説明

無接点スイッチ

【課題】検出精度の安定化と小型化を図ることができる無接点スイッチを提供すること。
【解決手段】磁気検出センサ12と、該磁気検出センサ12が配設されたターミナルベース5と、前記磁気検出センサ12の検出対象である磁石7が配設された操作部材4と、前記ターミナルベース5に結合されて前記操作部材4を前記磁気検出センサ12に対して摺動可能に保持するホルダ3と、該ホルダ3とこれに保持された前記操作部材4及び前記ターミナルベース5の一部を収容するスイッチボディ2を備えた無接点スイッチ1において、前記磁石7を前記操作部材4の軸中心周りに所定距離を隔てて2つの磁界を形成するよう配置し、前記磁気検出センサ12は、前記磁石7が形成する2つの磁界が重なる中心線上で、磁力線の方向が反転する磁束反転位置を検出したときに検知信号を出力するよう構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のストップランプスイッチ等として使用される無接点スイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のストップランプスイッチ等には摺動接点式スイッチが専ら使用されていたが、この摺動接点式スイッチは、個々の部品における位置調整は不要であるものの、機械的な摺接部を有するために塵埃や水、グリス等の侵入による導通不良や接点の擦れによる異音の発生等の問題を有していた。
【0003】
そこで、近年、磁石とその磁気を検出するホール素子等の磁気検出センサを用いた無接点スイッチが提案され、既に実用に供されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、温度変化の影響を受けることなくON/OFFを高精度に検出するために、磁石が取り付けられたストローク部材の移動範囲の両端ではそれぞれ磁石とホール素子が離間し、移動距離の途中で磁石がホール素子に最接近するよう設定する構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−092777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、無接点スイッチを構成する磁石や磁気検出センサには寸法等の品質に個々のバラツキがあり、又、周囲の温度等の影響による磁力の変化によって磁界の強度分布に誤差が生じ易く、検出精度が不安定になるという問題があった。
【0007】
そこで、特許文献1において提案された無接点スイッチでは磁力線の方向を検知する方式を採用しているが、これに使用されている磁石では磁界強度の強い範囲が狭いため、検出精度が不安定であるという問題を解消することはできない。又、磁力線の方向が明確に切り替わるポイントが存在しないため、磁力線の方向の変化を確実に検知することができる位置までストローク部材を大きくストロークさせる必要があり、安定した検知精度を得ることができず、スイッチも大型化するという問題があった。
【0008】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、検出精度の安定化と小型化を図ることができる無接点スイッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、
磁気検出センサと、
該磁気検出センサが配設されたターミナルベースと、
前記磁気検出センサの検出対象である磁石が配設された操作部材と、
前記ターミナルベースに結合されて前記操作部材を前記磁気検出センサに対して摺動可能に保持するホルダと、
該ホルダとこれに保持された前記操作部材及び前記ターミナルベースの一部を収容するスイッチボディを備えた無接点スイッチにおいて、
