説明

炭質材料からの低分子量有機化合物製造プロセス

本発明は、所定の温度および圧力でシフト触媒の存在下において、炭質材料を一酸化炭素(CO)および水蒸気と接触させるステップを含む、炭質材料からの低分子量有機化合物製造プロセスを開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭質材料からの低分子量有機化合物製造プロセスに関し、特に、水性ガスシフト反応による炭質物質の水素化分解および/または脱酸素化により低分子量有機化合物を製造するプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
持続的な社会的、経済的発展という背景においては、長期にわたり適正価格でエネルギー供給を確保することに関心が高まっている。重質芳香族原材料をエンジンモータの駆動に好適な軽質芳香族原材料へ転換することが主な焦点となっている。石油原材料やリグノセルロースバイオマスのいずれかに由来するこの重質原料は、水素および特殊な触媒の存在下、きわめて高い圧力および、かなり高い温度である広範囲において、より軽質の生成物に転化される。原材料が高パラフィン含有量を有する場合、水素の主な機能は、多環式芳香族化合物の形成を防止することである。プロセスは、通常、クラッキングまたは水素化処理/水素化分解を伴っていた。水素化処理は大量の水素を必要とするため、プロセス経済性を悪化させる。水素化分解プロセスにおける水素の他の重要な役割は、タール形成を軽減させ、触媒上へのコークスの堆積を防止することである。水素化はまた、原材料中に存在する硫黄化合物および窒素化合物を、硫化水素およびアンモニアへ転化することにも役立つ。大部分の水素化分解ユニットは、その高圧での操作のために、往復的水素補給やリサイクルコンプレッサに信頼性の問題を抱えている。水素化分解ユニットにおける異なる部分および付属物が高温の硫黄による腐食の被害を受けており、内部ガスケット座面の潜在的な崩壊や、その後の高圧水素の低圧領域への進入を防止するために溶接補修が必要となっていた。
【0003】
既存の研究では、高圧システムを達成するため、ほとんどの場合において、水素が存在するクラッキングプロセスを記載している。特許文献1は、(a)天然ガスから合成ガスを生成し、(b)コバルトフィッシャートロプシュ触媒の存在下において、第1段で水素化脱ろうし、脱ろう燃料および部分的に脱ろうした潤滑剤画分を生成する潤滑油範囲において、燃料中で沸騰するロウ質を、炭化水素供給物の合成に有効な反応条件で、Hと合成ガス中のCOを反応させて、脱ろう燃料および潤滑剤基本原料を調製するプロセスを記載している。部分的に脱ろうした潤滑剤画分は、高沸点および低沸点画分に分離される。特許文献2は、一般に、フィッシャートロプシュ触媒の分野に関する。特に、この発明は、フィッシャートロプシュ触媒およびその形成方法に関する。ここでもまた水素が必要であり、高い圧力が必要とされる。特許文献3には、水素が豊富な合成ガスを製造する方法が開示されている。この方法によれば、CO含有合成ガスが、水の存在下に無白金ルテニウム−コバルト水性ガスシフト(「WGS」)触媒と接触され、好ましくは約450℃未満の温度において水素が豊富な合成ガスが製造される。これは、a)Ru、その酸化物またはこれらの混合物、b)Co、Mo、これらの酸化物またはこれらの混合物、および、c)Li、Na、K、Rb、Cs、Ti、Zr、Cr、Fe、La、Ce、Euの少なくとも1種、これらの酸化物から配合され、アルミナ、ジルコニア、チタニア、セリア、マグネシア、ランタニア、ニオビア、ゼオライト、ペロブスカイト、シリカクレイおよび酸化鉄のいずれか、またはこれらの組み合わせ等による担持体上に担持された、無白金ルテニウム−コバルト水性ガスシフト触媒を開示している。特許文献4は、触媒および触媒を用いる炭化水素の自己熱式、接触水蒸気改質プロセスに関する。このプロセス中の多層触媒は、好ましくは燃料電池の改質器システムにおける、水素含有燃料ガスの製造に用いられる。米国特許においては、CO選択的触媒は触媒材料を備え、触媒材料は、Pt、Pd、Rh、Ir、Os、Ru、Ta、Zr、Y、Ce、Ni、Cu、および酸化物からなる群から選択される。CO選択的触媒の形成方法は、触媒材料および担持体の合成ステップを備える。特許文献5には、有機水素供与体溶剤中の金属酸化物または、鉄ベースの触媒の存在下において、リグニンの還元により芳香族化合物分解物または界面活性物質をリグニンから形成する方法が開示されている。リグニンフェノールを製造するために、アルコキシル化、アルキル化、スルホン化、硫酸化、アルコキシ硫酸化、およびスルホメチル化などのうちの1つ、あるいは、これらの反応の組み合わせが利用される。