説明

炭素複合粒子及びその分散液、並びに、静電荷像現像用トナー及びその製造方法

【課題】トナーの結着樹脂中における顔料の分散性を与える炭素複合粒子の提供。
【解決手段】カーボンブラックと前記カーボンブラックを被覆する樹脂層とを有し、前記カーボンブラックと前記樹脂層を構成する樹脂とが、カルボジイミド基を有する化合物を介して結合している炭素複合粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素複合粒子及びその分散液、並びに、静電荷像現像用トナー及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真法に要求される高画質化、プロセスの高速度化の高まりに加え、環境配慮の観点から生産工程の省エネルギー化が進められている。高画質化に対してはトナーの小粒径化、高速度化や省エネルギー化に関しては生産性向上や低温定着性獲得に向けた検討が行われている。
【0003】
化学的手法によるトナー作製、特に凝集合一法を用いた湿式製法は、従来の混練粉砕法に比べ粒径や形状制御が行いやすい。
【0004】
前記湿式製法においては、凝集工程で主成分である結着樹脂と顔料や離型剤の分散粒子とを効率良く取り込むことが重要である。特に顔料粒子の場合は、顔料粒子同士が凝集すると帯電特性や発色性が悪化するため、ある程度均一に分散させることが重要となる。
前記顔料粒子の分散性を高めるためには表面性を揃えること、即ち表面を樹脂の組成に近づけることが重要となる。現状において顔料や離型剤などの内添剤は結着樹脂と較べ、サイズや形状、そして表面性が各々異なっている。
【0005】
そこで表面性を揃えるために、顔料粒子の表面を樹脂被覆する手法などがこれまで検討されている。該手法は顔料を結着樹脂と同種の樹脂で被覆し粒子化することにより、粒子の表面性が主成分である結着樹脂に近づけられるだけでなく、該粒子のサイズと共に内包されている顔料のサイズが揃えられる。該粒子のサイズを小さく揃えられれば内部の顔料のサイズも小さく揃えられるため、トナーの発色性の向上に繋がる。
【0006】
顔料の分散性に関しては、特に黒色トナーの顔料として主に用いられるカーボンブラックの分散性について、様々な検討が行われている。
【0007】
カーボンブラックに限らず顔料を表面処理することなく樹脂で被覆し粒子化する方法としては、転相乳化法における脱溶剤工程で樹脂をカーボンブラック表面に析出させる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0008】
また、顔料を表面処理する場合、シナジストなどの分散剤を顔料表面に吸着させる方法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
この方法は、混合するだけで顔料表面に分散剤が容易に吸着するため、樹脂との親和性を高める効果が容易に得られ、安定した粒子化即ち顔料の内包化がなされる。
【0009】
一方で、カーボンブラック表面にグラフト基を導入する方法がブラックマトリックス用レジスト組成物に関する分野において提案されている(例えば、特許文献3参照。)。この方法では、カルボジイミド基を有する化合物によってカーボンブラック表面にカルボジイミド基を導入し、その後樹脂と混合することで樹脂とカーボンブラックがカルボジイミド基を介して強固に結合され、着色力や隠ぺい力の大きい液晶パネル組成物が得られると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−3705号公報
【特許文献2】特開2004−77766号公報
【特許文献3】特開2002−201381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、トナーの結着樹脂中における顔料の分散性を与える炭素複合粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
即ち、請求項1に係る発明は、カーボンブラックと前記カーボンブラックを被覆する樹脂層とを有し、前記カーボンブラックと前記樹脂層を構成する樹脂とが、カルボジイミド基を有する化合物を介して結合している炭素複合粒子である。
【0013】
請求項2に係る発明は、前記樹脂が、ポリエステル樹脂及びポリウレタン樹脂から選択される少なくとも一種である請求項1に記載の炭素複合粒子である。
【0014】
請求項3に係る発明は、前記樹脂層が、転相乳化法により形成されたものである請求項1又は請求項2に記載の炭素複合粒子である。
【0015】
請求項4に係る発明は、体積平均粒子径が、100nm以上250nm以下である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の炭素複合粒子である。
【0016】
請求項5に係る発明は、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の炭素複合粒子と溶剤とを含む炭素複合粒子分散液である。
【0017】
請求項6に係る発明は、結着樹脂と、離型剤と、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の炭素複合粒子と、を含有する静電荷像現像用トナーである。
【0018】
請求項7に係る発明は、結着樹脂を分散した結着樹脂分散液と離型剤を分散した離型剤分散液と請求項5に記載の炭素複合粒子分散液とを混合し、前記結着樹脂と前記離型剤と炭素複合粒子とを含む凝集粒子の分散液を調製する凝集粒子分散液調製工程と、
加熱により前記凝集粒子を融合・合一する融合・合一工程と、を有する請求項6に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法である。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に係る発明によれば、トナーの結着樹脂中における顔料の分散性を与える炭素複合粒子が提供される。
【0020】
請求項2に係る発明によれば、カーボンブラックを被覆する樹脂がポリエステル樹脂及びポリウレタン樹脂から選択される少なくとも一種ではなかった場合に比べて、ポリエステル樹脂又はポリウレタン樹脂がトナーの結着樹脂であった場合の炭素複合粒子の結着樹脂中における分散性がさらに向上する。
【0021】
請求項3に係る発明によれば、炭素複合粒子が球状となる。
【0022】
請求項4に係る発明によれば、体積平均粒子径が100nm以上250nm以下の範囲外であった場合に比べて、炭素複合粒子を含むトナーの発色性が向上する。
【0023】
請求項5に係る発明によれば、トナーの結着樹脂中における顔料の分散性を与える炭素複合粒子を含む分散液が提供される。
【0024】
請求項6に係る発明によれば、発色性に優れる静電荷像現像用トナーが提供される。
【0025】
請求項7に係る発明によれば、発色性に優れる静電荷像現像用トナーが製造される。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の炭素複合粒子及びその分散液、並びに、静電荷像現像用トナー及びその製造方法の実施形態について詳細に説明する。
【0027】
<炭素複合粒子>
本実施形態に係る炭素複合粒子は、カーボンブラックと前記カーボンブラックを被覆する樹脂層とを有し、前記カーボンブラックと前記樹脂層を構成する樹脂とが、カルボジイミド基を有する化合物を介して結合している炭素複合粒子である。
【0028】
本実施形態に係る炭素複合粒子は、トナーの結着樹脂中における顔料の分散性を与えるものである。また、カーボンブラックと樹脂層を構成する樹脂とが、カルボジイミド基を有する化合物を介して結合しているため、樹脂層がカーボンブラック表面から剥離しにくい。
黒色トナーの、帯電性・発色性の改善、並びに、サイズ制御及び形状制御の上で、カーボンブラックの表面処理の必要性が高まっている。本実施形態に係る炭素複合粒子は、表面処理されたカーボンブラックとして好適に使用される。
【0029】
本実施形態に係る炭素複合粒子の体積平均粒子径は、100nm以上250nm以下であることが望ましく、120nm以上200nm以下であることがさらに望ましい。なお、本実施形態において炭素複合粒子の体積平均粒子径は、レーザー回析式粒度分布測定装置(堀場製作所製、LA−920)を用いて測定される。
【0030】
−カーボンブラック−
本実施形態に係る炭素複合粒子に含まれるカーボンブラックは、カルボジイミド基を有する化合物を表面に導入したカーボンブラックである。本実施形態において、カルボジイミド基を有する化合物を導入前のカーボンブラックとしては、黒色トナーやインクなど色材等に一般的に用いられているカーボンブラックの他、ブラックマトリックス用レジスト組成物等に一般的に用いられているカーボンブラックが使用される。
【0031】
具体的には、以下に例示するカーボンブラックの1種または2種以上が選択される。
三菱化学社製のカーボンブラック:カーボンブラック#2400、#2350、#2300、#2200、#1000、#980、#970、#960、#950、#900、#850、MCF88、#650、MA600、MA7、MA8、MA11、MA100、MA220、IL30B、IL31B、IL7B、IL11B、IL52B、#4000、#4010、#55、#52、#50、#47、#45、#44、#40、#33、#32、#30、#20、#10、#5、CF9、#3050、#3150、#3250、#3750、#3950、ダイヤブラックA、ダイヤブラックN220M、ダイヤブラックN234、ダイヤブラックI、ダイヤブラックLI、ダイヤブラックII、ダイヤブラックN339、ダイヤブラックSH、ダイヤブラックSHA、ダイヤブラックLH、ダイヤブラックH、ダイヤブラックHA、ダイヤブラックSF、ダイヤブラックN550M、ダイヤブラックE、ダイヤブラックG、ダイヤブラックR、ダイヤブラックN760M、ダイヤブラックLP等。
【0032】
キャンカーブ社製のカーボンブラック:サーマックスN990、N991、N907、N908等。
【0033】
旭カーボン社製のカーボンブラック:旭#80、旭#70、旭#70L、旭F−200、旭#66、旭#66HN、旭#60H、旭#60U、旭#60、旭#55、旭20 #50H、旭#51、旭#50U、旭#50、旭#35、旭#15等。
