説明

炭酸カルシウム製品の製造方法および装置、製品およびその用途

100nm以下の微小なサイズの分離された炭酸カルシウム粒子で形成された炭酸カルシウム製品の製造方法および装置。ピン粉砕機の原理に基づいて作動する粉末化および噴霧装置14を経由して、水酸化カルシウムを、炭酸カルシウム粒子を沈降させるために沈降反応器10の内側にある二酸化炭素を含むガス中に供給する。該沈降反応器中の温度は、65℃以下に保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小な炭酸カルシウム粒子から形成される炭酸カルシウム製品を製造する方法および装置に関するものである。特に、本発明は、沈降反応器の内側にある二酸化炭素を含むガス中に、水酸化カルシウムを小さな液滴および/あるいは粒子として供給することを特徴とする沈降炭酸カルシウムの製造方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
炭酸カルシウムは、典型的には二酸化炭素を用いて沈降により、水酸化カルシウムスラッジから製造される。伝統的には、バッチプロセスが、生産に用いられ、そのプロセスでは、正確な炭酸化レベルが、達成されるまで、二酸化炭素は、水酸化カルシウムスラッジ中に微小な泡として供給される。水酸化カルシウムスラッジの乾燥物含有量は、ガス気泡がスラッジ中に入ることができるように、あまりにも高くはしてはならない。たとえば、米国特許第4927618号には、乾燥物含有量7.68%の水酸化カルシウムスラッジが、使用されていることを示している。この生産方法は、炭酸化には、長時間を必要とし、該米国特許の第1実施例では、炭酸化反応は、31分かかると記述されている。
【0003】
一方、炭酸カルシウムは、連続運転装置中で沈降されることも、以前から指摘されてきた。たとえば、米国特許第4133894号には、3個の連続的高カラム中で沈降され、1から2mmの液滴サイズの水酸化カルシウムスラッジが、カラムの頂上から、カラムの底から上方へ流れる二酸化炭素中に、噴霧ジェットを使用して、噴霧される。製造された炭酸カルシウムは、100nm以下の微細な粒子として、第3カラムの底から回収される。この場合、水酸化カルシウムスラッジは、非常に希釈されなければならなくて、すなわち乾燥物含有量は、ほぼ0.1から10%程度に低くしなければならない。第1カラム中では、5から15%の水酸化カルシウムのみが、炭酸化される。大多数は、第2カラム中で炭酸化される。
【0004】
沈降された炭酸カルシウム(PCC)の多くの応用の中で、品質が均一でサイズがほとんど均一である100nm以下の非常に小さな炭酸カルシウム粒子を使用できることが、有利であろう。たとえばこれらのタイプの応用は、医薬品、化粧品および食品工業において必要である。工業薬品を含めた塗料、プラスチクス、ゴム、顔料および紙工業も、このタイプの炭酸カルシウム製品に対する用途を見出している。
【発明の開示】
【0005】
本発明の目的は、大抵が分離した安定な100nmサイズ以下の非常に小さな炭酸カルシウム粒子から形成されている炭酸カルシウム製品の改良された製造方法および装置を提供することである。
【0006】
このように、本目的は、大きな比表面積の炭酸カルシウム製品を製造するための改良された方法および装置を提供することでもある。
【0007】
さらに、本目的は、水酸化カルシウムから炭酸カルシウム粒子を急速に沈降させかつ使用されてきた以前の方法に比べて、粒度および/あるいは水酸化カルシウム製品の乾燥物含有量に対する依存性が少ない改良された方法および装置を提供することでもある。
【0008】
本目的は、炭酸化反応段階すなわち炭酸カルシウムの沈降のあいだに通常よりも低い反応温度を維持することができる方法および装置を提供することでもある。
【0009】
さらに、本目的は、炭酸カルシウムの製造において多種類の添加剤の同時供給と使用を可能にする連続運転方法および装置を提供することでもある。
【0010】
さらに、本目的は、鉱物、典型的には水酸化の完全なあるいはほぼ完全な炭酸化を達成する事が容易である方法および装置を提供することでもある。
【0011】
本発明
以上で提示した目的を達成するために、本発明による方法および装置は、本特許出願中で後に提示する独立特許クレームの特性付ける部分に示されていることに特徴付けられる。
【0012】
本発明は、典型的には100nm以下の小さな粒子サイズを持ちかつ大きな比表面積を持った沈降された炭酸カルシウムを製造する方法および装置に関するものである。製品の炭酸カルシウム粒子は、大抵は、分離して、安定で、均質なかつ均一なサイズをしている。
【0013】
本方法は、典型的には、水酸化カルシウムを炭酸化するために、すなわち沈降反応器中で沈降した炭酸カルシウム(CaCO3)を製造するために、二酸化炭素を含みかつ沈降反応器の内側にあるガス中に、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)を、微小液滴および/あるいは粒子として連続供給することからなる。
【0014】
本発明による解においては、水酸化カルシウムあるいは他の対応するCa++イオン源は、反応性鉱物として使用することができ、そこから、二酸化炭素を使用することにより炭酸カルシウムが、形成される。典型的には、本発明による解では、水酸化カルシウムスラッジとして、すなわち石灰ミルクなどの水中に分散された水酸化カルシウムとして、水酸化カルシウムは、沈降反応器中に供給されるが、水酸化カルシウム水溶液中にも供給できる。この材料は、反応器中に置かれている、あるいはそれと関連して置かれている粉末化および噴霧装置を経由して反応器中に供給することが、有利である。
【0015】
粉末化および噴霧装置は、典型的には、衝撃混合機であり、それにより、水酸化カルシウムスラッジあるいは溶液から非常に微細な液滴および/あるいは粒子が、形成される。この衝撃混合機は、同時に沈降反応器としてあるいは沈降反応器の一部として作動するために、この反応器中での炭酸化反応開始のために、水酸化カルシウムを二酸化炭素に接触させることができることも有利である。ピン粉砕機の原理に基づいて作動する衝撃混合機を用いて、高乾燥物含有量の水酸化カルシウムスラッジを、二酸化炭素ガス中に混合することも可能である。
【0016】
該粉末化および噴霧装置は、典型的には沈降反応器のトップ部分に嵌め合わされているが、水酸化カルシウムの供給に適した沈降反応器の他の位置に嵌め合わせることもできる。
【0017】
