説明

炭種性状評価フィードバックシステム

【課題】各石炭火力プラントの設備構成に適した炭種性状評価を迅速且つ確実に行うことができる炭種性状評価フィードバックシステムを提供する。
【解決手段】炭種の性状データを記憶する性状データ記憶手段40と、石炭火力プラント1で燃焼試験を行って該石炭火力プラント1の運転データを収集する運転データ収集手段10と、この運転データに基づいて該石炭火力プラント1に対する炭種性状の適正を評価する炭種性状評価手段20と、この炭種性状評価を前記性状データ記憶手段40にフィードバックさせるフィードバック手段30とから構成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭火力プラントで燃焼試験を行って炭種性状を評価する炭種性状評価フィードバックシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
多炭種対応の石炭火力プラントでは、様々な炭種の石炭を燃料として使用している。この石炭火力プラントにおいて燃焼性の悪い石炭を使用した場合には、種々のトラブルの原因となるため、新しい炭種を使用する際に、事前に実機で評価対象石炭の燃焼試験を行って炭種性状を評価している。
また、実機によらずに評価対象石炭の燃焼試験を行うことができる石炭の燃焼評価装置も知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平10−142220号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の実機による石炭燃焼試験は、炭種性状評価をオペレータの手作業で行っていたために、作業量が多く長時間を要するという課題があった。
また、日本では、燃料となる石炭を輸入に頼っていることから、燃料の安定供給のために専焼可能な炭種を拡大することが要求されている。しかし、従来の炭種性状評価は設備による違いを考慮することなく一律の判断基準によって炭種性状を評価しているために、プラントによっては実際の燃焼性より低く評価される場合があり、専焼可能な炭種が少なくなるという課題があった。
【0005】
そこで、本発明は、各石炭火力プラントの設備構成に適した炭種性状評価を迅速且つ確実に行うことができる炭種性状評価フィードバックシステムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために、炭種の性状データを記憶する性状データ記憶手段と、石炭火力プラントで燃焼試験を行って該石炭火力プラントの運転データを収集する運転データ収集手段と、この運転データに基づいて該石炭火力プラントに対する炭種性状の適正を評価する炭種性状評価手段と、この炭種性状評価を前記性状データ記憶手段にフィードバックさせるフィードバック手段とからなる炭種性状評価フィードバックシステムを提供するものである。
【0007】
また、本発明は、前記炭種性状評価手段が、評価項目別に予め定めた評価基準に基づいて炭種性状を評価する項目評価手段と、予め定めた評価項目別の重み付けにより全体評価を行う全体評価手段とからなる請求項1に記載の炭種性状評価フィードバックシステムを提供するものである。
【0008】
また、本発明は、前記炭種性状評価手段が、石炭火力プラント別に前記評価基準の見直しを行う評価基準見直し手段を備えた請求項2に記載の炭種性状評価フィードバックシステムを提供するものである。
【0009】
また、本発明は、前記炭種性状評価手段が、石炭火力プラント別に前記重み付けの見直しを行う重み付け見直し手段を備えた請求項2又は3に記載の炭種性状評価フィードバックシステムを提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る炭種性状評価フィードバックシステムによれば、炭種の性状データを記憶する性状データ記憶手段と、石炭火力プラントで燃焼試験を行って該石炭火力プラントの運転データを収集する運転データ収集手段と、この運転データに基づいて該石炭火力プラントに対する炭種性状の適正を評価する炭種性状評価手段と、この炭種性状評価を前記性状データ記憶手段にフィードバックさせるフィードバック手段とからなる構成を有することにより、石炭火力プラントにおける燃焼試験の運転データを自動的に収集して炭種性状評価を迅速且つ確実に行うことができると共に、性状データ記憶手段に記憶した炭種の性状データを更新することができる効果がある。
【0011】
また、本発明は、前記炭種性状評価手段が、評価項目別に予め定めた評価基準に基づいて炭種性状を評価する項目評価手段と、予め定めた評価項目別の重み付けにより全体評価を行う全体評価手段とからなる請求項1に記載の構成を有することにより、予め定めた評価項目別の評価基準と重み付けに基づいて自動的に炭種性状を評価することができる効果がある。
【0012】
また、本発明は、前記炭種性状評価手段が、石炭火力プラント別に前記評価基準の見直しを行う評価基準見直し手段を備えた請求項2に記載の構成を有することにより、各石炭火力プラントの設備構成に適合した炭種性状評価を行うことができる効果がある。
【0013】
また、本発明は、前記炭種性状評価手段が、石炭火力プラント別に前記重み付けの見直しを行う重み付け見直し手段を備えた請求項2又は3に記載の構成を有することにより、各石炭火力プラントの設備構成に適合した炭種の全体評価を行うことができ、専焼可能な炭種を的確に判断することができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に係る実施の形態を図示する実施例に基づいて説明する。
本発明に係る炭種性状評価フィードバックシステムは、炭種の性状データを記憶する性状データ記憶手段40と、石炭火力プラント1で燃焼試験を行って該石炭火力プラント1の運転データを収集する運転データ収集手段10と、この運転データに基づいて該石炭火力プラント1に対する炭種性状の適正を評価する炭種性状評価手段20と、この炭種性状評価を前記性状データ記憶手段40にフィードバックさせるフィードバック手段30とから構成してある。
