説明

炭酸カルシウムの製造方法

【課題】本発明が解決しようとする課題は、硫酸塩法またはソーダ法によるパルプ製造工程の蒸解用白液を再生する苛性化工程において、副生する苛性化軽質炭酸カルシウムの白色度を向上させる技術の提供にある。
【解決手段】硫酸塩法またはソーダ法によるパルプ製造工程の苛性化工程において、緑液に固有粘度から計算した分子量1300〜2000万、アニオンモノマーの仕込み量が8〜15mol%のアニオン性高分子凝集剤を添加することにより、緑液を高度に清澄化でき、該清澄化緑液と酸化カルシウムまたは水酸化カルシウムとの苛性化反応で生成する苛性化軽質炭酸カルシウムの白色度を安定して高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は製紙填料または顔料用の炭酸カルシウムを製造する方法であって、硫酸塩法またはソーダ法蒸解によるパルプ製造工程の蒸解液である白液を製造する苛性化工程において、製紙填料または顔料として有用な炭酸カルシウムを製造する方法に関するものである。更に詳しくは、緑液に特定の凝集剤を添加することにより緑液を清澄化し、該清澄緑液と酸化カルシウムまたは消石灰との苛性化反応で、高白色の炭酸カルシウムを製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
印刷あるいは筆記用に使用される紙には、白色度、不透明度、平滑性、筆記性、手触り、印刷適性等の改良を目的として通常、填料が内添されている。この抄紙方法としては、填料にタルク、クレー、酸化チタン等を使用してpH=4.5付近で紙を抄くいわゆる酸性抄紙と、pH=7〜8.5の中性〜弱アルカリ性領域で紙を抄く中性抄紙とがある。中性抄紙では、輸入品で高価なタルク、クレーに代えて、国産の炭酸カルシウムを填料として使用することができるという特徴がある。
【0003】
酸性で抄紙した紙は経年により劣化が進行するという欠点があることから、この紙の保存性等の問題から、中性抄紙によって抄造される中性紙が近年、注目されるようになった。また、中性紙には、この他にも紙質、コスト、環境対策等の面でもメリットが多いことから、中性抄紙への移行が進んでおり、今後もその普及が拡大する情勢にある。
【0004】
このように、中性紙の需要が高まっている中で、填料としての炭酸カルシウムの位置付けは非常に重要である。この中性抄紙に填料として用いられる炭酸カルシウムには、天然の石灰石を乾式あるいは湿式で機械粉砕して製造する重質炭酸カルシウムと、化学的方法によって製造する軽質炭酸カルシウム(沈降性炭酸カルシウム、合成炭酸カルシウムとも称される)がある。
【0005】
軽質炭酸カルシウムの製造方法としては、次の方法が知られている。
(1)石灰の焼成装置などから発生する二酸化炭素を含有したガスと、石灰乳との反応。
(2)アンモニアソーダ法における炭酸アンモニウムと塩化カルシウムとの反応。
(3)炭酸ナトリウムの苛性化によって水酸化ナトリウムを製造するという、石灰乳と炭酸ナトリウムとの反応。
これらの方法のうち、(1)は、反応系が比較的単純であり、様々な用途毎に目的に合った炭酸カルシウムを製造する方法について広く研究が進み、石灰メーカーから市販されている商品も数多く見られる。しかしながら、この方法は炭酸カルシウムが唯一の生産物であることから、製造コストが非常に高くなるため、安価な紙には使用しにくく、その使用量が大きく制限されている。一方、(2)、(3)においては、その主生産物を得る製造法が新たな方法に転換されたり、生成する炭酸カルシウムが副産物であることから不純物含量が多い、などの理由で、その利用方法についてはあまり検討されていないのが実状である。
【0006】
