説明

炭酸ガス入り内容液の無菌充填方法

【課題】炭酸飲料を容器に非接触状態で充填でき、既存の無菌充填装置を用いて高度の無菌充填を可能にする炭酸ガス入り内容液の無菌充填方法を提供する。
【解決手段】容器、内容液、炭酸ガスを個々に殺菌し、除菌炭酸ガスを殺菌済み内容液に圧入して炭酸ガスボリュームが目標値より15〜25%高めになるように殺菌済み炭酸ガス入り内容液を作り、該炭酸ガス入り内容液を殺菌済み容器に無菌雰囲気で充填バルブと非接触状態で充填する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭酸ガス入り内容液の無菌充填方法、特に果汁入り炭酸飲料等の低炭酸飲料の無菌充填に好適な炭酸ガス入り内容液の無菌充填方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、殺菌を要する飲料の容器への充填密封方法において、加熱殺菌を必要とする充填方法に加えて、加熱によるフレーバーの低下等を防ぎ、高品質の飲料を得る充填方法として無菌充填法が広く採用されてきている。しかしながら、無菌充填技術は、果汁飲料などの酸性飲料、コーヒー・茶飲料などの低酸性飲料、ミネラルウォーター等の無炭酸飲料においては確立されているが、果汁入り炭酸飲料や乳成分入り炭酸飲料等の炭酸飲料においては、前記無炭酸飲料と同程度に高度な無菌充填技術は未だ確立に至っていない。その理由は、無菌充填は、充填バルブから容器の汚染を防ぐために充填バルブと容器口が非接触状態で充填する必要があるが、炭酸飲料の場合、充填バルブと容器口とが非接触で容器内が外気に導通している状態で充填すると、容器内圧と充填タンク内圧との相違により液中の炭酸ガスが分離して充填時に泡の噴き零れが生じるので、炭酸飲料の充填は容器内圧と充填タンクが等圧状態でないと良好に充填できないからである。そのため、従来果汁入り炭酸飲料等の殺菌を要する炭酸飲料をPETボトル等の容器に充填する場合、内容液と炭酸ガスを混合して接触型充填バルブで容器に充填密封し、密封後に容器ごと内容液が65℃、10分以上になるようにパストライザーにてボトル外面から加熱殺菌を行っている。従って、その場合無菌充填に比べて加熱による味の劣化が起こり、且つボトルは耐熱圧性の高コストボトルを採用しなければならないという問題点がある。
【0003】
前記問題点を解決するために、本出願人は炭酸飲料であっても加熱殺菌を必要としない充填方法及び装置として、内部上方に充填バルブを有する充填チャンバー体の下端にボトルネックリング又は口頚部基部を密着させて密封の充填チャンバーを形成し、該充填チャンバー内で充填バルブの下方にボトル口(容器口)を非接触状態で位置させ、充填チャンバー内に充填タンクから加圧ガスを導入してボトル内と充填タンク内の圧力を同圧にした状態で、炭酸飲料を重力により流下させてボトルに充填する充填方法及び装置を提供した(特許文献1参照)。また、同様な炭酸飲料の無菌充填技術として、充填バルブ本体の下面にリング状のシールパッキンを設けて、容器首部全周を把持するグリッパとでノズル口端と容器口との間をガスシールして充填するようにした無菌充填装置も提案されている(特許文献2参照)。これらの従来技術は、何れも充填バルブと容器口部との間に密閉空間を形成して、ガスシールした状態で炭酸飲料を無菌充填するようにした点では共通している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−187292号公報