【0034】
デグサ社製のカーボンブラック:ColorBlack Fw200、ColorBlack Fw2、ColorBlack Fw2V、ColorBlackFw1、ColorBlack Fw18、ColorBlack S170、ColorBlack S160、Nipex、SpecialBlack6、SpecialBlack5、SpecialBlack4、SpecialBlack4A、PrintexU、Print30 exV、Printex140U、Printex140V等。
尚、これらはいずれも商品名である。
【0035】
上記カーボンブラックにおいて、カーボンブラック表面のカルボキシル基濃度が少ない場合は、例えば、カーボンブラックを高温下で遊離酸素と接触させて酸化させる方法、オゾン、NO等の酸化剤によって酸化させる方法、臭素及び水によって、常圧下又は加圧下で処理する方法、硫酸や硝酸等の酸化性の溶液で酸化する方法等で、カーボンブラック表面にカルボキシル基を形成することにより、カーボンブラック表面のカルボキシル基濃度の調節がされる。
【0036】
−カルボジイミド基を有する化合物−
次に、本実施形態で使用されるカルボジイミド基を有する化合物について説明する。本実施形態に係るカルボジイミド基を有する化合物とは、分子内にカルボジイミド基、即ち、−N=C=N−を少なくとも2つ有する化合物である。カルボジイミド基を有する化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
カルボジイミド基を有する化合物は、ポリエステル樹脂などの重縮合樹脂のグラフト変性などに有用な化合物である。カルボジイミド基は、ポリエステル樹脂などにおけるカルボキシル基や水酸基などと反応することで、アミド結合やエステル結合を形成する。これらの化学構造の有無は、核磁気共鳴分光法中でもH−NMRによる測定を炭素複合粒子について行い、樹脂粒子のスペクトルと比較することによって確認される。
【0038】
カルボジイミド基を有する化合物は、ポリエステル樹脂だけでなく、付加重合型樹脂とも結合する。付加重合型の樹脂の中でもアクリル酸などカルボキシル基を有する単量体を用いた共重合体等とカルボジイミド基を有する化合物とは、カルボキシル基とカルボジイミド基との間で結合を形成するためである
【0039】
カルボジイミド基を2以上含有する化合物として、下記のポリイソシアネート化合物の1種または2種以上を重合させて得られるホモポリマーまたはコポリマーが挙げられる。
なお、ホモポリマーおよびコポリマーにおける重合度は特に制限されないが、望ましくは2以上100以下程度、さらに望ましくは2以上40以下程度である。
具体的には、カルボジイミド基含有ウレタン樹脂、カルボジイミド基含有アクリル樹脂、カルボジイミド基含有ポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0040】
上記ポリイソシアネート化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が例示される。
【0041】
上述したカルボジイミド基を有する化合物の市販品としては、テトラメチルキシリレンジイソシアネートを原料としたポリカルボジイミドとしてカルボジライトV−03、V−05等(いずれも商品名、日清紡社製)等が挙げられる。
【0042】
−カーボンブラックの表面処理方法及び炭素複合粒子の作製方法−
カルボジイミド基を有する化合物で表面処理されたカーボンブラック分散液は、例えば、溶媒中にカーボンブラックを分散し、次いでカルボジイミド基を有する化合物を同種の溶媒で溶解した溶液を加え、カーボンブラック表面のカルボキシル基とカルボジイミド基を有する化合物のカルボジイミド基とを加熱反応させることにより得られる。
【0043】
ここでカーボンブラックをビーズミルやホモジナイザーで微分散させながらカルボジイミド基を有する化合物を反応させる場合、分散液は高せん断力によって熱が発生するので、分散液を加熱しなくともよい。
【0044】
前記溶媒は、例えば、トルエンなどを含むベンゼン類、メチルエチルケトン(MEK)やアセトンを含むケトン類、酢酸エチルなどを含むエステル類、イソプロピルアルコール(IPA)などを含むアルコール類といった有機溶媒を少なくとも1種類含むものであってもよい。後述する乳化工程にて脱溶剤される溶媒を選択すればよい。
【0045】
本実施形態に係る炭素複合粒子及び炭素複合粒子分散液は、乳化工程におけるエマルジョン内でカルボジイミド基を有する化合物を表面に導入したカーボンブラックと樹脂とを混合し、カーボンブラック表面に存在するカルボジイミド基とカルボキシル基や水酸基を有する樹脂との反応を、加熱するなどして進行させることで製造してもよい。
【0046】
本実施形態に係る樹脂層を構成する樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン系樹脂やオレフィン系モノマーとスチレン系モノマーとの共重合体等が挙げられる。これらの中でも、ポリエステル樹脂及びポリウレタン樹脂から選択される少なくとも一種であることが望ましい。
【0047】
乳化方法としては、ポリエステル樹脂やポリウレタン樹脂など非水溶性の樹脂を乳化させる方法とスチレン系やアクリル系などのモノマーを乳化重合や懸濁重合の形態で重合させる方法がある。
【0048】
本実施形態に係る樹脂層は、転相乳化法により形成されてもよい。
転相乳化法は、樹脂が溶解する有機溶媒で樹脂を溶解させ、適切な撹拌によって水相中に油滴を分散させ、脱溶剤を経て樹脂粒子および樹脂粒子分散液を得る方法である。
転相乳化法において、樹脂を溶解させた非水溶性溶解液中にカルボジイミド基を有する化合物を導入したカーボンブラックを投入し混合する事によって、脱溶剤させるときまでに樹脂内のカルボキシル基や水酸基とカーボンブラック表面のカルボジイミド基とが反応し、エステル結合やアミド結合が形成され、カーボンブラックを被覆する樹脂層が形成される。そして、脱溶剤後はカーボンブラックがエステル結合やアミド結合によって樹脂に被覆された、炭素複合粒子が得られる。
【0049】
前記乳化法で用いる重縮合型樹脂は、非水溶性であり、非水溶性のものであれば特に限定はしない。
【0050】
本実施形態では、非水溶性の重縮合型樹脂としてポリエステル樹脂を用い、非水溶性溶剤としてメチルエチルケトン、アセトン、イソプロピルアルコールを少なくとも2種以上混合して用いてもよい。
【0051】
なお、前記ポリエステル樹脂も前記非水溶性溶剤のメチルエチルケトン等も各材料の組み合わせの一例であり、ポリエステル樹脂以外では、ポリウレタン樹脂、ポリイソシアネート系樹脂等を用いてもよい。
【0052】
さらには、重縮合型樹脂だけではなく、付加重合型樹脂であるポリオレフィン系樹脂やポリオレフィン系とスチレン系との共重合体、例えばポリスチレン−ブチルアクリレート共重合体等を樹脂層を構成する樹脂として用いてもよい。
【0053】
また、有機溶剤は、非水溶性、且つ、樹脂材料を溶解するものであれば、特に限定するものではない。例えば、トルエン、ベンゼン、THF(テトラヒドロフラン)等を用いても構わない。
酢酸エチルのような微小量が水に溶ける溶剤を使用しても構わないが、そのような材料の含有量は全溶剤の20%以下とすることが望ましい。
【0054】
モノマーを重合させる方法としては、例えば乳化重合が挙げられる。臨界ミセル濃度以上の界面活性剤の存在する水性分散媒に多数形成された界面活性剤ミセル内で水性重合開始剤による重合が開始し、重合の進行と共に逐次モノマーがミセル内に単量体粒子から供給され、該単量体粒子の枯渇又は重合停止の際には、界面活性剤で水性分散媒に分散した均一な重合体粒子および重合体粒子分散液が得られる方法である。
乳化重合の開始前即ち重合開始剤の添加前にカルボジイミド基を有する化合物を導入したカーボンブラック分散液を水性分散媒に投入し撹拌することで、重合過程においてプレポリマーのカルボキシル基または水酸基とカーボンブラック表面のカルボジイミド基とが反応し、エステル結合またはアミド結合が形成されてミセル内部に炭素複合粒子が形成される。
【0055】
また、カーボンブラックの表面にカルボジイミド基を有する化合物を導入する際に、被覆用の樹脂を添加することで、カーボンブラック表面へのカルボジイミド基を有する化合物の導入と並行してカーボンブラック表面のカルボジイミド基と樹脂のカルボキシル基または水酸基との反応が進行する。したがって一段階でカルボジイミド基を有する化合物を介してカーボンブラック表面と樹脂とが結合する。即ち、一段階でカーボンブラック表面に樹脂が被覆され、樹脂被覆カーボンブラックが得られる。この樹脂被覆カーボンブラックを炭素複合粒子として用いてもよい。
【0056】
樹脂被覆カーボンブラックは、カルボキシル基や水酸基を有する樹脂と親和性の高い表面性を有しているため、乳化工程において樹脂被覆カーボンブラックは油滴内に安定して内包化される。そのため、転相乳化法等により樹脂被覆カーボンブラックの表面をさらに樹脂で被覆することで炭素複合粒子を得てもよい。

【0057】
<カーボンブラックがカルボジイミド基を有する化合物を介して樹脂と結合していることを確認する方法>
炭素複合粒子内のカーボンブラックが、カルボジイミド基を有する化合物を介して樹脂と結合しているか否かの確認は、核磁気共鳴スペクトロメトリーと有機溶剤中での粒径測定により実施される。
【0058】
核磁気共鳴スペクトロメトリー中でもH−NMRを用いた方法は、樹脂のみ用いて作製された樹脂粒子と炭素複合粒子とを比較し、アミド部位及びエステル部位のシグナルの増減で結合の有無を確認するものである。また、カルボジイミド基を有する化合物のシグナルとも比較し、炭素複合粒子内にカルボジイミド基を有する化合物由来のシグナルを確認することで、化合物が反応に用いられているか確認される。
【0059】
前記測定のためのサンプルの調製法として、樹脂粒子の場合、無色の分散液を得た後に乾燥粉末を得た。炭素複合粒子の場合は、有機溶剤で溶解し、精製して黒色の分散液を得た後に乾燥粉末を得た。
【0060】
測定のためのサンプルの調製に用いられる有機溶剤は粒子を構成している樹脂が溶解するものであれば特に限定されるものではない。
