説明

点灯装置、灯具および点灯方法

【課題】放電灯における熱の発生を抑制するとともに、放電灯の突然の消灯を防止することができる点灯装置、灯具および点灯方法を提供する。
【解決手段】放電灯10に電力を印加する電力供給部21と、電力供給部21から放電灯10に印加される電圧を測定する測定部22Aと、放電灯10に印加する電力の値に対して、放電灯10の点灯開始時に行う初期制御、および、放電灯10の点灯を安定して継続させる継続制御の異なる制御を行う制御部22Dとが設けられ、放電灯10の点灯開始後に測定された電圧が、所定の域値以下の場合には、放電灯10に対して、点灯開始時に印加された電力以下の電力を印加する保護制御が制御部によって実施される。そのため、放電灯10の管内部の気体が漏れて放電灯10に印加される電圧の値が上昇しない場合に、過大な電力が放電灯10に印加されることが防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点灯装置、灯具および点灯方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光源として放電灯を用いた灯具は、車両の前照灯として広く用いられつつある。この放電灯は、キセノンガス、水銀、ヨウ化金属などが密封された管の両端に電極が設けられた構成を有し、これら電極の間に起きる放電現象によって発光するものである。
【0003】
この放電灯点灯させる際には、両電極の間の絶縁状態を破壊するために、約20kVという非常に高い電圧を印加する必要があり、かつ、点灯後に放電灯から放射される光束を一定に保つために、供給される電力を一定に保つ制御する必要もある。そのため、放電灯を点灯させる点灯装置には、放電灯に供給する電力や電圧を制御する電子回路であるバラスト(安定器)が設けられている。
【0004】
このような放電灯に供給する電力や電圧の制御が適当でない場合には、放電灯の寿命の短縮や、放射される光束の減少など、種々の不具合が発生する可能性が知られている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1には、放電灯に対する制御モードの切替えの際に発生する印加電圧の急激な変動によって、放電灯の寿命の短縮につながる放電灯の黒化、白濁化、変形等が発生する可能性が記載されている。
【0005】
特許文献1では、さらに、上述の問題を解決する方法として、放電灯の点灯開始後、放電灯に印加される電力が定格電力に至る前の立ち上がり期間に、放電灯に印加する電力を、定格電力未満に制御する期間を設けている。このようにすることで、放電灯の寿命の短縮等の不具合が発生する原因と考えられている電力の急激な上昇を抑制することができ、放電灯における照度の急激な低下や、チラツキの発生が防止されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−277609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載されている点灯方法では、放電灯の管に封入された気体の漏れ(リーク)に起因する不具合を防止することは難しいという問題がった。放電灯の管に封入された気体が漏れると、放電灯における対向する電極に印加される電圧(ランプ電圧)が上昇しなくなる。この状態で、通常の点灯開始時と同様に、放電灯に印加する電力を徐々に増加させると、放電灯を流れる電流の値が大きくなる。流れる電流の値が大きくなると、放電灯における発熱が過大になるという問題があった。
【0008】
さらに、放電灯の管に封入された気体の圧力が所定値よりも低下すると、放電灯は点灯できなくなる。つまり、管からの気体漏れが発生した当初は、管内の気体圧力が上述の所定圧力よりも高く、放電灯は点灯できるため、使用者は気体漏れの発生に気付かない場合が大半である。
【0009】
気体が継続して管から漏れ続けていると、管内の気体圧力が低下し続け、ある時点で管内の気体圧力は上述の所定圧力を下回ることになり、放電灯は点灯できなくなる。使用者にとっては、ある日突然、放電灯が点灯しなくなる、または、点灯していた放電灯が消灯
するように感じられる。車両の前照灯などの光源として、このような放電灯が用いられていると、前照灯が突然点灯しなくなったり、点灯していた前照灯が突然消灯したりすることになり、車両の運転者にとって大きな問題となる可能性があった。
