説明

炭素材接合体、炭素材接合体用接合材及び炭素材接合体の製造方法

【課題】新規な炭素材接合体、炭素材接合体用接合材及び炭素接合体の製造方法を提供する
【解決手段】炭素材接合体6は、第1の部材4と、第2の部材5と、接合層1とを備えている。第1の部材4は、炭素材からなる。第2の部材5は、炭素、セラミックスまたは金属からなる。接合層1は、第1の部材4と第2の部材5とを接合している。接合層1は、複数の炭素粒子2と、セラミック部3とを有する。セラミック部3は、複数の炭素粒子2間に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素材接合体、炭素材接合体用接合材及び炭素接合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
黒鉛やセラミックスは、どちらも高融点材料である。このため、黒鉛からなる部材と、黒鉛またはセラミックスからなる部材とを、融接法により接合することは困難である。また、黒鉛やセラミックスは、どちらも脆性材料である。このため、黒鉛からなる部材と、黒鉛またはセラミックスからなる部材とを、圧接法により接合することは困難である。そのため、黒鉛からなる部材と、黒鉛やセラミックスからなる部材との接合は、通常、ビスなどを用いた機械的な方法や、ろう材、接着剤などを用いた方法によってなされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂を用いて黒鉛材を接着する方法が開示されている。特許文献2には、フェノール樹脂などのカーボン系接着剤を用いて黒鉛材を接着することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−345553号公報
【特許文献2】特開2002−321987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
炭素材からなる部材と、炭素、セラミックスまたは金属からなる部材とのさらなる有力な接合方法が求められている。
【0006】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、新規な炭素材接合体、炭素材接合体用接合材及び炭素材接合体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の炭素材接合体は、第1の部材と、第2の部材と、接合層とを備えている。第1の部材は、炭素材からなる。第2の部材は、炭素、セラミックスまたは金属からなる。接合層は、第1の部材と第2の部材とを接合している。接合層は、複数の炭素粒子と、セラミック部とを有する。セラミック部は、複数の炭素粒子間に形成されている。
【0008】
なお、本発明において、「炭素材接合体」とは、互いに接合されている複数の部材を有し、複数の部材の少なくとも一つが炭素材である接合体を意味する。
【0009】
また、本発明において、「金属」には、合金が含まれるものとする。
【0010】
本発明の炭素材接合体において、接合層のセラミック部は、連続した構造を有することが好ましい。
【0011】
本発明の炭素材接合体において、セラミック部は、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ホウ素、炭化タンタル、炭化ニオブ、炭化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化ケイ素及び酸化ジルコニウムからなる群から選ばれた少なくとも一種から形成されていることが好ましい。
【0012】
本発明の第1の炭素接合材の製造方法は、炭素材からなる第1の部材と、炭素、セラミックスまたは金属からなり、第1の部材に接合された第2の部材とを備える炭素材接合体の製造方法である。本発明の第1の炭素接合材の製造方法は、第1の部材と第2の部材との間に、セラミックスが表面に付着した炭素粒子を配置して積層体を作製する積層体作製工程と、積層体を焼成する焼成工程とを備える。
【0013】
本発明の第1の炭素材接合体の製造方法では、積層体作製工程において、第1の部材と第2の部材との間に、セラミック粒子が表面に付着した炭素粒子を配置してもよい。
【0014】