硫酸塩法またはソーダ法によるパルプ製造工程において、蒸解薬品を回収・再生する苛性化工程で白液を製造する際に生成する炭酸カルシウムは副産物であり、これを製紙用原料として使用する方法では、安価な炭酸カルシウムを得ることができる。硫酸塩法またはソーダ法によるパルプ製造工程では、木材からパルプ繊維を取り出すために、木材チップに水酸化ナトリウムや硫化ナトリウムを溶解した白液を添加して高温、高圧下で蒸解する。パルプ繊維は固相として分離精製され、蒸解廃液(黒液)は濃縮された後、回収ボイラーで燃焼される。その場合、リグニンやヘミセルロースなどの有機性の木材溶出成分は熱源となり、薬液中の無機成分は炭酸ナトリウムや硫化ソーダとの混合物を主成分とするスメルトとして回収される。スメルトは、弱液と呼ぶ白液成分が一部溶解した水溶液に溶解して粗緑液とする。この粗緑液は、ボイラーで発生した未燃の炭素粒子や蒸解の際に木材から溶出して来た不溶性の不純物等を含むため、沈降分離法や濾過分離法により、不純物を分離し系外に排出すると共に、緑液をある程度清澄化している。この清澄緑液と酸化カルシウムとを混合して、下記[1]、[2]式で示す消和と苛性化の二段反応により、炭酸ナトリウムは水酸化ナトリウムに転換され、白液が再生されると同時に炭酸カルシウムが副生する。反応[2]で生成する炭酸カルシウムはロータリーキルンなどの焼成炉で重油を燃料として焼成され、下記[3]で示す反応で酸化カルシウムに再生され、苛性化工程で循環使用されてきた。
CaO+HO→Ca(OH) [1]
Ca(OH)+NaCO→CaCO+2NaOH [2]
CaCO→CaO+CO [3]
ここで生成する炭酸カルシウムは、主生産物である白液を製造する際の副産物であるため、製紙原料として使用した場合、非常に低コストで利用できる。また、閉鎖系である苛性化工程のカルシウム循環サイクルから、炭酸カルシウムを系外に抜き取ることによって、系内の清浄化及び循環石灰の高純度化が達成され、上記[1]、[2]の反応性向上や白液の清澄性向上、さらには廃棄物の低減が期待できる。しかし、従来この方法は上記[2]の苛性化反応が本来の目的であるため、苛性化反応に必要な酸化カルシウムを再生し、該酸化カルシウムを循環使用することが最重要とされたため、副生する炭酸カルシウムを製紙の原料として利用することに関してはあまり注意が払われていなかった。
【0007】
従来から、前述のように粗緑液中の不純物であるドレッグスを系外に除去していたが、この処理では比較的容易に分離できる不純物を除去し、循環するカルシウムの純度を高めることに重点が置かれていた。従って、副生する苛性化軽質炭酸カルシウムの白色度向上を目的にした高度な清澄化方法に関しては詳細な検討が行われていなかった。
【0008】
苛性化工程で副生する軽質炭酸カルシウム(以下、苛性化軽質炭酸カルシウムと記述する)の白色度向上を課題とした従来の技術としては、例えば、(1)苛性化軽質炭酸カルシウムのスラリーにハイドロサルファイトを添加し、その後、リン酸塩を添加する技術が開示されている(特許文献1参照。)。また、(2)苛性化軽質炭酸カルシウムのスラリーにハイドロサルファイトを添加し、その後、界面活性剤を添加する技術が開示されている(特許文献2参照。)。しかし、これらの技術では、着色成分が苛性化軽質炭酸カルシウムに残留するため、これを填料または顔料に利用した場合、再発色の恐れが有る。
【0009】
更に、(3)緑液に空気を吹き込んで浮上した不純物を凝集・除去し、続いて苛性化反応を行う緑液清澄化技術が開示されている(特許文献3参照。)。また、(4)緑液の清澄化処理方法として苛性化工程において添加する酸化カルシウムを二段に分割し、前段の添加で生成した炭酸カルシウムを不純物と共に系外に除去し、これにより清澄化された緑液と、後段で添加する酸化カルシウムとの反応で、高白色の苛性化軽質炭酸カルシウムを得る技術が開示されている(特許文献4参照。)。しかし、(3)の技術では、浮上分離装置等の特別の設備が必要となって、経費が嵩むばかりでなく、還元性の硫化ナトリウムの空気酸化によって硫化度の低下を来してしまうので、好ましくない。(4)の酸化カルシウム二段添加方法では、不純物除去の観点からは優れた効果を期待できるが、二段に分割添加する酸化カルシウム毎に生成する苛性化軽カルを分離、洗浄する装置が必要になり、好ましくない。
【0010】
また、緑液に、カチオン性高分子凝集剤を添加することにより、あるいはカチオン性高分子凝集剤とアニオン性高分子凝集剤とを添加することにより、清澄化された緑液と、酸化カルシウムまたは水酸化カルシウムとを混合し、苛性化反応を行うことで白色度の高い炭酸カルシウムを得る方法(特許文献5参照)がある。
【0011】
