説明

無摺動バルブ

【課題】 弁体の回転によるシート部材の摩耗を抑制することができる上に、流通路を遮断する際の弁体やシート部材の摩耗を抑制することができ、長期に亘って安定した流通路の遮断を行うことのできる無摺動バルブを提供する。
【解決手段】 所定の回転軸線と直交する仮想面上に沿って貫通した連通穴が設けられた弁体と、弁体収容室が形成されるとともに弁体の連通穴を介して互いに連通する少なくとも二つの流通路が形成されたハウジングとを備え、弁体が傾動することで少なくとも何れか一つの流通路の弁体収容室側の開口周りに配設されシート部材に対して圧接するように構成された無摺動バルブにおいて、シート部材は、弁体に対する接離方向に移動可能に設けられ、シート部材を弁体側に付勢可能な付勢手段が設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体を流通させる流通路の開閉や切り換えを行うための無摺動バルブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、流体を流通させる流通路の開閉や切り換えを行うためのバルブとして、ボールバルブが周知である。かかるボールバルブは、貫通した連通穴が設けられた球状の弁体と、該弁体が内装され、弁体の連通穴を介して互いに連通する少なくとも二つの流通路(例えば、二方弁の場合には、上流側及び下流側の二つの流通路、三方弁の場合には、分岐した三つの流通路)が形成されたハウジングとを備えている。
【0003】
そして、ボールバルブは、一般的に、弁体が連通穴に対して直交方向に延びる回転軸線周りで回転可能に設けられるとともに、各流通路の内部側の開口周りに環状のシート部材が配設されており、弁体を各シート部材に接触させつつ回転させることで、連通穴を介して流通路が連通した状態と、弁体の非貫通部分とシート部材との密接で流通路を遮断した状態とに切り換えることができるようになっている。
【0004】
しかしながら、従来のボールバルブは、シート部材に面圧を作用させた状態(弁体がシート部材に圧接した状態)で弁体を回転させるように構成されているため、流通路の切り換え等(弁体の回転)を繰り返し行うと、弁体やシート部材が顕著に摩耗してしまい、弁体とシート部材との間で良好にシールできずに流通路を確実に遮断することができなくなるといった問題がある。
【0005】
そこで、図6及び図7に示す如く、弁体500がシート部材Sに対して一定の間隔をあけた状態(シート部材Sを摩耗させるような面圧をシート部材Sに作用させることのない非接触状態又は略非接触状態)で所定の回転軸線L周りで回転可能に構成された無摺動バルブが提供されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
かかる無摺動バルブは、何れも弁体500が回転軸線L方向の何れか一端側(例えば、弁体500の上部又は下部)で支持されており、弁体500における回転軸線L方向の他端側(弁体500の上部が支持されている場合には該弁体500の下部を、弁体500の下部が支持されている場合は該弁体500の上部)を付勢することで、弁体500が回転軸線L方向の一端側を傾動支点Pにしてシート部材S側に傾動し、弁体500の非貫通部分がシート部材Sに密接して流通路A,Bを遮断するようになっている。
【0007】
これにより、上記何れの無摺動バルブも、弁体500を回転させる際に弁体500やシート部材Sが摩耗することがないため、流通路A,Bの切り換え等(弁体500の回転)を繰り返し行っても弁体500とシート部材Sとの間を良好にシールすることができ、長期に亘って流通路A,Bを確実に遮断できるようになっている。
【特許文献1】米国特許3515371号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記構成の無摺動バルブは、何れも弁体500がシート部材Sと略一定の間隔をあけて回転軸線L周りで回転し、回転軸線L方向の一端側を支点Pに傾動することで弁体500をシート部材Sに密接させるように構成されているため、流通路Aを遮断する(弁体500を傾動させる)際に、弁体500は、回転軸線L方向の一端側(傾動支点P側)よりも他端側(傾動支点Pの反対側となる付勢される側)がシート部材Sに対して先に当接する傾向にあり、弁体500をシート部材S全周(回転軸線L方向の全域)に密接させるに際し、シート部材Sにおける回転軸線L方向の他端側に過剰な力が作用してしまう。すなわち、弁体500が一点を支点Pに傾動するように構成されているため、弁体500を傾動させる際の回転量が支点Pに近い部位よりも遠い部位の方が大きくなってしまう。そのため、支点Pに近い部位をシート部材Sに当接させようとすると、既にシート部材Sに当接している支点Pから遠い部位がシート部材Sを過剰に押圧してしまうことになる。
