説明

点灯装置及び照明装置

【課題】有機EL素子の発光寿命又は劣化を推定することのできる点灯装置及び照明装置を提供する。
【解決手段】発光部となる有機EL素子1と、有機EL素子1に駆動電圧を供給する点灯装置とから構成され、点灯装置は、極性が交互に反転する矩形波電圧を有機EL素子1に印加する電圧印加手段2と、有機EL素子1に内在する等価容量を検出する検出手段3とから構成され、有機EL素子1を流れる突入電流のピーク値から等価容量を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源として有機EL素子を用いた点灯装置及び照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、薄型の固体発光素子として有機EL素子の研究が盛んである。有機EL素子は薄型かつ軽量の発光素子を構成でき、また駆動電圧が数Vから十数V程度と従来主流の光源である放電灯と比べて駆動電圧が低いため、点灯装置を安価に構成でき、薄型かつ軽量の照明装置への応用が期待できる。ところが、現状の有機EL素子では、発光寿命の点で照明用途としては十分とは言えず、有機EL素子の長寿命化が必要不可欠であり、例えば特許文献1には、有機EL素子に逆極性の電圧を印加することで有機EL素子の発光寿命を長くすることができると記載されている。
【特許文献1】特許第2663648号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記従来例等によって有機EL素子の長寿命化を図ると共に、有機EL素子を照明用途で用いるためには有機EL素子の発光寿命が尽きる又は劣化した際に新しい有機EL素子と交換して使用することが想定され、発光寿命が尽きる又は劣化したことを使用者に知らせるようにすることが望ましい。そこで照明装置において有機EL素子の発光寿命又は劣化を検出することが必要と考えられる。
【0004】
本発明は、上記の点に鑑みて為されたもので、有機EL素子の発光寿命又は劣化を検出することのできる点灯装置及び照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、上記目的を達成するために、一乃至複数の有機EL素子から成る発光部に駆動電圧を供給する点灯装置であって、極性が交互に反転する矩形波電圧を発光部に印加する電圧印加手段と、有機EL素子に内在する等価容量を検出する検出手段とを備えたことを特徴とする。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、検出手段は、有機EL素子への印加電圧の立上がり時の突入電流波形を測定して等価容量を検出することを特徴とする。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1の発明において、検出手段は、有機EL素子への印加電圧の立下がり時の放電電流波形を測定して等価容量を検出することを特徴とする。
【0008】
請求項4の発明は、請求項1乃至3何れかの発明において、検出手段は、有機EL素子の等価容量の検出を印加電圧の一周期毎に行うことを特徴とする。
【0009】
請求項5の発明は、請求項1乃至3何れかの発明において、検出手段は、有機EL素子の等価容量の検出を有機EL素子を点灯してから所定の時間経過後に行うことを特徴とする。
【0010】
請求項6の発明は、請求項1乃至3何れかの発明において、検出手段は、有機EL素子の等価容量の検出を有機EL素子の点灯開始時から所定の時間だけ行うことを特徴とする。
【0011】
請求項7の発明は、請求項1乃至6何れかの点灯装置と、発光部とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、有機EL素子に内在する等価容量を検出する検出手段を備えたので、有機EL素子が劣化するのに伴って変化する等価容量を検出することで有機EL素子の発光寿命及び劣化を検出することができる。
【0013】
請求項2の発明によれば、検出手段は、有機EL素子への印加電圧の立上がり時の突入電流波形を測定して等価容量を検出するので、請求項1と同じ効果を奏する。
【0014】
請求項3の発明によれば、検出手段は、有機EL素子への印加電圧の立下がり時の放電電流波形を測定して等価容量を検出するので、請求項1と同じ効果を奏する。
【0015】
請求項4の発明によれば、検出手段は、有機EL素子の等価容量の検出を印加電圧の一周期毎に行うので、ノイズや雷サージによって有機EL素子が突然劣化した場合にも即座に劣化を検出することができる。
【0016】
請求項5の発明によれば、検出手段は、有機EL素子の等価容量の検出を有機EL素子を点灯してから所定の時間経過後に行うので、有機EL素子の温度がほぼ一定となった時点で検出を行うことで毎回安定した検出をすることができる。
【0017】
請求項6の発明によれば、検出手段は、有機EL素子の等価容量の検出を有機EL素子の点灯開始時から所定の時間だけ行うので、有機EL素子が発熱していない時点での検出を行うことで毎回安定した検出をすることができる。
【0018】
