説明

炭化珪素接合体

【課題】接合強度及び気密性が高く、中空部の寸法精度に優れた接合体を提供する。
【解決手段】第一の炭化珪素焼結体11と第二の炭化珪素焼結体12とが金属珪素及び炭化珪素からなる接合層141、142を介して接合された炭化珪素接合体であって、その断面において、複数の前記接合層141、142の間に気密性中空部15を有し、前記第一および第二の炭化珪素焼結体の前記気密性中空部15に面した表面の表面粗さRzが2.5μm以上であることを特徴とする炭化珪素接合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化珪素接合体に関する。特に、接合部の気密性、高い密着性を要する部材に適した接合体に関する。例えば、液浸露光装置における液体回収部や、CVD装置等のガス供給部であるシャワープレートに適用可能である。
【背景技術】
【0002】
炭化珪素は耐熱性、耐食性に優れており、半導体製造装置用の部材に多く用いられているが、炭化珪素は焼結温度が高く、雰囲気も不活性ガス下で行うことから製法上、一体で形成するには大きさに制限がある。そこで、種々の接合技術が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、嵩密度2.8g/cm3以上の常圧焼結SiC焼結体同士がSiからなる接合部及び常圧焼結SiC焼結体の接合面に開口する開気孔に充填されて接合部と一体のSiからなる充填部を介して接合する技術が開示され、粒径0.05mmの顆粒状のSiをエタノールと混合してペースト状としたものや、厚み0.02mmの板状のSiをSiC焼結体同士の間に介在させて、接合する例が示されている。
【0004】
また、特許文献2には、二つ以上の炭化ケイ素系部材の接合面に、炭素源としての樹脂類及びシリコン粉末を含んだスラリーを塗布した後接着し、その後、該接着した炭化ケイ素系部材を、真空或いは不活性雰囲気下において900〜1300℃の温度で焼成して樹脂を炭素化し、その後、該炭素化した炭化ケイ素系部材を、真空或いは不活性雰囲気下において1300℃以上の温度で焼成処理し、シリコンと樹脂からの炭素を反応焼結させて上記接合面に炭化ケイ素を生成させる炭化ケイ素系部材接合体の製造方法が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−145677号公報
【特許文献2】特開昭60−161384号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1や特許文献2に記載された発明のように、金属珪素粉末等を充填して接合したり、板材の金属珪素を接合材として用いたりする方法では、接合部からの染み出しが多いことが問題であった。例えば中空部を有する接合体の場合には、溶融して染み出る金属珪素の量を制御できないことから、染み出しにより中空部の形状精度が得られなかったり、溝や穴が埋まったりといった問題が生じていた。
【0007】
特に液浸露光装置やCVD装置等では、液体や気体を供給したり回収したりする微細な溝や穴が形成され、中空部を有するような一体形成が困難な形状の部材がある。このような微細構造を形成するには、接合により形成される中空部の形状を精密に調整しなければならないので、中空部の形状精度は大きな問題であった。
【0008】
本発明は、これらの問題に鑑みてなされたものであり、接合強度及び気密性が高く、中空部を有する場合でも中空部の形状精度に優れた接合体が得られる炭化珪素接合体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、これらの問題を解決するため、第一の炭化珪素焼結体と第二の炭化珪素焼結体とが金属珪素及び炭化珪素からなる複数の接合層を介して接合された炭化珪素接合体であって、その断面において、複数の前記接合層の間に気密性中空部を有し、前記第一および第二の炭化珪素焼結体の前記気密性中空部に面した表面の表面粗さRz(JISB0601:2001)が2.5μm以上であることを特徴とする炭化珪素接合体を提供する。
【0010】
金属珪素及び炭化珪素からなる接合層とし、その断面において、複数の接合層の間に形成される気密性中空部に面した炭化珪素焼結体表面について表面粗さRzを調整することにより中空部の形状精度を高めることができる。
【0011】
第一及び第二の炭化珪素焼結体の接合面の表面粗さRaは、0.6μm以下とすることが好ましい。接合面については、表面粗さRa(JISB0601:2001)を小さく抑えることが気密性を高める上で好ましい。
