説明

無延伸プラスチックからなる包装用成型品

【課題】平面視が種々の形状の無延伸プラスチックからなる包装用成型品について、その開口縁に縁巻き部を形成するのを可能にする。
【解決手段】包装用成型品を、椀型本体の開口縁に巻き代15を有する無延伸プラスチック製のプレ成型品pから作製する。プレ成型品pを、その本体が筒形のカーリング型21e、22dの内側になるように、かつその巻き代15の先端部がカーリング溝21g、22fに導入されるようにセットする。カーリング型をヒータ21f、22eで加熱しながら、カーリング溝21g、22fがプレ成型品pの本体の開口縁に接近するようにスライドさせる。加熱により軟化した巻き代15がプレ成型品pの本体の開口縁に向けて巻き上げられ、縁巻き部が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、無延伸プラスチックからなる包装用成型品、およびその包装用成型品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品などの商品を包装するための無延伸プラスチック製の包装用成型品(容器および蓋)が知られている。このような包装用成型品は、プラスチックシートに真空成型や圧空成型により椀型に盛り上がった箇所を形成しておき、当該箇所の周縁部のマージンを残して切断し、シート本体から切り離すことで作製される。
【0003】
その結果、できあがった包装用成型品は、椀型本体の開口縁の全周に上述のマージンにより形成されるフランジを有し、このフランジの外周には鋭利な裁断面が現れることになる。したがって、その包装用成型品を取り扱う際に、その裁断面で手を切るおそれがあり危険である。
【0004】
そこで、包装用成型品の開口縁にできるフランジをカールさせて縁巻き部を形成し、裁断面で手が切れないようにすることもよく行われている。
その一例として、特許文献1のように、円筒形の周面に螺旋状のカーリング溝が形成されたカーリングロールを複数本用いた縁巻き部の形成方法がある。これら複数本のカーリングロールは、等間隔で環状に配置されている。
【0005】
包装用成型品をそのフランジが各カーリングロールのカーリング溝に導入された状態にセットして、各カーリングロールを回転駆動させながら、包装用成型品をカーリング溝にそってカーリングロールの軸方向に回転移送させてゆく。カーリング溝は包装用成型品の移送方向にむけて幅が狭くなっているため、カーリング溝に導入されたフランジは移送に従って徐々にカールしてゆき、縁巻き部が形成されることになる。
ちなみに、このようにフランジをカールさせて縁巻き部を形成することで、開口縁部の厚みが増して成型品全体の剛性も高まっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭60−132732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1のようにして包装用成型品を回転させながらそのフランジをカールさせる場合、包装用成型品が平面視円形でなければ、開口縁全周にわたって縁巻き部を形成することが不可能である。したがって、カール処理できる成型品の形状が実質上平面視円形だけに制約されてしまう。
【0008】
そこでこの発明の解決すべき課題は、平面視が種々の形状の無延伸プラスチックからなる包装用成型品について、その開口縁に縁巻き部を形成するのを可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決するため、発明にかかる無延伸プラスチック製の包装用成型品の製造方法を、以下の構成を含むものとしたのである。
すなわち発明にかかる製造方法は、椀型本体と椀型本体の開口縁の全周に連設される筒形の巻き代とを有する無延伸プラスチック製の包装用プレ成型品を成型する工程を含む。
また、内周面に周方向に延びる環状のカーリング溝が形成された筒形のカーリング型を準備する工程を含む。
さらに、前記プレ成型品を、その椀型本体が前記カーリング型の内側になるように、かつその巻き代の先端部が前記カーリング型のカーリング溝に導入されるように配置する工程を含む。
最後に、前記カーリング金型を加熱しながらそのカーリング溝が前記プレ成型品の椀型本体の開口縁に接近するように軸方向にスライドさせ、前記カーリング金型の加熱により軟化した前記巻き代を椀型本体の開口縁に向けて巻きこんで縁巻き部を形成する工程を含む。
【発明の効果】
【0010】
