説明

炭素繊維多重織布及びその製造方法並びにシート状燃料電池

【課題】軽量で且つ曲折可能であって、曲折に対して高い耐久性を有する集電層としての炭素繊維多重織布を用いたシート状燃料電池を提供する。
【解決手段】シート状燃料電池の集電層には、炭素繊維緯糸14,14を互いに接触するように電気絶縁性経糸を配した二枚の炭素繊維織布12a,12bを、炭素繊維緯糸14に平行に配した導電部18と前記電気絶縁性経糸とによって一体化した炭素繊維多重織布を用い、前記炭素繊維多重織布の導電部18で仕切った複数の仕切部の各々に、酸素極と燃料極との間に電解質層を形成した電解質膜22を、前記酸素極が同一方向に向くように装着して単一燃料電池10a,10b,10cを形成し、且つ隣接する単一燃料電池10a,10bを直列に接続するように、炭素繊維織布12a,12bの各々の導電部18の近傍に電気絶縁部24を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素繊維多重織布及びその製造方法、前記炭素繊維多重織布を集電層に用いたシート状燃料電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やノート型のパーソナルコンピュータの電源として、ジャンパー等に着用できるウェアラブルな燃料電池が、例えば下記特許文献1に開示されている。かかる燃料電池は、略平板状に形成された筐内にアノード(燃料極)、固体高分子電解質膜及びカソード(酸素極)が配設された単一燃料電池を複数平面状に並べ、各単一燃料電池の両極に配設された集電体から伸びるリード部を直列に接続し、着衣や装身具に着用可能としたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−116292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述したウェアラブルな燃料電池によれば、着衣等に装着した燃料電池の電力を利用して携帯電話やノート型のパーソナルコンピュータを駆動することができる。しかしながら、複数の単一燃料電池を直列に接続するリード部は、着衣等の動きに伴って何回も曲折されて破断されるおそれがある。また、最近、検討されている介護ロボットやパワースーツの電源として用いることのできる燃料電池としては、軽量で且つ曲折可能であって、曲折に対して高い耐久性を有する燃料電池が必要である。
【0005】
この様に、軽量で且つ曲折可能であって、曲折に対して高い耐久性を有する燃料電池には、燃料電池の両極側に配設される集電体も、軽量で且つ曲折可能であって、曲折に対して高い耐久性を有することが必要である。
【0006】
本発明は前記の課題を解決するためになされたものであって、軽量で且つ曲折可能であり、曲折に対して高い耐久性を有する集電層として用いることのできる、大面積で連続的に一体形成可能な炭素繊維多重織布及びこの製造方法、かかる炭素繊維多重織布を用いたシート状燃料電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するためになされた、特許請求の範囲の請求項1に記載された炭素繊維多重織布は、複数の単一燃料電池が電気的に直列に接続されたシート状燃料電池の集電層に用いられる織布が、緯糸としての炭素繊維糸条が互いに接触するように、経糸としての電気絶縁性糸条が所定間隔で配された二枚の炭素繊維織布が、所定間隔で前記炭素繊維糸条に平行に配された導電部と前記経糸とによって一体化されている炭素繊維多重織布であって、前記導電部で仕切られた複数の仕切部の各々は、電解質層に酸素含有ガスが供給される酸素極と燃料が供給される燃料極とが対向して形成された電解質膜が、前記酸素極が同一方向に向くように装着されて単一燃料電池が形成される装着部であり、且つ複数の前記単一燃料電池が形成されたとき、隣接する前記単一燃料電池同士が、その単一燃料電池の一方の酸素極に接触する前記炭素繊維織布の一方と、他方の前記単一燃料電池の燃料極に接触する他方の前記炭素繊維織布とを介して直列に接続されるように、前記炭素繊維織布の各々の所定箇所に電気絶縁部が形成されていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載された炭素繊維多重織布は、請求項1に記載されたものであって、前記導電部が、炭素繊維糸条又は導電性テープ糸によって形成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載された炭素繊維多重織布は、請求項1に記載されたものであって、前記電気絶縁部が、電気絶縁糸又は電気絶縁テープ糸であって、前記導電部近傍に形成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載された炭素繊維多重織布は、請求項1に記載されたものであって、前記経糸が、二本の緯糸が接触状態で拘束されるように所定間隔で配されていることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