説明

無塵服の縫製方法

【課題】異物や塵埃の混入による製品不良を防ぐために着用される無塵服において、長期の着用や度々の洗濯にもかかわらず、布地裁断面から糸ケバの発生を半永久的に防止できる無塵服の縫製方法を提供する。
【解決手段】縫合すべき布地パーツの縫代部を重ね合わせ、仮縫合し、重合された布地パーツの両縁辺を超音波裁断するとともに裁断面に沿って超音波縫合する。更に、超音波縫合された縫代部を被包するよう裁断面よりバイアステープを縫着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療機器、製薬、食品、半導体、電子機器などの製造工程において着用される無塵服の縫製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療機器、製薬、食品、半導体、電子機器などの製造工程においては、異物や塵埃の混入による製品不良を防ぐため、作業者には図6に示すような専用のクリーンルーム用衣服(無塵服)の着用が義務づけられている。
衣服の縫製は、布地素材の裁断及び裁断された布地パーツの縫合によるものであるが、この際、鋼刃カッター、糸や針を用いた通常の裁断機やミシンによると、着用中又は洗濯中に生じる捻れ、伸縮、摩擦などによって縫合箇所がほずれたり裁断面から糸ケバが発生してしまうことは素材特性からして不可避なことである。
【0003】
そこで、従来、裁断面をかがり縫いしたり、包み込み縫いしたり、あるいは、裁断面をバイアステープで被包する等の工夫がなされているが、長期の使用や度々の洗濯によって縫合箇所がほずれたり裁断面から糸ケバが発生したりしてしまい十分な効果が得られず、無塵服自体が塵埃の発生源となっている例もしばしば見られるところである。
【特許文献1】特開平5−156566号公報
【特許文献2】特開平8−232149号公報
【特許文献3】特開2000−170015号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来の無塵服のかかえる上記問題点に鑑みなされたもので、半永久的に布地裁断面からの糸ケバの発生がない無塵服の縫製手段を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、請求項1の発明にあっては、縫合すべき布地パーツの縫代部を揃え重ね合わせて仮縫合し、重合された布地パーツの両縁辺を超音波裁断するとともに裁断面に沿って超音波縫合することを特徴とした。
【0006】
また、請求項2の発明にあっては、超音波縫合された縫代部を被包するよう裁断面よりバイアステープを縫着することを特徴とした。
【発明の効果】
【0007】
本発明の縫製方法によれば、布地裁断面が超音波裁断により融着されているため確実に糸ケバの発生を防止することができ、また、縫合箇所が超音波縫合によりやや面的に融着縫合されているため、縫い縮みや縫いじわが発生せず、多少の捻れ負荷や伸縮負荷等が加わっても縫合部が歪んだりほずれたりすることがない。
【0008】
また、縫代部や裁断面がバイアステープによって被包されているため、糸ケバの発生防止をより一層確実なものとすることができ、加えて、肌触りが良く、仕上がり時の意匠性を高めることができる。
【実施例】
【0009】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図1は、本発明縫製方法をもって縫製された無塵服の縫合箇所の一部を一部断面斜視図で示したものである。先ず、後に行う超音波裁断や超音波縫合の際に、カットずれや縫いずれを防止するため、予め所望形状に裁断形成された1枚ないし複数枚の布地パーツ1、1´の縫代部を揃えて重ね合わせ、その縁辺に沿って糸、針による通常の縫製手段により仮縫合をする。図中の符号2はこの仮縫合部を示すもので、図2は、仮縫合された状態での布地パーツ1、1´の縁辺部附近の断面図である。
【0010】
次に、重合された布地パーツ1、1´の両縁辺を一体的に超音波裁断するとともに布地パーツ1と布地パーツ1´とを超音波縫合する。この際、縫合と裁断の順序はいずれであっても良く、また、裁断機能を併せ持つ超音波縫合機(超音波ミシン)を使用する場合には同時的に行うことも可能である。図中の符号3はこの超音波縫合部を、また、符号4は超音波裁断面を示すもので、図3及び図4は、それぞれ超音波縫合された状態及び超音波裁断された状態での布地パーツ1、1´の縁辺部附近の断面図である。
【0011】
超音波裁断された布地パーツ1、1´の裁断面4は、超音波裁断機のヒート作用により繊維体が相互に融着して一体化されるので、ほずれや糸ケバが発生することはない。また、超音波縫合部3も、同様に超音波ミシンのヒート作用により面的に融着縫合されるため、縫い縮みや縫いじわが発生しずらく、多少の捻れ負荷や伸縮負荷等が加わっても縫代部が歪んだりほずれたりすることはない。
【0012】
続いて、別に用意したバイアステープ5を、長手方向に断面コの字状に折り曲げ、超音波縫合された布地パーツ1、1´の超音波裁断面4から縫代部を包み隠すように当てて縫合する。縫合されたバイアステープ5は、超音波縫合部3や超音波裁断面4を覆い隠し保護補強するため、前記作用効果をより一層確実なものとすることができ、また、超音波縫合部3や超音波裁断面4が着用者の肌に直接触れることを防止することができる。図5は、超音波縫合され超音波裁断されバイアステープ5で被包された状態での布地パーツ1、1´の縁辺部附近の断面図である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明実施例方法によって縫製された無塵服における一部切り欠き部分斜視図。
【図2】同無塵服における仮縫合手段を示す断面図。
【図3】同無塵服における超音波縫合手段を示す断面図。
【図4】同無塵服における超音波裁断手段を示す断面図。
【図5】同無塵服におけるバイアステープによる被包手段を示す断面図。
【図6】無塵服例の正面図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縫合すべき布地パーツの縫代部を重ね合わせて仮縫合し、重合された布地パーツの両縁辺を超音波裁断するとともに裁断面に沿って超音波縫合することを特徴とする無塵服の縫製方法。
【請求項2】
超音波縫合された縫代部を被包するよう裁断面よりバイアステープを縫着することを特徴とする前記請求項1記載の無塵服の縫製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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