この方法によれば、包装用成型品を回転させることなく縁巻き部を形成するため、平面視円形に限られず種々の形状の無延伸プラスチック製の包装用成型品について縁巻き部を形成するのが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態の包装用成型品の(a)は斜視図、(b)は(a)の矢印断面図
【図2】実施形態の製造装置の縦断面図
【図3】実施形態の製造装置の縦断面図
【図4】実施形態の製造装置の縦断面図
【図5】実施形態の製造装置の縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつこの発明の実施形態について説明する。
図1に示す実施形態の包装用成型品10は、食品などの商品を包装する包装容器として用いられる。
【0013】
この包装用成型品10は、平面視楕円形の底面11と、底面11の全周から広がって立ち上がる側面12と、側面12の上端全周からほぼ水平に張り出すフランジ13と、フランジの外縁全周からカールする縁巻き部14と、からなる。
【0014】
ここで包装用成型品10の底面11、側面12およびフランジ13は、上向きに開口する椀型の本体を構成しており、縁巻き部14は、この本体の開口縁の厚みを大きくして包装用成型品全体の剛性を高めている。
包装用成型品10は、無延伸ポリエチレンテレフタレート、無延伸ポリプロピレン、無延伸ポリスチレンなどの無延伸プラスチックより形成されている。
【0015】
この包装用成型品10は、図2から図5に示すような製造装置20を用いることで、同図に示す包装用プレ成型品pから製造される。
【0016】
図2および図3に示すように、包装用プレ成型品pは、平面視楕円形の底面11と、底面11の全周から広がって立ち上がる側面12と、側面12の上縁全周からほぼ水平に張り出すフランジ13と、フランジ13の外縁全周に連設される楕円筒形の巻き代15と、からなる。巻き代15は、その先端部が外側に反っている。
ここでプレ成型品pの底面11、側面12およびフランジ13は、包装用成型品10の底面11、側面12およびフランジ13と相似形である。
【0017】
このプレ成型品pは、無延伸プラスチックからなるシートに、真空成型や圧空成型により椀型に盛り上がった箇所を形成しておき、当該箇所の周縁部を切断してシート本体から切り離すことで作製される。
シートの椀型に盛り上がった箇所がプレ成型品pの本体および巻き代15に対応しており、巻き代15の外側に反った先端部には、切り離しにともなう鋭利な裁断面が現れている。
【0018】
図2から図5に示すように、実施形態の製造装置20は、上下に並列する下型21および上型22からなっている。
【0019】
アルミ、真鍮、鉄などの金属製の下型21は、その下台座21aの上面に、下台座21aに対して昇降不能な内側の雄型21bと、下台座21aに対して昇降可能な外側の下カーリング型21eと、を有する。ここで下型21は、その下台座21a自体は、固定されて昇降不能となっている。
【0020】
平面視略楕円形で上に凸の雄型21bは、その上面には、プレ成型品pの本体、すなわち底面11、側面12、およびフランジ13が嵌合可能となっており、またその外周面には、プレ成型品pの巻き代15が嵌合可能となっている。
【0021】
さらに、雄型21bはその内部に断熱部21cを有しており、プレ成型品pの本体が嵌合する箇所と巻き代15が嵌合する箇所とが断熱されるようになっている。この断熱部は、ガラスクロスやガラスエポキシの複合材など周知の断熱素材により形成されている。
雄型21bは、内支持柱21dを介して下台座21aの上面に固定されている。
【0022】
平面視略楕円環形の下カーリング型21eは、内部の適宜箇所にヒータ21fを有して全体を加熱できるようになっている。その加熱温度は特に限定されないが、たとえば60〜120℃である。
また、下カーリング型21eは、その上面の内周側に平面視楕円環形かつ断面半円形のカーリング溝21gを有している。カーリング溝21gの深さは特に限定されないが、たとえば1.5〜2.0mmである。
【0023】
さらに、下カーリング型21eは、外シリンダ21hを介して下台座21aの上面に取り付けられている。この外シリンダ21hの外周には、図示のシールリングが装着され、これにより外シリンダ21hは下台座21aの上面に形成された孔に気密にはめ込まれている。このため、外シリンダ21hをピストン運動させると、下カーリング型21eが下台座21aに対して昇降動することになる。
