説明

炭素捕獲冷却系及び方法

【課題】炭素質供給原料から比較的クリーンに、かつ効率的にエネルギーを生成する統合型ガス化複合サイクル発電において、炭素質供給原料を、ガス化器における酸素及び蒸気との反応により、シンガスを形成するための冷却系を提供する。
【解決手段】炭素を含むガス161を捕獲し、この捕獲された炭素含有ガス161を冷却目的に使用するための系と方法。例えば、系は、シンガスから炭素を含むガス161を収集するように構成された炭素捕獲系116及び冷却回路内に炭素を含むガス161を有する冷却系163を含むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は炭素捕獲系に関する。
【背景技術】
【0002】
統合型ガス化複合サイクル(IGCC)発電プラントは、石炭又は天然ガスのような各種の炭素質供給原料から比較的クリーンに、かつ効率的にエネルギーを生成することができる。IGCC技術は、炭素質供給原料を、ガス化器における酸素及び蒸気との反応により、一酸化炭素(CO)と水素(H2)のガス混合物、すなわちシンガスに変換することができる。これらのガスは清浄化し、処理し、IGCC発電プラントで燃料として利用することができる。例えば、シンガスをIGCC発電プラントのガスタービンの燃焼器中に供給し点火して、発電に使用するためにガスタービンを作動させることができる。かかるIGCCプラントは通例、シンガスを形成するプロセスで使用するための冷却系を必要とする。残念ながら、現在の冷却系は環境的及び金銭的に費用がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第3614872号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の範囲に属する幾つかの実施形態を以下に要約する。これらの実施形態は本発明の範囲を限定することを意図したものではなく、これらの実施形態は本発明の可能な形態の簡単な概要を提供するためだけのものである。実際、本発明は以下に記載する実施形態と類似であってもよいし又は異なっていてもよい様々な形態を包含し得る。
【0005】
第1の実施形態では、系は炭素を含むガスをシンガスから収集するように構成された炭素捕獲系を含んでいる。この系はまた炭素を含むガスを冷却回路内に含む冷却系も含んでいる。
【0006】
第2の実施形態では、系は、二酸化炭素(CO2)をガスから除去するように構成されたガス清浄器、ガス清浄器からCO2を受領するように構成された炭素捕獲系及びCO2の少なくとも一部分を膨張させて1以上の部品を冷却するように構成されたCO2膨張器を含んでいる。
【0007】
第3の実施形態では、系は、ガス化器からのガスを処理するように構成された溶剤を含む酸性ガス除去(AGR)系を含んでおり、このAGR系はイオウ及び二酸化炭素(CO2)を除去するように構成されており、また系はCO2の少なくとも一部分を膨張させて溶剤を冷却するように構成されたCO2膨張器を含んでいる。
【0008】
本発明の上記及び他の特徴、態様及び利点は、添付の図面を参照して以下の詳細な説明を読めばさらに良く理解されるであろう。図面中、類似の符号は類似の部品を表す。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、捕獲された炭素含有ガス(例えば、二酸化炭素)の膨脹に基づく独特の冷却系を組み込んだ統合型ガス化複合サイクル(IGCC)発電プラントの一実施形態のブロック図である。
【図2】図2は、捕獲された炭素含有ガスの膨張に基づく独特の冷却系を含む、図1に示すガス化系の一実施形態のブロック図である。
【図3】図3は、捕獲された炭素含有ガスの膨張に基づく独特の冷却系を含む、図1に示すガス精製及び炭素捕獲系の一実施形態のブロック図である。
【図4】図4は、捕獲された炭素含有ガスの膨張に基づく独特の冷却系を含む、ガス精製及び炭素捕獲系を有する燃焼型系(例えば、ボイラー)の一実施形態のブロック図である。
【図5】図5は、捕獲された炭素含有ガスの膨張に基づく独特の冷却系を含む炭素捕獲冷却系の一実施形態のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の1以上の具体的な実施形態について説明する。これらの実施形態を簡潔に記載するために、本明細書では、実際の実施の全ての特徴を記載しないことがある。当然のことながら、かかる実際の実施の際には、あらゆる工学又は設計企画と同様に、個々の実施毎に変化し得る系関連及び業務関連の制約の遵守のような実施者の特定の目標を達成するために数多くの実施毎の決定を下さなければならない。さらにまた、当然のことながら、かかる開発努力は複雑で時間がかかるかもしれないが、それでも本開示に接した当業者にとっては設計、制作及び製造の日常的な活動であろう。
【0011】
本発明の様々な実施形態の要素を導入する際、単数形態の用語はそれらの要素が1以上存在することを意味する。用語「からなる」、「含む」及び「有する」は包括的なものであり、列挙された要素以外に追加の要素が存在し得ることを意味している。
【0012】
以下に述べるように、開示されている実施形態は、体積で約80〜100%の純度の二酸化炭素(CO2)のような捕獲された炭素含有ガスの膨張に基づく独特の冷却系を含んでいる。一部の実施形態では、CO2は体積で少なくとも約80、85、90、95又は100%の純度であり得る。以下の説明でCO2に言及するときはいずれも、上記のいずれかの純度であり、100%の純度に限定されることはないものと了解されたい。開示されている実施形態は、炭素を含有する固体、液体又は気体状の物質から、炭素を含むガス(例えば、CO2)を分離するように構成された炭素捕獲系を含み得る。例えば、この炭素捕獲系は、ガス化系、燃焼型の系(例えば、ボイラー)のような各種のアプリケーション又は一般に統合型ガス化複合サイクル(IGCC)発電プラントの部品からの物質を受容し得る。炭素を含むガスを捕獲すると、開示されている実施形態では、その捕獲された炭素含有ガスを膨張させて、1以上の部品を冷却することにより、例えば、IGCC発電プラントにおける効率を増大させる。
