説明

炭素被覆磁性ナノ粒子を含む溶剤系磁性インクおよびその製造方法

【課題】自然発火性ではなく、磁性材料の粒径が小さく、磁性顔料の分散および分散安定性が向上しているとともに、低粒子充填量で優れた磁気特性を維持する能力を有するMICRインクジェットインクの提供。
【解決手段】有機溶媒と、任意の分散剤と、任意の相乗剤と、任意の酸化防止剤と、任意の粘度調整剤と、任意の着色剤と、任意のバインダと、磁気コアおよびその上に配置された炭素シェルを含む炭素被覆磁性ナノ粒子とを含む磁気インク。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
MICR印刷に好適な非デジタルインクおよび印刷素子が知られている。2つの最も広く知られる技術は、リボン型感熱印刷システムおよびオフセット技術である。例えば、米国特許第4,463,034号明細書には、磁気インク文字読取装置によって認識される磁気画像を印刷するための感熱性磁気転写素子であって、耐熱性基体および感熱性画像形成層を含む感熱性磁気転写素子が開示されている。画像形成層は、ワックスに分散された強磁性物質で構成され、リボンを使用する感熱式プリンタによって磁気画像の形で受取紙上に転写される。
【0002】
米国特許第5,866,637号明細書には、リボンを採用する感熱式プリンタでの使用に向けて採用されるワックス、バインダ樹脂および有機分子系磁石を採用する配合物およびリボンが開示されている。
【0003】
番号印字ボックスを使用するオフセット印刷に好適なMICRインクは、例えば、大豆系ワニスを含むベースに分散された約60%を超える磁性金属酸化物からなる一般的に濃い高濃縮ペーストである。当該インクは、Heath Custom Press(ワシントン州Auburn)などから商業的に入手可能である。
【0004】
粒径が500ミクロン未満の金属酸化物系強磁性粒子を使用するMICR用途のデジタル水性インクジェットインク組成物が米国特許第6,767,396号明細書に開示されている。水性インクは、Diversified Nano Corporationから商業的に入手可能である。
【0005】
磁気インクは、(1)自動小切手処理のための磁気インク文字認識(MICR)および(2)文書認証のための偽造防止印刷の2つの主たる用途に必要とされる。MICRインクは、MICR読取装置を介して読取可能であるのに十分に強い磁気信号を生成するのに十分な量の磁性顔料または磁性成分を含む。一般に、インクは、小切手、証券、セキュリティカード等の書類の全体または一部を印刷するために使用される。
【0006】
MICRインクまたはトナーは、磁性粒子をインクベース中に分散させることによって製造される。MICRインクジェットインクを開発する上で多くの課題が存在する。例えば、たいていのインクジェットプリンタは、インクを基板上に吐出するインクジェット印刷ヘッドノズルのサイズが非常に小さいため、インクの微粒子成分の粒径を著しく制限する。インクジェットヘッドノズル開口のサイズは、一般に約40から50ミクロンであるが、径が10ミクロン未満であり得る。この小さなノズルサイズは、インクジェットインク組成物に含まれる微粒子物質が、ノズル詰まりの問題を回避するのに十分に小さいことを必要とする。粒径がノズルサイズより小さくても、粒子は、凝集物のサイズがノズル開口のサイズを上回る程度までともに凝集または密集しているために、ノズル閉塞が生じる。また、微粒子物質は、印刷時にノズル内に堆積することによって外皮を形成して、ノズル閉塞および/または流動パラメータ不良をもたらす。
【0007】
さらに、MICRインクジェットインクは、吐出温度で流動性でなくてはならず、乾燥していてはならない。顔料サイズの増大は、インク密度の相応の増大をもたらすことによって、液体インク組成物内での顔料の懸濁または分散を維持することを困難にし得る。
【0008】
MICRインクは、必要な磁気特性を提供する磁性材料を含む。磁性材料は、印刷文字がそれらの読取可能特性を保持し、検出装置または読取装置によって容易に検出されるように十分な磁気量を保持しなければならない。磁性材料によって保持される磁気量は、「残留磁気」として知られる。磁性材料は、MICR読取可能信号を生成し、それを長時間にわたって保持する能力を有するために、磁化源に曝露されると十分な残留磁気を示さなければならない。一般に、工業規格によって設定される磁気量の許容可能なレベルは、50から200信号レベル単位であり、100が、米国規格協会によって作成された規格から定められる基準値である。信号が小さくなるとMICR読取装置によって検出されないことがあり、信号が大きくなると、正確な読取値が得られないことがある。読み取られる文書は、提示された文書を認証または検証する手段としてMICR印刷文字を採用するため、文字を見落としたり読み違えることなくMICR文字または他の特徴を正確に読み取ることが重要である。したがって、MICRの目的では、残留磁気は、最低でも20emu/g(電磁単位/グラム)であることが好ましい。より大きな残留磁気値は、より強い読取可能信号に対応する。
【0009】
残留磁気は、磁性顔料コーティングの粒径の関数として増加する傾向がある。また、磁性粒子の粒径が小さくなると、磁性粒子は、残留磁気が相応に低下することになる。磁性粒子の粒径が小さくなり、インク組成物における磁性粒子の含有率の実質的な限界に達すると、十分な信号強度を達成することがますます困難になる。残留磁気値がより大きくなると、インク配合物における磁性粒子の全含有率が小さくて済み、懸濁特性が向上し、磁性粒子含有率がより大きなインク配合物と比較して沈降する確率が小さくなる。
【0010】