【特許文献2】特開2007−302325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1、2で提案されている技術は、内容液が接触する容器開口端が直接充填ヘッドに接触しないで充填できる点では、従来の炭酸飲料の充填方法と比べて無菌性を維持できるが、ボトルと充填ヘッドとが完全な非接触ではなく、充填バルブ下端と容器のネックリングや口頚部基部を密着させて、充填チャンバーを形成する点では、従来の炭酸飲料充填方法の延長上の技術であり、非炭酸飲料の無菌充填方法と同様な高度の無菌充填方法を実現するに至っていない。また、前記提案の充填方法は、特別な専用ノズルを必要とし、従来の無菌充填ラインに適用することができずコスト高となるため、改良の必要性があった。
【0006】
そこで、本発明はこれまで実現していない、炭酸飲料、特に果汁入り炭酸飲料等の低炭酸飲料を充填バルブと容器を完全に非接触状態で充填でき、高度の無菌充填を可能にし、且つ既存の無菌充填装置を用いることができ、新たな装置コストを必要とすることなく、炭酸飲料の無菌充填を可能にし、それにより容器も耐熱圧性等を有する特別な容器を用いることなく容器コストが低減でき、しかも高品質の味を維持できる炭酸ガス入り内容液の無菌充填方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記問題点を解決するために、種々研究した結果、炭酸ガス入り内容液であっても特定の条件を満たせば、容器と充填バルブが非接触状態で充填可能であることを見出し本発明に到達したものである。
即ち、前記課題を解決するための本発明の炭酸ガス入り内容液の無菌充填方法は、容器、内容液、炭酸ガスを殺菌し、充填密封後の目標炭酸ガスボリュームより高めの炭酸ガスボリュームの炭酸ガス入り内容液を作り、該炭酸ガス入り内容液を殺菌された容器に無菌雰囲気で充填バルブと非接触状態で充填することを特徴とするものである。充填密封後の目標ガスボリュームより高めの炭酸ガスボリュームの炭酸ガス入り内容液を作り、それを非接触型充填バルブで充填することによって、充填バルブと容器が非接触状態で充填する際に失われる炭酸ガス量を補填して製品規格通りの炭酸感が得られる炭酸飲料を得ることができる。
【0008】
前記炭酸ガス入り内容液を充填温度1〜6℃の低温で容器に充填することによって、泡の発生を抑制して良好に充填できる。炭酸ガス入り内容液の充填温度は、低い方が充填時の炭酸ガスの分離が起き難く噴き零れを抑制でき、6℃以上になると分離量が多くなるので、前記範囲が望ましい。また、充填温度が低すぎると炭酸ガス入り内容液が固まり始め送液時等に問題が起きるため、1℃以上とすることが望ましい。
【0009】
また、前記炭酸ガス入り内容液は、充填密封後の目標ガスボリュームに対して、前記充填タンクでのガスボリュームを15〜25%高めに設定することによって、目標ガスボリュームの炭酸飲料、即ち、炭酸感が良好な飲料を得ることができる。充填タンクでのガスボリュームを前記範囲より高めに設定すると、内容液のガスボリュームが高くなり過ぎて充填時に噴き零れが生じ易く、逆に低くすると噴き零れは生じないが、充填密封後に規格通りのガスボリュームを得ることができない。そして、本発明は、特に、充填密封後のガスボリュームが2.0以下の低炭酸飲料の無菌充填に好適に適用できる。充填密封後のガスボリュームが2.0を超えると、非接触状態で充填する場合、充填時の噴き零れが生じやすいので、2.0以下の低酸性飲料への適用が望ましい。
前記炭酸ガス入り内容液は、調合シロップと水を混合して殺菌した混合液に除菌炭酸ガスを気液混合して作り、充填タンクに供給する方法、又は殺菌済みの水に除菌炭酸ガスを気液混合した炭酸水を、殺菌済み調合シロップに混合して作り、充填タンクに供給する方法の何れを採用してもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、炭酸飲料、特に果汁入り炭酸飲料や乳成分入り炭酸飲料等の低炭酸飲料を充填バルブと容器を完全に非接触状態で充填でき、従来実現できなかった炭酸飲料の高度の無菌充填を可能にし、且つ既存の無菌充填装置を用いることができ、また容器も耐熱圧性等の機能を有する特別な容器を用いることなく容器コストが低減でき、しかも高品質の味を維持できるという格別な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る炭酸飲料の無菌充填方法を実現するための炭酸飲料無菌充填システム構成図である。
