説明

点滴計測システム

【課題】 低コストでかつ小型化が可能であり、看護師等の計測作業が簡便かつ正確に行うことができる点滴計測システムを提供すること。
【解決手段】 自然落下式点滴セット1の点滴落下部2に取り付け可能なセンサ子機3と、該センサ子機3との間で無線通信可能な携帯型親機4と、で構成され、センサ子機3が、点滴落下部2で自然落下する輸液の滴下又は滴下数を所定の計測時間内で検知又は計測するセンサ部5と、予め記憶された子機識別情報と検知又は計測した滴下又は滴下数とを滴下信号として無線送信するRFIDタグ部と、を備え、携帯型親機4が、電磁誘導又は電磁結合によりRFIDタグ部と交信して滴下信号を受信するRFIDリーダ部と、受信した滴下信号に基づいて点滴速度を算出する演算制御部と、算出した点滴速度を表示する表示部18と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自然落下式の点滴セットにおける輸液の点滴速度を計測可能な点滴計測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
病院等において自然落下式の点滴セットを用いて点滴を行う場合、看護師が時計を見ながら点滴筒(点滴落下部)における輸液の落下を目視して滴下数を計測し、この滴下数から点滴速度を計算して滴下数を調節している。この場合、滴下数の計測に手間がかかると共に、目視に依存するため、正確性に欠ける不都合がある。特に、夜間においては、暗闇中で懐中電灯等によって点滴筒を照らしながら計測を行うことから、手間が非常にかかると共に正確な計測が難しい。
【0003】
このため、例えば特許文献1には、輸液の滴下時間を演算する演算手段、演算結果を表示する表示手段及び点滅する発光手段を有した点滴速度調整確認補助装置が提案されている。この装置では、単位滴下量当たりの滴下数等を看護師等が入力することで、点滴速度を演算し、表示することで、看護師の目視による計測を補助するものである。
【0004】
また、点滴数を自動計測するセンサ部を備えた自動点滴速度調節装置や点滴の自動計測装置等が種々提案されていると共に、既に製品化もされている。例えば特許文献2には、点滴筒(点滴落下部)内で落下する輸液の滴下数を計測するセンサと、計測値を表示する表示部と、これらの演算処理を行うCPUと、これらに電力を供給するバッテリー等と、これらを全て内蔵した筐体と、からなる点滴液体の計測装置が提案されている。
【0005】
【特許文献1】特許第3156023号公報
【特許文献2】特許第3134916号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の技術には、以下の課題が残されている。
すなわち、従来の特許文献1の技術では、看護師による計測を補助することができるが、計測自体は滴下を目視することで行うため、看護師等の作業者に依存してしまい、計測の高い正確性を安定して保つことは難しい。また、従来の特許文献2の技術のような点滴の自動計測装置等では、一台の装置に、点滴数を計測するセンサ部、点滴数から点滴速度を演算する演算部、演算した点滴速度を表示する表示部、これらに電力を供給する駆動部、これらの制御を行う制御部、及び各操作を行うためのスイッチ部等、複数の部材や機構が備えられており、装置が高価になってしまうと共に小型化が難しく装着には支持台等が必要になる等の不都合があった。また、自動計測センサと計測結果の表示部と計測スイッチとを含む点滴計測装置の場合、点滴筒に取り付けた装置の計測スイッチを看護師等が押した際に、センサの位置ズレが生じ易く、計測に誤差が生じて正確性が低くなる不都合がある。
【0007】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、低コストでかつ小型化が可能であり、看護師等の計測作業が簡便かつ正確に行うことができる点滴計測システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、本発明の点滴計測システムは、自然落下式点滴セットの点滴落下部に取り付け可能なセンサ子機と、該センサ子機との間で無線通信可能な携帯型親機と、で構成され、前記センサ子機が、前記点滴落下部で自然落下する輸液の滴下又は滴下数を所定の計測時間内で検知又は計測するセンサ部と、予め記憶された子機識別情報と検知又は計測した前記滴下又は滴下数とを滴下信号として無線送信するRFIDタグ部と、を備え、前記携帯型親機が、電磁誘導又は電磁結合により前記RFIDタグ部と交信して前記滴下信号を受信するRFIDリーダ部と、受信した前記滴下信号に基づいて点滴速度を算出する演算部と、算出した前記点滴速度を表示する表示部と、を備えていることを特徴とする。
