説明

点鼻剤

【課題】 ステロイドの点鼻時に惹起される刺激が緩和された点鼻剤を提供する。
【解決手段】 (A)ベクロメタゾン、その誘導体、それらの溶媒和物、並びにそれらの塩からなる群より選ばれる1種又は2種以上、(B)メントール、カンフル、ボルネオールおよびゲラニオールからなる群より選ばれる1種又は2種以上、並びに(C)クロロブタノール、リドカイン、ジブカイン、プロカイン、プロカインアミド、アミノ安息香酸メチル及びそれらの塩からなる群より選ばれる1種又は2種以上を含有させることにより、刺激が緩和された点鼻剤が得られる。さらに、アルギン酸プロピレングリコールなどの粘稠化剤を含有させることで、さらに刺激が緩和あるいは消失した点鼻剤が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刺激の緩和されたステロイド点鼻剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、花粉、ハウスダストなどを原因物質とするアレルギー性鼻炎患者が急増しており、抗アレルギー剤、ステロイド剤、ロイコトリエン拮抗剤、トロンボキサンA2拮抗剤などを内服あるいは点鼻によって投与する治療が行なわれている。これらの薬物投与は対症療法であり、花粉などの抗原を許容範囲以下まで除去できない環境下では、抗原が患者の身辺に存在する限り症状が現れるため、継続して使用しなければ十分な改善効果が得られない。
【0003】
現在、汎用されているステロイド化合物としては、フルニソリド、プロピオン酸ベクロメタゾン、プロピオン酸フルチカゾンなどが挙げられ、鼻炎症状に対して優れた薬効を示すことが知られているが、いずれの点鼻剤も投与時における刺激感が問題となっている。特に鼻腔内に炎症症状を呈している場合、鼻粘膜表面が非常に過敏になっていることから、刺激による不快感がさらに増強されるといった副作用が生じるため、点鼻時の刺激感を改善することは非常に重要な課題である。
ステロイド点鼻剤の刺激を緩和する方法としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール400およびポリソルベート20を含む刺痛のない経鼻投与に適した水性抗炎症ステロイド製剤(特許文献1:特許第2521291号公報)が開示されているが、メントール、クロロブタノールについては言及していない。
【0004】
また、メントールやクロロブタノールによって、非ステロイド性抗アレルギー薬による刺激や刺痛などの不快感を改善することが知られている。具体的には、非ステロイド性抗アレルギー薬として知られているスプラタスト、ペミロラスト、ケトチフェン、レボカバスチンおよびそれらの塩は、その化学的組成から刺激感などの不快な感覚を点鼻又は点眼の際に生じるが、清涼化剤であるメントール、カンフル、ハッカ油、ユーカリ油、ペパーミント油、クロロブタノールおよび乳酸メンチルを配合することにより使用感が改善されることが知られている(特許文献2:特開2002−205942号公報)。また、クロモグリク酸ナトリウムにメントールとクロロブタノールを配合した点眼剤は、眼痛を生じず、目のかゆみを長時間抑える特徴を有することが知られている(特許文献3:特開2002−128671号公報)。しかしこれらはいずれも非ステロイド性抗アレルギー薬の問題点を改善するものであり、フルニソリド等のステロイド化合物に関する検討は全くなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2521291号公報
【特許文献2】特開2002−205942号公報
【特許文献3】特開2002−128671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は安全性が高く、鼻腔内への刺激が顕著に改善された点鼻剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究した結果、フルニソリド、ベクロメタゾンおよびこれらの誘導体の少なくとも1種以上、メントール、カンフル、ボルネオールおよびゲラニオールからなる群より選ばれる1種又は2種以上およびクロロブタノール、リドカイン、ジブカイン、プロカイン、プロカインアミドおよびアミノ安息香酸メチルからなる群より選ばれる1種又は2種以上を配合することにより、投与時の刺激が顕著に緩和されることを知見した。さらに粘稠化剤を配合することによって、さらに使用感の優れた点鼻剤が得られることを知見した。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(4)に示す点鼻剤である。
(1)(A)フルニソリド、ベクロメタゾンおよびこれらの誘導体からなる群より選ばれる1種又は2種以上、(B)メントール、カンフル、ボルネオールおよびゲラニオールからなる群より選ばれる1種又は2種以上、および(C)クロロブタノール、リドカイン、ジブカイン、プロカイン、プロカインアミドおよびアミノ安息香酸メチルからなる群より選ばれる1種又は2種以上を含有する点鼻剤。