載された炭素繊維多重織布の製造方法は、緯糸としての炭素繊維糸条を互いに接触するように、経糸としての電気絶縁性糸条を所定間隔で配設した二枚の炭素繊維織布を所定長製織した後、前記二枚の炭素繊維織布を所定間隔で前記炭素繊維糸条に平行に配した導電部と前記経糸とによって一体化しつつ、前記導電部で仕切った複数の仕切部を形成し、その際に、前記仕切部の各々に、電解質層の表面に酸素含有ガスが供給される酸素極と燃料が供給される燃料極とが対向して形成された電解質膜を、前記酸素極が同一方向に向くように装着して複数の単一燃料電池を形成したとき、隣接する前記単一燃料電池同士を、その単一燃料電池の一方の酸素極に接触する前記炭素繊維織布の一方と、他方の前記単一燃料電池の燃料極に接触する他方の前記炭素繊維織布とを介して直列に接続すべく、前記炭素繊維織布の各々の所定箇所に電気絶縁部を形成することを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載された炭素繊維多重織布の製造方法は、請求項5に記載されたものであって、前記炭素繊維織布を、ジャカート織機を用いて製織することを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載された炭素繊維多重織布の製造方法は、請求項5に記載されたものであって、前記導電部を、炭素繊維糸条又は導電性テープ糸によって形成することを特徴とする。
【0014】
請求項8に記載された炭素繊維多重織布の製造方法は、請求項5に記載されたものであって、前記電気絶縁部を、電気絶縁糸又は電気絶縁テープ糸であって、前記導電部近傍に形成することを特徴とする。
【0015】
請求項9に記載された炭素繊維多重織布の製造方法は、請求項5に記載されたものであって、前記経糸を、二本の緯糸を接触状態で拘束するように所定間隔で配していることを特徴とする。
【0016】
請求項10に記載されたシート状燃料電池は、複数の単一燃料電池が電気的に直列に接続されたシート状燃料電池であって、前記燃料電池の集電層には、緯糸としての炭素繊維糸条が互いに接触するように、経糸としての電気絶縁性糸条が所定間隔で配された二枚の炭素繊維織布が、所定間隔で前記炭素繊維糸条に平行に配された導電部と前記経糸とによって一体化されている炭素繊維多重織布が用いられ、前記炭素繊維多重織布の前記導電部で仕切られた複数の仕切部の各々に、電解質層に酸素含有ガスが供給される酸素極と燃料が供給される燃料極とが対向して形成された電解質膜が、前記酸素極が同一方向に向くように装着されて単一燃料電池が形成されており、且つ隣接する前記単一燃料電池同士が、その単一燃料電池の一方の酸素極に接触する前記炭素繊維織布の一方と、他方の前記単一燃料電池の燃料極に接触する他方の前記炭素繊維織布とを介して直列に接続されるように、前記炭素繊維織布の各々の所定箇所に電気絶縁部が形成されていることを特徴とする。
【0017】
請求項11に記載されたシート状燃料電池は、請求項10に記載されたものであって、前記単一燃料電池が、緯糸としての炭素繊維糸条を互いに接触するように、経糸としての電気絶縁性糸条を所定間隔で配設した二枚の炭素繊維織布を所定長製織した後、前記二枚の炭素繊維織布を所定間隔で前記炭素繊維糸条に平行に配した導電部と前記縦糸とによって一体化しつつ、前記導電部で仕切って仕切部を形成する際に、前記仕切部を形成する部分に、前記電解質膜を緯糸として引き込んだ後、前記導電部及び電気絶縁性糸条を緯糸として引き込んで形成した単一燃料電池であることを特徴とする。
【0018】
請求項12に記載されたシート状燃料電池は、請求項10に記載されたものであって、前記導電部が、炭素繊維糸条又は導電性テープ糸によって形成されていることを特徴とする。
【0019】
請求項13に記載されたシート状燃料電池は、請求項10に記載されたものであって、前記電気絶縁部が、電気絶縁糸又は電気絶縁テープ糸であって、前記導電部近傍に形成されていることを特徴とする。
【0020】
請求項14に記載されたシート状燃料電池は、請求項10に記載されたものであって、前記経糸が、二本の緯糸が接触状態で拘束されるように所定間隔で配されていることを特徴とする。
【0021】
請求項15に記載されたシート状燃料電池は、請求項10に記載されたものであって、電解質膜の燃料極側に、ゼリー状のメタノールが配されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る炭素繊維多重織布に形成された複数の装着部の各々に、電解質膜を酸素極が同一方向に向くように装着することによって単一燃料電池を形成できる。このため、形成された複数の単一燃料電池が炭素繊維織布によって直列に接続された本発明に係るシート状燃料電池は、可撓性を向上でき、且つ繰り返しの曲折に対する耐久性を向上できる。従って、本発明に係るシート状燃料電池は、その酸素極が常に空気と接触できるように外側に向けて着衣等に装着でき、且つ出力電圧を単一燃料電池の合計電圧とすることができる。その結果、本発明に係るシート状燃料電池は、携帯電話やノート型のパーソナルコンピュータの電源としては勿論のこと、介護ロボットやパワースーツの電源として用いることが可能である。また、本発明に係るシート状燃料電池は、カーテン、アコーディオンカーテン或いはテント等としても使用可能である、大面積で且つ可撓性を呈するシート状電池に形成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係るシート状燃料電池の一例を説明する縦断面図である。
