説明

点灯制御装置

【課題】簡素な構成により、PWM調光時における発光素子の断線を高精度に検出可能な技術を提供する。
【解決手段】発光素子の点灯状態を制御するための点灯制御装置であって、所定値のバイアス電流と、大きさが周期的に増減するパルス状電流を重畳させた電流を発光素子へ供給する電流供給手段と、発光素子の導通状態を検出する検出部を含んで構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子の点灯を制御するための点灯制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LED(Light Emitting Diode)などの発光素子の点灯を制御する点灯制御装置の先行例は、例えば特開2009−266723号公報(特許文献1)に開示されている。この先行例の点灯制御装置は、発光素子をDC点灯およびPWM調光する際の発光素子の断線を高精度で検出することを目的としたものである。この先行例の点灯制御装置は、LEDユニットをDC制御またはPWM制御する電流駆動部と、LEDユニットの断線を検出する断線検出部とを備える。断線検出部は、ラッチ回路とリセット部を有しており、ラッチ回路は、規定時間断線していることを検出後、断線検出信号を出力し、リセット部は、規定条件に基づいて断線検出信号をリセットする。このラッチ回路は、抵抗素子とコンデンサを直列接続した回路部分を備えており、断線検出部から信号が出力されるとコンデンサが充電される。それにより、断線検出部から信号が出力された後に、ラッチ回路から断線検出信号が出力までにタイムラグを発生させることができるので、PWM調光時における消灯期間に誤って断線検出信号が出力されることを回避可能となる。
【0003】
しかしながら、先行例の点灯制御装置においてはコンデンサの特性変化により、PWM調光時に誤って断線検出信号が出力される場合がある。例えば、コンデンサとして電解コンデンサを用いた場合には、経年劣化により容量抜けが発生し、それによる誤動作を生じる可能性がある。また、コンデンサとしてセラミックコンデンサ等を用いた場合には、電解コンデンサの場合のような経年劣化は生じないが、静電容量が周辺温度によって変化することから、例えば車両用灯具の点灯制御に用いられる場合など、要求される動作温度範囲が広い(例えば、−40℃〜110℃)場合には、温度変化による静電容量の変化に起因して誤動作を生じる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−266723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明に係る具体的態様は、簡素な構成により、PWM調光時における発光素子の断線を高精度に検出可能な技術を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る一態様の点灯制御装置は、発光素子の点灯状態を制御するための点灯制御装置であって、(a)所定値のバイアス電流と、大きさが周期的に増減するパルス状電流を重畳させた電流を前記発光素子へ供給する電流供給手段と、(b)前記発光素子の導通状態を検出する検出部を含んで構成される。
【0007】
上記の点灯制御装置によれば、PWM制御時におけるパルス状電流の値が低い期間においても発光素子を完全に消灯させず、バイアス電流を流した状態にすることができる。このため、検出部が誤って発光素子の断線を検出することがない。従って、簡素な構成により、PWM調光時における発光素子の断線を高精度に検出することが可能となる。
【0008】
上記の点灯制御装置において、前記電流供給手段は、例えば(c)前記発光素子の一端と基準電位端との間に接続される電流制限回路と、(d)電流入出力端と制御端を有し、前記電流入出力端を前記電流制限回路に対して並列に接続されるスイッチング素子と、(e)少なくともパルス状の電圧信号を前記スイッチング素子の前記制御端へ供給する制御信号供給部を有して構成される。
【0009】
上記によれば、スイッチング素子の制御端へパルス状の電圧信号を供給することにより発光素子のPWM点灯が実現される。そして、パルス状の電圧信号が相対的に低いレベル(Lレベル)の場合にはスイッチング素子が非導通状態となるが、このときでも電流制限回路を含む電流経路にはバイアス電流が流れる状態を実現できる。
【0010】
また、上記の点灯制御装置は、前記発光素子と電源の間に接続され、前記検出部により前記発光素子が非導通状態であることが検出されたときに前記発光素子と前記電源との接続を遮断するスイッチ部を更に含むことも好ましい。
【0011】
また、前記電流制限回路は、例えば抵抗素子を含んで構成される。なお、電流制限回路は、定電流回路やDC−CDコンバータなどであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】一実施形態の点灯制御装置の構成を示す回路図である。