(2)さらに粘稠化剤を含有する(1)に記載の点鼻剤。
(3)粘稠化剤が、ポリエチレングリコール、グリセリン、ヒドロキシプロピルセルロースまたはアルギン酸プロピレングリコールの少なくとも1種以上である(1)または(2)に記載の点鼻剤。
(4)pHが4.0〜9.0の範囲にある(1)乃至(3)に記載の点鼻剤。
なお、本明細書中、特に言及しない限り、%はw/v%を意味するものとする。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、フルニソリド、ベクロメタゾンのいずれか1種以上を含有する点鼻剤に、メントール、カンフル、ボルネオールまたはゲラニオールのいずれか1種以上、クロロブタノール、リドカイン、ジブカイン、プロカイン、プロカインアミドまたはアミノ安息香酸メチルのいずれか1種以上を含有することによって、これらのステロイド化合物によって惹起される鼻粘膜への刺激感を伴う不快感が改善される。さらに、ポリエチレングリコール、グリセリン、ヒドロキシプロピルセルロース、アルギン酸プロピレングリコール等の粘稠化剤を含有させるとこの不快感をさらに軽減することができ、より好適な点鼻剤を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に用いるフルニソリド、ベクロメタゾンおよびこれらの誘導体は、公知の化合物であり、公知の方法により合成してもよく市販品として入手することもできる。これらのフルニソリド、ベクロメタゾンおよびこれらの誘導体は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0011】
本発明に用いるフルニソリドおよびベクロメタゾンそれぞれの誘導体としては、エステル誘導体[例えば、モノカルボン酸エステル(酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、フランカルボン酸、ピバル酸など)、多価カルボン酸エステル(フマル酸、マレイン酸など)、オキシカルボン酸エステル(乳酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸、マロン酸など)、有機スルホン酸エステル(メタンスルホン酸、トシル酸エステルなど)など]、エーテル誘導体[例えば、メチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、イソブチルエーテルなど]などが例示できる。
また、本発明に用いるフルニソリド、ベクロメタゾンおよびこれらの誘導体は、水和物などの溶媒和物の形態で使用することもできる。
本発明に用いるフルニソリド、ベクロメタゾンおよびこれらの誘導体のうち、特にフルニソリド、フルニソリド1/2水和物、プロピオン酸ベクロメタゾンが好ましい。
【0012】
本発明において、フルニソリド、ベクロメタゾンおよびこれらの誘導体は、医薬上、薬理学的に又は生理学的に許容される塩であっても良い。このような塩としては、有機酸塩[例えば、モノカルボン酸塩(酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、酪酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩など)、多価カルボン酸塩(フマル酸塩、マレイン酸塩など)、オキシカルボン酸塩(乳酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、マロン酸塩など)、有機スルホン酸塩(メタンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、トシル酸塩など)など]、無機酸塩(例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩など)、有機塩基との塩(例えば、メチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、ピペラジン、ピロリジン、トリピリジン、ピコリンなどの有機アミンとの塩など)、無機塩基との塩[例えば、アンモニウム塩;アルカリ金属(ナトリウム、カリウムなど)、アルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウムなど)、アルミニウムなどの金属との塩など]などが例示できる。
【0013】
本発明の点鼻剤中におけるフルニソリドの配合量は、フルニソリドおよびフルニソリド誘導体の総量として、通常0.001〜0.05%、好ましくは0.003〜0.03%、さらに好ましくは0.005〜0.015%である。また、ベクロメタゾンの配合量は、ベクロメタゾンおよびベクロメタゾン誘導体の総量として、通常0.006〜0.3%、好ましくは0.015〜0.15%、さらに好ましくは0.03〜0.1%である。
【0014】