また、MICRインクジェットインクは、プリンタおよび圧電プリンタなどのドロップオンデマンド型印刷装置ならびに連続式印刷装置の両方において適正に機能するために、吐出温度(約25℃から約140℃の範囲の吐出温度)で一般的には約15センチポアズ(cP)未満または約2から約12cP未満の低粘度を示さなければならない。しかし、粒子の沈降は、より高粘度の液体と比較して、より低粘度の液体で増大するため、低粘度の液体を使用すると、磁性粒子をインク分散体中に成功裡に含めるという課題が増える。
【0011】
米国特許公開第2009/0321676A1号明細書には、その要約書において、磁性ナノ粒子の磁気異方性の値が2×10J/m以上である安定化磁性単結晶ナノ粒子を含むインクが記載されている。磁性ナノ粒子は、FePtなどの強磁性ナノ粒子であってもよい。インクは、粒子の粒径を最小限にして、特に非水性インクジェットインクにおいて優れた磁性顔料分散安定性をもたらす磁性材料を含む。インクのより小さい粒径の磁性粒子は、また、優れた磁気特性を維持することによって、インクに必要な磁性粒子充填量を減少させる。
【0012】
磁性金属ナノ粒子は、MICRインクを効果的にするための重要な特性である高度な磁性残留磁気を提供する可能性を有するため、MICRインクに所望される。しかし、多くの場合、無保護の、または界面活性剤で保護された磁性金属ナノ粒子は、自然発火性であるため、安全上の問題がある。当該粒子を含む相変化インクの大規模生産は、これらの酸化性の高い粒子を扱う際に空気および水を除去することが必要であるため、困難である。また、インク製造方法は、無機磁性粒子が特定の有機ベースインク成分と不相溶であり得るため、磁性顔料を用いた場合に特に困難である。
【0013】
記載したように、磁性金属ナノ粒子は自然発火性であり、空気および水に極めて敏感であり得る。特定の粒径、一般的には約数十ナノメートルの鉄ナノ粒子などの磁性金属ナノ粒子は、空気と接触すると自然に発火することが既知である。真空密閉袋で包装された鉄ナノ粒子は、アルゴン環境中などの不活性雰囲気中で開放された場合でも極端に高温になることが既知であり、酸素および水がそれぞれわずか約5百万分率で存在している場合でもアルゴンガス中の微量の酸素および水によって迅速に酸化し、それらの磁性残留磁気特性の多くを失うことが既知である。当該粒子を含むインクの大規模生産は、これらの材料を扱う際に空気および水を除去することが必要であるため、厄介である。
【0014】
現在利用可能なMICRインクおよびMICRインクの製造方法は、それらの意図する目的に好適である。しかし、磁性材料の粒径が小さく、磁性顔料の分散および分散安定性が向上しているとともに、低粒子充填量で優れた磁気特性を維持する能力を有するMICRインクジェットインクの必要性が依然として存在する。さらに、簡素化され、環境的に安全であり、安定な粒子分散を有する分散性の高い磁気インクを製造することが可能であり、コスト効率が良く、丈夫な印刷物を提供することができる金属ナノ粒子の安全な処理を可能にする、MICRインクを製造するための方法の必要性が依然として存在する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本開示の溶剤系磁気インクが塗布された紙の磁気特性の絵図である。
【図2】本開示の溶剤系磁気インクについての折曲げ試験結果を示す絵図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
有機溶媒と、任意の分散剤と、任意の相乗剤と、任意の酸化防止剤と、任意の粘度調整剤と、任意の着色剤と、任意のバインダと、磁気コアおよびその上に配置された炭素シェルを含む炭素被覆磁性ナノ粒子とを含む磁気インクについて記載する。炭素コーティングは、酸素に対する効果的なバリヤを提供し、その結果としてナノ粒子の磁気コアに、酸化に対する有意な安定性を付与する。これらの磁性ナノ粒子を空気中または通常の不活性雰囲気条件下で扱うことができ、発火の危険性も低減される。
【0017】
本明細書の磁気インクを任意の好適な目的または所望の目的に使用することができる。いくつかの実施形態において、本明細書のインクは、磁気インク文字認識(MICR)インクとして使用される。本開示に従って製造されたインクをMICR用途、ならびに例えば磁気符号化または偽造防止印刷用途等に使用することができる。具体的な実施形態において、本明細書のインクは、自動小切手処理のほか、同一に見える印刷物における磁性粒子を検出することなどによる文書認証のための偽造防止印刷のためのMICRインクとして使用される。MICRインクを単独で、または他のインクもしくは印刷材料と組み合わせて使用することができる。
【0018】
いくつかの実施形態において、粒径および形状に応じて、2つのタイプの磁性金属系インク、すなわち強磁気インクおよび超常磁気インクを本明細書の方法によって得ることができる。
【0019】
いくつかの実施形態において、本明細書の金属ナノ粒子は、強磁性であり得る。強磁性インクは、磁石によって磁化され、磁石が除去されると飽和磁化の一部を維持する。このインクの主たる用途は、小切手処理に使用される磁気インク文字認識(MICR)である。
【0020】
いくつかの実施形態において、本明細書のインクは超常磁性であり得る。超常磁性インクも磁場の存在下で磁化されるが、それらは、磁場が存在しないとそれらの磁化を失う。超常磁性インクの主たる用途は、偽造防止印刷であるが、それに限定されない。この場合、例えば本明細書に記載される磁性粒子およびカーボンブラックを含むインクは、通常の黒色インクのように見えるが、磁気センサまたは磁気撮像デバイスを使用することによって磁気特性を検出することができる。あるいは、このインクによって作製された偽造防止印刷物の磁性金属特性を認証するために金属検出器を使用することができる。磁気検出のための超常磁性画像文字認識の方法(すなわち超常磁性インクを使用する方法)が米国特許第5,667,924号明細書に記載されている。
【0021】