【0009】
この点滴計測システムでは、センサ子機のセンサ部が輸液の滴下又は滴下数を所定の計測時間で検知又は計測すると共に、携帯型親機のRFIDリーダ部からの電磁誘導又は電磁結合によりRFIDタグ部が子機識別情報と検知又は計測した滴下又は滴下数とを滴下信号として無線送信するので、携帯型親機とセンサ子機とを通信可能な距離に近接させた状態で、子機識別情報と共に滴下数等の滴下情報を非接触で入手でき、これに基づいてセンサ子機を識別しつつ正確な点滴速度を容易に得ることができる。これによって点滴速度の調節を簡単かつ正確に行うことができる。特に、電波・電磁波を利用した非接触認証技術であるRFID機能を有するRFIDタグ部を採用しているので、読み取り可能な近距離までセンサ子機に携帯型親機を近接させたときのみ交信が行われて、隣接するベッド等の患者の点滴セットに取り付けた他のセンサ子機との混信を避けることができる。
また、センサ子機と携帯型親機とに分離された構成であり、少なくともセンサ部及びRFIDタグ部だけでセンサ子機を簡素に構成できるため、支持台等を用いずに点滴落下部に取り付け可能な大きさに小型化及び軽量化可能であると共に、センサ子機単体の製作コストを大幅に低減することができる。また、携帯型親機も、センサ部を備える必要がないため、小型化及び軽量化ができ、高い携帯性を得ることができる。
さらに、複数の点滴セットにそれぞれセンサ子機を取り付けしても、一台の携帯型親機で各センサ子機を子機識別情報で自動認識し、個別に滴下信号を受信して点滴速度を得ることができる。したがって、携帯型親機一台で多数の点滴セットにおける点適速度を一括して管理及び計測することが可能になり、点滴セット毎に演算部や表示部等の全機能を備えた装置を個別に用意する必要が無い。これにより、全体コストを大幅に低減することができると共に計測及び管理の効率化を計ることができる。
【0010】
また、本発明の点滴計測システムは、前記携帯型親機が、前記センサ子機に対して前記滴下又は滴下数の計測時間を任意に設定可能な計測時間設定信号を送信可能であり、前記センサ子機が、受信した前記計測時間設定信号に基づいた計測時間で前記滴下又は滴下数の検知又は計測を行うことを特徴とする。すなわち、この点滴計測システムでは、携帯型親機がセンサ子機に対して滴下又は滴下数の計測時間を任意に設定可能な計測時間設定信号を送信し、センサ子機が計測時間設定信号に基づいた計測時間で滴下の検知又は滴下数の計測を行うので、携帯型親機側から計測の精度切替が可能であると共に、センサ子機の消費電力や計測作業効率を配慮した計測時間に設定可能である。
【0011】
また、本発明の点滴計測システムは、前記携帯型親機が、スイッチ操作により前記センサ子機に対して計測を開始させる計測開始信号を送信可能であり、前記センサ子機が、前記計測開始信号を受信した際に前記滴下又は滴下数の検知又は計測を行うことを特徴とする。すなわち、この点滴計測システムでは、携帯型親機がスイッチ操作によりセンサ子機に対して計測を開始させる計測開始信号を送信し、センサ子機が計測開始信号を受信した際に滴下の検知又は滴下数の計測を行うので、単に携帯型親機とセンサ子機とを近接させただけでは計測を開始せず、スイッチ操作を行った時のみセンサ子機を駆動させることで、センサ子機の電力消費を極力抑制することができる。
【0012】
また、本発明の点滴計測システムは、前記携帯型親機が、受信した前記滴下信号に基づいて得られた滴下間隔で点滅する滴下点滅部を備えていることを特徴とする。すなわち、この点滴計測システムでは、携帯型親機が、受信した滴下信号に基づいて得られた滴下間隔で点滅する滴下点滅部を備えているので、滴下点滅部で滴下を視覚的に確認することができる。特に、夜間の暗闇中での計測時に、直接滴下を目視せずに点滴速度の調節が可能である。