本発明の点鼻剤のフルニソリド、ベクロメタゾンおよびそれらの誘導体の、1回当たりの各鼻腔への投与量は、効果を十分に発揮させつつも副作用の発現を回避する観点から、各成分の総量(例えば、フルニソリドおよびフルニソリド誘導体の総量)として、1〜100μgが好ましく、5〜50μgがより好ましく、10〜25μgがさらに好ましい。また、1日当たりの各鼻腔への投与量は10〜1000μgが好ましく、50〜800μgがより好ましく、100〜400μgがさらに好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0015】
本発明に用いるメントールまたはカンフルは日本薬局方に記載されている化合物であり、ボルネオールまたはゲラニオールは医薬品添加物事典に記載されている化合物であって、市販品として入手することができる。また、メントール、カンフル、ボルネオールおよびゲラニオールは天然物由来または合成品であっても良く、d体、l体、dl体のいずれであっても良い。さらに、植物から単離精製せず、ハッカ油、スペアミント油、ペパーミント油、ミント油といったメントール、カンフル、ボルネオールおよびゲラニオールを含有する精油として使用しても良い。
本発明の点鼻剤中におけるメントール、カンフル、ボルネオールおよびゲラニオールの配合量は、各成分の総量として、0.0001〜0.5%が好ましく、0.001〜0.1%がより好ましく、0.003〜0.05%がさらに好ましい。
【0016】
本発明に用いるクロロブタノール、リドカイン、ジブカイン、プロカイン、プロカインアミドおよびアミノ安息香酸メチルは、日本薬局方に記載されている化合物であって、公知の方法により合成してもよく市販品としても入手することができる。
本発明において、リドカイン、ジブカイン、プロカイン、プロカインアミドおよびアミノ安息香酸メチルは、医薬上、薬理学的に又は生理学的に許容される塩であっても良い。このような塩としては、無機酸塩(例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩など)などが例示でき、好ましくは塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩であり、特に好ましくは塩酸塩であり、具体的には塩酸リドカイン等が挙げられる。
本発明の点鼻剤中におけるクロロブタノール、リドカイン、ジブカイン、プロカイン、プロカインアミドおよびアミノ安息香酸メチルの配合量は、0.01〜5.0%が好ましく、0.05〜1%がより好ましく、0.1〜0.5%がさらに好ましい。
【0017】
本発明の点鼻剤に対し、粘稠化剤を配合すると、フルニソリドおよびベクロメタゾンの鼻粘膜への刺激をさらに改善し、かつ点鼻後の液ダレを防止できることから、より好ましい点鼻剤を提供することができる。粘稠化剤としては、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、セルロース誘導体(ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロースエーテル類又はこれらの塩など)、アルギン酸プロピレングリコール、アラビアゴム末、カルメロースナトリウム、キサンタンガム、グリセリン、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、シクロデキストリン、トラガント末など、マクロゴール4000などが例示でき、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース、アルギン酸プロピレングリコール、グリセリンなどが好ましい。
本発明の点鼻剤中における粘稠化剤の配合量は、0.001〜20%が好ましく、0.005〜18%がより好ましく、0.01〜15%がさらに好ましい。
【0018】
本発明の点鼻剤は、滴下式、塗布式、スプレー式等の種々の形態をとることができる。また、スプレー式の場合には、容器に付属されたポンプを手動で動かして液剤を噴出する機構のある手動ポンプ式点鼻剤、圧縮ガス(空気や酸素、窒素、炭酸や、混合ガス)等の噴射剤を容器内に充填しておいて容器に付属して設けた弁を動かして液剤を自動噴出する機構のあるエアゾール式点鼻剤なども含む。
【0019】
本発明の点鼻剤は、鼻腔粘膜に適用した場合に不快な刺激を生じにくくするために、pHを調整することができ、通常4.0〜9.0、好ましくは、4.0〜7.5、より好ましくは4.5〜7.0、特に好ましくは4.5〜6.5である。pH調整剤としては、ホウ酸、ホウ砂、リン酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、グルコン酸、フマル酸、乳酸、クエン酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、グルコノラクトン、酢酸アンモニウム、塩酸、硫酸、ポリリン酸、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、リン酸水素カリウム、乳酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミンなどが例示できる。