【図2】本発明の他の実施形態に係る炭酸飲料の無菌充填方法を実現するための炭酸飲料無菌充填システム構成図である。
【図3】本発明の実施形態に係る炭酸飲料の無菌充填方法において、非接触型充填バルブで容器に炭酸ガス入り内容液を充填している状態を示す模式図である。
【図4】圧入温度(炭酸ガスと内容液を混合溶解する温度)の違いによる、貯液タンクと充填タンク送液工程間のガスボリュームの変化を示す線図である。
【図5】充填バルブと容器とを非接触状態で炭酸飲料を充填した場合の充填タンク内での内容液ガスボリュームと充填密封後の容器内のガスボリュームの変化を示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明者は、非接触型バルブで炭酸ガス入り内容液の充填を可能にするために、炭酸ガス入り内容液の充填時の噴き零れ現象について種々実験した結果、噴き零れ現象は内容液内の炭酸ガスボリューム(GV)(以下、単にガスボリュームという)が影響し、ガスボリュームが高い程噴き零れ現象が生じるが、充填温度も大きく影響することが分かった。なお、ガスボリュームとは、内容液中に溶解している炭酸ガス体積と内容液全体の体積との比で表わされる。
【0013】
図5は、従来の無菌充填で採用される非接触型バルブで充填タンクからボトルに充填する工程での充填タンク内での果汁入り炭酸飲料のガスボリュ−ム(充填タンクガスボリューム,充填時のガスボリューム)とボトル充填密封後のガスボリューム(容器内ガスボリューム)の関係を、果汁入り炭酸飲料の温度を3℃と6℃の場合について実験した結果を示し、横軸が充填タンク内でのガスボリューム、縦軸が充填密封後のガスボリュームを表している。そして、曲線aが充填温度3℃、曲線bが充填温度6℃で前記充填タンクガスボリュームに対する前記容器内ガスボリュームの変化を示し、直線cが前記充填タンクガスボリュームと前記容器内ガスボリュームがガスロスなく充填された場合を直線で表し、該図から明らかなように、充填工程で図示のようにΔqだけガスボリュームの減少が生じているが、充填温度3℃の場合は6℃の場合と比べてガスボリュームの減少が少ない。このことは充填温度が高い程充填時のガスロスが多く、充填温度を低くすることによってガスロスを少なくできることを意味している。また、本実験においては、充填温度が3℃の場合、充填時のガスボリューム1.8〜2.4の範囲ではガスロスは生じても噴き零れが生じることなく、非接触型バルブで充填することができたが、2.4を超えると噴き零れが生じて充填が不可能であった。一方、充填温度が6℃の場合は、充填時のガスボリュームが2.1までは噴き零れが生じることなく充填できたが、2.1を越えると噴き零れが生じて充填することができなかった。以上のことにより、充填温度は1〜6℃が、前述したように炭酸ガス入り内容液の固まり防止、及び充填時の炭酸ガスの分離量が多くなることを防止の点で望ましいが、後に記載する実施例中の表1(実施例3)の結果と併せると、低炭酸飲料における充填密封後のガスボリュームを2.0まで確実に充填するには充填温度は1〜3℃にすることが特に好ましい。
【0014】
