説明

炭酸ガスインジケーター付き包装体

【課題】包装体内の相対湿度が上昇した場合でも、外観不良が発生せず、その耐水性が良好な指示部を有する炭酸ガスインジケーター付き包装体を得る。
【解決手段】炭酸ガスインジケーターが炭酸ガス透過性一次容器と炭酸ガス及び水蒸気非透過性外装体との間に配置され、多価アルコールの配合量が、前記炭酸ガス検知用インキ組成物100重量部に対し、1〜3重量部である

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品、飲料、及び薬品等を長期間保存するためのガス置換包装中の置換されたガス雰囲気が保持されていることを検出するためのインキ組成物を用いた炭酸ガスインジケーターを配置した包装体に関する。特に、炭酸ガス及び水蒸気非透過性の外装体と炭酸ガス透過性一次容器との間の空間部分の相対湿度が高くなるような包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、炭酸ガスを含む置換ガスを封入したガス置換包装のピンホール、及びシール不良の発生によるガス雰囲気の変化を簡単に確認し得る種々の炭酸ガスインジケーターが上市されている。
【0003】
この炭酸ガスインジケーターは、pH指示薬を含み、周囲雰囲気中の炭酸ガスが十分に存在すると、炭酸ガスインジケーター中の水に炭酸ガスが溶けて弱い酸性を示し、pH値が低くなり、これに伴って、pH指示薬の色調が変化する。
【0004】
例えば外装体内に、内容物と共に、炭酸ガスインジケーター及び炭酸ガスを封入した包装体の場合、外装体にピンホール等が発生して炭酸ガスが漏れると、炭酸ガスインジケーター周囲雰囲気中の炭酸ガス濃度が低下して、pH値が上がり、これに伴ってpH指示薬の色調が変化する。このように、炭酸ガスインジケーターを用いると、このpH指示薬の色調の変化を利用して、炭酸ガスインジケーター周囲雰囲気の炭酸ガス濃度の変化を視覚的に検知することができる(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
このような炭酸ガスインジケーターとして、バインダー樹脂とpH指示薬を含む炭酸ガスインジケーター用インキを用い、支持体上にpH指示部を印刷したものがある。このようなpH指示部は、包装体に用いられる種々の外装体などにも印刷できるので、見やすく、便利である。pH指示部の鮮明な色調変化を保持するには水分の存在が不可欠であるので、バインダー樹脂としては、水に溶解または分散するものが使用されている。
【0006】
しかしながら、これらのインキを用いて印刷された炭酸ガスインジケーターは、その周囲雰囲気の相対湿度が高くなると、pH指示部に過剰の水分が供給されて炭酸ガスインジケーター用インキが再溶解し、その外観が損なわれるという問題があった。
【0007】
外装体内の相対湿度は、内容物や外部の温湿度、内部空間容積によって変わってくる。特に内容物によるところが大きい。食品や、飲料、医薬品は、それぞれ下記式で表されるような固有の水分活性を持っている。
【0008】
相対湿度(%RH)=水分活性×100
この水分活性が、外装体内の湿度が大きく変わる原因となっている。例えばコーヒー、のり、お茶、米菓、ビスケット、チョコレートは0.1ないし0.5、米、キャラメル、煮干し、医療用アンプルは0.5ないし0.7、みそ、生菓子、団子、パン粉、チーズ、ちくわ、餅、医療用薬液バッグ等は0.7ないし1を示す。水分量が高いものほど、相対湿度が高くなり、炭酸インジケーターの外観を損なう原因となっていた。
【0009】
また、水分量が高い内容物例えば医療用薬液バッグの場合、この医療用薬液バッグのフィルムすなわち一次容器の厚さを薄くしただけで、医療用薬液バッグと外装体間の空間の相対湿度が上昇し、炭酸インジケーターに過剰の水分が取り込まれて、炭酸インジケーター用インキが再溶解し、外観を損なうという問題があった。
