説明

点検扉の施工方法

【課題】点検扉の枠体又は支柱を溶接作業なしに容易に施工することができ、かつ、枠体の水平調節、高さ調節が容易であり、加えて給湯器などの振動が居住空間に伝わることを防止する点検扉の施工方法が望まれていた。
【解決手段】本発明に係る点検扉の施工方法は、配管類をカバーする空間を形成するために廊下の天井面と床面との間に設置する支柱又は枠体のうち、空間の隅部及び角部に設置する支柱又は枠体の上下に出寸法を調節する機構を備えている突っ張り部材を取り付け、突っ張り部材を天井面と床面に突っ張らせるように調節することで支柱又は枠体を固定し、支柱又は枠体と、天井面及び/又は床面との間に隙間を設けるようにして横桟を支柱又は枠体に固定することで扉枠を形成し、扉枠に開閉自在に扉を取り付けることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンション等のコンクリート建造物の廊下に配設されている配管類をカバーする点検扉の施工方法に係り、さらに詳しくは、点検扉の支柱又は枠体を溶接作業なしに容易に施工することができ、かつ、支柱又は枠体の水平調節、高さ調節が容易であり、加えて給湯器などの振動が居住空間に伝わることを防止することができる点検扉の施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マンション等のコンクリート建造物においては、各フロア内や各フロア間に水道やガスや電気などの配管類が配設されており、これらの配管類は、配管類がむき出しになることで人が誤って触ることなどがないよう、点検扉によってカバーされている。
【0003】
従来から、これらの点検扉は、図5に示すようにコンクリート建造物の躯体にアンカーボルトを打ち込んだ後、予め工場などで組み立てた四方枠をアンカーボルトと溶接固定し、枠体に扉を丁番で固定することで施工している。なお、図5の(a)は従来の点検扉の施工方法を側面視した状態を示す図であり、図5の(b)は従来の点検扉の施工方法を平面視した状態を示す図である。
従って、これら従来の施工方法は、建築物が仕上がる前に四方枠をアンカーボルトで溶接固定し、水道やガスや電気などの配管類が配設されてから、扉の取り付け等を行うため、作業に時間と熟練者による手間がかかるという問題があった。
また、水道やガスや電気などの配管類が配設されてからでは、溶接作業時には溶接による火花が飛ばないように作業場所周辺を養生する必要もあり、この点からも作業に時間と熟練者による手間がかかるという問題があった。
【0004】
なお近年、かかる問題を解決するために、溶接作業を行わなくてもよい点検扉が特許文献1において開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−155670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の点検扉は、溶接作業の必要はないものの、枠体を保持するための基枠が、躯体の上下にアンカーボルトによって固定され、下基枠のみに位置調整が可能な調整ボルトが取り付けられている。
【0007】
従って、この構造では、あらかじめ基枠をアンカー固定するため、位置出しが適切でないと、やり直しを行うことが大変困難になるという課題がある。
【0008】
本発明は、上記した従来の問題点に鑑みてなされたものであって、点検扉の枠体又は支柱を溶接作業なしに容易に施工することができ、かつ、枠体の水平調節、高さ調節が容易であり、加えて給湯器などの振動が居住空間に伝わることを防止することができる点検扉の施工方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る点検扉の施工方法は、マンション等のコンクリート建造物の廊下に配設されている配管類をカバーする点検扉の施工方法であって、配管類をカバーする空間を形成するために廊下の天井面と床面との間に設置する支柱又は枠体のうち、空間の隅部及び角部に設置する支柱又は枠体の上下に出寸法を調節する機構を備えている突っ張り部材を取り付け、突っ張り部材を天井面と床面に突っ張らせるように調節することで支柱又は枠体を固定し、支柱又は枠体と、天井面及び/又は床面との間に隙間を設けるようにして横桟を支柱又は枠体に固定することで扉枠を形成し、扉枠に開閉自在に扉を取り付ける構成にしてある。
【0010】
本発明の請求項2に係る点検扉の施工方法は、支柱又は枠体を、ゴム体を介して廊下の壁面に当接する構成にしてある。
【0011】
本発明の請求項3に係る点検扉の施工方法は、突っ張り部材を、コンクリート建造物にアンカー固定する構成にしてある。
【発明の効果】
【0012】