下カーリング型21eの昇降範囲については、外シリンダ21hが下台座21aの孔底に当接したときが下降限となり、下カーリング型21eの下部内周に形成された図示の肩部が雄型21bの下面に当接したときが上昇限となる。
【0024】
アルミ、真鍮、鉄などの金属製の上型22は、その上台座22aの下面に、上台座22aに対して昇降可能な内側の雌型22bと、上台座22aに対して昇降不能な外側の上カーリング型22dと、を有する。ここで上型22は、その上台座22a自体も周知の機構により昇降可能となっている。
【0025】
平面視略楕円形で上に凹の雌型22bは、その下面が雄型21bの上面にほぼ過不足なくはまり込む形状となっており(図3参照)、内シリンダ22cを介して上台座22aの下面に取り付けられている。
この内シリンダ22cの外周には、図示のシールリングが装着され、これにより内シリンダ22cは上台座22aの下面に形成された孔に気密にはめ込まれている。このため、内シリンダ22cをピストン運動させると、雌型が上台座に対して昇降動することになる。
雌型22bの昇降範囲については、内シリンダ22cが上台座22aの孔底に当接したときが上昇限となり、雌型22bの上部外周に形成された図示の肩部が上カーリング型22dに当接したときが下降限となる。
【0026】
平面視略楕円環形の上カーリング型22dは、内部の適宜箇所にヒータ22eを有して全体を加熱できるようになっている。その加熱温度は特に限定されないが、たとえば60〜120℃である。
また上カーリング型22dは、その下面の内周側に平面視楕円環形かつ断面半円形のカーリング溝22fを有している。カーリング溝22fの深さは特に限定されないが、たとえば1.4〜1.9mmである。
【0027】
上台座22aの下降時には、このカーリング溝22fは下カーリング型21eのカーリング溝21gとほぼ過不足なく重なって、内周側が開放された略ドーナツ型(断面円形)の空間を形成できるようになっている。
この上カーリング型22dは、外支持柱22gを介して上台座22aの下面に固定されている。
【0028】
包装用成型品の製造装置20の構成は、以上のようであり、次にこの装置20を用いて、包装用プレ成型品pから包装用成型品10を製造する方法について説明する。
【0029】
図2に示すように、まず製造装置20の上型22全体を上昇させた状態で、下型21の雄型21bの上面に、包装用プレ成型品pをはめ込む。
このとき、雄型21b内の断熱部21cにより包装用プレ成型品pの本体には、下カーリング型21eのヒータ21fの熱が伝わらないようになっており、プレ成型品本体の熱変形が防がれている。
【0030】
ここで、下型21の下カーリング型21eおよび上型22の雌型22bはそれぞれ上下台座21a、22aに対する下降限位置にある。また雌型22bは、内シリンダ22cと上台座22aの孔との間に圧縮空気が導入されることで、常時下向きに付勢、すなわち圧縮空気の力で弾性的に押し下げられている。
【0031】
次に、図3のように上型全体(上台座22a)を下降させて、その雌型22bの下面に下型21の雄型21bの上面をほぼ過不足なくはめ込み、かつその上カーリング型22dの下面と下カーリング型21eの上面とを当接させる。
【0032】
このとき図示のように、下向きに付勢された雌型22bは、雄型21bに押されてほぼ上台座22aに対する上昇限位置へと移動する。
また図示のように、上下のカーリング溝21g、22fが合致することで形成される略ドーナツ型の空間に、その内周側から包装用プレ成型品pの巻き代15の先端部が導入されることになる。巻き代15の先端部は外向きに反っているため、この導入はスムーズに行われる。巻き代15は、カーリング型21e、22dの熱で軟化する。
【0033】
ここから、図4のように上型全体(上台座22a)を上昇させつつ、下型21の外シリンダ21hを作動させて下カーリング型21eを上台座22aとほぼ同じ速度で上昇させる。これにより、上下カーリング型21e、22dの当接状態は維持される。また、雌型22bは下向きに付勢されているため、上台座22aに対して相対的に下降して雄型21bと雌型22bの嵌合状態も維持されることになる。
【0034】
このとき上下のカーリング型21e、22dは上昇し、重なり合う雄型21bおよび雌型22bは高さが変化しないため、カーリング溝21g、22fは、雄型21bの上面および雌型22bの下面に接近する。
このため図示のように、上下カーリング型21e、22dのカーリング溝21g、22fに先端が導入されて軟化した包装用プレ成型品pの巻き代15は、重なり合う雄型21bの上面および雌型22bの下面に嵌合する包装用プレ成型品pの本体の開口に向けて巻き上げられることになる(巻き込まれることになる)。