【0061】
測定のためのサンプルの精製方法は、樹脂で被覆されたカーボンブラックが他の構成物と単離される精製法であれば、限定されるものではないが、遠心精製や透析などが主に用いられる。
【0062】
測定に用いられる重水素化溶媒は、粒子を構成している樹脂が溶解するものであれば特に規定されるものではない。
【0063】
有機溶媒中での粒径測定法としては、作製した炭素複合粒子を有機溶剤で溶解し、精製して得られた黒色の分散液の粒径測定を実施するものである。50nm以上500nm以下の範囲でピークが確認されれば、カーボンブラック表面に樹脂が化学結合によって修飾されているといえる。
【0064】
粒径測定法に用いられる有機溶剤は粒子を構成している樹脂が溶解するものであれば特に限定されるものではない。
【0065】
粒径測定法におけるサンプルの精製方法の選択は、樹脂で被覆されたカーボンブラックが他の構成物と単離される精製法であれば限定されるものではないが、遠心精製や透析などが主に用いられる。
【0066】
<炭素複合粒子分散液>
本実施形態に係る炭素複合粒子分散液は、本実施形態に係る炭素複合粒子と溶剤とを含む。本実施形態に係る溶剤としては、例えば、水、エタノール等が挙げられる。本実施形態に係る炭素複合粒子分散液は、樹脂層形成のための転相乳化法等の乳化工程を経て得られた乳化液又は分散液であってもよい。
【0067】
<静電荷像現像用トナー>
本実施形態に係る静電荷像現像用トナー(以下、単に「トナー」と称することがある。)は、結着樹脂と、離型剤と、本実施形態に係る炭素複合粒子と、を含有する。以下、本実施形態に係るトナーを構成する成分について説明する。
【0068】
−結着樹脂の選択および合成方法−
トナーの結着樹脂となる樹脂粒子としては、主に重縮合により得られる重縮合型樹脂の樹脂粒子や付加重合により得られる付加重合型樹脂の樹脂粒子が用いられる。該付加重合型樹脂の樹脂粒子分散液は、従来から知られる乳化重合などを用いて作製してもよい。
【0069】
本実施形態においては、トナーの結着樹脂となる樹脂粒子に重縮合型樹脂が含まれることが望ましく、重縮合型樹脂の樹脂粒子分散液は一旦バルク重合した樹脂を分散乳化する方法により得てもよいが、低環境負荷の観点から、水中で重縮合を行う方法を採ることもある。
【0070】
以下、前記重縮合型樹脂の樹脂粒子分散液の作製について説明する。
重縮合型樹脂の樹脂粒子分散液の製造では、水中で単量体を重縮合する工程が含まれる。この場合、予め単量体を機械的な強せん断力、超音波などを用いて、少量の界面活性剤、共界面活性剤、重合開始剤などが溶解していてもよい水系媒体中に分散した後、加熱し、重合を行う。また、必要に応じ、事前に単量体を他の媒体に溶解せしめ、更に必要であれば、界面活性剤、共界面活性剤等を溶解した油相を形成し、上記と同様の手法で、水系媒体中に分散し、重合を行う。
【0071】
この場合の重合方法としては、水系媒体中での粒子の重合方法として一般的な、懸濁重合法、ミニエマルジョン法、マクロエマルジョン法、ミクロエマルジョン法、多段膨潤法やシード重合を含む乳化重合法、ウレタン等の樹脂を用いた伸長反応法など通常の水系媒体中での不均一系重合形態が利用される。これらの重合方法の中で、均一な粒子径を得、粒子径分布が揃いやすいという点から、マクロエマルジョン法、ミニエマルジョン重合法、ミクロエマルジョン法が望ましく用いられ、最も好適にはミニエマルジョン重合法が選択される。
【0072】
重縮合型樹脂の樹脂粒子分散液の作製に用いられる重合性単量体は、特に限定されず、上述した各種重合法に用いられるものであれば、限定されない。
【0073】
本実施形態で用いられる重縮合性単量体としては、特に限定はなく、脂肪族、脂環族、芳香族の多価カルボン酸、それらのアルキルエステルと多価アルコール、それらのエステル化合物、多価アミンなどが挙げられ、それらを用いて直接エステル化反応、エステル交換反応などにより重合を行ってもよい。
【0074】
前記多価カルボン酸は、1分子中にカルボキシル基を2個以上含有する化合物である。
このうち、2価のカルボン酸は1分子中にカルボキシル基を2個含有する化合物であり、例えば、シュウ酸、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、β−メチルアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、フマール酸、シトラコン酸、ジグリコール酸、シクロヘキサン−3,5−ジエン−1,2−カルボン酸、リンゴ酸、クエン酸、ヘキサヒドロテレフタール酸、マロン酸、ピメリン酸、酒石酸、粘液酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラクロルフタル酸、クロルフタル酸、ニトロフタル酸、p−カルボキシフェニル酢酸、p−フェニレン二酢酸、m−フェニレンジグリコール酸、p−フェニレンジグリコール酸、o−フェニレンジグリコール酸、ジフェニル酢酸、ジフェニル−p,p’−ジカルボン酸、ナフタレン−1,4−ジカルボン酸、ナフタレン−1,5−ジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸等が挙げられる。
また、2価のカルボン酸以外の多価カルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレントリカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸、ピレントリカルボン酸、ピレンテトラカルボン酸等が挙げられる。
【0075】
本実施形態において、重縮合によりポリエステルを製造する場合には、多価カルボン酸のうち、アゼライン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカメチレンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、 1,12−ドデカンジカルボン酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等を用いることが望ましい。これらの多価カルボン酸は水に難溶あるいは不溶であるため、多価カルボン酸が水に分散した油滴中で重縮合反応が進行する。
【0076】
本実施形態に用いる重縮合性単量体としての多価アルコールは、1分子中に水酸基を2個以上含有する化合物である。このうち、2価のポリオールは1分子中に水酸基を2個含有する化合物であり、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール等が挙げられる。
また、2価のポリオール以外のポリオールとしては、例えば、グリセリン、ペンタエリスリトール、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサエチロールメラミン、テトラメチロールベンゾグアナミン、テトラエチロールベンゾグアナミン等が挙げられる。
【0077】
本実施形態において、重縮合によりポリエステルを製造する場合には、ポリオールのうち、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、1, 12−ドデカンジオール等の2価のポリオールを用いることが望ましい。これらのポリオールは水に難溶あるいは不溶であるため、ポリオールが水に分散した懸濁液中で重縮合反応が進行する。
【0078】
また、一分子中にカルボキシル基と水酸基とを含有する物質を使用し、重縮合を実施してもよい。例えば、ヒドロキシオクタン酸、ヒドロキシノナン酸、ヒドロキシデカン酸、ヒドロキシウンデカン酸、ヒドロキシドデカン酸、ヒドロキシテトラデカン酸、ヒドロキシトリデカン酸、ヒドロキシヘキサデカン酸、ヒドロキシペンタデカン酸、ヒドロキシステアリン酸等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0079】
これらの重縮合性単量体の組み合わせにより、非結晶樹脂や結晶性樹脂を容易に得られる。非晶性樹脂や結晶性樹脂としては、結晶性ポリエステルまたは結晶性ポリアミドが望ましく、結晶性ポリエステルがさらに望ましい。
結晶性ポリエステル樹脂を得るために使用されるジオールとしては、望ましくはエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4,ブテンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタングリコール、1,6−ヘキサングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールZ、水素添加ビスフェノールA等が挙げられる。
【0080】
また、結晶性ポリアミドを得るために使用されるジアミンとしては、望ましくはエチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンジアミン、1,2−プロピレンジアミン、1,3−プロピレンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1, 4−ブテンジアミン、2,2−ジメチル−1,3−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、1,4−シクロヘキサンジメタチルアミン等が挙げられる。
【0081】
結晶性ポリエステルや結晶性ポリアミドを得るために使用されるジカルボン酸としては、望ましくはシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマール酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、n−ドデシルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、イソドデシルコハク酸、イソドデセニルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、これらの酸無水物あるいは酸塩化物が挙げられる。
【0082】