本明細書の磁気インクを任意の好適な方法または所望の方法によって製造することができる。いくつかの実施形態において、磁気インクを製造するための方法は、(a)有機溶媒と、分散剤と、任意の相乗剤と、任意の着色剤とを混合することによって溶液を調製すること、(b)(a)の溶液と、磁気コアおよびその上に配置された炭素シェルを含む炭素被覆磁性ナノ粒子とを混合すること、(c)場合により粘度調整剤を加えること、および(d)場合によりインクを濾過することを含む。
【0022】
溶媒および分散剤を、炭素被覆磁性ナノ粒子と混合する前に加熱することができる。望まれる場合は、溶媒、分散剤、任意の相乗剤、任意の酸化防止剤、任意の粘度調整剤および任意の着色剤の1種または複数種を混合して加熱した後に、任意のさらなる添加剤または含まれていない材料を加えて、第1の組成物を得て、次いで第1の組成物を炭素被覆磁性ナノ粒子と混合した後に、適宜または要望に応じてさらに処理して、磁気インク組成物を形成することができる。
【0023】
加熱は、任意の好適な温度または所望の温度まで加熱することを含むことができる。いくつかの実施形態において、分散剤を可溶化するのに十分な温度まで加熱する。いくつかの実施形態において、加熱は、約50から約200℃、約50から約150℃または約70から約140℃の温度まで加熱することを含む。
【0024】
要望に応じて磁気インク成分を処理して、炭素被覆金属ナノ粒子の加湿、分散および解凝集を実施することができる。例えば、それらの成分を、ホモジナイザの使用、撹拌、ボールミル粉砕、磨砕、媒体粉砕、微小流動化または音波処理によって処理することができる。微小流動化は、例えば、M−110マイクロフルイダイザーまたはアルティマイザーを使用し、磁気インク成分を1回から10回にわたってチャンバに通すことを含むことができる。音波処理は、ブランソン700音波処理器を使用することを含めることができる。いくつかの実施形態において、本明細書の方法は、炭素被覆磁気ナノ粒子の粒径を調整するか、または炭素被覆磁気ナノ粒子の凝集を破壊するための処理を含めることができ、この処理は、ホモジナイザの使用、撹拌、ボールミル粉砕、磨砕、媒体ミル粉砕、微小流動化、音波処理またはそれらの組合せを含む。
【0025】
場合により、磁気インクを任意の好適な方法または所望の方法によって濾過することができる。場合により、磁気インクを高温で濾過することができる。いくつかの実施形態において、磁気インクは、ナイロン布フィルタを使用して濾過される。
【0026】
炭素被覆磁性材料
本明細書の炭素被覆金属磁性ナノ粒子は、ナノメートルサイズの範囲にあることが望ましい。例えば、いくつかの実施形態において、炭素被覆金属磁性ナノ粒子は、コアおよびシェルを含む平均粒径(粒径または最長寸法など)の全体粒径が約3から約500ナノメートル(nm)、または約10から約500nm、または約10から約300nm、約10から50nm、または約5から約100nm、または約2から約20nm、または約25nmである。具体的な実施形態において、磁性ナノ粒子は、体積平均粒径が約3から約300ナノメートルである。本明細書において、「平均」粒径は、一般的に、d50で表されるか、または粒径分布の50番目の百分位数の体積中間粒径値として定義され、分布における粒子の50%がd50粒径値より大きく、分布における粒子の他の50%がd50値より小さい。動的光散乱法などの、粒径を推定する光散乱技術を使用する方法によって平均粒径を測定することができる。粒径は、透過型電子顕微鏡法によって生成された粒子の画像、または動的光散乱法の測定値から導かれた顔料粒子の長さを指す。
【0027】
本明細書の金属ナノ粒子は、強磁性または超常磁性であり得る。超常磁性ナノ粒子は、磁石によって磁化された後に残留磁化が0になる。強磁性ナノ粒子は、磁石によって磁化された後に0より大きい残留磁化を有する。すなわち、強磁性ナノ粒子は、磁石によって誘発された磁化の一部を維持する。ナノ粒子の超常磁性または強磁性特性は、一般には、粒径、形状、材料選択および温度を含むいくつかの要因の関数である。所定の材料では、所定の温度で、保磁力(すなわち強磁性挙動)が、複数磁区構造から単一磁区構造への移行に対応する臨界粒径で最大になる。この臨界粒径は、臨界磁区サイズ(Dc、球形)と呼ばれる。単一磁区の範囲では、熱緩和により、粒径が小さくなると保磁力および残留磁化が急激に低下する。粒径がさらに減少すると、熱効果が支配的になり、それまでは磁気飽和だったナノ粒子を減磁するのに十分に強くなるため、誘発された磁化が完全に失われる。超常磁性ナノ粒子は、残留磁気および保磁力が0である。約Dc以上のサイズの粒子は強磁性である。例えば、室温において、Dcは、鉄では約15ナノメートルであり、fccコバルトでは約7ナノメートルであり、ニッケルでは約55ナノメートルである。さらに、粒径が3、8および13ナノメートルの鉄ナノ粒子は超常磁性であるのに対して、粒径が18から40ナノメートルの鉄ナノ粒子は強磁性である。合金では、Dc値が材料に応じて異なり得る。さらに詳細については、Burleら、Chemistry of Materials、4752〜4761頁、2002を参照されたい。さらに詳細については、米国特許公開第20090321676号明細書(Bretonら)、B.D. Cullity and C.D. Graham、Introduction to Magnetic Materials、IEEE Press(Wiley)、第2版、2009、第11章、Fine Particles and Thin Films、359〜364頁;Luら、Angew.Chem.Int.編、2007、46、1222〜444頁、Magnetic Nanoparticles:Synthesis, Protection, Functionalization and Applicationを参照されたい。
【0028】