以上のことから、炭酸ガス入り内容液はある一定のガスボリュームまでは非接触型充填バルブでも充填可能であり、充填温度を低くすることによって、充填可能なガスボリュームをより高くできることが判った。従って、所望のガスボリュームの炭酸飲料を得るには、充填温度を低温にコントロールし、図5のグラフに示す充填タンクでのガスボリュームと充填後のガスボリュームとの差Δqだけ高いガスボリュームで充填することによって、充填密封後の目標ガスボリュームを2.0以下、確実には1.9以下、より確実には1.8以下とすることにより、非接触状態で充填した際に噴き零れを生じることなく、確実に充填することが可能であり、炭酸ガス入り内容液をより高度の無菌充填で得ることができる。従来無菌充填を必要とする炭酸飲料は、果汁入り炭酸飲料等の低炭酸飲料であり、充填密封後のガスボリュームが2.5を超える高炭酸飲料の場合は一般的に果汁、乳性分等を含まないために高度の無菌充填を必要としないので、本方法によって、高度の無菌充填が求められる低炭酸飲料を非接触型バルブによる高度の無菌充填が実用可能であることが分かる。
【0015】
以下、本発明の実施形態に係る炭酸ガス入り内容液を非接触バルブによって無菌充填する場合について、詳細に説明する。
本発明では、炭酸ガス入り内容液の無菌充填を達成するために、非接触での充填技術の外に所望のガスボリュームの無菌炭酸ガス入り内容液を得るための内容液と炭酸ガスの無菌混合(圧入)技術、容器の無菌化技術、装置の無菌化技術が求められる。
内容液と炭酸ガスの無菌混合技術として、調合シロップと水を混合して殺菌した混合液に、除菌炭酸ガスを攪拌混合して溶解させ、飲料の規格ガスボリュームよりも高めに設定し、且つ所定温度に冷却制御した炭酸ガス入り内容液を作り、充填タンクに供給する方法(混合方法1)と、除菌炭酸ガスと殺菌済みの水を混合した無菌炭酸水に、殺菌済み調合シロップを混合して飲料の規格ガスボリュームよりも高めに設定した所定温度に制御した炭酸ガス入り内容液を作り、充填タンクに供給する方法(混合方法2)との2方法を創出した。また、他の内容液と炭酸ガスの無菌混合技術として、殺菌済み調合シロップと殺菌済みの水と除菌炭酸ガスを直接容器に供給して混合する方法も考えられる。本実施形態では、混合方法1と混合方法2を採用した場合について説明する。
【0016】
図1は、前記混合方法1を採用した場合の本発明の果汁入り炭酸飲料の無菌充填方法の実施形態に係る無菌充填システム構成図である。
図中1は、内容液を貯留する送液タンクであり、2は送液ポンプ、3は加熱殺菌機、4は冷却機、5は炭酸ガスをろ過して除菌する除菌フィルタ、6は炭酸ガスと内容液を攪拌して内容液内に炭酸ガスを溶解させる気液混合器であり、本実施形態ではスタティックミキサーを採用している。気液混合器6で炭酸ガスが溶解された炭酸ガス入り内容液は、その後貯液タンク10、充填タンク12を経て充填バルブ14にて容器15に充填されるが、その間の経路は全て保温又は冷却構造となっており、炭酸ガス入り内容液の温度上昇を防止している。それは、前述したように炭酸ガス入り内容液を噴き零れなく容器に充填するためには、炭酸ガス入り内容液の温度管理が重要な要件となるからである。そのため、気液混合器6と貯液タンク10間は、冷却用二重管又は保温材で外周面を被覆されたホールディングチューブ7で連結され、該ホールディングチューブで一定時間保持して所定温度に冷却して安定させて貯液タンク10に供給するようにし、且つ貯液タンク10と充填タンク12間、及び充填タンク12と充填バルブ14間の配管は、冷却用二重管で連結され、貯液タンク10と充填タンク12は外周面がそれぞれ冷却用ジャケット9、11で被覆され、内容液を所定温度に維持するようにしている。
【0017】
充填バルブは、炭酸ガス入り内容液でありながら、通常の無菌充填用の非接触型充填バルブを採用できるのが本発明の特徴であり、実施形態に係る非接触型充填バルブの模式図が図3に示されている。この非接触型充填バルブ14は、通常の非接触型充填バルブが採用でき、充填ヘッド31が容器口と完全に離れた状態で炭酸ガス入り内容液を充填できるようになっており、充填タンク12から内容液供給管33を介して供給される炭酸ガス入り内容液をバルブ32が間欠駆動することによって、その下方に位置する容器15に向けて流下させて所定量を非接触で充填できるようになっている。
【0018】