特に望ましい結晶性樹脂としては、1、9−ノナンジオールと1,10−デカメチレンカルボン酸、またはシクロヘキサンジオールとアジピン酸とを反応して得られるポリエステル、1,6−ヘキサンジオールとセバシン酸とを反応して得られるポリエステル、エチレングリコールとコハク酸とを反応して得られるポリエステル、エチレングリコールとセバシン酸とを反応して得られるポリエステル、1,4−ブタンジオールとコハク酸とを反応して得られるポリエステルが挙げられる。これらの中でも特に1、9−ノナンジオールと1,10−デカメチレンカルボン酸とを反応させて得られるポリエステル及び1,6−ヘキサンジオールとセバシン酸とを反応させて得られるポリエステルがさらに望ましい。
【0083】
本実施形態において用いられる重縮合触媒としては、界面活性剤型触媒と金属触媒等が挙げられる。
【0084】
界面活性剤型触媒としては、界面活性効果を有する酸を例示でき、例えばドデシルベンゼンスルホン酸、イソプロピルベンゼンスルホン酸、アリルベンゼンスルホン酸、しょうのうスルホン酸、などのアルキルベンゼンスルホン酸、アルキルスルホン酸、アルキルジスルホン酸、アルキルフェノールスルホン酸、アルキルナフタリンスルホン酸、アルキルテトラリンスルホン酸、アルキルアリルスルホン酸、石油スルホン酸、アルキルベンゾイミダゾールスルホン酸、高級アルコールエーテルスルホン酸、アルキルジフェニルスルホン酸、モノブチルフェニルフェノール硫酸、ジブチルフェニルフェノール硫酸、ドデシル硫酸などの高級脂肪酸硫酸エステル、高級アルコール硫酸エステル、高級アルコールエーテル硫酸エステル、高級脂肪酸アミドアルキロール硫酸エステル、高級脂肪酸アミドアルキル化硫酸エステル、ナフテニルアルコール硫酸、硫酸化脂肪、スルホ琥珀酸エステル、各種脂肪酸、スルホン化高級脂肪酸、高級アルキルリン酸エステル、樹脂酸、樹脂酸アルコール硫酸、ナフテン酸、ニオブ酸、およびこれらすべての塩化合物、例えば、希土類金属との塩化合物などが使用されるが、これに限定されない。これらは、必要に応じて複数を組み合わせても良い。
【0085】
これらのうち、望ましく使用される界面活性効果を有する酸としては、ドデシルベンゼンスルホン酸、イソプロピルベンゼンスルホン酸、しょうのうスルホン酸等が挙げられる。
【0086】
前記金属触媒としては、例えば、有機スズ化合物、有機チタン化合物、有機ハロゲン化スズ化合物、希土類金属を含む触媒が望ましく挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0087】
次に、重縮合型樹脂の樹脂粒子分散液を製造する方法について説明する。
樹脂粒子分散液の製造は、樹脂粒子原料として、重縮合性単量体を含む単量体を水系媒体中で混合し乳化または分散させる乳化または分散工程と、これらの単量体の重合反応を行い樹脂粒子を形成する重合工程と、を経て行われる。
【0088】
本実施形態においては、樹脂粒子分散液中の樹脂粒子の体積平均粒子径は0.05μm以上2.0μm以下の範囲であることが望ましく、0.1μm以上1.5μm以下の範囲がより望ましく、0.1μm以上1.0μm以下の範囲がさらに望ましい。上記粒子径の樹脂粒子を得るためには、前記混合した単量体を上記粒子径範囲となるように分散することが望ましい。
【0089】
粒子径が小さすぎると凝集合一法によるトナー製造のときに、粒子化の際の凝集性が悪化し、遊離の樹脂粒子の発生が生じやすく、また系の粘度も上昇しやすくなって粒子径の制御が困難になる。粒子径が大きすぎると、粒子化の際、粗粉の発生が生じやすくなり粒度分布が悪化するとともにワックスなどの離型剤が遊離しやすくなるために、定着時の剥離性やオフセットの発生温度が低下したりすることがある。
【0090】
また、樹脂粒子分散液中においては、超微粉や超粗粉の発生がないことも重要であり、体積平均粒子径が0.01μm以上0.05μm以下の範囲の粒子の比率は10個数%以下であることが望ましく、5個数%以下であることがさらに望ましい。
【0091】
なお、樹脂粒子の体積平均粒子径は、レーザー回析式粒度分布測定装置(堀場製作所製、LA−920)を用いて測定される。
【0092】
また、乳化・分散工程においては、微小油滴を形成することとなるが、該微小油滴形成方法としては、例えば、単量体または樹脂溶液と、界面活性剤の水溶液とを、ピストンホモジナイザー、マイクロ流動化装置(例えば、マイクロフルー、ディックス社製「マイクロフルーダイザー」)、超音波分散機等の剪断混合装置によって均一に混合し、乳化させる方法が挙げられる。その際、水に対する単量体の仕込み量は、水との合計量に対して0.01質量%以上50質量%以下程度とし、界面活性剤の使用量は、形成されるエマルジョンの存在下において臨界ミセル濃度程度とすることが望ましい。
【0093】
なお、臨界ミセル濃度程度の界面活性剤量による単量体エマルジョンの重合開始剤の存在下での該単量体の重合は、例えば、P.L.Tang,E.D.Sudol,C.A.Silebi,M.S.El−Aasser;J.Appl.Polym.Sci.,第43巻,1059頁(1991)等に記載されている、所謂“ミニエマルジョン重合”として知られている。臨界ミセル濃度以上の界面活性剤量の存在下での従来の乳化重合が界面活性剤ミセル内で重合を開始し単量体粒子からの単量体の拡散による供給を受けて重合体粒子が成長し形成されるのに対して、“ミニエマルジョン重合”では、単量体粒子内で単量体が重合することから均一な重合体粒子が形成される。また更に、ポリエステル/ビニル複合重合体の“ミニエマルジョン重合”では、重合過程において単量体の拡散が不要なことから、ポリエステルはそのまま重合体粒子内に存在し得る利点を有する。
【0094】
また、例えば、J.S.Guo,M.S.El−Aasser,J.W.Vanderhoff;J.Polym.Sci.:Polym.Chem.Ed.,第27巻,691頁(1989)等に記載されている、粒子径5nm以上50nm以下の粒子の所謂“マイクロエマルジョン重合”は、 “ミニエマルジョン重合”と同様の分散構造及び重合機構を有するものであるが、“マイクロエマルジョン重合”では、臨界ミセル濃度以上の界面活性剤を多量に使用するものであり、得られる重合体粒子中に多量の界面活性剤が混入するとか、或いは、その除去のために水洗浄、酸洗浄、或いはアルカリ洗浄等の工程に多大な時間を要する等の問題が存在する場合がある。
【0095】
前記重合工程は、上記のようにして乳化または分散させた単量体粒子の分散液に対し、加熱を行うことにより実施する。
【0096】
なお、重縮合は従来よりも低温で行われてもよく、重合温度は50℃以上120℃以下の範囲で行うことが望ましい。
【0097】
重縮合性単量体を重合して得られる樹脂粒子の重量平均分子量は、1500以上60000以下の範囲であることが望ましく、3000以上40000以下の範囲であることがより望ましい。重量平均分子量が1500を下回ると、トナーとした場合結着樹脂の凝集力が低下しやすくなり耐オフセット性が低下する場合がある。60000を超えると、耐オフセット性は良いものの最低定着温度が上昇する場合がある。
なお、樹脂粒子中では単量体のカルボン酸価数、アルコール価数などの選択により、一部枝分かれや架橋などを有していても良い。
【0098】
また、樹脂粒子が結晶性樹脂を含む場合は、樹脂粒子の融解温度は50℃以上120℃未満であることが望ましく、特に55℃以上90℃以下の範囲であることが望ましい。用いる結晶性樹脂の融解温度が50℃未満の場合には得られるトナーの耐ブロッキング性が不良となることがあり、また120℃以上の場合には、トナーの低温における溶融流動性が低下して定着性が悪くなるおそれがある。
【0099】
樹脂粒子が非晶性の場合には、樹脂粒子のガラス転移温度Tgは50℃以上80℃以下が望ましく、さらに望ましくは50℃以上60℃以下の範囲である。Tgが50℃を下回ると、高温度域での結着樹脂自体の凝集力が低下するため、定着の際にホットオフセットが生じやすくなることがあり、80℃を超えると十分な溶融が得られず、最低定着温度が上昇することがある。
【0100】
−離型剤の選択−
離型剤の例としては、各種エステルワックス、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類、加熱により軟化点を有するシリコーン類、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等のような脂肪酸アミド類やエステルワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等のような植物系ワックス、ミツロウのような動物系ワックス、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等のような鉱物、石油系ワックス及びそれらの変性物が挙げられる。
【0101】
これらの離型剤は、水中にイオン性界面活性剤や高分子酸や高分子塩基などの高分子電解質とともに分散し、融解温度以上に加熱するとともに強い剪断をかけられるホモジナイザーや圧力吐出型分散機により粒子化することで、1μm以下の粒子の分散液が作製される。
これらの離型剤はトナー構成固体分総量に対して5質量%以上25質量%以下の範囲で添加することが望ましい。
【0102】
−界面活性剤,内添剤の選択−
本実施形態においては、必要に応じて、本実施形態の効果に影響を与えない範囲で、公知の内添剤を1種または複数を組み合わせて配合してもよい。内添剤としては、例えば、難燃剤、難燃助剤、光沢剤、防水剤、撥水剤、無機充填剤(表面改質剤)、酸化防止剤、可塑剤、界面活性剤、分散剤、滑剤、充填剤、体質顔料、結着剤、帯電制御剤、抗菌剤等が挙げられる。
【0103】
内添剤としては、帯電制御剤として4級アンモニウム塩化合物、ニグロシン系化合物など通常使用される種々の帯電制御剤を使用してもよいが、製造時の安定性と廃水汚染減少の点から水に溶解しにくい材料が好適である。
【0104】
難燃剤、難燃助剤としては、すでに汎用されている臭素系難燃剤や、三酸化アンチモン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ポリリン酸アンモニウムが例示されるがこれに限定されるものではない。
【0105】