【特許文献1】国際公開第01/044385号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、pH指示薬を含有するインキを用いて印刷された炭酸ガスインジケーター周囲雰囲気の相対湿度が上昇した場合でも、外観不良が発生せず、良好な炭酸ガス応答性を示す指示部を有する炭酸ガスインジケーター付き包装体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、支持体、及び該支持体上に、pH指示薬、バインダー樹脂、多価アルコール、及び溶媒を含有する炭酸ガス検知用インキ組成物を用いて形成された指示部を備えた炭酸ガスインジケーターと、炭酸ガスを発生する薬剤を収容するための炭酸ガス透過性一次容器とを炭酸ガス及び水蒸気非透過性外装体内に配置した包装体であって、
前記炭酸ガスインジケーターは、該炭酸ガス透過性一次容器と該外装体との間に配置され、
前記多価アルコールは、その配合量が、前記炭酸ガス検知用インキ組成物100重量部に対し、1〜3重量部であることを特徴とする包装体が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明を用いると、その炭酸ガスインジケーターの指示部が、その周囲雰囲気の相対湿度が上昇しても、その外観及び色調が変化せず、炭酸ガス濃度変化に良好な応答性を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の包装体は、炭酸ガス及び水蒸気非透過性外装体と、この外装体内に配置された、炭酸ガスインジケーター、及び炭酸ガスを発生する薬剤を収容するための炭酸ガス透過性一次容器とを含み、炭酸ガスインジケーターは、該炭酸ガス透過性一次容器と該外装体との間に配置されている。この炭酸ガスインジケーターは、支持体と、支持体上に設けられた指示部を有する。この指示部は、炭酸ガス検知用インキ組成物を用いて形成されている。炭酸ガス検知用インキ組成物は、pH指示薬、バインダー樹脂、多価アルコール、及び溶媒を含有し、この多価アルコールは、その配合量が、炭酸ガス検知用インキ組成物100重量部に対し、1〜3重量部である。
【0014】
多価アルコールは、保湿剤として使用され、指示部となるインキ層中に水等の溶媒を保持して、pH指示薬の呈色反応を促進させることができる。
【0015】
本発明によれば、この多価アルコールの含有量を上述のように限定することにより、多湿環境下でもpH指示部に過剰の水分が取り込まれないので、炭酸ガスインジケーター用インキの再溶解を防ぎ、炭酸ガスインジケーターの外観を良好に維持することができる。
【0016】
本発明によれば、このような炭酸ガスインジケーターと炭酸ガスを発生する薬剤を収容するための炭酸ガス透過性一次容器とを、炭酸ガスを含む置換ガスを封入した炭酸ガス及び水蒸気非透過性外装体内に配置した包装体を用いることにより、置換したガス雰囲気中の炭酸ガス濃度の変化を、周囲雰囲気の湿度の変化に関わらず、指示部の色調変化により判断し得、これにより、包装体のピンホール、及びシール不良の発生を簡単に確認することができる。
【0017】
ここで炭酸ガス透過性一次容器の炭酸ガス透過性とは、500cm/m・day・atm以上の炭酸ガス透過率を有することをいう。また、炭酸ガス及び水蒸気非透過性とは、500cm/m・day・atm以下の炭酸ガス透過率、及び50cm/m・day・atm以下の水蒸気透過率を有することをいう。炭酸ガス透過率か50cm/m・day・atmを超えると、包装体内の炭酸ガス雰囲気が保持できないし、水蒸気透過率が50cm/m・day・atmを超えると、包装体内の湿度が包装体外の湿度に実質的に左右される。さらに、炭酸ガス透過率は、10cm/m・day・atm以下、水蒸気透過率が10cm/m・day・atm以下であると、上記の効果がさらに優れたものになる。これら条件を備えた本発明に使用可能な樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートやナイロン等の合成樹脂からなる基材フィルム上に、シリカやアルミナ等を蒸着した透明蒸着フィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム等があげられる。
【0018】