請求項7の発明によれば、請求項1乃至6何れかの効果を奏する照明装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の実施形態の説明の前に、本発明の前提を説明する。有機EL素子1は、その構造から並行平板コンデンサ構造を含むので、等価回路で表すとダイオードDとコンデンサCの並列回路に抵抗Rが直列に接続された状態となっている(図2参照)。したがって、図3に示すように、有機EL素子1の印加電圧Vと流れる電流Iを見ると、有機EL素子1には等価容量が内在するので、有機EL素子1の印加電圧Vの極性が反転する際に突入電流が生じる。この突入電流は、有機EL素子1の等価容量の大きさに関係するもので、図4に示すように、横軸に等価容量C、縦軸に突入電流のピーク値Ipをとって等価容量C及び突入電流のピーク値Ipの相関を見ると、等価容量がある閾値を超えると突入電流が等価容量の増加と共に増大することが実験の結果知られており、照明用途の場合、有機EL素子1の等価容量はこの閾値以上となることが経験上知られている。また、有機EL素子1に過大な電流を流し続けて素子を破壊した後に容量を測定すると、正常時の有機EL素子1の等価容量と比較して大きく減少することが知られている。故に、突入電流を測定することで有機EL素子1の等価容量を検出し、等価容量から有機EL素子1の発光寿命を検出することができる。
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。本実施形態は、発光部となる有機EL素子1と、有機EL素子1に駆動電圧を供給する点灯装置とから構成され、点灯装置は、極性が交互に反転する矩形波電圧を有機EL素子1に印加する電圧印加手段2と、有機EL素子1に内在する等価容量を検出する検出手段3と、検出手段3からの出力を受けて電圧印加手段2を制御する制御手段4とから構成される(図1参照)。尚、突入電流のピーク値Ipを抑えるためにインダクタンス値の小さいインダクタンスLを有機EL素子1に直列に接続している。
【0021】
電圧印加手段2は、整流回路2a、平滑コンデンサC0、降圧コンバータ回路2b、矩形波インバータ回路2cとから構成されており、交流電源PSからの交流電圧VSをダイオードブリッジから成る整流回路2aを用いて全波整流し、整流された脈流電圧を平滑コンデンサC0によって平滑し、平滑された電圧を降圧コンバータ回路2bを用いて有機EL素子1の駆動電圧V0まで降圧する。
【0022】
矩形波インバータ回路2cは、MOSFETのスイッチング素子Q1〜Q4で構成され、スイッチング素子Q1、Q2の直列回路と、スイッチング素子Q3、Q4の直列回路とを並列に接続しており、降圧コンバータ回路2bの出力端に接続される。有機EL素子1は、スイッチング素子Q1、Q2の接続点と、スイッチング素子Q3、Q4の接続点との間に接続され、降圧コンバータ回路2bの出力電圧V0が印加される。スイッチング素子Q1〜Q4は、後述する制御手段4からの制御信号によってオン/オフを切り替えることができ、これらスイッチング素子Q1〜Q4のオン/オフを制御することで有機EL素子1に順方向電圧及び逆方向電圧を交互に印加する。具体的には、スイッチング素子Q1及びQ4がオン、Q2及びQ3がオフの状態では有機EL素子1に順方向電圧が印加されて発光し、スイッチング素子Q1及びQ4がオフ、Q2及びQ3がオンの状態になると、有機EL素子1には逆方向電圧が印加されて消灯する。
【0023】
検出手段3は、有機EL素子1を流れる電流を検出する電流検出回路30と、有機EL素子1を流れる電流値と所定の電流値とを比較する比較回路31とから成る。電流検出回路30は、抵抗R0とボルテージフォロワ3aとコンデンサC1から構成され、電圧印加手段2の接地側に接続された抵抗R0における電圧降下分をボルテージフォロワ3aとその出力に接続されるコンデンサC1に入力することで、有機EL素子1を流れる突入電流を検出する。比較回路31はコンパレータ3bで構成されて電流検出回路30の出力と所定の電圧値とを比較するもので、比較対象となる所定の電圧値は、有機EL素子1の発光寿命又は劣化の程度から適当な値に設定している。電流検出回路30の出力が所定の電圧値を下回る場合はLレベルの信号を、所定の電圧値を上回る場合はHレベルの信号を制御手段4に出力するようにしている。尚、ボルテージフォロワ3aを積分回路に変更することで、図3における立上がり時から安定時までの電流積算値Sを検出するようにしてもよい。また、突入電流の立上がり時間を計測することで等価容量を検出するようにしても構わない。
【0024】
検出を行うタイミングとしては、有機EL素子1の印加電圧Vの極性が反転する毎に検出することが考えられる(図5参照)。このようにすれば、ノイズや雷サージによって突然有機EL素子1が劣化した場合にも劣化を即座に検出することができる。また、極性が反転する度に検出するのではなく、一定間隔毎に検出するようにしてもよい。
【0025】