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、点灯装置における熱の発生を抑制するとともに、放電灯の突然の消灯を防止することができる点灯装置、灯具および点灯方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明の点灯装置は、放電灯に電力を印加する電力供給部と、電力供給部から放電灯に印加される電圧を測定する測定部と、放電灯に印加する電力の値に対して、放電灯の点灯開始時に行う初期制御、および、放電灯の点灯を安定して継続させる継続制御の異なる制御を行う制御部と、が設けられ、制御部は、初期制御の際に、測定部により測定された電圧が、所定の域値を超えたか否かを判別し、所定の域値を超えたと判別した場合には、制御部による制御を初期制御から継続制御に切り替え、所定の域値以下と判別した場合には、制御部における制御を初期制御から、放電灯に印加される電力を点灯開始時に放電灯に印加された電力以下に制御する保護制御に切り替える。
【0012】
本発明の点灯装置によれば、放電灯の点灯開始後に測定された電圧が、所定の域値以下の場合には、放電灯に対して、点灯開始時に印加された電力以下の電力を印加する保護制御が実施される。そのため、放電灯の管内部の気体が漏れて(リーク異常が発生して)放電灯に印加される電圧の値が上昇しない場合に、過大な電力が放電灯に印加されることが防止される。
【0013】
具体的には、放電灯の点灯開始時から光度が安定するまで、制御部は初期制御によって放電灯に印加する電力の値の制御を行い、放電灯が所望の光束の光を安定して放射するようになると、継続制御によって電力の値の制御を行う。制御部が初期制御を行っている期間中に測定部に測定された電圧が、所定の域値を超えた場合には、上述のように制御部の制御は初期制御から継続制御に切り替えられる。その一方で、測定された電圧が、所定の域値以下の場合には、制御部は、放電灯に印加される電力が、点灯開始時に印加された電力以下とする保護制御を開始する。
【0014】
上記発明において、測定部により測定された電圧が所定の域値以下と判別されたのが、放電灯への電力の印加が開始されてから所定時間が経過する前である場合には、再び、測定部により測定された電圧が所定の域値を超えたか否かの判別が行われ、所定時間の経過した後である場合には、制御部における制御が初期制御から前記保護制御に切り替えられることが望ましい。
【0015】
このように、放電灯の点灯開始時から所定時間が経過した後に、初めて初期制御から保護制御への切り替えが行われることで、放電灯の点灯開始時における電圧の変動の影響を受けることなく、制御の切り替えを行うことができる。例えば、放電灯の点灯開始時に、測定部によって測定された電圧の値が大きく変動した場合、放電灯にリーク異常が発生していても、測定された電圧が所定の域値以下と判別される可能性がある。この場合、制御部は、制御を初期制御から保護制御に誤って切り替えてしまう。測定される電圧の値が安定する所定時間が経過した後に、測定された電圧の値が所定の域値以下と判別された場合に、初めて、制御部は制御を初期制御から保護制御に切り替えることで、上述の誤りを防止することができる。
【0016】
上記発明において、測定された電圧が所定の域値を超えたか否かは、判別時における放
電灯への印加電圧が、所定の電圧値を超えたか否かにより判別されることが望ましい。
このように所定の閾値を所定の電圧値とし、判別時に測定された電圧とを直接比較して測定された電圧の値の上昇を直接的に判別することで、判別時に測定された電圧の絶対値の上昇を確実に判別できる。
【0017】
更に、上記発明において、測定された電圧が所定の域値を超えたか否かを、判別時における放電灯への印加電圧と放電灯の点灯開始時における放電灯への印加電圧との電圧差が、所定の電圧差の値を超えたか否かにより判別されることが望ましい。
【0018】
このように所定の域値を所定の電圧差とし、点灯開始時に測定された電圧と判別時に測定された電圧との差との比較により判別を行うことで、判別時に測定された電圧のみとの比較により判別を行う場合と比較して、放電灯における個体差の影響を受けにくく、正確な判別を行うことができる。
【0019】
上記発明において、制御部における制御が、保護制御に切り替えられたことを使用者に知らせる報知部が更に設けられ、制御部は、制御が保護制御に切り替えられると、報知部に対して使用者に制御が保護制御に切り替えられたことを知らせる制御信号を出力することが望ましい。このように報知部により保護制御が開始されたことを知らせることにより、使用者は放電灯にリーク異常などの何らかの異常が発生したことを知ることができる。
【0020】