多価アルコールとしては、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、及びポリエチレングリコール等が使用可能である。より好ましくはグリセリンを使用することができる。多価アルコールの割合が1重量%未満であると、インジケーターの発色スピードが不十分となる傾向があり、一方で、多価アルコールの割合が3重量%を超えると、外観不良が発生する傾向がある。
【0019】
pH指示薬としては、炭酸ガスの影響で色調変化を伴うもの、またはアルカリ性物質の濃度変化に応じたpHの変動に対して色調変化を伴うものであればどのようなものでも使用できる。表1に好ましいpH指示薬及びその呈色範囲を示す。
【表1】

【0020】
特に好ましいpH指示薬としては、安全性、呈色反応の変化のわかりやすさ、種々の耐性からメタクレゾールパープル、パラキシレノールブルーが挙げられる。
【0021】
炭酸ガスは、水に溶けて弱い酸性を呈する。本発明に用いられるインキ組成物では、周囲雰囲気中の炭酸ガスが十分に存在すると、pH値が低くなるが、炭酸ガス濃度が低下するに従ってpH値が上がり、これに伴って、pH指示薬の色調が変化する。この色調の変化を観察することにより、周囲雰囲気の炭酸ガス濃度の変化を検知することができる。アルカリ性物質を含む構成とすると、色調の変化をより明確に検知することができる。
【0022】
アルカリ性物質としては、トリエタノールアミン、ポリエチレンイミンなどの有機アルカリや水酸化アルカリ、炭酸アルカリ、炭酸水素アルカリ、アンモニアなどの無機アルカリを利用できる。アルカリ性物質の割合としては、5重量%以下が望ましい。例え5重量%以上使用しても効果は変わらない。
【0023】
バインダー樹脂としては、pH指示薬等の構成成分を支持体上に固着するために使用するもので、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリエステル樹脂、及びポリエーテル樹脂等が挙げられる。
【0024】
溶媒としては、本発明のインキ組成物の各成分を均一にかつ安定に溶解または分散することのできるものが選択され、エーテル類、芳香族炭化水素、エステル類、アルコール類、ケトン類等が挙げられる。特に、アルコール類が好ましい。また、色素、アルカリ性物質等を溶解させてインキ組成物とし、且つインジケーターとしての良好な発色を得るためには、水が含まれることが好ましい。
【0025】
また、必要に応じて、インキ組成物中に吸水剤を配合することができる。これにより、指示部となるインキ層中に水などの溶媒を保持して、pH指示薬の呈色反応を促進させることができる。吸水剤としては、水等の溶媒を含んだときに極端な酸性或いはアルカリ性を示さないものが選択され、例えばでんぷん、カオリン、合成シリカ、ガラス、微結晶セルロース、イオン交換セルロース、及びケイ酸アルミニウム等を用いることができる。
【0026】
上記表1に示すpH指示薬は、指示薬そのものの色調の変化で判断するだけでなく、他の色の色素との混色による色調の変化で判断することができる。
【0027】
このような目的で、本発明に用いられる炭酸ガス検知用インキ組成物には、着色剤を添加することができる。
【0028】
着色剤を添加して、炭酸ガス検知用インキ組成物の色と混色させることにより、例えば指示薬そのものの色調の変化が視覚的に判断しにくいものであるとき、あるいはデザイン上所望の色調でないとき、視覚的に判断しやすい色調、あるいはデザイン上所望の色調に変化させることができる。
【0029】
また、同様の目的で、白以外の着色された支持体を適用し、その上に、本発明の炭酸ガス検知用インキ組成物を用いた指示部を設けることができる。
【0030】
着色剤としては、例えば食用赤色2号(アマランス)、食用赤色3号(エリスロシン)、食用赤色40号(アルラレッドAC)、食用赤色102号(ニューコクシン)、食用赤色104号(フロキシン)、食用赤色106号(アシッドレッド)、及び天然系コチニール色素等の赤色着色剤、食用黄色4号(タートラジン)、食用黄色5号(サンセットイエローFCF)、及び天然系紅花黄色素等の黄色着色剤、食用青色1号(ブリリアントブルーFCF)、及び食用青色2号(インジゴカルミン)等の青色着色剤があげられる。
【0031】
