説明

炭化装置

【課題】炭化作業の能率が高く、かつ、失火による事故を抑制できる炭化装置を提供する。
【解決手段】炭化炉4と、蓋6と、炭化炉4の内部空間を上方側の原料収納空間Sと下方側の給気室16とに区画するロストル14と、給気室16に連通する着火管17と、ロボットバーナ21を着火管17に対して進退させるシリンダ18と、原料収納空間S内に立設される予熱筒26と、予熱筒26内の乾留ガスを吸引する吸引ブロワ34と、乾留ガスを排気可能に形成される排気管39とを備える。予熱筒26は、上端部が開放され下端部が吸引ブロワ34に接続される内筒28と、内筒28を包囲し、炭化炉内下部において開設され原料収納空間Sに開口する下部通気孔29を有する外筒27とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機性原料を加熱して炭化し、炭を得ることができる炭化装置に関するものである。有機性原料としては、竹、木、木の皮、石膏、廃材、動物の糞、籾殻などが含まれるが、塗料(金属製缶等の表面に塗布されたもの)を対象としても良い。塗料を対象とするときは、塗料を炭化し、炭が表面に付いた缶を取り出すことになる。なお、塗料が付着したままの古い缶は廃棄に手間取ることが多いが、炭が表面に付いた缶にすると、その廃棄は容易になる。
【背景技術】
【0002】
従来より、特許文献1(特開2005−23131号公報)、特許文献2(特開平8−278017号公報)、特許文献3(特開平6−145668号公報)に開示されるように、可燃性有機物を乾燥させて乾留、炭化し、炭を取り出す炭化装置が種々提案されている。
【0003】
このような装置には、炭化処理の途中で発生する乾留ガスを熱エネルギー源として再利用し、燃料の節約を意図したものもある。
【0004】
しかしながら、従来の炭化装置によると、次のような問題点がある。
【0005】
原料が水分を30%前後含む場合、炭化するまでに18時間乃至35時間程度の長時間を要していた。また、炭化を行うと当然のことながら、炉内は高温、高圧の状態にあり、炉内が十分冷えるまで待ってから、炉内の炭を取り出すことになるが、この冷却にも8時間程度の時間を要していた。つまり、原料を炉内に入れてから次の原料を炉内へ入れるまで、24時間乃至43時間程度の長時間を要していた。これでは、炭化作業の能率が極めて悪いと言わざるを得ない。
【0006】
また、従来の炭化装置によると、炉内を加熱を開始した後、点火したものの失火し自己熱分解に至らない場合があり、危険であった。即ち、この場合、炉内を開け再点火することになるが、失火したとはいえ、炉内は、高温・高圧の状態になっているのが普通であり、炉を開けたとたん、炉内から外部へ吹き返し(バックファイアー)が起こり、作業員が火傷を負うなどの事故を招きやすい。これでは、安全性に問題がある。
【特許文献1】特開2005−23131号公報
【特許文献2】特開平8−278017号公報
【特許文献3】特開平6−145668号公報
【特許文献4】特開2006−219597号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、炭化作業の能率が高く、かつ、失火による事故を抑制できる炭化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明に係る炭化装置は、耐熱性材料を含めて形成され上端開口を有する炭化炉と、上端開口を開閉する蓋と、炭化炉内下部に配設され炭化炉の内部空間を上方側の原料収納空間と下方側の給気室とに区画するロストルと、給気室に連通する着火管と、火炎を放射するロボットバーナと、ロボットバーナを着火管に対して進退させ、ロボットバーナが進出した際ロボットバーナが着火管内へ火炎を放射する位置とする駆動手段と、原料収納空間内に立設される予熱筒と、予熱筒内の乾留ガスを吸引する吸引手段と、乾留ガスを排気可能に形成される排気管とを備え、予熱筒は、上端部が開放されるとともに、下端部が吸引手段に接続される内筒と、内筒を包囲し、炭化炉内下部において開設され原料収納空間に開口する複数の下部通気孔を有する外筒とを有する。