【0012】
接合層は、炭化珪素の含有率は5〜20質量%とすることが好ましい。金属珪素に炭化珪素を含ませることで染み出しを抑え、中空部の炭化珪素焼結体の表面粗さRzを調整することと相俟って中空部の形状精度を高めることができる。
【0013】
接合層に含まれる炭化珪素の平均粒径は1〜20μmとすることが好ましい。中空部の炭化珪素焼結体の表面粗さRzを調整し、さらに接合層の炭化珪素含有率及び炭化珪素の平均粒径を調整することで、中空部への染み出しを抑えることができる。
【0014】
本発明の炭化珪素接合体は、JISR1624に準拠した4点曲げ強度が250MPa以上を達成する。気密性に加えて接合強度にも優れることから、種々の部材として使用できる。特に接合層の間に形成される中空部が多い部材には好適である。
【発明の効果】
【0015】
接合強度及び気密性が高く、中空部を有する場合でも中空部の形状精度に優れた接合体が得られる炭化珪素接合体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の炭化珪素接合体の製造方法を示した概略断面図。
【図2】本発明の炭化珪素接合体の中空部拡大概略断面図。
【図3】炭化珪素接合体形状を示した概略断面図。
【図4】炭化珪素接合体形状を示した概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の炭化珪素接合体について、より詳細に説明する。図1は本発明の炭化珪素接合体の製造方法を示した概略断面図であり、図1中の(c)には本発明の炭化珪素接合体の一例が示されている。
【0018】
図1(c)に示したように、本発明の炭化珪素接合体は第一の炭化珪素焼結体11及び第二の炭化珪素焼結体12と複数の接合層141及び接合層142とからなり、接合層141と接合層142の間には気密性中空部15が形成されている。
【0019】
本発明では、接合層により中空部の気密性を達成している。特許文献1や2に記載されたように金属珪素粉末や金属珪素板によって炭化珪素焼結体同士の接合を行おうとすると、金属珪素粉末等が溶融したときの染み出しが著しく、接合層に隙間が生じやすい。一方、本発明では炭化珪素を含有しているので、溶融させても染み出しを少なく抑えられるので接合層に隙間が生じ難い。したがって、隙間無く接合できるので気密性を高めることができる。ここで、気密性の基準としてJISZ2331に準拠したボンビング法によるヘリウムリーク試験の等価基準リーク量が、1×10−6Pa・m/sより小さいこととした。
【0020】
気密性中空部は、炭化珪素接合体の断面において、複数の接合層の間に形成される。したがって、気密性中空部は、図のような溝の他、溝のように外部に連通するものでなく、外部に通じていない内部空間を含むものである。また、炭化珪素接合体の接合層は、気密性中空部を含む断面において複数なのであって、接合体における接合層は一つであっても良い。例えば、接合層が環状である場合である。
【0021】
また、第一の炭化珪素焼結体11と第二の炭化珪素焼結体12の前記気密性中空部15に面した表面の表面粗さRzが2.5μm以上であることが望ましい。接合層による接合がなされない部分について表面粗さRzを上記の範囲とし、炭化珪素を含有する金属珪素を接合層とすることで、中空部への染み出しを抑えられる。これは、接合がなされない部分の表面粗さRzが、接合面の表面粗さRaに対し、十分に粗くすることにより、接合層中の炭化珪素粒子が、隣接する接合がなされない部分の凸凹に引っ掛かるため、その移動が抑制されるためである。このような観点から、接合がなされない部分の表面粗さRz2.5μm以上とすることが好ましく、さらに20〜40μmとすることがより好ましい。なお、溝の底面及び側面の表面粗さRzの上限は、特に限定はされないが、Rzが40μmよりも大きくなると、クラック発生等の危険性があるため、好ましくない。
【0022】
図2は、本発明の炭化珪素接合体の中空部を拡大した概略断面図である。複数の接合層241と242及び、炭化珪素焼結体の表面21bと22bが中空部25に面している。上記のように表面21b及び22bの表面粗さRzを制御することで中空部への金属珪素の染み出しを抑えることができる。
【0023】