水酸化カルシウムスラッジに加えて、沈降に効果がありかつ純粋であるいはほとんど純粋である二酸化炭素あるいは燃焼ガスあるいは二酸化炭素を含む他の適当なガスである二酸化炭素を含むガスを、該沈降反応器中に連続して供給する。このガスは、別のガス供給装置を用いて、底の部分から、側面からあるいはトップから沈降反応器中に、直接供給できる。二酸化炭素を含むこのガスは、水酸化カルシウムと同時にトップを経由して沈降反応器中に供給されることが有利である。二酸化炭素を含むこのガスは、粉末化および噴霧装置を経由して、沈降反応器中に供給できて、その場合、炭酸化反応は、すでにその装置中で開始している。しかしながら、望む場合には、二酸化炭素ガスは、他の適当なガス供給装置を用いてまた沈降反応器の他の位置において供給可能である。沈降反応器中での物質収支を維持するために、炭酸カルシウムを含む材料を、該反応器から連続的に除去できる。
【0018】
希望する微小の粒子、望みの比表面積を持った典型的には、100nm以下のサイズの、あるいは分離した炭酸カルシウム粒子を製造するために、65℃以下の、典型的には、10から65℃、より典型的には30から65℃、最も典型的には40℃以下の低い反応温度で、沈降を起こさせる配置をすることが有利であるということが、ここにおいて確立されたところである。沈降反応器中の温度は、いくつかの異なった方法で、望みの低いレベルに維持できる。
【0019】
本発明による典型的な方法および装置において、低温は、冷却により、沈降反応器中で維持される。一度に一つを用いることができるいくつかの方法があり、あるいは同時に使用できるいくつかの方法もある。
低温で、該沈降反応器中に、少なくとも幾分かの水酸化カルシウムあるいは他の対応するCa++イオン源を供給することにより、
低温で、あるいはドライアイスとして沈降反応器中に、少なくとも幾分かの二酸化炭素を供給することにより、
該沈降反応器中に設けられた冷却スリーブなどの、沈降反応器中に設けられた冷却エレメントの手段により、
炭酸カルシウムを含む材料および/あるいは二酸化炭素を含むガスを、該沈降反応器から熱交換器を備えた冷却器に循環させかつその後冷却器から沈降反応器中へと循環させることにより、
炭酸カルシウムを含む材料、および/あるいは二酸化炭素を含むガスを、第1沈降反応器から、冷却器を経由して第2沈降反応器中に導くことにより、かつ/あるいは、
他の適切な方法を使用することにより、
該沈降反応器中の温度を低下させることができる。
【0020】
沈降反応器から冷却器中に循環される炭酸カルシウム材料は、そこに置かれている粉末化および噴霧装置を経由して、同じ沈降反応器あるいは次の沈降反応器中に戻すことができる。
【0021】
沈降反応器中に供給される水酸化カルシウムの温度を制御することにより、形成される炭酸カルシウム製品の粒度に本質的に影響を与えることができることが、ここに確立されたところである。供給される水酸化カルシウムの温度が、低ければ低いほど、生産される粒子は、小さくなる。もし小さな粒度を希望する場合には、水酸化カルシウムの少なくとも幾分かあるいは、有利にはその大抵を、30℃以下、典型的には、5から30℃、有利には10から20℃、最も典型的には17℃以下の温度にある沈降反応器中に供給することが、有利である。技術的−経済的局面を考慮すると、非常に低い開始温度を使用することは、一般的に可能ではない。さらに、炭酸化反応中で水酸化カルシウムスラッジを冷却する時には、さらに小さな炭酸カルシウム粒子を得ることが可能である。
【0022】
本発明による溶液を使用すると、炭酸カルシウム粒子のサイズd50は、100nm以下、典型的には70nm以下、有利には40nm以下である炭酸カルシウム製品を得ることが可能である。大抵は分離された炭酸カルシウム製品からなる炭酸カルシウム製品の比表面積は、20m2/g以上、典型的には、40m2/g以上、有利には、60m2/g以上である。
【0023】
水酸化カルシウムは、直接に沈降反応器に供給されることが有利であり、あるいは反応器に嵌め合わされた粉末化および噴霧装置を経由して供給される。ピン粉砕機の原理に基づいて作動する(すなわち、それは、いわゆる衝撃混合機あるいは通気混合機のいずれかである)粉末化および噴霧装置において、沈降反応器中に供給される材料は、装置を経由して非常に効率よく移動する材料を粉末化しかつ噴霧するピン、ブレードあるいは対応するエレメントを備えた高速ロータからの強い衝撃およびダブル衝撃の標的となる。隣接するロータとステータとの速度差は、5から400m/秒、典型的には5から200m/秒である。
【0024】
ピン粉砕機の原理に基づいて作動する粉末化および噴霧装置中での、沈降反応器に供給される水酸化カルシウムあるいは、Ca++イオン源のドウエル時間は、10秒以下、典型的には2秒以下、最も典型的には1秒以下である。
【0025】
有効な炭酸化時間、すなわち水酸化カルシウムあるいは他のCa++イオン源が、霧および/あるいは液滴の形で二酸化炭素ガスと有効に接触している時間は、本発明による各沈降反応器中では、非常に短くて、一般的には、1分以下、典型的には30秒以下、最も典型的には10秒以下である。もしいくつかの連続沈降反応器がある場合、あるいは材料が同一の沈降反応器を経由して循環される場合には、全有効な炭酸化時間は、対応して長くなる。水酸化カルシウムスラッジあるいは溶液の効率的かつ迅速な粉末化および噴霧ならびに二酸化炭素ガス中への霧の迅速な混合は、非常に有効な短時間の炭酸化時間を可能にし、かつ炭酸カルシウム製品用の生産時間を非常に短くする。
【0026】
本発明による方法および装置は、多段式連続運転炭酸化プロセスからなり、すなわちプロセスの第1局面、典型的には主局面において、
炭酸カルシウムを第1沈降反応器で、水酸化カルシウムから沈降させ、
その後プロセスの第1局面で沈降した炭酸カルシウムおよび沈降していない水酸化カルシウムを、第1沈降反応器から第2沈降反応器に導入し、
さらにプロセスの第2局面では、第1沈降反応器から第2沈降反応器に導かれた水酸化カルシウムの第2部分、典型的には残りの部分から炭酸カルシウムを沈降させ、
その後プロセスの第2局面で沈降した炭酸カルシウムおよび第1沈降反応器から第2沈降反応器に導かれた炭酸カルシウムおよび沈降反応器に供給される結果として生じる残留する水酸化カルシウムを、第3沈降反応器へと導入し、あるいは、水酸化カルシウムが、完全に使用されている場合には、炭酸カルシウムは、沈降プロセスから放出されるという沈降プロセスからなる。