【0009】
この構成において、蓋を開き、炭化対象である原料を炭化炉の原料収納空間内に入れ、蓋を閉じ、駆動手段によりロボットバーナが着火管内へ火炎を放射する位置とする。また、吸引手段を作動させ、予熱筒内を引圧とする。
【0010】
そして、ロボットバーナを作動させ、着火管内へ火炎を放射する。すると、火炎により加熱された熱風は、着火管から給気室に至り、さらにロストルを通過して原料収納空間にある原料の下部を加熱する。
【0011】
その後、熱風は、引圧に引かれて、外筒の下部通気孔を通り、予熱筒内へ至る。予熱筒内に至った熱風は、内筒と外筒とで挟まれた空間を上昇し、予熱筒の上端部で折り返して内筒内を下降し、吸引手段側へ移動する。この結果、高温の熱風は、予熱筒内を上下に折り返して流動することになり、予熱筒自体が高温となって、ロストルに近い原料収納空間の下部の原料だけでなく、予熱筒からの伝熱により原料収納空間の上部や中間にある原料も熱せられることになる。
【0012】
原料の下部は、熱風に熱せられて徐々に熱分解を始める。この時、炭化ガスが発生し、炭化ガスも熱風と共に、予熱筒内を上下に折り返して流動し、予熱筒を加熱すると共に、予熱筒からの伝熱により原料収納空間の上部や中間にある原料が熱せられる。以上により、炭化の効率を向上できる。
【0013】
ロボットバーナを作動させ火炎を放射し続ける(条件により左右されるが、通常約10分程度)と、原料収納空間の下部の原料の自己熱分解が安定する。自己熱分解が安定したかどうかは、排気管から排気されるガスの色をチェックすることで確認できる。これにより、失火を未然に防止できる。
【0014】
自己熱分解の安定が確認されたら、ロボットバーナを停止させ、駆動手段によりロボットバーナを着火管から退出させる。以後、原料収納空間内の原料は下方から上方へ向けて自己熱分解による炭化が進行する。
【0015】
この際、炭化ガスは、低温の原料に接触すると温度が下がり炭化炉内で結露しやすい。しかしながら、上記構成によると、上述したように、炭化ガスは、引圧に強制的に引かれて下部通気孔から炭化炉外へ導かれ、乾留ガスとなって炭化炉外へ排気されるため、炭化ガスの結露が発生しにくく、炭化炉内のメンテナンス性を向上できる。
【0016】
一般に、原料収納空間の下部にある原料を自己熱分解させるため点火するとき、点火が不十分で失火してしまうことがある。失火したとはいえ、炭化炉内は高温・高圧の状態にあり、不用意に炭化炉を開き再度点火しようとすると、炭化炉からのバックファイアが発生し、作業者が火傷を負う等の事態を招きやすい。この点は、上述したとおりである。
【0017】
しかしながら、以上の構成では、ロボットバーナにより強制的に点火しているし、排気管から排気されるガスの色により自己熱分解の安定を確認できるようにしたため、原料収納空間の下部にある原料を強制的に加熱し確実に自己熱分解まで至らしめることができ、上記事態の発生を抑制でき、作業の安全性を向上できる。
【0018】
吸引手段により、炭化炉内を引圧とすることにより、炭化ガス(乾留ガス)の流動を良好として、炭化の効率を向上し、炭化に要する時間を短縮できる。また、炭化が完了した後も、炭化炉内を引圧とすることにより、炭化炉内の高温のガスを強制的に炭化炉外へ排気し、炭化炉内を冷却するに要する時間も短縮できる。
【0019】
なお、炭化炉外へ取り出された炭化ガス(乾留ガス)を熱源として、暖房その他の用途にさらに利用してもよいことは言うまでもない。
【0020】
第2の発明に係る炭化装置では、外筒は、炭化炉内上部において開設され原料収納空間に開口する複数の上部通気孔をさらに有する。