任意の好適な金属または所望の金属をこの方法におけるナノ粒子コアに使用することができる。いくつかの実施形態において、磁性ナノ粒子は、Fe、Mn、Co、Niならびにそれらの混合物および合金からなる群から選択されるコアを含む。他の実施形態において、磁性ナノ粒子は、Fe、Mn、Co、FePt、Ni、CoPt、MnAl、MnBiならびにそれらの混合物および合金からなる群から選択されるコアを含む。一部の具体的な実施形態において、金属ナノ粒子は、Fe、MnおよびCoの少なくとも1つを含む。
【0029】
さらなる実施形態において、金属ナノ粒子は、二種金属ナノ粒子または三種金属ナノ粒子である。
【0030】
炭素被覆金属ナノ粒子は、一般にはレーザ蒸着法によって製造される。例えば、径が3から10ナノメートルのグラファイト層被覆ニッケルナノ粒子をレーザ溶発技術によって製造することができる。さらに詳細については、Q.Ou、T.Tanaka、M.Mesko、A.Ogino、and M.Nagatsu、Diamond and Related Materials、第17巻Vol、4〜5号、664〜668頁、2008)を参照されたい。あるいは、水素流中で鉄を触媒として使用してポリビニルアルコールを炭化することによって、炭素被覆鉄ナノ粒子を製造することができる。さらに詳細については、Yu Liang Anら、Advanced Materials Research、92、7、2010)を参照されたい。さらに、焼鈍法を使用することによって炭素被覆鉄ナノ粒子を製造することができる。焼鈍法は、予め形成された鉄ナノ粒子を安定化させるのに使用された安定化有機材料、3−(N,N−ジメチルラウリルアンモニオ)プロパンスルホン酸の炭化を誘発する。該方法を水素流下で実施して、炭化プロセスを確保する。炭素シェルは、酸性溶液中で鉄コアを酸化から効果的に保護することが判明した。さらに詳細については、Z.Guo、L.L.Henry and E.J.Podlaha、ECS Transactions、1(12)63〜69、2006)を参照されたい。いくつかの実施形態において、炭素材料を、非晶質炭素、ガラス質炭素、グラファイト、炭素ナノフォームおよびダイヤモンド等からなる群から選択することができる。
【0031】
炭素被覆金属ナノ粒子をNanoshel Corporationなどから商業的に入手することもできる。
【0032】
いくつかの実施形態において、磁性ナノ粒子は、約0.2から約100ナノメートルまたは約0.5ナノメートルから約50ナノメートルまたは約1ナノメートルから約20ナノメートルの厚さを有する炭素シェルを含む。
【0033】
磁性粒子は、任意の好適な、または所望の形状または構成を有することができる。磁性ナノ粒子の例示的な形状としては、限定することなく、針形、粒状、球形、板状、針状、円筒状、八面体形、十二面体形、管状、立方体形、六角形、卵形、球状、樹枝状、角柱形および不定形等を挙げることができる。不定形は、本開示の文脈において、認識可能な形状を有する不明確な形と定義される。例えば、不定形は、明確な辺および角度を有さない。いくつかの実施形態において、単一ナノ結晶の短軸に対する長軸の比(D長/D短)は、約10:1未満、約2:1未満または約3:2未満であり得る。具体的な実施形態において、磁気コアは、アスペクト比が約3:2から約10:1未満の針状形を有する。
【0034】
磁性ナノ粒子は、任意の好適な量または所望の量でインクに存在してもよい。いくつかの実施形態において、インク中の磁性ナノ粒子の必要充填量は、約0.5重量パーセントから約30重量パーセント、約5重量パーセントから約10重量パーセントまたは約6重量パーセントから約8重量パーセントであるが、これらの範囲外の量も可能である。
【0035】
磁性ナノ粒子は、任意の好適な、または所望の残留磁気を有することができる。いくつかの実施形態において、磁性ナノ粒子は、約20emu/gから約100emu/g、約30emu/gから約80emu/gまたは約50emu/gから約70emu/gの残留磁気を有することができるが、これらの範囲外の量も可能である。具体的な実施形態において、磁性ナノ粒子は、約20emu/グラムから約100emu/グラムの残留磁気を有する。
【0036】
磁性ナノ粒子は、任意の好適な、または所望の保磁力を有することができる。いくつかの実施形態において、磁性ナノ粒子の保磁力は、約200エルステッドから約50000エルステッド、約1000エルステッドから約40000エルステッドまたは約10000エルステッドから約20000エルステッドであり得るが、これらの範囲外の量も可能である。
【0037】
磁気飽和モーメントは、任意の好適な、または所望の磁気飽和モーメントであり得る。いくつかの実施形態において、磁気飽和モーメントは、約20emu/gから約150emu/g、約30emu/gから約120emu/gまたは約40emu/gから約80emu/gであってもよいが、これらの範囲外の磁気飽和モーメントも可能である。具体的な実施形態において、磁性ナノ粒子は、約20emu/gから約150emu/gの磁気飽和モーメントを有する。
【0038】
本明細書の磁気インクは、任意の所望の、または有効な有機溶媒を含むことができる。好適な有機溶媒の例としては、Exxon Corporationによって製造されているISOPAR(登録商標)などのイソパラフィン、ヘキサン、トルエン、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、クロロベンゼン、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、塩化メチレン、クロロホルム、ならびにそれらの混合物および組合せが挙げられる。使用できるさらなる商業的に入手可能な液体炭化水素としては、Exxon Corporationから入手可能なNORPAR(登録商標)シリーズ、Phillips Petroleum Companyから入手可能なSOLTROL(登録商標)シリーズおよびShell Oil Companyから入手可能なSHELLSOL(登録商標)シリーズが挙げられる。