【0013】
この独特の冷却系は、捕獲された炭素含有ガス(例えば、CO2)を膨張(例えば、断熱膨張)させてその捕獲された炭素含有ガスの温度を低下させるように構成された膨張器(エキスパンダー)(例えば、断熱ガス膨張器)を含み得、その後この炭素含有ガスは冷却を必要とする部品内の1以上の冷却回路(例えば、ライン)を通って循環する。すぐ分かるように、断熱膨張は、周囲に対する熱の流入・流出を伴わない体積の増大である。従って、断熱膨張器は、熱伝達に対して概ね不透過性である断熱境界又は熱伝達を実質的に遮断して断熱境界に近付ける断熱壁を含んでいる。断熱膨張器は、断熱壁の内側で、捕獲された炭素含有ガスの流れ方向の体積を増大させることにより、その捕獲された炭素含有ガスの圧力と温度を低下させる。理想的には断熱膨張器は周囲に熱を伝達することは全くないが、当然のことながら、絶縁体が完全な断熱をもたらすことはないので、断熱膨張器は若干の熱を周囲に伝達し得る。言い換えると、膨張器は完全に断熱ではないことがある。以下の説明で、膨張器に言及する場合、非断熱膨張器か又は断熱膨張器若しくは近断熱膨張器であり得る断熱膨張器のいずれも包含するものと了解されたい。近断熱膨張器は周囲に対して少なくとも90〜100%の断熱であり得る。このように、すぐ分かるように、膨張器は、捕獲された炭素含有ガス(例えば、CO2)の体積増大(従って圧力低下)によりそのガスの温度を低下させるように構成された様々な実施形態を包含し得る。
【0014】
以下に説明する一部の実施形態では、膨張した二酸化炭素は、酸性ガス除去(AGR)系に使用する溶剤、イオウ除去系に使用する溶剤、窒素除去系に使用する溶剤、水性ガスシフト反応器に使用する溶剤、蒸留塔オーバーヘッド流、ガス清浄器、圧縮機、タービンエンジン又はこれらの任意の組合せのような様々なIGCC部品を冷却するのに使用し得る。一部の実施形態では、膨張した二酸化炭素はIGCC系の部品の冷却を担う一次冷媒であってもよい。他の実施形態では、この二酸化炭素は、主冷媒系の故障の際に冷却を提供することができる補助又はバックアップ冷却剤として使用し得る。溶剤に基づく系の場合、膨張した二酸化炭素副生成物を冷却目的で使用すると、この冷却された二酸化炭素の低い温度のため所望の滞留時間を実現するのに必要な溶剤循環速度が小さくなるので、この系の部品の大きさが低下し得る。また、捕獲された二酸化炭素を冷却用に使用すると、冷却サイクルで使用する凝縮器や蒸発器のような典型的な冷却用部品の必要性がなくなり得る。従って、この独特の冷却系は、炭素を含むガスの現存する供給源を利用することにより、典型的な冷却サイクルと比較して、比較的単純であり、必要とされる空間が少なくなり、またIGCCの全体の効率を増大させる。
【0015】
ここで図面を参照すると、図1は、合成ガスつまりシンガスを生成し燃焼することができる統合型ガス化複合サイクル(IGCC)系100の一実施形態の図である。以下に詳細に述べるように、1以上のIGCC部品を、捕獲された炭素含有ガスの膨張に基づく独特の冷却系により冷却することができる。IGCC系100の要素としては、IGCCのエネルギー源として利用することができる固体供給原料のような燃料供給源102を挙げることができる。燃料供給源102としては、石炭、石油コークス、バイオマス、木材系原料、農業廃棄物、タール、コークス炉ガス及びアスファルト又はその他の炭素含有物質を挙げることができる。
【0016】
燃料供給源102の固体燃料は供給原料調製装置104に通すことができる。供給原料調製装置104は、例えば、燃料供給源102を切り刻んだり、ミル加工したり、細断したり、粉砕したり、豆炭状にしたり又はパレタイジングしたりすることによって燃料供給源102の大きさを変えるか又は形を変えて供給原料を生成することができる。さらに、供給原料調製装置104で水その他の適切な液体を燃料供給源102に加えてスラリー状の供給原料を作成してもよい。他の実施形態では、燃料供給源に液体を加えることなく、乾燥供給原料を生成する。
【0017】
供給原料は供給原料調製装置104からガス化器106に通すことができる。ガス化器106は、供給原料をシンガス、例えば一酸化炭素と水素の組合せに変換することができる。この変換は、利用するガス化器106の種類に応じて、調節された量の蒸気と酸素を、高い圧力、例えば約20バール〜85バール及び温度、例えば約700℃〜1600℃で、供給原料に作用させることによって達成することができる。ガス化プロセスにおいて供給原料は、この供給原料を加熱する熱分解プロセスを受けさせることができる。熱分解プロセス中、ガス化器106内部の温度は、その供給原料を生成するのに利用した燃料供給源102に応じて約150℃〜700℃の範囲であり得る。熱分解プロセス中供給原料の加熱により、固体(例えば、炭)及び残渣ガス(例えば、一酸化炭素、水素及び窒素)が生成し得る。熱分解プロセス後に残る供給原料由来の炭は元の供給原料の重量の約30%以下の重量しかない可能性がある。
【0018】
次に、ガス化器106で燃焼プロセスが起こり得る。燃焼は、炭及び残渣ガスに酸素を導入することを含み得る。炭と残渣ガスは酸素と反応して二酸化炭素と一酸化炭素を形成することができ、これにより次のガス化反応のための熱が得られる。燃焼プロセス中の温度は約700℃〜1600℃の範囲であり得る。次いで、ガス化ステップ中ガス化器106に蒸気を導入することができる。炭は約800℃〜1100℃の範囲の温度で二酸化炭素及び蒸気と反応して一酸化炭素と水素を生成し得る。基本的に、ガス化器は蒸気と酸素を利用して供給原料の幾らかを「燃焼」させて一酸化炭素を生成すると共にエネルギーを放出し、これが、さらなる供給原料を水素と追加の二酸化炭素に変換する第2の反応を促進する。