前記磁石を前記操作部材の軸中心周りに所定距離を隔てて2つの磁界を形成するよう配置し、前記磁気検出センサは、前記磁石が形成する2つの磁界が重なる中心線上で、磁力線の方向が反転する磁束反転位置を検出したときに検知信号を出力することを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記磁石を環状として前記操作部材の軸中心周りに配置するとともに、該磁石と前記磁気検出センサを同軸上に配置したことを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記磁石を前記操作部材の軸中心周りに所定間隔を隔てて2つ配置するとともに、前記磁気検出センサを前記操作部材の軸中心上に配置したことを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明において、前記磁石を棒状としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、磁石を操作部材の軸中心周りに所定距離を隔てて2つの磁界を形成するよう配置することによって、2つの磁界が重なる中心線上で、磁力線の方向が反転する磁束反転位置を発生させ、その磁束反転位置を磁気検出センサが検出したときに検知信号を出力するようにしたため、信号のON/OFFの切替ポイントを確実に検出することができ、高い検出精度を安定的に得ることができる。
【0014】
又、磁界強度を大きくすれば、磁石近傍から磁束反転位置までの距離を十分確保することができるため、操作部材のストロークが大きくなり、その分だけ当該無接点スイッチを小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る無接点スイッチの側断面図である。
【図2】本発明に係る無接点スイッチの分解斜視図である。
【図3】本発明に係る無接点スイッチの分解斜視図である。
【図4】(a)〜(e)は本発明に係る無接点スイッチの組立要領をその工程順に示す側断面図である。
【図5】(a)〜(c)は本発明に係る無接点スイッチの動作を説明する側断面図である。
【図6】(a)〜(c)は図5(a)〜(c)に示す状態に対応する磁石と磁界検出センサの磁力場における位置関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0017】
図1は本発明に係る無接点スイッチの側断面図、図2及び図3は同無接点スイッチの分解斜視図であり、図示の無接点スイッチ1は、車両のストップランプスイッチであって、後述のようにドライバが不図示のブレーキペダルを踏み込む(制動状態)と出力信号としてON信号を出力することにより、不図示のストップランプを点灯させ、ブレーキペダルから足を離す(非制動と状態)と出力信号としてOFF信号を出力することにより、ストップランプを消灯させるものである。尚、以下の説明においては、図1の左側を前方、右側を後方とし、左右方向を軸方向とする。
【0018】
而して、無接点スイッチ1は、図1に示すように、スイッチボディ2の内部にホルダ3と、該ホルダ3の内部に前後方向(図1の左右方向)に摺動可能に嵌合保持された操作部材4と、ホルダ3の後端(図1の右端)内周に螺着されたターミナルベース5等を組み込んで構成されている。尚、これらのスイッチボディ2、ホルダ3、操作部材4及びターミナルベース5は非導電性の樹脂によってそれぞれ一体成形されている。
【0019】
以下、無接点スイッチ1の各構成要素について説明する。
(スイッチボディ)
上記スイッチボディ2は、図2及び図3に示すように、後端が開口する四角筒状のボディ本体2Aと、該ボディ本体2Aの端面の中心部から前方に向かって水平に一体に延びる円筒状の車体取付部2Bとで構成されており、ボディ本体2A内に前記ホルダ3と前記操作部材4及び前記ターミナルベース5が組み込まれている。又、このスイッチボディ2のボディ本体2Aの上下の対向する位置には細長い矩形の係合孔2aがそれぞれ形成され、車体取付部2Bの外周には軸方向に沿う雄ネジ部2bが周方向に複数形成されている。
(ホルダ)
前記ホルダ3は、円筒状の本体部3Aを備えており、該本体部3Aの後端には四角フランジ状の回転阻止部3Bが一体に形成されている。従って、ホルダ3が図1に示すようにスイッチボディ2の四角筒状のボディ本体2Aの内部に挿入され、該ボディ本体2Aの内部にホルダ3の矩形フランジ状の回転阻止部3Bが嵌合することによって、該ホルダ3のスイッチボディ2内での回転が阻止される。
【0020】