【0013】
また、本発明の点滴計測システムは、前記携帯型親機が、スイッチ操作により前記センサ子機に対して該センサ子機を監視モードに設定する監視開始信号を送信可能であり、前記センサ子機が、前記監視開始信号を受信した場合、前記滴下数の計測を所定の計測時間で繰り返し行うと共に、計測した前記滴下数が所定の上限値以上又は所定の下限値以下の際に警報を発する警報機構を備えていることを特徴とする。すなわち、この点滴計測システムでは、携帯型親機がスイッチ操作によりセンサ子機を監視モードに設定する監視開始信号を送信可能であるので、携帯型親機側からセンサ子機を非接触で監視モードに設定することができる。また、センサ子機が、計測した滴下数が所定の上限値以上又は所定の下限値以下の際に警報を発する警報機構を備えているので、空液、詰まり又は流れ過ぎの状態を検知して警報により注意を促すことができる。
【0014】
また、本発明の点滴計測システムは、前記携帯型親機が、周囲を照明するための照明部を備えていることを特徴とする。すなわち、この点滴計測システムでは、携帯型親機が、周囲を照明するための照明部を備えているので、夜間等の暗闇中でも照明部によって点滴落下部等を照明して確認可能で、懐中電灯等を持ち歩く必要がない。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本発明に係る点滴計測システムによれば、センサ子機が、輸液の滴下又は滴下数を所定の計測時間で検知又は計測するセンサ部と、子機識別情報と検知又は計測した滴下又は滴下数とを滴下信号として無線送信するRFIDタグ部と、を備え、携帯型親機が、電磁誘導又は電磁結合によりRFIDタグ部と交信して滴下信号を受信するRFIDリーダ部を備えているので、非接触で簡単にかつ正確に点滴速度を計測でき、多数の点滴セットを管理することができると共に、装置の低コスト化、小型化及び軽量化が可能である。したがって、本発明の点滴計測システムを採用すれば、点滴に関し、看護業務の効率化及び安全性の向上、医療過誤の防止等を低コストで図ることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る点滴計測システムの一実施形態を、図1から図7を参照しながら説明する。
【0017】
本実施形態の点滴計測システムは、図1に示すように、自然落下式の点滴セット1の点滴落下部2に取り付け可能なセンサ子機3と、該センサ子機3との間で無線通信可能な携帯型親機4と、で構成されている。
上記センサ子機3は、例えば点滴落下部2を挟むようにして取り付け可能な構造を有し、図1から図3に示すように、点滴落下部2で自然落下する輸液の滴下又は滴下数を所定の計測時間で検知又は計測するセンサ部5と、予め記憶された子機識別情報と検知又は計測した滴下又は滴下数とを滴下信号として無線送信するRFID(Radio Frequency Identification)タグ部6と、センサ部5に電力を供給するセンサ用電源部7と、を備えている。
【0018】
上記点滴セット1は、輸液(薬液等)を入れた薬液バッグや薬液ビン等の点滴容器8と、該点滴容器8の下端に一端が接続され他端が患者の腕等に接続された輸液チューブ9と、該輸液チューブ9の途中に設けられた点滴筒である上記点滴落下部2と、で構成されている。なお、上記点滴落下部2は、自然落下する輸液の滴下を視認可能に透明な円筒形状とされている。
【0019】
上記センサ部5は、例えば点滴落下部2を挟んでその両側に配されたLED等の発光部5aと受光部5bとを備え、発光部5aからの光が滴下によって遮断されたことで滴下を検知し、滴下数をカウントするための光センサである。なお、センサ部5として、発光部5a及び受光部5bによる光の出射及び受光を光ファイバを用いて行っても構わない。また、上記光センサ方式のセンサ部5だけでなく、滴下を検知し、滴下数をカウント可能であれば超音波方式等の他の方式を採用しても構わない。
【0020】
