを1L/minの速度で導入した。熱分解炉2内の温度を約100℃以下まで冷却した後、該熱分解炉2を開放し、炭化物を回収した。回収された炭化物には、タイヤ材料であるスチールコード等の鉄製品が含まれていたので、これをマグネットセパレーターで除去した。また、該炭化物をステンレス製の金網上で粉砕し、更に、該金網を通過した炭化物をジェット気流式粉砕機で粉砕した。粉砕された炭化物の平均粒子径は4.13μmであった。
【0041】
(実施例2)
高分子系廃棄物1として廃乗用車用タイヤを用い、熱分解炉2内の温度を550℃まで上昇させた反応条件に変更し、液状炭化水素を白灯油からテトラリン(沸点:207℃;関東化学(株)製)に変更し、テトラリンの滴下による添加速度を500ml/hrとしたこと以外は、上記実施例1と同様にして、炭化物を回収した。なお、粉砕された炭化物の平均粒子径は3.76μmであった。
【0042】
(比較例1)
図3に示す製造装置(高分子系廃棄物の熱分解で生成した熱分解ガスを再加熱して循環する装置で、液状炭化水素導入手段を備えていない)を用いて、廃トラック用タイヤから炭化物を回収した。
詳細には、熱分解釜(容量:0.5m3)内に廃トラック用タイヤの32分割裁断品約100kgを投入し、窒素ガス供給ライン(図示せず)を介して製造装置内を窒素ガスで置換した後、該窒素ガスを循環させながら熱交換器によりガス温度を約500℃まで上昇させて、この温度を保持した。熱交換器による加熱を開始してから1時間後、コンデンサーに溜出が始まった。熱交換器による加熱の開始から4時間後に溜出が止まった。溜出の停止は熱分解反応が完了したことを示し、熱交換器を止めて約12時間放置冷却した。冷却後、熱分解釜を開放し、炭化物を回収した。回収された炭化物には、タイヤ材料であるスチールコード等の鉄製品が含まれていたので、これをマグネットセパレーターで除去した。また、該炭化物をステンレス製の金網上で粉砕し、更に、該金網を通過した炭化物をジェット気流式粉砕機で粉砕した。加えて、この粉砕物を、回転羽を有する風力分級機により分級することにより、粒径が50μm以上の粗粉と砂等の異物を除去し、微細炭化物を回収した。なお、微細炭化物の平均粒子径は3.94μmであった。
【0043】
(比較例2)
図1に示す製造装置を用いて、廃トラック用タイヤから炭化物を回収した。但し、比較例2では、液状炭化水素貯蔵タンク15からの白灯油の導入を行わず、不活性ガス供給ライン4を介した熱分解炉2内への窒素ガスの導入を継続的に行った。
詳細には、熱分解炉2(容量:0.5m3)内に廃トラック用タイヤの32分割裁断品(高分子系廃棄物1)約100kgを投入し、製造装置内を窒素ガスで置換した後、外部加熱手段3としてのヒーターの電源を入れた。液状炭化水素貯蔵タンク15から白灯油の滴下は行わず、約500℃の熱分解温度にて通常の乾留式熱分解方法を行った。熱分解油8は、高温の冷却媒を循環させた冷却塔5に溜出した。ヒーターの電源を入れてから約5時間後に冷却塔5への溜出が止まった。その後、熱分解炉2を室温まで冷却し、炭化物を回収した。回収された炭化物に対して、比較例1と同様の処理を行い、微細炭化物を回収した。なお、微細炭化物の平均粒子径は4.28μmであった。
【0044】
上記のようにして製造した実施例1〜2及び比較例1〜2の炭化物について、全酸性度及びトルエン着色透過度を前述の方法で測定した。結果を表1に示す。
【0045】
【表1】