又、図2及び図3に示すように、ホルダ3の本体部3Aの外周4箇所(図2及び図3には3箇所のみ図示)には軸方向に延びる半円筒状のガイド部3aが形成されており、本体部3Aの上下には、仮固定部を構成する矩形の係止爪3b(図2及び図3には一方のみ図示)が形成されており、これらの係止爪3bは基端部を中心として弾性変形することができる。そして、ホルダ3の回転係止部3Bの上下には、スイッチボディ2のボディ本体2Aの上下に形成された前記係合孔2aに係合する爪状の係合突起3c(図2及び図3には一方のみ図示)がそれぞれ一体に突設されている。
【0021】
更に、図1に示すように、ホルダ3の内部の軸方向中間部には、中心部が前方(操作部材4側)に向かって膨出する隔壁3Cが一体に形成されている。そして、図3に示すように、ホルダ3の回転阻止部3Bの内周には、前記ターミナルベース5の前端外周に形成された雄ネジ部5aと共に位置調整部を構成する雌ねじ部3dが形成されている。
(操作部材)
前記操作部材4は、有底筒状のピストン部4Aと、該ピストン部4Aの端面の中心から前方に向かって一体に水平に延びる丸棒状のシャフト4Bとで構成されており、ピストン部4Aはホルダ3の本体部3A内に軸方向に摺動可能に嵌挿され、シャフト4Bはスイッチボディ2の車体取付部2Bの貫通孔2cに軸方向に摺動可能に挿通保持されている。そして、ピストン部4Aの外周4箇所にはガイドリブ4aが軸方向に沿って一体に形成され、これらのガイドリブ4aはホルダ3の本体部3Aの外周に形成された前記ガイド部3aに摺動可能に嵌合して操作部材4の回り止めがなされている。ここで、図1に示すように、ホルダ3の前記各ガイド部3a内には、ホルダ3の隔壁3Cと操作部材4のピストン部4A間に縮装されたスプリング6が収容されており、操作部材4はスプリング6によって前方(シャフト4Bがスイッチボディ2の車体取付部2Bから突出する方向)に付勢されている。
【0022】
又、図2及び図3に示すように、操作部材4のピストン部4Aの外周の上下には、ホルダ3に形成された前記係止爪3bが入り込むための凹部4bが形成されている。
【0023】
更に、操作部材4のピストン部4Aの後端部には小径の磁石固定部4Cが一体に形成されており、ピストン部4Aの前端面にはストッパとして機能するリング状の突起4cがシャフト4Bの周りに同心的に突設されている。そして、図2及び図3に示すように、磁石固定部4Cの外周には環状の磁石7が嵌合しており、この磁石7は、磁石固定部4Cの外周の周方向複数箇所に形成された爪状の係止部4dによって固定されている。
(ターミナルベース)
前記ターミナルベース5は、略円筒状に成形されており、その外周の軸方向中間には矩形フランジ状の回転阻止部5Aが一体に形成され、この回転阻止部5Aよりも前方の外部には前記雄ネジ部5aが形成されている。そして、図1に示すように、ターミナルベース5のベース部5Bには3本のターミナル8がインサート成形によって一体的に貫設されており、これらのターミナル8の先端には円板状の回路基板9が保持されている。
【0024】
ここで、図2及び図3に示すように、上記回路基板9の中心部には円孔9aが形成されており、回路基板9にはスペーサ10が回路基板9の円孔9aに挿通するネジ11によって取り付けられており、このスペーサ10には、前記磁石7の磁気を検出するためのホール素子等の磁気検出センサ12が収納保持されている。そして、磁気検出センサ12は、ターミナル13によって回路基板9に電気的に接続されている。
【0025】
而して、ターミナルベース5には回路基板9やスペーサ10、磁気検出センサ12等が予めサブ組みされており、これらがサブ組みされたターミナルベース5の外周に形成された雄ネジ部5aをホルダ3の後端部内周に形成された雌ネジ部3dに螺着することによって、図1に示すように、該ターミナルベース5の一部がホルダ3内に組み込まれる。尚、ホルダ3とターミナルベース5の嵌合部は、ターミナルベース5の外周に嵌着されたOリング14によって気密にシールされている。
【0026】
上述のようにターミナルベース5の一部がホルダ3内に組み込まれると、図1に示すように、該ターミナルベース5とホルダ3の隔壁3Cとの間に密閉空間Sが形成され、この密閉空間Sに回路基板9とスペーサ10及び磁気検出センサ12が収容されている。又、環状の磁石7は操作部材4の軸中心回りに配置され、該磁石7と磁気検出センサ12は操作部材4の軸中心上に同軸的に配置されている。
(無接点スイッチの組立要領)