【0021】
この構成により、熱風及び/又は炭化ガスは、下部通気孔を経由する第1のルートだけでなく、原料収納空間内を上昇し、上部通気孔から予熱筒の外筒へ至る第2のルートを介して、予熱筒へ至ることができる。原料収納空間の下部で自己熱分解が発生しても、原料収納空間の上部では依然として比較的低温のままになっている傾向があるが、第2のルートを形成することにより、原料収納空間の上部をより積極的に加熱することができ、炭化の効率を一層向上できる。
【0022】
第3の発明に係る炭化装置では、蓋の開閉機構を設け、炭化炉を水平軸を中心として傾斜可能に軸支し、炭化炉を上端開口が上方を向く姿勢から上端開口が水平軸よりも下方を向く姿勢まで揺動させる揺動機構を設けた。
【0023】
この構成により、原料収納空間に原料を入れる際には、開閉機構により蓋を開いて、作業者は、容易に原料を入れることができる。
【0024】
また、炭化が完了した後炭化炉内を十分冷やした後、炭を取り出す際には、開閉機構により蓋を開き、揺動機構を作動させ、炭化炉を、上端開口が上方を向く姿勢から上端開口が水平軸よりも下方を向く姿勢まで揺動させる。したがって、作業者は、炭化炉内の炭を容易に取り出すことができる。以上により、原料及び炭の出し入れに関する作業性を向上することができる。また、出し入れの作業性が向上することにより、炭化に要する全体の作業時間を一層短縮できる。
【0025】
第4の発明に係る炭化装置では、内筒と吸引手段との間に、乾留ガスを冷却して酢液を回収する冷却手段を設けた。
【0026】
この構成により、冷却手段により、乾留ガスを冷却し炭化炉外で結露させることができる。発生した酢液(原料が竹であるときは、竹酢)は、適宜利用することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、以上のように構成したので、予熱筒及び吸引手段を活用して、炭化及びその後の冷却における効率を向上できる。また、ロボットバーナによる強制的な点火と排気されるガスの色による確認により、失火を未然に防止しやすく、失火による事故を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0029】
図1は、本発明の一実施の形態における炭化装置の構成図、図2は、本発明の一実施の形態における炭化装置の蓋開閉、炭化炉の揺動動作を示す側面図、図3(a)は、本発明の一実施の形態における外筒の縦断面図、図3(b)、(c)は、本発明の一実施の形態における外筒の横断面図である。
【0030】
図1に示すように、整地された水平な床面1を選定する。本形態の炭化装置の重量は約4トン程度であるため、床面1は、コンクリート仕上げ又は鉄板敷きなどを施し、据え付け後に本形態の炭化装置が傾斜したり沈下したりしないように、強固とするのが望ましい。
【0031】
その上で床面1上に、機台2から下方に延びる脚3を載せ設置する。本形態の炭化装置は、一つのパッケージにまとめることも可能であり、レッカーを用いてパッケージを吊り上げ、床面1上に据え付けてレベル調整するのが、一般である。
【0032】
機台2には、水平なガイドレール2aが設けられており、ガイドレール2aには、シリンダ18が、突没するロッド19が図1の左右方向に移動する向きになるように、固定される。
【0033】
ロッド19の先端部は、ロボットバーナ21に固着される固定具20に連結されている。シリンダ18を駆動して、ロッド19を突没させることにより、ロボットバーナ21を着火管17に対して進退させ、ロボットバーナ21の火炎吹出口22が進出し着火管17内へ火炎を放射する位置(実線参照)と、着火管17から離れた位置(鎖線参照)とにおいて移動させることができる。
【0034】