【図2】図1に示すシート状燃料電池を構成する炭素繊維織布12aを説明する正面図である。
【図3】図1に示すシート状燃料電池を構成する炭素繊維多重織物の導電部近傍の構造を説明する説明図である。
【図4】図1に示すシート状燃料電池に用いられる電解質膜22を説明する断面図である。
【図5】ジャカート織機の概要を説明する説明図である。
【図6】ジャカート織機において、電気絶縁経糸20a,20bの引き揃い状態を説明する説明図である。
【図7】電気絶縁経糸20a,20bに形成される杼口と炭素繊維織布12a,12bとの関係を説明する説明図である。
【図8】高分子フィルム30の端部と炭素繊維織布12bとの接着状態を説明する部分断面図である。
【図9】図8に示す高分子フィルム30の端部と炭素繊維織布12bとの接着状態を改善した状態を説明する部分断面図である。
【図10】本発明に係るシート状燃料電池の他の例を説明する部分断面図である。
【図11】本発明に係るシート状燃料電池の他の例を説明する部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明に係るシート状燃料電池の一例を図1及び図2に示す。図1はシート状燃料電池10の断面図であり、図2はシート状燃料電池10の上面側(酸素極側、+極側)から見える炭素繊維織布12aの状態を示す。かかるシート状燃料電池10は、その断面図(図1)に示す様に、複数の単一燃料電池10a,10b,10cが電気的に直列に接続されている。このシート状燃料電池10では、集電層として、炭素繊維多重織布が用いられている。かかる炭素繊維多重織布は、図1に示す様に、二枚の炭素繊維織布12a,12bから構成されている。炭素繊維織布12aは、図1及び図2に示す様に、緯糸と経糸とから形成される。緯糸としては、炭素繊維糸条14,14・・(以下、炭素繊維緯糸14,14・・と称することがある)及び電気絶縁糸24a,24a・・(以下、電気絶縁緯糸24a,24a・・と称することがある)が用いられている。また、経糸としては、電気絶縁性糸条20a,20a・・(以下、電気絶縁経糸20a,20a・・と称することがある)が用いられている。電気絶縁緯糸24a,24a・・から構成される部分は、電気絶縁部24である。更に、電気絶縁経糸20a,20a・・は、二本の緯糸(炭素繊維緯条14,14同士、炭素繊維緯糸14と電気絶縁緯糸24a、電気絶縁緯糸24a,24a同士)が互いに接触状態で拘束されるように所定間隔で配されている。図2に示す炭素繊維織布12aは、電気絶縁経糸20a,20a・・が斜目に浮き出す斜文織である。
【0025】
かかる炭素繊維織布12aと対応する炭素繊維織布12bは、図2に示す炭素繊維織布12aと略同様な糸使いであり、その一部分を図3に示す。図3に示す様に、炭素繊維織布12bは、炭素繊維緯糸14,14・・と電気絶縁緯糸24a,24a・・と経糸としての電気絶縁性糸条20b,20b・・(以下、電気絶縁経糸20b,20b・・と称することがある)とから形成される。電気絶縁緯糸24a,24a・・から構成される部分は、電気絶縁部24である。また、電気絶縁経糸20b,20b・・は、二本の緯糸(炭素繊維緯条14,14同士、炭素繊維緯糸14と電気絶縁緯糸24a、電気絶縁緯糸24a,24a同士)が互いに接触状態で拘束されるように所定間隔で配されている。炭素繊維織布12bも、斜文織である。尚、図1及び図2において、炭素繊維緯糸14と電気絶縁緯糸24aとを区別するため、炭素繊維緯糸14をハッチングで示し、電気絶縁緯糸24aを白抜で示した。
【0026】
この二枚の炭素繊維織布12a,12bは、導電部18,18及びその近傍の構造を説明する説明図である図3に示す様に、所定間隔で炭素繊維糸条14に平行に配設された二本の炭素繊維緯糸18a,18aから成る導電部18,18と電気絶縁経糸20a,20bとによって一体化されている。ここで用いる炭素繊維緯糸14や炭素繊維緯糸18aとしては、PAN系炭素繊維から成る糸であってもよく、ピッチ系炭素繊維から成る糸であってもよい。尚、炭素繊維緯糸18aも、電気絶縁緯糸24aと区別すべく、ハッチングで示すと共に、炭素繊維緯糸14とも区別すべく、ハッチングの向きを変更している。
【0027】