特許文献6には、界面活性物質をリグニンから形成する他の同様の方法が開示されている。特許文献7は、強塩基の存在下で、リグニンの熱分解を経たリグニンから低分子量フェノール系化合物を製造するプロセスを記載している。好ましい実施形態において、水酸化カリウムは微量存在し、熱分解温度は大気圧で400℃〜600℃、反応の実質的な完了のための時間は約1〜3分間である。特許文献8において、微酸性の担持体上に担持されたタングステン−ニッケル触媒の存在下でのリグニンの水素化分解は、より高い収率、より優れた選択性でフェノール系化合物を生じさせる。クレゾールとCからCのフェノール類の両方の収率を増加させた塩化第一鉄などのルイス酸が得られる。特許文献9においては、粒状の炭質供給物材料がプロセス由来のスラリ化油と混合され、沸騰触媒床水素化分解反応器に供給される。反応条件は、温度650°F〜850°F、500〜2500psig水素分圧、および1.0〜10wt.リグニン/hr/wt触媒の空間速度で維持される。主な収量であるフェノールおよびベンゼンは、このプロセスの中央点で得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7132042号明細書
【特許文献2】米国特許第7163963号明細書
【特許文献3】米国特許第7160534号明細書
【特許文献4】米国特許第7150866号明細書
【特許文献5】米国特許第6207808号明細書
【特許文献6】米国特許第6100385号明細書
【特許文献7】米国特許第5807952号明細書
【特許文献8】米国特許第4647704号明細書
【特許文献9】米国特許第4420644号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の主な目的は、炭質材料からの低分子量有機化合物製造プロセスを提供することである。
【0006】
本発明の他の目的は、従来技術のプロセスの問題の少なくとも1つを克服する、炭質材料からの低分子量有機化合物製造プロセスを提供することである。
【0007】
本発明の他の目的は、従来技術のプロセスと比べてより低い圧力および、より低い温度要件における、炭質材料からの低分子量有機化合物製造プロセスを提供することである。
【0008】
本発明の他の目的は、水性ガスシフト反応による炭質物質の水素化分解および/または脱酸素化による、低分子量有機化合物製造プロセスを提供することである。
【0009】
本発明の他の1つの目的は、ヒドロキシル類、エステル類、エポキシ類あるいはフェノール類の脱酸素化、または原油の転換プロセスを提供することである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のプロセスにおいては、水素化分解における圧力要因が、水素を現位置で生成することにより回避され、新たな一連の触媒が、一酸化炭素ガスおよび、水蒸気または水の存在下での触媒水性ガスシフト(WGS)反応により開発されている。ここで、一酸化炭素は、さらに、酸素を豊富に含む化合物の脱酸素剤として用いられる。このプロセスを効率的に作用させるため、新たな一連の触媒が開発されており、そのうち、遷移金属オキサレートのアンモニア錯体からの低温調製法がきわめて有意である。250〜450℃、2〜30bar圧力内に制限するため、担持された遷移金属触媒を、一酸化炭素の存在下で用いる。
【0011】
産業にて利用される水素のほとんどは一酸化炭素のシフト反応により生成されるが、これはエネルギー集約的であり、その生成のために個別のシステムを必要とする。気体水素の代わりに発生期水素を取り込むことにより、2〜30barで実施できるよう反応の圧力を下げるアイデアが発展した。水性ガスシフト(WGS)は、活性水素を生成するために化学産業にて利用される最も古い触媒プロセスの一種である。この反応では、水蒸気および一酸化炭素ガスが用いられ、220〜450℃の触媒の存在下で水素が生成される。
【0012】
【化1】

【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明のプロセスに基づく、3時間での、COによる3MeO−フェノールのフェノールへの転換を示す。
【図2】図2本発明のプロセスに基づく、3時間での、COによるo−クレゾールのフェノールおよび、2,5ジメチルフェノールへの転換を示す。
【図3】図3は、選択的脱酸素化および水素化シフト反応の結果を示す。
【図4a】図4aは、本発明のプロセスに基づく、60分後のCOでのリグニン分解の結果を示す。
【図4b】図4bは、本発明のプロセスに基づく、90分後のCOによるリグニン分解の結果を示す。
【図4c】図4cは、本発明のプロセスに基づく、180分後のCOによるリグニン分解の結果を示す。