上記RFIDタグ部6は、電波を利用した非接触認証手段であって、子機アンテナ部10と、該子機アンテナ部10に接続された非接触ICタグであるICチップ11と、で構成されている。上記ICチップ11は、子機アンテナ部10に接続され無線による信号の送受信が可能な処理回路である子機側送受信部12と、該子機側送受信部12に接続され送受信に関する演算処理等を行う信号処理制御部13と、センサ子機3のIDである子機識別情報を記憶すると共に滴下をカウントした滴下数を記憶可能な子機メモリ部14と、励起信号を受けた子機アンテナ部10で生じた電流を直流電流に変換してICチップ11の各構成部へ供給して駆動する整流電源部15と、を備えている。
【0021】
上記子機型送受信部12は、高周波信号の変調を行う変調回路及び復調を行う復調回路を有している。
上記信号処理制御部13は、コントロールロジックを有し、子機型送受信部12の復調回路で復調された高周波信号に基づいてセンサ部5に計測を開始する命令を送る機能を有している。なお、センサ部5は、点滴計測ロジックを有しており、該点滴計測ロジックが上記命令を受けると計測を開始するように設定されている。
【0022】
また、信号処理制御部13は、センサ部5から滴下の検知信号を点滴計測ロジックを介して入力し、設定された計測時間内に入力された検知信号の数を滴下数としてコントロールロジックを介して上記子機メモリ部14に送って記憶させる機能を有している。さらに、信号処理制御部13は、コントロールロジックを介して上記滴下数を子機識別情報と共に滴下信号として子機側送受信部12の変調回路で変調し、子機アンテナ部10を介して送信するよう設定されている。
また、信号処理制御部13は、センサ用電源部7を制御してセンサ部5のON/OFFを行う機能を有している。
【0023】
上記整流電源部15は、励起信号である高周波信号を受けた子機アンテナ部10で生じた起電力による高周波電流を直流電流に変換、整流し、ICチップ11の各構成部へ供給する電源として機能を有する。
上記センサ用電源部7は、小型の電池(例えば、ボタン電池等)やバッテリー等が採用される。
なお、ICチップ11に、子機アンテナ部10を内蔵させてワンチップ化させたものを採用しても構わない。
【0024】
上記携帯型親機4は、電磁誘導又は電磁結合によりRFIDタグ部6と交信して滴下信号を受信するRFIDリーダ部16と、受信した滴下信号に基づいて点滴速度を算出する演算制御部(演算部)17と、算出した点滴速度を表示する表示部18と、受信した滴下信号に基づいて得られた滴下間隔で点滅するLED等の滴下点滅部19と、算出した点滴速度及び子機識別情報を記録する親機メモリ部20と、携帯型親機4の各構成部に電力を供給する親機電源部21と、各種操作のスイッチを有するスイッチ部22と、暗所で周囲を照明するための照明部23と、を備えている。
【0025】
上記RFIDリーダ部16は、親機アンテナ部24と、該親機アンテナ部24に接続され親機アンテナ部24を介して信号の送受信を行う処理回路である親機側送受信部25と、で構成されている。このRFIDリーダ部16は、センサ子機3との交信を行うために高周波信号を送信可能である。また、RFIDリーダ部16とセンサ子機3との交信可能距離は、各点滴セット1の配置等の使用状況に応じて、適宜設定される。
【0026】
上記親機型送受信部25は、送信側回路として送信する高周波信号の変調を行う変調回路と、変調した高周波信号の送信電力を増幅する送信電力増幅回路と、を有していると共に、受信側回路として、バンドパスフィルタと、受信した高周波信号の復調、検波及び増幅を行う復調・検波・増幅回路と、ノイズフィルタと、を有している。
【0027】
上記演算制御部17は、受信した滴下信号に基づいて種々の演算処理を行うと共に、携帯型親機4の各構成部の制御を行うコントロールロジックを有するCPU等である。
すなわち、親機アンテナ部20で受信した高周波信号を、親機型送受信部25において、バンドパスフィルタ、復調・検波・増幅回路及びノイズフィルタの順に通して処理し、演算制御部17のコントロールロジックで演算処理することで点滴速度を算出している。
【0028】
上記演算制御部17は、RFIDリーダ部16を介して、センサ子機3に対して滴下又は滴下数の計測時間を任意に設定可能な計測時間設定信号を送信可能であり、センサ子機3は、受信した計測時間設定信号に基づいた計測時間で滴下の検知又は滴下数の計測を行うように設定されている。