【0046】
実施例1〜2及び比較例1〜2の炭化物を用いて、表2に示す3種のゴムを用いた配合処方によりゴム組成物を調製し、該ゴム組成物の未加硫時及び加硫後のゴム特性を下記の方法により測定した。結果を表3〜5に示す。
【0047】
(1)未加硫時のゴム特性
(a)ムーニー粘度
JIS K6300−1:2001に準拠し、ムーニー粘度計を用いて、130℃でのムーニー粘度[ML1+4(130℃)]を測定し、GPF級カーボンブラック[旭カーボン(株)製,商品名:旭#55]のみが配合されたゴム組成物のムーニー粘度を100として指数表示した。指数値が小さい程、加工性に優れることを示す。
(b)スコーチタイム
JIS K6300−1:2001に準拠し、ムーニー粘度計を用いて、ムーニー粘度−時間曲線を測定し、ムーニー粘度の最低値(Vm)から5ポイント上昇した時間(t5)を求め、これをスコーチタイム(分)とした。ここで、GPF級カーボンブラック[旭カーボン(株)製,商品名:旭#55]のみが配合されたゴム組成物のスコーチタイムを100として指数表示した。指数値が100に近い程、加硫時間が適正で、作業性に優れることを示す。
【0048】
(2)加硫後のゴム特性
(a)硬さ
140℃で30分間加硫して得た加硫ゴムに対して、JIS K6253:2006に準拠し、デュロメータ硬さ試験機(タイプA)を用いて評価した。詳細には、加硫ゴムのゴム試験片の表面に押針を3秒間押し込み、その押針の押込み深さから該ゴム試験片の硬さを求めた。ここで、GPF級カーボンブラック[旭カーボン(株)製,商品名:旭#55]のみが配合されたゴム組成物の硬さを100として指数表示した。指数値が大きい程、ゴム組成物の硬さが高いことを示す。
(b)引張応力
140℃で30分間加硫して得た加硫ゴムに対して、JIS K6251:2004に準拠し、室温で100%伸び時及び300%伸び時における引張応力を測定し、GPF級カーボンブラック[旭カーボン(株)製,商品名:旭#55]のみが配合されたゴム組成物の引張応力を100として指数表示した。指数値が大きい程、引張応力が大きく、弾性率が高いことを示す。
(c)引張強さ
140℃で30分間加硫して得た加硫ゴムに対して、JIS K6251:2004に準拠し、室温での引張強さ(Tb)を測定し、GPF級カーボンブラック[旭カーボン(株)製,商品名:旭#55]のみが配合されたゴム組成物の引張強さを100として指数表示した。指数値が大きい程、破壊に対する耐性が高く、補強性に優れることを示す。
(d)切断時伸び
140℃で30分間加硫して得た加硫ゴムに対して、JIS K6251:2004に準拠し、室温での切断時伸びを測定し、GPF級カーボンブラック[旭カーボン(株)製,商品名:旭#55]のみが配合されたゴム組成物の切断時伸びを100として指数表示した。指数値が大きい程、配合される充填剤成分のゴム組成物への補強効果が高いことを示す。
【0049】
【表2】

【0050】
*1 油展ゴム,ゴム成分100質量部に対して27.3質量部のアロマオイルで油展,JSR(株)製,商品名:SBR 1723.
*2 JSR(株)製,商品名:BROMOBUTYL 2255.
*3 実施例1〜2及び比較例1〜2のうちいずれかの炭化物20質量%とGPF級カーボンブラック80質量%との混合物.
*4 フレキシス社製,商品名:サントフレックス 6PPD.
*5 大内新興化学工業(株)製,商品名:ノクセラー DM−P.
*6 大内新興化学工業(株)製,商品名:ノクラック 224.
*7 大内新興化学工業(株)製,商品名:ノクセラー D.
*8 大内新興化学工業(株)製,商品名:ノクセラー NS.
【0051】
【表3】

【0052】
【表4】

【0053】
【表5】

【0054】
表3〜5から、実施例1〜2に記載の本発明の製造方法により得られた炭化物は、高分子系廃棄物に、沸点が150℃〜400℃の範囲の液状炭化水素を滴下して添加するため、得られた炭化物は、比較例1〜2に記載の製造方法によって得た炭化物に比べてトルエン着色透過度が高く、その全酸性度は0.07meq/g以下に抑えられている。従って、実施例1〜2のゴム組成物は、GPF級カーボンブラックのみが配合されたゴム組成物と比較し、未加硫ゴム及び加硫ゴムの各種ゴム特性に対していずれも5%を超えて低減することがないことが分かる。
【符号の説明】
【0055】
1 高分子系廃棄物
2 熱分解炉
3 外部加熱手段
4 不活性ガス供給ライン
5 冷却塔
6 冷却塔
7 熱分解ガス供給ライン
8 熱分解油
9 高温冷却媒導入ライン
10 高温冷却媒導出ライン
11 低沸点油
12 低温冷却媒導入ライン
13 低温冷却媒導出ライン
14 液状炭化水素供給ライン
15 液状炭化水素貯蔵タンク
16 液状炭化水素供給用ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子系廃棄物が収容された熱分解炉内で、該高分子系廃棄物を熱分解させて熱分解ガスを発生させる工程と、
前記高分子系廃棄物に、沸点が150℃〜400℃の範囲の液状炭化水素を滴下して添加する工程と
を含むことを特徴とする炭化物の製造方法。
【請求項2】
前記高分子系廃棄物の熱分解反応が終了するまで、前記液状炭化水素の供給を継続的に行うことを特徴とする請求項1に記載の炭化物の製造方法。
【請求項3】
前記熱分解ガスを発生させる工程において、熱分解時の温度を300〜600℃の範囲に制御することを特徴とする請求項1に記載の炭化物の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法によって得られた炭化物。
【請求項5】
トルエン着色透過度が90%以上であることを特徴とする請求項4に記載の炭化物。
【請求項6】
全酸性度が0.07meq/g以下であることを特徴とする請求項4に記載の炭化物。
【請求項7】
平均粒子径が50μm以下であることを特徴とする請求項4に記載の炭化物。
【請求項8】
請求項4〜7のいずれかに記載の炭化物を配合してなるゴム組成物。
【請求項9】
請求項8に記載のゴム組成物を用いたタイヤ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−1700(P2012−1700A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−141092(P2010−141092)
【出願日】平成22年6月21日(2010.6.21)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】