二枚の炭素繊維織布12a,12bを一体化する導電部18,18では、図3(a)に示す様に、炭素繊維織布12aに用いられた電気絶縁経糸20a,20a・・と、炭素繊維織布12bに用いられた電気絶縁経糸20b,20b・・とが、導電部18を構成する炭素繊維緯糸18a,18aの各々と交差している。また、図3(b)に示す様に、炭素繊維織布12a,12bに用いられた電気絶縁経糸20a,20a・・と電気絶縁経糸20b,20b・・とは、導電部18の二本の炭素繊維緯糸18a,18aを互いに接触状態で拘束するように交差している。かかる図3(a)に示す構造と図3(b)に示す構造とは、電気絶縁経糸20a,20a・・(電気絶縁経糸20b,20b・・)の各々の長手方向に形成された導電部18,18で交互に出現する。また、導電部18,18の各幅方向にも、図3(a)に示す構造と図3(b)に示す構造とが交互に出現する。尚、ここで言う「糸条」又は「糸」とは、複数本の単繊維が糸状に集合された状態、或いはテープ状体が糸状に形成された状態をいう。
【0028】
図1〜図3に示す炭素繊維織布12a,12bで形成された炭素繊維多重織布には、導電部18、18によって仕切られた複数の仕切部21,21・・(図3)が形成されている。この仕切部21,21・・の各々には電解質膜22が装着されている。かかる電解質膜22は、図1及び図4に示す様に、電解質層22aの表面に空気等の酸素含有ガスが供給される酸素極22b(+極)と、高分子フィルム30で形成されたタンク32内に貯留されたメタノール等の燃料が供給される燃料極22c(−極)とが対向して形成されている。この電解質層22aとしては、公知の固体高分子電解質膜を採用できるが、パーフルオロスルフォン酸系の固体高分子電解質膜を好適に使用できる。パーフルオロスルフォン酸系の固体高分子電解質膜としては、例えばデュポン株式会社のNafion(登録商標)、旭化成株式会社のAciplex(登録商標)、旭硝子株式会社のFlemion(登録商標)を挙げることができる。また、炭化水素系の固体高分子電解質膜も用いることができ、株式会社トクヤマのC201,C501,C220(製品名)を挙げることができる。かかる電解質層22aの酸素極22bには、図4に示す様に、表面に触媒25としての白金(Pt)粒子を担持したカーボン粒子23が、電解質層22aと同様の組成の接着剤によって付着されている。また、電解質層22aの燃料極22cにも、図4に示す様に、表面に触媒29としての白金(Pt)とルテニウム(Ru)との合金粒子29を担持したカーボン粒子27が、電解質層22aと同一の組成の接着剤によって付着されている。尚、触媒25,29は、カーボン粒子に担持することなく単独で電解質層22aに付着してもよく、白金(Pt)に代えてバナジウムを用いてもよい。
【0029】
図4に示す電解質膜22は、図1〜図3に示す炭素繊維多重織布の仕切部21,21・・の各々に、その酸素極22b(燃料極22c)が同一方向を向くように装着され、複数の単一燃料電池10a、10b、10cが形成されている。このため、単一燃料電池10a,10b,10cを直列に接続するには、隣接する単一燃料電池同士を直列に接続する。例えば、図1に示す様に、隣接する単一燃料電池10a,10b間の導電部18で一体化される炭素繊維織布12a,12bのうち、単一燃料電池10aの酸素極22b(+極)と接触する炭素繊維織布12aを、その導電部18近傍に複数本の電気絶縁緯糸24a,24a・・を配して電気絶縁部24を形成し、単一燃料電池10aの燃料極22c(−極)と接触する炭素繊維織布12b及び導電部18と電気的に絶縁する。更に、単一燃料電池10bの燃料極22c(−極)と接触する炭素繊維織布12bを、その導電部18近傍に複数本の電気絶縁緯糸24a,24a・・を配して電気絶縁部24を形成し、単一燃料電池10bの酸素極22b(+極)と接触する炭素繊維織布12a及び導電部18と電気的に絶縁する。一方、単一燃料電池10aの燃料極22c(−極)と接触する炭素繊維織布12bは、導電部18を介して単一燃料電池10bの酸素極22b(+極)と接触する炭素繊維織布12bと電気的に接続され、単一燃料電池10a,10bは直列に接続される。
【0030】
また、隣接する単一燃料電池10b,10cも同様にして、単一燃料電池10bの燃料極22c(−極)と接触する炭素繊維織布12bと単一燃料電池10cの酸素極と接触する炭素繊維織布12aとが導電部18を介して電気的に接続され、単一燃料電池10b,10cは直列に接続される。かかる電気絶縁経糸20a,20b,電気絶縁緯糸24aとしては、電気絶縁性の糸条であればよく、汎用されているフッ素樹脂糸条、ポリエステル糸条、ナイロン糸条、ポリプロピレン糸条、アクリル糸条等を用いることができる。また、電気絶縁経糸20a,20bに代えて、電気絶縁テープ糸を用いることができる。
【0031】