【0009】
そのため、シート部材Sの周方向における弁体500とシート部材Sとの接触位置によってシート部材Sに対する弁体500による押圧状態が異なる結果、均一なシールを行うことができなくなってしまう場合がある。また、シート部材Sに弁体500が先に当接してしまう部位(回転軸線L方向の他端側)は、上述の如く過剰な押圧力が作用するため、支点Pに近い部位(回転軸線L方向の一端側)に比して摩耗し易く、シート部材Sの全周に亘って均一にシールできなくなるといった問題があった。
【0010】
そこで、本発明は、斯かる実情に鑑み、弁体の回転によるシート部材の摩耗を抑制することができる上に、流通路を遮断する際の弁体やシート部材の摩耗を抑制することができ、長期に亘って安定した流通路の遮断を行うことのできる無摺動バルブを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る無摺動バルブは、貫通した連通穴が設けられた弁体と、該弁体が内装される弁体収容室が形成されるとともに、弁体収容室内の弁体の連通穴を介して互いに連通する少なくとも二つの流通路が形成されたハウジングとを備え、該ハウジングは、少なくとも何れか一つの流通路の弁体収容室側の開口周りに環状のシート部材が配設され、前記弁体は、シート部材に対して非接触状態又は略非接触状態で、前記連通穴に対して直交方向に延びる回転軸線周りで回転可能に設けられるとともに、非貫通部分がシート部材と対向した状態で回転軸線方向の何れか一端側を支点にしてシート部材側に傾動可能に設けられ、該弁体がシート部材側に傾動することによって非貫通部分がシート部材に圧接して流通路を遮断するように構成された無摺動バルブにおいて、シート部材は、回転軸線に対して直交方向に移動可能に設けられ、ハウジングとシート部材との間に該シート部材を弁体側に付勢可能な付勢手段が介装され、前記弁体がシート部材側に傾動した状態で付勢手段による付勢でシート部材が弁体に押し付けられるように構成されていることを特徴とする。なお、ここで「非接触」とは、シート部材と弁体との間に間隙が形成される状態をいい、「略非接触」とは、シート部材と弁体とが接触しつつも相互に押し合う力(面圧)を作用させていない状態、すなわち、シート部材と弁体との間がシールされていない状態をいう。
【0012】
上記構成の無摺動バルブによれば、回転軸線に対して直交方向に移動可能にシート部材が設けられ、ハウジングとシート部材との間に該シート部材を弁体側に付勢する付勢手段が介装され、前記弁体がシート部材側に傾動した状態で付勢手段による付勢でシート部材が弁体に押し付けられるように構成されているので、弁体が傾動した状態になるまでは、弁体がシート部材に対して非接触状態又は略非接触状態となる。これにより、弁体をシート部材に対して非接触状態又は略非接触状態で回転軸線周りで回転させることができ、弁体の回転によるシート部材の摩耗を防止することができる。
【0013】
そして、流通路を遮断すべく回転軸線方向の一端側を支点(傾動支点)にして弁体を傾動させたとき、その支点から遠い部分からシート部材に当接することになるが、本発明の無摺動バルブは、シート部材が回転軸線に対して直交方向に移動可能であり、さらに、付勢手段によって弁体側に付勢されているため、弁体に押されたシート部材が付勢手段による付勢に抗してその付勢方向とは反対側に押されて移動することになる。これにより、シート部材の支点側に至るまで(シート部材の全周に対して)弁体が当接した状態で、そのシート部材には全周に亘って付勢手段による付勢力のみが作用し、その付勢力によるシート部材と弁体との密接でシールが図られることになる。
【0014】
これにより、シート部材に対して部分的に偏った力が作用しなくなり、シート部材及び弁体の部分的な摩耗が抑制される結果、流通路の開閉を繰り返し行っても長期に亘って安定した流通路の遮断を行うことができる。
【0015】
本発明の一態様として、回転軸線周りで回転する弁体に非接触状態又は略非接触状態となる規定位置でシート部材を位置決めするストッパーが設けられていることが好ましい。このようにすれば、シート部材の弁体側への移動を規定位置で規制することができる。従って、シート部材が常態において付勢手段によって弁体側に付勢されている場合には、シート部材がストッパーによって規定位置で位置決めされ、常態においてシート部材が付勢手段によって弁体側に付勢されていない場合には、シート部材がストッパーによって規定位置より弁体側に脱落することが防止される。すなわち、シート部材と弁体との配置関係を一定に保つことができ、弁体を回転させるときにこれらを確実に非接触状態又は略非接触状態で維持させることができる。