即ち、本形態のシリンダ18は、駆動手段に相当するが、シリンダは単なる例示に過ぎない。駆動手段としては、ロボットバーナ21の位置を上記のように変更できれば十分であり、その限りにおいて任意である。また、図1の例では、着火管17をエルボとしたが、これもロボットバーナ21からの火炎放射に支障がなければ、種々変更して差し支えない。
【0035】
本形態では、ロボットバーナ21の燃料を灯油としたが、例えば軽油、A重油等を使用しても良い。ロボットバーナ21としては、燃焼量:毎時4〜8リットル程度のものが好適に利用できる。なお、燃料タンク等は、本発明の骨子に関係しないので、その図示及び説明を省略する。
【0036】
機台2の一方の端部から垂直な支柱10が上向きに立設され、支柱10の上端には軸支部11が設けられ、軸支部11によって水平な第一軸8が回転自在に支持される。
【0037】
同様に第一軸8と同軸的に、かつその反対側には、水平な第二軸9が回転自在に軸支される。第二軸9には、水平なウオーム12が一体的に連結されており、ウオーム12には、揺動機構13のウオームギアが噛み合っている。
【0038】
第一軸8と第二軸9とは、炭化炉4の側面に固定される。よって、揺動機構13を駆動すると、図2に示すように、第一軸8と第二軸9とを一体的に回転させることができ、それにより、炭化炉4を、炭化炉4の上端開口部が上を向く起立姿勢(実線参照)と、水平軸よりも炭化炉4の上端開口部が下を向く傾斜姿勢(鎖線参照)との間で傾ける(矢印R2参照)ことができる。なお、図2の角θは、5度程度が好ましい。
【0039】
また、炭化炉4の上端開口部は、蓋6の開閉機構7により開閉できるようになっている。図2に示すように、開閉機構7を駆動すると、蓋6を閉鎖位置(実線参照)と開放位置(鎖線参照)との間で移動(矢印R1参照)できる。
【0040】
なお、揺動機構13及び開閉機構7自体は、周知の手段を使用して差し支えない。
【0041】
図1に示すように、炭化炉4は、垂直な中心軸からの距離が等しくなるように、円筒状に形成することが望ましい。炭化炉4内の温度は、約700℃程度まで上昇するので、炭化炉4の内部に耐熱材(例えば、耐熱温度1000℃程度のセラミック綿等)を配置し十分な耐熱性を確保する。
【0042】
炭化炉4の下部には、水平なロストル14が配設され、ロストル14には小さな通気孔が多数設けられる。炭化炉4の内部空間は、ロストル14により、ロストル14より上方側の原料収納空間Sと、ロストル14よりも下方の給気室16とに区画される。
【0043】
給気室16には、上記着火管17が連通しており、ロボットバーナ21が火炎を放射すると、熱風が着火管17を介して給気室16内へ送り込まれる。
【0044】
また、自動コントロールバルブを備え、制御された流量及び圧力の外気を取り込む空気供給口23が、設けられ、空気供給口23と給気室16とは、フレキシブルパイプ24を用いて着脱自在に接続される。よって、給気室16内には、所定の空気(特に酸素)を供給できるようになっている。
【0045】
本形態の炭化炉4内には、上段、中段及び下段に都合6カ所、温度センサ41〜43が配設され、各部の温度が計測される。温度センサ41〜43の計測結果に基づいて、空気供給口23からの外気供給が制御され、炭化炉4内の状態が制御される。
【0046】
炭化対象となる原料としては、竹、木、木の皮、石膏、廃材、動物の糞、籾殻などが含まれる。これらの原料を炭化すると、様々な炭が得られる。得られた炭は、土壌改良剤、有機堆肥の添加剤、燃料、水質の改善剤、脱臭剤、動物への飼料添加剤、その他様々な用途に再利用できる場合が多い。
【0047】
また後述するように、本形態では、乾留ガスの冷却手段を設けているため、原料が竹であるときは竹酢、木であるときは木酢等の酢液を回収できるようになっている。原料としては、他に金属製缶等の表面に塗布された塗料を選択しても良い。この場合には、得られる炭は少量であり、炭自体の利用価値は他の例よりも低い。しかしながら、炭が表面に付いた缶にすると、その廃棄は、塗料がついたままの缶よりも容易になるため、実益がある。