インキ組成物に着色剤を添加する以外に、支持体として着色されたものを用いることにより、同様の色調の変化が得られる。
【0032】
また、この他インキの塗工性向上のため、炭酸ガス検知用インキの発色に影響を与えない範囲で各種薬剤例えば界面活性剤、ニス、コンパウンド、乾燥抑制剤、及びドライヤー等を添加することも可能である。
【0033】
支持体へのインキの塗布方法としては、印刷法例えばスクリーン印刷法、凹版印刷法、及びグラビア印刷法等や、コーティング法例えばロールコーティング、スプレーコーティング、及びディップコーティング等が好適に使用される。
【0034】
本発明に用いられる炭酸ガスインジケーターは、インキ組成物の塗布量が比較的多く、一定であることが望まれる。このことから、炭酸ガスインジケーターの指示部の形成方法として、印刷法を用いることが好ましい。例えば支持体に指示部を連続して印刷し、ヒートシール及び切断することにより包装体を加工する場合には、支持体が巻き取り供給され得ることから、グラビア印刷やフレキソ印刷が適している。
【0035】
基材としては、炭酸ガスインジケーターと反応せず、しかも試薬の呈色を阻害しないものがよい。このような基材として、合成樹脂例えばポリエステル、ポリアミド、ポリビニルアルコール、セロハン、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリメチルペンテン等からなるフィルム、及びこれらの合成樹脂フィルムとシリカ、アルミナなどの透明蒸着フィルムとの積層体等を目的、使用形態に合わせて用いることができる。
【0036】
本発明の包装体の使用形態としては、食品、飲料、薬品等の内容物を収納するガスバリア性材料からなる容器内を炭酸ガス置換状態とし、容器内に炭酸ガスインジケーターを配置する方法を例示することができる。
【0037】
以下、図面を参照し、本発明の包装体について、より詳細に説明する。
【0038】
図1は、本発明に用いられる炭酸ガスインジケーターの第1の例を表す正面図、図2はその断面図である。
【0039】
図示するように、このインジケーター10は、例えばポリエチレンテレフタレートフィルムからなる支持体1の両面に、例えばメタクレゾールパープル、炭酸ナトリウム、ポリビニルアセタール樹脂、1ないし3重量%のグリセリン及び水からなる炭酸ガス検知用インキ組成物を例えば円形状のパターンでスクリーン印刷により塗布して得られた指示部2が設けられ、その周囲を炭酸ガス透過性を有する例えば多孔性のフィルム3で包囲した構成を有する。このインジケーターの指示部は、通常の空気中では、紫色を呈している。なお、図1及び図2では、支持体1の両面に指示部2を設けたが、片面のみに指示部を設けた構成も適用し得る。また、このインジケーターは、通気性フィルム3で包囲されているが、通気フィルム3を用いないで、そのまま使用することができる。
【0040】
図3に、本発明にかかる包装体の第1の例を表す図を示す。図示するように、このガス置換包装体20は、薬液を収納した炭酸ガス透過性の例えば0.910ないし0.925g/cmの低密度ポリエチレン製の容器11と、例えば上記炭酸ガスインジケーター10とを、置換ガスとして窒素90ないし99.5容量%、炭酸ガス0.5ないし10容量%混合ガス13を用いて、ガスバリアー性の積層フィルムからなる外装体12に封入した構成を有する。
【0041】
この包装体中のインジケーターの指示部2は、封入時には黄色を呈している。しかしながら、包装体にピンホールあるいはシール不良等が発生し、置換ガスが漏れ出して代わりに周囲の大気が混入すると、包装体内の炭酸ガス濃度が低下する。このため、インジケーター10周囲のガス雰囲気が変化して、指示部2の色調が黄色からうす茶色、さらには紫色へとpHに応じて変化する。この色調の変化を視認することにより、包装体内の炭酸ガスを含む雰囲気が所定の濃度に保持されているかどうかを容易に確認することができる。
【0042】
図4には、本発明にかかる包装体の第2の例を示す。
【0043】