【0019】
このようにして、ガス化器106でシンガスを製造する。この得られたガスは約85%の一酸化炭素と水素を等しい割合で含み、さらにCH4、HCl、HF、COS、NH3、HCN及びH2S(供給原料のイオウ含有量に基づく)を含み得る。この得られたガスは、例えばH2Sを含有しているので、汚れたシンガスと呼ぶことができる。ガス化器106はまた、湿った灰分であり得るスラグ108のような廃棄物も生成し得る。このスラグ108はガス化器106から除去し、例えば道路の基礎材料又はその他の建築材料として廃棄することができる。この汚れたシンガスを清浄化するために、ガス清浄器110を利用することができる。一実施形態では、ガス清浄器110は水性ガスシフト反応器であり得る。ガス清浄器110は汚れたシンガスを洗浄してHCl、HF、COS、HCN及びH2Sをその汚れたシンガスから除去することができ、これには、例えば、イオウ処理装置112内での酸性ガス除去プロセスによるイオウ処理装置112でのイオウ111の分離が含まれ得る。また、ガス清浄器110は、水精製技術を利用して汚れたシンガスから使用可能な塩113を生成することができる水処理装置114により汚れたシンガスから塩113を分離することもできる。その後、ガス清浄器110から出るガスは、微量の他の化学物質、例えばNH3(アンモニア)及びCH4(メタン)と共にきれいなシンガス(例えば、シンガスからイオウ111が除去されている)を含み得る。
【0020】
幾つかの実施形態では、ガス処理装置を利用して、アンモニア及びメタンのような追加の残留ガス成分、並びにメタノール又はあらゆる残留化学物質をきれいなシンガスから除去してもよい。しかし、このきれいなシンガスは残留ガス成分、例えばテールガスを含有していても燃料として利用することができるので、きれいなシンガスからの残留ガス成分の除去は任意である。この時点で、きれいなシンガスは約3%のCO、約55%のH2及び約40%のCO2を含み得、H2Sは実質的に除去されている。
【0021】
幾つかの実施形態では、炭素捕獲系116は、シンガス中に含有されている炭素を含むガス(例えば、体積で約80〜100%の純度の二酸化炭素)を除去し処理することができる。また、炭素捕獲系116は、圧縮機、清浄器、金属イオン封鎖若しくは原油の二次回収のためにCO2を供給するパイプライン、CO2貯蔵タンク又はこれらの任意の組合せも含み得る。次に、捕獲された二酸化炭素は二酸化炭素膨張器117に移送され、ここで二酸化炭素の体積を膨張させて適切な倍率で圧力を低下させる。例えば、二酸化炭素膨張器117は約2〜4の倍率、例えば約2の倍率で体積を増大し圧力を低下することができる。二酸化炭素膨張器117は捕獲された炭素含有ガス(例えば、体積で少なくとも80%の純度のCO2)の体積を増大し、圧力を低下し、かつ温度を低下するように構成されたいかなる適切な膨張機構でもよい。幾つかの実施形態では、二酸化炭素膨張器117は断熱された膨張器(例えば、断熱膨張器又は近断熱膨張器)、非断熱膨張器、スロットルバルブなどであり得る。例えば、二酸化炭素膨張器117は、断熱されたエンクロージャ内で炭素を含むガスの体積を膨張させることによりその炭素を含むガスの温度を低下させるいかなる装置であることもできる。二酸化炭素は二酸化炭素膨張器117に入るとき高圧(例えば、約2000〜3000psi又は約2500psi)であるので、体積膨張によって二酸化炭素の温度が低下し(例えば、約5〜100℃又は約20〜30℃)、従ってこの二酸化炭素をその系の適切な冷却剤として使用することが可能になる。従って、この冷却された二酸化炭素(例えば、約20〜40℃又は約30℃)はその系内を通って循環してその冷却の必要性を満たすか又はその後の段階で膨張させてさらに低い温度にすることができる。そのイオウ含有成分及びその二酸化炭素の大きな割合が除去されたきれいなシンガスはその後、可燃燃料として燃焼器120、例えばガスタービンエンジン118の燃焼室へ送ることができる。
【0022】
IGCC系100はさらに空気分離装置(ASU)122を含んでいることができる。ASU122は、例えば蒸留技術により、空気を成分ガスに分離するように作動することができる。ASU122は補助空気圧縮機123から供給された空気から酸素を分離することができ、またASU122はその分離された酸素をガス化器106に移送することができる。加えて、ASU122は分離された窒素を希釈窒素(DGAN)圧縮機124に送ることができる。
【0023】
DGAN圧縮機124は、ASU122から受容した窒素を、シンガスの適正な燃焼を妨害しないように、少なくとも燃焼器120内の圧力と等しい圧力レベルに圧縮することができる。すなわち、DGAN圧縮機124が窒素を適正なレベルまで適度に圧縮したら、このDGAN圧縮機124はその圧縮された窒素をガスタービンエンジン118の燃焼器120に送ることができる。窒素は、希釈剤として使用して、例えば排気の調節を容易にすることができる。
【0024】
既に記載したように、圧縮された窒素はDGAN圧縮機124からガスタービンエンジン118の燃焼器120へ送ることができる。ガスタービンエンジン118はタービン130、駆動軸131及び圧縮機132、並びに燃焼器120を含むことができる。燃焼器120は、圧力下で燃料ノズルから投入することができるシンガスのような燃料を受容することができる。この燃料は圧縮された空気及びDGAN圧縮機124からの圧縮された窒素と混合し、燃焼器120内で燃焼することができる。この燃焼は高温の加圧された排気ガスを作り出すことができる。
【0025】
燃焼器120は排気ガスをタービン130の排気口に向けて案内することができる。燃焼器120からの排気ガスがタービン130を通るとき、排気ガスはタービン130内のタービンブレードに力を与えて、ガスタービンエンジン118の軸に沿って駆動軸131を回転させる。図に示すように、駆動軸131はガスタービンエンジン118の圧縮機132を始めとする様々な部品に連結されている。