本発明の第1の炭素材接合体の製造方法において、セラミック粒子として、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ホウ素、炭化タンタル、炭化ニオブ、炭化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化ケイ素及び酸化ジルコニウムからなる群から選ばれた少なくとも一種から形成されているセラミック粒子を用いることが好ましい。
【0015】
本発明の第1の炭素材接合体の製造方法では、積層体作製工程において、第1の部材と第2の部材との間に、セラミックスが表面に付着した炭素粒子と樹脂との混合物を配置してもよい。この場合、樹脂として熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。
【0016】
本発明の第1の炭素材接合体の製造方法において、積層体作製工程では、第1の部材と第2の部材との間に、複数の炭素粒子と、炭素粒子を覆っており、かつ複数の炭素粒子を接続しているセラミック部を有するセラミックス−炭素複合体層とを配置してもよい。
【0017】
本発明の炭素材接合体用接合材は、炭素材と、炭素、セラミックスまたは金属からなる部材との接合に用いられる接合材である。本発明の炭素材接合体用接合材は、セラミックスが表面に付着した複数の炭素粒子を含む。
【0018】
本発明の炭素材接合体用接合材において、炭素粒子の表面には、セラミック粒子が付着していてもよい。
【0019】
本発明の炭素材接合体用接合材は、樹脂を含むことが好ましい。樹脂は、熱可塑性樹脂であることが好ましい。
【0020】
本発明の炭素材接合体用接合材において、炭素粒子の表面に付着したセラミックスは、炭素粒子を覆っており、かつ複数の炭素粒子を接続していてもよい。
【0021】
本発明の炭素材接合体用接合材は、シート状であってもよい。
【0022】
本発明の第2の炭素接合体の製造方法は、炭素材からなる第1の部材と、炭素、セラミックスまたは金属からなり、第1の部材に接合された第2の部材とを備える炭素材接合体の製造方法である。本発明の第2の炭素接合体の製造方法は、第1の部材の上に第2の部材と樹脂との混合物を配置して作製した積層体を焼成する工程を備える。
【0023】
本発明の第2の炭素接合体の製造方法において、第2の部材は粉体であってもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、新規な炭素材接合体、炭素材接合体用接合材及び炭素接合体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1の実施形態に係る炭素材接合体の略図的断面図である。
【図2】第1の実施形態における積層体の略図的断面図である。
【図3】第2の実施形態における積層体の略図的断面図である。
【図4】第2の実施形態において作製される炭素材接合体の略図的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を実施した好ましい形態の一例について説明する。但し、下記の実施形態は、単なる例示である。本発明は、下記の実施形態に何ら限定されない。
【0027】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る炭素材接合体の略図的断面図である。図1に示すように、炭素材接合体6は、第1の部材4と、第2の部材5とを有する。炭素材接合体6は、第1の部材4と第2の部材5との接合体である。
【0028】
(第1の部材4)
第1の部材4は、炭素材からなる。炭素材は、炭素を主成分とする材料である。炭素材は、炭素以外の成分を含んでいてもよい。炭素材の具体例としては、黒鉛化前の炭素質材、等方性黒鉛材、押出材や型押材等の異方性黒鉛材、炭素繊維複合材などが挙げられる。炭素材の熱膨張係数は、0.5〜10−6/K〜9.0〜10−6/Kの範囲内であることが好ましい。
【0029】
(第2の部材5)
第2の部材5は、炭素、セラミックスまたは金属からなる。
【0030】
第2の部材5の構成材料として好ましく用いられる炭素としては、上記第1の部材4と同様のものが挙げられる。
【0031】
第2の部材5の構成材料として好ましく用いられるセラミックスとしては、例えば、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ホウ素、炭化タンタル、炭化ニオブ、炭化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化ケイ素、酸化ジルコニウムなどが挙げられる。第2の部材5のセラミックスの組成は、均一であってもよいし、不均一であってもよい。例えば、第2の部材5を構成するセラミックスが接合層1と接する界面付近の組成は、接合層1のセラミック部と近い組成であってもよい。