以上から、緑液に固有粘度から計算した分子量1300〜2000万、アニオンモノマーの仕込み量が8〜15mol%のアニオン性高分子凝集剤を添加することにより、緑液を高度に清澄化でき、該清澄化緑液と酸化カルシウムまたは水酸化カルシウムとの苛性化反応で生成する苛性化軽質炭酸カルシウムの白色度を安定して高めることができる方法は無かった。
【0012】
本発明者らは、苛性化工程で副生する炭酸カルシウムを製紙用原料として使用すべく、副生炭酸カルシウムの高品質化技術について研究し、特定条件下の苛性化反応により、米粒状、紡錘状、針状、イガグリ状と言った特有の形状を有する高品質な軽質炭酸カルシウムを製造する技術を確立し、これを出願し、特許登録(特許文献6、7参照)または公開されている(特許文献8〜13参照。)。しかし、これら改良法で製造した炭酸カルシウムに関しても、製造工程がクラフトパルプ製造工程の一部であるため、クラフトパルプ製造工程の変動の影響を受けやすく、得られる軽質炭酸カルシウムの白色度が不安定であるという根本的な問題を抱えていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開昭51−47597号
【特許文献2】特開昭51−47598号
【特許文献3】特開昭61−53112号
【特許文献4】特開平1−226719号
【特許文献5】特開2004−23823号
【特許文献6】特許第3227421号
【特許文献7】特許第3227422号
【特許文献8】特開2000−264628号
【特許文献9】特開2000−264629号
【特許文献10】特開2000−264630号
【特許文献11】特開2001−199720号
【特許文献12】特開2001−199721号
【特許文献13】特開2002−284522号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明が解決しようとする課題は、硫酸塩法またはソーダ法によるパルプ製造工程の蒸解用白液を再生する苛性化工程において、副生する苛性化軽質炭酸カルシウムの白色度を向上させる技術の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
硫酸塩法またはソーダ法によるパルプ製造工程の苛性化工程において、緑液に固有粘度から計算した分子量1300万〜2000万、アニオンモノマーの仕込み量が8〜15mol%のアニオン性高分子凝集剤を添加することにより、緑液を高度に清澄化でき、該清澄化緑液と酸化カルシウムまたは水酸化カルシウムとの苛性化反応で生成する苛性化軽質炭酸カルシウムの白色度を安定して高めることができる。
【発明の効果】
【0016】
硫酸塩法またはソーダ法によるパルプ製造工程の蒸解用白液を再生する苛性化工程において、緑液に、特定のアニオン性高分子凝集剤を添加することにより、緑液を高度に清澄化でき、該清澄化緑液と酸化カルシウムまたは水酸化カルシウムとの苛性化反応で生成する苛性化軽質炭酸カルシウムの白色度を安定して高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明者等は苛性化軽質炭酸カルシウムの高白色度化について検討した結果、(1)アニオン性高分子凝集剤やノニオン性高分子凝集剤といった従来から使用されてきた凝集剤に比べ、特定の分子量とアニオン量の高分子凝集剤が優れた緑液清澄効果を示すこと。
(2)前記特定のアニオン系高分子凝集剤を添加して処理した緑液は極めて清澄となり、該清澄化緑液と酸化カルシウムまたは水酸化カルシウムとの苛性化反応で得られる苛性化軽質炭酸カルシウムの白色度は高く、しかも白色度が安定していることなどを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0018】
本発明で使用する緑液は、硫酸塩法またはソーダ法によるパルプ製造工程で発生する黒液を回収ボイラーで燃焼し、燃焼後、残留する炭酸ナトリウム、硫化ナトリウムなどを主成分とする無機分であるスメルトを弱液に溶解した粗緑液である。
【0019】
本発明で使用するアニオン系高分子凝集剤は、共重合物やポリアミン系化合物から選択される。共重合物としては、アクリル酸とアクリルアミドとを公知の方法により共重合させたもの、またはメタクリル酸とアクリルアミドとを公知の方法により共重合させたもの等が挙げられ、その固有粘度法から測定した平均分子量は1300万〜2000万がより好ましく、1500万〜1800万がより好ましい。