本発明の灯具は、電力が供給されることにより点灯する放電灯と、上記本発明の点灯装置と、が設けられている。本発明の灯具によれば、上記本発明の点灯装置を備えることにより、点灯装置における熱の発生を抑制するとともに、放電灯の突然の消灯を防止することができる。
【0021】
本発明の点灯方法は、点灯開始時に放電灯に印加する電力を制御する初期制御ステップと、放電灯が点灯されて所定時間経過後における放電灯への印加電圧を測定する判別電圧測定ステップと、測定された電圧が所定の域値を超えたか否かを判別する判別ステップと、測定された電圧が所定の域値を超えたと判別された場合には、放電灯に印加する電力の制御を、初期制御ステップの制御から、放電灯の点灯を安定して継続させる継続制御に切り替え、測定された電圧が所定の域値以下と判別された場合には、放電灯に印加される電力を、点灯開始時に放電灯に印加された電力以下に制御する保護制御に切り替える切替えステップと、を有する。
【0022】
本発明の点灯方法によれば、放電灯の点灯開始後に測定された電圧が、所定の域値以下の場合には、放電灯に対して、点灯開始時に印加された電力以下の電力を印加する保護制御が実施される。そのため、放電灯の管内部の気体が漏れて(リーク異常が発生して)放電灯に印加される電圧の値が上昇しない場合に、過大な電力が放電灯に印加されることが防止される。
【発明の効果】
【0023】
本発明の点灯装置、灯具および点灯方法によれば、放電灯の点灯開始後に測定された電圧が、所定の域値以下の場合には、放電灯に対して、点灯開始時に印加された電力以下の電力を印加する保護制御が実施され、過大な電力が放電灯に印加されることが防止されるため、点灯装置における熱の発生を抑制するとともに、使用者に異常を報知することにより放電灯の突然の消灯を防止することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両用灯具の構成を説明する摸式図である。
【図2】図1の点灯装置の構成を説明するブロック図である。
【図3】図1の車両用灯具における点灯時の制御を説明するフローチャートである。
【図4】図3の制御が行われた際に放電灯に印加される電圧等の時間変化を説明するグラフである。
【図5】図3の制御が行われた際に放電灯に印加される電圧等の時間変化を説明するグラフである。
【図6】図3の制御が行われた際に放電灯に印加される電圧等の時間変化を説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
この発明の一実施形態に係る車両用灯具1について、図1から図6を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る車両用灯具1の構成を説明する摸式図である。図2は、図1の点灯装置20の構成を説明するブロック図である。本実施形態の車両用灯具(灯具)1は、車両の前照灯として用いられるものであり、光源として放電灯10を用いたものである。車両用灯具1には、放電灯10と、点灯装置20と、が主に設けられている。
【0026】
放電灯10は、気体が密封された管の両端に電極が設けられ、これら電極の間に起きる放電現象によって発光するものである。本実施形態では、点灯装置20から供給された電力によって、放電灯10の電極の間に放電現象を起こして発光させている。放電灯10において点灯を開始する際には、両電極間の絶縁状態を破壊する高電圧(安定して点灯している場合に供給される電圧と比較して高い電圧)を供給する必要がある。なお、放電灯10としては種々の形式のものを用いることができ、特に限定するものではない。
【0027】
点灯装置20は、上述のように放電灯10を点灯させる電力を供給するものである。点灯装置20には、電力供給回路(電力供給部)21と、制御回路22と、報知部23と、が主に設けられている。
【0028】
電力供給回路21は、車両のバッテリなどの電源Bから供給された直流電力を、主に、放電灯10の点灯開始や点灯維持などに適した矩形波状の電力に変換するものである。電力供給回路21には、DC−DCコンバータ21Aと、フルブリッジインバータ21Bと、始動回路21Cと、が主に設けられている。
【0029】
DC−DCコンバータ21Aは、電源Bから供給された直流電力の電圧を、放電灯10の点灯に適した電圧まで昇圧させるものである。DC−DCコンバータ21Aにより昇圧される電圧は、制御回路22のDC/DC制御部22Eによって制御される。本実施形態では、図2に示す構成を有するDC−DCコンバータ21Aを用いる例に適用して説明するが、直流電力の電圧を昇圧するものであればよく、特にその構成を限定するものではない。
【0030】
