説明

点鼻薬容器

【課題】使い勝手を向上させる。
【解決手段】容器本体10と、ポンプ機構20と、ノズル部材30とを組み合わせ、ノズル部材30は、上面の偏心位置に噴霧ノズル31を立設し、親指または人差指でポンプ機構20を押下げ操作する操作面35を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鼻孔を介して薬液を投与する点鼻薬容器であって、特に使い勝手を向上させた点鼻薬容器に関する。
【背景技術】
【0002】
点鼻薬は、一般に、鼻孔の奥の鼻孔内粘膜に対して投与する必要があり、薬液の投与には、専用の点鼻薬容器が用いられる。
【0003】
従来の点鼻薬容器は、薬液を収納する容器本体の口部にポンプ機構を装着し、ポンプ機構の出口側にアダプタを連結して構成されている(たとえば特許文献1)。そこで、このものは、アダプタの先端部を鼻孔に差し入れ、容器本体の底部に掛けた親指と、アダプタの中途の指掛け部に掛けた人差指、中指とによりポンプ機構を伸縮させるようにして作動させることにより、容器本体内の薬液がアダプタの先端のノズル孔から霧状に噴霧され、鼻孔内に薬液を投与することができる。
【特許文献1】実開平3−129153号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかる従来技術によれば、使用者は、親指と、人差指、中指とによって全体を保持した上、アダプタの先端部を鼻孔内に差し入れてポンプ機構を作動させる必要があるから、手を不自然に屈曲させて使用しなければならず、老人や、手の小さい幼児等の使用者にとって、必ずしも使用し易いとはいえないという問題があった。また、親指を容器本体の底部に掛けるため、容器本体の長さに限界があり、容器容量を十分大きくすることができないという問題もあった。
【0005】
そこで、この発明の目的は、かかる従来技術の問題に鑑み、容器本体を上向きに把持しながら、親指または人差指で容易にポンプ機構を作動させることができ、誰れでも簡単に使用することができる上、必要に応じて容器容量を十分大きくすることができる点鼻薬容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するためのこの発明の構成は、薬液を収容する容器本体と、容器本体の口部に装着するポンプ機構と、ポンプ機構の先端に連結するノズル部材と、ノズル部材の上面に上向きに立設する噴霧ノズルとを備えてなり、ノズル部材は、容器本体を正立状態に把持する手の親指または人差指によりポンプ機構を押下げ操作する操作面を上面に形成することをその要旨とする。
【0007】
なお、噴霧ノズルは、ノズル部材の上面の偏心位置に立設することができ、ノズル部材の天面には、ポンプ機構からの薬液を噴霧ノズルに導く径方向のガイド溝を形成することができる。
【0008】
また、ガイド溝は、ノズル部材のスカート部に嵌め込む連結部材の上面により薬液の流路を形成してもよく、連結部材の上端部には、ノズル部材の天面に垂設するリングを押し拡げるようにして嵌合させる円筒部を形成してもよい。
【0009】
さらに、操作面には、滑り止めを形成することができる。
【発明の効果】
【0010】
かかる発明の構成によるときは、噴霧ノズルは、ノズル部材の上面に上向きに立設されており、利き手の親指または人差指を除く4本の指で容器本体を正立状態に把持すれば、噴霧ノズルの先端を容易に鼻孔内に差し入れ、親指または人差指でノズル部材の上面の操作面を繰返し押下げ操作することにより、ポンプ機構を作動させて噴霧ノズルからの薬液を鼻孔内に噴霧し、投与することができる。なお、ポンプ機構の作動軸は、上下方向であり、内蔵の復帰ばねを介し、ノズル部材を繰返し押下げ操作するだけで薬液を噴霧ノズルの先端から霧状に噴出させることができる。また、ノズル部材は、適当な連結部材を介して、薬液が送り出されるポンプ機構の先端に連結するものとする。
【0011】
ノズル部材の上面の偏心位置に噴霧ノズルを立設すれば、親指または人差指による操作面の押下げ位置をノズル部材の軸心位置に一致させ、または十分近接させることができ、ポンプ機構を一層円滑に駆動操作することができる。なお、このとき、ノズル部材の天面には、ポンプ機構からの薬液を偏心位置の噴霧ノズルに導くために、径方向のガイド溝を形成するものとする。
【0012】
ガイド溝は、ノズル部材に嵌め込む連結部材の上面により薬液の流路を形成することによって、ポンプ機構からの薬液を噴霧ノズルに確実に導くことができる。また、連結部材の上端部の円筒部は、ノズル部材の天面のリングに弾発的に嵌合させることにより、薬液の漏れを確実に防止する。
【0013】
操作面に形成する滑り止めは、押下げ操作中の親指または人差指を操作面上に安定に位置決めする。ただし、滑り止めの形態は、平行リブ、交差リブ、円形リブなどの他、多数の小突起群を含む任意の形態を選択してよいものとする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を以って発明の実施の形態を説明する。
【0015】
点鼻薬容器は、容器本体10と、ポンプ機構20と、ノズル部材30と、ノズル部材30の上面に立設する噴霧ノズル31とを主要部材としてなる(図1、図2)。ただし、図1(A)、(B)は、それぞれ一部破断全体側面図、上面図である。容器本体10には、ノズル部材30を覆う着脱式のキャップ10aが付属している。