【0026】
駆動軸131はタービン130を圧縮機132に連結してローターを形成し得る。圧縮機132は駆動軸131に結合したブレードを含んでいることができる。従って、タービン130内のタービンブレードの回転により、タービン130を圧縮機132に連結している駆動軸131が圧縮機132内のブレードを回転させ得る。この圧縮機132内のブレードの回転により、圧縮機132は、空気取り入れ口を介して受容した空気を圧縮機132内で圧縮する。次に、この圧縮された空気を燃焼器120に供給し、燃料及び圧縮された窒素と混合して、より高い効率の燃焼を可能にすることができる。駆動軸131はまた、例えば発電プラントにおいて電気出力を生成するための発電機のような固定負荷であり得る負荷134にも連結することができる。実際、負荷134はガスタービンエンジン118の回転出力により動力を供給されるいかなる適切な装置であってもよい。
【0027】
IGCC系100はまた、蒸気タービンエンジン136及び熱回収蒸気生成(HRSG)系138も含んでいることができる。蒸気タービンエンジン136は第2の負荷140を駆動することができる。第2の負荷140もまた電気出力を生成するための発電機であってもよい。しかし、第1及び第2の負荷134、140の双方がガスタービンエンジン118及び蒸気タービンエンジン136により駆動することができる他の種類の負荷であってもよい。また、ガスタービンエンジン118及び蒸気タービンエンジン136は例示した実施形態に示すように別個の負荷134及び140を駆動してもよいが、ガスタービンエンジン118と蒸気タービンエンジン136はまた単一のシャフトを介して単一の負荷を駆動するようにタンデムに並べて利用することもできる。ガスタービンエンジン118と同様に蒸気タービンエンジン136の具体的な構成は個々の実施により特定であり得、あらゆる組合せのセクションを含み得る。
【0028】
この系100はまたHRSG138を含んでいてもよい。ガスタービンエンジン118からの加熱された排気ガスがHRSG138中に輸送され得、これを使用して水を加熱し、蒸気タービンエンジン136に動力を供給するために使用される蒸気を生成することができる。例えば蒸気タービンエンジン136の低圧セクションからの排気は凝縮器142中に案内され得る。凝縮器142は冷却塔128を利用して、加熱された水と冷却された水を交換することができる。冷却塔128は、冷たい水を凝縮器142に供給して、蒸気タービンエンジン136から凝縮器142に送られた蒸気を凝縮するのを助けるように作用する。凝縮器142からの凝縮液は次にHRSG138中に案内され得る。ここでも、ガスタービンエンジン118からの排気をHRSG138中に案内して凝縮器142からの水を加熱し蒸気を生成することもできる。
【0029】
IGCC系100のような複合サイクル系において、高温の排気はガスタービンエンジン118からHRSG138に通して流すことができ、そこで高圧高温の蒸気を生成するのに使用することができる。HRSG138により生成した蒸気は次に発電のために蒸気タービンエンジン136を通り得る。加えて、生成した蒸気はまた、蒸気を使用し得るあらゆる他のプロセス、例えばガス化器106に供給することができる。ガスタービンエンジン118生成サイクルは「トッピングサイクル」といわれることが多く、一方蒸気タービンエンジン136生成サイクルは「ボトミングサイクル」といわれることが多い。図1に示すようにこれら2つのサイクルを組み合わせることによって、IGCC系100は両方のサイクルにおいてより大きな効率が導かれ得る。特に、トッピングサイクルからの排熱を捕獲し、ボトミングサイクルで使用される蒸気を生成するのに使用することができる。
【0030】
図2は、捕獲された炭素含有ガスの膨張に基づく独特の冷却系を含む図1に示すようなガス化系又はプロセス150の一実施形態のブロック図である。ガス化プロセス150は空気分離装置152、炭素質供給原料調製装置154、ガス化器106、微粒子除去/冷却/シフト系156、酸性ガス除去(AGR)系158、二酸化炭素圧縮及び精製系164、並びに独特の冷却系又は回路163を含んでいる。以下にさらに詳細に述べるように、冷却系又は回路163は二酸化炭素膨張器117を含んでおり、また圧縮/精製系164(例えば、圧縮機)及び/又は圧縮された炭素を含むガス(例えば、CO2)の供給源としてのパイプライン166も含み得る。作動中、膨張器117は炭素を含むガスの体積膨張及び圧力低下を生じさせ、次にはAGR系158における冷却剤としてのその後の使用のために炭素を含むガスの実質的な冷却を生じさせる。すなわち、冷却系163は1以上のライン、ループ及び/又は熱交換器を通って炭素を含むガスを冷却剤として循環させることにより、系150内の装置を冷却せしめる。
【0031】
図に示すように、ガス化器106は、装置152及び154から空気及び炭素質原料の供給を受ける。例えば、炭素質供給原料調製装置154は炭素質供給原料(例えば、石炭、石油、バイオマス、生物燃料)を液体(例えば、水)又は気体と共に粉砕し混合し、この調製された供給原料をガス化器106に移送することができる。幾つかの実施形態では、装置154は調製された供給原料を計量し加圧してガス化器に送るポジメトリック(posimetric)ポンプを含み得る。ガス化プロセス150のASU152は空気を成分ガスに分離することにより作動し得る。例えば、極低温であり得るか又は圧力変動吸着(PSA)を利用し得る蒸留技術をASU152で使用することができる。ASU152は供給された空気から酸素を分離することができ、この分離した酸素を上記のようにガス化器106に移送することができる。さらに、ASU152は回収のため又は下流で発電に使用するために窒素のようなガスを分離することができる。次に、ガス化器106は炭素質供給原料を汚れたシンガス(例えば、イオウを含有するシンガス)に変換する。
【0032】