フルブリッジインバータ21Bは、DC−DCコンバータ21Aにより昇圧された直流電力を、放電灯10の点灯に適した交流矩形波電力に変換するものである。フルブリッジインバータ21Bにより変換される交流矩形波電力における周波数などは、制御回路22のブリッジ制御部22Fによって制御される。本実施形態では、図2に示す構成を有するフルブリッジインバータ21Bを用いる例に適用して説明するが、直流電力を交流電力に変換するものであればよく、特にその構成を限定するものではない。
【0031】
始動回路21Cは、放電灯10における点灯を開始する際の絶縁破壊を起こす高電圧パルスを発生させるものである。始動回路21Cは、制御回路22により高電圧パルスを発生させるタイミングが制御されている。
【0032】
制御回路22は、電力供給回路21から放電灯10に印加される電力を制御するものである。
制御回路22には、電圧測定部22Aと、電圧変化検出部22Bと、電流測定部22Cと、演算処理部(制御部)22Dと、DC/DC制御部22Eと、ブリッジ制御部22Fと、タイマ部22Gと、が主に設けられている。
【0033】
電圧測定部22Aは、放電灯10に印加される電圧を測定するものであり、測定された電圧の値を示す測定信号を電圧変化検出部22Bと演算処理部22Dに出力するものである。電圧測定部22Aとしては、公知の電圧を測定するセンサ等を用いることができ、特に限定するものではない。
【0034】
電圧変化検出部22Bは、放電灯10の点灯開始時に電圧測定部22Aにより測定された電圧と、その後に測定された電圧との電圧差を算出するものである。算出された電圧差の値を示す信号は、演算処理部22Dに出力されている。
【0035】
電流測定部22Cは、放電灯10に印加される電流を測定するものであり、測定された電流の値を示す測定信号を演算処理部22Dに出力するものである。電流測定部22Cとしては、公知の電流を測定するセンサ等を用いることができ、特に限定するものではない。
【0036】
演算処理部22Dは、内蔵された各種のプログラムに従って各種の情報の演算処理を行うものである。例えば、放電灯10に印加する電力の制御に関する演算処理を行うものであり、その詳細は後述する。
【0037】
DC/DC制御部22Eは、演算処理部22Dから入力される制御信号に基づいてDC−DCコンバータ21Aにおける昇圧後の電圧の値を制御するものである。ブリッジ制御部22Fは、フルブリッジインバータ21Bにおける交流矩形波電力の諸特性、例えば周波数などを制御するものである。
【0038】
タイマ部22Gは、時間の経過の測定に用いられるものである。演算処理部22Dに時間の経過を示す信号を出力することで、所定のタイミングで入力信号の判定をすることができる。
【0039】
報知部23は、演算処理部22Dから入力される制御信号に基づいて、放電灯10の状態を車両の乗員、特に運転者(使用者)に知らせるものである。報知部23は、例えば、車両のインスツルメントパネルにおける前照灯の状態を表示する領域に配置されるものである。本実施形態では、放電灯10にリーク異常が発生したことを知らせるものである。
【0040】
次に、上記の構成からなる車両用灯具1における点灯方法について説明する。
図3は、図1の車両用灯具1における点灯時の制御を説明するフローチャートである。図4から図6は、図3の制御が行われた際に放電灯10に印加される電圧、電流、電力の時間変化を説明するグラフである。
【0041】
車両の運転者が車両用灯具1を点灯する操作を入力すると、操作情報が制御回路22の演算処理部22Dに入力され、演算処理部22Dは、放電灯10を点灯させる高電圧パルスを発生させる制御信号を始動回路21Cに出力する。始動回路21Cは、高電圧パルスを放電灯10に印加して、放電灯10における電極間の絶縁状態を破壊し、点灯を開始させる。
【0042】
その後、演算処理部22Dは、放電灯10から放射される光の光束を急速に立ち上げる定電力制御C1(初期制御)を開始する(S11)。定電力制御C1により放電灯10に印加される電力P1の値は、図4に示すように、放電灯10における光の光度が立ち上がって放電灯10の点灯を安定して継続させる定電力制御C2(継続制御)の際に放電灯10に印加される電力P2の値よりも大きな電力である。
【0043】
電圧測定部22Aで検出された放電灯10に印加された電圧であるVLは電圧変化検出部22Bに出力される。定電力制御C1が開始された直後(例えば1秒後)のVLを初期電圧VL1として電圧変化検出部22Bで記憶する(S12)。電圧変化検出部22Bが記憶するタイミングはタイマ部22Gの信号を元に演算処理部22Dによって制御される。