【0016】
容器本体10は、雄ねじ11a付きの口部11を有する円筒容器であり、所定量の薬液を内部に収容することができる。容器本体10は、老人、幼児などを含む使用者が片手で正立状態に握って把持し得るサイズに設定されている。
【0017】
ポンプ機構20は、着脱用のアダプタ21を介して容器本体10の口部11に装着されている。すなわち、ポンプ機構20は、アダプタ21のみが外部に露出しており、アダプタ21以外の主要部材は、すべて容器本体10、アダプタ21に収納されている。
【0018】
ポンプ機構20は、アダプタ21と、アダプタ21を介して容器本体10の口部11に固定する縦長のケーシング22と、ケーシング22に上下動自在に収納するピストン23と、ピストン23の上部に連結する操作ロッド24とを一体に組み立てて構成されている。なお、ケーシング22内には、ピストン23を上方に付勢する復帰ばね25が内装されており、ケーシング22の底部には、容器本体10の底部に到達する薬液の吸引パイプ26が連結されている。
【0019】
ピストン23の下端部には、上向きのフレア23aが形成されており、フレア23aは、ピストン23の上下動に従ってケーシング22の内面に沿って摺動する。また、ケーシング22の上端部には、大径のカップ部22aが形成され、カップ部22aの上端縁には、外フランジ22bが形成されている。操作ロッド24の下端部には、カップ部22aの内面に沿って摺動する下向きのフレア24aが形成されている。ピストン23の下部には、軸穴23bが形成されており、軸穴23bの上部は、ピストン23に装着する可撓性の弁体23cを介してカップ部22a内に開口している。なお、カップ部22aの上部には、容器本体10内に連通する戻し口22c、22cが形成されている。ピストン23の上部は、操作ロッド24の下向き段付きの軸孔24bに上向きに挿入され、上端部のテーパ部23dを介して位置決めされている。
【0020】
アダプタ21の外周下半部には、ローレット21a、21a…が形成され、内周下半部には、口部11の雄ねじ11aに適合する雌ねじ21bが形成されている。ケーシング22は、雄ねじ11a、雌ねじ21bを介してアダプタ21を口部11に装着することにより、パッキン27aを介して上端の外フランジ22bを口部11の上端面に固定することができる。なお、アダプタ21の内部は、中間壁21cを介して上下に2分されており、操作ロッド24は、シール材27bを介して中間壁21cを下から上に摺動自在に貫通している。また、操作ロッド24の上端部には、連結部材32を介してノズル部材30が連結され、操作ロッド24の軸孔24bは、連結部材32の中心孔32aに連通している。連結部材32は、ノズル部材30の下部のスカート部33に弾発的に嵌め込まれ、ノズル部材30と一体になっている(図2、図3)。
【0021】
連結部材32は、上部外周の係合リブ32b、ノズル部材30のスカート部33の内周の係合リブ33aを介してノズル部材30から抜止めされている。なお、ノズル部材30のスカート部33内には、連結部材32の上端の段部32cに弾発的に係合する位置決め用のリング33bが垂設されている。また、連結部材32の上端部には、円筒部32eが形成されている。
【0022】
連結部材32は、操作ロッド24の上端部を下向きの内筒32dに差し込むことにより、操作ロッド24、ノズル部材30を一体に連結している。なお、操作ロッド24の上端部外周、内筒32dの内周には、互いに係合する係合リブがそれぞれ複数段に形成され、連結部材32、ノズル部材30が操作ロッド24から不用意に外れないように抜止めされている。
【0023】
ノズル部材30の天面には、浅いガイド溝34が径方向に形成されている。ガイド溝34の一端は、ノズル部材30の中心において、連結部材32の中心孔32aを介して操作ロッド24の軸孔24bに連通しており、他端は、ノズル部材30上の噴霧ノズル31の軸孔31aの下端に連通している。なお、噴霧ノズル31は、ノズル部材30の上面の偏心位置に立設されている(図1、図2)。
【0024】
ガイド溝34は、ノズル部材30に嵌め込む連結部材32の上面により、連結部材32の中心孔32aから噴霧ノズル31の軸孔31aに至る薬液の流路を形成する。また、連結部材32の上端部の円筒部32eは、ノズル部材30のリング33bを押し拡げるようにして嵌合させることにより、薬液の漏れを防止することができる。
【0025】
噴霧ノズル31の軸孔31aは、下から上に複数段階に内径を大きく設定されている。軸孔31aの上部には、軸方向にロッド31bが挿入され、軸孔31aの先端には、ノズルチップ31cが取り付けられている。ロッド31bは、軸孔31aの下端から流入する薬液の流速を高くしてノズルチップ31cから霧状に噴出させることができ、かかる噴霧ノズル31の詳細構造は、たとえば特開平6−245975号公報に開示されている。
【0026】
ノズル部材30の上面には、ポンプ機構20を押下げ操作する操作面35が形成されている。操作面35には、たとえば平行リブ35a、35a…による滑り止めが施されている。そこで、操作面35を図2の矢印K方向に押すと、連結部材32は、ノズル部材30のスカート部33と一体のままアダプタ21内に下降し、ケーシング22内の復帰ばね25を押し縮めながら、操作ロッド24、ピストン23を下降させることができる。また、ピストン23、操作ロッド24、連結部材32、ノズル部材30は、矢印K方向の押圧力を除去することにより、復帰ばね25を介して元の上昇位置に自動復帰する。