【0027】
本発明による方法および装置は、水酸化カルシウムの完全なあるいはほぼ完全な炭酸化を可能にし、その結果安定で、分離したかつ平均で、均一なサイズの粒子が形成される。本水酸化カルシウム製品は、このようにして、大抵は品質が均一である。実質的には、この製品には凝集は起こらないで、このため、本製品は、長期間に亘り本質的に変化しない。
【0028】
今や、本発明による沈降反応器中に形成される炭酸カルシウム粒子は、分離されて維持できることが、確立されたところであり、またそれらの粒度は、たとえば、
沈降温度を制御することにより、
原材料の温度を規制することにより、
供給される水酸化カルシウムスラッジあるいは溶液の量および/あるいはその乾燥物含有量を規制することにより、
二酸化炭素ガスの量を規制することにより、
ロータの回転速度、ロータ構造、リングとブレードの数、および粉末化および噴霧装置のブレード位置を規制することにより、
および/あるいは適当な添加剤を使用することにより、制御できる。
【0029】
水酸化カルシウムスラッジの乾燥物含有量および水酸化カルシウム溶液の濃度を規制することにより、沈降反応器中に形成される炭酸カルシウムの乾燥物含有量に影響を与えることができる。沈降した炭酸カルシウムの乾燥物含有量は、典型的には30%以下、より典型的には10から20%に規制される。
【0030】
粒度、結晶形、比表面積、分離性および/あるいは均一性などの生産される炭酸カルシウムの特性は、種々の添加剤を使用することにより、影響を及ぼすこともできる。ある場合には、添加剤の使用により、沈降反応器の冷却を緩和することが可能である。添加剤は、さらに小さな粒度を得るために、使用してもよい。
【0031】
このようにして、水酸化カルシウムおよび二酸化炭素に加えて、ソルビトールなどのあるポリオールを沈降反応器中に供給できる。該ポリオールは、
沈降反応器中に供給されるように水酸化カルシウムスラッジに添加するか、あるいはこのスラッジを生成させるために使用する消火水に添加し、
沈降反応器中に、たとえば、粉末化および/あるいは噴霧装置中に、直接添加し、かつ/あるいは、
沈降反応器から放出される炭酸カルシウムを含む材料に対して添加することもできる。
【0032】
ポリオールの添加は、少ない冷却で、可能ならば冷却をまったく行わないで非常に微小な粒子の形成を可能にする。ポリオールは、典型的には0.1から3%、より典型的には、製品の1から2%で添加される。
【0033】
本発明により生産される炭酸カルシウム製品の特性は、脂肪酸化合物、典型的にはステアリン酸、あるいは樹脂酸など種々の添加剤を使用することにより、影響を及ぼすこともできる。さらに、分散剤など他の添加剤を使用することもできる。
【0034】
本発明により、沈降に影響を与える二酸化炭素ガス中に、非常に微細な霧の形態で、石灰ミルクなどの反応性鉱物を供給することにより、反応性鉱物および沈降に影響するガスは、炭酸カルシウムの沈降のために、著しく容易にかつ非常に効率よく、互いに混合されるということが認識されたところである。短い反応時間で、すなわち迅速に完全なる炭酸化を得ることさえも可能である。
【0035】
水酸化カルシウムからの炭酸カルシウム(PCC)の沈降は、すぐに開始され、水酸化カルシウムと二酸化炭素のあいだで、反応が、著しく迅速に起こる。本発明による方法および装置を使用することにより、供給される鉱物の温度、反応温度、供給ガスの温度あるいは濃度を規制することにより、形成される炭酸カルシウムの比表面積および粒度を、制御できる。
【0036】
反応が、より早くなりさらに効率的に起これば、鉱物はさらに微小に分散され、すなわち、沈降反応器中に供給する場合に、より微細化して砕かれることが、想定される。水酸化カルシウム溶液を使用するときには、材料は、特に小さい液滴となって粉末化されうる。噴霧の効率は、粉末化および噴霧装置および沈降反応器の構築によっても影響を受けうる。
【0037】
本発明によると、沈降の温度をこのようにして調節し、低下させることができるから、形成された炭酸カルシウム粒子は、分離されたままであり、すなわち、粒子は、互いに密着する傾向をまったく示さない。分離された炭酸カルシウム粒子という同じ結果が、添加剤を使用することによっても達成可能である。たとえば、ソルビトールなどのポリオールの添加は、粒子が互いに密着する傾向を緩和することになる。
【0038】
衝撃混合機あるいは通気混合機などのピン粉砕機の原理に基づいて作動する粉末化および噴霧装置を用いて、鉱物すなわち水酸化カルシウムおよび沈降に影響するガスを、連続してかつ同時に沈降反応器中に供給することができる。鉱物溶液は、霧状のガス分散物を形成する非常に微細な液滴あるいは粒子として、沈降ガス中に分散され、その中では、沈降に用いられたガスおよび反応性鉱物は、活性化されかつ効率的に共に混合される。本発明による溶液を使用すると、沈降プロセスに関与する物質は、ガス分散物として均一化され、その中では、異なった成分間の反応が、すぐに起きうる。
【0039】
ピン粉砕機の原理に基づいて作動する装置を用いると、沈降反応器中に供給される材料は、連続的な、反復的衝撃、2重衝撃、せん弾力、乱流、加圧あるいは減圧パルス、あるいは鉱物を200μm以下の非常に小さな粒子および微小な霧にまで粉砕する対応する力により、二酸化炭素を含む沈降反応器中のガス中に導入することが可能である。
【0040】
ピン粉砕機の原理に基づいて作動する装置は、いくつかの、典型的には3から8個の、最も典型的には、4から6個のブレードなどを備えた同一軸リングからなり、そのうち、少なくとも1つは、ロータとして作動しまたその隣接リングは、ステータとして作動し、あるいは異なる方向で、あるいは同一方向で、異なる速度で回転するロータとして作動する。ロータのリングの速度は、5から250m/秒であってもよい。隣接するロータ間の速度差は、5から400m/秒、典型的には5から200m/秒であってもよい。この原理により作動する粉砕機あるいは混合機は、フィンランド特許公報105699B、105112BおよびWO公報96/18454中で以前に公開されている。
【0041】