次に、以上のように構成された無接点スイッチ1の組立要領を図4(a)〜(e)に基づいて説明する。尚、図4(a)〜(e)は無接点スイッチの組立要領をその工程順に示す側断面図である。
【0027】
無接点スイッチ1の組み立てに際しては、先ず、操作部材4(磁石7)をホルダ3に対して所定の位置(磁気検出センサ12のON/OFF信号が切り替わる位置(図5(b)に示す位置であって、後述の磁束反転位置))に仮固定する。
【0028】
即ち、図4(a)に示すように、ホルダ3の前方開口部に操作部材4のピストン部4Aを嵌め込んで操作部材4全体をスプリング6の付勢力に抗して図示矢印方向に押し込む。そして、図4(b)に示すように、操作部材4のピストン部4Aの外周の上下に形成された凹部4bがホルダ3の係止爪3bに合致した時点で、上下の係止爪3bを図示矢印方向(径方向内方)に押圧してこれらをその基端部を中心として弾性変形させて、係止爪3bの先端部を操作部材4の凹部4b内に突出した状態にする。この状態で、操作部材4の押し込みを解除することによって、スプリング6の付勢力によって操作部材4が復帰するため、該係止爪3bの先端部が凹部4bの端面4b−1に当接し、操作部材4はその前方(図4(b)の左方)への移動が阻止されて図示位置に仮固定され、ホルダ3と操作部材4がサブ組みされる。このとき、係止爪3bの先端部が操作部材4の凹部4bの端面4b−1に係合し、スプリング6の付勢力によって凹部4bの端面4b−1は係止爪3bの端面に所定の力で当接しているため、係止爪3bは図4(b)に示すようにホルダ3の内方に弾性変形した状態が維持される。
【0029】
以上のようにして操作部材4がホルダ3に対して所定の位置(磁気検出センサ12のON/OFF信号が切り替わる位置(後述の磁束反転位置))に仮止めされると、図4(c)に示すように、回路基板9や磁気検出センサ12等が予めサブ組みされたターミナルベース5の雄ネジ部5aにホルダ3の端部内周に形成された雌ネジ部3dを螺合させ、例えばサブ組みされたホルダ3をターミナルベース5に対して回せば、両者の軸方向の相対位置が変化し、ホルダ3に仮止めされた操作部材4に配設された磁石7とターミナルベース5に配設された磁気検出センサ12の相対位置を微調整することができる。即ち、ホルダ3に形成された雌ネジ部3dとターミナルベース5に形成された雄ネジ部5aとは互いに螺合して位置調整部を構成しており、この位置調整部によって磁石7と磁気検出センサ12の相対位を微調整し、磁界強度のバラツキによって生じる後述の磁束反転位置に誤差を吸収することができる。
【0030】
具体的には、磁気検出センサ12に不図示のランプに接続し、このランプの点灯/消灯(磁気検出センサ12のON/OFF信号の出力)を確認しながら、ホルダ3を操作部材4と共に回転させて磁石7と磁気検出センサ12の相対位置を微調整し、図4(c)に示す両者間の距離LがON/OFF信号が切り替わる距離となった時点でホルダ3と操作部材4の回転を止める。
【0031】
以上のようにして、サブ組みによって操作部材4が仮固定されたホルダ3と回路基板9や磁気検出センサ12等が予めサブ組みされたターミナルベース5が結合され、それぞれに配設された磁石7と磁気検出センサ12の相対位置が微調整されると、図4(d)に示すように、これら全体を1つのユニットとしてスイッチボディ2内に挿入し、ホルダ3の上下に形成された係合突起3cをスイッチボディ2の上下に形成された係合孔2aに係合させれば、ユニットが位置決めされてスイッチボディ2内に組み込まれる。すると、ホルダ3とターミナルベース5にそれぞれ形成された矩形フランジ状の回転阻止部3B,5A(図2及び図3参照)がスイッチボディ2の四角筒状のボディ本体2A内に嵌合するため、ホルダ3とこれに仮止めされた操作部材4及びターミナルベース5のスイッチボディ2内での回転が阻止され、磁石7と磁気検出センサ12との相対位置が固定される。
【0032】
そして、最後に図4(e)に示すように操作部材4をスプリング6の付勢力に抗して後方に押し込むと、操作部材4のピストン部4Aに形成された凹部4bの端面4b−1がホルダ3の係止爪3bから離間して両者の係合が解除され、係止爪3bは弾性によって径方向外方(図示矢印方向)に広がって元の状態に復帰し、操作部材4のホルダ3に対する仮固定も解除される。すると、操作部材4の摺動が許容され、操作部材4から手を離すと、該操作部材4はスプリング6の付勢力によって前方(図示矢印方向)へと摺動し、ピストン部4Aの端面に形成された突起4cがスイッチボディ2のボディ本体2Aの内端面に当接した状態で操作部材4が静止し、このとき、該操作部材4のシャフト4Bがスイッチボディ2から所定量だけ突出している。