本発明の請求項1に係る点検扉の施工方法によれば、マンション等のコンクリート建造物の廊下に配設されている配管類をカバーする点検扉の施工方法であって、配管類をカバーする空間を形成するために廊下の天井面と床面との間に設置する支柱又は枠体のうち、空間の隅部及び角部に設置する支柱又は枠体の上下に出寸法を調節する機構を備えている突っ張り部材を取り付け、突っ張り部材を天井面と床面に突っ張らせるように調節することで支柱又は枠体を固定し、支柱又は枠体と、天井面及び/又は床面との間に隙間を設けるようにして横桟を支柱又は枠体に固定することで扉枠を形成し、扉枠に開閉自在に扉を取り付けるように構成されているので、点検扉の枠体を溶接作業なしに容易に施工することができ、現場で枠体をボルト固定しないので、仮組してからの位置調整も容易に行うことができる。
【0013】
また、突っ張り部材に出寸法を調節する機構が設けられているので、枠体の水平調節や高さ調節を容易に行うことができる。
【0014】
さらに、点検扉の上下部分に隙間が設けられていることから、点検扉によってカバーされているガス配管からガス漏れがあった場合にも、点検扉に換気口を設けることなく点検扉内のガスの充満を防止することができる。
【0015】
本発明の請求項2に係る点検扉の施工方法によれば、支柱又は枠体を、ゴム体を介して廊下の壁面に当接するように構成されているので、給湯器などの振動が居住空間に伝わることを防止することができる。
【0016】
本発明の請求項3に係る点検扉の施工方法によれば、突っ張り部材を、コンクリート建造物にアンカー固定するように構成されているので、強風などの強い外力によって、点検扉がズレることをより効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る点検扉の施工方法の第1の実施形態を示す模式図である。
【図2】第1の実施形態の施工手順を示す模式図である。
【図3】第1の実施形態の施工前と施工後の状態を示す模式図である。
【図4】本発明に係る点検扉の施工方法の第2の実施形態を示す模式図である。
【図5】従来の点検扉の施工方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下に述べる実施形態は本発明を具体化した一例に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものでない。
図1は本発明に係る点検扉の施工方法の第1の実施形態を示す模式図であり、図2は第1の実施形態の施工手順を示す模式図であり、図3は第1の実施形態の施工前と施工後の状態を示す模式図である。
【0019】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態に係る点検扉1aの構成を図1に基づいて説明する。なお、図1の(a)は第1の実施形態の点検扉1aを側面視した状態を示す図であり、図1の(b)は第1の実施形態の点検扉1aを平面視した状態を示す図である。
【0020】
(第1の実施形態の構成)
本実施形態に係る点検扉1aは、図1(a)及び図1(b)に示すように、予め点検扉1aの側面部を形成する袖パネル2が取り付けられている枠体3と、これらの枠体3の隅部4及び角部5の位置で、かつ、枠体3の上面部6及び下面部7の位置に取り付けられている突っ張り部材8と、同じく枠体3に取り付けられ、扉9や給湯器BOX10などを固定したりするために用いられる横桟11と、扉9と、前面化粧パネル12と、中央化粧パネル13を主要部品として構成されている。
【0021】
突っ張り部材8には、出寸法調節機構14が設けられており、出寸法調節機構14は、当接部15、ボルト部16、ナット17、調節用ナット18、突っ張り部材取付部材19から構成されている。ボルト部16にはねじ溝20が設けられており、ナット17および調節用ナット18が螺合されている。また、ナット17は溶接などによって突っ張り部材取付部材19に固定されており、さらに突っ張り部材取付部材19は溶接などによって枠体3に固定されている。
なお、当接部15には、突っ張り部材8を天井面21及び床面22により強固に固定するためのアンカーボルト通し孔23が設けられている。
【0022】
また、袖パネル2の壁面側の端部の枠体当接部24は、壁面28に固定ねじ27によって固定された目隠し部材26に取付けられたゴム体25に当接されている。
なお、本第1の実施形態においては、価格や使い勝手の面からゴム体25を使用しているが、給湯器など点検扉1aから発生する振動を吸収し、振動が壁面28を通じて居住空間に伝わることが防止できる部材であれば、バネ材やスポンジ材などの他の弾性体を用いることもできる。
【0023】