ピン粉砕機の原理に基づいて作動する装置において、鉱物は、ロータと半径方向に外向けに動く最終ステータの助けを借りて、典型的にはガイドされる。リング中心から外向けへのロータと最終ステータの伸長は、入り口すなわち中心と出口すなわち通気混合機中の外側リング間の圧力差を生じる。この圧力は、中心から外向けに減少する。生じた圧力差は、装置を経由して鉱物を運ぶために役立つ。装置のリング上に嵌め合わされるブレードなどは、外向けに流れる材料に対して衝撃および2重衝撃双方を標的にすることができ、かつ、せん弾力、かく乱、および減圧および加圧を生じ、それが、材料を粉砕しまた紛霧する。ピン粉砕機の原理に基づいて作動する装置は、高い乾燥物含有量および非常に低い乾燥物含有量の双方の材料流れを、効率よく一まとめにして、沈降に役立たせている。この装置の作動は制御し易い。このように、本発明による沈降反応器においては、30%以下、典型的には10から25%などの異なった乾燥物含有量の鉱物を沈殿させることが、可能である。
【0042】
本発明による方法および装置は、各プロセスに最も適した原材料、原材料の供給比率、pH、圧力および温度などの条件を自由に選択可能にしている。本発明による溶液は、これらの条件に何ら制限を及ぼさない。
【0043】
沈降に使用された反応性材料に加えて、典型的には、水酸化カルシウム、他の物質たとえば、沈降した炭酸カルシウムのさらなる処理に適したものを、沈降反応器中に供給できる。
【0044】
鉱物が、沈降反応器中に入る前に、粒子の表面処理に適した添加剤を、鉱物に添加することができるが、一方では、それは、沈降反応器中にあるか、あるいはそれが、沈降反応器を出た後、たとえば、粒子の疎水化、粒子の成長あるいは粒子を互いに分離したままで維持する能力に影響する添加剤を添加することができる。典型的な添加剤としては、ソルビトール、砂糖などのポリオール、ステアリン酸などの脂肪酸、樹脂酸、燐酸、アクリルポリマーのナトリウム塩あるいはアンモニウム塩の水溶液などの分散剤が、挙げられる。使用される添加剤あるいはそれらのいくつかを、沈降反応器中に同時に供給することができる。
ここで、本発明を、付帯図面を参照にして、さらに詳細に記述するものとする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
図1は、沈降容器12、沈降容器に嵌め合わされた粉末化および噴霧装置14、水酸化カルシウムスラッジ用供給パイプ16、沈降効果性の二酸化炭素ガス用供給パイプ18および炭酸カルシウム顕濁液用排出パイプ20からなる本発明による連続作動沈降反応器10を説明している。さらに、この装置は、アクチュエータ22と装置14のあいだにあるベアリングおよびシールアッセンブリ24を含めて、アクチュエータ22からなっている。
【0046】
沈降反応器中に供給される水酸化カルシウム、水酸化カルシウムスラッジを含む材料を、沈降反応器中に供給される前に、本発明により冷却することができる。たとえば、望みの温度にスラッジを冷却する冷却器11を、水酸化カルシウムスラッジ用供給パイプ16中に、嵌め合わせることができる。
【0047】
同様に、二酸化炭素ガスを、粉末化および噴霧装置14中に供給する前に、冷却器11’を使用して、二酸化炭素ガスを望みどおりに冷却できる。
【0048】
本発明によれば、図1に示すように、沈降反応器10には、冷却スリーブ13を備えることができ、図に示すように、ほとんど装置の全体あるいはその一部のみを囲むことができる。冷却スリーブ13には、ここでは、詳細に示されていないいくつかの従来の冷却方法が、設けられている。
【0049】
さらに、あるいは2者択一的に、反応器のトップにある材料と接触する1個あるいは数個の別の冷却器15および/あるいは反応器の底にある炭酸カルシウム材料と接触する1個の冷却器15’を、沈降反応器に嵌め合わすことができる。
【0050】
さらに、あるいは2者択一的に、炭酸カルシウムを含む材料の循環を、沈降反応器中で、排出パイプ20から、パイプ16’を経由して、粉末化および噴霧装置14に導く供給パイプ16へと配置することができる。パイプ16’には、冷却器17が備えられている。この材料は、望まれれば、たとえば沈降容器の底にまで、直接に戻すことができる。この循環材料を、冷却器17中で冷却しかつ沈降反応器中に冷却剤として戻す。
【0051】
沈降反応器中に嵌め合わされた粉末化および噴霧装置14は、(その横断面は、図2に示してあるのだが)、ピン粉砕機の原理に基づいて作動する衝撃混合機あるいは通気混合機であり、それは、ブレード26a,26’a、26''a、28a,28’a、28''aを備えた6個の同軸配置されたリング26,26’、26''、28,28’、28''からなっている。装置14中には、沈降反応器中に供給される水酸化カルシウムスラッジおよび他の結果として生じる固体物質が、小さな断片、液滴および/あるいは固体粒子中に粉末化され、そして霧状材料として、装置14から沈降容器12中に供給される。粉末化および噴霧装置中でのドウエル時間は、非常に短くて、10秒以下、典型的には2秒以下、最も典型的には1秒以下である。
【0052】
図2中に示されている矢印が、示しているように、粉末化および噴霧装置14の第1リング26,26’、26''は、図に示された場合では、半時計方向に回転するロータとして作動する。第1リングに隣接する第2リング28,28’、28''は、図に示された場合では、時計方向に回転するロータとして作動する。反対方向に回転するロータのリング間の速度差は、5から400m/秒、典型的には5から200m/秒である。このリング上に搭載されたブレード26a,26a’、26a''および28a,28a’、28a''は、装置を経由して急速に外側に移動する水酸化カルシウムスラッジと遭遇し、それを、反復する衝撃とダブル衝撃の標的にさせる。ブレード同士が近接すると同時に、隣接するロータのブレード間に加圧が、発生しかつブレードが、互いに離れるときに、減圧が発生する。圧力差は、スラッジ中に加圧および減圧パルスを迅速に発生させる。さらに、同時にせん断力および乱流が、装置14を経由して移動する材料中でも発生する。
【0053】
水酸化カルシウムスラッジおよび他の最終物質は、図1に示したように、パイプ16を経由して粉末化および噴霧装置14の中心部30に供給され、そこから、スラッジは、ロータブレードの効果によりまた中央と装置の外側リングの間に生じる圧力差により、最外側のリング28''のオープン外端32に向けて、半径方向で外側に移動する。水酸化カルシウムスラッジおよび他の最終物質を、望むならば、リング間の装置14に供給できる。水酸化カルシウムスラッジおよび他の最終物質は、望むならば別々のパイプを経由して装置14に供給可能であり、その場合、それらが、この装置中になるまで、接触することはない。
【0054】