ガス化器106は装置152及び154からの酸素と供給原料を利用して燃焼プロセスによりシンガスを生成する。例えば、ガス化器106は炭及び残渣ガスを酸素と反応させて二酸化炭素と一酸化炭素を形成するように構成することができる。燃焼プロセス中の温度は約700℃〜約1600℃の範囲であり得る。幾つかの実施形態では、ガス化器106は蒸気を導入することにより、約800℃〜1100℃の範囲の温度で炭、二酸化炭素及び蒸気間の反応を起こさせて、一酸化炭素と水素を生成することができる。基本的に、ガス化器106は蒸気と酸素を利用して、炭素質供給原料調製装置154からの炭素質供給原料の幾らかを燃焼させ二酸化炭素とエネルギーを生成し、従ってさらなる炭素質供給原料を水素及び追加の一酸化炭素に変換する主反応を行わせる。このようにして、ガス化器106により汚れたシンガスが製造される。未精製のシンガスは約85%の一酸化炭素と水素、並びにCH4、HCl、HF、NH3、HCN、COS及びH2S(炭素質供給原料のイオウ含有量に基づく)を含み得ることに留意されたい。
【0033】
ガス化プロセス150では次に、汚れたシンガスを微粒子除去/冷却/シフト系156に移送する。すぐ分かるように、ガス化器106はスラグ及び湿った灰のような不要な廃棄物を生成し得る。従って、系156では、ガス化の望ましくない副生成物をろ過し廃棄し得る。一部の実施形態では、これらの副生成物は道路の基礎材料又は別の建築材料として廃棄し得る。また、系156は、一酸化炭素が水(例えば蒸気)と反応して二酸化炭素と水素を形成するWGS反応を実行するように構成された水性ガスシフト(WGS)反応器を含んでいてもよい。WGS反応は適正なメタン化のために未精製のシンガス中の水素と一酸化炭素の比が約1対1から約3対1に調節されるように実行し得る。その後、メタン化反応器がメタン化プロセスを実行して、シンガス中のCOとH2をCH4とH2O、すなわちメタン(例えば、SNG)と水に変換し得る。
【0034】
系156では汚れたシンガスをAGR系158に送り、二酸化炭素161と酸性ガス162を除去することによりきれいなシンガス160を生成する。例えば、AGR系158は反応を利用して酸性ガス162(例えば、硫化水素[H2S])と二酸化炭素161(CO2)を汚れたシンガスから分離することによりきれいなシンガス160(例えば、イオウと二酸化炭素を含まないシンガス)を生成することができる。一部の実施形態では、AGR系158は熱変動プロセスを利用して望ましいシンガスから酸性ガス162を分離することができる。例えば、熱変動プロセスは、H2Sの吸着を実施する吸着ステップ及びその後の空気又は酸素富化空気を用いた熱再生ステップを含み得る。この熱変動プロセス(すなわち、温ガス清浄化(warm gas cleanup))は吸着ステップでシンガスを酸化亜鉛(ZnO)のような流動化媒体と混合して硫化亜鉛(ZnS)を生成することを含み得る。再生ステップでは、この硫化亜鉛を加熱下で酸素(O2)と混合して二酸化イオウ(SO2)を生成することができ、この二酸化イオウはイオウの除去及び廃棄のために系の他の部品に送ることができる。
【0035】
AGR系158は次に、きれいなシンガス160をガスタービン、ボイラー、パイプライン、貯蔵タンク、IGCC部品又は別の適切なアプリケーションに送る。AGR系158はまた酸性ガス162をイオウ回収装置のような1以上の追加の処理系に送る。例示した実施形態では、AGR系158はまた二酸化炭素161を適切な炭素捕獲系116に送り、これはCO2圧縮及び精製系164、パイプライン166、貯蔵タンク又は炭素を消費しない任意の他の目的地を含み得る。例えば、系164は貯蔵及びその後の使用のためにCO2を脱水し圧縮し得る。例示した実施形態では、系164はCO2をパイプライン166に送り、これが炭素金属イオン封鎖、例えば原油の二次回収(EOR)又は塩水帯水層(saline aquifers)のためにCO2を移送する。
【0036】
例示した実施形態では、プロセス150は独特の冷却系又は回路163を含み、これは二酸化炭素膨張器117及び圧縮/精製系164(例えば、圧縮機)を含む。例えば、回路163は直接圧縮/精製系164から来る圧縮された二酸化炭素165の流れ及び/又はパイプライン166からの圧縮された二酸化炭素167の流れを含み得る。別の例として、圧縮された二酸化炭素はIGCC系100内の他の供給源又はプロセスから得ることができる。供給源に関わらず、二酸化炭素は実質的に圧縮され、二酸化炭素膨張器117で膨張させることができ、これにより冷却を提供する。
【0037】
二酸化炭素膨張器117に入るCO2は膨張により高圧から低圧になる。幾つかの実施形態では、膨張は断熱、近断熱又は実質的に断熱であってCO2と周囲との間の熱伝達を低減し得る。この圧力低下と一致する体積膨張の結果、CO2の温度が低下する。一部の実施形態では、CO2膨張器117は圧力及び/又は温度を少なくとも約30、40、50、60、70、80、90、100、200、300又は400%低下させ得る。例えば、圧力は約2〜4の倍率(例えば、約2の倍率)で低下し得、温度は約5〜100℃(例えば、約20〜30℃)低下し得る。しかし、体積、圧力及び温度のいかなる変化も開示されている実施形態の範囲内であり、これらの例はいかなる意味でも限定するものではない。冷却された二酸化炭素はその後AGR系158の部品に通して再循環させて冷却を提供することができる。例えば、膨張した二酸化炭素を使用してAGR系158内に使用される溶剤の温度を下げることができる。一部の実施形態では、膨張した二酸化炭素は約5〜100℃(例えば、約20〜30℃)の温度変化により溶剤を冷却することができる。しかし、すぐ分かるように、温度の変化は流速及びその他のアプリケーションに関連する事項に依存し得る。
【0038】