図1に示すシート状燃料電池10は、図1〜図3に示す炭素繊維多重織布を製織しつつ製造できる。かかる炭素繊維多重織布は、緯糸として炭素繊維緯糸14と電気絶縁緯糸24aとを用い、経糸として電気絶縁経糸20a,20bとを用いて、ジャカート織機によって製造できる。ジャカート織機は、図5に示す様に、ビーム50から引き出された電気絶縁経糸20a、20bはローラ52上で、図6に示す様に、電気絶縁経糸20aと電気絶縁糸20bとが交互となるように引き揃えられている。かかる電気絶縁経糸20a、20b・・の各々は、電気絶縁経糸20a、20b・・の一本が断糸したとき、ジャカート機56が停止するように設定されているピンドロッパー54を通過し、ジャカート機56によって上下動する通糸58を通過する。ジャカート機56は、コンピュータ制御されており、コンピュータ内に記憶された織図に従って、所定の通糸58を上下動する。図5では、ジャカート機56によって、電気絶縁経糸20a,20a・・のみを上下動して杼口(ひぐち)を形成する。形成した杼口に挿入した炭素繊維緯糸18aや電気絶縁緯糸24aは、筬60を60′の位置まで移動して筬打がされる。この様にして製織された炭素繊維多重織布は、ローラ62を通過して巻き取られる。
【0032】
図5及び図6に示すジャカート織機を用いて、炭素繊維多重織布を製織しつつ、図1に示すシート状燃料電池を製造する際には、先ず、炭素繊維織布12aと炭素繊維織布12bとを製織する。この際に、炭素繊維織布12aを織製するときには、図7(a)に示す様に、電気絶縁経糸20a,20aのみを上下動して形成した杼口に、炭素繊維緯糸18a又は電気絶縁緯糸24aを挿通する。また、炭素繊維織布12bを織製するときには、図7(b)に示す様に、電気絶縁経糸20b,20bのみを上下動して形成した杼口に、炭素繊維緯糸18a又は電気絶縁緯糸24aを挿通する。この様にして所定長の長さに形成した炭素繊維織布12a,12bを一体化する。その際に、図7(c)に示す様に、電気絶縁経糸20a,20bを上下動して形成した杼口に、電解質膜22を緯糸として挿通した後、図7(d)に示す様に、電気絶縁経糸20a,20bを上下動して形成した杼口に、炭素繊維緯糸18aを挿通する。
【0033】
この様にして、炭素繊維緯糸14、14・・が電気絶縁縦糸20a,20b・・によって集束された二枚の炭素繊維織布12a,12bを、炭素繊維緯糸18a,18aから成る導電部18と電気絶縁緯糸24a,24a・・から成る電気絶縁部24とによって一体化しつつ、導電部18で仕切った仕切部21(図3)内に電解質膜22が装着された単一燃料電池を形成できる。更に、同様にして、導電部18,18・・で仕切られる複数の仕切部21,21・・の各々に、酸素極22b(又は燃料極22c)が同一方向に向くように電解質膜22が装着された複数の単一燃料電池10a,10b,10cを形成する。形成した単一燃料電池10a,10b,10cは、導電部18の近傍に形成されている、電気絶縁糸24a,24a・・で形成した電気絶縁部24によって、直列に接続されている。
【0034】
更に、単一燃料電池10a,10b,10cが直列に接続されている炭素繊維多重織布を熱プレスして、電解質膜22と炭素繊維織布12a,12bとを一体化する。次いで、電解質膜22の燃料極22c側に、図8に示す様に、フッ素樹脂フィルム等の高分子フィルム30で燃料を貯留するタンク32を形成する。高分子フィルム30の端部が、炭素繊維織布12bを構成する炭素繊維緯糸14に当接する場合には、導電性接着剤によって両者を貼着する。また、高分子フィルム30の端部が、炭素繊維織布12bを構成する電気絶縁糸24aと当接する場合には、絶縁性接着剤によって両者を貼着する。この様にして形成したタンク32内には燃料を充填する。燃料としては、メタノール、特にゼリー状のメタノールを好適に用いることができる。尚、導電性接着剤としては、炭素粒子が導電性剤として配合された導電性接着剤を用いることができる。
【0035】
この様にして形成した図1に示すシート状燃料電池10は、単一燃料電池10a,10b,10cの各々は、炭素繊維緯糸18a,18aから成る導電部18によって連結されているため、可撓性を向上でき、且つ繰り返しの曲折に対する耐久性を向上できる。従って、図1に示すシート状燃料電池10は、その酸素極22bが常に空気と接触できるように外側に向けて着衣に装着でき、且つ出力電圧を単一燃料電池10a,10b,10cの合計電圧とすることができる。その結果、図1に示すシート状燃料電池10は、携帯電話やノート型のパーソナルコンピュータの電源としては勿論のこと、介護ロボットやパワースーツの電源として用いることが可能である。また、図1に示すシート状燃料電池10は、カーテン、アコーディオンカーテン或いはテント等としても使用可能となる、大面積で且つ可撓性を呈するシート状電池に形成することも可能である。
【0036】