【0039】
溶媒は、任意の好適な量または所望の量で存在し得る。いくつかの実施形態において、溶媒は、インクに対して約0.1重量パーセントから約99重量パーセントを超えない量で磁気インクに存在する。
【0040】
いくつかの実施形態において、分散剤がインクに含まれていてもよい。分散剤を、任意の好適な時間または所望の時間に加えることができる。分散剤の役割は、炭素被覆材料との相互作用を安定化させることにより磁性ナノ粒子の分散安定性を向上させることである。いくつかの実施形態において、分散剤は、ベータ−ヒドロキシカルボン酸およびそれらのエステル、長鎖脂肪族カルボン酸とのソルビトールエステル、ポリマー化合物、ブロックコポリマー分散剤およびそれらの組合せからなる群から選択される。好適な分散剤の例としては、オレイン酸、オレイルアミン、トリオクチルホスフィン酸化物(TOPO)、ヘキシルホスホン酸(HPA);ポリビニルピロリドン(PVP)、Lubrizol CorporationからSolsperse(登録商標)16000、Solsperse(登録商標)28000、Solsperse(登録商標)32500、Solsperse(登録商標)38500、Solsperse(登録商標)39000、Solsperse(登録商標)54000、Solsperse(登録商標)17000、Solsperse(登録商標)17940などの商品名SOLSPERSE(登録商標)で販売されている分散剤、ペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシルおよびウンデシル等の、約5から約60個の炭素を有する鎖などの長鎖直鎖状、環式または分枝状脂肪族鎖を含むベータ−ヒドロキシカルボン酸およびそれらのエステル;ラウリル酸、オレイン酸(SPAN(登録商標)85)、パルミチン酸(SPAN(登録商標)40)およびステアリン酸(SPAN(登録商標)60)などの長鎖脂肪族カルボン酸とのソルビトールエステル;ポリビニルピロリドン、ポリ(1−ビニルピロリドン)−グラフト−(1−ヘキサデセン)、ポリ(1−ビニルピロリドン)−グラフト−(1−トリアコンテン)、ポリ(1−ビニルピロリドン−コ−アクリル酸などのポリマー化合物、ならびにそれらの混合物および組合せが挙げられるが、それらに限定されない。分散剤としては、親顔料ブロック分散剤および新溶媒ブロック分散剤などのブロックコポリマー分散剤を挙げることもできる。いくつかの実施形態において、分散剤は、オレイン酸、ラウリル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、トリオクチルホスフィン酸化物、ヘキシルホスホン酸、ポリビニルピロリドン、ポリ(1−ビニルピロリドン)−グラフト−(1−ヘキサデセン)、ポリ(1−ビニルピロリドン)−グラフト−(1−トリアコンテン)、ポリ(1−ビニルピロリドン−コ−アクリル酸)、ペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシルまたはウンデシルベータヒドロキシカルボン酸、ならびにそれらの混合物および組合せからなる群から選択される。好適な分散剤のさらなる例としては、Disperbyk(登録商標)108、Disperbyk(登録商標)116、(BYK)、Borchi(登録商標)GEN911、Irgasperse(登録商標)2153および2155(Lubrizol)、Clariantの酸および酸エステルワックス、例えばLicowax(登録商標)Sを挙げることができる。好適な分散剤は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている米国特許公開第2010/0292467号明細書にも記載されている。さらなる好適な分散剤は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている米国特許出願第12,641,564号明細書、およびその全体が参照により本明細書に組み込まれている米国特許出願第12/891,619号明細書にも記載されている。
【0041】
分散剤は、インク媒体に存在するナノ粒子および他の任意の粒子を分散および安定化する目的に応じた任意の所望の量または有効な量でインクに存在し得る。いくつかの実施形態において、分散剤は、インクの重量に対して約0.1から約20、または約0.5から約12、または約0.8から約10重量パーセントの量で提供される。
【0042】
場合により、相乗剤が分散剤と併用されてもよい。相乗剤を、任意の好適な時間または所望の時間に加えることができる。商業的に入手可能な相乗剤の具体的な例としては、Solsperse(登録商標)22000およびSolsperse(登録商標)5000(Lubrizol Advanced Materials,Inc.)が挙げられる。
【0043】
相乗剤は、任意の好適な量または所望の量で存在し得る。いくつかの実施形態において、相乗剤は、インクに対して約0.1全重量パーセントから約10全重量パーセントの量で溶剤インクに存在する。
【0044】
本開示のインクは、酸化防止剤を場合により含むこともできる。インク組成物の任意の酸化防止剤は、画像を酸化から保護するとともに、インク製造過程の加熱部分を通じてインク組成物を酸化から保護する。好適な酸化防止剤の具体的な例としては、NAUGUARD(登録商標)524、NAUGUARD(登録商標)76およびNAUGUARD(登録商標)512、ならびにBASFから商業的に入手可能なIRGANOX(登録商標)1010等が挙げられる。任意の酸化防止剤は、存在する場合は、任意の所望の量または有効な量、例えば、インクに対して約0.01重量パーセントから約20重量パーセントの量でインクに存在する。
【0045】