また、演算制御部17は、スイッチ操作によりRFIDリーダ部16を介してセンサ子機3に対して計測を開始させる計測開始信号を送信可能であり、センサ子機3は、計測開始信号を受信した際に滴下の検知及び滴下数の計測を行うように設定されている。
【0029】
さらに、RFIDリーダ部16は、スイッチ操作によりセンサ子機3に対して該センサ子機3を監視モードに設定する監視開始信号を送信可能である。
また、センサ子機3は、監視開始信号を受信した場合、滴下数の計測を所定の計測時間で繰り返し行うと共に、計測した滴下数が所定の上限値以上又は所定の下限値以下の際に警報を発する点滴監視ロジックを有した警報機構26を備えている。
【0030】
上記表示部18は、例えば種々の情報が表示可能な液晶表示ディスプレイであって、点滴速度や子機識別情報等の各種情報が表示される。
また、表示部18は、表示を照明する照明機構27を備えている。例えば、照明機構27としては、液晶表示ディスプレイを照明するLED光源を用いたバックライトユニット等である。
【0031】
上記親機電源部21は、乾電池やバッテリー等が採用される。
上記スイッチ部22は、計測開始信号を送信させる計測開始ボタン22a、監視開始信号を送信させる監視開始ボタン22b、計測時間を切り替える計測時間切替スイッチ22c及び点滴種類を切り替える点滴種類切替スイッチ22d、滴下監視データをセンサ子機3から読み込むための監視データ取得ボタン22e等の種々のスイッチを備えた操作キーボード部である。なお、計測時間切替スイッチ22cは、例えば5秒、10秒、20秒の3種類の切替が可能とされる。また、点滴種類切替スイッチ22dは、例えば20滴/mlと60滴/mlとの2種類の切替が可能とされる。
【0032】
上記照明部23は、例えば消費電力が少ない白色LEDを用いたLED照明装置であり、例えば携帯型親機4の前端面に設置されている。なお、照明部23は、照明用ボタン(図示略)を押すことで発光する。
上記警報機構26は、点滴監視ロジックで制御されて警報音を発するブザー等であって、その音量は点滴を行っている患者やその周囲に聞き取れる程度に設定される。また、警報機構26には、移動時等に警報を切ることができるように、手動で警報機能をON/OFFできるスイッチ(図示略)が設けられている。
【0033】
次に、本実施形態の点滴計測システムによる点滴速度の計測方法について、図5から図7を参照して説明する。
【0034】
まず、図5のフローチャートに示すように、携帯型親機4を持った看護師等が巡回時等に点滴落下部2に取り付けられているセンサ子機3に携帯型親機4を近づける(ステップS01)。この際、無線通信可能な距離として例えば20cm以内に携帯型親機4とセンサ子機3とを近接させる。次に、携帯型親機4の点滴種類切替スイッチ22dを操作して所定の点滴種類を選択し、設定する(ステップS02)。
さらに、計測時間切替スイッチ22cを操作して所定の計測時間を選択し、設定する(ステップS03)。
【0035】
上記近接状態で、携帯型親機4の計測開始ボタン22aを押すと(ステップS04)、携帯型親機4のRFIDリーダ部16から親機アンテナ部24を介して計測開始信号が送信される。この際、計測開始信号には、選択した上記計測時間及び点滴種類の情報が含まれている。この計測開始信号を子機アンテナ部10及びRFIDタグ部6により受信したセンサ子機3は、計測を開始する(ステップS05)。すなわち、センサ部5により、設定された計測時間内で滴下数をカウントする。
【0036】
計測時間内の計測が終了した後(ステップS06)、カウントした滴下数及び子機識別情報を子機メモリ部14で記憶すると共に、これらの情報を子機アンテナ部10及びRFIDタグ部6により携帯型親機4へ送信する(ステップS07)。なお、これら情報の送受信は、携帯型親機4からの高周波信号を受けた際の起電力によって行われる。また、センサ部5による計測自体は、センサ用電源部7による電力供給で行われる。
【0037】
滴下数及び子機識別情報をRFIDリーダ部16で受信した携帯型親機4は、演算制御部17によって滴下数から点滴速度を演算処理して求め(ステップS08)、この点滴速度を表示部18がディスプレイ面に「滴/分」や「流量/h」等の単位で表示する(ステップS09)。この際、表示部18の表示は、照明機構27によって照明されているため、暗闇中でも表示を確認することができる。