【0020】
前記のアニオン系高分子凝集剤を緑液に添加する場所としては緑液クラリファイヤーなどの分離装置の入り口で緑液に添加する。
【0021】
緑液の清澄化の程度は、吸光光度計の波長660nmにおける吸光度(−logT)で定義すると、吸光度0.001〜0.05が好ましい。更に好ましくは0.001〜0.045である。この吸光度の緑液が得られるようにアニオン性高分子凝集剤を添加する。また、該清澄化緑液に酸化カルシウムまたは水酸化カルシウムを添加し苛性化して得られる軽質炭酸カルシウムの白色度は、90.0〜99.0%が好ましい。
【0022】
苛性化工程では、酸化カルシウムの緑液への添加に代えて、酸化カルシウムを水で消和した水酸化カルシウムを粉体またはスラリー状で添加することも可能である。
【0023】
苛性化反応の条件としては従来からの苛性化反応条件で実施することができる。また、従来の技術で前述した特許第3227421号、特許第3227422号、特開2000−264628号、特開2000−264629号、特開2000−264630号、特開2001−199720号、特開2001−199721号、特開2002−284522号で記載の苛性化反応条件と本発明の高白色度炭酸カルシウムの製造技術とを組み合わせれば、特定形状であり、プラスチックワイヤー摩耗度が低いなどの特性を有し、かつ高白色度の苛性化軽質炭酸カルシウムを製造することが可能である。
【0024】
本発明で得られる苛性化軽質炭酸カルシウムは、必要に応じて、湿式あるいは乾式粉砕により、粒子径を調整後、填料または顔料として使用することもできる。
【0025】
粉砕装置としては、湿式回分式粉砕機(アトライター等)、湿式連続式粉砕機(サンドグラインダー等)、循環式粉砕機(SCミル、SCミルロング等)が挙げられる。
【0026】
本発明によって、苛性化反応で生成する苛性化軽質炭酸カルシウムの白色度が向上するため、苛性化軽質炭酸カルシウムを製紙用填料または顔料として利用できる範囲が大幅に広がる。この付随効果として、白液製造工程からの苛性化軽質炭酸カルシウムの抜き取り量が増大し、工程内を循環する石灰に蓄積し易い不純物を低減できると共に、焼成用キルンの負荷を低減できる。更には、工程から炭酸カルシウムを全量抜き取ることができれば、キルン停止も可能となり、苛性化工程での主生産物である白液の生産コストを大幅に削減することが可能となる。
【0027】
本発明により粗緑液が高度に清澄化されるメカニズムについては充分に解明されていないが、高pHでイオン濃度の高い緑液中では、分子内部での静電的な反発が抑えられるため、懸濁粒子やコロイド状粒子を架橋凝集させるためには、アニオン電荷をできるだけ高くすることで、緑液中でも高分子の慣性半径が大きくなると推測している。また、分子量については、大きすぎると比較的大きな懸濁粒子を凝集し易いが、一定添加率で考えた場合には、分子量の低いものよりも分子の数が少なくなるために、小さな懸濁粒子を凝集し難くなるが、分子量が小さすぎると比較的大きな懸濁粒子を凝集することが困難になるので、最適な分子量が存在すると推測している。
【0028】
本発明によって得られる苛性化軽質炭酸カルシウムは、従来の苛性化工程で得られた炭酸カルシウムに比べて白色度が優れ、これを製紙填料の原料として紙の製造に使用することで、填料配合紙の白色度、不透明度、印刷適性等に優れた特徴を与える。填料配合紙には特に限定は無く、新聞用紙、中質紙、印刷用紙、書籍用紙、証券用紙、辞典用紙、両更クラフト紙、晒クラフト紙、薄葉紙、ライスペーパー、インディアンペーパー、板紙、ノーカーボンペーパー等の紙、更にアート紙、軽量コート紙、キャストコート紙などの各種コート紙の原紙などに使用することができる。
【実施例】
【0029】
以下に本発明を実施例および比較例をあげて、詳細に説明するが、当然ながら本発明は実施例のみに限定されるものではない。
[供試緑液]
日本製紙株式会社のクラフトパルプ製造プラントの苛性化工程から採取した。組成は、Na2CO3=95g/L、Na2S=25g/L、NaOH=12g/L(いずれもNa2O換算値)であった。
[試験法]