【0044】
その後、電圧測定部22Aは放電灯10に印加された電圧であるVLの測定を行う(S13)。測定された印加電圧VLの値を示す測定信号は演算処理部22Dに入力され、演算処理部22Dにおける所定の電圧(所定の域値)Vaの値との比較に用いられる。演算処理部22Dは、入力された印加電圧VLの値が、所定の電圧Vaの値を超えているか否かの判別を行う(S14)。
【0045】
印加電圧VLは、図4に示すように、定電力制御C1が開始されてからしばらくの間は、比較的安定した一定の値(所定の電圧Va以下の値)を示す。定電力制御C1が開始されてからある程度の時間が経過すると、電圧の値が大きくなり始めて所定の電圧Vaの値を超える。
【0046】
演算処理部22Dにおいて、印加電圧VLが所定の電圧Vaを超えたと判別された場合(YESの場合)には、放電灯10に印加される電力の値をP1からP2に切り替える電力低減制御(C1→C2)が演算処理部22Dによって行われる(S15)。ここでは、演算処理部22Dは、放電灯10に印加される電力の値を緩やかにP1からP2に低減させる制御を行っている。
【0047】
図4に示すように、演算処理部22Dが電力低減制御を行っている際も、放電灯10に印加される電圧の値は時間の経過とともに高くなり、放電灯10に印加される電流の値は時間の経過とともに小さくなっている。
【0048】
放電灯10に印加される電力の値がP2まで低減されると、演算処理部22Dは、放電灯10の点灯を安定して継続させる定電力制御C2を開始する(S16)。定電力制御C2が開始されると、放電灯10に印加される電圧の値も、電流の値も安定する。
【0049】
S14の判別において、印加電圧VLが所定の電圧Va以下であると判別された場合(NOの場合)には、演算処理部22Dは、印加電圧VLと初期電圧VL1との電圧差の値が、所定の電圧差(所定の域値)Vbの値を超えているか否かの判別を行う(S17)。
【0050】
印加電圧VLと初期電圧VL1との電圧差の値は、印加電圧VLの値を示す測定信号が入力された電圧変化検出部22Bにおいて、その記憶部に記憶された初期電圧VL1の値との差を演算により求められている。電圧変化検出部22Bにおいて求められた印加電圧VLと初期電圧VL1との電圧差の値を示す信号は演算処理部22Dに入力され、印加電圧VLと初期電圧VL1との電圧差の値と、所定の電圧差Vbの値との比較が行われる。
【0051】
図5に示すように、印加電圧VLと初期電圧VL1との電圧差の値が、所定の電圧差Vbを超えたと判別された場合(YESの場合)には、演算処理部22Dは、放電灯10に印加される電力の値をP1からP2に切り替える電力低減制御(C1→C2)を開始し(
S15)、その後、定電力制御C2を行う(S16)。
【0052】
S17の判別において、印加電圧VLと初期電圧VL1との電圧差の値が、所定の電圧差Vb以下と判別された場合(NOの場合)には、演算処理部22Dは、車両用灯具1の点灯が開始されてから経過した時間tが、所定の点灯時間tc(例えば30秒)を超えたか否かの判別を行う(S18:判別ステップ)。
【0053】
点灯が開始されてから経過した時間tが、所定の点灯時間tc未満であると判別された場合(NOの場合)には、演算処理部22Dは、S13に戻り上述の制御を繰り返し行う。その一方で、点灯が開始されてから経過した時間tが、所定の点灯時間tcを超えたと判別された場合(YESの場合)には、図6に示すように、演算処理部22Dは、定電力制御C3(保護制御)を開始する(S19)。
【0054】
演算処理部22Dは、更に、図2に示すように、報知部23に対して制御信号を出力して、車両の運転者に対して、放電灯10にリーク異常が発生したことを知らせる表示を行わせる。このように報知部23により定電力制御C3が開始されたことを知らせることにより、使用者である運転者は放電灯10にリーク異常などの何らかの異常が発生したことを知ることができるため、放電灯10の突然の消灯を防止することができる。
【0055】
定電力制御C3において、放電灯10に印加される電力P3の値は、定電力制御C2の際に印加される電力P2の値と同じ、または、それ以上のものである。演算処理部22Dにおける制御が、定電力制御C3に切り替えられると、放電灯10に印加される電圧の値は高くなり、放電灯10に印加される電流の値は小さくなる。
【0056】