【図5a】図5aは、250℃、30barでの、COによる本発明のプロセスに基づくリグニン脱酸素化の結果を示す。
【図5b】図5bは、250℃、30barでの、Hによる本発明のプロセスに基づくリグニン脱酸素化の結果を示す。
【図5c】図5cは、250℃、30barでの、Nによる本発明のプロセスに基づくリグニン脱酸素化の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、炭質材料からの低分子量有機化合物製造プロセスを提供する。炭質材料は、特にこれらに限定されないが、長鎖炭化水素、炭質固形廃棄物、リグノセルロース塊、クラフト木材、植物固形廃棄物を含む群から選択される。本発明のプロセスから製造される低分子量化合物は、特にこれらに限定されないが、芳香族化合物、アルコール、フラン等を含む群から選択される。
【0015】
本発明のプロセスにおいては、炭質材料は、水および/または水蒸気、一酸化炭素と共に、シフト触媒の存在下で接触される。水性ガスシフト反応(WGS)の実施に好適であるシフト触媒のいずれもが、本発明のプロセスに用いることができる。成形固形シフト触媒であるシフト触媒が本発明のプロセスにおいて用いられ、シフト触媒は炭質材料中に含浸されている。
【0016】
本発明のプロセスにおいて、発生期形態の水素は、水素化分解および/または脱酸素化を生じる発生期形態で生成される。発生期水素はきわめて活性であるので、本発明のプロセスにおいて要求される圧力および温度は、従来の公知プロセスよりもかなり低い。
【0017】
本発明のプロセスにおいて要求される温度は250〜450℃の範囲内であり、圧力は1〜50barの範囲内である。本プロセスにおける圧力および温度要求がかなり低いことが明確に理解できる。
【0018】
より重質の原料から軽油、フェノール、低級芳香族化合物を製造するために、本発明のプロセスを効果的に用いることができる。本発明のプロセスのメカニズムでは、元素水素は、不飽和水素化、酸素結合に、または、相当の低圧での脱酸素化に利用できるよう、触媒表面上に座する。本発明のプロセスにおいて、発生期形態で生成された水素は、他の原子水素の引力と活性触媒部位の引力との間で競合する。水素は、水素化およびクラッキングに利用できるよう、活性触媒部位に座する。発生期水素は無加圧でもきわめて活性であり、100〜150bar圧力、400〜450℃の温度が必要とされる分子または気体水素の熱力学的バリアに打ち勝つ。本発明のプロセスにおいて、温度の熱力学的制約はまた、250〜450℃の間でプロセスを実施することによっても打ち勝つことができる。
【0019】
炭質固形廃棄物、リグノセルロース塊、クラフト木材等の分解については、本発明のプロセスがきわめて有用である。分子的に分散した触媒はさらに活性であり、従来の水素化分解の高圧および温度のバリアを超えて原子水素を引き付けるため、触媒は現位置で調製され、サンプル塊上に堆積される。シュウ酸亜鉛(30〜70%ZnO)、シュウ酸ニッケル(20〜80%NiO)と、バイオマスまたは固体の混合物に原料アンモニアガスが通気されて、5〜18barの圧力が維持される。200〜400℃の温度では、これらの錯体は良好に分解されて酸化物を形成し、バイオマスの表面上に堆積される。熱分解金属オキサレートアンモニア錯体が、熱重量分析−質量分析法(TGA−MS)を用いて調べられた。オキサレート水和物は2つのステップで分解される。150〜200℃では水が失われて無水化合物が生成され、320〜370℃では分解されて酸化物が形成する。140℃〜220℃でアンモニアが失われ、無水金属オキサレートが生成される。本プロセスおよび触媒は、固体バイオマスまたは炭質物質が重合し、また、コークスを形成しやすくなる650℃の高温が要求されるため、従来の共沈殿プロセスと比べて独特である。
【0020】
ヒドロキシル炭素−酸素結合開裂は、リグノセルロース、植物固形廃棄物または炭質固形分の品質向上において重要な化学変換である。アリール炭素−酸素結合を開裂する一般的な方法を見出すため、数多くの試みがなされている。フェノール脱酸素化のすべての化学量論的有機法は限定的な用途しか有さず、高価な試薬を利用する。フェノールの水素化脱酸素化(HDO)触媒法は担持された遷移金属酸化物を利用する。典型的なフェノール水素化脱酸素化条件は、100barを超える水素圧、200℃を超える温度を利用する。これらの条件下では、アレーン環水素化は、一般にフェノール脱酸素化と競合することが見出され、副産物である水は触媒の活性を損なわせることが見出されている。
【0021】
本方法は、WGSから生じるCOを用いたフェノール系またはいずれかのヒドロキシル官能基の選択的触媒脱酸素化の実施可能性を提供する。
【0022】
【化2】

【0023】