衝撃、2重衝撃、せん弾力、乱流、ロータブレードにより発生される加圧あるいは減圧パルス、反対方向での回転が、水酸化カルシウムスラッジを、非常に微小な断片、液滴および固体粒子に粉末化する。しかし、本発明による解では、材料は、リングを経由して相対的にオープンルートを流れることができ、また装置中では、ブロック化するリスクはまったくない。
【0055】
図1および2に示した本発明による解では、沈降を生じるガス、CO2が、パイプ18を経由して、粉末化および噴霧装置14のリングの中心部30に導入される。さらに、あるいはその代わりに、沈降を生じるガスが、望まれれば、リング間に供給されうる。この中心部30から、あるいはリング間の空間から、半径方向で外側に向け流れて、装置14中およびその周りの沈降容器12中で、沈降を生じるガスを含むガス空間34を発生する。このガスは、沈降反応器のトップ部分上に置かれたパイプ21を経由して放出される。この放出されたガスの幾分かは、パイプ18’を経由して沈降反応器中に再循環されうる。パイプ18’には、冷却装置17’が備えられている。このガスが、水酸化カルシウムスラッジあるいは他の鉱物に接触するにしたがって、沈降反応は、粉末化および噴霧装置中ですでに開始している。
【0056】
粉末化および噴霧装置14中で処理されると、水酸化カルシウムスラッジは、非常に微小な液滴および粒子を形成し、それらは、装置14から、該装置を取り囲んでいるガス空間の部分34’にまで、分散される。微小な液滴および粒子は、霧状流れ36として、主にその外側のリング領域から、装置14の外へ吐き出される。供給装置の外側での沈降反応は、微小な液滴および粒子が沈降容器12中で広く分散されるので、相対的に長い時間のあいだ、続けられよう。沈降する炭酸カルシウムおよびおそらく幾分かの未沈降水酸化カルシウムは、沈降容器の底上に沈着し、パイプ20を経由して容器から放出される。
【0057】
沈降容器12のサイズ、形状、幅および高さを、供給装置から吐き出された液滴および粒子が、できるだけ適当なドウエル時間のあいだ、沈降容器のガス空間34’中に残るように、選択できる。たとえば、沈降反応器12の高さの増加、それを塔状にすること、あるいはその直径の増加は、水酸化カルシウムスラッジのドウエル時間を増加させる。
【0058】
沈降反応器10中のプロセスは、たとえば、粉末化および噴霧装置14上のリングの数、リング間の距離、各リング上のブレード間の距離およびブレードの寸法と位置を調節することにより、調節してもよい。
【0059】
本発明による第2沈降反応器を、粉末化および噴霧装置14を用いて説明している図3および4は、適用可能な図1および2に示されているのと同じ参照番号を使用している。図3に示された本発明による第2沈降反応器10は、該反応器が同時に全沈降反応器を形成する閉鎖外側リング32を備えた粉末化および噴霧装置14からなるように、主として、図1および2中に示した装置とは異なっている。沈降反応器は、粉末化および噴霧装置の外側に延伸している別の沈降領域を含んではいない。図3および4中に示された溶液は、たとえば沈降反応が、粉末化および噴霧装置のガス空間中で望むとおりに既に完了したとき、あるいはもし数個の反応器がある場合には、使用に適している。
【0060】
図3および4中に示された粉末化および噴霧装置中において、最外側のリング28''は、リングを閉じるハウジング40により囲まれている。このハウジングは、装置14から沈降した炭酸カルシウムを放出するための放出開口部42を含んでいる。沈降した炭酸カルシウムは、更なる処理あるいは加工のために、放出開口部42から導入されてもよいし、あるいはそれは、パイプ43を経由して、パイプ16中に循環させ、また粉末化および噴霧装置14へ再循環させることもできる。パイプ16には、冷却器45を備えていてもよい。
【0061】
図1および3中に示された両タイプの2個以上の沈降反応器を、連続シリーズで配列できる。図5は、図1に示したタイプの3個の沈降反応器の群を図示している。参照番号は、適用可能な前の図中にあるものと同一である。
【0062】
図5は、水酸化カルシウムを炭酸化して炭酸カルシウムするために、すなわちCaCO3を沈降させるために、水酸化カルシウムを2酸化炭素ガスと接触させる3個の沈降反応器10,10’および10''を図示している。これらの反応器は、連続して接続されており、その結果、沈降した炭酸塩の分散液および未沈降の水酸化カルシウムは、第1反応器10の排出パイプ20から第2反応器10’の供給パイプ16’へ向けて導入される。これに対して、大量の炭酸化された炭酸カルシウムを含む分散液は、第2反応器10’の排出パイプ20’を経由して、第3反応器10''の供給パイプ16''中に導かれる。
【0063】
二酸化炭素を含むガスは、パイプ18、18’、18''を経由して各反応器に導かれる。二酸化炭素を含有するガスは、供給パイプ18を経由して、第1反応器10に導かれ、それは、粉末化および噴霧装置14中での沈降(炭酸化)および炭酸塩の形成を誘導する。同じガスあるいは二酸化炭素を含む他のガスを、沈降反応(炭酸化)を完了させるために、パイプ18’、18''を経由して、第2および第3沈降反応器10’、10''へと導くことができる。このガスを、排出パイプ21、21’、21''を経由して、反応器から除去する。
【0064】
本発明によると、図5に示す場合、冷却器17および17’は、排出パイプ20、20’に嵌め合わされ、沈降反応器20’、20''へ供給される材料を冷却する。
【0065】
遮断タンクあるいは貯蔵タンクが、沈降反応器10,10’および10''に嵌め合わされ、そこでは、前の沈降反応器から来る炭酸カルシウムを含む製品をしばらくのあいだ、数分間あるいはもっと長い時間貯蔵できる。
【0066】
図6は、図3に示されたタイプの1個の連続嵌合沈降反応器10と図1に示した2個の連続して嵌め合わされた沈降反応器10’、10''からなる第2沈降反応器群を図示している。
【0067】
水酸化カルシウムは、パイプ16を経由して導かれ、二酸化炭素を含むガスが、パイプ18を経由して、第1沈降反応器10、すなわち粉末化および噴霧装置44に導かれる。沈降反応器10を出た材料は、ガス分離機50へ導かれ、そこでは、二酸化炭素を含むガスが、水酸化カルシウムおよび炭酸カルシウムを含む材料から分離される。二酸化炭素を含むガスおよび蒸気は、パイプ54を経由して洗浄および冷却装置52中に導かれ、そこから、二酸化炭素を含むガスは、パイプ18’を経由して、第2沈降反応器10’の粉末化および噴霧装置へと導かれる。水酸化カルシウムおよび炭酸カルシウムを含む材料は、冷却器11が設けられているパイプ16’を経由して、第2沈降反応器の粉末化および噴霧装置14へと導かれる。典型的には蒸気および二酸化炭素を含むガスは、パイプ21を経由して、沈降反応器10’のトップ部から除かれる。