以上のシステム構成において、本発明は炭酸ガス入り内容液を無菌充填可能とするために、少なくとも充填バルブ14及び図示していない密封装置までは無菌室に配置され、また図示してないが、通常の例えばPETボトルへの無菌充填ラインと同様に容器供給ラインとして容器を温水又は薬剤等で殺菌して充填密封装置に供給する容器供給ライン、及び蓋供給ラインとして蓋を温水、薬剤又はUV等で殺菌して充填密封装置に供給する蓋供給ラインを有し、殺菌済み容器及び殺菌済み蓋が無菌状態を維持した状態で、無菌雰囲気内で充填密封が行なわれる。
【0019】
本実施形態では、果汁調合シロップと水とを混合した内容液23を送液タンク1に貯留し、加熱殺菌装置3として、たとえば超高温瞬間殺菌装置(UHT)により瞬間的に殺菌して、冷却機4を通過させることにより1〜6℃の所定温度に冷却し、一方、気液混合器6の直前に炭酸ガスを除菌フィルタ5を通して供給配管21内に供給する。前記炭酸ガスは除菌フィルタ5を通過することによって無菌化された除菌炭酸ガスとなり、内容液と共に気液混合器6に送られ、内容液と混合され、内容液に所定のガスボリュームとなるように所定圧力で圧入されて溶解する。尚、気液混合器6は、本実施形態では装置が簡単でより無菌性維持が容易なスタティックミキサーを採用しているが、それに限るものでない。気液混合器6から下流側は、炭酸ガスが圧入した炭酸飲料から炭酸ガスの分離を抑制するように、前記したように全て保冷又は冷却構造になっており、炭酸飲料は一定温度に保温されている状態を保って、充填バルブ14に供給される。
【0020】
貯液タンク10は、充填タンク12が常に一定の液レベルを保ち、充填バルブ14に常に一定圧で供給できるように、内容液を貯留しておくためのタンクである。前記工程において、炭酸飲料は、途中で僅かながらガスの分離が生じるので、充填タンク12での炭酸飲料が前記図5のグラフで求まるような充填密封後の目標ガスボリュームよりΔqだけ高くなるように、充填タンク12までの経路のガス分離量を考慮にいれ、気液混合器でのガス圧入量を決定する。なお、充填作業に先立って、予め図5に示すデータを確保するための実験を行い、製品規格のガスボリュームを得るための充填温度と充填タンク内における炭酸ガス入り内容液のガスボリュ−ムを決定し、該ガスボリュームから気液混合器での圧入炭酸ガス量を決定する。本発明者の実験によれば、前記実施形態のシステムにおいて、貯液タンク10から充填タンク12までの送液工程では、図4に示すように炭酸ガス入り内容液の温度によらず略0.2ガスボリュームの低減があった。
【0021】
図2は、前記混合方法2を採用した場合の本発明の実施形態に係る無菌充填システム構成図である。
前記実施形態と同様な部所については同一の符号を付し、相違点のみについて説明する。本実施形態では、調合済みシロップ26を送液タンク1から送って、加熱殺菌機3で殺菌し、冷却機4で冷却し、液混合器20に送る。一方調合済みシロップと混合するための無菌炭酸水供給工程として、デアレーター16で水を脱気して脱気水27を製造し、それを調合済みシロップと同様に加熱殺菌機18で加熱殺菌し、冷却機19で冷却した脱気水27に、除菌フィルタ5で除菌した除菌炭酸ガスを脱気水送液管22に気液混合器6の直前に導入して、気液混合器6で前記脱気水と炭酸ガスを混合して所定ガスボリュームの炭酸水を得る。得られた炭酸水をホールディングチューブ7で一定時間保持冷却して調合シロップの送液管21と合流し、液混合器20で混合して所定のガスボリュームの炭酸ガス入り内容液を製造し、貯液タンク10に送る。以下、図1に示す実施形態と同様にして、充填タンクから非接触の充填バルブ14により容器15に所定量の炭酸ガス入り内容液を無菌雰囲気下で充填し、密封する。
【実施例】
【0022】
以下の実施例及び比較例における炭酸ガス入り内容液の無菌充填方法における泡の噴き零れ、味覚の評価は次のように行なった。
1.泡の噴き零れ