【0027】
かかる点鼻薬容器は、キャップ10aを取り外すことにより、鼻孔内に薬液を噴霧することができる(図4)。すなわち、親指を除く4本の手指により容器本体10を正立状態に把持して噴霧ノズル31の先端を鼻孔内に差し込み、親指によりノズル部材30の操作面35上に繰り返し押圧力を加えれば、ポンプ機構20は、吸引パイプ26を介して容器本体10内の薬液を吸引し、ノズル部材30の噴霧ノズル31の先端から霧状に噴出させることができる。なお、噴霧ノズル31は、基端部の外形を上から下に滑らかに細径に絞ることにより、必要十分な面積の操作面35を形成することができる。
【0028】
ポンプ機構20において、ピストン23の上向きのフレア23aは、ピストン23が上昇する際に薬液の吸引用の逆止弁として働き、ピストン23上の弁体23cは、ピストン23が下降する際に、ケーシング22内の薬液をカップ部22a内に流出させる。また、操作ロッド24の下向きのフレア24aは、操作ロッド24、ピストン23が下降する際に、フレア24a内の通路を介してカップ部22a内の薬液を軸孔24bに送り込み、連結部材32の中心孔32a、ノズル部材30のガイド溝34、噴霧ノズル31の軸孔31aを経てノズルチップ31cに送出する。そこで、薬液は、ノズルチップ31cのノズル孔から噴出され、噴霧ノズル31の先端から鼻孔内に霧状に噴霧される。なお、カップ部22aの戻し口22c、22cは、操作ロッド24、ピストン23の下降時に、カップ部22a内のエアまたは薬液の一部を容器本体10に戻す。また、軸孔24b内には、カップ部22aからの薬液を連結部材32、ノズル部材30に向けて上向きに送出するために、ピストン23との間に十分な隙間が形成されている。
【0029】
使用後の点鼻薬容器は、キャップ10aを装着することにより、全体をコンパクトに収容し、便利に携帯することができる。
【0030】
以上の説明において、容器本体10は、人差指を除く4本の指により正立状態に把持してもよい(図5)。このとき、人差指は、ノズル部材30の操作面35に対して横から掛け、人差指を介して操作面35を繰返し押下げ操作すればよい。
【0031】
また、噴霧ノズル31をストレートの円柱状にしてノズル部材30の上面の軸心上に立設し(図6)、ノズル部材30の径方向に一部突出させるようにして操作面35を形成してもよい。なお、図6のアダプタ21は、操作面35が突出する側の上端縁を低く、反対側を十分高く滑らかに斜めに形成することにより、ノズル部材30を上下に円滑に操作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】全体構成説明図
【図2】要部拡大縦断面図
【図3】一部破断要部拡大分解斜視図
【図4】使用状態説明図(1)
【図5】使用状態説明図(2)
【図6】他の実施の形態を示す図4相当図
【符号の説明】
【0033】
10…容器本体
11…口部
20…ポンプ機構
30…ノズル部材
31…噴霧ノズル
32…連結部材
32e…円筒部
33…スカート部
33b…リング
34…ガイド溝
35…操作面

特許出願人 伸晃化学株式会社
代理人 弁理士 松 田 忠 秋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液を収容する容器本体と、該容器本体の口部に装着するポンプ機構と、該ポンプ機構の先端に連結するノズル部材と、該ノズル部材の上面に上向きに立設する噴霧ノズルとを備えてなり、前記ノズル部材は、前記容器本体を正立状態に把持する手の親指または人差指により前記ポンプ機構を押下げ操作する操作面を上面に形成することを特徴とする点鼻薬容器。
【請求項2】
前記噴霧ノズルは、前記ノズル部材の上面の偏心位置に立設することを特徴とする請求項1記載の点鼻薬容器。
【請求項3】
前記ノズル部材の天面には、前記ポンプ機構からの薬液を前記噴霧ノズルに導く径方向のガイド溝を形成することを特徴とする請求項2記載の点鼻薬容器。
【請求項4】
前記ガイド溝は、前記ノズル部材のスカート部に嵌め込む連結部材の上面により薬液の流路を形成することを特徴とする請求項3記載の点鼻薬容器。
【請求項5】
前記連結部材の上端部には、前記ノズル部材の天面に垂設するリングを押し拡げるようにして嵌合させる円筒部を形成することを特徴とする請求項4記載の点鼻薬容器。
【請求項6】
前記操作面には、滑り止めを形成することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか記載の点鼻薬容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−125079(P2009−125079A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−299675(P2007−299675)
【出願日】平成19年11月19日(2007.11.19)
【出願人】(000190068)伸晃化学株式会社 (55)
【Fターム(参考)】