また、本発明の点鼻剤のpH調整は緩衝剤を用いてもよい。緩衝剤としては、公知のホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、炭酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、グッド緩衝剤などが挙げられ、好ましくは、グッド緩衝剤、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、炭酸緩衝剤またはクエン酸緩衝剤、特に好ましくは、グッド緩衝剤、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤またはクエン酸緩衝剤である。「グッド緩衝剤」とは、緩衝能を有する双性イオン構造のアミノエタンスルホン酸誘導体及びアミノプロパンスルホン酸誘導体の総称であり、グッドらにより考案された緩衝剤である。グッド緩衝剤としては、MES、MOPS(3−モルホリノプロパンスルホン酸)、PIPES、HEPES(2−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸)、BES、TESなどが挙げられる。ホウ酸緩衝剤としては、ホウ酸、ホウ酸アルカリ金属塩、ホウ酸アルカリ土類金属塩などのホウ酸塩、ホウ酸及びホウ酸塩の組み合わせなどが挙げられる。リン酸緩衝剤としては、リン酸、リン酸アルカリ金属塩、リン酸アルカリ土類金属塩などのリン酸塩、リン酸及びリン酸塩の組み合わせなどが挙げられる。クエン酸緩衝剤としては、クエン酸、クエン酸アルカリ金属塩、クエン酸アルカリ土類金属塩などのクエン酸塩、クエン酸及びクエン酸塩の組み合わせなどが挙げられる。また、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤又はクエン酸緩衝剤として、ホウ酸塩、リン酸塩又はクエン酸塩の水和物を用いてもよい。より具体的には、ホウ酸又はその塩(ホウ酸ナトリウム、テトラホウ酸カリウム、メタホウ酸カリウムなど)、リン酸又はその塩(リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウムなど)、炭酸又はその塩(炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムなど)、クエン酸またはその塩(クエン酸一ナトリウム、クエン酸三ナトリウムなど)などが挙げられる。
【0020】
さらに、本発明の点鼻剤には、本発明の効果を妨げない範囲で、必要に応じて点鼻剤に用いられる有効成分、防腐剤、非イオン性界面活性剤、香料等を1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0021】
有効成分:エピネフリン、エフェドリン、テトラヒドロゾリン、ナファゾリン、フェニレフリン、メチルエフェドリン、シュードエフェドリンなどの血管収縮剤、イプロヘプチン、ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミンなどの抗ヒスタミン剤、アクリノール、セチルピリジニウム、ベンザルコニウム、ベンゼトニウム、クロルヘキシジンなどの殺菌剤、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール、アラントイン、アズレン、アズレンスルホン酸、グアイアズレン、トラネキサム酸、ε−アミノカプロン酸、ベルベリン、リゾチーム、甘草などの消炎剤、亜鉛華、乳酸亜鉛、硫酸亜鉛などの収斂剤、インドメタシン、イブプロフェン、イブプロフェンピコノール、ブフェキサマク、フルフェナム酸ブチル、ベンダザック、ピロキシカム、ケトプロフェン、フェルビナク、紫根、セイヨウトチノキ、およびこれらの塩など
【0022】
防腐剤:安息香酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸エステル、ソルビン酸カリウム、フェノキシエタノール、ヘキサンジオール、ホウ酸、ホウ砂など
【0023】
非イオン性界面活性剤:ポリオキシエチレン(POE)−ポリオキシプロピレン(POP)ブロックコポリマー(例えば、ポロクサマー407、ポロクサマー235、ポロクサマー188、ポロキサミンなど);モノラウリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート20)、モノオレイン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート80)などのPOEソルビタン脂肪酸エステル類;POE(60)ヒマシ油、POE(60)硬化ヒマシ油などのPOEヒマシ油又は硬化ヒマシ油;POE(9)ラウリルエーテルなどのPOEアルキルエーテル類;POE(20)POP(4)セチルエーテルなどのPOE・POPアルキルエーテル類;POE(10)ノニルフェニルエーテルなどのPOEアルキルフェニルエーテル類など