【0033】
以上説明した要領によって無接点スイッチ1が組み立てられ、該無接点スイッチ1が車両のストップランプスイッチとしての用途に供される。
(無接点スイッチの動作)
次に、車両のストップランプスイッチとして使用される無接点スイッチ1の動作と検出原理を図5(a)〜(c)及び図6(a)〜(c)に基づいて説明する。尚、図5(a)〜(c)は無接点スイッチの動作を説明する側断面図、図6(a)〜(c)は図5(a)〜(c)に示す状態に対応する磁石と磁界検出センサの磁場における位置関係を示す図である。
【0034】
無接点スイッチ1は、スイッチボディ2の車体取付部2Bが車体に取り付けられた逆L字状のブラケット15に通され、車体取付部2Bの雄ネジ部2b(図2及び図3参照)に螺合するナット16を締め付けることによってブラケット15を介して車体17に取り付けられ、ブレーキレバー18の後方に配置されている。
【0035】
而して、ドライバがブレーキレバー18の下端の不図示のブレーキペダルを踏み込んでいない状態(非制動状態)では、ブリーキレバー18は図5(a)に示すように無接点スイッチ1のシャフト4Bに当接して該シャフト4Bをホルダ3内に押し込んでいる。この状態では、操作部材4に配設された磁石7は磁気検出センサ12に最も近接した位置にあり、磁気検出センサ12は磁石7の磁界強度の安定した磁場範囲内にあり、図6において上側に放出される複数の磁力線を検出することによりON状態となる。そして、本実施の形態では、ON状態においては、磁気検出センサ12はOFF信号を出力するように構成されているため、不図示のストップランプは消灯されている。
【0036】
ところで、磁気検出センサ12は、磁界の強弱や磁極を磁力線の数や方向等で判断するものであるが、本実施の形態において使用した環状の磁石7によって形成される磁界の強度と磁力線の方向を図6に示す。この環状の磁石7によって操作部材4の軸中心周りに2つの磁界が形成され、その磁界の強度は磁石7に近い領域Aでは強く、遠い領域Cでは2つの磁界が互いに相殺されて弱く、その中間の領域Bでは中間の値を示す。又、磁力線の方向を矢印にて示す。本実施の形態では、図6において磁石7の下側がN極、上側がS極となっている。そのため、磁力線はN極から出てS極へ向かうことから、磁石7に近い領域Aの2つの磁界が重なる中心線上では、図6に示すように、上側(N極からS極)に向かう複数の磁力線が集中するため、安定した磁場範囲が形成される。一方、磁石7から遠い領域Cでは、磁石7の2つの磁界が重なる中心線上でも磁力線が分散し、磁力線の方向が一定の方向とならない不安定な磁場範囲となり、更に磁力線の方向が反転する磁束反転位置が破線ラインaにて示すように存在する。
【0037】
図5(a)に示すようにドライバがブレーキレバー18の下端の不図示のブレーキペダルを踏み込んでいない状態(非制動状態)では、シャフト4Bが押し込まれた作動位置に保持され、図6(a)に示すように磁石7が磁気検出センサ12に最も近接した位置にあり、このとき前述のように磁気検出センサ12は磁石7の磁界強度の安定(上側(N極からS極)に向かう複数の磁力線が集中して存在している状態)した次回範囲にあるため、図6において上側に放出される磁力線が確実に検出され、ON状態が維持される。そして、本実施の形態では、磁気検出センサ12はON状態においてOFF信号を出力するよう構成されているため、不図示のストップランプの消灯状態が確実に維持される。
【0038】