図3は、捕獲された炭素含有ガスの膨張に基づく独特の冷却系163を含む図1に示すようなガス精製及び炭素捕獲系168の一実施形態のブロック図である。例示した系168はAGR系158及び炭素捕獲系116を含んでいる。AGR系158は硫化水素(H2S)吸収ステップ又は装置170(例えば、酸性ガス除去装置)を含んでいる。炭素捕獲系116はCO2吸収ステップ又は装置172、溶剤貯蔵タンク176及びCO2回収ステップ又は装置178を含んでいる。炭素捕獲系116はまた、CO2圧縮及び精製系164、パイプライン166、CO2貯蔵タンク又は別の用途のCO2も含み得る。以下に詳細に述べるように、例示した実施形態は、圧縮されたCO2を膨張器117内で膨張させて、冷却剤として使用されるCO2の冷却を生じさせる冷却系又は回路163を含んでいる。一部の実施形態では、冷却されたCO2はH2S吸収装置170、CO2吸収装置172、CO2回収装置178又はこれらの任意の組合せのための冷却剤として使用することができる。冷却されたCO2はまたIGCC系100内の他の部品のためにも使用することができる。
【0039】
例示した実施形態では、冷却系163は膨張したCO2を使用してH2S吸収装置170とCO2回収装置178の両方を冷却する。例えば、冷却系163は膨張した、従って冷却されたCO2をCO2回収装置178に、次いでH2S吸収装置170に通して送ることができる。例示した実施形態では、冷却系180はCO2回収装置178とH2S吸収装置170の間でCO2の追加の冷却を提供し得る。しかし、冷却系180は、冷却系163により提供される冷却を考えると、能力が実質的に低下しても又は完全に除去してもよい。図に示すように、冷却系163は冷却されたCO2の循環のために第1のCO2冷却ループ187及び第2のCO2冷却ループ189を含んでいる。第1の冷却ループ187はCO2回収装置178及び膨張器117、並びにCO2圧縮及び精製系164及び/又はパイプライン166を通してCO2を循環させる。第2の冷却ループ189はCO2回収装置178、冷却系180及びH2S吸収装置170を通してCO2を循環させ、その後CO2をCO2圧縮及び精製系164及び/又はパイプライン166に戻す。これらのループ187及び189は、第1の冷却ループ187が、CO2の第1の部分をCO2圧縮及び精製系164に、CO2の第2の部分をCO2回収装置178で冷却剤として使用した後に第2の冷却ループ189に送るように、互いに結合し得る。
【0040】
2S吸収装置170は1以上の発熱反応を介して汚れたシンガス174からH2Sを除去することにより酸性ガス流182を提供する。冷却系180及び/又は冷却系163は装置170を冷却して発熱反応による温度を下げる。上述したように、酸性ガス182は元素状のイオウを回収するためにイオウ回収装置に移送することができる。
【0041】
シンガスはH2Sが除去されたら、CO2吸収装置172に入る。例示した実施形態では、CO2吸収装置172は溶剤を使用してシンガスからCO2を除去する。装置172は溶剤貯蔵タンク176から溶剤を受容する。例えば、1種以上のアルカノールアミン(例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロピルアミンなど)を含有する水溶液をシンガス中に含有されるCO2の吸収に適した量で溶剤貯蔵タンク176から取り出すことができる。H2SとCO2の両方が除去されたきれいなシンガス184はその後発電その他の下流の化学プロセスに使用される。
【0042】
装置172はCO2が富化されたアミン系の溶剤をCO2回収装置178中に移送し、これは炭素捕獲系116で使用するCO2を分離する。例えば、CO2回収装置178は、溶液からCO2を除去する再生器を含み得る。清浄化された溶剤186の再生流はその後、CO2吸収装置172で再使用するために溶剤貯蔵タンク176に再循環される。
【0043】
装置178は、捕獲されたCO2188を、圧縮、膨張及びその後の、冷却の必要性を満たすようにAGR系158を通す再循環のために炭素捕獲系116中に移送する。例えば、炭素捕獲系116はCO2圧縮及び精製装置164、CO2パイプライン166、貯蔵タンク、二酸化炭素膨張器117又はCO2の別の適切な用途を含み得る。上述したように、膨張器117はCO2の体積膨張及び圧力低下を引き起こすことにより、CO2の温度低下を起こさせる。例えば、膨張器117は二酸化炭素を約35℃の温度に冷却することができ、これを用いて、溶剤貯蔵タンク176からの溶剤をCO2吸収ステップ172に供給される前に約45〜55℃の温度に冷却することができる。上述の特徴は吸収プロセスの効率を増大する効果を有し得る。すなわち、シンガスは低めの温度でより高い溶解性を有するからである。一部の実施形態では、冷却された二酸化炭素を使用して、AGR系158内のステップ間でシンガスを冷却することができる。
【0044】
図4は、捕獲された炭素含有ガスの膨張に基づく独特の冷却系163を含むガス精製及び炭素捕獲系191を有する燃焼型系190の一実施形態のブロック図である。例示した実施形態では、ガス精製及び炭素捕獲系191は微粒子除去/冷却/シフト系156、イオウ及び/又は窒素除去系192、並びに炭素捕獲系116を含んでいる。上述したように、炭素捕獲系116はCO2圧縮及び精製系164、パイプライン166、CO2貯蔵タンク、並びにCO2の様々なアプリケーションを含み得る。特に、炭素捕獲系116は圧縮されたCO2をCO2の膨張のために独特の冷却系163に供給することにより、CO2を冷却して系190のための冷却剤として作用させる。冷却されたCO2は系191のあらゆる部品、並びに燃焼型系190のボイラー194及びその他のプラント設備195のための冷却剤として使用することができる。
【0045】