【0032】
第2の部材5の構成材料として好ましく用いられる金属としては、例えば、Al、Cu、Ag、Ni、Fe、Cr、W、Ti、Mo、Au、Ptなどが挙げられる。
【0033】
図1では、模式的に、第2の部材5を直方体状に描画している。しかしながら、第2の部材5の形状は特に限定されない。第2の部材5は、図1に記載されているようにブロック状であってもよいし、例えば、粒子状、柱状、繊維状等であってもよい。第2の部材5が粒子状である場合は、第2の部材5の粒子径は、例えば、50nm〜500μm程度とすることができる。
【0034】
(接合層1)
第1の部材4と第2の部材5との間には、接合層1が配されている。この接合層1によって、第1の部材4と第2の部材5とが接合されている。
【0035】
接合層1は、複数の炭素粒子2と、セラミック部3とを備えている。
【0036】
炭素粒子2としては、例えば有機化合物(合成または天然有機化合物)を焼成したもの、メソカーボン小球体焼成品、樹脂焼成品、石油系コークス、石炭系コークス、天然黒鉛または人造黒鉛等の黒鉛構造を有するものなどの黒鉛粒子が挙げられる。この中でも好ましいものとしては、黒鉛粒子が挙げられ、例えば球晶黒鉛や球状天然黒鉛などがより好ましく用いられる。炭素粒子の粒子径は、50nm〜500μm程度であることが好ましく、1μm〜250μm程度であることがより好ましく、5μm〜100μm程度であることがさらに好ましい。炭素粒子2の粒子径が小さすぎると、炭素粒子2が凝集しやすい。炭素粒子2が凝集しすぎると、強度は低下する。一方、炭素粒子2の粒子径が大きすぎると、空隙が大きくなる場合があり、その場合でも応力集中により強度が低下する。複数の炭素粒子2は、1種類の炭素粒子のみを含んでいてもよいし、複数種類の炭素粒子を含んでいてもよい。
【0037】
セラミック部3は、複数の炭素粒子2の間に位置している。セラミック部3は、連続した構造を有する。このため、複数の炭素粒子2は、セラミック部3によって一体化されている。セラミック部3は、3次元網目構造を有することが好ましい。接合層1において、セラミック部3中に炭素粒子2が分散していることが好ましい。なお、セラミック部3中に炭素粒子2が塊状となって分散していてもよい。
【0038】
なお、セラミック部3は、連続したひとつのセラミック部により構成されていてもよいし、孤立した複数のセラミック部により構成されていてもよい。
【0039】
セラミック部3を構成するセラミックスは、特に限定されない。セラミック部を構成するセラミックスの具体例としては、例えば窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ホウ素、炭化タンタル、炭化ニオブ、炭化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化ケイ素、酸化ジルコニウムなどが挙げられる。セラミック部3は、1種類のセラミックスのみから構成されていてもよいし、複数種類のセラミックスから構成されていてもよい。また、セラミック部3が、複数種類のセラミックスから構成されている場合、その組成は、均一であってもよいし、不均一であってもよい。
【0040】
以上のように、炭素材接合体6は、接合層1に複数の炭素粒子2と、セラミック部3とを含んでいる。よって、接合層1は、炭素、セラミックス、金属との親和性が高い。従って、接合層1と、炭素材からなる第1の部材4との間の密着強度が高く、且つ接合層1と、炭素、セラミックスまたは金属からなる第2の部材5との間の密着強度が高い。その結果、第1の部材4と第2の部材5との間の密着強度も高くなる。すなわち、炭素材接合体6では、炭素材からなる第1の部材4と、炭素、セラミックスまたは金属からなる第2の部材5とが高い接合強度で接合されている。
【0041】
第1の部材4と第2の部材5とのより高い接合強度を得る観点からは、第2の部材5がセラミックスからなる場合は、第2の部材5の接合層1側の界面付近の組成が、接合層1のセラミック部3の組成と近いことが好ましい。また、第2の部材5の接合層1側の界面付近の組成と、接合層1のセラミック部3の組成とが、互いに固溶する組成であること、または互いに化学反応を起こしやすい組成であることが好ましい。