このとき、接合層が接する第一及び第二の炭化珪素焼結体の接合面の表面粗さRaは、0.6μm以下とすることが好ましい。これは、炭化珪素を含む金属珪素から構成される接合層が、表面粗さRaの小さい接合面に強固に密着すること、また、接合層が炭化珪素を含んでいることから、いったん接合面と密着した後は、流動し難いためである。したがって、接合面の表面粗さRaは小さく、中空部に面した表面の表面粗さRzは大きくすることが望ましい。このような観点から、接合面の表面粗さRaは0.6μm以下とすることが好ましく、さらに0.3μm以下とすることがより好ましい。
【0024】
図3は、接合体の変形例を示したものである。第一の炭化珪素焼結体31には、中空部を形成する溝31bが設けられている。このような溝は、複数の接合層の間の中空部を形成し、その表面は、中空部に面している。したがってこのような構成においても中空部に面した表面、すなわち溝の底面及び側面は、表面粗さRz2.5μm以上とすることが望ましい。なお、図3の溝の形は、底面と側面が直角をなす角型であるが、これに限定されるものではなく、断面形状がU字、V字、半円型等種々の形を採用することができる。
【0025】
図4は、第一および第二の炭化珪素焼結体41及び42の両方に溝41b、42bを形成したものである。この場合も図3の場合と同様に、溝の底面及び側面は、表面粗さRz2.5μm以上とすることが望ましい。
【0026】
次に本発明の炭化珪素接合体の製造方法について説明する。図1に示した炭化珪素焼結体11及び12は、プレス成形、CIP成形、鋳込み成形等の成形方法、及び常圧焼結、加圧焼結、反応焼結等の焼結方法により作製できる。接合面11a及び12aの表面粗さRaは、平面研削機により研削し、さらにラップ加工等により調整することができる。
【0027】
通常、炭化珪素焼結体の表面には、酸化膜が形成されており、そのままでは、金属珪素との濡れ性が不十分であることからカーボンを塗布して加熱する等の還元処理がなされる。しかしながら、カーボンを塗布した場合には、金属珪素とカーボンの反応により反応焼結も起こり得るので、接合強度が低下するおそれがある。したがって、本発明では、このような還元処理は行わずに接合する。
【0028】
また、接合材を介した炭化珪素焼結体の接合においては、接合面をブラスト等により粗面化する処理をした上で、上記のような還元処理がなされるのが一般的である。これは、接合面と接合層との間にアンカー効果を生じさせることにより、接合強度を高めるためである。しかしながら、本発明では、逆に接合面の表面粗さRaを小さくしている。この理由は、炭化珪素焼結体の表面には、酸化膜が形成され、金属珪素との濡れ性を低下させる要因となるが、本発明の接合方法においては、表面粗さRaが小さい方が接合強度を高めることができるからである。これは、表面粗さRaが大きいと表面の酸化膜の影響が大きく、濡れ難くなるためと考えられる。
【0029】
図1(B)は、第一の炭化珪素焼結体11の接合面11aに接合層となる原料粉末層131及び132を形成した様子を示している。接合層の形成は、炭化珪素と金属珪素を湿式混合し、スラリー状にして、母材の接合面に充填することで形成できる。もしくは乾式混合した粉末を、第一の炭化珪素焼結体11の接合面11aに充填しても良い。また、あらかじめ炭化珪素と金属珪素をバインダ等を加えてシート成形して得られる原料シートを接合面に設置しても良い。作製する接合体の形状によっては、原料粉末または原料シートを第一の炭化珪素焼結体11の接合面に強固に密着させないと位置ズレが生じる場合もあるので、必要に応じて接着剤を使用したり、加熱したりしても良い。なお、バインダ等の有機物を加えた場合は、接合層内でカーボンと金属珪素との反応が生じないように脱脂することが望ましい。脱脂は例えば500〜700℃の大気中で加熱することにより可能である。
【0030】
図1(B)では、複数の原料粉末層131および132が形成されている。このように形成するには、両層の間に空間が形成されるようにマスクを施したり、予め所定の形状に成形したシートを用いたり、原料粉末を充填した後または原料シートを設置した後、ブラスト等により除去したりして空間を形成しても良い。なお、図1〜図4の例では、2つの接合層の間に中空部が形成されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、接合層が2以上であって、中空部が1以上であるものも含まれる。
【0031】
炭化珪素焼結体の気密性中空部に面した表面の表面粗さRzの調整は、サンドブラスト加工等の粗面化できるものであれば特に限定されず、種々の方法により行うことができる。
【0032】
接合層に用いられる金属珪素の純度としては、97%以上、より好ましくは99%以上、さらに望ましくは、99.9%以上の高純度のものを使用することが望ましい。不純物が多いと溶融温度が低下し、染み出し等の不具合が生じるためである。