ボイラー194は酸素196の供給及び炭素質供給原料調製装置154からの炭素質燃料を受容して高温の燃焼ガスを生成する。ボイラー194はまた水197の供給も受容し、これは高温のガスにより加熱されて蒸気198を生成する。ボイラー194は蒸気198を発電用蒸気タービンのような1以上の部品に送る。ボイラー194はまた、高温の燃焼ガスを上述したように精製するために微粒子除去/冷却/シフト系156に送る。系156は次に燃焼ガスをイオウ及び/又は窒素除去系192に送り、ここでイオウ/窒素に富む流れ200が二酸化炭素を含有する流れ188から分離される。
【0046】
例示した実施形態では、冷却系163は冷却されたCO2をイオウ及び/又は窒素除去系192及びプラント設備195に供給する。例えば、冷却系163は第1の冷却ループ187と第2の冷却ループ189を含んでいる。第1の冷却ループ187はイオウ及び/又は窒素除去系192及び膨張器117、並びにCO2圧縮及び精製系164及び/又はパイプライン166を通してCO2を循環させる。第2の冷却ループ189はプラント設備195を通してCO2を循環させる。例示した実施形態では、第1の冷却ループ187は、冷却されたCO2の一部分を、イオウ及び/又は窒素除去系192に通す前にプラント設備195に迂回させる。しかし、他の実施形態では、冷却の必要性に応じて、冷却されたCO2は、プラント設備195を冷却するのに使用する前に除去系192を冷却するのに使用してもよい。プラント設備195としては、各種のIGCC部品、発電装置、エンジン、化学処理装置、熱交換器などを挙げることができる。例えば、冷却系163は、蒸留塔のオーバーヘッド流を冷却するために、冷却されたCO2を使用し得る。例えば、冷却されたCO2を使用して、還流からのシンガス生成物を分離するのに使用する蒸留塔に関連するオーバーヘッド流の温度を下げることができる。追加の実施形態では、冷却されたCO2は、IGCC発電プラントの連続蒸留プロセスに関連するオーバーヘッド流の冷媒として使用してもよい。すなわち、冷却されたCO2は、IGCC発電プラントにおける連続流分離プロセスに関連するあらゆる流れを冷却するのに使用することができる。さらなる例として、冷却されたCO2は、凝縮器、蒸発器及び圧縮機を有する閉鎖ループを通して冷媒(例えば、アンモニア又はフレオン)を循環させる冷却サイクルの代わりに使用してもよい。
【0047】
図5は、捕獲された炭素含有ガスの膨張に基づく独特の冷却系163を含む炭素捕獲冷却系210の一実施形態のブロック図である。例示した実施形態では、系210は化学生産系212及び炭素捕獲系116を含んでいる。化学生産系212は部分酸化又は改質装置214並びに微粒子除去/冷却/シフト系156を含んでいる。炭素捕獲系116はCO2除去系216、並びにCO2圧縮及び精製系164、パイプライン166、CO2貯蔵タンク又は捕獲されたCO2の別のアプリケーションを含んでいる。特に、炭素捕獲系116は圧縮されたCO2をCO2の膨張のために独特の冷却系163に供給することにより、CO2を冷却して系210の冷却剤として作用させる。冷却されたCO2は、部分酸化又は改質装置214、微粒子除去/冷却/シフト系156、CO2除去系216、プラント設備195又はこれらの任意の組合せを含めて、系210のあらゆる部品のための冷却剤として使用することができる。
【0048】
部分酸化又は改質ステップ214は炭素質供給原料調製装置154からの炭素質燃料を受容する。一部の実施形態では、炭素質燃料としては、メタノール、天然ガス、プロパン、ガソリン、オートガス、ディーゼル燃料、エタノール、ナフサ、その他あらゆる炭素質物質を挙げることができる。部分酸化又は改質装置214はまた酸素及び/又は蒸気流218も受容する。一実施形態では、部分酸化又は改質ステップ214は部分酸化を行って、他のガスの中でも特に一酸化炭素(CO)と水素(H2)を含むシンガス混合物を生成する。例えば、シンガス混合物はCO、H2、CH4、CO2、H2O、H2S、N2及びCO2を含み得る。幾つかの実施形態では、部分酸化又は改質装置214は炭素質供給原料をオクタン価のより高い生成物及び水素に変換する。系212は次にシンガスを、上述したように精製するために微粒子除去/冷却/シフト系156に送る。
【0049】
化学生産系212は次にシンガスを炭素捕獲系116に送る。特に、微粒子除去/冷却/シフト系156はシンガスをCO2除去系216に移送し、ここでCO2188が分離されてきれいなシンガス220が生成する。例えば、CO2除去系216は溶剤型の系、膜型の系又はその他CO2の除去に適したあらゆる種類の系であり得る。CO2除去系216はきれいなシンガス220を追加の処理装置、ガスタービン、ボイラー又は別のアプリケーションに移送する。また、CO2除去系216は分離されたCO2188を炭素捕獲系116に移送する。例えば、CO2圧縮及び精製系164はCO2を圧縮し精製した後、第1の部分をパイプライン166に、また第2の部分を冷却系163に送る。
【0050】
例示した実施形態では、冷却系163は冷却されたCO2をCO2除去系216及びプラント設備195に供給する。例えば、冷却系163は第1の冷却ループ187及び第2の冷却ループ189を含んでいる。第1の冷却ループ187はCO2除去系216及び膨張器117、並びにCO2圧縮及び精製系164及び/又はパイプライン166に通してCO2を循環させる。第2の冷却ループ189はCO2をプラント設備195に通して循環させる。例示した実施形態では、第1の冷却ループ187は冷却されたCO2の一部分をCO2除去系192に通す前にプラント設備195に迂回させる。しかし、他の実施形態では、冷却されたCO2は、冷却の必要性に応じて、プラント設備195を冷却するのに使用する前にCO2除去系216を冷却するのに使用することができる。プラント設備195としては、各種のIGCC部品、発電装置、エンジン、化学処理装置、熱交換器などを挙げることができる。
【0051】