【0024】
香料:テルピネオール、カジネン、アネソール、フェランドレン、サフロール、オイゲノール、リナロール、シンナムアルデヒド、シトロネロール、リモネン、ネロール、エストラゴール、パチョリアルコール、チモール、ベンジルアセテート、リナリルアセテート、ジャスモン、インドール、ミントラクトン、ピペリトン、オクタノール、ミルテノール、カルバクロール、エチルフラン、オシメン、シネオール、ファルネソール、グアイオール、サンタロール、クミンアルデヒド、セドロール、サンタロール、ツヨプセン、グロブロール、セドレン、エピグロブロール、精油など
【0025】
本発明の点鼻剤の製造方法は、特に制限されるものではなく公知の方法によって製造することができる。例えば、上記各成分を、常法により水または温水中、必要に応じて油性基剤中に、溶解・懸濁させた後、pHや浸透圧などを適宜調整して液剤を製し、さらに必要に応じて無菌ろ過を行い、点鼻用容器に充填して製造することができる。
【実施例】
【0026】
以下、実施例および比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0027】
実施例1
フルニソリド1/2水和物 0.0255g
l−メントール 0.03g
クロロブタノール 0.2g
ポリエチレングリコール 10g
塩化ベンザルコニウム 0.01g
プロピレングリコール 20g
ポリソルベート80 0.2g
pH調製剤 適量
精製水 適量
100ml
上記の各成分を秤量し適当量の精製水に溶解し、pHを5.5に調整した後、点鼻容器に充填して点鼻剤を得た。
【0028】
実施例2
フルニソリド 0.02g
l−メントール 0.02g
クロロブタノール 0.3g
リドカイン 0.1g
グリセリン 5g
塩化ベンザルコニウム 0.01g
プロピレングリコール 10g
ポリソルベート80 0.1g
pH調製剤 適量
精製水 適量
100ml
上記の各成分を秤量し適当量の精製水に溶解し、pHを5.5に調整した後、点鼻容器に充填して点鼻剤を得た。
【0029】
実施例3
フルニソリド 0.0125g
l−メントール 0.01g
クロロブタノール 0.1g
アルギン酸プロピレングリコール 0.1g
塩酸ナファゾリン 0.05g
塩化ベンゼトニウム 0.01g
プロピレングリコール 15g
ポリソルベート80 0.1g
pH調製剤 適量
精製水 適量
100ml
上記の各成分を秤量し適当量の精製水に溶解し、pHを5.5に調整した後、点鼻容器に充填して点鼻剤を得た。
【0030】
実施例4
フルニソリド 0.0125g
d−カンフル 0.01g
塩酸ジブカイン 0.5g
アルギン酸プロピレングリコール 0.1g
塩酸テトラヒドロゾリン 0.05g
塩化セチルピリジニウム 0.025g
プロピレングリコール 15g
ポリソルベート80 0.1g
pH調製剤 適量
精製水 適量
100ml
上記の各成分を秤量し適当量の精製水に溶解し、pHを5.5に調整した後、点鼻容器に充填して点鼻剤を得た。
【0031】
実施例5
フルニソリド 0.0125g
d−ボルネオール 0.03g
塩酸プロカイン 0.5g
アルギン酸プロピレングリコール 0.1g
塩酸シュードエフェドリン 0.03g
アクリノール 0.05g
プロピレングリコール 15g
ポリソルベート80 0.1g
pH調製剤 適量
精製水 適量
100ml
上記の各成分を秤量し適当量の精製水に溶解し、pHを5.5に調整した後、点鼻容器に充填して点鼻剤を得た。
【0032】
実施例6
プロピオン酸ベクロメタゾン 0.05g
プロピオン酸フルチカゾン 0.026g
l−メントール 0.03g
クロロブタノール 0.2g
ヒドロキシプロピルセルロース 0.1g
塩化ベンザルコニウム 0.01g
プロピレングリコール 10g
ポリソルベート80 0.1g
pH調製剤 適量
精製水 適量
100ml
上記の各成分を秤量し適当量の精製水に溶解し、pHを6.0に調整した後、点鼻容器に充填して点鼻剤を得た。
【0033】
実施例7
フルニソリド 0.0063g
プロピオン酸フルチカゾン 0.013g
dl−カンフル 0.01g
塩酸リドカイン 0.3g
ヒドロキシプロピルセルロース 0.1g
塩化ベンザルコニウム 0.01g
プロピレングリコール 10g
ポリソルベート80 0.1g
pH調製剤 適量
精製水 適量
100ml
上記の各成分を秤量し適当量の精製水に溶解し、pHを6.0に調整した後、点鼻容器に充填して点鼻剤を得た。
【0034】
実施例8
プロピオン酸ベクロメタゾン 0.1g
l−メントール 0.01g
クロロブタノール 0.1g
アルギン酸プロピレングリコール 0.1g
塩化ベンゼトニウム 0.01g
プロピレングリコール 8g
ポリソルベート80 0.2g
pH調製剤 適量
精製水 適量
100ml
上記の各成分を秤量し適当量の精製水に溶解し、pHを6.0に調整した後、点鼻容器に充填して点鼻剤を得た。