図1に示すシート状燃料電池10では、図8に示す様に、高分子フィルム30の端部が、電解質膜22の酸素極22b若しくは燃料極22cに当接する炭素繊維緯糸14又は電解質膜22の露出面に当接する電気絶縁糸24aと当接して導電性接着剤又は絶縁性接着剤によって貼り付けられている。このため、タンク32内に貯留した燃料が、炭素繊維緯糸14又は電気絶縁糸24aを構成する単繊維間の隙間から漏れ出すことがある。かかる燃料の漏れを防止するためには、図9に示す様に、高分子フィルム30の所定部分を貼着する絶縁性フィルム74を配設することが好ましい。かかる絶縁性フィルム74の略半分は、導電性フィルム72の他面側に貼着されている。この導電性フィルム72の一面側は、電解質層22aの露出面に当接する炭素繊維織布12bの炭素繊維緯糸14,14・・と導電部18を形成する炭素繊維緯糸18a,18aとに接触した状態で導電性接着剤によって貼着されている。更に、導電性フィルム72の残部の一面側は、炭素繊維織布12bの電気絶縁糸24aに接触した状態で絶縁性接着剤によって貼着されている。図9に示すシート状燃料電池10では、全体で一枚の高分子フィルム30が用いられている。このため、高分子フィルム30は、その絶縁性フィルム74に対応する部分の全面が絶縁性接着剤によって貼着されて、タンク32,32が形成されている。形成されたタンク32内に充填された燃料の漏れは、導電性フィルム72及び絶縁性フィルム74によって防止できる。しかも、導電性フィルム72によって、導電部18を形成する炭素繊維緯糸18a及び炭素繊維織布12bの炭素繊維緯糸14との電気的な接続を確実に保持でき、シート状燃料電池10の信頼性の向上を図ることができる。
【0037】
以上、説明してきたシート状燃料電池10では、導電部18を炭素繊維緯糸18a,18aで形成してきたが、図10に示す様に、導電部18を導電性ホットメルトから成る導電性フィルム糸(導電性ホットメルトフィルム緯糸76と称することがある)で形成してもよい。この導電性ホットメルトフィルム緯糸76は、導電性ホットメルトフィルムを糸条に切断して形成したものであって、ジャカート織機を用いて炭素繊維多重織布を織製する際に、緯糸として用いることができる。かかる導電性ホットメルトフィルム緯糸76の一面側には、炭素繊維織布12aを形成する緯糸であって、電解質層22aの露出面に配されている絶縁性ホットメルトから成る絶縁性フィルム糸(絶縁性ホットメルトフィルム緯糸80と称することがある)と導電性ホットメルトフィルム緯糸78とに接触している。また、導電性ホットメルトフィルム緯糸76の他面側にも、炭素繊維織布12bを形成する緯糸であって、電解質層22aの露出面に配されている絶縁性ホットメルトフィルム緯糸80と導電性ホットメルトフィルム緯糸78とに接触している。絶縁性ホットメルトフィルム緯糸80は、炭素繊維織布12a,12bの電気絶縁部24を形成する。また、導電性ホットメルトフィルム緯糸76,78は、隣接する単一燃料電池同士の酸素極22bと燃料極22cとを電気的に直列に接続している。
【0038】
この絶縁性ホットメルトフィルム緯糸80は、絶縁性ホットメルトフィルムを糸条に切断して形成したものであって、ジャカート織機を用いて炭素繊維多重織布を織製する際に、緯糸として用いることができる。かかる導電性ホットメルトフィルム緯糸76、78及び絶縁性ホットメルトフィルム緯糸80は、炭素繊維多重織布の炭素繊維織布12a,12bを熱プレスして、電解質膜22と炭素繊維織布12a,12bとを一体化する際に、互いに溶着されて一体化され且つ電解質膜22にも溶着する。この様に、一体化された導電性ホットメルトフィルム緯糸76、78及び絶縁性ホットメルトフィルム緯糸80に、高分子フィルム30,30の各端部が接着剤によって貼着することによって、形成されたタンク32内に充填された燃料の漏れを防止できる。尚、図10に示すシート状燃料電池では、導電性ホットメルトフィルム緯糸76、導電性ホットメルトフィルム緯糸78及び絶縁性ホットメルトフィルム緯糸80が略同一厚さに形成されているが、これらのホットメルトフィルム緯糸の厚さは異なっていてもよい。
【0039】
図1〜図10に示すシート状燃料電池10では、炭素繊維織布12a,12bの各々が一重であったが、図11に示す様に、炭素繊維織布12a,12bの各々を、上織12a,12bと下織12a,12bとの二重織としてもよい。この様に、二重織としても、経糸によって所々で上織12aと下織12a、上織12bと下織12bとを一体化するようにすることによって上織12aと下織12a、上織12bと下織12bとが分離することを防止できる。また、図11に示す様に、下織12a,12bを構成する炭素繊維緯糸14,14の隙間に、上織12a,12bを構成する炭素繊維緯糸14が入り込むため、全体として炭素繊維緯糸14,14・・が互いに充分に接触し、炭素繊維織布12a,12bの長手方向の導電性が改善される。更に、炭素繊維織布12a,12bの各々を構成する上織12a,12bと下織12a,12bとを、構成の簡単な平織とすることもできる。
【0040】
以上の説明では、ジャカート織機を用いて、炭素繊維多重織布を製織しつつ、図1に示すシート状燃料電池10を製造する製造方法について述べてきたが、ジャカート織機を用いて炭素繊維多重織布を製織した後、シート状燃料電池10を製造してもよい。かかるシート状燃料電池10を製造する際には、炭素繊維多重織布の炭素繊維織布12a,12bを一体化する導電部18,18・・で仕切った複数の仕切部21,21・・の各々に、酸素極22b(又は燃料極22c)が同一方向に向くように電解質膜22を挿入し、次いで、熱プレスして電解質膜22と炭素繊維織布12a,12bとを一体化することによって、複数の単一燃料電池10a,10b,10cを形成してもよい。