なお、この計測時間の設定(ステップS03)から点滴速度の表示(ステップS09)までを繰り返し行うことが可能である。
【0038】
さらに、監視モードに設定した場合、携帯型親機4の監視開始ボタン22bを押すことで、監視開始信号が送信される(ステップS10)。この監視開始信号を受信したセンサ子機3は、監視モードに設定され、一定時間毎に点滴数をカウントする監視モードを開始する(ステップS11)。この監視モードでは、センサ子機3が、予め設定されている時間間隔で計測を行うようになっており、例えば、消費電力を抑えるため、1〜2分毎に1回15秒(計測時間は点滴セットが移動される場合もあるため、長めの15秒に設定)程度、滴下数の計測が行われる。
【0039】
この監視モードでは、上記時間間隔で繰り返し計測される滴下数のデータは、子機メモリ部14に順次記録、更新され、一定時間内の複数の滴下数データが滴下監視データとして蓄積されるようになっている。
【0040】
また、この監視モードでは、図6に示すように、計測データが正常値から外れた場合、すなわち設定された計測時間内の滴下数が所定の上限値以上であった場合には流れ過ぎと点滴監視ロジックで判断し、また所定の下限値以下であった場合には空液又は詰まりが生じたと点滴監視ロジックで判断して(ステップS13)、警報機構26によって警報が鳴らされる(ステップS14)。なお、これらの場合、携帯型親機4に対して警報信号を送信して報知する機能を警報機構26に設け、警報信号を受信した携帯型親機4側で警報を鳴らす設定にしても構わない。また、警報機構26として、異常表示灯を設け、警報だけでなく異常表示灯を点灯させても構わない。
【0041】
また、携帯型親機4を持った看護師等が巡回時等に点滴落下部2に取り付けられているセンサ子機3に携帯型親機4を近づけ(ステップS15)、携帯型親機4の監視データ取得ボタン22eを押すと、携帯型親機4は滴下監視データを送信させるための監視データ読み込み信号をセンサ子機3に送信し(ステップS16)、この信号を受け取ったセンサ子機3は、記録された滴下監視データと子機識別情報とを携帯型親機4に送信し、携帯型親機4が読み込むように設定されている(ステップS17)。
【0042】
さらに、滴下監視データと子機識別情報とを受信した携帯型親機4は、滴下監視データに基づいて算出した監視時の点滴速度記録と子機識別情報とを表示部18に表示するように設定されている(ステップS18)。これにより、一定時間過去から直近までの点滴滴下流量状況を表示・確認することができる。なお、この滴下監視データ及び子機識別情報も親機メモリ部20に監視記録として記憶される。
【0043】
次に、別の計測方法を、図7のフローチャートを参照して説明する。
この計測方法では、センサ子機3は予め計測時間内の滴下数ではなく、滴下を検知した際にその検知信号を滴下信号として送信するように設定されている。すなわち、この計測方法では、センサ子機3により計測が開始されるまでは上記計測方法と同様であるが(ステップS05)、センサ子機3は、滴下毎に滴下信号を子機識別情報と共に送信する(ステップS21)。
【0044】
この滴下信号を受け取った携帯型親機4は、演算制御部17が滴下信号の受信に合わせて滴下点滅部19を点滅制御する(ステップS22)。また、演算制御部17は、滴下信号の受信間隔に基づいて点滴速度を演算処理して算出する(ステップS23)。さらに、表示部18は、子機識別情報と点滴速度とを表示する(ステップS24)。この際、点滴速度は滴下信号の受信に応じて随時、更新されて表示される。この後、設定した計測時間が経過すると、センサ子機3による計測が終了し、携帯型親機4における点滴速度の更新が停止され、計測時間内の滴下数に基づいた点滴速度が表示部18に表示される(ステップS25)。
【0045】