【0048】
蓋6を開き、原料15を炭化炉4内へ入れると、原料15は、ロストル14の上の原料収納空間Sに蓄積される。原料15は、事前に、極力良く乾燥させておくことが望ましい。
【0049】
従来の炭化装置では、原料を炭化炉に入れ蓋を閉めてから炭化完了まで18時間乃至35時間程度、冷却にも8時間程度の時間を要していた。
【0050】
しかしながら、本形態の炭化装置では、原料が30%程度の水分を含む場合でも、原料を炭化炉に入れ蓋を閉めてから炭化完了まで8時間乃至12時間程度、冷却にも4時間程度の時間ですむ。
【0051】
さらに、原料が良く乾燥されたものならば、本形態の炭化装置では、原料を炭化炉に入れ蓋を閉めてから炭化完了まで4時間程度、冷却にも2時間程度の時間ですむ。これにより、炭化作業の時間効率が極めて向上している点が理解されよう。
【0052】
図1に示すように、炭化炉4の中心には、長手方向が垂直になるように予熱筒26が立設される。予熱筒26は、同軸的な二重構造になっている。
【0053】
即ち、予熱筒26は、上端部が開放され、下端部がフレキシブルパイプ31に着脱自在に接続される内筒28と、内筒28を包囲する大径の外筒27とを有する。なお、図2の鎖線で示すように、炭化炉4を傾斜させようとするときは、その前に、フレキシブルパイプ24、31をそれぞれ外しておく。
【0054】
外筒27の下部には、図3(a)、(c)に示すように、長孔状の複数の下部通気孔29が開けられ、さらに、外筒27の上部には、図3(a)、(b)に示すように、長孔状の上部通気孔30が開けられている。
【0055】
これにより、外筒27の内部空間は、下部通気孔29及び上部通気孔30を介して、原料収納空間Sに開口する。なお、本形態では、下部通気孔29を合計120カ所、上部通気孔30を合計12カ所、それぞれ開けたが、これは例示に過ぎず、種々変更できる。
【0056】
一端部が内筒28の下端に接続されるフレキシブルパイプ31の他端部は、炭化炉4外へ延び、枠体32に支持されるサイクロン33の吸引口に接続される。一方、サイクロン33の吐出口には、吸引ブロワ34が接続され、吸引ブロワ34の吐出側は、配管38に接続される。
【0057】
配管38は、さらに二次燃焼炉に接続される。但し、本発明は、二次燃焼炉の構成を骨子とするものではないので、その図示及び説明は省略する。
【0058】
炭化炉4内の原料収納空間S、予熱筒26、フレキシブルパイプ31には、吸引ブロワ34による引圧が印加される。よって、本形態の吸引ブロワ34は、吸引手段に該当するが、吸引手段は、他の周知手段に変更しても差し支えない。
【0059】
サイクロン33の下部には、下方が細くなる漏斗状のホッパ35が連設され、ホッパ35の下端部には、吐出弁36が設けられる。
【0060】
吸引ブロワ34を作動させた状態で、乾留ガスが矢印N6で示すように、サイクロン33内へ至ると、旋回流が発生し、乾留ガスはサイクロン33の内表面と良く接触する。これにより、乾留ガスが空冷され、結露が発生し、その滴は、酢液37となってホッパ35内へ集められる。ここで、サイクロン33は、乾留ガスを冷却する冷却手段に相当する。本形態では、このように空冷方式によったが、必要ならば、これに変えて水冷方式等を用いても差し支えない。
【0061】
酢液37が十分たまった状態で、吐出弁36を開けば、酢液37をホッパ35外(例えば、適当な容器)に取り出すことができる。
【0062】
また、配管38に連通する排気管39が設けられ、排気管39の先端部には、弁40が設けられる。弁40は、通常閉じられているが、弁40を開くと、配管38を流動するガスの色を目視できる。この色は、炭化炉4内の状態を示す指標となる。
【0063】