【0033】
接合層の炭化珪素の含有率は、5〜20質量%であることが望ましい。炭化珪素の含有率が5質量%未満の場合は、金属珪素が溶融したときに、金属珪素を接合面に保持できず、中空部に染み出す恐れがある。また、炭化珪素の含有率が20質量%より大きい場合は、炭化珪素が相対的に多く存在し、金属珪素同士が溶融一体化し難いため、金属珪素が炉内のカーボンと反応し流動性が低下してしまい接合面との密着が得られない恐れがある。また、接合層内に空隙が発生し易いため、接合強度が著しく低下する場合がある。
【0034】
また、接合層の炭化珪素の平均粒径は1〜20μmであることが望ましい。炭化珪素の平均粒径が1μm未満の場合、炭化珪素の表面積が大きいため金属珪素の濡れが不十分になる恐れがある。濡れが十分でないと接合層内に空隙が発生し易いため、接合強度が著しく低下する場合がある。炭化珪素の平均粒径が20μmより大きい場合、金属珪素との接触する比表面積が少なくなるため、金属珪素溶融時の粘性低下抑制効果が小さくなる。これにより、金属珪素が接合層内で移動できるようになるため、中空部への染み出しが発生すると共に、金属珪素が染み出した後の炭化珪素粒子間には空隙が生じるおそれがある。
【0035】
次に、第二の炭化珪素焼結体12の接合面12aを原料粉末層131及び132に当接し、熱処理して接合する。熱処理温度は金属珪素が溶融する1410〜1500℃とし、熱処理時間は30〜60分とすることが好ましい。熱処理雰囲気は真空中が好ましく、0.01kPa〜1kPaとすることが好ましい。また、接合時には、4〜20g/cmの荷重をかけることが望ましい。これよりも大きな荷重をかけると接合部の金属珪素の炭化が進行するため接合強度が低下しやすいので好ましくない。
【0036】
以下、接合強度及び気密性についての試験例を示して、本発明を説明する。
【0037】
炭化珪素焼結体は、市販の炭化珪素粉末(シュタルク社製UF−10)を用い、CIP法により成形、アルゴン中2100℃で焼成した。図3に示したような炭化珪素焼結体(炭化珪素焼結体31:φ50mm、厚さ25mm、ザグリ31b:φ5、深さ2mm、炭化珪素焼結体32:φ50mm、厚さ25mm)を作製した。これらの形状加工は、平面研削等の公知の方法により行い、接合面の表面粗さRaを調整した。中空部に面する表面となる部分については、サンドブラスト処理を施した。表面粗さは、JISB0601:2001に基づいて測定した。
【0038】
次に、接合層の原料粉末層の形成について説明する。炭化珪素粉末(平均粒径10μm)と金属珪素を質量比1:9で湿式混合し、スラリー状にして、第一の炭化珪素焼結体の接合面に充填し、100℃で乾燥した後、加工することで、原料粉末層を形成した。原料粉末スラリーの充填の際には、中空部に面する表面の部分にはマスクを施した。原料粉末層の厚さは、500μmとした。なお、炭化珪素粉末の平均粒径はレーザー回折式粒度分布測定によるメディアン径(D50)である。
【0039】
次に原料粉末層に第二の炭化珪素焼結体を当接して熱処理を行って接合した。接合工程の熱処理温度は1450℃とし、熱処理時間は30分、熱処理雰囲気は真空中(0.1kPa)とした。また、接合時には、15g/cmの荷重をかけた。
【0040】
以上の方法により、炭化珪素焼結体の気密性中空部に面した表面の表面粗さRz、炭化珪素焼結体の接合面の表面粗さRa、接合層の炭化珪素の含有率及び炭化珪素の平均粒径を変化させて、接合体の作製を行った。また、比較のため、接合材として上記した金属珪素粉末を用いて接合体を作製した。
【0041】
接合層については、切断面を光学顕微鏡観察し、中空部を調べた。接合強度は、接合体から試験片(3mm×4mm×40mm)を切り出して、下部スパン30mm、上部スパン10mmの4点曲げ試験(JISR1624準拠)を行い、接合強度を求めた。気密性の試験は、JISZ2331に準拠し、ボンビング法によって行った。中空部の観察については、接合体を、φ5、深さ2mmの中空部を通過するように切断し、目視により、金属珪素の染み出しの有無を観察した。結果を表1に示す。中空部の評価は、接合材の染み出しの無いものを○、閉塞しているものを×とした。
【0042】
【表1】

【0043】
試験No.3〜9、14、16〜20、23〜24、27では、等価基準リーク量が、1×10−6Pa・m/s以下であり、中空部の閉塞は認められなかった。また、接合強度が253〜284MPaと、250MPa以上の高い値を示した。