【0042】
接合層1は、炭素粒子2とセラミック部3とを有するため、炭素粒子2やセラミック部3の構成材料等を調整することにより、接合層1の熱膨張係数を、第1の部材4の熱膨張係数や第2の部材5の熱膨張係数と近くすることができる。よって、第1の部材4と接合層1との剥離、第2の部材5と接合層1との剥離を効果的に抑制することができる。
【0043】
また、接合層1は、炭素粒子2とセラミック部3とを有するため、炭素粒子2やセラミック部3の構成材料等を調整したり、炭素粒子2とセラミック部3との比率を調整することにより、接合層1の熱伝導率を調整することができる。
【0044】
本実施形態の炭素材接合体6は、上述のような優れた特性を有するため、放熱基板、構造部材などとして好ましく使用することができる。
【0045】
以下、炭素材接合体6の製造方法の一例について説明する。
【0046】
(積層体作製工程)
まず、積層体作製工程を行う。積層体作製工程では、第1の部材4と第2の部材5との間に、セラミックスが表面に付着した複数の炭素粒子2(図2においては図示せず)を含む炭素材接合体用接合材7を配置し、図2に示す積層体8を作製する。
【0047】
ここで、炭素粒子2の表面に付着したセラミックスは、セラミック部3を構成するためのものである。このため、炭素粒子2の表面に付着したセラミックスの種類は、形成しようとするセラミック部3の種類に応じて適宜選択することができる。接合材7に含まれるセラミックスの組成は、均一であってもよいし、不均一であってもよい。接合材7に含まれるセラミックスと第2の部材5のセラミックスの組成は、同一であってもよいし、同一でなくてもよい。
【0048】
セラミックスの形状は特に限定されない。例えば、炭素粒子2の表面にセラミック粒子を付着させてもよい。その場合は、セラミック粒子の粒子径は、炭素粒子の粒子径の1/100〜1/5の範囲内であることが好ましい。この場合、炭素粒子の表面の実質的に全体をセラミック粒子で覆うことが可能となる。セラミック粒子の粒子径は、炭素粒子の粒子径の1/50〜1/10の範囲内であることがより好ましく、1/40〜1/20の範囲内であることがさらに好ましい。
【0049】
また、炭素粒子2の表面に100nm〜20μm程度の厚みのセラミック層を形成してもよい。その場合、表面上にセラミック層が形成された複数の炭素粒子2は、それぞれ粒子状であってもよいし、セラミック層により一体にされていてもよい。すなわち、セラミック層によりコーティングされた複数の炭素粒子2を第1の部材4と第2の部材5との間に配置してもよいし、接合層1と実質的に同じ形態を有する接合材7を配してもよい。換言すれば、接合材7は、複数の炭素粒子2と、炭素粒子2を覆っており、かつ複数の炭素粒子2を接続しているセラミック部3とを有するセラミック−炭素複合体により構成することもできる。
【0050】
セラミックスが表面に付着した炭素粒子は、例えば、気相法、液相法、ミキサー等を用いてセラミックスと炭素粒子とを混合する機械的混合方法、スラリー法またはこれらを組み合わせた方法により作製することができる。気相法の具体例としては、化学気相蒸着法(CVD法)、化学気相反応法(CVR法)などが挙げられる。液相法の具体例としては、例えば、共沈法、ゾル・ゲル法等が挙げられる。スラリー法の具体例としては、例えばゲルキャスト法、テープキャスティング法などが挙げられる。
【0051】
接合層1と実質的に同じ形態を有する接合材7は、上述の方法等により作製した、セラミックスが表面に付着した炭素粒子を焼成することにより作製することができる。
【0052】
セラミックスが表面に付着した炭素粒子が粉体である場合は、接合材7を、セラミックスが表面に付着した炭素粒子を樹脂との混合物により構成することが好ましい。この場合、接合材7の取り扱いが容易となる。また、接合材7の形状を自由に調整することができる。例えば、接合材7をシート状にすることができる。接合材7が樹脂を含むことにより、接合材7が炭素粒子の細孔内に侵入することができる。接合材7が炭素粒子の細孔内に侵入することにより、第1の部材4と第2の部材5との接合強度を高めることができる。樹脂としては、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を用いることができる。樹脂は、熱可塑性樹脂であることが好ましい。具体的には、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等の樹脂が好ましく用いられる。