【図2】発光素子に流れる電流を模式的に示す波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は、一実施形態の点灯制御装置の構成を示す回路図である。図1に示す点灯制御装置1は、LED等の発光素子(半導体光源)La、Lbの点灯状態を制御するものであり、スイッチ部(SW部)10、断線検出部11、PWM制御部12、電源13、電界効果型トランジスタ(スイッチング素子)Q1a、Q1b、抵抗素子R1a、R1b、R2a、R2b、R3a、R3b、R4a、R4b、逆接ダイオードD1、D2を含んで構成されている。
【0015】
スイッチ部10は、直流点灯用電源、PWM点灯用電源のそれぞれと各発光素子La、Lbとの間に接続されており、断線検出部11により各発光素子La、Lbのいずれかが非導通状態であることが検出されたときに、各発光素子La、Lbと直流点灯用電源およびPWM点灯用電源との電気的な接続を遮断する。
【0016】
断線検出部11は、各発光素子La、Lbと各抵抗素子R2a、R2bの間に接続されており、各発光素子La、Lbの導通状態(すなわち断線の有無)を検出する。
【0017】
PWM制御部12は、電源13から電力供給を受けて各電界効果型トランジスタQ1a、Q1bの制御端(ゲート)に対して、パルス状の電圧信号または一定値の電圧信号を選択的に供給する。詳細には、PWM制御部12は、PWM点灯用電源が入ったときにはパルス状の電圧信号(PWM信号)を出力し、それ以外のとき(すなわち直流点灯用電源が入ったとき)には一定値の電圧信号を出力する。
【0018】
抵抗素子R2aは、発光素子Laの一端と基準電位端(本例では接地端GND)との間に接続されている。同様に、抵抗素子R2bは、発光素子Lbの一端と基準電位端(本例では接地端GND)との間に接続されている。
【0019】
電界効果型トランジスタQ1aは、2つの電流入出力端(ソース、ドレイン)と1つの制御端(ゲート)を有しており、各電流入出力端を抵抗素子R2aに対して並列に接続されている。同様に、電界効果型トランジスタQ1bは、2つの電流入出力端(ソース、ドレイン)と1つの制御端(ゲート)を有しており、各電流入出力端を抵抗素子R2bに対して並列に接続されている。
【0020】
抵抗素子R1aは、電界効果型トランジスタQ1aと直列に接続され、かつ抵抗素子R2aに対して並列に接続されている。同様に、抵抗素子R1bは、電界効果型トランジスタQ1bと直列に接続され、かつ抵抗素子R2bに対して並列に接続されている。
【0021】
抵抗素子R3aは、PWM制御部12と電界効果型トランジスタQ1aの制御端との間に接続されている。同様に、抵抗素子R3bは、PWM制御部12と電界効果型トランジスタQ1bの制御端との間に接続されている。本実施形態では、各抵抗素子R3a、R3bのPWM制御部12側の一端が相互に接続されている。
【0022】
抵抗素子R4aは、電界効果型トランジスタQ1aの制御端と基準電位端(本例では接地端GND)との間に接続されている。同様に、抵抗素子R4bは、電界効果型トランジスタQ1bの制御端と基準電位端(本例では接地端GND)との間に接続されている。
【0023】
本実施形態の点灯制御装置はこのような構成を備えており、次にその動作について詳細に説明する。
【0024】
まず、各発光素子La、Lbを直流点灯する場合を説明する。直流点灯用電源から電圧が供給されると、この電圧は逆接ダイオードD1、スイッチ部10を経由して各発光素子La、Lbに印加される。また、PWM制御部12から各電界効果型トランジスタQ1a、Q1bの制御端に一定値の電圧信号が供給され、各電界効果型トランジスタQ1a、Q1bはオン状態(導通状態)となる。
【0025】
このとき、発光素子Laに流れる電流の大きさは、電流制限用である各抵抗素子R1a、R2aによって決められる。すなわち、各抵抗素子R1a、R2aの並列抵抗が発光素子Laに接続された状態となり、発光素子Laには最大電流が流れる。同様に、発光素子Lbに流れる電流の大きさは、電流制限用である各抵抗素子R1b、R2bによって決められる。すなわち、各抵抗素子R1b、R2bの並列抵抗が発光素子Lbに接続された状態となり、発光素子Lbには最大電流が流れる。
【0026】
この状態において、仮に発光素子La、Lbの少なくとも一方が断線したとすると、その発光素子には電流が流れないため、断線検出部11により断線が検出される。断線検出部11により断線が検出されると、スイッチ部10により各電源と各発光素子La、Lbとの間の電気的接続が遮断される。従って、全ての発光素子を消灯状態にすることができる。
【0027】