車両の制動に際してドライバがブレーキペダルを足で踏み込み、ブレーキレバー18がその上部の不図示の回動支点を中心として回動すると、無接点スイッチ1においてはスプリング6によって前方へと付勢されたシャフト4Bがブレーキレバー18に当接したまま該ブレーキレバー18の動きに追従してスイッチボディ2から次第に突出し、これに伴って操作部材4とこれに配設された磁石7が前方へと摺動する。そして、この過程において磁石7が磁気検出センサ12に対して図5(b)及び図6(b)に示す位置(図4(c)に示す距離Lだけ離れた位置)に達すると、磁気検出センサ12が図6(b)に示すように磁石7の磁場における磁束反転位置(破線にて示すラインa)に位置する。この状態では、磁力線の方向が180°反転するため、磁気検出センサ12は磁石7から図6において上側に放出される磁力線を検出することができず、該磁気検出センサ12がON状態からOFF状態となる。そして、本実施の形態では、磁気検出センサ12はOFF状態においてON信号を出力するよう構成されているため、出力信号がOFF信号からON信号に切り替わり、不図示のストップランプが点灯される。
【0039】
そして、図5(b)に示す状態からドライバがブレーキペダルを更に踏み込むと、図5(c)に示すように、ブレーキレバー18が無接点スイッチ1のシャフト4Bから離間し、操作部材4はそのピストン部4Aの端部に形成された突起4cがスイッチボディ2の内端面に当接することによって図示の非作動位置(制動状態)に停止し、シャフト4Bはスイッチボディ2から突出した状態が維持される。この状態においては、磁気検出センサ12は磁石7の磁場において図6(c)に示すように磁束反転位置(破線ラインa)を越えて磁力線の方向が反転する領域Cに位置しているため、図6において磁石7から上側に放出される磁力線が存在せず、磁気検出センサ12が確実にOFF状態に維持される。そして、出力信号としてON信号が出力され続けるため、ストップランプは点灯した状態が維持される。つまり、図5(b)及び図6(b)に示す状態を境としてブレーキペダルを更に踏み込めばストップランプが点灯し続け、ブレーキペダルを踏み込んだ状態(制動状態)から足を離すことにより、ブレーキレバー18が図5(a)に示す元の作動状態(非制動状態)に戻る過程で図5(b)及び図6(b)に示す位置を通過した後は磁気検出センサ12がON状態となり、その出力信号がON信号からOFF信号に切り替わることによってストップランプが消灯される。
【0040】
以上のように、本発明に係る無接点スイッチ1においては、環状の磁石7を用いることによって操作部材4の軸中心周りに所定距離を隔てて2つの磁界が形成し、2つの磁界が重なる中心線上で、磁力線の方向が180°反転する磁束反転位置(図6に示す破線ラインa)を発生させる。そして、その磁束反転位置を磁気検出センサ12が検知したとき(所定の方向に放出される磁力線(本実施の形態では、図6において上側に放出される磁力線)を検出することができなくなったとき)にON状態からOFF状態となり、出力信号をOFF信号からON信号に切り替えるように構成している。これにより、磁気検出センサ12が出力信号のON/OFFの切替ポイントを確実に検出することができ、高い検出精度を安定的に得ることができる。即ち、走行状態では、磁気検出センサ12が図6において上側に放出される複数の磁力線が集中して存在する安定した磁場範囲内に置かれるため、該磁気検出センサ12は、磁力線に対して検出反応を示し、ON状態が維持されてブレーキランプが誤って点灯することはない。
【0041】
又、ブレーキペダルを踏み込み、磁束反転位置を検出した後は、磁力線の方向が180°反転するため、磁気検出センサ12が検出反応を示す図6において上側に放出される磁力線が存在せず、磁気検出センサ12がON状態となることはないため、確実にブレーキランプを点灯させることができる。そのため、ブレーキペダルの踏み込み操作によるストップランプの点灯と消灯の切り替えを誤作動なく正確に行うことができる。
【0042】
又、本実施の形態に係る無接点スイッチ1によれば、磁界強度に応じて磁束反転位置は移動する性質を有しているため、磁界強度を大きくすれば、磁石7の近傍から磁束反転位置までの距離を十分確保することができ、磁石自体を薄くした場合であっても、磁界強度の強い磁石を使用することによって、操作部材4のストロークを大きくすることができ、磁石を薄型とした分だけ当該無接点スイッチ1を小型化することを簡単に達成することができるという効果も得られる。
【0043】
尚、以上の実施の形態では、環状の磁石7を用いたが、棒状の磁石を操作部材4の軸中心周りに所定間隔を隔てて2つ配置するとともに、磁気検出センサ12を操作部材4の軸中心上に配置することによっても前記と同様の効果が得られる。