他には、有機EL素子1が点灯してから所定の時間経過後に一定時間だけ検出するようにしてもよい。このようにすることで、有機EL素子1が点灯して発熱することで等価容量が変化する場合に対応し、有機EL素子1が一定の温度になってから検出を行うので安定した検出を行える。更に、有機EL素子1の点灯開始時から一定時間だけ検出するようにしてもよい。この場合は、有機EL素子1が発熱していない間に検出を行うので安定した検出を行える。
【0026】
また、突入電流は有機EL素子1の劣化を早める恐れがあるので、突入電流を極力抑えるように極性反転を緩やかにした矩形波電圧で有機EL素子1を点灯させ、検出時のみ突入電流が生じるように極性反転を急峻にした矩形波電圧を印加するようにしてもよい。
【0027】
制御手段4は、検出手段3の比較回路31からの出力を受けて電圧印加手段2を制御するもので、比較回路31からの出力がLレベルの場合、有機EL素子1は正常であるので通常の制御、すなわち有機EL素子1に順方向電圧と逆方向電圧を交互に印加するようにスイッチング素子Q1〜Q4を制御する。比較回路31からの出力がHレベルの場合、有機EL素子1の発光寿命が尽きる又は有機EL素子1が劣化しているので、通常の制御を停止して他の制御を行う。尚、この場合の制御方法としては、例えば有機EL素子1に供給する電圧を変化させることで発光寿命を延ばす又は発光効率の低下を補うようにすることが考えられる。また、発光寿命がどの状態にあるかを有機EL素子1の点灯状態で使用者に知らせるようにしたり、発光寿命が末期になると点灯を停止する又は最低限の照度で点灯するように制御してもよい。
【0028】
上述のように、有機EL素子1に内在する等価容量を検出することで、有機EL素子1の発光寿命及び劣化を検出することができるので、有機EL素子1の交換時期を使用者に知らせる等、検出した有機EL素子1の発光寿命及び劣化の状態に応じて電圧印加手段2の制御をすることができるので、照明装置の利便性を向上することができる。
【0029】
ところで、本実施形態では有機EL素子1の印加電圧Vの立上がり時の突入電流の波形から等価容量を検出しているが、印加電圧Vの立下がり時における放電電流波形から検出してもよい(図6参照)。また、有機EL素子1は、等価容量をある閾値以上に充電しないと発光せず、図7に示すように、有機EL素子1の印加電圧V、素子を流れる電流I、素子の光出力Vpの相関を見ると、発光までに要する時間Tと電流積算量Sに相関があることが実験で確認されている。したがって、発光までに要する時間Tを測定することで等価容量を検出するようにしてもよい。この場合、有機EL素子1の光出力Vpは、例えばフォトセンサを利用することで容易に電圧値に変換して検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施形態の照明装置を示す回路図である。
【図2】同上の有機EL素子の等価回路である。
【図3】同上の有機EL素子に立上がり時の電圧を印加した時の波形図である。
【図4】同上の有機EL素子の等価容量と突入電流のピーク値との相関図である。
【図5】同上の検出手段を動作させるタイミングを示す波形図である。
【図6】同上の有機EL素子に立ち下がり時の電圧を印加した時の波形図である。
【図7】同上の有機EL素子に立上がり時の電圧を印加した時の突入電流と発光までに要する時間とを示す波形図である。
【符号の説明】
【0031】
1 有機EL素子(発光部)
2 電圧印加手段
3 検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一乃至複数の有機EL素子から成る発光部に駆動電圧を供給する点灯装置であって、極性が交互に反転する矩形波電圧を発光部に印加する電圧印加手段と、有機EL素子に内在する等価容量を検出する検出手段とを備えたことを特徴とする点灯装置。
【請求項2】
前記検出手段は、有機EL素子への印加電圧の立上がり時の突入電流波形を測定して等価容量を検出することを特徴とする請求項1記載の点灯装置。
【請求項3】
前記検出手段は、有機EL素子への印加電圧の立下がり時の放電電流波形を測定して等価容量を検出することを特徴とする請求項1記載の点灯装置。
【請求項4】
前記検出手段は、有機EL素子の等価容量の検出を印加電圧の一周期毎に行うことを特徴とする請求項1乃至3何れか記載の点灯装置。
【請求項5】
前記検出手段は、有機EL素子の等価容量の検出を有機EL素子を点灯してから所定の時間経過後に行うことを特徴とする請求項1乃至3何れか記載の点灯装置。
【請求項6】
前記検出手段は、有機EL素子の等価容量の検出を有機EL素子の点灯開始時から所定の時間だけ行うことを特徴とする請求項1乃至3何れか記載の点灯装置。
【請求項7】
請求項1乃至6何れか記載の点灯装置と、発光部とを備えたことを特徴とする照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−149464(P2007−149464A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−341197(P2005−341197)
【出願日】平成17年11月25日(2005.11.25)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】