【実施例1】
【0041】
以下、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0042】
炭素繊維糸条としてPAN系炭素繊維である東レ株式会社製のトレカ T7000SC 12000−50c(商標)を炭素繊維緯糸14及び炭素繊維緯糸18aの各々に用いた。また、電気絶縁経糸20a,20b,24aの各々は、東レ株式会社製のフッ素繊維 トヨフロン(商標)を用いた。かかる各種の糸条をジャカート織機によって図1及び図2に示す炭素繊維多重織布を織製した。この炭素繊維多重織布では、炭素繊維緯糸14を表用8本と裏用8本とに各々織り込んだ後、6本撚りの8本の電気絶縁緯糸24aを配し、更に二本の炭素繊維緯糸18aを配して導電部18を形成した。更に、電気絶縁経糸20a,20bは、炭素繊維多重織布を形成する二枚の炭素繊維織布12a,12bを形成する炭素繊維糸条が互いに密着するように配設した。
【0043】
次いで、織製した炭素繊維多重織布には、導電部18で仕切られた仕切部21が4個形成されていた。この4個の仕切部の各々に、電解質膜22を挿入して、直列に接続された4個の単一燃料電池を形成した。また、電解質膜22は、デュポン株式会社のNafion(登録商標)を固体高分子電解膜に用いて形成した。この電解質層22aの一面側には、白金(Pt)粒子を担持したカーボン粒子23を電解質層22aと同様の組成の接着剤によって付着して酸素極22bを形成し、電解質層22aの他面側には、白金(Pt)とルテニウム(Ru)との合金粒子29を担持したカーボン粒子27を電解質層22aと同様の組成の接着剤によって付着して燃料極22cを形成した。かかる電解質膜22は、仕切部21,21・・の各々に、その酸素極22bが同一方向を向くように挿入した後、ホットプレスで熱プレスして、炭素繊維多重織布の炭素繊維織布12a,12bと電解質膜22とを強固に一体化した。更に、炭素繊維多重織布の端部に、図1に示す様に、銅板によって酸素極と燃料極とを形成した。
【0044】
その後、フッ素樹脂フィルムから成る高分子フィルム30で燃料を貯留するタンク32を形成した。高分子フィルム30の端部が、炭素繊維織布12bを構成する炭素繊維緯糸14に当接する箇所には、炭素粒子が配合された導電性接着剤によって両者を貼着した。また、高分子フィルム30の端部が、炭素繊維織布12bを構成する電気絶縁糸24aと当接する箇所には、絶縁性接着剤によって両者を貼着した。この様にして形成したタンク32内に、燃料としてゼリー状のメタノールを充填したところ、4個の単一燃料電池の各々から0.35Vの起電力が認められ、銅板から成る酸素極と燃料極と間に1.4Vの合計起電力が認められた
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明に係るシート状燃料電池は、携帯電話やノート型のパーソナルコンピュータの電源としては勿論のこと、介護ロボットやパワースーツの電源として用いることができる。
【符号の説明】
【0046】
10はシート状燃料電池、10a,10b,10cは単一燃料電池、12a,12bは炭素繊維織布、12a、12bは上織、12a、12bは下織、14,18aは炭素繊維糸条(炭素繊維緯糸)、18は導電部、20a,20bは電気絶縁糸(電気絶縁経糸)、21は仕切部、22は電解質膜、22aは電解質層、22bは酸素極、22cは燃料極、23はカーボン粒子、24は電気絶縁部、24aは電気絶縁糸(電気絶縁緯糸)、25,29は触媒、27はカーボン粒子、30は高分子フィルム、32はタンク、50はビーム、52,62はローラ、54はピンドロッパー、56はジャカート機、58は通糸、60は筬、72,76は導電性フィルム、74は絶縁性フィルム、76,78は導電性ホットメルトフィルム緯糸、80は絶縁性ホットメルトフィルム緯糸である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の単一燃料電池が電気的に直列に接続されたシート状燃料電池の集電層に用いられる織布が、緯糸としての炭素繊維糸条が互いに接触するように、経糸としての電気絶縁性糸条が所定間隔で配された二枚の炭素繊維織布が、所定間隔で前記炭素繊維糸条に平行に配された導電部と前記経糸とによって一体化されている炭素繊維多重織布であって、
前記導電部で仕切られた複数の仕切部の各々は、電解質層に酸素含有ガスが供給される酸素極と燃料が供給される燃料極とが対向して形成された電解質膜が、前記酸素極が同一方向に向くように装着されて単一燃料電池が形成される装着部であり、
且つ複数の前記単一燃料電池が形成されたとき、隣接する前記単一燃料電池同士が、その単一燃料電池の一方の酸素極に接触する前記炭素繊維織布の一方と、他方の前記単一燃料電池の燃料極に接触する他方の前記炭素繊維織布とを介して直列に接続されるように、前記炭素繊維織布の各々の所定箇所に電気絶縁部が形成されていることを特徴とする炭素繊維多重織布。