炭酸ガス入り内容液を、ボトルに充填した際の炭酸ガスによる泡の噴き零れ状態を目視で確認し評価した。
2.味覚(爽快感)
充填後のボトル詰め飲料のキャップを開封し、炭酸ガス入り内容液を試飲して爽快感を確認した。製品規格通りの炭酸感が得られ、特に炭酸感に優れていたものを◎、製品規格通りの炭酸感が得られていたものを○、製品規格に対して炭酸感がやや得られていないもの(炭酸が弱いもの)を△、製品規格に対して炭酸感が得られていないものを×と評価した。
【0023】
[実施例1]
図1に示すシステムを用い、レモン果汁10重量%、ショ糖10重量%及び水80重量%の割合で調合した果汁入り飲料を、95℃−40秒で殺菌後、冷却した。
次いで、前記殺菌済み果汁飲料と除菌した炭酸ガスを、混合、冷却し、充填バルブへの供給時の果汁入り炭酸飲料の炭酸ガス圧をガスボリューム2.1とした。この果汁入り炭酸飲料を、温水殺菌済みの内容量500mlのポリエステル樹脂製ボトルに非接触型充填バルブで充填後、殺菌済みプラスチックキャップで密封し、製品規格炭酸ガス圧であるガスボリューム1.8の果汁入り炭酸飲料ボトル詰めを製造した。尚、前記冷却温度は4℃、充填温度は6℃とした。
前記ボトル詰め飲料の製造における果汁入り炭酸飲料充填時の泡の噴き零れ、前記飲料の充填後の味覚(爽快感)の評価を行なった。
【0024】
[実施例2]
冷却温度3℃、充填温度を5℃とした以外は、実施例1と同様にボトル詰め飲料を製造し評価を行った。
【0025】
[実施例3]
充填バルブへの供給時の果汁入り炭酸飲料の炭酸ガス圧をガスボリューム2.3、冷却温度を1℃、充填温度を3℃とし、充填密封後の製品規格炭酸ガス圧であるガスボリューム1.9の果汁入り炭酸飲料のボトル詰め飲料を製造した以外は、実施例1と同様にボトル詰め飲料を製造し評価を行った。
【0026】
[実施例4]
果汁入り炭酸飲料の製造に際して、図2に示すシステムで除菌した炭酸水を使用した以外は、実施例1と同様な条件でボトル詰め飲料を製造し評価を行った。
【0027】
[比較例1]
充填バルブへの供給時の果汁入り炭酸飲料の炭酸ガス圧(ガスボリューム)を、充填密封後の製品規格の炭酸ガス圧ガスボリューム1.8と同じガスボリュームとした以外は、実施例1と同様な方法・条件でボトル詰め飲料を製造し評価を行った。
【0028】
[比較例2]
充填バルブへの供給時の果汁入り炭酸飲料の炭酸ガス圧(ガスボリューム)を、充填密封後の製品規格の1.8と同じとし、冷却温度8℃、充填温度を10℃とした以外は、実施例1と同様にボトル詰め飲料を製造し評価を行った。
【0029】
[比較例3]
充填バルブへの供給時の果汁入り炭酸飲料の炭酸ガス圧(ガスボリューム)を、充填密封後の製品規格の1.8と同じとし、冷却温度6℃、充填温度を8℃とした以外は、実施例1と同様にボトル詰め飲料を製造し評価を行った。
以上の実施例、比較例の結果を表1に示す。なお、表1において、充填タンクガスボリュームの列における括弧内の数値は、充填密封後のガスボリュームに対する充填タンクでのガスホリューム割増率を表している。
【0030】
【表1】

【0031】
以上の実施例1〜4において、何れも泡の噴き零れがなく充填でき、且つ充填密封後の内容液のガスボリュームも目標値が得られ、爽快感も満足のいくものが得られ、本発明により炭酸飲料の非接触バルブにより無菌充填が可能であることが確認された。実施例2では実施例1より充填温度を低くして同じガスボリュームを充填したが、製品規格である所望の充填後のガスボリューム1.8を良好に得ることが出来た。実施例3では目標値を1.9として、充填タンクでのガスボリュームをそれより21.1%に高めに設定し、充填温度を実施例1より低くすることで、実施例1よりも高いガスボリュームの炭酸飲料を製造することができた。また、実施例4は混合方法2によっても、同様な効果が得られることが確認された。