本開示のインクは、粘度調整剤を場合により含むこともできる。インク組成物の粘度を、適切な添加剤を使用することによって調整することができる。好適な粘度調整剤の例としては、ステアロン等の脂肪族ケトン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレートなどのポリマー、ならびにBYK Chemieから入手可能なものなどの増粘剤等が挙げられる。任意の粘度調整剤は、存在する場合は、任意の所望の量または有効な量、例えば、インクに対して約0.1から約99重量パーセントの量でインクに存在する。
【0046】
本開示のインクは、着色剤化合物をさらに含むことができる。この任意の着色剤は、所望の色または色調を得るための所望の量または有効な量、いくつかの実施形態ではインクに対して約1重量パーセントから約20重量パーセントの量でインクに存在し得る。着色剤は、染料、顔料およびそれらの混合物等を含む任意の好適な着色剤または所望の着色剤であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書の磁気インクに対して選択される着色剤は顔料である。具体的な実施形態において、本明細書の磁気インクに対して選択される着色剤はカーボンブラックである。
【0047】
本開示によるMICRインクに使用される好適な着色剤としては、限定することなく、カーボンブラック、ランプブラック、アイロンブラック、ウルトラマリン、ニグロシン染料、アニリンブルー、DuPontオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロリド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ロダミン6Cレーキ、クロムイエロー、キナクリドン、ベンジジンイエロー、マラカイトグリーン、ハンサイエローC、マラカイトグリーンヘキサレート、オイルブラック、アゾオイルブラック、ローズベンガル、モノアゾ顔料、ジアゾ顔料、トリアゾ顔料、第三級アンモニウム塩、サリチル酸およびサリチル酸誘導体の金属塩、ファーストイエローG3、ハンサブリリアントイエロー5GX、ジアゾイエローAAA、ナフトールレッドHFG、レーキレッドC、ベンズイミダゾロンカルミンHF3CS、ジオキサジンバイオレット、ベンズイミダゾロンブラウンHFR.アニリンブラック、酸化チタン、タルトラジンレーキ、ロダミン6Gレーキ、メチルバイオレットレーキ、ベーシック6Gレーキ、ブリリアントグリーンレーキ、ハンサイエロー、ナフトールイエロー、ロダミンB、メチレンブルー、ビクトリアブルーおよびウルトラマリンブルー等を挙げることができる。
【0048】
磁性ナノ粒子で作製されたMICRインクは黒色または暗褐色である。本開示によるMICRインクを、インク製造時に着色剤を加えることによって着色インクとして製造することができる。あるいは、着色剤を含まない(すなわち着色剤無添加の)MICRインクを初回通過時に基板に印刷した後で2回目通過を行うことができ、着色インクをMICR読取可能にするように、MICR粒子を含まない着色インクが着色インクの上に直接印刷される。いくつかの実施形態において、本明細書の方法は、(1)有機溶媒と、磁気コアおよびその上に配置された炭素シェルを含む炭素被覆磁性粒子と、任意の分散剤と、任意の相乗剤と、任意の酸化防止剤と、任意の粘度調整剤と、任意の着色剤とを含む磁気インクをインクジェット印刷装置に導入すること、および(2)インクの液滴を画像様パターンで基板上に噴射させること、(3)インク担体と、着色剤と、任意の分散剤と、任意の相乗剤と、任意のバインダと、任意の酸化防止剤とを含むインクをインクジェット印刷装置に取り入れること、(4)(3)のインクの液滴を画像様パターンで基板上に噴射させることであって、該画像様パターンが、(3)のインクをMICR読取可能にするように(2)の画像様パターンを被覆することを含むことができる。
【0049】
本開示によるインク組成物は、1つまたは複数のバインダ樹脂を含んでいてもよい。バインダ樹脂は、限定することなく、マレイン酸変性ロジンエステル(Arizona Chemical Companyから入手可能なBECKACITE(登録商標)4503樹脂)、フェノール樹脂、マレイン酸樹脂、変性フェノール樹脂、ロジンエステル、変性ロジン、フェノール変性エステル樹脂、ロジン変性炭化水素樹脂、炭化水素樹脂、テルペンフェノール樹脂、テルペン変性炭化水素樹脂、ポリアミド樹脂、タル油樹脂、ポリテルペン樹脂、炭化水素変性テルペン樹脂、アクリルおよびアクリル変性樹脂、ならびに印刷インク、塗工剤および塗料等に使用されることが知られる類似の樹脂またはロジンを含む任意の好適な物質であってもよい。
【0050】
他の好適なバインダ樹脂としては、限定することなく、熱可塑性樹脂、ポリスチレン、ポリクロロエチレンおよびポリビニルトルエンなどのスチレンまたは置換スチレンのホモポリマー;スチレン−p−クロロスチレンコポリマー、スチレン−プロピレンコポリマー、スチレン−ビニルトルエンコポリマー、スチレン−ビニルナフタレンコポリマー、スチレン−アクリル酸メチルコポリマー、スチレン−アクリル酸エチルコポリマー、スチレン−アクリル酸ブチルコポリマー、スチレン−アクリル酸オクチルコポリマー、スチレン−メタクリル酸メチルコポリマー、スチレン−メタクリル酸エチルコポリマー、スチレン−メタクリル酸ブチルコポリマー、スチレン−メチル−α−クロロメタクリレートコポリマー、スチレン−アクリロニトリルコポリマー、スチレン−ビニルメチルエーテルコポリマー、スチレン−ビニルエチルエーテルコポリマー、スチレン−ビニルメチルケトンコポリマー、スチレン−ブタジエンコポリマー、スチレン−イソプレンコポリマー、スチレン−アクリロニトリル−インデンコポリマー、スチレン−マレイン酸コポリマーおよびスチレン−マレイン酸エステルコポリマーなどのスチレンコポリマー;ポリメチルメタクリレート;ポリブチルメタクリレート;ポリ塩化ビニル;ポリ酢酸ビニル;ポリエチレン;ポリプロピレン;ポリエステル;ポリビニルブチラール;ポリアクリル樹脂;ロジン;変性ロジン;テルペン樹脂;フェノール樹脂;脂肪族または脂肪族炭化水素樹脂;芳香族石油樹脂;塩素化パラフィン;およびパラフィンワックス等が挙げられる。これらのバインダ樹脂を単独で、または組み合わせて使用することができる。