【0044】
一方、中空部の表面粗さRzが大きいNo.1〜2では、等価基準リーク量が、1×10−6Pa・m/s以上であり、Heリークが顕著であった。また、接合強度が200MPaに満たない低い値を示した。これは、これは、中空部の表面が滑らかであるため、接合層中の炭化珪素粒子の移動が容易となるためである。
【0045】
一方、接合面の表面粗さRaが大きいNo.10〜11では、等価基準リーク量が、1×10−6Pa・m/s以上であり、Heリークが顕著であった。また、接合強度が200MPaに満たない低い値を示した。リーク及び接合強度低下の原因は、接合面の表面粗さRaが、0.6μm以上であるため、炭化珪素接合面の酸化膜の影響が顕著となり、接合層の濡れ性が低下し、空隙が発生したためと考えられる。
【0046】
炭化珪素含有率の少ないNo.12〜13では、接合体の切断面の中空部観察において、中空部の閉塞が認められた。これは、接合層中の炭化珪素の体積割合が低いため、金属珪素が溶融したときに、金属珪素を接合面に保持できず、中空部に染み出したと考えられる。 また、炭化珪素含有率が多いNo.25〜26では、等価基準量が、1×10−6Pa・m/s以上であり、Heリークが認められ、中空部に閉塞も認められた。また、接合強度が200MPaに満たない低い値を示した。これは、炭化珪素が相対的に多く存在し、金属珪素同士が溶融一体化し難いため、金属珪素が炉内のカーボンと反応し流動性が低下してしまい接合面との密着が得られないのと同時に、接合層内に空隙が発生し易いためと考えられる。
【0047】
また、炭化珪素の粒径が小さいNo.15では、等価基準リーク量が、1×10−6Pa・m/s以上であり、Heリークが顕著であった。また、接合強度が200MPaに満たない低い値を示した。これは、炭化珪素の表面積が大きいため金属珪素の濡れが不十分となり、接合層内に空隙が発生したためと考えられる。 炭化珪素の粒径が大きいNo.21〜22では、等価基準量が、1×10−6Pa・m/s以上であり、Heリークが認められ、中空部に閉塞も認められた。また、接合強度も低い値となった。これは、金属珪素との接触する比表面積が少なくなるため、金属珪素溶融時の粘性低下抑制効果が小さくなり、金属珪素が接合層内で移動できるようになるため、中空部への染み出しが発生すると共に、金属珪素が移動した炭化珪素粒子間では、空隙となって残存したためと考えられる。
【0048】
さらに、No.28は、接合体の切断面の中空部観察において、中空部の閉塞が認められた。これは、接合層に炭化珪素が含まれていないため、染み出し、位置ズレ及び空隙が発生したためと考えられる。
【符号の説明】
【0049】
10、30、40;接合体
11、21、31、41;第一の炭化珪素焼結体
12、22、32、42;第一の炭化珪素焼結体
11a、12a;接合面
21b、31b、41b;中空部に面した表面
22b、42b;中空部に面した表面
131、132;原料粉末層
141、142、241、242、34、44;接合層
15、25;中空部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の炭化珪素焼結体と第二の炭化珪素焼結体とが金属珪素及び炭化珪素からなる接合層を介して接合された炭化珪素接合体であって、
その断面において、複数の前記接合層の間に気密性中空部を有し、
前記第一および第二の炭化珪素焼結体の前記気密性中空部に面した表面の表面粗さRzが2.5μm以上であることを特徴とする炭化珪素接合体。
【請求項2】
前記第一及び第二の炭化珪素焼結体の接合面の表面粗さRaは、0.6μm以下である請求項1に記載の炭化珪素接合体。
【請求項3】
前記接合層は、炭化珪素の含有率が5〜20質量%、炭化珪素の平均粒径が1〜20μmである請求項1〜3に記載の炭化珪素接合体。
【請求項4】
JISR1624に準拠した4点曲げ強度が250MPa以上である請求項1または2に記載の炭化珪素接合体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−173921(P2010−173921A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−20947(P2009−20947)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【出願人】(391005824)株式会社日本セラテック (200)
【Fターム(参考)】