【0016】
本発明の他態様として、前記ハウジングは、流通路の弁体収容室側の開口周りにシート部材を嵌める環状の装着部が凹設され、前記シート部材は、装着部の内周面に密接させるOリングが外周に装着されてもよい。このようにすれば、シート部材の移動を許容しつつもハウジングとシート部材との間のシールを図ることができる。
【0017】
この場合、内径が弁体収容室側ほど拡大するように、弁体収容室側の少なくとも一部の内周面がテーパー状に形成されることが好ましい。このようにすれば、シート部材がテーパー面(内周の拡大)によって隙間が形成されるため、その隙間でシート部材の移動や変形が許容されることになる。これにより、弁体が回転軸線方向の他端側でシート部材を付勢したときに、該シート部材が弁体の当接状態に応じた態様になり易く、シート部材を強引に付勢してしまうのをさらに抑制することができる。
【0018】
そして、前記付勢手段は、皿バネで構成されていることが好ましい。このようにすれば、シート部材を全周に亘って均一な力で付勢することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明に係る無摺動バルブによれば、弁体の回転によるシート部材の摩耗を抑制することができる上に、流通路を遮断する際の弁体やシート部材の摩耗を抑制することができ、長期に亘って安定した流通路の遮断を行うことができるという優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態に係る無摺動バルブについて、添付図面を参照しつつ説明する。
【0021】
本実施形態に係る無摺動バルブは、二本の配管(図示しない)を接続し、その配管間での流体の流通と遮断とを切り換える二方弁である。なお、「流体」とは、一般的な気体や液体は勿論のこと圧送によって流通する粉体等を含む概念である。
【0022】
本実施形態かかる無摺動バルブは、気体や液体を流通させるもので、図1及び図2に示す如く、貫通した連通穴100の形成された弁体10と、該弁体10が内装される弁体収容室200が形成されるとともに、弁体収容室200内の弁体10の連通穴100を介して連通する一対(2つ)の流通路A,Bが形成され、一方の流通路Aの内部(弁体収容室200)側の開口周りに環状のシート部材Sが配設されたハウジング20とを備えている。
【0023】
そして、本実施形態に無摺動バルブ1は、前記弁体10が連通穴100に対して直交方向に延びる回転軸線L周りで回転可能で、該回転軸線L方向の何れか一端側を支点にしてシート部材S側に傾動可能になっている。これに伴い、本実施形態に係る無摺動バルブ1は、上記構成に加え、回転軸線Lを通るようにハウジング20に挿通され、弁体10を回転軸線L方向の一端側(本実施形態においてはハウジング20の下端側)で傾動可能に支持するとともに該弁体10を回転軸線L周りで回転させるステム(以下、第一ステムという)30と、回転軸線Lの他端側(本実施形態においてはハウジング20の上端側)で弁体10をシート部材Sに向けて付勢し、弁体10を傾動させる傾動手段40とをさらに備えている。
【0024】
前記弁体10は、一般的なボールバルブと同様、略球状に形成され、前記連通穴100が該弁体10の略中心を通る真っ直ぐな穴に形成されている。本実施形態に係る弁体10は、回転軸線L方向の一端側となる下部に第一ステム30の一端部(後述する接続部300)を挿入するためのステム挿入部(以下、第一ステム挿入部という)110が凹設されている。該第一ステム挿入部110は、図3(a)〜(c)に示す如く、前記弁体10の回転中心となる回転軸線Lと直交又は略直交する方向に沿って延びる一対の第一平面部110a,110aが前記回転軸線Lを挟んで形成されるとともに、一対の第一平面部110a,110aと直角又は略直角をなし、且つ前記回転軸線Lと直交又は略直交する方向に延びる一対の第二平面部110b,110bが前記回転軸線Lを挟んで形成されている。
【0025】
図1及び図2に戻り、本実施形態に係る弁体10は、回転軸線L方向の他端側(第一ステム挿入部110とは反対側)となる上部に、傾動手段40の後述する押圧部400に押圧(付勢)される被押圧部(以下、第一被押圧部という)120が設けられている。該第一被押圧部120は、弁体10の非貫通部分がシート部材Sと対向した状態で、押圧部400による押圧力が該シート部材Sに向けて作用するように設けられている。本実施形態において、弁体10は、上部に傾動手段40としての後述する付勢用のステム(以下、第二ステムという)40の端部を挿入するステム挿入部(以下、第二ステム挿入部という)130が凹設されている。
【0026】