【0051】
本開示のMICRインクを直接印刷インクジェット法に対応する装置、および間接(オフセット)印刷インクジェット用途に採用することができる。本開示の別の実施形態は、本開示のMICR溶剤インクをインクジェット印刷装置に取り入れ、インクの液滴を画像様パターンで記録基板上に噴射させることを含む方法に関する。直接印刷法は、例えば、その開示内容が参照により全面的に本明細書に組み込まれている米国特許第5,195,430号明細書にも開示されている。いくつかの実施形態において、基板は、最終記録シートであり、インクの液滴は、画像様パターンで最終記録シート上に直接噴射される。本開示のさらに別の実施形態は、本開示のインクをインクジェット印刷装置に取り入れ、インクの液滴を画像様パターンで中間転写部材上に噴射させ、インクを画像様パターンで中間転写部材から最終記録基板に転写することを含む方法に関する。オフセットまたは間接印刷法は、例えば、米国特許第5,389,958号明細書にも開示されている。1つの具体的な実施形態において、印刷装置は、圧電気振動素子の振動によってインクの液滴を画像様パターンで噴射させる圧電印刷法を採用する。いくつかの実施形態において、中間転写部材を、最終記録シートの温度より高く、印刷装置におけるインクの温度より低い温度まで加熱する。本開示のインクを他の印刷法に使用することもできる。
【0052】
XEROX(登録商標)4200ペーパー、XEROX(登録商標)イメージシリーズペーパーなどの普通紙、罫線ノート紙、ボンド紙、シリカ被覆紙、透明材料、織物、繊維製品、プラスチック、ポリマーフィルム、ならびに金属および木材などの無機基板等を含む任意の好適な基板または記録シートを採用することができる。
【0053】
様々な実施形態において、炭素被覆金属磁性ナノ粒子を溶剤インクベースに分散させることによって製造することができる磁気インクを提供する。本明細書の方法は、スケーラブルで、安全で非発火性のMICRインクの製造方法を提供する。MICRインクを様々な印刷技術、具体的にはインクジェット印刷技術、より具体的には磁気セキュリティインク印刷用途に使用することができる。本明細書に記載されているように製造された磁気インクは、紙に到達したときに液体状態であるため、印刷時に紙に浸透する。これは、(1)さらに上塗りすることなく、機械読取処理工程を通過できる頑丈な磁気印刷物および(2)他のインクで容易に上重ね印刷することが可能であることを含む重要な利点を提供する。さらに、本溶剤系磁気インクは、画像堆積高さを低くし、特定のMICRインクに従来必要とされた上塗り保護層の必要性を取り除き、さらなる文字の上重ね印刷を容易にし、スケーラブルな処理を可能にする。さらに、本開示は、非水性プリンタと相溶性がある溶剤系磁気インクを提供する。
【実施例】
【0054】
実施例1
炭素被覆強磁性ナノ粒子を含む溶剤系磁気インクの製造。30ミリリットルの褐色ボトルに10グラムのIsopar(登録商標)M(溶媒)および1.0グラムのオレイン酸を充填した。オレイン酸を可溶化するために、溶液を約50℃に加熱し、撹拌した。この溶液に対して、2.5グラムの炭素被覆鉄ナノ粒子(平均粒径25ナノメートル;Nanoshel Corp.(カリフォルニア州)から入手可能)を加えた。添加前、粒子は、大きな凝集体(ミリメートルサイズ)のようである。IKA KS130シェーカを用いて溶液を混合して、炭素被覆鉄凝集体を湿潤させた(3時間)。70グラムの予め洗浄された1/8インチ径の440Cグレードの25個の鋼球を加え、炭素被覆鉄ナノ粒子の解凝集を誘発するために、該組成物を1日間にわたってボールミル粉砕した。インク中の粒子の平均粒径は、約1ミクロンであった。より強い粉砕方法および適切な分散剤添加剤を選択することにより、より小さな粒子を製造できることが期待される。磨砕法は、一般的に、使用した比較的小さなボールミル粉砕スケールと比較して、より大きなエネルギー入力を与える。場合により加熱しながら好適な媒体を使用する磨砕は、300ナノメートル未満の平均粒径を有する粒子を提供できることが期待される。
【0055】
実施例2
磁気特性。実施例1によるインクを空気に曝露する実験を実施したところ、製造手順を通じて温度上昇も発火の傾向も検知されなかった。インクは、磁石によって引きつけられ、鉄ナノ粒子がインク処理工程後もそれらの磁気特性を維持していたことが証明される。
【0056】
実施例3
試験サンプルの作製。ここに開示される溶剤系磁気インクのサンプルを、ブレードを用いて、かつ1ミル(25ミクロン)および5ミル(125ミクロン)の間隔で、Xerox(登録商標)4200紙に液体溶剤磁気インクを塗布することによって作製した。コーティングによって提供された紙上の塗布インクの量は、約5ミクロンの典型的厚さを有する通常の固体インク印刷物と比較すると有意に多い。これは、最悪のシナリオ例を示すために意図的に選択された。この頑丈性試験に合格したインクは、例えば実際のプリンタで紙上により薄い層として印刷された場合に頑丈であることを示す。
【0057】
実施例4
実施例4に記載されているように塗布された溶剤系組成物を有する被覆普通紙(Xerox(登録商標)4200)を磁石によって引きつけた。普通紙に塗布された実施例1の溶剤系磁気インクの磁気引力を示し、磁気特性が印刷頁上で維持されていたことをさらに証明する図1を参照されたい。
【0058】
頑丈性の証明。本開示の溶剤系MICRインクで作製された印刷物の頑丈性を2つの異なる方法によって評価した。
【0059】