【0068】
のガスは、洗浄および冷却装置52中で処理されるために導かれる。装置52においては、処理された二酸化炭素を含むガスの幾分かが、パイプ18’を経由して沈降反応器10’へと再循環され、残りの18''は、次の沈降反応器10''へと導かれる。沈降反応器の底の部分に集まった沈降した炭酸カルシウムおよび未沈降の水酸化カルシウムは、排出パイプ20へと排出される。
【0069】
図6に示されている第3沈降反応器10''は、第2沈降反応器10’と同じ原理に基づいて主として作動している。第2沈降反応器10’の底からパイプ20へと除去されかつ沈降した炭酸カルシウムに加えて水酸化カルシウムを含む材料は、パイプ16’を経由して、底に沿って第3反応器10''の粉末化および噴霧装置14’へと導かれる。洗浄および冷却装置52から、二酸化炭素を含むガスが、パイプ18''を経由して、第3反応器10''へと導かれる。完全に沈降した炭酸カルシウムは、パイプ20’を経由して、第3反応器10''の底から放出される。このガスは、パイプ21’を経由して、第3反応器10''のトップ部から除去されて、さらに循環させるために、洗浄および冷却装置52へと導かれる。
【0070】
図7は、図3に示されたタイプの1個の沈降反応器10とシリーズで嵌合されている図1に示したタイプの3個の沈降反応器10’、10''、10'''からなる沈降反応器の群を図示している。第1沈降反応器は、図6に示された沈降反応器として作動する。図1に示された3個の沈降反応器10’、10''、10'''は、互いのトップ上で嵌め合わされて、水酸化カルシウムスラッジは、そのトップから沈降反応器中に置かれた供給装置14,14’、14''へと供給される。第2沈降反応器10’は、トップ上および第3反応器10'''は、底上にあり、その上に、炭酸カルシウムに加えて水酸化カルシウムを含む材料が、該反応器を経由して移動するとき、大抵は下向きに流れる。
【実施例】
【0071】
次の実施例に示されている実験の目的は、本発明による溶液を用いることにより、沈降した炭酸カルシウムの比表面積および粒度に対して、どのくらいの影響を与えることができるかを示すことである。本目的は、ただ説明するだけであり、本発明を制限するものではない。
【0072】
KP1からKP4の実験は、次の章で示されている。本発明によるこれらの実験においては、二酸化炭素を含むガスを用いて、水酸化カルシウムスラッジ上に、沈降を行った。実験KP1およびKP2中においては、炭酸化反応開始前に、水酸化カルシウムスラッジを13℃に冷却した。さらに、実験KP2においては、炭酸化されるスラッジを炭酸化中に冷却した。実験KP3およびKP4においては、水酸化カルシウムスラッジの開始温度は、30℃とした。実験KP4においては、ソルビトールを、水酸化カルシウムスラッジに添加した。
【0073】
全ての実験において、乾燥物含有量、Ca(OH)2の品質およびCO2含有ガスの組成は、同一であった。
【0074】
Ca(OH)2スラッジの乾燥物含有量は、最終製品の乾燥物、沈降した炭酸カルシウムが、17%になるように調節した。
【0075】
KP1:Ca(OH)2スラッジの温度を13℃に調節し、その後スラッジを、沈降反応器を経由してポンプで送った。過剰量のCO2を含むガスを、装置中に供給した。Ca(OH)2スラッジが、沈降反応器中に供給されるにしたがって、それは、CO2を含むガスと混合された非常に微小な霧状滴を形成した。この処置を3回反復し、その後得られた沈降した炭酸カルシウム、PCCスラッジのpHを6.8にした。この処置のあいだ、温度は55℃に上昇した。
【0076】
KP2:温度が、27℃を超えないように、プロセスのあいだは、スラッジを冷却したこと以外は、第1実験と同様に第2実験を行った。第3処理後、PCCスラッジのpHは6.9であった。
【0077】
KP3:Ca(OH)2スラッジの温度が、実験のはじめにおいて30℃にしたこと以外は、第1実験と同様に第3実験を行った。この処理のあいだ、スラッジの温度は、61℃に上昇した。処理後、スラッジのpHは6.8であった。
【0078】
KP4:製造されるPCCから計算して1.5%のソルビトールを、Ca(OH)2スラッジに添加したこと以外は、第3実験と同様に第4実験を行った。この処理のあいだ、スラッジの温度は、60℃に上昇した。第3処理後、スラッジのpHは6.9であった。
【0079】
(マイクロメトリックス・フローソルブIII装置を用いて)このようにして生産したサンプルから、比表面積を測定し、また電子顕微鏡像を用いて、粒子の平均サイズを、求めた。結果を表1に示す。
【0080】

【0081】
沈降中炭酸化されるスラッジ(Ca(OH)2)を冷却することにより、粒度は、冷却しない場合(40)より著しく小さい(30)炭酸カルシウム製品を得ることが可能であることを、実験KP1およびKP2は、示していた。それに相応して、KP2(81)中の製品の比表面積は、実験KP1(60)におけるそれよりも大きかった。
【0082】
Ca(OH)2スラッジの初期温度が低くされていたKP1においては、比表面積が、大きくかつ粒度が、KP3におけるよりも小さい炭酸カルシウム製品を得ることが可能であることを、実験KP1およびKP3は、示していた。
【0083】
ソルビトールを添加すると、小さな粒子とそれに相応して大きな比表面を得ることができることを、実験KP3およびKP4は、示している。
【0084】
本発明による解は、非常に小さい100nm以下で大抵は分離した粒子で形成される炭酸カルシウム製品を工業的に製造するための、簡単で、連続操業可能なかつ迅速技術的経済的方法および装置を達成した。この方法は、水酸化カルシウムの完全な炭酸化を容易に可能にする。反応時間は、短くすなわち炭酸化反応は早く、そのためそのことは、大きな比表面積を持った小さな均一な粒子の形成を導くことになる。本プロセスは、入力される水酸化カルシウムの粒度および乾燥物含有量には、あまり依存しない。
【0085】
方法および装置は、簡単である。製品の主な成分を、典型的には、プロセスに同時に添加可能であり、その場合、物質は、互いにすぐに反応する。
【0086】