なお、例えば樹脂粒子の分散、離型剤の分散、凝集、凝集粒子の安定化などに界面活性剤を用いてもよい。具体的には、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系等のアニオン界面活性剤、アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン系界面活性剤、ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等の非イオン性界面活性剤が挙げられる。分散手段としては、回転せん断型ホモジナイザーやメデイアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミルなどの一般的なものが使用される。
【0106】
−トナーの特性−
本実施形態に係るトナーの体積平均粒子径は特に規定するものではないが、4μm以上9μm以下の範囲であることが望ましい。体積平均粒子径が4μmより小さいと、トナー流動性が低下し、格段にクリーニング性が困難となる場合がある。体積平均粒子径が9μmより大きいと、解像度が低下するため、十分な画質が得られなくなり、近年の高画質要求を満たすことが困難となる場合がある。
【0107】
なお、上記体積平均粒子径の測定は、コールターマルチサイザー(コールター社製)を用いて行ってもよい。この際、測定はトナーを電解質水溶液(アイソトン水溶液)に分散させ、超音波処理の後に行ってもよい。
【0108】
さらに、本実施形態に係るトナーは、形状係数SF1が110以上140以下の範囲の球状であることが望ましい。形状がこの範囲の球状であることにより、転写効率、画像の緻密性が向上し、高画質な画像が形成される。
上記形状係数SF1は110以上130以下の範囲であることがより望ましい。
【0109】
ここで上記形状係数SF1は、下記式(1)により求められる。
SF1=(ML/A)×(π/4)×100 ・・・ 式(1)
上記式(1)中、MLはトナーの絶対最大長、Aはトナーの投影面積を各々示す。
【0110】
前記SF1は、主に顕微鏡画像または走査型電子顕微鏡(SEM)画像を画像解析装置を用いて解析することによって数値化され、例えば、以下のようにして算出される。すなわち、スライドガラス表面に散布した粒子の光学顕微鏡像をビデオカメラを通じてルーゼックス画像解析装置に取り込み、100個の粒子の最大長と投影面積を求め、上記式(1)によって計算し、その平均値を求めることにより得られる。
【0111】
<静電荷像現像用トナーの製造方法>
本実施形態に係るトナーは、樹脂粒子分散液中の樹脂粒子を、少なくとも炭素複合粒子と離型剤粒子と共に凝集(会合)させ、この凝集粒子を融合させることにより作製される。
【0112】
好適には、凝集合一法によるトナー粒子の調製方法が用いられる。
詳細には、結着樹脂を分散した結着樹脂分散液と離型剤を分散した離型剤分散液と本実施形態に係る炭素複合粒子分散液とを混合し、前記結着樹脂と前記離型剤と炭素複合粒子とを含む凝集粒子の分散液を調製する凝集粒子分散液調製工程と、加熱により前記凝集粒子を融合・合一する融合・合一工程と、必要に応じて洗浄工程と乾燥工程とを経ることによりトナー粒子が得られる。
この製法では、加熱温度条件を選択することでトナー形状が不定形から球状まで制御される。
【0113】
本実施形態に係る炭素複合粒子は結着樹脂粒子と同種の樹脂から成るものであり、凝集工程での挙動は結着樹脂粒子と同等とみなせる。そのため、トナー内で該炭素複合粒子は高分散化され、内部のカーボンブラックも凝集されることなくトナー内で分散された状態となる。
【0114】
−凝集粒子分散液調製工程−
前記凝集粒子分散液調製工程においては、結着樹脂を分散した結着樹脂分散液と離型剤を分散した離型剤分散液と本実施形態に係る炭素複合粒子分散液とを混合して混合液とし、結着樹脂のガラス転移温度以下の温度で加熱して凝集させ、凝集粒子を形成してもよい。凝集粒子の形成は、攪拌下、混合液のpHを酸性にすることによってなされてもよい。pHとしては、2以上7以下の範囲が望ましく、2.2以上6以下の範囲がより望ましく、2.4以上5以下の範囲がさらに望ましい。この際、凝集剤を使用することも有効である。
なお、凝集粒子分散液調製工程において、離型剤分散液は、結着樹脂分散液等の各種分散液とともに一度に添加・混合してもよいし、複数回に分割して添加しても良い。
【0115】
凝集剤としては、分散剤に用いる界面活性剤と逆極性の界面活性剤、無機金属塩の他、2価以上の金属錯体が好適に用いられる。特に、金属錯体を用いた場合には界面活性剤の使用量を低減でき、帯電特性が向上するため特に望ましい。
【0116】
前記無機金属塩としては、例えば、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウムなどの金属塩、および、ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、多硫化カルシウム等の無機金属塩重合体などが挙げられる。その中でも特に、アルミニウム塩およびその重合体が好適である。よりシャープな粒度分布を得るためには、無機金属塩の価数が1価より2価、2価より3価、3価より4価の方が、また、同じ価数であっても重合タイプの無機金属塩重合体の方が、より適している。
本実施形態においては、アルミニウムを含む4価の無機金属塩の重合体を用いることが、シャープな粒度分布を得るため望ましい。
【0117】
また、前記凝集粒子が所望の粒子径になったところで結着樹脂を追添加することで(被覆工程)、コア凝集粒子の表面を該結着樹脂で被覆した構成のトナーを作製してもよい。この場合、離型剤がトナー表面に露出しにくくなるため、帯電性や現像性の観点で望ましい構成である。追添加する場合、追添加前に凝集剤を添加したり、pH調整を行ってもよい。
【0118】
−融合・合一工程−
融合・合一工程においては、前記凝集粒子分散液調製工程に準じた攪拌条件下で、凝集粒子の懸濁液のpHを3以上9以下の範囲に上昇させることにより凝集の進行を止め、結着樹脂のガラス転移温度以上の温度で加熱を行うことにより凝集粒子を融合・合一させる。前記加熱の時間としては、融合がされる程度行えばよく、0.5時間以上10時間以下程度行えばよい。
【0119】
融合後に冷却し、融合粒子を得る。融合して得た融合粒子は、ろ過などの固液分離工程や、必要に応じて洗浄工程、乾燥工程を経てトナー粒子とされる。
【0120】
トナー粒子には乾燥後、流動性助剤やクリーニング助剤として、シリカ、アルミナ、チタニア、炭酸カルシウムなどの無機粒子やビニル系樹脂、ポリエステル、シリコーンなどの樹脂粒子を乾燥状態でせん断をかけて表面へ添加(外添)してもよい。
【0121】
<静電荷像現像剤>
以上説明した本実施形態に係る静電荷像現像用トナーは、静電荷像現像剤として使用される。この現像剤は、本実施形態に係る静電荷像現像用トナーを含有することの外は特に制限はなく、目的に応じて各種成分組成とされてもよい。静電荷像現像用トナーを、単独で用いると一成分系の静電荷像現像剤として調製され、また、キャリアと組み合わせて用いると二成分系の静電荷像現像剤として調製される。
【0122】
キャリアとしては、特に制限はなく、それ自体公知のキャリアが挙げられ、例えば、特開昭62−39879号公報、特開昭56−11461号公報等に記載された樹脂被覆キャリア等の公知のキャリアが使用される。
なお静電荷像現像剤における、トナーとキャリアとの混合比としては、特に制限はなく、目的に応じて選択される。
【0123】
前記静電荷像現像剤(静電荷像現像用トナー)は、通常の静電荷現像方式(電子写真方式)の画像形成方法に使用される。上記画像形成方法は、具体的には、例えば、静電荷像形成工程、トナー画像形成工程、転写工程、定着工程及びクリーニング工程を含んでもよい。前記各工程は、それ自体一般的な工程であり、例えば、特開昭56−40868号公報、特開昭49−91231号公報等に記載されている。
【0124】
<トナー内のカーボンブラックがカルボジイミド基を有する化合物によって被覆樹脂と結合していることを確認する手段>
本実施形態では、前記トナー内のカーボンブラックが、カルボジイミド基を有する化合物によって被覆樹脂と結合していることを確認するために有機溶剤中での分散体の粒子径測定を実施した。
【0125】
有機溶媒中での粒子径測定法としては、作製したトナーを有機溶剤で溶解し、精製して得られた黒色の分散液の粒子径測定を実施するものである。50nm以上500nm以下の範囲でシングルピークが確認されれば、カーボンブラックが凝集せず安定に分散していると判断でき、カーボンブラック表面に樹脂が化学結合しているといえる。カーボンブラック表面に樹脂が結合できていない場合は、2乃至3山分布(CB同士の凝集塊+被覆されていないCB+樹脂で被覆された粒子)となる。
【0126】
前記有機溶剤はトナーを構成している結着樹脂が溶解するものであれば特に規定されるものではない。
【0127】
前記粒子径測定法におけるサンプルの精製方法の選択は、樹脂で被覆されたカーボンブラックが他の構成物と単離される精製法であれば規定されるものではないが、遠心精製や透析などが主に用いられる。
【実施例】
【0128】
以下、本実施形態を実施例により具体的に説明する。ただし、下記の実施例及び比較例によって本実施形態が限定されるものではない。
【0129】
−各種特性の測定方法−
まず、実施例、比較例で用いたトナー等の物性の測定方法について説明する。
(トナーの体積平均粒子径DV50、個数平均粒子径Dp50及び粒度分布GSDv)
本実施形態におけるトナーの体積平均粒子径DV50、個数平均粒子径Dp50及び粒度分布GSDv測定では、測定装置としてはコールターマルチサイザー(コールター社製)を用い、電解液はISOTON−II(コールター社製)を使用した。
測定法としては、分散剤として界面活性剤、望ましくはアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムの5%水溶液2ml中に測定試料を0.5mg以上50mg以下加えた。これを前記電解液100ml以上150ml以下中に添加した。試料を懸濁した電解液は超音波分散器で約1分間分散処理を行い、コールターマルチサイザーにより、アパーチャー径として100μmアパーチャーを用いて2μm以上60μm以下の粒子の粒径分布を測定した。測定する粒子数は50000とした。