【0044】
又、以上は本発明に係る無接点スイッチを車両のストップランプスイッチとして使用した形態について説明したが、本発明に係る無接点スイッチは他の任意の用途に供することができる。
【0045】
更に、以上の実施の形態では、磁気検出センサ12が磁石7の磁力線を検出するON状態のとき、OFF信号を出力してストップランプを消灯し、磁気検出センサ12が磁石7の磁力線を検出しないOFF状態のとき、ON信号を出力してストップランプを点灯するようにしたが、逆に磁気検出センサ12が磁石7の磁力線を検出するON状態のとき、ON信号を出力してストップランプを点灯し、磁気検出センサ12が磁石7の磁力船を検出しないOFF状態のとき、OFF信号を出力してストップランプを消灯するよう構成しても良い。
【0046】
ところで、無接点スイッチは、スイッチボディの車体取付部が車体に取り付けられた逆L字状のブラケットに車体取付部の雄ネジ部と共に係合部を設け、雄ネジ部に螺合する雌ネジ部と係合部に係合する弾性爪部を形成したブッシュによってブラケットを介して車体に取り付けるようにしても良い。
【符号の説明】
【0047】
1 無接点スイッチ
2 スイッチボディ
2A スイッチボディのボディ本体
2B スイッチボディの車体取付部
2a スイッチボディの係合孔
2b スイッチボディの雄ネジ部
2c スイッチボディの貫通孔
3 ホルダ
3A ホルダの本体部
3B ホルダの回転阻止部
3C ホルダの隔壁
3a ホルダのガイド部
3b ホルダの係止爪(仮止め部)
3c ホルダの係合突起
3d ホルダの雌ネジ部
4 操作部材
4A 操作部材のピストン部
4B 操作部材のシャフト
4C 操作部材の磁石固定部
4a 操作部材のガイドリブ
4b 操作部材の凹部
4b−1 凹部の端面
4c 操作部材の突起
4d 操作部材の係止部
5 ターミナルベース
5A ターミナルベースの回転阻止部
5B ターミナルベースのベース部
5a ターミナルベースの雄ネジ部
6 スプリング
7 磁石
8 ターミナル
9 回路基板
9a 回路基板の円孔
10 スペーサ
11 ネジ
12 磁気検出センサ
13 ターミナル
14 Oリング
15 ブラケット
16 ナット
17 車体
18 ブレーキレバー
A〜C 磁石の磁場の領域
a 磁束反転位置を示すライン
S 密閉空間


【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気検出センサと、
該磁気検出センサが配設されたターミナルベースと、
前記磁気検出センサの検出対象である磁石が配設された操作部材と、
前記ターミナルベースに結合されて前記操作部材を前記磁気検出センサに対して摺動可能に保持するホルダと、
該ホルダとこれに保持された前記操作部材及び前記ターミナルベースの一部を収容するスイッチボディを備えた無接点スイッチにおいて、
前記磁石を前記操作部材の軸中心周りに所定距離を隔てて2つの磁界を形成するよう配置し、前記磁気検出センサは、前記磁石が形成する2つの磁界が重なる中心線上で、磁力線の方向が反転する磁束反転位置を検出したときに検知信号を出力することを特徴とする無接点スイッチ。
【請求項2】
前記磁石を環状として前記操作部材の軸中心周りに配置するとともに、該磁石と前記磁気検出センサを同軸上に配置したことを特徴とする請求項1記載の無接点スイッチ。
【請求項3】
前記磁石を前記操作部材の軸中心周りに所定間隔を隔てて2つ配置するとともに、前記磁気検出センサを前記操作部材の軸中心上に配置したことを特徴とする請求項1記載の無接点スイッチ。
【請求項4】
前記磁石を棒状としたことを特徴とする請求項3記載の無接点スイッチ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−175765(P2011−175765A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−37418(P2010−37418)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(000138462)株式会社ユーシン (241)
【Fターム(参考)】