該第二ステム挿入部130も、第一ステム挿入部110と同様に、非貫通状態の穴(凹部)で構成されており、該第二ステム挿入部130の内周(開口形状)を所定の形状とすることで、該第二ステム挿入部130の内周面の一部が第一被押圧部120とされている。具体的には、該第二ステム挿入部130は、連通穴100の穴心と略同方向に延びる平面からなる第一被押圧部120を備えた内周面によって画定されており、弁体10の非貫通部分と一方の流通路Aとが対向した状態(連通穴100の穴心と流通路A,Bの中心線とが直交した状態)で、第一被押圧部120(内面)が弁体10の変位(傾動)を許容する方向と直交した方向に延び、押圧部400の押圧力が弁体10を変位させる方向に作用するようになっている。
【0027】
本実施形態においては、押圧部400による押圧で弁体10をシート部材S側に変位させた状態(弁体10がシート部材Sに密接した状態)から弁体10を反対側に強制的に変位させる(弁体10をシート部材Sから離間させる)ために、第二ステム挿入部130を画定する内周面は、前記第一被押圧部120と略平行をなして対向する平面からなる別の被押圧部(以下、第二被押圧部という)121をも備えている。
【0028】
前記ハウジング20は、内部に弁体10が内装される弁体収容室200が形成されており、前記二つの流通路A,B(穴)が弁体収容室200を挟んで互いに対向するように形成されている。すなわち、上述の如く、弁体10の連通穴100が真っ直ぐな穴で構成されるため、該連通穴100の両端開口と各流通路A,Bの内部側の開口とが対向するように、二つの流通路A,Bが同心で形成されている。
【0029】
本実施形態に係るハウジング20は、メインフレーム210と、該メインフレーム210に取り付けられるサブフレーム250とで構成されており、メインフレーム210にサブフレーム250と取り付けた状態で内部に弁体収容室200が形成されるようになっている。
【0030】
前記メインフレーム210は、弁体10を内装する弁体収容室200の一部を画定する本体部211と、第一ステム30を挿通するためのステム挿通部(以下、第一ステム挿通部という)212と、付勢手段(第二ステム)40を挿通するためのステム挿通部(以下、第二ステム挿通部という)213と、他方の流通路Bを画定した筒状の配管接続部214とで構成されている。
【0031】
前記本体部211は、内部に弁体10を非接触状態で収容できる空間が略半球状に形成されている。すなわち、本体部211は、一側面に弁体10を挿入し且つサブフレーム250を取り付けるための開口(以下、嵌入口という)215を形成するように、臼状の凹部が形成されている。嵌入口215は、弁体収容室200(凹部)の略中心を通って弁体10の回転軸線Lと直交する中心線を中心にして略円形状に形成され、嵌入口215の開口端縁部には、環状のガスケットGを嵌め込むための段差(採番しない)が形成さている。
【0032】
第一ステム挿通部212は、本体部211に下部に連設されており、弁体10の回転軸線Lと略同心をなして貫通したステム挿通穴(以下、第一ステム挿通穴という)216が設けられている。すなわち、第一ステム挿通部212には、本体部211の嵌入口215の中心線と直交するように、内外(本体部211の凹部(弁体収容室200)と外部)を連通させる第一ステム挿通穴216が穿設されている。
【0033】
第一ステム挿通穴216は、内外を連通させる貫通した段付き穴で構成されている。そして、該第一ステム挿通穴216の外側の内周面(大径部分)には、筒状のガスケットGが内嵌されており、ガスケットGにより回転軸線L周りで回転可能とされる第一ステム30とのシール性を担保するようにしている。
【0034】
本実施形態に係る第一ステム挿通部212のガスケットGは、第一ステム挿通穴216に内嵌めされ、且つ第一ステム30が挿通された状態で、第一ステム30の回転軸線L方向に押圧されることで第一ステム30の外周面と第一ステム挿通穴216の内周面とに密接し、第一ステム30の回転を許容しつつもシール性を担保できるようになっている。そのため、本実施形態に係る無摺動バルブ1は、第一ステム挿通部212のガスケットGを押圧するためのガスケット押圧部材(以下、第一押圧部材という)217を備えている。かかる第一押圧部材217は、第一ステム30が挿通されるとともに、第一ステム挿通穴216の大径の穴に挿入可能な筒状の押圧部217aと、該押圧部217aの一端部から外方に延出した鍔部217bとを備えており、鍔部217bに挿通したボルト(採番しない)を本体部211側にねじ込むことによって、押圧部217aがガスケットGを押圧できるようになっている。
【0035】