【0053】
(焼成工程)
次に、積層体8を焼成する。これにより、炭素材からなる第1の部材4と、炭素、セラミックスまたは金属からなる第2の部材5とを、ろう材などを用いることなく、接合層1によって好適に接合することができる。また、ボルト等による機械的な接合では接合できないような形状の第1及び第2の部材4,5を接合することも可能である。
【0054】
また、本実施形態の接合方法では、第1の部材4と第2の部材5とを高い接合強度で接合させることができる。また、第1の部材4と第2の部材5との剥離が生じ難い炭素材接合体6を得ることができる。また、第1の部材4と第2の部材5との間の熱伝導率を高くすることができる。
【0055】
なお、積層体の焼成温度や焼成時間、焼成雰囲気の種類、荷重圧等は、使用する材料の種類、形状、大きさ等に応じて適宜設定することができる。積層体の焼成温度は、例えば、1000℃〜2000℃程度とすることができる。積層体の焼成時間は、例えば、5分間〜1日間程度とすることができる。焼成雰囲気の種類は、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガス雰囲気や真空中とすることができる。荷重圧は、例えば、0MPa〜40MPa程度とすることができる。
【0056】
以下、本発明の好ましい実施形態の他の例について説明する。以下の説明において、第1の実施形態と実質的に共通の機能を有する部材を共通の符号で参照し、説明を省略する。
【0057】
(第2の実施形態)
図3は、第2の実施形態における積層体の略図的断面図である。以下、図3を参照しながら、本実施形態における第1の部材4と第2の部材5との接合方法について説明する。
【0058】
本実施形態では、第2の部材5は粒子状である。本実施形態では、第1の部材4の上に、粒子状の第2の部材5と樹脂9との混合物を配置することにより、樹脂9中に第2の部材5が分散した樹脂層10を形成する。
【0059】
樹脂層10の形成は、例えば、テープキャスティング法等により行うことができる。
【0060】
次に、第1の部材4と樹脂層10との積層体11の焼成を行う。これにより、図4に示す、第1の部材4の表面に焼成された第2の部材5が接合した炭素材接合体12が得られる。
【0061】
本実施形態の炭素材接合体12の製造方法では、第1の部材4と第2の部材5とを高い接合強度で接合することができる。
【0062】
なお、焼成条件については、上記第1の実施形態と同様に、使用する材料の種類、形状、大きさ等に応じて適宜設定することができる。
【0063】
以下、本発明について、具体的な実施例に基づいて、さらに詳細に説明する。本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能である。
【0064】
(実施例1)
かさ密度が1.8Mg/m、曲げ強度が40MPa、線熱膨張係数が4.7×10−6/Kの等方性黒鉛材を用意した。この等方性黒鉛材を第1の部材4として用いた。
【0065】
次に、平均粒子径26μmの球晶黒鉛と窒化アルミニウム粉末(株式会社トクヤマ製のグレードH、平均粒子径0.6μm、比表面積2.7m/g)を体積比(球晶黒鉛の体積:窒化アルミニウム粉末の体積)が80:20となるように混合した。得られた混合物13.74gに、分散剤としてリン酸2−ヘチルヘキシル0.83gと、溶媒として2−ブタノン・エタノール混合物(体積割合66:34)10 gと、バインダーとしてポリビニルブチラール2.5gと、可塑剤としてポリエチレングリコール・フタル酸ベンジルブチルアルコール混合物(質量割合50:50)1.15gとを添加して混合物を調製した。得られた混合物を自転・公転ミキサーで撹拌し、スラリーを得た。得られたスラリーをドクターブレード法でシート状に成形し、室温で乾燥して厚さ150μmの黒鉛・窒化アルミニウムテープを得た。この黒鉛・窒化アルミニウムテープを接合材7として用いた。
【0066】
次に、窒化アルミニウム粉末(株式会社トクヤマ製のグレードH、平均粒子径0.6μm、比表面積2.7m/g)20gに、分散剤としてリン酸2−ヘチルヘキシル0.26gと、溶媒として2−ブタノン・エタノール混合物(体積割合66:34)10.9gと、バインダーとしてポリビニルブチラール2.18gと、可塑剤としてポリエチレングリコール・フタル酸ベンジルブチルアルコール混合物(質量割合50:50)2.97gとを添加して混合物を調製した。得られた混合物を自転・公転ミキサーで撹拌し、スラリーを得た。得られたスラリーをドクターブレード法でシート状に成形し、室温で乾燥して厚さ140μmの窒化アルミニウム粒子が分散してなる窒化アルミニウムテープを得た。この窒化アルミニウムテープを第2の部材5として用いた。