図示するように、包装体30は、薬液を収納した炭酸ガス透過性の例えば0.910ないし0.925g/cmの低密度ポリエチレン製の容器14の表面に、容器14の外装部を支持体として、炭酸ガスインジケーターの第1の例と同様の炭酸ガス検知用インキ組成物を用い、スクリーン印刷により形成された指示部2と、この指示部2上に被覆された通気性材料からなる被覆層5とを有する炭酸ガスインジケーター18を設け、置換ガスとして窒素90ないし99.5容量%、炭酸ガス0.5ないし10容量%混合ガス13を用いて、ガスバリアー性の積層フィルムからなる外装体12で封入した構成を有する。また、被覆層5を設けない以外は、包装体30と同様の構成を有する包装体とすることもできる。
【0044】
この包装体30でも、図3に示す包装体と同様に、この色調の変化を視認することにより、包装体内の炭酸ガスを含むガス雰囲気が所定の濃度に保持されているかどうかを容易に確認することができる。
【0045】
図5には、本発明にかかる包装体の第3の例を示す。
【0046】
図3、図4に示した包装体以外に、図5に示すように指示部2を外装体12内面側に印刷、又は指示部2を設けた支持体1からなる炭酸ガスインジケーター10を外装体12に接着する等の方法で、包装体と一体化して使用しても良い。
【0047】
この包装体40は、ガスバリアー性の積層フィルムからなる外装体12と、外装体12内面に、外装体12を支持体として、例えば炭酸ガスインジケーター10と同様の炭酸ガス検知用インキ組成物スクリーン印刷により設けられた指示部2とを有する炭酸ガスインジケーターとから構成される。この包装体40は、例えば2枚の積層フィルムを指示部2を内側にして配し、その間に内容物16を配置した後、窒素90ないし99.5容量%、炭酸ガス0.5ないし10容量%混合ガス13で置換しながら、外装体12周辺をヒートシールにより気密に封止することにより形成され得る。
【0048】
図6には、本発明にかかる包装体の第4の例を示す。
【0049】
また、図7は、図6のA−A断面構成の一例の概略図を示す。
【0050】
図7に示すように指示部2を外装体12上に印刷することにより、炭酸インジケーターを外装体と一体化して使用することができる。
【0051】
この包装体50は、ガスバリアー性の積層フィルムからなる外装体12と、外装体12内面に、外装体12を支持体として、例えば炭酸ガスインジケーター10と同様の炭酸ガス検知用インキ組成物を用いて、スクリーン印刷により設けられた指示部2とを有する炭酸ガスインジケーターとから構成される。
【0052】
また、図7に示すA−A断面構成の代わりに、図8に示すA’−A’断面構成の他の例を適用することができる。このとき包装体50は、ガスバリアー性の積層フィルムからなる外装体12を支持体とし、外装体12上に形成されたアンカーコート層51と、アンカーコート層51上に例えば炭酸ガスインジケーター10と同様の炭酸ガス検知用インキ組成物を用いて、スクリーン印刷により設けられた指示部2と、指示部2を介してアンカーコート層51上に形成されたオーバーコート層52とを有する。
【0053】
このようなアンカーコート層、オーバーコート層を設けることにより、炭酸ガスインジケーター層を保護し、外観不良、剥離、及び破断を防止することが出来る。
【0054】
このアンカーコート層としては、非水溶性であり、基材とその上に形成される炭酸ガスインジケーター層との密着性が良好な材料を、オーバーコート層としては、炭酸ガス透過性、炭酸ガスインジケーター層との密着性、及び任意に炭酸ガスインジケーター層上に更に設けられ得る接着剤層または他の樹脂層との良好な密着性を有する材料を好ましく使用することが出来る。アンカーコート層、及び/またはオーバーコート層は必要に応じて2層以上設けることも出来る。
【0055】
アンカーコート層及びオーバーコート層の塗布方法としては、印刷法例えばスクリーン印刷法、凹版印刷法、及びグラビア印刷法等や、コーティング法例えばロールコーティング、スプレーコーティング、及びディップコーティング等が好適に使用される。
【0056】
また、図7の断面構成を有する炭酸インジケーターの指示部2,あるいは図8の断面構成を有する炭酸インジケーターのオーバーコート層上には、シーラント層を設けることができる。
【0057】
例えば外装体上に図8に示す構成の炭酸ガスインジケーター、及び任意に、印刷層などを形成した後、オーバーコート層及び印刷層を介して、外装体12上に例えば接着層を形成し、さらに接着層上にシーラント層を設けることができる。