なお、粒度分布GSDvは、「GSDv=(DV84/DV16)1/2」の式によって求められる。ここで、DV84は粒子径の体積分布における小径側からの累積84%となる粒子径値であり、DV16は粒子径の体積分布における小径側からの累積16%となる粒子径値である。また、DV50は粒子径の体積分布における小径側からの累積50%となる粒子径値であり、Dp50は粒子径の個数分布における小径側からの累積50%となる粒子径値である。
【0130】
(樹脂の分子量、分子量分布測定方法)
本実施形態における重量平均分子量Mwおよび数平均分子量Mnの値は、下記の測定法によって求めた。すなわち、ゲル・パーミュエーション・クロマトグラフィ(GPC)によって、以下に記す条件で重量平均分子量Mwおよび数平均分子量Mnを測定した。
<条件>
温度40℃において、溶媒(テトラヒドロフラン)を毎分1.2mlの流速で流し、濃度0.2g/20mlのテトラヒドロフラン試料溶液を試料質量として3mg注入し測定を行った。試料の分子量測定にあたっては、当該試料の有する分子量が数種の単分散ポリスチレン標準試料により、作製された検量線の分子量の対数とカウント数が直線となる範囲内に包含される測定条件を選択する。
なお、測定結果の信頼性は、上述の測定条件で行ったNBS706ポリスチレン標準試料が、重量平均分子量Mw=28.8×10、数平均分子量Mn=13.7×10となることにより確認される。また、用いるGPCのカラムとしては、前記条件を満足するものであるならばいかなるカラムを採用してもよい。具体的には、例えばTSK−GEL、GMH(東洋曹達社製)等を用いてもよい。
【0131】
(樹脂粒子、炭素複合粒子等の体積平均粒子径)
樹脂粒子、炭素複合粒子等の体積平均粒子径は、レーザー回析式粒度分布測定装置(堀場製作所製、LA−920)で測定した。
【0132】
−樹脂の合成−
(非晶性ポリエステル樹脂aの合成)
ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物675質量部、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物75質量部、テレフタル酸300質量部、分岐構造を有する(分岐率15%)ドデセニルコハク酸15質量部、分岐構造を有さない(分岐率2%未満)ドデセニルコハク酸135質量部、ジブチル錫オキサイド6質量部、を加熱乾燥した三口フラスコに入れた後、減圧操作により容器内の空気を減圧し、さらに窒素ガスにより不活性雰囲気下とし、機械攪拌にて230℃、常圧(101.3kPa)にて10時間反応させ、さらに8kPaにて1時間反応させた。180℃まで冷却してフマル酸40質量部、ハイドロキノン2.0質量部を添加し、210℃まで4時間かけて昇温し、1時間反応させた後、8kPaにて軟化点が110℃になるまで反応させ、非晶性ポリエステル樹脂aを得た。
GPC測定によって得られた分子量はMnが5500、Mwが15000であった。
なお、軟化点はフローテスター(島津製作所、CFT−5000)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出し、試料の半量が流出した温度とした。
【0133】
(非晶性ポリエステル樹脂bの合成)
ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物675質量部、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物75質量部、テレフタル酸300質量部、分岐構造を有する(分岐率15%)ドデセニルコハク酸15質量部、分岐構造を有さない(分岐率2%未満)ドデセニルコハク酸135質量部、ジブチル錫オキサイド6質量部、を加熱乾燥した三口フラスコに入れた後、減圧操作により容器内の空気を減圧し、さらに窒素ガスにより不活性雰囲気下とし、機械攪拌にて230℃、常圧(101.3kPa)にて10時間反応させ、さらに8kPaにて1時間反応させた。180℃まで冷却してフマル酸300質量部、ハイドロキノン1.5質量部を添加し、210℃まで4時間かけて昇温した後、1時間反応させた後、8kPaにて軟化点が110℃になるまで反応させ、非晶性ポリエステル樹脂bを得た。
GPC測定によって得られた分子量はMnが6400、Mwが18000であった。
【0134】
(非晶性ポリエステル樹脂cの合成)
非晶性ポリエステル樹脂bの調製において、分岐構造を有する(分岐率15%)ドデセニルコハク酸30質量部、分岐構造を有さない(分岐率2%未満)ドデセニルコハク酸120質量部とした以外は同様の操作を実施し、非晶性ポリエステル樹脂cを得た。
得られた分子量はMnが11000、Mwが28000であった。
【0135】
(非晶性ポリエステル樹脂dの合成)
ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物525質量部、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物225質量部、テレフタル酸375質量部、フマル酸20質量部、分岐構造を有する(分岐率15%)ドデセニルコハク酸60質量部、分岐構造を有さない(分岐率2%未満)ドデセニルコハク酸240質量部、ジブチル錫オキサイド6質量部、を加熱乾燥した三口フラスコに入れた後、減圧操作により容器内の空気を減圧し、さらに窒素ガスにより不活性雰囲気下とし、機械攪拌にて230℃、常圧(101.3kPa)にて10時間反応させ、さらに8kPaにて1時間反応させた。210℃まで冷却して無水トリメリト酸を75質量部添加し、1時間反応させた後、8kPaにて軟化点が115℃になるまで反応させ、非晶性ポリエステル樹脂dを得た。
得られた分子量はMnが22000、Mwが45000であった。
【0136】
−表面被覆されたカーボンブラック分散液の作製−
<分散液A−1の作製>
カンペ家庭塗料(株)製サンドミルの1Lベッセル内に1mmφガラスビーズ300質量部とMEK350質量部を仕込み、デグザ(株)製カーボンブラックNIPEXを10質量部加え、3枚羽の分散羽を取り付けた。日清紡(株)製カルボジライトV−05を10質量部加え、4時間混合した。得られたMEK分散液200質量部をA−1とした。
分散性を目視で確認したところ、一部沈降しているものの黒色の分散液が得られた。表1に仕込み量と分散性の確認結果を載せた。
【0137】
<分散液B−1の作製>
カンペ家庭塗料(株)製サンドミルの1Lベッセル内に分散液A−1を200質量部と非晶性ポリエステル樹脂aを10質量部仕込んだ。1mmφガラスビーズ300質量部とMEK150質量部を加え、3枚羽の分散羽を取り付け、4時間混合した。得られたMEK分散液200質量部をB−1とした。
分散性を目視で確認したところ、沈降物の無い黒色の分散液が得られた。表1に仕込み量と分散性の確認結果を載せた。
【0138】
<分散液C−1の作製>
カンペ家庭塗料(株)製サンドミルの1Lベッセル内に1mmφガラスビーズ300質量部とMEK350質量部を仕込み、デグザ(株)製カーボンブラックNIPEXを10質量部加え、3枚羽の分散羽を取り付けた。日清紡(株)製カルボジライトV−05を10質量部と非晶性ポリエステル樹脂aを10質量部加え、4時間混合した。得られたMEK分散液200質量部をC−1とした。
分散性を目視で確認したところ、沈降物の無い黒色の分散液が得られた。表1に仕込み量と分散性の確認結果を載せた。
【0139】
<分散液R−1の作製>
カンペ家庭塗料(株)製サンドミルの1Lベッセル内に1mmφガラスビーズ300質量部とMEK350質量部を仕込み、デグザ(株)製カーボンブラックNIPEXを10質量部加え、3枚羽の分散羽を取り付け、4時間混合した。得られたMEK分散液200質量部をR−1とした。
分散性を目視で確認したところ、黒色の沈降物と透明な上澄みに分離した分散液が得られた。表1に仕込み量と分散性の確認結果を載せた。
【0140】
表1の「分散液の分散性」の欄における各評価は、以下の基準による。
分散:分散液作製時において、スライドガラスに分散液を薄く塗布し薄膜を作製した際に、薄膜の厚みが均一であることが光学電子顕微鏡で確認できること。数日保存しても沈殿物が確認されないこと。上記2つの条件を共に満たす状態。
やや良好:上記2つの条件をどちらか1つ満たす状態。
凝集・沈殿:上記2つの条件を満たさない状態。
【0141】
−表面被覆されたカーボンブラック分散液を用いた炭素複合粒子分散液の作製−
<実施例1>
乳化槽に非晶性ポリエステル樹脂bを100質量部と分散液A−1を50質量部入れ、MEK150質量部とIPAとアセトンの混合溶媒50質量部(IPA:アセトン=4:1(質量比))を加え、50rpmの撹拌速度で樹脂を溶解させ、分散液をよく混合させた。
得られた分散液に水を10分間に400質量部の速度で30分添加し(合計質量1200部添加)、乳化させた。次いで、減圧下で有機溶剤を除去し、炭素複合粒子分散液(1)を得た。
H−NMRによる測定及び有機溶剤中での粒径測定を実施したところ、カーボンブラックがカルボジイミド基を有する化合物を介して非晶性ポリエステル樹脂bと結合していることが確認された。
【0142】
<実施例2>
実施例1で用いた分散液A−1の代わりに分散液B−1を50質量部用いた以外は実施例1と同様にして炭素複合粒子分散液(2)を得た。
H−NMRによる測定及び有機溶剤中での粒径測定を実施したところ、カーボンブラックがカルボジイミド基を有する化合物を介して非晶性ポリエステル樹脂bと結合していることが確認された。
【0143】
<実施例3>
実施例1で用いた分散液A−1の代わりに分散液C−1を50質量部用いた以外は実施例1と同様にして炭素複合粒子分散液(3)を得た。
H−NMRによる測定及び有機溶剤中での粒径測定を実施したところ、カーボンブラックがカルボジイミド基を有する化合物を介して非晶性ポリエステル樹脂bと結合していることが確認された。
【0144】
<比較例1>
実施例1で用いた分散液A−1の代わりに分散液R−1を50質量部用いた以外は実施例1と同様にして炭素複合粒子分散液(10)を得た。
【0145】
<実施例4>
実施例1で用いた非晶性ポリエステル樹脂bの代わりに非晶性ポリエステル樹脂cを100質量部用いた以外は実施例1と同様にして炭素複合粒子分散液(4)を得た。