本方法および装置は、経済的な最終の成果をも導く。使用される装置は、得られた結果に関してエネルギー効率が高い。本装置は、供給された物質、スラッジあるいは水酸化カルシウムを含む溶液を、非常に微小な滴あるいは粒子に転換させる。本方法においては、源材料としては、高乾燥物含有量の水酸化カルシウムであることができ、それは、高乾燥物含有量を持った炭酸カルシウム製品をも生産する。
【0087】
本方法は、多種多様の変数を可能にしており、各特定の場合に対する正確な調整を見出すことを容易にさせている。冷却は、必要により、均等な処理温度を作り出すことを可能にしている。
【0088】
炭酸化プロセスに関した添加物として、ソルビトールなどのポリオールを使用すると、形成される炭酸カルシウムの比表面積、粒度および/あるいは均一性に影響を与えることができる。そのような場合には、非常に小さな粒度を持った望みの炭酸カルシウム製品を製造するためには、過剰な冷却は、不必要であり、おそらく無駄である。一方、冷却と同時にポリオール添加を用いると、より小さな粒度を得ることもできる。
【0089】
製品の表面化学特性に、直接影響を及ぼす他の添加剤も使用できる。
【0090】
本発明は、以上で示した実施例に限定することを意図したものではなく、それどころか、以下に示す請求範囲以内で広く適用されることを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0091】
ここで、本発明を、付帯図面を参照にして、さらに詳細に記述するものとする。
【図1】本発明による沈降反応器の一例としての、概略縦断面図である。
【図2】図1に示された沈降反応器中に嵌め合わされた粉末化および噴霧装置の一例としての、概略横断面図である。
【図3】本発明による第2沈降反応器の一例としての、概略縦断面図である。
【図4】図3に示した沈降反応器のタイプに対する粉末化および噴霧装置の一例としての、概略横断面図である。
【図5】本発明による沈降反応器群の一例としての、概略縦断面図である。
【図6】本発明による第2沈降反応器群の一例としての、概略縦断面図である。
【図7】本発明による第3沈降反応器の一例としての、概略縦断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
沈降した炭酸カルシウム粒子を製造するために、二酸化炭素を含みかつ沈降反応器の内側にあるガス中に、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)あるいは他の対応するCa++イオン源を、液滴および/あるいは粒子として供給する方法からなる、1個あるいは数個の連続沈降反応器(10、10’、10''、10''')中の炭酸カルシウム微小粒子からなる炭酸カルシウム製品の製造方法であって、
ピン粉砕機の原理に基づいて作動しかつ該反応器の内側に、あるいは反応器と関連して、はめ合わされている粉末化および噴霧装置(14、44)を経由して、水酸化カルシウムあるいは他の対応するCa++イオン源を、該沈降反応器に供給すること、かつ
本質的に永久的に分離された100nm以下のサイズの粒子で形成される炭酸カルシウム製品を得るために、該沈降反応器の温度を65℃以下に保持することを特徴とする方法。
【請求項2】
低温で、該沈降反応器中に、少なくとも幾分かの水酸化カルシウムあるいは他の対応するCa++イオン源を供給することにより、
低温で、あるいはドライアイスとして沈降反応器中に、少なくとも幾分かの二酸化炭素を供給することにより、
該沈降反応器中に、冷却スリーブ(13)などの冷却エレメント(13、15、15’)を配置することにより、
炭酸カルシウムを含む材料および/あるいは二酸化炭素を含むガスを、該沈降反応器から冷却器を経由して、第2沈降反応器へ導入することにより、かつ/あるいは、
炭酸カルシウムを含む材料および/あるいは二酸化炭素を含むガスを、該沈降反応器から冷却器へまた冷却器から該沈降反応器へと循環させることにより、
該沈降反応器中の温度を低下させることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
少なくとも幾分かの水酸化カルシウムを、30℃以下の温度、典型的には5から30℃、有利には10から20℃、最も典型的には17℃以下の温度で該沈降反応器中に供給することを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
該沈降反応器中の温度を、典型的には10から65℃、より典型的には30から65℃、最も典型的には40℃以下に維持することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項5】
少なくとも水酸化カルシウムおよび二酸化炭素を、該沈降反応器中に連続的に供給し、かつ炭酸カルシウムを含む材料を、該沈降反応器から連続的に除去しながら、沈降反応器(10、10’、10''、10''')が連続して作動することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項6】
第1沈降反応器(10)から除去された炭酸カルシウムを含む材料の少なくとも幾分かを冷却しかつ第1沈降反応器(10)中に循環させ、あるいはピン粉砕機の原理で作動している装置を経由して、次の沈降反応器(10’、10''、10''')に導くことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項7】
水酸化カルシウムを、水酸化カルシウム溶液および/あるいは水酸化カルシウムスラッジとして該沈降反応器中に供給すること、水酸化カルシウムスラッジあるいは溶液の滴径および/あるいは粒度を、装置(14、44)中にはめ合わされかつ5から250m/秒のリング速度で移動するピン、ブレードあるいは対応するエレメントにより発生されるスラッジおよび/あるいは溶液を標的にした衝撃およびダブル衝撃により、ピン粉砕機の原理で作動している粉末化および噴霧装置(14、44)中で200μm以下の粒度に減少させることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項8】
粉末化および噴霧装置(14、44)の中での水酸化カルシウムを含む材料および/あるいは炭酸カルシウムを含む循環材料のドウエル時間が、10秒以下、典型的には2秒以下、最も典型的には1秒以下であることを特徴とする請求項1あるいは6記載の方法。
【請求項9】
該沈降反応器(10、10’、10''、10''')の中での水酸化カルシウムを含む材料および/あるいは炭酸カルシウムを含む循環材料の炭酸化実効時間が、1分以下、典型的には30秒以下、最も典型的には10秒以下であることを特徴とする請求項1あるいは6記載の方法。