このように本実施形態の点滴計測システムでは、センサ子機3のセンサ部5が輸液の滴下又は滴下数を所定の計測時間で検知又は計測すると共に、携帯型親機4のRFIDリーダ部16からの電磁誘導又は電磁結合によりRFIDタグ部6が子機識別情報と検知又は計測した滴下又は滴下数とを滴下信号として無線送信するので、携帯型親機4とセンサ子機3とを通信可能な距離に近接させた状態で、子機識別情報と共に滴下数等の滴下情報を非接触で入手でき、これに基づいてセンサ子機3を識別しつつ正確な点滴速度を容易に得ることができる。これによって点滴速度の調節を簡単かつ正確に行うことができる。特に、電波・電磁波を利用した非接触認証技術であるRFID機能を有するRFIDタグ部6を採用しているので、読み取り可能な近距離までセンサ子機3に携帯型親機4を近接させたときのみ交信が行われて、隣接するベッド等の患者の点滴セット1に取り付けた他のセンサ子機3との混信を避けることができる。
【0046】
また、センサ子機3と携帯型親機4とに分離された構成であり、少なくともセンサ部5及びRFIDタグ部6だけでセンサ子機3を簡素に構成できるため、支持台等を用いずに点滴落下部2に取り付け可能な大きさに小型化及び軽量化可能であると共に、センサ子機3単体の製作コストを大幅に低減することができる。また、携帯型親機4も、センサ部5を備える必要がないため、小型化及び軽量化ができ、高い携帯性を得ることができる。
【0047】
さらに、複数の点滴セット1にそれぞれセンサ子機3を取り付けしても、一台の携帯型親機4で各センサ子機3をRFID技術で取得した子機識別情報で自動認識し、個別に滴下信号を受信して点滴速度を得ることができる。したがって、携帯型親機4一台で多数の点滴セット1における点適速度を一括して管理及び計測することが可能になり、点滴セット1毎に演算部や表示部等の全機能を備えた装置を個別に用意する必要が無い。これにより、全体コストを大幅に低減することができると共に計測及び管理の効率化を計ることができる。
【0048】
また、携帯型親機4がセンサ子機3に対して滴下又は滴下数の計測時間を任意に設定可能な計測時間設定信号を送信し、センサ子機3が計測時間設定信号に基づいた計測時間で滴下の検知又は滴下数の計測を行うので、携帯型親機4側から計測の精度切替が可能であると共に、センサ子機3の消費電力や計測作業効率を配慮した計測時間に設定可能である。
【0049】
さらに、携帯型親機4がセンサ子機3に対して計測を開始させる計測開始信号を送信し、センサ子機3が計測開始信号を受信した際に滴下の検知又は滴下数の計測を行うので、単に携帯型親機4とセンサ子機3とを近接させただけでは計測を開始せず、スイッチ操作を行った時のみセンサ子機3を駆動させることで、センサ子機3の電力消費を極力抑制することができる。
また、携帯型親機4が、受信した滴下信号に基づいて得られた滴下間隔で点滅する滴下点滅部19を備えているので、滴下点滅部19で滴下を視覚的に確認することができる。特に、夜間の暗闇中での計測時に、直接滴下を目視せずに点滴速度の調節が可能である。
【0050】
また、携帯型親機4がセンサ子機3を監視モードに設定する監視開始信号を送信可能であるので、携帯型親機4側からセンサ子機3を非接触で監視モードに設定することができる。また、センサ子機3が、計測した滴下数が所定の上限値以上又は所定の下限値以下の際に警報を発する警報機構26を備えているので、空液、詰まり又は流れ過ぎの状態を検知して警報により注意を促すことができる。
また、携帯型親機4が、周囲を照明するための照明部23を備えているので、夜間等の暗闇中でも照明部23によって点滴落下部2等を照明して確認可能で、懐中電灯等を持ち歩く必要がない。
【0051】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、携帯型親機4に、センサ子機3毎に点滴終了時間を入力できるように設定しても構わない。
【0052】
また、携帯型親機4において受信した滴下信号から点滴速度(滴下流量)を算出して表示しているが、この点滴速度に基づいて滴下総量若しくは滴下残量を算出して表示させても構わない。
また、各センサ子機3の点滴速度及び子機識別情報を記録した親機メモリ部20から、これら情報をパーソナルコンピュータ等に有線又は無線により送信可能にして、パーソナルコンピュータ等でデータ管理可能にしても構わない。
また、センサ子機において、センサ用電源部が無くても、RFIDの電磁誘導からの電力供給で直接センサ部を駆動し、点滴の計測を行うようにしても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明に係る点滴計測システムの一実施形態において、点滴セットに装着したセンサ子機及び携帯型親機を示す正面図である。