ロボットバーナ21から火炎を放射しているときには、この色が、白又は薄黄色になると、自己熱分解が安定してきたことが示される。そうなれば、ロボットバーナ21の作動を停止し、自動運転に切り替える。
【0064】
自動運転が終了に近づいたときには、この色が、薄青色になると、炭化が完了したことが示される。そうなれば、炭化炉の冷却工程へ移行する。
【0065】
本形態の炭化装置は、以上のような構成からなり、次にその動作を説明する。まず、フレキシブルパイプ24、31をそれぞれ装着し、開閉機構7を駆動し、蓋6を開き、原料15を炭化炉4の原料収納空間S内に入れる。次に、開閉機構7を駆動し、蓋6を閉じる。
【0066】
そして、シリンダ18を作動し、ロボットバーナ21を着火管17内へ火炎を放射する位置(図1実線参照)とする。また、吸引ブロワ34を作動させ、フレキシブルパイプ31、予熱筒26内を引圧とする。
【0067】
そして、ロボットバーナ21を作動させ、着火管17内へ火炎を放射する。すると、火炎により加熱された熱風は、着火管17から給気室16に至り(矢印N1参照)、さらにロストル14を通過して原料収納空間Sにある原料15の下部を加熱する。
【0068】
その後、熱風は、引圧に引かれて、外筒の下部通気孔29を通り、外筒27内へ至る。外筒27内に至った熱風は、内筒28と外筒27とで挟まれた空間を上昇し(矢印N3参照)、予熱筒26の上端部で折り返して内筒28内を下降し(矢印N5参照)、吸引ブロワ24側へ移動する。
【0069】
この結果、高温の熱風は、予熱筒26内を上下に折り返して流動することになり、予熱筒26自体が高温となって、ロストル14に近い原料収納空間Sの下部の原料15だけでなく、予熱筒26からの伝熱により原料収納空間Sの上部や中間にある原料15も熱せられる。なお図1では、見やすさのため、原料収納空間Sの下部にのみ原料15を図示してある。しかしながら、予熱筒26の上部のレベルまで原料15を入れることも可能である。なお、原料15の通気性を良くするため、原料15間に適当な隙間が空くように原料15を入れることが望ましい。
【0070】
また、熱風及び/又は炭化ガスは、上部通気孔30からも外筒27へ至ることができ、比較的低温のままになりやすい、原料収納空間Sの上部をより積極的に加熱することができる。
【0071】
原料15の下部は、熱風に熱せられて徐々に熱分解を始める。この時、炭化ガスが発生し、炭化ガスも熱風と共に、予熱筒26内を上下に折り返して流動し、予熱筒26を加熱すると共に、予熱筒26からの伝熱により原料収納空間Sの上部や中間にある原料15が熱せられる。
【0072】
弁40を開き、排気管39から排気されるガスの色をチェックすることで、自己熱分解が安定したかどうかを確認できる。確認後、弁40を閉じる。
【0073】
自己熱分解の安定が確認されたら、ロボットバーナ21を停止させ、シリンダ18を作動し、ロボットバーナ31を着火管17から退出させる(図1鎖線位置)。
【0074】
以後、自動運転状態へ移行する。即ち、温度センサ41〜43による計測結果を参照しながら、空気供給口23からの外気供給を所定時間制御する。その結果、原料収納空間S内の原料15において、下方から上方へ向けて自己熱分解による炭化が進行する。
【0075】
吸引ブロワ34により、炭化炉4内を引圧とし、サイクロン33により乾留ガスを冷やし、結露を生じせしめて、ホッパ35に酢液37を溜めてゆく。酢液37は、必要に応じて、吐出弁36を開いて容器内へ取り出すと良い。
【0076】
自動運転が完了したら、再度、弁40を開き、排気管39から排気されるガスの色をチェックする。これにより、炭化処理が完了したかどうかを確認できる。確認後、弁40を閉じる。
【0077】