【0035】
このように、巻き代15を巻き上げることで縁巻き部14が形成され、包装用成型品10が完成する。巻き代15の反った先端部の鋭利な裁断面が内側に巻き込まれて隠れるため、包装用成型品10を取り扱う際にも裁断面で手を傷付けるおそれはない。
【0036】
ここで、プレ成型品pの巻き代15の幅(高さ)は特に限定されないが、小さすぎるとカールを形成しにくく、大きすぎると縁巻きが大きくなって美観を損なうため、7〜15mmが好ましく、特に9〜13mmが望ましい。
【0037】
最後に、図5のように上型全体(上台座22a)を、その雌型22bと下型21の雄型21bが離反するまでさらに上昇させて、雄型21bにはまり込んだ完成した包装用成型品10を取り外す。
【0038】
縁巻き部14があることで、包装用成型品10の剛性が向上するため、素材となるプラスチックシートの厚みを小さくすることができる。そのため、材料コストの削減が可能となる。シートの厚みは特に限定されないが、たとえば、0.13mm〜0.45mmである。
また、縁巻き部14があることで、包装容器として用いるこの包装用成型品10の開口に蓋をはめ込む場合の嵌合力も向上している。
【0039】
上記実施形態では、包装用成型品10を平面視楕円形としたが、これに限定されず、円形、矩形、多角形、長円形、星型など種々の形状とすることができる。
成型品10の本体の形状は、底面11、側面12およびフランジ13があるものに限られず、ドーム型の曲面形状を含む椀型全般とすることができる。
また、包装用成型品10の底面11および側面12には、リブやエンボスを設けてもよい。
【0040】
とくに、上述のように、実施形態の製造装置20は、製造対象物を回転させないため、平面視非円形の包装用成型品10の製造に好適に用いられる。
下型21および上型22の形状は、包装用成型品10の形状にあわせて適宜変更可能である。たとえば包装用成型品10の底面が矩形である場合には、下型21の雄型21bおよび上型22の雌型22bも平面視矩形にする。
雄型21bには、断熱部21cに代えて雄型21bの全体を冷却するクーラを付属させてもよい。
【0041】
なお、包装用成型品10として包装容器を例示したが、包装用成型品10として、容器の開口を塞ぐ蓋としてもよいことは無論である。
【符号の説明】
【0042】
10 包装用成型品(包装容器)
11 底面
12 側面
13 フランジ
14 縁巻き部
15 巻き代
20 包装用成型品の製造装置
21 下型
21a 下台座
21b 雄型
21c 断熱部
21d 内支持柱
21e 下カーリング型
21f ヒータ
21g カーリング溝
21h 外シリンダ
22 上型
22a 上台座
22b 雌型
22c 内シリンダ
22d 上カーリング型
22e ヒータ
22f カーリング溝
22g 外支持柱
p 包装用プレ成型品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無延伸プラスチックからなり、
平面視非円形の椀型本体と、
この本体の開口縁の全周に連設される縁巻き部と、を備える包装用成型品。
【請求項2】
椀型本体と椀型本体の開口縁の全周に連設される筒形の巻き代とを有する無延伸プラスチック製の包装用プレ成型品を成型する工程と、
その内周面に周方向に延びる環状のカーリング溝が形成された筒形のカーリング型を準備する工程と、
前記プレ成型品を、その椀型本体が前記カーリング型の内側になるように、かつその巻き代の先端部が前記カーリング型のカーリング溝に導入されるようにセットする工程と、
前記カーリング型を加熱しながらそのカーリング溝が前記プレ成型品の椀型本体の開口縁に接近するように軸方向にスライドさせることで、前記カーリング型の加熱により軟化した前記巻き代を椀型本体の開口縁に向けて巻きこんで縁巻き部を形成する工程と、を含む包装用成型品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−30539(P2012−30539A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−173318(P2010−173318)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【出願人】(000222141)東洋アルミエコープロダクツ株式会社 (106)
【Fターム(参考)】