ここで、隅部4とは、枠体3又は支柱が形成する空間のコーナーのうち、図1に示すような枠体3又は支柱が壁面28と当接するコーナーを指すものであり、角部5とは、隅部4以外のコーナーを指すものである。
なお、本第1の実施形態においては、点検扉1aが強風などによってズレたりすることをより効果的に防止するために、突っ張り部材8を全ての隅部4と角部5に取り付けているが、点検扉1aのズレなどの恐れがない場合には、必要に応じて任意の隅部4又は角部5にのみ突っ張り部材8を取り付けることもできる。
【0024】
また、枠体3の上面部6及び下面部7とは、図1に示すような枠体3又は支柱のうち天井面21及び床面22と対向する部分を指すものである。
なお、本第1の実施形態においては、突っ張り部材8を枠体3の上面部6と下面部7に取り付けているが、施工する点検扉の側面が壁になっている場所は、枠体3又は支柱の側面部に突っ張り部材8を取り付け、壁面28に突っ張らせて枠体3を固定することもできる。
【0025】
(第1の実施形態の施工手順)
次に、点検扉の施工手順を図2に基づいて説明する。なお、図2の(a)は配管類29をカバーしたい空間に、枠体3を施工する状態を示す図であり、図2の(b)は枠体3の施工後に、扉9、前面化粧パネル12、中央化粧パネル13などを施工する状態を示す図である。
【0026】
まず、図2(a)に示すように、あらかじめ工場で袖パネル2と突っ張り部材8を取り付けた枠体3を所定位置に配置し、部材が軽く保持する程度に突っ張り部材8に設けられている出寸法調節機構14を用いて、天井面21と床面22に突っ張らせて、仮固定し、配置に問題がないか確認する。
【0027】
次に、目隠し部材26を、袖パネル2に設けた枠体当接部24と当接する位置になるように、固定ねじ27を用いて壁面28に取り付け、目隠し部材26と枠体当接部24との間にゴム体25を差し込んで目隠し部材26に固定し、枠体当接部24を当接させる。
【0028】
次に、突っ張り部材8に設けられている出寸法調節機構14を用いて、枠体3を天井面21と床面22に水平調節および高さ調節しながら、本固定する。
具体的には、出寸法調節機構14の調節用ナット18を回転させることによって、ボルト部16を回転させ、ボルト部16と螺合している当接部15をボルト部16の長手方向に上下させる。上記したようにナット17は突っ張り部材取付部材19に固定されており、突っ張り部材取付部材19はさらに枠体3に固定されていることから、調節用ナット18を回転させてボルト部16を回転させることによって、固定されていない当接部15がボルト部16の長手方向に上下に移動する。そして、当接部15が天井面21又は床面22に当接することによって、枠体3が配管類29をカバーしたい空間内に固定される。
ここで、隅部4及び角部5の各突っ張り部材8の出寸法調節機構14(具体的には調節用ナット18の回転量)を任意に調節することによって、枠体3を配管類29をカバーしたい空間内に水平に固定する。
【0029】
なお、必要に応じて、アンカーボルト通し孔23にアンカーボルト30を通して、突っ張り部材8を天井面21及び床面22に固定することによって、より強固に枠体3を配管類29をカバーしたい空間内に固定する。
【0030】
次に、対面する枠体3に、横桟11を、給湯器BOX10の取付位置と扉9の下面位置に天井面21と床面22との間に隙間31ができるようにビス(図示せず)で固定する。
【0031】
次に、横桟11に給湯器BOX10をビス(図示せず)で固定する。
【0032】
最後に、図2(b)に示すように、枠体3に前面化粧パネル12、中央化粧パネル13をビス(図示せず)で固定し、扉9を丁番(図示せず)で固定することによって点検扉1aの施工が完了する。
【0033】
このように、従来の施工方法のような溶接作業を行うことなく点検扉を施工することができるので、溶接による枠体又は支柱の変形を防止しつつ、点検扉を容易に施工することができる。
【0034】
また、突っ張り部材に出寸法調節機構が設けられているので、点検扉を配管類をカバーしたい空間内に容易に水平に固定することができる。
【0035】
さらに、点検扉の上下部分に隙間が設けられていることから、ガス漏れがあった場合にも、点検扉に換気口を設けることなくガスの充満を防止することができる。
【0036】
また、枠体は、枠体当接部、ゴム体、目隠し部材、固定ねじによって壁面に緩やかな状態で接しているので、給湯器など点検扉から発生する振動が壁面を通じて居住空間に伝わることを防止することができる。
【0037】
なお、上記の実施形態では枠体3を使用しているが、本発明に係る点検扉の施工方法はそれに限定されるものでなく、突っ張り部材8が取り付けられた支柱を作製しておき、この支柱を天井面21と床面22との間に固定した後、当該支柱に点検扉1aの側面を形成する袖パネル2や横桟11などを取り付けることもできる。また、以下のような形態とすることもできる。