一方、比較例では、実施例1と同様のシステムを用い、充填バルブへの供給時のガスボリューム(充填タンク内でのガスボリューム)を充填密封後のガスボリュームの目標値(製品規格)と同じガスボリューム1.8として充填した。比較例1では、充填タンクでの果汁入り炭酸飲料のガスボリュームも目標値1.8に設定して、実施例1と同様に6℃で行なった結果、充填時の泡の噴き零れはなく良好に充填できたが、製品規格である所望のガスボリューム1.8が得られず、爽快感がやや不足したものとなった。また、比較例2では、充填温度10℃と比較例1よりも高めにして行なった結果、充填時に噴き零れが発生し、且つ比較例1よりもかなり低いガスボリュームしか得られず、爽快感は全く足りないものとなった。また、比較例3は、比較例2よりも低い充填温度8℃とした以外は同様の条件で行ったが、充填時に若干噴き零れが発生し、かつ製品規格である所望のガスボリュームが得られず、爽快感の悪いものとなった。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、炭酸飲料を非接触型充填バルブを使用して無菌充填するのに広く利用でき、特に、果汁入り炭酸飲料や乳成分入り炭酸飲料等の殺菌を必要とする炭酸飲料の充填密封に好適に適用でき、容器はボトル、缶、その他の容器が適用でき、加熱処理を必要としないので、耐熱圧性容器でなくても適用可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 送液タンク 2 送液ポンプ
3 加熱殺菌機 4 冷却機
5 除菌フィルタ 6 気液混合器
7 ホールディングチューブ 8 冷却用二重管又は保温材
9 冷却用ジャケット 10 貯液タンク
11 冷却用ジャケット 12 充填タンク
13 冷却用二重管 14 充填バルブ
15 容器 16 デアレーター
17 送水ポンプ 18 加熱殺菌機
19 冷却機 20 液混合器
21 供給配管 22 脱気水送液管
23 調合シロップと水との混合液 25 果汁入り炭酸飲料
26 調合シロップ 27 脱気水
30 バルブ本体 31 充填ヘッド
33 内容液供給管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸ガス入り内容液の無菌充填方法であって、容器、内容液、炭酸ガスを殺菌し、充填密封後の目標炭酸ガスボリュームより高めの炭酸ガスボリュームの炭酸ガス入り内容液を作り、該炭酸ガス入り内容液を殺菌された容器に無菌雰囲気で充填バルブと非接触状態で充填することを特徴とする炭酸ガス入り内容液の無菌充填方法。
【請求項2】
前記炭酸ガス入り内容液を充填温度1〜6℃で容器に充填する請求項1に記載の炭酸ガス入り内容液の無菌充填方法。
【請求項3】
前記炭酸ガス入り内容液は、充填密封後の目標炭酸ガスボリュームに対して、前記充填タンクでの炭酸ガスボリュームが15〜25%高めである請求項1又は2に記載の炭酸ガス入り内容液の無菌充填方法。
【請求項4】
前記炭酸ガス入り内容液は、充填密封後のガスボリュームが2.0以下の果汁入り炭酸飲料である請求項1〜3何れかに記載の炭酸ガス入り内容液の無菌充填方法。
【請求項5】
前記炭酸ガス入り内容液は、調合シロップと水を混合して殺菌した混合液に除菌炭酸ガスを気液混合して作り、充填タンクに供給されることを特徴とする請求項1〜4何れかに記載の炭酸ガス入り内容液の無菌充填方法。
【請求項6】
前記炭酸ガス入り内容液は、殺菌済みの脱気水に除菌炭酸ガスを気液混合して作った炭酸水と殺菌済み調合シロップを混合して作り、充填タンクに供給されることを特徴とする請求項1〜4何れかに記載の炭酸ガス入り内容液の無菌充填方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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