WGSを用いた一酸化炭素によるC−O−X(X=H、R、Ar等)の脱酸素化は、CO除去および、芳香族または炭化水素中間体の形成を介する触媒脱酸素化経路を本発明者らにもたらした。このメカニズムは、恐らく金属O−C錯体により仲介されている。構造敏感な錯体の存在により、この反応は促進される。
【0024】
本発明は、図面および特定の実施形態を参照して記載されており、この記載は、限定的な意味で解釈されることは意図していない。本発明の種々の他の実施形態は、本発明の記載を参照することで当業者に明らかになるであろう。従って、このような別の実施形態も本発明の一部を構成すると考えられている。
【実施例】
【0025】
〔実施例1〕
水中の10%重量/体積3−メトキシフェノールを、600ccステンレス鋼攪拌反応器において、250℃温度で3時間、30barで圧力が維持されている一酸化炭素中で加熱した。この実験においては、2%Ruのルテニウム酸化物、30%コバルト、および70%モリブデン酸の7%モリブデン酸コバルトを含有する0.1%(基材に対して)触媒を、80/20シリカ−アルミナ共ゲル化ベース上で用いた。反応の後、反応混合物を冷却し、ろ過し、およびジクロロメタンで抽出した。抽出組成物はガスクロマトグラフィにより測定される。抽出物中のフェノール(基材に対して17%)およびo−クレゾール(基材に対して7%)の存在により、シフト反応からの選択的熱分解、脱酸素化水素化を判定する。一酸化炭素の代わりに水素および窒素を用いて、同一の反応をそれぞれ2回の異なる実施で行った。これらの2つの反応において、基材、溶剤および触媒は実施例1aに記載のものと同一の割合(組成)で用い、反応条件も同一である。冷却した反応混合物をろ過し、ジクロロメタンで抽出した。抽出物はガスクロマトグラフィにより試験される(図1)。窒素雰囲気においては、フェノールは生じなかったが、その一方で、水素では、フェノールの生成はわずかに2.3%である。この事実は、温和な条件での脱酸素剤として、COの優位性を明らかにした。
【0026】
〔実施例2〕
水中の5%重量/体積o−クレゾールが、600ccステンレス鋼攪拌反応器において、250℃温度で3時間、30barで圧力が維持されている一酸化炭素中で加熱される。この実験においては、8%Niのニッケル酸化物を含有する0.1%(基材に対して)触媒を80/20シリカ−アルミナ共ゲル化ベース上で用いた。冷却した反応混合物をろ過し、ジクロロメタンで抽出した。抽出物はガスクロマトグラフィにより試験される。抽出物中のフェノール(基材に対して9.8%)および2,5−ジメチルフェノール(基材に対して7%)の存在により、シフト反応から生じる選択的熱分解および水素化を判定する(図2)。
【0027】
〔実施例3〕
水中の10%重量/体積3−メトキシフェノールが、600ccステンレス鋼攪拌反応器において、150℃温度で4時間、15barで圧力が維持されている一酸化炭素中で加熱される。この実験においては、1.25%RuのRu/γ−Alを含有する3.6mol%(基材に対して)触媒を用いた。冷却した反応混合物をろ過し、ジクロロメタンで抽出した。抽出組成物はガスクロマトグラフィにより測定される。抽出物における主生成物中のo−クレゾール(基材に対して10%)の存在およびp−エチルフェノール(基材に対して2.3%)の存在により、シフト反応から生じる選択的脱酸素化および水素化を判定する(図3)。
【0028】
〔実施例4〕
この反応においては、100cc塩基性水中のリグノセルロースバイオマスから単離された5gmリグニンの2%炭酸ナトリウム溶液での温和な塩基性条件が用いられ、反応混合物は、一酸化炭素ガスと共に、250℃、20bar圧力で3時間加熱される。用いられる触媒は、80/20シリカ−アルミナ共ゲル化ベース上に堆積された5%酸化亜鉛と、8%コバルト(30%)モリブデン酸(70%)である。サンプルは異なる時間間隔で回収され、ジクロロメタンで抽出される。抽出物はガスクロマトグラフィにより試験される。時間経過に伴うp−エチルフェノール(図4a、b、c)の割合の増加は、リグニン中に存在する二重結合の水素化を表す。
【0029】
バイオマス(炭酸ナトリウムの100cc2%溶液中の5gmリグニン)からのリグニン供給材料が、水素化分解反応器の充填された触媒床に供給される。250℃温度、20barガス圧の反応条件で維持され、一酸化炭素流速は20%(残りは窒素である)触媒で制御される。操作は30分間継続される。液体反応生成物はジクロロメタンで抽出される。生成物は、GCで分析される。主生成物であるp−エチルフェノールを伴うフェノール類の存在により、プロセスの実行可能性を表す。
【0030】
〔実施例5〕