次に、各発光素子La、LbをPWM(Pulse Width Modulation)点灯する場合を説明する。上記した直流点灯する場合と同様に、PWM点灯用電源から電圧が供給されると、この電圧は逆接ダイオードD2、スイッチ部10を経由して各発光素子La、Lbに印加される。また、PWM制御部12から各電界効果型トランジスタQ1a、Q1bの制御端にパルス状の電圧信号(パルス信号)が供給される。各電界効果型トランジスタQ1a、Q1bは、パルス信号の電圧値の増減に対応してオン状態(導通状態)とオフ状態(非導通状態)を繰り返す。
【0028】
パルス信号が相対的に高いレベル(Hレベル)であるときには、各電界効果型トランジスタQ1a、Q1bがオン状態となり、各発光素子La、Lbにはそれぞれ最大電流が流れる。
【0029】
一方、パルス信号が相対的に低いレベル(Lレベル)であるときには、各電界効果型トランジスタQ1a、Q1bがオフ状態となる。このとき、抵抗素子R1aを含む電流経路および抵抗素子R1bを含む電流経路のそれぞれには電流が流れないが、抵抗素子R2aを含む電流経路及び抵抗素子R2bを含む電流経路のそれぞれには電流が流れる。すなわち、各電界効果型トランジスタQ1a、Q1bがオフ状態の場合には、各発光素子La、Lbに流れる電流の大きさは各抵抗素子R2a、R2bによって設定される。つまり、PWM制御時におけるパルス信号の電圧値が低い期間においても、各発光素子La、Lbを完全に消灯させず、バイアス電流を流した状態にすることができる。ここでのバイアス電流は、例えば数μA〜数百mA程度の大きさの電流である。
【0030】
図2は、発光素子に流れる電流を模式的に示す波形図である。従来は図2(A)に示すように、発光素子には点灯時に電流I1が流れ、消灯時には電流が流れない状態(電流=0)となっていた。このため、この電流が0である期間において誤って断線が検出される場合があった。これに対して本実施形態では図2(B)に示すように、発光素子には点灯時に電流I1が流れ、消灯時にもI1より低いバイアス電流I2が流れる。換言すれば、本実施形態の点灯制御装置は、バイアス電流I2を常に流しておき、そこにPWM点灯をさせるための駆動波形を重畳させている。そのため、断線検出部11が誤って発光素子の断線を検出することがない。なお、仮に発光素子La、Lbの少なくとも一方が断線したとすると、その発光素子には電流が流れないため、断線検出部11により断線が検出される。
【0031】
なお、本発明は上述した実施形態の内容に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々に変形して実施をすることが可能である。例えば、上記した実施形態においては2つの発光素子を点灯制御の対象としたが、発光素子の数はこれに限られない。また、電流制御素子の一例として電界効果型トランジスタを挙げていたが、他の素子(例えばバイポーラトランジスタ等)を用いてもよい。
【0032】
また、上記した実施形態では電流制限回路の一例として抵抗素子を含む回路を説明したが、電流制限回路はこれに限定されず、例えば定電流回路や、定電流型のDC−DCコンバータ等であってもよい。
【符号の説明】
【0033】
1:点灯制御装置
10:スイッチ部
11:断線検出部
12:PWM制御部
13:電源
R1a、R1b、R2a、R2b、R3a、R3b、R4a、R4b:抵抗素子
Q1a、Q1b:電界効果型トランジスタ
D1、D2:逆接ダイオード
La、Lb:発光素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子の点灯状態を制御するための点灯制御装置であって、
所定値のバイアス電流と、大きさが周期的に増減するパルス状電流を重畳させた電流を前記発光素子へ供給する電流供給手段と、
前記発光素子の導通状態を検出する検出部、
を含む、点灯制御装置。
【請求項2】
前記電流供給手段は、
前記発光素子の一端と基準電位端との間に接続される電流制限回路と、
電流入出力端と制御端を有し、前記電流入出力端を前記電流制限回路に対して並列に接続されるスイッチング素子と、
少なくともパルス状の電圧信号を前記スイッチング素子の前記制御端へ供給する制御信号供給部を有する、請求項1に記載の点灯制御装置。
【請求項3】
前記発光素子と電源の間に接続され、前記検出部により前記発光素子が非導通状態であることが検出されたときに前記発光素子と前記電源との接続を遮断するスイッチ部を更に含む、請求項1又は2に記載の点灯制御装置。
【請求項4】
前記電流制限回路が抵抗素子を含む、請求項1〜3の何れか1項に記載の点灯制御装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−160392(P2012−160392A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−20470(P2011−20470)
【出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】