【0058】
シーラント層としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等、炭酸ガス透過性、水蒸気透過性のあるものを適宜選択可能である。
【0059】
接着層としては、例えば2液硬化型ウレタン系樹脂等を使用することができる。
【0060】
また、図6では、炭酸ガスインジケーターが外装体の一部として形成されているけれども、図7及び図8の断面構成において、外装体12の代わりに、図1の支持体1を適用することにより、単独の炭酸ガスインジケーターを形成することも可能である。
【0061】
内容物を収容する炭酸ガス透過性一次容器の材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン酢酸ビニル等の単体、積層体、あるいは各々の材料の配合等から適宜選定可能であり、その大きさや形状は、内容物の種類や容量により決定される。内容物容量としては20ml〜3l、厚みとしては100μm〜500μm程度が使用されるが、ここでは、容量が100ml以上であり、厚みが300μm以下と比較的薄いソフトバッグやブローボトル等の場合に該当する。
【0062】
内容物としては、重炭酸塩含有薬液、及びその他大気開放状態で炭酸ガスを発生し、それに伴う品質劣化が認められるものであれば、特に限定されない。
【0063】
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明する。
【0064】
実施例1
(炭酸ガスインジケーター層組成)
メタクレゾールパープル …1重量部
水酸化ナトリウム …4重量部
グリセリン …2.5重量部
ポリビニルアセタール樹脂 …7重量部
(アンカーコート層、オーバーコート層組成)
硫酸バリウム …10重量部
ウレタン樹脂 …15重量部
厚さ12μmのポリエステルフィルムを用意した。
【0065】
その片側に厚さ0.5μmのアンカーコート層、厚さ1μmの炭酸ガスインジケーター指示層、厚さ1μmのオーバーコート層をグラビア印刷法にて順次積層させ、その反対側に、シリカを蒸着した厚さ12μmのポリエステルフィルムを2液硬化型ウレタン系接着剤にて積層させ、更に、印刷面を覆う形で厚さ50μmのポリエチレンフィルムを積層させ、外装体を得た。
【0066】
この積層フィルムを用いて製袋し、内容物として、7%炭酸水素ナトリウム水溶液を20ml充填したポリエチレン製アンプル(肉厚500μm)及び小型湿度計を入れた後、内部を1/1=窒素/炭酸ガス混合ガスにて置換することで包装体を得た。
【0067】
また、アンプル周囲雰囲気の湿度を小型湿度計にて計測した。
【0068】
40℃75%RHの高温多湿環境試験
この包装体を、40℃75%RHの恒温恒湿槽にて1週間保存した後、指示層の外観を確認した。インキの再溶解が見られた場合を×、インキの再溶解が見られない場合を○と評価した。
【0069】
その後、包装体を開封することで、インジケーターの応答性を確認した。
【0070】
インジケーターが2日以内に変色した場合を○、変色しなかった場合を×と評価した。
【0071】
得られた結果を下記表2に示す。
【0072】
実施例2
内容物として7%炭酸水素ナトリウム水溶液を250ml充填したポリエチレン製バッグ(肉厚200μm)を使用した以外は、実施例1と同様にして包装体を得た。
【0073】
実施例1と同様に40℃75%RHの高温多湿環境試験を行った。得られた結果を下記表2に示す。
【0074】
実施例3
炭酸ガスインジケーター層組成中のグリセリンの量を1重量部に変更したこと以外は実施例2と同様にして包装体を得た。
【0075】
実施例1と同様に40℃75%RHの高温多湿環境試験を行った。得られた結果を下記表2に示す。
【0076】
実施例4
炭酸ガスインジケーター層組成中のグリセリンの量を3重量部に変更したこと以外は実施例2と同様にして包装体を得た。
【0077】
実施例1と同様に40℃75%RHの高温多湿環境試験を行った。得られた結果を下記表2に示す。
【0078】
比較例1