【請求項10】
ピン粉砕機の原理に基づいて作動している粉末化および噴霧装置(14、44)を経由して、かつ/あるいは、
別のガス供給装置を用いて、沈降反応器の沈降容器(12)中に直接、二酸化炭素を沈降反応器中に供給することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項11】
該方法は、プロセスの第1局面、典型的には主局面において、炭酸カルシウムを第1沈降反応器(10)で、水酸化カルシウムから沈降させ、その後プロセスの第1局面で沈降した炭酸カルシウムおよび沈降していない水酸化カルシウムを、第1沈降反応器から第2沈降反応器(10’)に導入し、さらに、
プロセスの第2局面では、第2沈降反応器に導かれた水酸化カルシウムの残りの部分の少なくとも幾分かから炭酸カルシウムを沈降させ、その後プロセスの第2局面で沈降した炭酸カルシウムおよび第1沈降反応器から第2沈降反応器に導かれた炭酸カルシウムおよび結果として生じる残留する未沈降水酸化カルシウムを、必要により、第2沈降反応器(10’)から第3沈降反応器(10'')へ導入するという多段式連続運転炭酸化プロセスからなることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項12】
複数あるいは単一の沈降反応器中に供給される水酸化カルシウムの乾燥物含有量を調節することにより、典型的には乾燥物含有量を30%以下、典型的には10から25%に調節することにより、沈降した炭酸カルシウムの粒度を制御することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項13】
水酸化カルシウムおよび二酸化炭素に加えて、ソルビトールなどのあるポリオールを沈降反応器中に供給し、かつ該ポリオールは、沈降反応器中に供給されるように水酸化カルシウムスラッジに添加するか、あるいはこのスラッジを生成させるために使用する消火水に添加し、
典型的には粉末化および/あるいは噴霧装置を経由して、沈降反応器に直接添加し、および/あるいは
沈降反応器から放出される炭酸カルシウムを含む材料に対して添加することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項14】
粒子の表面処理に適しておりかつ粒子の疎水化、成長あるいは分離性に影響する1種以上の添加剤、たとえば、ソルビトールなどのポリオール、砂糖、脂肪酸、ステアリン酸、樹脂酸、燐酸、アクリルポリマーのナトリウム塩あるいはアンモニウム塩の水溶液などの分散剤を、該沈降反応器の前に、該沈降反応器中に、および/あるいは該沈降反応器の後に、沈降した炭酸カルシウム中に別々にあるいは同時に添加することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項15】
微小の炭酸カルシウム粒子からなる炭酸カルシウム製品を水酸化カルシウムから製造する装置において、該装置は、水酸化カルシウムあるいは他の対応するCa++イオン源を、液滴および/あるいは粒子として粉末化しあるいは噴霧して、その内側では二酸化炭素を含むガスと水酸化カルシウムが接触する少なくとも1個の連続沈降反応器(10、10’、10''、10''')と、水酸化カルシウムあるいは他の対応するCa++イオン源を該沈降反応器中に供給する装置(16)と該沈降反応器から炭酸カルシウム製品を除去するための装置(20)からなる装置であって、
該装置は、さらに該沈降反応器中で、水酸化カルシウムを小さな液滴および/あるいは粒子として粉末化するための、ピン粉砕機の原理に基づいて作動する粉末化および噴霧装置(14、14’、14''、14''')と、
該沈降反応器中での低下した温度を維持するための冷却装置(11、11’、13、15、15’、17、17’、45、52)とからなることを特徴とする装置。
【請求項16】
該冷却装置は、該沈降反応器中に供給される水酸化カルシウム、二酸化炭素、あるいは循環炭酸カルシウムの温度を下げるための装置(11、11’、17、17’、45、52)ならびに/または、
該沈降反応器中の材料の温度を低く維持するための装置(13、15、15’)とからなることを特徴とする請求項15記載の装置。
【請求項17】
該装置は、互いに流れ接続を持つ2個あるいは数個の連続沈降反応器(10、10’、10''、10''')からなること、
1つの反応器から他の反応器に流れる炭酸カルシウム材料を冷却するための冷却器(11、17、17’、52)が、連続して配置された沈降反応器のあいだに配置されることを特徴とする請求項15記載の装置。
【請求項18】
ピン粉砕機の原理に基づいて作動する粉末化および噴霧装置のロータのリング速度は、1から250m/秒であること、異なった方向であるいは同じ方向で回転するロータのリングの速度差あるいは、隣接するロータとステータとの速度差は、5から400m/秒、典型的には5から200m/秒であることを特徴とする請求項15記載の装置。
【請求項19】
炭酸カルシウム粒子の粒度および比表面積は、次のとおり;
粒度d50は、典型的には100nm以下、より典型的には70nm以下、最も典型的には40nm以下であり、
比表面積は、典型的には20m2/g以上、より典型的には、40m2/g以上、最も典型的には、60m2/g以上であることを特徴とする請求項1〜14のいずれか一項記載の方法により製造される炭酸カルシウム製品。
【請求項20】
そのようなものとして、あるいは医薬、化粧品、食料、塗料、プラスチクス、ゴム、顔料、工業薬品および/あるいは紙工業においてさらに加工されることを特徴とする請求項1〜14のいずれか一項記載の方法により製造される炭酸カルシウム製品の用途。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−506618(P2008−506618A)
【公表日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−520844(P2007−520844)
【出願日】平成17年7月5日(2005.7.5)
【国際出願番号】PCT/FI2005/000313
【国際公開番号】WO2006/005793
【国際公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(506004470)
【Fターム(参考)】