【0035】
実施例9
プロピオン酸ベクロメタゾン 0.1g
dl−カンフル 0.01g
リドカイン 0.5g
アルギン酸プロピレングリコール 0.1g
塩化ベンゼトニウム 0.01g
プロピレングリコール 8g
ポリソルベート80 0.2g
pH調製剤 適量
精製水 適量
100ml
上記の各成分を秤量し適当量の精製水に溶解し、pHを6.0に調整した後、点鼻容器に充填して点鼻剤を得た。
【0036】
試験例1 刺激感の評価
表1に記載の処方に従い、各成分を精製水に溶解しpH調整後、全量を100mLとし、点鼻スプレー容器に充填し点鼻剤を調製した。これを6人のパネラーに1回100μlを点鼻し、点鼻直後に感じる刺激感を評価した。評価は下記4段階評価基準に従って採点してもらい、その平均値をスコアとして算出した。
3:非常に痛い、2:痛い、1:わずかに痛い、0:痛みがない
結果を表1に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
比較例1、2から、フルニソリドは非常に刺激感が強く、比較例3からクロロブタノールを配合するとその刺激は多少緩和されることがわかる。また、比較例4から、メントールのみを配合すると刺激感はさらに強くなったが、ステロイドにクロロブタノールとメントールを同時に配合した実施例10は、驚くべきことに刺激の程度が比較例1と同程度にまで抑制された。
したがって、ステロイド化合物は単独では使用感に問題があり、メントールの単独配合ではより刺激を増大させるなど、非ステロイド性抗アレルギー剤とは異なる挙動を示すことが明らかになった。
【0039】
試験例2 刺激感の評価:粘稠化剤の影響
実施例10に各種粘稠化剤を配合した場合の刺激感について、さらに評価を行った。表2に記載の処方に従い、試験例1と同様に点鼻剤を調製し、これを6人のパネラーに1回100μlを点鼻し、試験例1と同様の基準にて評価した。さらに刺激の持続する時間についても測定し、6人の平均値を平均持続時間として算出した。結果を表2に示す。
【0040】
【表2】

【0041】
実施例11、12から、ポリエチレングリコール、グリセリンを配合した場合は、刺激のスコアは変化しなかったが刺激の持続時間は短くなり、実施例10より使用感のよい点鼻剤との評価を得た。また、実施例13、14から、ヒドロキシプロピルセルロース、アルギン酸プロピレングリコールを配合した場合は、刺激が完全に消失し、非常に使用感に優れた点鼻剤との評価を得た。
【0042】
試験例3 刺激感の評価
表3に記載の処方に従い、試験例1と同様に点鼻剤を調製し、これを6人のパネラーに1回100μlを点鼻し、試験例1と同様の基準にて評価した。
また、刺激の持続する時間についても測定し、6人の平均値を平均持続時間として算出した。
結果を表3に示す。
【0043】
【表3】

【0044】
比較例5、6から、プロピオン酸ベクロメタゾンはフルニソリドよりもさらに非常に刺激感が強く、比較例7、8からリドカインまたはメントール、カンフルを配合するとその刺激は多少緩和されることがわかる。一方、ステロイドにリドカインとメントール、カンフルを同時に配合した実施例15は、驚くべきことに刺激が消失していた。
また、プロピオン酸ベクロメタゾンには独特のにおいがあるが、メントール、カンフルを配合することで、製剤のにおいについても改善することができた。
【0045】
以上の結果から、特定のステロイド化合物を含有する点鼻剤の投与時に生じる刺激感を、クロロブタノール、リドカインまたはジブカインなど、およびメントールまたはカンフルなどを配合することで緩和できることを知見した。
さらに、ポリエチレングリコール、グリセリン、ヒドロキシプロピルセルロース、アルギン酸プロピレングリコールなどの粘稠化剤を配合することにより、より使用感の良い点鼻剤が得られることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ベクロメタゾン、その誘導体、それらの溶媒和物、並びにそれらの塩からなる群より選ばれる1種又は2種以上、(B)メントール、カンフル、ボルネオールおよびゲラニオールからなる群より選ばれる1種又は2種以上、並びに(C)クロロブタノール、リドカイン、ジブカイン、プロカイン、プロカインアミド、アミノ安息香酸メチル及びそれらの塩からなる群より選ばれる1種又は2種以上を含有する点鼻剤。


【公開番号】特開2010−280722(P2010−280722A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208416(P2010−208416)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【分割の表示】特願2004−127541(P2004−127541)の分割
【原出願日】平成16年4月23日(2004.4.23)
【出願人】(000115991)ロート製薬株式会社 (366)
【Fターム(参考)】