説明

点滴筒

【課題】輸液を患者に点滴投与する際に使用する点滴筒に設けられた点滴口の吸着性を減少し、該点滴口に点滴球が生じ難くすることによって、単位時間当たりの滴下数を増し、輸液の滴下検出を正確に行うことができるようにした点滴筒を提供する。
【解決手段】輸液を点滴投与する輸液路に設けられる点滴筒1において、点滴筒1の内部に設けられた点滴口4を撥水性を有する材料によって形成するか、又は点滴口4の周囲に撥水性を有する材料を塗布したものであり、撥水性を有する材料としては、例えばフッ素樹脂を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸液を患者に点滴投与する際に使用する輸液装置等の輸液路に設けられる点滴筒に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人工透析等に使用される輸液装置は、輸液を収容した輸液バッグに連結されてなる輸液路と、この輸液路に設けられた点滴筒と、この点滴筒における滴下検出によって輸液流量を調節する流量調節器とを備え、輸液スタンド等を用いて輸液バッグを高所に吊し、重力落下を利用して送液するほか、近年においては、輸液ポンプを利用してポンプの吐出量を電気的に制御することにより、患者への輸液流量を調整することが行われている。
【0003】
上記のような輸液装置においては、患者の状態に応じて輸液流量を調節するため、点滴筒において輸液の滴下検出を正確に行うことが必要となる。このような滴下検出においては、光センサ等を用いて点滴筒における1個の滴下球のサイズと1分間あたりの滴下数を検出することによって単位時間当たりの滴下量を計算するようにしている。
【0004】
ところで、従来の点滴筒の場合、通常、1分間に15滴の滴下数となるが、滴下数を正確に検出するには、単位時間当たりの滴下数をさらに増加させることが望ましい。ところが、従来の合成樹脂製による点滴口では吸着性に問題があり、輸液が点滴口から流出する際、点滴口の周囲に点滴球が生じ、この点滴球が点滴口周囲において表面張力により膨大化するのであり、このような現象が、単位時間あたりの滴下数を少なくする原因となっていたのである。
【0005】
そこで、点滴筒の点滴口に関する従来の技術を調査したところ、引用文献1では、点滴筒内における適性貯留量を迅速に流入させることができるように、点滴筒の内径を制限するようにした構成が開示されている。
【0006】
また、引用文献2では、傾いた状態でも点滴筒からの空気流出を防止し、かつ送液状態を安定して確保することができるように、点滴筒の底部の液体排出口に少なくとも一部が柔軟性のある材料から構成された管状体を設けた構成が開示されている。
【0007】
しかしながら、これらの文献に記載されたものは、いずれも点滴筒の点滴口に関する技術ではなく、また、その他の文献を種々調査したのであるが、上記の技術に関する文献は見出し得なかった。
【特許文献1】特開2000−14745号公報
【特許文献2】特開2001−161814号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、輸液を患者に点滴投与する際に使用する点滴筒に設けられた点滴口の吸着性を減少し、該点滴口に点滴球が生じ難くすることによって、点滴球を小粒にすると共に、単位時間当たりの滴下数を増し、輸液の滴下検出を正確に行うことができるようにした点滴筒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明における請求項1の点滴筒は、輸液を点滴投与する輸液路に設けられる点滴筒において、前記点滴筒の内部に設けられた点滴口を撥水性を有する材料によって形成するか、又は前記点滴口の周囲に撥水性を有する材料を塗布したことを特徴とする。
【0010】
また、本発明による点滴筒は、請求項1において、前記撥水性を有する材料として、フッ素樹脂を使用したことを特徴とする。
【0011】
さらに、本発明による点滴筒は、請求項1又は2において、前記点滴筒に振動発生装置を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明の点滴筒においては、輸液を点滴投与する輸液路に設けられる点滴筒の点滴口を撥水性を有する材料(具体例として、フッ素樹脂)によって形成するか、又は点滴口の周囲に撥水性を有する材料を塗布したことにより、点滴口に撥水性が作用して、点滴口の吸着性を減少し、該点滴口に点滴球が生じ難くなり、このため、点滴球が小粒になると共に、単位時間当たりの滴下数が増して、より高精度の輸液流量の調整を行うことが可能となる。
【0013】