H−NMRによる測定及び有機溶剤中での粒径測定を実施したところ、カーボンブラックがカルボジイミド基を有する化合物を介して非晶性ポリエステル樹脂cと結合していることが確認された。
【0146】
<実施例5>
実施例2で用いた非晶性ポリエステル樹脂bの代わりに非晶性ポリエステル樹脂cを100質量部用いた以外は実施例2と同様にして炭素複合粒子分散液(5)を得た。
H−NMRによる測定及び有機溶剤中での粒径測定を実施したところ、カーボンブラックがカルボジイミド基を有する化合物を介して非晶性ポリエステル樹脂cと結合していることが確認された。
【0147】
<実施例6>
実施例3で用いた非晶性ポリエステル樹脂bの代わりに非晶性ポリエステル樹脂cを100質量部用いた以外は実施例3と同様にして炭素複合粒子分散液(6)を得た。
H−NMRによる測定及び有機溶剤中での粒径測定を実施したところ、カーボンブラックがカルボジイミド基を有する化合物を介して非晶性ポリエステル樹脂cと結合していることが確認された。
【0148】
<比較例2>
比較例1で用いた非晶性ポリエステル樹脂bの代わりに非晶性ポリエステル樹脂cを100質量部用いた以外は比較例1と同様にして炭素複合粒子分散液(11)を得た。
【0149】
<実施例7>
実施例1で用いた非晶性ポリエステル樹脂bの代わりに非晶性ポリエステル樹脂dを100質量部用いた以外は実施例1と同様にして炭素複合粒子分散液(7)を得た。
H−NMRによる測定及び有機溶剤中での粒径測定を実施したところ、カーボンブラックがカルボジイミド基を有する化合物を介して非晶性ポリエステル樹脂dと結合していることが確認された。
【0150】
<実施例8>
実施例2で用いた非晶性ポリエステル樹脂bの代わりに非晶性ポリエステル樹脂dを100質量部用いた以外は実施例2と同様にして炭素複合粒子分散液(8)を得た。
H−NMRによる測定及び有機溶剤中での粒径測定を実施したところ、カーボンブラックがカルボジイミド基を有する化合物を介して非晶性ポリエステル樹脂dと結合していることが確認された。
【0151】
<実施例9>
実施例3で用いた非晶性ポリエステル樹脂bの代わりに非晶性ポリエステル樹脂dを100質量部用いた以外は実施例3と同様にして炭素複合粒子分散液(9)を得た。
H−NMRによる測定及び有機溶剤中での粒径測定を実施したところ、カーボンブラックがカルボジイミド基を有する化合物を介して非晶性ポリエステル樹脂dと結合していることが確認された。
【0152】
<比較例3>
比較例1で用いた非晶性ポリエステル樹脂bの代わりに非晶性ポリエステル樹脂dを100質量部用いた以外は比較例1と同様にして炭素複合粒子分散液(12)を得た。
【0153】
表2に炭素複合粒子分散液の作製結果をまとめた。
実施例1乃至9では、粒径分布にバラつきがあったものの、炭素複合粒子内にカーボンブラックが内包されている様子が走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)等を用いることにより確認された。乳化用樹脂の種類に関わらず、炭素複合粒子分散液が得られた。これらの炭素複合粒子分散液(1)乃至(9)を、次工程のトナー作製に用いた。
また、THFにて炭素複合粒子を溶解し、分散液の粒子径測定を行った。THFにて炭素複合粒子を溶解したところ、黒色の分散液が得られた。
比較例1乃至3ではカーボンブラックが水相側に出てしまい、樹脂粒子内に取り込まれず、炭素複合粒子は形成されなかった。
【0154】
表2の「内包化」の欄における各評価は以下の基準による。
内包化:走査型電子顕微鏡(SEM)にてカーボンブラック由来の凝集体が確認されず、透過型電子顕微鏡(TEM)にて樹脂がカーボンブラックの表面を被覆する形態が確認された状態。
内包、大径:走査型電子顕微鏡(SEM)にてカーボンブラック由来の凝集体が確認されず、透過型電子顕微鏡(TEM)にて樹脂がカーボンブラックの表面を被覆する形態が確認されたものの、一部の粒子にて粒径が体積平均粒子径の倍以上あるものが確認される状態。
分離:走査型電子顕微鏡(SEM)また透過型電子顕微鏡(TEM)にてカーボンブラック由来の凝集体が確認された状態。
表2の「粒子の粒子径分布」の欄における各評価は以下の基準による。
S:GSDvが1以上1.2未満の範囲である。
M:GSDvが1.2以上1.3未満の範囲である。
W:GSDvが1.3以上の範囲である。
【0155】
−トナーの作製−
<実施例10>
(非晶性ポリエステル樹脂c粒子分散液(10)の調製)
前記非晶性ポリエステル樹脂cを350質量部と、メチルエチルケトン210質量部と、イソプロピルアルコール61.8質量部とをセパラブルフラスコに入れ、これを40℃で充分混合、溶解した後、10質量%アンモニア水溶液を16.24質量部滴下した。加熱温度を65℃に下げ、攪拌しながらイオン交換水を送液ポンプを用いて送液速度30質量部/minで滴下し、液が白濁したのち、送液速度60質量部/minに上げ、総液量が1400質量部になったところで、イオン交換水の滴下を止めた。その後、減圧下で溶媒の除去を行い、非晶性ポリエステル樹脂c粒子分散液を得た。得られた非晶性ポリエステル樹脂c粒子の体積平均粒子径は161nm、樹脂粒子の固形分濃度は23.3質量%であった。
【0156】
(結晶性樹脂粒子分散液(11)の調製)
加熱乾燥した三口フラスコに、1,10−ドデカン二酸250質量部と、1,9−ノナンジオール150質量部と、触媒としてジブチル錫オキサイド0.4質量部とを入れ、その後減圧操作により、三口フラスコ内の空気を窒素に置換して不活性雰囲気下として、機械攪拌により180℃、5時間攪拌し、且つ還流して反応を進行させた。反応の間、反応系内において生成した水を留去した。その後、減圧下において、230℃まで徐々に昇温し、3時間攪拌して粘稠な状態となったところでGPCにて分子量を確認し、重量平均分子量25000になったところで、減圧蒸留を停止し結晶性ポリエステル樹脂を得た。
【0157】
ついで、この結晶性ポリエステル樹脂350質量部と、メチルエチルケトン210質量部と、イソプロピルアルコール61.8質量部とをセパラブルフラスコに入れ、これを40℃で充分混合、溶解した後、10質量%アンモニア水溶液を16.24質量部滴下した。加熱温度を65℃に下げ、攪拌しながらイオン交換水を送液ポンプを用いて送液速度15質量部/minで滴下し、液が白濁したのち、送液速度60質量部/minに上げ、総液量が1400質量部になったところで、イオン交換水の滴下を止めた。その後、減圧下で溶媒の除去を行い、結晶性樹脂粒子分散液を得た。得られた結晶性ポリエステル樹脂粒子の体積平均粒子径は168nm、樹脂粒子の固形分濃度は31.6質量%であった。
【0158】
(離型剤分散液1の調製)
・エステルワックスWEP5(日本油脂(株)製):500質量部
・アニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株):ネオゲンRK):50質量部
・イオン交換水:1700質量部
以上を110℃に加熱して、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて分散した後、マントンゴーリン高圧ホモジナイザ(ゴーリン社)で分散処理し、平均粒子径が0.180μmである離型剤を分散させてなる離型剤分散液1(離型剤濃度:31.1質量%)を調製した。
【0159】
(着色剤分散液1の調製)
・カーボンブラック(デグザ(株)製、Nipex):100質量部
・アニオン界面活性剤(第一工業製薬社製:ネオゲンRK):15質量部
・イオン交換水:900質量部
以上を混合し、溶解し、高圧衝撃式分散機アルティマイザー((株)スギノマシン製、HJP30006)を用いて1時間分散して着色剤を分散させてなる着色剤分散液1を調製した。着色剤分散液1における着色剤(カーボンブラック)の平均粒子径は、0.136μm、着色剤粒子濃度は25.1質量%であった。
【0160】
(トナー粒子の作製)
・炭素複合粒子分散液(1) 100質量部
・非晶性ポリエステル樹脂c粒子分散液(10) 127質量部
・結晶性樹脂粒子分散液(11) 50質量部
・離型剤分散液 40質量部
・ポリ塩化アルミニウム 0.15質量部
・イオン交換水 300質量部
【0161】
前記成分のうち、まず炭素複合粒子分散液(1)、非晶性ポリエステル樹脂c粒子分散液(10)及び結晶性樹脂粒子分散液(11)を混合して、60℃で2時間加熱した後冷却し、他の成分を併せて丸型ステンレス製フラスコ中に入れ、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)で混合・分散した後、加熱用オイルバスでフラスコ内を攪拌しながら42℃まで加熱し、42℃で60分間保持した後、非晶性ポリエステル樹脂c粒子分散液(10)を50質量部追加して攪拌した。その後、0.5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液で系内のpHを6.0に調整した後、攪拌を継続しながら95℃まで加熱した。
【0162】
95℃までの昇温の間、通常の場合、系内のpHは5.0以下まで低下するが、ここでは水酸化ナトリウム水溶液を追加滴下し、pHが5.5以下とならないように保持した。
反応終了後、冷却し、濾過し、イオン交換水で洗浄した後、ヌッチェ式吸引濾過で固液分離した。そして、40℃のイオン交換水3リットル中に再分散し、300rpmで15分間攪拌、洗浄した。この洗浄操作を5回繰り返し、ヌッチェ式吸引濾過で固液分離し、次いで、真空乾燥を12時間行いトナー粒子を得た。
【0163】
トナー粒子をTHFにて溶解させTHF分散液の粒子径測定を実施したところ、50nm以上500nm以下の範囲でシングルピークが得られた。
【0164】
(トナー、現像剤の調製)
上記のトナー粒子50質量部に対し、疎水性シリカ(キャボット社製、TS720)1.2質量部を添加し、サンプルミルで混合して外添トナーを得た。外添トナーの体積平均粒子径DV50及び個数平均粒子径Dp50を求めた。測定結果をまとめて表3に示す。
また、ルーゼックス画像解析装置による形状観察より求めたトナー粒子の形状係数SF1は118であり、ポテト形状であった。