【0067】
次に、等方性黒鉛材からなる第1の部材4の上に、黒鉛・窒化アルミニウムテープからなる接合材7と、窒化アルミニウムテープからなる第2の部材5を順に配置し、積層体8を作製した。
【0068】
次に、積層体8を、放電プラズマ焼結法により、30MPaの圧力下、真空中、1900℃で5分間保持した。この結果、等方性黒鉛材からなる第1の部材4と、窒化アルミニウムからなる第2の部材5とが、複数の炭素粒子2とセラミック部3とを含む接合層1により接合された炭素材接合体が得られた。
【0069】
実施例1で作製した炭素材接合体の剥離状態の観察、3点曲げ試験を、それぞれ以下の要領で行った。結果を、3点曲げ強さ及びかさ密度と共に下記の表1に示す。
【0070】
〔剥離状態の観察〕
目視により、調製後の第1の部材4と第2の部材5の接合の様子を観察した。
【0071】
〔3点曲げ試験〕
等方性黒鉛の寸法を幅1.6mm×厚さ1.6mm×長さ20mm、支点間距離を15mm、クロスヘッド下降速度を0.5mm/minとした以外はJIS R7222に準拠して測定した。
【0072】
(実施例2)
窒化アルミニウムテープの代わりに、厚さ1mmのAlN板を第2の部材5として使用し、放電プラズマ焼結法による焼結温度を1700℃としたこと以外は、実施例1と同様にして、炭素材接合体を作製した。
【0073】
次に、実施例2で作製した炭素材接合体の剥離状態の観察、3点曲げ試験を、実施例1と同様にして行った。結果を、3点曲げ強さ及びかさ密度と共に下記の表1に示す。
【0074】
(実施例3)
窒化アルミニウムテープの代わりに、厚さ1mmのSiC板を第2の部材5として使用し、放電プラズマ焼結法による焼結温度を1700℃としたこと以外は、実施例1と同様にして、炭素材接合体を得た。
【0075】
次に、実施例3で作製した炭素材接合体の剥離状態の観察、3点曲げ試験を、実施例1と同様にして行った。結果を、3点曲げ強さ及びかさ密度と共に下記の表1に示す。
【0076】
(実施例4)
かさ密度が1.8Mg/m、曲げ強度が40MPa、線熱膨張係数が4.7×10−6/Kの等方性黒鉛材を用意した。この等方性黒鉛材を第1の部材4として用いた。
【0077】
その第1の部材4の上に、実施例1と同様にして作製した窒化アルミニウムテープからなるセラミック層を配置し、積層体11を作製した。
【0078】
次に、積層体11を、放電プラズマ焼結法により、30MPaの圧力下、真空中、1900℃で5分間保持した。この結果、等方性黒鉛材からなる第1の部材4と、窒化アルミニウムからなる粒子状の第2の部材5とが、直接接合している炭素材接合体が得られた。
【0079】
次に、実施例4で作製した炭素材接合体の剥離状態の観察、3点曲げ強さを、実施例1と同様にして行った。結果を、3点曲げ強さ及びかさ密度と共に下記の表1に示す。
【0080】
(比較例1)
実施例1と同様に、かさ密度が1.8Mg/m、3点曲げ強さが40MPa、線熱膨張係数が4.7×10−6/Kの等方性黒鉛材を第1の部材4として用いた。
【0081】
その第1の部材4の上に、実施例1において窒化アルミニウムテープの作製に用いたものと同様の窒化アルミニウム粉末(1.5g)を配置し、その状態で、実施例1と同様の放電プラズマ焼結法による焼結を行ったが、黒鉛と窒化アルミニウムの接合は認められなかった。
【0082】
(比較例2)
実施例1と同様に、かさ密度が1.8Mg/m、曲げ強度が40MPa、線熱膨張係数が4.7×10−6/Kの等方性黒鉛材を第1の部材4として用いた。
【0083】
その第1の部材4の上に、窒化アルミニウム板(厚さ1mm)を配置し、その状態で、実施例1と同様の放電プラズマ焼結法による焼結を行ったが、黒鉛と窒化アルミニウムの接合は認められなかった。
【0084】
【表1】

【符号の説明】
【0085】
1…接合層
2…炭素粒子
3…セラミック部
4…第1の部材
5…第2の部材
6…炭素材接合体
7…接合材
8…積層体
9…樹脂
10…樹脂層
11…積層体