生成炭酸カルシウムのISO白色度:乾燥粉体を加圧式錠剤成形器でペレットとし、分光測色計(CMS−35SPX、株式会社村上色彩技術研究所製、紫外光無し、D65光源、10度視野)で測定した。
【0030】
[実施例1]
緑液1,000mLを、加温用マントルヒーターを備えた1,000mLセパラブルフラスコに計り取り、撹拌機(撹拌速度120rpm,Kyoei Power Stairrer Type PS−2N)で撹拌し、90℃に保持した。この緑液にアニオンモノマーの仕込み値が13モル%、固有粘度法で測定した分子量1600万のアニオンPAM(GP12、伯東)を0.1%重量固形分濃度の水溶液で4mg添加し、0.5時間撹拌した。その後、撹拌機を停止し、0.5時間静置して凝集物を沈降させ、清澄緑液を回収した。この清澄緑液の波長660nmにおける吸光度を吸光光度計(株式会社日立製作所:V−3210)で測定すると共に、その中から500mLを、加温用マントルヒーターを備えた500mLセパラブルフラスコに計り取り、撹拌機(撹拌速度120rpm,Kyoei Power Stairrer TypePS−2N)で撹拌し、70℃に保持した。引き続き、酸化カルシウム(キルン焼成生石灰)35gを添加後、90℃で2時間苛性化反応を行った。苛性化反応液から苛性化軽質炭酸カルシウムをろ過分離し、充分洗浄後105℃で乾燥し、苛性化軽質炭酸カルシウム粉末約60gを回収した。回収した苛性化軽質炭酸カルシウムの粉体のISO白色度を測定した。清澄化緑液の吸光度および粉体苛性化軽質炭酸カルシウムの白色度測定結果を表1に示す。
【0031】
[実施例2]
実施例1のアニオンPAMが、アニオンモノマーの仕込み値が14.5モル%、分子量が1800万のアニオンPAM(GP27、伯東)を使用すること以外は、実施例1と同様に行った。
【0032】
[実施例3]
実施例1のアニオンPAMが、アニオンモノマーの仕込み値が20モル%、分子量が1750万のアニオンPAM(GP45、伯東)を使用すること以外は、実施例1と同様に行った。
【0033】
[比較例1]
実施例1のアニオンPAMが、アニオンモノマーの仕込み値が7モル%、分子量が1700万のアニオンPAM(GP23、伯東)を使用すること以外は、実施例1と同様に行った。
【0034】
[比較例2]
実施例1のアニオンPAMが、アニオンモノマーの仕込み値が4モル%、分子量が1600万のアニオンPAM(GP11、伯東)を使用すること以外は、実施例1と同様に行った。
【0035】
[比較例3]
実施例1のアニオンPAMが、アニオンモノマーの仕込み値が14モル%、分子量が1200万のアニオンPAM(GP42、伯東)を使用すること以外は、実施例1と同様に行った。
【0036】
【表1】

【0037】
実施例1〜3の苛性化軽質炭酸カルシウムは比較例1〜3に比べて、白色度が2〜3ポイント高い。清澄化緑液と酸化カルシウムまたは水酸化カルシウムとの苛性化反応で生成する苛性化軽質炭酸カルシウムの白色度が高くなることが解る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製紙填料または顔料用の炭酸カルシウムを製造する方法であって、硫酸塩法またはソーダ法によるパルプ製造工程の苛性化工程において、前記緑液に固有粘度から計算した分子量1300万〜2000万、アニオンモノマーの仕込み量が8〜15mol%のアニオン性高分子凝集剤を添加することにより得られる、吸光光度計の波長645nmにおける吸光度が0.001〜0.05である清澄化された緑液と、酸化カルシウムまたは水酸化カルシウムとを混合し、攪拌あるいは捏和しながら苛性化反応を行うことを特徴とする苛性化軽質炭酸カルシウムの製造方法。
【請求項2】
製紙填料または顔料用の炭酸カルシウムを製造する方法であって、得られる炭酸カルシウムの白色度が90%以上であることを特徴とする請求項1に記載の苛性化軽質炭酸カルシウムの製造方法。

【公開番号】特開2011−213528(P2011−213528A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−82208(P2010−82208)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000183484)日本製紙株式会社 (981)
【Fターム(参考)】