次いで、ポリメチルメタアクリレート(綜研化学社製:重量平均分子量、75000)を1質量%被覆した体積平均粒子径50μmのフェライトキャリアを用い、トナー濃度が5質量%になるように前記の外添トナーを秤量し、両者をボールミルで5分間攪拌・混合して現像剤を調製した。
【0165】
−トナーの評価−
(帯電性)
作製した現像剤をフタ付きのガラス瓶に秤量し、高温高湿下(温度28℃、湿度85%)で24時間シーズニングした後、ターブラミキサーで5分間攪拌震盪した。撹拌震盪したトナーの帯電量(μC)をブローオフ帯電量測定装置で測定して高温高湿下の帯電量を得た。得られた結果を表3に示す。
【0166】
(誘電特性)
外添トナー5質量部を直径5cmの型に入れ、10tonの荷重を1分間かけて成型し、これをヒューレット・パッカード社製MULTI−FREQUENCY LCRMETERの誘電体測定用電極に設置し、JIS K6911に記載されている方法により、周波数1kHzの条件で誘電損失を測定した。得られた結果を表3に示す。
誘電損失は、交流電場下におかれた誘電体の抵抗を表す指標であり、値が大きいほど抵抗は低下することが知られている。本実施形態のトナーは、上記構成とすることにより誘電損失が低下する。誘電損失としては、望ましくは0.1以下であり、さらに望ましくは0.05以下である。誘電損失が0.05を超えると、転写工程において電荷注入によるかぶりの原因になる場合があり、望ましくない。
【0167】
(カブリ評価)
カラー複写機としてDocuCentre II−C3300(富士ゼロックス社製)を用意し、これの現像器の現像バイアスとして直流成分と交流成分とのどちらも印加できるように改造した。具体的には、直流バイアスとして−520V、交流バイアスとしてVpp1.5kVを各々独立に印加できるようにした。
上記改造機を画像形成装置として用い、これに前記現像剤を装填し、前記直流バイアスと交流バイアスとを重畳した現像条件とした。
画像条件は25mm×25mmのソリッド画像で、トナー載り量は15.0g/mに調整した。
温度35℃、相対湿度50%の環境条件において、5000枚の連続印刷を行い定着画像を得た。
5000枚目の定着後の画像に関するカブリについて、目視により以下の判断基準で評価した。得られた結果を表3に示す。
○○:目視上カブリが無く、実使用上問題無い。
○:目視上若干カブリが見られるが、実使用上許容される。
×:目視上若干カブリが見られ、実使用上許容できない。
××:目視上カブリが顕著であり、実使用上明らかに許容できない。
【0168】
(発色性)
上記改造機を画像形成装置として用い、上記の条件にて定着画像を得た。発色性の指標として画像濃度を画像濃度計X Rite938(X Rite社製)により測定した。得られた結果を表3に示す。
【0169】
<実施例11>
炭素複合粒子分散液(1)の代わりに炭素複合粒子分散液(2)を用いた以外は、実施例10と同様にして外添トナー及び現像剤を得、実施例10と同様の評価を実施した。得られた結果を表3に示す。
トナー粒子をTHFにて溶解させTHF分散液の粒子径測定を実施したところ、50nm以上500nm以下の範囲でシングルピークが得られた。
また、ルーゼックス画像解析装置による形状観察より求めたトナー粒子の形状係数SF1は114であり、すべてポテト形状であった。
【0170】
<実施例12>
炭素複合粒子分散液(1)の代わりに炭素複合粒子分散液(3)を用いた以外は、実施例10と同様にして外添トナー及び現像剤を得、実施例10と同様の評価を実施した。得られた結果を表3に示す。
トナー粒子をTHFにて溶解させTHF分散液の粒子径測定を実施したところ、50nm以上500nm以下の範囲でシングルピークが得られた。
また、ルーゼックス画像解析装置による形状観察よりトナー粒子の形状係数SF1は115であり、すべてポテト形状であった。
【0171】
<実施例13>
炭素複合粒子分散液(1)の代わりに炭素複合粒子分散液(4)を用いた以外は、実施例10と同様にして外添トナー及び現像剤を得、実施例10と同様の評価を実施した。得られた結果を表3に示す。
トナー粒子をTHFにて溶解させTHF分散液の粒子径測定を実施したところ、50nm以上500nm以下の範囲でシングルピークが得られた。
また、ルーゼックス画像解析装置による形状観察よりトナー粒子の形状係数SF1は120であり、すべてポテト形状であった。
【0172】
<実施例14>
炭素複合粒子分散液(1)の代わりに炭素複合粒子分散液(5)を用いた以外は、実施例10と同様にして外添トナー及び現像剤を得、実施例10と同様の評価を実施した。得られた結果を表3に示す。
トナー粒子をTHFにて溶解させTHF分散液の粒子径測定を実施したところ、50nm以上500nm以下の範囲でシングルピークが得られた。
また、ルーゼックス画像解析装置による形状観察よりトナー粒子の形状係数SF1は117であり、すべてポテト形状であった。
【0173】
<実施例15>
炭素複合粒子分散液(1)の代わりに炭素複合粒子分散液(6)を用いた以外は、実施例10と同様にして外添トナー及び現像剤を得、実施例10と同様の評価を実施した。得られた結果を表3に示す。
トナー粒子をTHFにて溶解させTHF分散液の粒子径測定を実施したところ、50nm以上500nm以下の範囲でシングルピークが得られた。
また、ルーゼックス画像解析装置による形状観察よりトナー粒子の形状係数SF1は114であり、すべてポテト形状であった。
【0174】
<実施例16>
炭素複合粒子分散液(1)の代わりに炭素複合粒子分散液(7)を用いた以外は、実施例10と同様にして外添トナー及び現像剤を得、実施例10と同様の評価を実施した。得られた結果を表3に示す。
トナー粒子をTHFにて溶解させTHF分散液の粒子径測定を実施したところ、50nm以上500nm以下の範囲でシングルピークが得られた。
また、ルーゼックス画像解析装置による形状観察よりトナー粒子の形状係数SF1は115であり、すべてポテト形状であった。
【0175】
<実施例17>
炭素複合粒子分散液(1)の代わりに炭素複合粒子分散液(8)を用いた以外は、実施例10と同様にして外添トナー及び現像剤を得、実施例10と同様の評価を実施した。得られた結果を表3に示す。
トナー粒子をTHFにて溶解させTHF分散液の粒子径測定を実施したところ、50nm以上500nm以下の範囲でシングルピークが得られた。
また、ルーゼックス画像解析装置による形状観察よりトナー粒子の形状係数SF1は116であり、すべてポテト形状であった。
【0176】
<実施例18>
炭素複合粒子分散液(1)の代わりに炭素複合粒子分散液(9)を用いた以外は、実施例1と同様にして外添トナー及び現像剤を得、実施例10と同様の評価を実施した。得られた結果を表3に示す。
トナー粒子をTHFにて溶解させTHF分散液の粒子径測定を実施したところ、50nm以上500nm以下の範囲でシングルピークが得られた。
また、ルーゼックス画像解析装置による形状観察よりトナー粒子の形状係数SF1は117であり、すべてポテト形状であった。
【0177】
<比較例4>
実施例10において、炭素複合粒子分散液(1)の代わりに着色分散液1を34質量部用い、非晶性ポリエステル樹脂c粒子分散液(10)を127質量部から232質量部に、イオン交換水を300質量部から250質量部に使用量を変更した以外は実施例10と同様にして外添トナー及び現像剤を得、実施例10と同様の評価を実施した。得られた結果を表3に示す。
トナー粒子をTHFにて溶解させTHF分散液の粒子径測定を実施したところ、50nm以上500nm以下の範囲でピークが得られた。
また、ルーゼックス画像解析装置による形状観察よりトナー粒子の形状係数SF1は117であり、すべてポテト形状であった。
【0178】
【表1】

【0179】
【表2】

【0180】
【表3】

【0181】
表3より実施例1乃至9すべてにおいて、比較例1と比べ帯電性は改善し誘電損失は低下した。また、トナーの粒子径分布も若干ではあるが改善が見られた。
THFにてトナーを溶解させると、比較例1では黒色の沈降物が発生したが、実施例1乃至9では黒色の分散液が得られた。この分散液を粒子径測定したところ、170nm以上400nm以下の範囲で幅広のシングルピークが得られた。このことから、トナー作製後もカーボンブラックと非晶性ポリエステル樹脂とは結合していることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンブラックと前記カーボンブラックを被覆する樹脂層とを有し、前記カーボンブラックと前記樹脂層を構成する樹脂とが、カルボジイミド基を有する化合物を介して結合している炭素複合粒子。
【請求項2】
前記樹脂が、ポリエステル樹脂及びポリウレタン樹脂から選択される少なくとも一種である請求項1に記載の炭素複合粒子。
【請求項3】
前記樹脂層が、転相乳化法により形成されたものである請求項1又は請求項2に記載の炭素複合粒子。
【請求項4】
体積平均粒子径が、100nm以上250nm以下である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の炭素複合粒子。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の炭素複合粒子と溶剤とを含む炭素複合粒子分散液。
【請求項6】
結着樹脂と、離型剤と、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の炭素複合粒子と、を含有する静電荷像現像用トナー。
【請求項7】
結着樹脂を分散した結着樹脂分散液と離型剤を分散した離型剤分散液と請求項5に記載の炭素複合粒子分散液とを混合し、前記結着樹脂と前記離型剤と炭素複合粒子とを含む凝集粒子の分散液を調製する凝集粒子分散液調製工程と、
加熱により前記凝集粒子を融合・合一する融合・合一工程と、を有する請求項6に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。

【公開番号】特開2011−38035(P2011−38035A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−188665(P2009−188665)
【出願日】平成21年8月17日(2009.8.17)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】