炭酸ガスインジケーター層組成中のグリセリンの量を5重量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして包装体を得た。
【0079】
比較例2
炭酸ガスインジケーター層組成中のグリセリンの量を5重量部に変更したこと以外は実施例2と同様にして包装体を得た。
【0080】
比較例3
炭酸ガスインジケーター層組成中のグリセリンの量を0重量部に変更したこと以外は実施例2と同様にして包装体を得た。
【表2】

【0081】
表2より、実施例1〜4のグリセリン濃度の低いインジケーターについては、外装体内
湿度に関わらず、外観は良好であった。それに対し、比較例1,2のグリセリン濃度の高いインジケーターについては、一次容器のフィルム厚さが薄く、外装体内湿度が高い場合に、外観不良が発生した。また、グリセリンを添加しない場合は、保存試験後のインジケーターの応答性が悪かった。
【0082】
以上から、グリセリン濃度を1〜3重量部と低く設定することで、炭酸ガスインジケーターの応答性を維持したまま外観不良を回避できることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明に用いられる炭酸ガスインジケーターの第1の例を表す正面図
【図2】図1の部分的な断面図
【図3】本発明にかかる包装体の第1の例を表す図
【図4】本発明にかかる包装体の第2の例を示す図
【図5】本発明にかかる包装体の第3の例を示す図
【図6】本発明にかかる包装体の第4の例を示す図
【図7】図6の部分断面図
【図8】図6の部分断面図
【符号の説明】
【0084】
1…支持体,2…指示部,3…炭酸ガス透過性フィルム,5…被覆層,10,18…炭酸ガスインジケータ,11,14,16…薬液用容器,12…外装体,13…炭酸ガス含有ガス,20,30,40,50…包装体、51…アンカーコート層、52…オーバーコート層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体、及び該支持体上に、pH指示薬、バインダー樹脂、多価アルコール、及び溶媒を含有する炭酸ガス検知用インキ組成物を用いて形成された指示部を備えた炭酸ガスインジケーターと、炭酸ガスを発生する薬剤を収容するための炭酸ガス透過性一次容器とを、炭酸ガス及び水蒸気非透過性外装体内に配置した包装体であって、
前記炭酸ガスインジケーターは、該炭酸ガス透過性一次容器と該炭酸ガス及び水蒸気非透過性外装体との間に配置され、
前記多価アルコールは、その配合量が、前記炭酸ガス検知用インキ組成物100重量部に対し、1〜3重量部であることを特徴とする包装体。
【請求項2】
前記炭酸ガス透過性一次容器と、炭酸ガス及び水蒸気非透過性外装体との間の空間部分が炭酸ガス雰囲気とされていることを特徴とする請求項1に記載の包装体。
【請求項3】
前記炭酸ガス透過性一次容器と、炭酸ガス及び水蒸気非透過性外装体との間の空間部分の相対湿度が、25℃50%RHの保存環境において60%〜100%であることを特徴とする請求項1または2に記載の包装体。
【請求項4】
前記支持体として前記外装体が適用され、前記指示部が該外装体内面の少なくとも一部に形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の包装体。
【請求項5】
前記支持体と前記指示部との間に設けられたアンカーコート層、及び該指示部を被覆するように設けられたオーバーコート層のうち少なくとも1層をさらに有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の包装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−195445(P2008−195445A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−35322(P2007−35322)
【出願日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【出願人】(000149435)株式会社大塚製薬工場 (154)
【Fターム(参考)】