また、点滴筒に振動発生装置を設けたことによって、点滴口に点滴球がさらに発生し難くなり、点滴球が小粒になると共に、単位時間当たりの滴下数が増し、より高精度の輸液流量の調整を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0015】
本発明による点滴筒1は、輸液を点滴投与する輸液路に設けられる点滴筒の点滴口を撥水性を有する材料によって形成するか、又は点滴口の周囲に撥水性を有する材料を塗布したものであり、撥水性を有する材料の具体例として、フッ素樹脂(「テフロン」登録商標)を使用する。ただし、撥水性を有する材料としては、上記のフッ素樹脂に限定されるものではなく、他にも撥水性に優れ、毒性のない材料ならば適用可能である。
【0016】
即ち、図1において、点滴筒1の筒体2の上部に形成された上部貫通孔3には点滴口4を形成する点滴管5が挿着され、接着材等で固定されると共に、該点滴管5の上部には上部導管6が接続され、一方、筒体2の下部に形成された下部貫通孔7には下部導管8が挿着されている。
【0017】
本実施例において、点滴筒5は管部5aの途中にフランジ5bが設けられてなり、この点滴管5全体又は管部5aの点滴口4の周囲をフッ素樹脂で形成するか、他の金属又は合成樹脂による点滴管5の点滴口4の周囲にフッ素樹脂を塗布することによって、少なくとも点滴口4の周りをフッ素樹脂で構成してある。
【0018】
このような点滴筒1によれば、フッ素樹脂の有する撥水性が作用して、点滴口4の吸着性を減少することができ、点滴口4の周囲に液が付着し難くなり、点滴球が小粒の状態で滴下するため、単位時間当たりの滴下数を増すことが可能となる。
【0019】
ちなみに、従来は、通常、1分間に15滴の滴下数であったのが、試験の結果、点滴口4に撥水性を有するフッ素樹脂を使用することにより、1分間の滴下数が約60滴となり、従来との比較で、4分の1の吸着性を得て、単位時間当たりの滴下数の多い小粒の点滴球を落下させることが可能となり、より高精度の輸液流量の調整を行うことが可能となった。
【0020】
なお、図1に示すように、筒体2の外側対向位置に設けられた発光素子9aから発光される光線を受光素子9bで受光するようにした滴下検出センサを設け、発光素子9aから発光される光線が点滴筒1の点滴口4から滴下する点滴球によって遮られる回数を計数することにより、単位時間当たりの滴下数を知ることができる。
【0021】
さらに、本実施例において、上記の点滴筒に超音波振動子等の振動発生装置(不図示)を設けた構成とすることにより、点滴口に点滴球が発生し難く、点滴球が小粒の状態で落下するため、単位時間当たりの滴下数が増し、より高精度の輸液流量の調整を行うことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明の点滴筒は、輸液を患者に点滴投与する際に使用する点滴筒に設けられた点滴口の吸着性を減少し、該点滴口に点滴球が生じ難くすることによって、点滴球が小粒の状態で落下すると共に、単位時間当たりの滴下数が増し、輸液の滴下検出を正確に行うことができる点滴筒として利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明による点滴筒の内部が見えるようにした縦断面図である。
【符号の説明】
【0024】
1 点滴筒
2 筒体
3 上部貫通孔
4 点滴口
5 点滴管
5a 管部
5b フランジ
6 上部導管
7 下部貫通孔
8 下部導管
9a 発光素子
9b 受光素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
輸液を点滴投与する輸液路に設けられる点滴筒において、前記点滴筒の内部に設けられた点滴口を撥水性を有する材料によって形成するか、又は前記点滴口の周囲に撥水性を有する材料を塗布したことを特徴とする点滴筒。
【請求項2】
前記撥水性を有する材料として、フッ素樹脂を使用したことを特徴とする請求項1記載の点滴筒。
【請求項3】
前記点滴筒に振動発生装置を設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の点滴筒。

【図1】
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【公開番号】特開2007−244490(P2007−244490A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−69236(P2006−69236)
【出願日】平成18年3月14日(2006.3.14)
【出願人】(000138037)株式会社メテク (11)
【Fターム(参考)】