【実施例1】
【0015】
石炭火力プラント1は、石炭を貯めておく貯炭場と、石炭を粉砕するミルと、粉砕された石炭を燃焼するボイラーとからなる。石炭火力プラント1における燃焼試験は、貯炭場に試験炭を受け入れ、ミルで粉砕されてボイラーに供給される石炭が試験炭に切り替わり、試験炭の専焼状態になったことを確認した後、ミルやボイラー等の各設備の運転データを収集するようにしている。
【0016】
性状データ記憶手段40は、石炭成分分析装置や石炭燃焼評価装置で得られた炭種別の性状データを記憶することができ、この性状データに基づいて受入炭種の選定や石炭火力プラント1の運転条件の設定をすることができるようにしてある。
【0017】
図1に示す実施例において、運転データ収集手段10は、燃焼試験の条件設定手段を備えており、性状評価に必要な石炭の成分データや石炭火力プラント1の運転条件の設定をすることができるようにしてある。運転データ収集手段10は、試験炭の専焼状態になったことを確認し、石炭火力プラント1の運転条件の設定完了後、評価項目について運転データを24時間自動収集することができるように構成してある。また、運転データ収集手段10は、収集した24時間の運転データをグラフとして出力することができるようにしてある。
【0018】
図1に示す実施例において、炭種性状評価手段20は、評価項目別に予め定めた評価基準に基づいて炭種性状を評価する項目評価手段21と、予め定めた評価項目別の重み付けにより全体評価を行う全体評価手段22とから構成してある。
図3に示すように、項目評価手段21は、運転データ収集手段10で収集した評価項目の運転データを評価基準に基づいて、「◎,○,△,×」で石炭火力プラント1の各設備に対する適正を評価するようにしてある。
また、全体評価手段22は、項目評価手段21で評価された各評価項目の評価内容と評価項目別の重み付けにより、ミル関係や火炉などのように設備単位の全体評価を行うと共に、石炭火力プラント1に対する炭種の総合評価を行うことができるように構成してある。
【0019】
図1に示す実施例において、炭種性状評価手段20は、石炭火力プラント別に評価基準の見直しを行う評価基準見直し手段23と、石炭火力プラント別に重み付けの見直しを行う重み付け見直し手段24を備えている。例えば、ミルの種類によっては、石炭の硬さが燃焼性に大きな影響を与えることから、重み付け見直し手段24がミル関係の重み付けを見直すことにより、石炭火力プラント1の設備構成に適合した炭種性状評価を行うことができるようにしてある。
【0020】
フィードバック手段30は、炭種性状評価手段20で評価した試験炭の炭種性状評価を性状データ記憶手段40にフィードバックさせて、性状データ記憶手段40に記憶した試験炭の性状データを更新することができるように構成してある。
【0021】
次に、本発明に係る炭種性状評価フィードバックシステムの作用を、図2に示す実施例に基づいて説明する。
運転データ収集手段10は、試験炭の専焼状態になったことを確認し、石炭火力プラント1の運転条件を設定する。運転データ収集手段10は、運転条件の設定完了後、石炭火力プラント1の運転状況並びに運転操作性・燃焼性の確認を行った後、評価項目について運転データを自動収集する。
【0022】
炭種性状評価手段20は、収集した運転データに基づいて項目評価手段21により評価項目別に炭種性状を評価すると共に、全体評価手段22により設備単位の全体評価及び石炭火力プラント1に対する炭種の総合評価を行う。また、評価基準見直し手段23及び重み付け見直し手段24は、評価基準及び重み付けの見直しを行い、見直し項目がある場合には評価基準又は重み付けを更新して再評価を行う。
【0023】
フィードバック手段30は、この炭種性状評価を性状データ記憶手段40にフィードバックさせて、性状データ記憶手段40に記憶した試験炭の性状データを更新する。これにより、性状データ記憶手段40は、燃焼試験後の炭種性状評価に基づいて受入炭種の選定や石炭火力プラント1の運転条件の設定をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る炭種性状評価フィードバックシステムの一実施例を示す構成図。
【図2】その一実施例の動作を示すフローチャート。
【図3】その一実施例の評価を示す図。
【符号の説明】
【0025】
1 石炭火力プラント
10 運転データ収集手段
20 炭種性状評価手段
21 項目評価手段
22 全体評価手段
23 評価基準見直し手段
24 重み付け見直し手段
30 フィードバック手段
40 性状データ記憶手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭種の性状データを記憶する性状データ記憶手段と、石炭火力プラントで燃焼試験を行って該石炭火力プラントの運転データを収集する運転データ収集手段と、この運転データに基づいて該石炭火力プラントに対する炭種性状の適正を評価する炭種性状評価手段と、この炭種性状評価を前記性状データ記憶手段にフィードバックさせるフィードバック手段とからなる炭種性状評価フィードバックシステム。
【請求項2】
前記炭種性状評価手段が、評価項目別に予め定めた評価基準に基づいて炭種性状を評価する項目評価手段と、予め定めた評価項目別の重み付けにより全体評価を行う全体評価手段とからなる請求項1に記載の炭種性状評価フィードバックシステム。
【請求項3】
前記炭種性状評価手段が、石炭火力プラント別に前記評価基準の見直しを行う評価基準見直し手段を備えた請求項2に記載の炭種性状評価フィードバックシステム。
【請求項4】
前記炭種性状評価手段が、石炭火力プラント別に前記重み付けの見直しを行う重み付け見直し手段を備えた請求項2又は3に記載の炭種性状評価フィードバックシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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