以降は、炭化炉4の冷却工程へ移行する。なお、温度センサ41〜43により炭化炉4内の温度を計測できるが、この温度が、所定温度(例えば400℃)以下に下がらない限り、開閉機構7の動作を制限し、不用意に蓋6を開けることができないようにするのが好ましい。こうすれば、作業者の火傷等の事故を未然に防止できる。
【0078】
炭化炉4内が十分冷えた後、フレキシブルパイプ24、31をそれぞれ外し、図2に示すように、開閉機構7を作動し、蓋6を開く。そして、揺動機構13を駆動し、炭化炉4を傾斜させ、原料収納空間Sから生成された炭を取り出す。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の一実施の形態における炭化装置の構成図
【図2】本発明の一実施の形態における炭化装置の蓋開閉、炭化炉の揺動動作を示す側面図
【図3】(a)本発明の一実施の形態における外筒の縦断面図 (b)本発明の一実施の形態における外筒の横断面図 (c)本発明の一実施の形態における外筒の横断面図
【符号の説明】
【0080】
1 地面
2 機台
3 脚
4 炭化炉
5 耐熱材
6 蓋
7 開閉機構
8 第一軸
9 第二軸
10 支柱
11 軸支部
12 ウオーム
13 揺動機構
14 ロストル
15 原料
16 給気室
17 着火管
18 シリンダ
19 ロッド
20 固定具
21 ロボットバーナ
22 火炎吹出口
23 空気供給口
24 フレキシブルパイプ
26 予熱筒
27 外筒
28 内筒
29 下部通気孔
30 上部通気孔
31 排気管
32 枠体
33 サイクロン
34 吸引ブロワ
35 ホッパ
36 吐出弁
37 酢液
38 配管
40 弁
41〜43 温度センサ
S 原料収納空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱性材料を含めて形成され上端開口を有する炭化炉と、
前記上端開口を開閉する蓋と、
前記炭化炉内下部に配設され前記炭化炉の内部空間を上方側の原料収納空間と下方側の給気室とに区画するロストルと、
前記給気室に連通する着火管と、
火炎を放射するロボットバーナと、
前記ロボットバーナを前記着火管に対して進退させ、前記ロボットバーナが進出した際前記ロボットバーナが前記着火管内へ火炎を放射する位置とする駆動手段と、
前記原料収納空間内に立設される予熱筒と、
前記予熱筒内の乾留ガスを吸引する吸引手段と、
前記乾留ガスを排気可能に形成される排気管とを備え、
前記予熱筒は、
上端部が開放されるとともに、下端部が前記吸引手段に接続される内筒と、
前記内筒を包囲し、前記炭化炉内下部において開設され前記原料収納空間に開口する複数の下部通気孔を有する外筒とを有することを特徴とする炭化装置。
【請求項2】
前記外筒は、前記炭化炉内上部において開設され前記原料収納空間に開口する複数の上部通気孔をさらに有する請求項1記載の炭化装置。
【請求項3】
前記蓋の開閉機構を設け、前記炭化炉を水平軸を中心として傾斜可能に軸支し、前記炭化炉を前記上端開口が上方を向く姿勢から前記上端開口が水平軸よりも下方を向く姿勢まで揺動させる揺動機構を設けたことを特徴とする請求項1または2記載の炭化装置。
【請求項4】
前記内筒と前記吸引手段との間に、前記乾留ガスを冷却して酢液を回収する冷却手段を設けたことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の炭化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−95611(P2010−95611A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−267307(P2008−267307)
【出願日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(508311145)株式会社プラント北陽 (1)
【Fターム(参考)】