【0038】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る点検扉1bの構成を図4に基づいて説明する。図4は本発明に係る点検扉の施工方法の第2の実施形態を示す模式図である。
【0039】
ここで、本実施形態に係る点検扉1bは、図1に示す第1の実施形態が配管類29を平面視コの字状にカバーする際に用いられるのに対し、図4に示すように躯体のコーナー部などに配設されている配管類29を平面視L字状にカバーする際に用いられるものである。
【0040】
なお、本実施形態の構成としては、袖パネル2が予め取り付けられている枠体3と突っ張り部材8が予め取り付けられている支柱32を用いている以外は、第1の実施形態の構成と同じである。
【0041】
また、第2の実施形態の施工手順としても、支柱32に予め支柱当接部33が設けられており、枠体当接部24だけでなく、これら支柱当接部33についても壁面28に固定ねじ27によって固定した目隠し部材26に取付けたゴム体25と当接させている以外は、第1の実施形態の施工手順と同じである。
【0042】
すなわち、袖パネル2が予め取り付けられている枠体3と支柱32を用いて、平面視L字状の空間を形成し、これら枠体3と支柱32の隅部4及び角部5の位置で、かつ、枠体3と支柱32の上面部6及び下面部7の位置に取り付けられている突っ張り部材8(出寸法調節機構14)によって、枠体3と支柱32を配管類29をカバーしたい空間内に高さを調節して水平に固定するものである。
【0043】
従って、第1の実施形態と同様に、溶接による枠体又は支柱の変形を防止しつつ、点検扉を配管類をカバーしたい空間内に容易に、かつ、水平に固定することができる。
【0044】
また、点検扉に換気口を設けることなくガスの充満を防止することができる。
【0045】
さらに、給湯器など点検扉から発生する振動が壁面を通じて居住空間に伝わることを防止することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の点検扉の施工方法は、マンション等のコンクリート建造物の廊下に配設されている配管類をカバーする点検扉に用いることができる。
【符号の説明】
【0047】
1a 点検扉
1b 点検扉
2 袖パネル
3 枠体
4 隅部
5 角部
6 上面部
7 下面部
8 突っ張り部材
9 扉
10 給湯器BOX
11 横桟
12 前面化粧パネル
13 中央化粧パネル
14 出寸法調節機構
15 当接部
16 ボルト部
17 ナット
18 調節用ナット
19 突っ張り部材取付部材
20 ねじ溝
21 天井面
22 床面
23 アンカーボルト通し孔
24 枠体当接部
25 ゴム体
26 目隠し部材
27 固定ねじ
28 壁面
29 配管類
30 アンカーボルト
31 隙間
32 支柱
33 支柱当接部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンション等のコンクリート建造物の廊下に配設されている配管類をカバーする点検扉の施工方法であって、
前記配管類をカバーする空間を形成するために前記廊下の天井面と床面との間に設置する支柱又は枠体のうち、
前記空間の隅部及び角部に設置する支柱又は枠体の上下に出寸法を調節する機構を備えている突っ張り部材を取り付け、
前記突っ張り部材を前記天井面と前記床面に突っ張らせるように調節することで前記支柱又は前記枠体を固定し、
前記支柱又は前記枠体と、
前記天井面及び/又は前記床面との間に隙間を設けるようにして横桟を前記支柱又は前記枠体に固定することで扉枠を形成し、
前記扉枠に開閉自在に扉を取り付けることを特徴とする点検扉の施工方法。
【請求項2】
前記支柱又は前記枠体を、ゴム体を介して前記廊下の壁面に当接することを特徴とする請求項1に記載の点検扉の施工方法。
【請求項3】
前記突っ張り部材を、
前記コンクリート建造物にアンカー固定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の点検扉の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−74743(P2011−74743A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−230443(P2009−230443)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【出願人】(000222325)東洋シヤッター株式会社 (5)
【Fターム(参考)】