12…炭素材接合体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素材からなる第1の部材と、
炭素、セラミックスまたは金属からなる第2の部材と、
前記第1の部材と前記第2の部材とを接合している接合層と、
を備え、
前記接合層は、複数の炭素粒子と、前記複数の炭素粒子間に形成されているセラミック部とを含む、
炭素材接合体。
【請求項2】
前記セラミック部は、連続した構造を有する請求項1に記載の炭素材接合体。
【請求項3】
前記セラミック部は、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ホウ素、炭化タンタル、炭化ニオブ、炭化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化ケイ素及び酸化ジルコニウムからなる群から選ばれた少なくとも一種から形成されている請求項1または2に記載の炭素材接合体。
【請求項4】
炭素材からなる第1の部材と、炭素、セラミックスまたは金属からなり、前記第1の部材に接合された第2の部材とを備える炭素材接合体の製造方法であって、
前記第1の部材と前記第2の部材との間に、セラミックスが表面に付着した炭素粒子を配置して積層体を作製する積層体作製工程と、
前記積層体を焼成する焼成工程と、
を備える炭素材接合体の製造方法。
【請求項5】
前記積層体作製工程において、前記第1の部材と前記第2の部材との間に、セラミック粒子が表面に付着した炭素粒子を配置する、請求項4に記載の炭素材接合体の製造方法。
【請求項6】
前記セラミック粒子として、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ホウ素、炭化タンタル、炭化ニオブ、炭化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化ケイ素及び酸化ジルコニウムからなる群から選ばれた少なくとも一種から形成されているセラミック粒子を用いる請求項5に記載の炭素材接合体の製造方法。
【請求項7】
前記積層体作製工程において、前記第1の部材と前記第2の部材との間に、前記セラミックスが表面に付着した炭素粒子と樹脂との混合物を配置する請求項4〜6のいずれか一項に記載の炭素材接合体の製造方法。
【請求項8】
前記樹脂として熱可塑性樹脂を用いる請求項7に記載の炭素材接合体の製造方法。
【請求項9】
前記積層体作製工程において、前記第1の部材と前記第2の部材との間に、複数の炭素粒子と、前記炭素粒子を覆っており、かつ前記複数の炭素粒子を接続しているセラミック部とを有するセラミックス−炭素複合体層を配置する請求項4に記載の炭素材接合体の製造方法。
【請求項10】
炭素材と、炭素、セラミックスまたは金属からなる部材との接合に用いられる接合材であって、
セラミックスが表面に付着した複数の炭素粒子を含む炭素材接合体用接合材。
【請求項11】
前記炭素粒子の表面には、セラミック粒子が付着している請求項10に記載の炭素材接合体用接合材。
【請求項12】
樹脂をさらに含む請求項10または11に記載の炭素材接合体用接合材。
【請求項13】
前記樹脂は、熱可塑性樹脂である請求項12に記載の炭素材接合体用接合材。
【請求項14】
前記炭素粒子の表面に付着した前記セラミックスは、前記炭素粒子を覆っており、かつ前記複数の炭素粒子を接続している請求項10に記載の炭素材接合体用接合材。
【請求項15】
シート状である請求項10〜14のいずれか一項に記載の炭素材接合体用接合材。
【請求項16】
炭素材からなる第1の部材と、炭素、セラミックスまたは金属からなり、前記第1の部材に接合された第2の部材とを備える炭素材接合体の製造方法であって、
前記第1の部材の上に、前記第2の部材と樹脂との混合物を配置して作製した積層体を焼成する工程
を備える炭素材接合体の製造方法。
【請求項17】
前記第2の部材は、粉体である、請求項16に記載の炭素材接合体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−246173(P2012−246173A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−118582(P2011−118582)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(000222842)東洋炭素株式会社 (198)
【Fターム(参考)】