本発明の技術的効果としては冷却系と組み合わせた炭素捕獲系を挙げることができ、ここでは捕獲された炭素含有ガス(例えば、体積で約80〜100%の純度のCO2)を冷却系で冷却剤として使用する。この炭素捕獲系はあらゆる工業プラント、統合型ガス化複合サイクル(IGCC)発電プラントなどの一部であることができる。同様に、この冷却系を用いて、各種の工業プラント設備、IGCC装置などを冷却することができる。一部の実施形態では、制御装置又はプログラムされた装置(例えば、コンピューターシステム)は、炭素捕獲系及び/又は冷却系を制御して、捕獲された炭素含有ガスにより提供される冷却の量を変化させる指令を含み得る。例えば、この制御装置又はプログラムされた装置は、炭素を含むガスの体積膨張の速度及び/又は倍率を増大又は低下させることにより、炭素を含むガスの温度変化を増大又は低減することができる。また、この制御装置又はプログラムされた装置は、捕獲された炭素含有ガス(例えば、体積膨張により冷却された)が1以上の冷却回路を通る流速を制御することにより、捕獲された炭素含有ガスにより提供される冷却の量を制御することもできる。一部の実施形態では、制御装置又はプログラムされた装置は冷却系を制御して、捕獲された炭素含有ガスを1次冷却源又は2次冷却源として使用することができる。例えば、捕獲された炭素含有ガスを用いて現存する冷却系を補足することができ、炭素捕獲に基づく冷却系を組み込むことによってその現存冷却系を大幅に小型化することができる。
【0052】
以上の説明では、最良の態様を含めて本発明を開示し、また当業者が本発明を実施し、例えばいずれかの装置又は系を作り使用し、参照した方法を実施することができるように、例を用いている。本発明の特許可能な範囲は特許請求の範囲に規定されており、当業者には明らかな他の例を含み得る。かかる他の例は、特許請求の範囲の文言通りの構造要素を有するか又は特許請求の範囲の文言と実質的に異ならない等価な構造要素を含んでいる場合、特許請求の範囲内に入るものである。
【符号の説明】
【0053】
100 統合型複合サイクル系(IGCC系)
102 燃料供給源
104 供給原料調製装置
106 ガス化器
108 スラグ
110 ガス清浄器
111 イオウ
112 イオウ処理装置
113 塩
114 水処理装置
116 炭素捕獲系
117 二酸化炭素膨張器
118 ガスタービンエンジン
120 燃焼器
122 空気分離装置
123 補助空気圧縮機
124 DGAN圧縮機
128 冷却塔
130 タービン
131 駆動軸
132 圧縮機
134 負荷
136 蒸気タービンエンジン
138 HRSG系
140 第2の負荷
142 凝縮器
150 ガス化系又はプロセス
152 空気分離装置
154 炭素質供給原料調製装置
156 シフト系
158 AGR系
160 きれいなシンガス
161 二酸化炭素
162 酸性ガス
163 冷却系又は回路
164 圧縮/精製系
166 パイプライン
168 炭素捕獲系
170 硫化水素吸収ステップ/装置
172 二酸化炭素吸収ステップ/装置
174 汚れたシンガス
176 溶剤貯蔵タンク
178 二酸化炭素回収ステップ/装置
180 冷却系
182 酸性ガス
184 きれいなシンガス
186 清浄化された溶剤
187 第1の二酸化炭素冷却ループ
188 捕獲された二酸化炭素
189 第2の冷却ループ
190 燃焼型の系
191 ガス精製及び炭素捕獲系
192 イオウ及び/又は窒素除去系
194 ボイラー
195 プラント設備
196 酸素
197 水
198 蒸気
200 イオウ/窒素富化流
210 炭素捕獲冷却系
212 化学生産系
214 部分酸化又は改質装置
216 二酸化炭素除去系
218 酸素及び/又は蒸気流
220 きれいなシンガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シンガスから炭素を含むガス(161、188)を収集するように構成された炭素捕獲系(116)及び
冷却回路内の炭素を含むガス(161、188)を含む冷却系(163)
を含んでなる系。
【請求項2】
冷却系(163)が、炭素を含むガス(161、188)の圧力及び温度を低下させるように構成されたガス膨張器(117)を含む、請求項1記載の系。
【請求項3】
炭素捕獲系(116)が、炭素を含むガス(161、188)を圧縮するように構成されたガス圧縮機(164)を含む、請求項2記載の系。
【請求項4】
ガス膨張器(117)が断熱膨張器(117)からなる、請求項2記載の系。
【請求項5】
シンガスを清浄化するように構成されたガス清浄器(110)を含む、請求項1記載の系。
【請求項6】
ガス清浄器(110)が、酸性ガス除去(AGR)装置(158)、イオウ除去装置(192)、窒素除去装置(192)、微粒子除去装置(156)、炭素含有ガス除去装置(172)又はこれらの組合せを含む、請求項5記載の系。
【請求項7】
ガス(174)から二酸化炭素(CO2)を除去するように構成されたガス清浄器(110)、
ガス清浄器(110)からCO2(161、188)を受容するように構成された炭素捕獲系(116)及び
CO2(161、188)の少なくとも一部分を膨張させて部品の冷却を提供するように構成されたCO2膨張器(117)
を含んでなる系。
【請求項8】
ガス清浄器(110)が、水性ガスシフト反応器、酸性ガス除去(AGR)系(158)、イオウ除去系(192)、窒素除去系(192)又はこれらの組合せを含む、請求項7記載の系。
【請求項9】
炭素捕獲系(116)が、CO2圧縮機(164)、CO2パイプライン(166)、CO2貯蔵タンク又はこれらの組合せを含む、請求項7記載の系。
【請求項10】
前記部品がガス清浄器(110)からなる、請求項7記載の系。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−68891(P2011−68891A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−206190(P2010−206190)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】