【請求項2】
前記導電部が、炭素繊維糸条又は導電性テープ糸によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の炭素繊維多重織布。
【請求項3】
前記電気絶縁部が、電気絶縁糸又は電気絶縁テープ糸であって、前記導電部近傍に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の炭素繊維多重織布。
【請求項4】
前記経糸が、二本の緯糸が接触状態で拘束されるように所定間隔で配されていることを特徴とする請求項1に記載の炭素繊維多重織布。
【請求項5】
緯糸としての炭素繊維糸条を互いに接触するように、経糸としての電気絶縁性糸条を所定間隔で配設した二枚の炭素繊維織布を所定長製織した後、前記二枚の炭素繊維織布を所定間隔で前記炭素繊維糸条に平行に配した導電部と前記経糸とによって一体化しつつ、前記導電部で仕切った複数の仕切部を形成し、
その際に、前記仕切部の各々に、電解質層の表面に酸素含有ガスが供給される酸素極と燃料が供給される燃料極とが対向して形成された電解質膜を、前記酸素極が同一方向に向くように装着して複数の単一燃料電池を形成したとき、隣接する前記単一燃料電池同士を、その単一燃料電池の一方の酸素極に接触する前記炭素繊維織布の一方と、他方の前記単一燃料電池の燃料極に接触する他方の前記炭素繊維織布とを介して直列に接続すべく、前記炭素繊維織布の各々の所定箇所に電気絶縁部を形成することを特徴とする炭素繊維多重織物の製造方法。
【請求項6】
前記炭素繊維織布を、ジャカート織機を用いて製織することを特徴とする請求項5に記載の炭素繊維多重織布の製造方法。
【請求項7】
前記導電部を、炭素繊維糸条又は導電性テープ糸によって形成することを特徴とする請求項5に記載の炭素繊維多重織布の製造方法。
【請求項8】
前記電気絶縁部を、電気絶縁糸又は電気絶縁テープ糸であって、前記導電部近傍に形成することを特徴とする請求項5に記載の炭素繊維多重織布の製造方法。
【請求項9】
前記経糸を、二本の緯糸を接触状態で拘束するように所定間隔で配していることを特徴とする請求項5に記載の炭素繊維多重織布の製造方法。
【請求項10】
複数の単一燃料電池が電気的に直列に接続されたシート状燃料電池であって、
前記燃料電池の集電層には、緯糸としての炭素繊維糸条が互いに接触するように、経糸としての電気絶縁性糸条が所定間隔で配された二枚の炭素繊維織布が、所定間隔で前記炭素繊維糸条に平行に配された導電部と前記経糸とによって一体化されている炭素繊維多重織布が用いられ、
前記炭素繊維多重織布の前記導電部で仕切られた複数の仕切部の各々に、電解質層に酸素含有ガスが供給される酸素極と燃料が供給される燃料極とが対向して形成された電解質膜が、前記酸素極が同一方向に向くように装着されて単一燃料電池が形成されており、
且つ隣接する前記単一燃料電池同士が、その単一燃料電池の一方の酸素極に接触する前記炭素繊維織布の一方と、他方の前記単一燃料電池の燃料極に接触する他方の前記炭素繊維織布とを介して直列に接続されるように、前記炭素繊維織布の各々の所定箇所に電気絶縁部が形成されていることを特徴とするシート状燃料電池。
【請求項11】
前記単一燃料電池が、緯糸としての炭素繊維糸条を互いに接触するように、経糸としての電気絶縁性糸条を所定間隔で配設した二枚の炭素繊維織布を所定長製織した後、前記二枚の炭素繊維織布を所定間隔で前記炭素繊維糸条に平行に配した導電部と前記縦糸とによって一体化しつつ、前記導電部で仕切って仕切部を形成する際に、前記仕切部を形成する部分に、前記電解質膜を緯糸として引き込んだ後、前記導電部及び電気絶縁性糸条を緯糸として引き込んで形成した単一燃料電池であることを特徴とする請求項10に記載のシート状燃料電池。
【請求項12】
前記導電部が、炭素繊維糸条又は導電性テープ糸によって形成されていることを特徴とする請求項10に記載のシート状燃料電池。
【請求項13】
前記電気絶縁部が、電気絶縁糸又は電気絶縁テープ糸であって、前記導電部近傍に形成されていることを特徴とする請求項10に記載のシート状燃料電池。
【請求項14】
前記経糸が、二本の緯糸が接触状態で拘束されるように所定間隔で配されていることを特徴とする請求項10に記載のシート状燃料電池。
【請求項15】
電解質膜の燃料極側に、ゼリー状のメタノールが配されていることを特徴とする請求項10に記載のシート状燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−31526(P2012−31526A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−169458(P2010−169458)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【出願人】(504180239)国立大学法人信州大学 (759)
【出願人】(597095256)株式会社上脇 (1)
【Fターム(参考)】