折りじわ(折曲げ)試験:印刷頁を折り曲げたときの印刷安定性を評価する。
【0060】
擦り(スミアリング)試験:擦ったときの印刷物の頑丈性を評価する。
【0061】
実施例5
図2は、本溶剤系磁気インクの印刷インクパターンの図を示す(図2の左側)。本明細書に記載の溶剤系インクの折曲げ試験により、折り縁およびその付近でインクが除去されなかったことが明らかになった(図2の右側)。これは、溶剤系インクの優れた折りじわ性能の向上を実証した。
【0062】
実施例6
擦り(スミアリング)試験。実施例4に記載されているようにして再現サンプルを作製し、擦り(スミアリング)試験を施して、本磁気溶剤インク印刷物の頑丈性を評価した。Testing Machines Inc.のインク擦り試験機を用いて試験を実施した。長方形の印刷部分を白色の普通紙基板に擦りつけ(200サイクル)、1)印刷物から白色紙へのインクの転写;2)擦り後の印刷部分の外観(印刷部分におけるインクの潜在的な剥がれとして評価する)の2通りの方式でサンプルを比較した。
【0063】
擦り試験機から除去した後の印刷部分の外観:本明細書に記載の磁気溶剤インクで作製された印刷物については、印刷された溶剤系磁気インクパターンの擦り(200サイクル)前後で有意な差が視認されなかった。
【0064】
擦り試験の前後に、本溶剤磁気インクで作製された印刷物の光学密度(OD)変化を測定することによってさらなる評価を実施した。擦り前のODは0.89であった。擦り後のODは0.87であった。これは、擦り後にサンプルの初期ODの98%が維持されていたことを示す。全体的に、それらの試験は、本開示の磁気溶剤インクの優れた(目標>90%)の擦り性能を示していた。
【0065】
様々な実施形態において、炭素被覆金属磁性ナノ粒子を溶剤インクベースに分散させることによって製造することができる磁気インクを提供する。本明細書の方法は、スケーラブルで、安全で非発火性のMICRインクの製造方法を提供する。MICRインクを様々な印刷技術、具体的にはインクジェット印刷技術、より具体的には磁気セキュリティインク印刷用途に使用することができる。本明細書に記載されているように製造された磁気インクは、紙に到達したときに液体状態であるため、印刷時に紙に浸透する。これは、(1)さらに上塗りすることなく、機械読取処理工程を通過できる頑丈な磁気印刷物および(2)他のインクで容易に上重ね印刷することが可能であることを含む重要な利点を提供する。さらに、本溶剤系磁気インクは、画像堆積高さを低くし、特定のMICRインクに従来必要とされた上塗り保護層の必要性を取り除き、さらなる文字の上重ね印刷を容易にし、スケーラブルな処理を可能にする。さらに、本開示は、非水性プリンタと相溶性がある溶剤系磁気インクを提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶媒と、任意の分散剤と、任意の相乗剤と、任意の酸化防止剤と、任意の粘度調整剤と、任意の着色剤と、任意のバインダと、磁気コアおよびその上に配置された炭素シェルを含む炭素被覆磁性ナノ粒子とを含む磁気インク。
【請求項2】
前記磁性ナノ粒子は、二種金属コアまたは三種金属コアを含む請求項1に記載の磁気インク。
【請求項3】
前記磁性ナノ粒子は、Fe、Mn、Co、Ni、FePt、CoPt、MnAl、MnBiならびにそれらの混合物および合金からなる群から選択されるコアを含む請求項1に記載の磁気インク。
【請求項4】
前記磁性ナノ粒子は、約0.2ナノメートルから約100ナノメートルの厚さを有する炭素シェルを含む請求項1に記載の磁気インク。
【請求項5】
前記磁性ナノ粒子は、約3から約300ナノメートルの体積平均粒径を有する請求項1に記載の磁気インク。
【請求項6】
前記磁気コアは、アスペクト比が約3:2から約10:1未満の針状形を有する請求項1に記載の磁気インク。
【請求項7】
前記磁性ナノ粒子は、約20emu/gから約150emu/gの磁気飽和モーメントを有する請求項1に記載の磁気インク。
【請求項8】
前記磁性ナノ粒子は、約20emu/gから約100emu/gの残留磁気を有する請求項1に記載の磁気インク。
【請求項9】
磁気インクを製造するための方法であって、
(a)有機溶媒と、任意の分散剤と、任意の相乗剤と、任意の着色剤とを混合することによって溶液を調製すること、
(b)(a)の溶液と、磁気コアおよびその上に配置された炭素シェルを含む炭素被覆磁性ナノ粒子とを混合すること、
(c)場合により粘度調整剤、酸化防止剤、バインダまたはそれらの組合せを加えること、および
(d)場合によりインクを濾過すること
を含む方法。
【請求項10】
(1)有機溶媒と、任意の分散剤と、任意の相乗剤と、任意の残か防止剤と、任意の粘度調整剤と、任意の着色剤と、任意のバインダと、磁気コアおよびその上に配置された炭素シェルを含む炭素被覆磁性粒子と含む磁気インクをインクジェット印刷装置に取り入れること、および
(2)インクの液滴を画像様パターンで基板上に噴射させること
を含み、
(3)インク担体と、着色剤と、任意の分散剤と、任意の相乗剤と、任意の酸化防止剤とを含むインクをインクジェット印刷装置に取り入れること、
(4)(3)のインクの液滴を画像様パターンで基板上に噴射させることであって、該画像様パターンが、(3)のインクをMICR読取可能にするように(2)の画像様パターンを被覆すること
を場合によりさらに含む方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−193364(P2012−193364A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−47110(P2012−47110)
【出願日】平成24年3月2日(2012.3.2)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】