一酸化炭素の有効性を証明するため、水素環境および窒素環境がリグニン脱酸素化に用いられる。これらの3つの反応においては、2%炭酸ナトリウム溶液100cc水中のバイオマスから生成された5gmのリグニンが用いられ、反応混合物は、ガスと共に、それぞれ30bar圧力で3時間、250℃に加熱される。5%酸化亜鉛および8%コバルト(30%)モリブデン酸(70%)が用いられた触媒は、80/20シリカ−アルミナ共ゲル化ベース上に堆積された。結果物が異なる時間間隔で回収され、ジクロロメタンで抽出される。抽出物はガスクロマトグラフィにより試験される。COを用いた選択的生成物の割合の増加および、全体的な高液体転換(24%)は、脱酸素化および水素化に関して、付加価値生成物への分解を明らかにする。水素および窒素によれば、全体的な液体転換は11%および8%である(図5)。
【0031】
<発明の作用>
1)水性ガスシフト反応による発生期水素が、水素化分解のための経済的な代替物として用いられた。
2)水素化分解に用いられたすべての触媒担持体(Co−Mo酸化物(いずれかの組み合わせによる)、Ni W酸化物(いずれかの組み合わせによる)、Fe−Cr酸化物(いずれかの組み合わせによる)、または、いずれかのSi/Al比率によるいずれかの遷移金属組み合わせ)。
3)水素化分解触媒上でのシフト触媒の使用は、遷移金属酸化物のすべての対を含む(いずれかの組み合わせによる)。
4)水素化分解触媒上でのシフト触媒の遷移金属析出が、本発明において用いられる。
5)固体炭質サンプル上に分子的に分散した触媒が本発明のプロセスにおいて用いられる。
6)分子分散体は、遷移金属のいずれかの対のいずれかの組み合わせによる。
7)反応温度よりかなり低温での、固体サンプル上に分子的に分散した触媒の調製方法は新規である。
8)実施例に記載の方法は、重合のみならずコーク形成をも防止するための唯一の触媒形成プロセスである。
9)実施例4に記載の前記反応による、重質の原料または、固体炭質物質の炭素−酸素結合の脱酸素化は新規である。
10)フェノールの脱酸素化は本発明のプロセスにより行われる。
11)いずれかの水酸化アリールの脱酸素化は本発明のプロセスにより行われる。
12)グルコースを含むいずれかの水酸基の脱酸素化は本発明のプロセスにより行われる。
13)エポキシ酸素の開環は本発明のプロセスにより行われる。
14)エーテル結合の開裂は本発明のプロセスにより行われる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の温度および圧力で、シフト触媒の存在下において、炭質材料を、一酸化炭素(CO)および水蒸気と接触させるステップを備える、炭質材料からの低分子量有機化合物製造プロセス。
【請求項2】
炭質材料が、長鎖炭化水素、炭質固形廃棄物、リグノセルロース塊、クラフト木材、植物固形廃棄物を備える群から選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
低分子量化合物が、芳香族化合物、アルコール、フランを含む群から選択される、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
シフト触媒は、固形シフト触媒を成形する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
シフト触媒が炭質材料に含浸されている、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
シフト触媒が水性ガスシフト反応(WGS)を実施可能である、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
温度が250から450℃の範囲内である請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
圧力が1から50barの範囲内である請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のプロセス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【公表番号】特表2010−535191(P2010−535191A)
【公表日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−518767(P2010−518767)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際出願番号】PCT/IB2008/001985
【国際公開番号】WO2009/016477
【国際公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(509308997)ナーガルジュナ エナジー プライベート リミテッド (6)
【Fターム(参考)】