上記の構成によれば、放電灯10の点灯開始後に測定された印加電圧VLの値が、所定の電圧Vaの値以下であり、かつ、印加電圧VLと初期電圧VL1との電圧差の値が、所定の電圧差Vbの値以下である場合には、放電灯10に対して、点灯開始時に印加された電力P1の値以下の電力P3を印加する定電力制御C3が実施される。そのため、放電灯10にリーク異常が発生して放電灯10に印加される電圧の値が上昇しない場合であっても、過大な電力が放電灯10に印加されることが防止され、点灯装置20における熱の発生を抑制することができる。
【0057】
上述の実施形態におけるS14では、所定の電圧Vaの値と、判別時に測定された印加電圧VLの値とを直接比較して判別を行うことで、印加電圧VLの上昇を直接的に判別している。このようにすることで、印加電圧VLの絶対値の上昇を確実に判別できる。
【0058】
更に、上述の実施形態におけるS17では、所定の電圧差Vbの値と、印加電圧VLと初期電圧VL1との電圧差の値との比較により判別を行っている。このようにすることで、判別時に測定された印加電圧VLのみとの比較により判別を行う場合と比較して、放電灯10における個体差の影響を受けにくく、正確な判別を行うことができる。
【0059】
このように、放電灯10の点灯開始時から所定の点灯時間tが経過した後に、初めて定電力制御C1から定電力制御C3への切り替えが行われることで、放電灯10の点灯開始時における電圧の変動の影響を受けることなく、制御の切り替えを行うことができる。
【符号の説明】
【0060】
1 車両用灯具(灯具)
10…放電灯、20…点灯装置、21…電力供給回路(電力供給部)、23…報知部、22A…電圧測定部(測定部)、22D…演算処理部(制御部)、C1…定電力制御(初期制御)、C2…定電力制御(継続制御)、C3…定電力制御(保護制御)、Va…所定
の電圧(所定の域値)、Vb…所定の電圧差(所定の域値)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電灯に電力を印加する電力供給部と、
該電力供給部から前記放電灯に印加される電圧を測定する測定部と、
前記放電灯に印加する前記電力の値に対して、前記放電灯の点灯開始時に行う初期制御、および、前記放電灯の点灯を安定して継続させる継続制御の異なる制御を行う制御部と、
が設けられ、
前記制御部は、前記初期制御の際に、前記測定部により測定された電圧が、所定の域値を超えたか否かを判別し、
前記所定の域値を超えたと判別した場合には、前記制御部による制御を前記初期制御から前記継続制御に切り替え、
前記所定の域値以下と判別した場合には、前記制御部における制御を前記初期制御から、前記放電灯に印加される電力を点灯開始時に前記放電灯に印加された電力以下に制御する保護制御に切り替えることを特徴とする点灯装置。
【請求項2】
前記測定部により測定された電圧が、前記所定の域値以下と判別されたのが、
前記放電灯への電力の印加が開始されてから所定時間が経過する前である場合には、再び、前記測定部により測定された電圧が前記所定の域値を超えたか否かの判別が行われ、
前記所定時間の経過した後である場合には、前記制御部における制御が前記初期制御から前記保護制御に切り替えられることを特徴とする請求項1記載の点灯装置。
【請求項3】
前記測定された電圧が前記所定の域値を超えたか否かは、判別時における前記放電灯への印加電圧が、所定の電圧値を超えたか否かにより判別されることを特徴とする請求項1または2に記載の点灯装置。
【請求項4】
前記測定された電圧が前記所定の域値を超えたか否かは、判別時における前記放電灯への印加電圧と前記放電灯の点灯開始時における前記放電灯への印加電圧との電圧差が、所定の電圧差の値を超えたか否かにより判別されることを特徴とする請求項1または2に記載の点灯装置。
【請求項5】
前記制御部における制御が、前記保護制御に切り替えられたことを使用者に知らせる報知部が更に設けられ、
前記制御部は、制御が前記保護制御に切り替えられると、前記報知部に対して前記使用者に制御が前記保護制御に切り替えられたことを知らせる制御信号を出力することを特徴とする請求項1記載の点灯装置。
【請求項6】
電力が供給されることにより点灯する放電灯と、
請求項1から5のいずれか1項に記載の点灯装置と、
が設けられていることを特徴とする灯具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−169080(P2012−169080A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−27562(P2011−27562)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】