【図2】本実施形態において、点滴セットに装着したセンサ子機を示す正面図である。
【図3】本実施形態において、センサ子機の構成を示すブロック図である。
【図4】本実施形態において、携帯型親機の構成を示すブロック図である。
【図5】本実施形態において、点滴計測システムによる計測方法を示すフローチャートである。
【図6】本実施形態において、点滴計測システムによる監視モードを示すフローチャートである。
【図7】本実施形態において、点滴計測システムによる計測方法の他の例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0054】
1…点滴セット、2…点滴落下部、3…センサ子機、4…携帯型親機、5…センサ部、6…RFIDタグ部、16…RFIDリーダ部、17…演算制御部(演算部)、18…表示部、19…滴下点滅部、23…照明部、26…警報機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自然落下式点滴セットの点滴落下部に取り付け可能なセンサ子機と、該センサ子機との間で無線通信可能な携帯型親機と、で構成され、
前記センサ子機が、前記点滴落下部で自然落下する輸液の滴下又は滴下数を所定の計測時間内で検知又は計測するセンサ部と、
予め記憶された子機識別情報と検知又は計測した前記滴下又は滴下数とを滴下信号として無線送信するRFIDタグ部と、を備え、
前記携帯型親機が、電磁誘導又は電磁結合により前記RFIDタグ部と交信して前記滴下信号を受信するRFIDリーダ部と、
受信した前記滴下信号に基づいて点滴速度を算出する演算部と、
算出した前記点滴速度を表示する表示部と、を備えていることを特徴とする点滴計測システム。
【請求項2】
請求項1に記載の点滴計測システムにおいて、
前記携帯型親機が、前記センサ子機に対して前記滴下又は滴下数の計測時間を任意に設定可能な計測時間設定信号を送信可能であり、
前記センサ子機が、受信した前記計測時間設定信号に基づいた計測時間で前記滴下又は滴下数の検知又は計測を行うことを特徴とする点滴計測システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の点滴計測システムにおいて、
前記携帯型親機が、スイッチ操作により前記センサ子機に対して計測を開始させる計測開始信号を送信可能であり、
前記センサ子機が、前記計測開始信号を受信した際に前記滴下又は滴下数の検知又は計測を行うことを特徴とする点滴計測システム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の点滴計測システムにおいて、
前記携帯型親機が、受信した前記滴下信号に基づいて得られた滴下間隔で点滅する滴下点滅部を備えていることを特徴とする点滴計測システム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の点滴計測システムにおいて、
前記携帯型親機が、スイッチ操作により前記センサ子機に対して該センサ子機を監視モードに設定する監視開始信号を送信可能であり、
前記センサ子機が、前記監視開始信号を受信した場合、前記滴下数の計測を所定の計測時間で繰り返し行うと共に、計測した前記滴下数が所定の上限値以上又は所定の下限値以下の際に警報を発する警報機構を備えていることを特徴とする点滴計測システム。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の点滴計測システムにおいて、
前記携帯型親機が、周囲を照明するための照明部を備えていることを特徴とする点滴計測システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−240428(P2009−240428A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−88645(P2008−88645)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(590002389)静岡県 (173)
【出願人】(508096149)フジファルマ株式会社 (2)
【Fターム(参考)】