なお、本実施形態において、上記構成の第一押圧部材217を採用しているため、第一ステム挿通部212には、第一ステム挿通穴216に押圧部217aが挿入された第一押圧部材217の鍔部217bと対向するフランジ部218aが設けられており、鍔部217bに挿通したボルト(図示しない)をフランジ部218aに設けられたネジ穴(図示しない)に螺合させることで、第一押圧部材217を固定できるようになっている。
【0036】
第二ステム挿通部213は、本体部211に連設されており、該本体部211を挟んで第一ステム挿通部212の反対側(本体部211の上部)に設けられている。そして、該第二ステム挿通部213には、弁体10の回転軸線Lと略同心をなして貫通したステム挿通穴(以下、第二ステム挿通穴という)219が設けられている。すなわち、第二ステム挿通部213には、本体部211の嵌入口215の中心線と直交するように、内外(本体部211の凹部(弁体収容室200)と外部)を連通させる第二ステム挿通穴219が第一ステム挿通穴216と略対向するように穿設されている。
【0037】
第二ステム挿通穴219は、内外を連通させる貫通した段付き穴で構成されている。そして、第二ステム挿通穴219の外側の内周面(大径部分)には、筒状のガスケットGが内嵌されており、該ガスケットGにより回転軸線L周りで回転可能とされる第二ステム40とのシール性を担保するようにしている。
【0038】
本実施形態に係る第二ステム挿通部213のガスケットGは、第二ステム挿通穴219に内嵌めされ、且つ第二ステム40が挿通された状態で、第二ステム40の回転軸線L方向に押圧されることで第二ステム40の外周面と第二ステム挿通穴219の内周面とに密接し、第二ステム40の回転を許容しつつもシール性を担保できるようになっている。そのため、本実施形態に係る無摺動バルブ1は、第一ステム挿通部212と同様に、ガスケットGを押圧するためのガスケット押圧部材(以下、第二押圧部材という)220を第二ステム挿通部213にも備えている。
【0039】
かかる第二押圧部材220は、第二ステム40が挿通されるとともに、第二ステム挿通穴219の大径の穴に挿入可能な筒状の押圧部220aと、該押圧部220aの一端部から外方に延出した鍔部220bとを備えており、鍔部220bに挿通したボルト(図示しない)を本体部211にねじ込むことによって、押圧部220aがガスケットGを押圧できるようになっている。
【0040】
なお、本実施形態において、第一ステム挿通部212と同様の第二押圧部材220を採用しているため、第二ステム挿通部213には、第二ステム挿通穴219に押圧部220aが挿入された第二押圧部材220の鍔部220bと対向するフランジ部218bが設けられており、鍔部220bに挿通したボルト(図示しない)をフランジ部218bに設けられたネジ穴(図示しない)に螺合させることで、第二押圧部材220を固定できるようになっている。
【0041】
メインフレーム210の配管接続部214は、内部の流通路Bが該本体部211の凹部内と連通し、該流通路Bの中心線が弁体10の回転軸線Lと直交するように、一端側が本体部211に接続されている。すなわち、該配管接続部214は、流通路Bが第一ステム30の回転軸線Lと略直交し、且つ本体部211の凹部(嵌入口215)の中心と略同心になるように、本体部211に連設されている。そして、該配管接続部214は、他端側に配管を接続するためのフランジ221が設けられている。
【0042】
前記サブフレーム250は、メインフレーム210に取り付けられるもので、本体部211の嵌入口215を塞ぐ閉塞部251と、一方の流通路Aを画定した筒状の配管接続部252とを備えている。
【0043】
前記閉塞部251は、本体部211の嵌入口215の外側の開口周縁部と対向し、ガスケットGに当接する環状部251aと、該環状部251aの一方の面から突出し、嵌入口215に内嵌めされる環状筒部251bとを備えている。前記環状部251aは、配管接続部252が画定する流通路Aを延長する開口を画定し、本体部211の前記開口縁部と対向する領域にボルト(図示しない)を挿通する穴(図示しない)が穿設されている。これにより、該環状部251aは、挿通したボルトを嵌入口215の外周に設けられたネジ穴(図示しない)にねじ込むことで、本体部211(嵌入口215の開口縁部)のガスケットGに密接し、サブフレーム250とメインフレーム210(本体部211)との間のシール性を担保できるようになっている。
【0044】
前記環状筒部251bは、本体部211の嵌入口215に嵌入した状態で内周面に案内されるようになっており、該サブフレーム250(実質的は、シート部材S及び他方の流通路B)をメインフレーム210に対して位置決めできるようになっている。
【0045】
そして、サブフレーム250の配管接続部252は、環状部251aの他方の面側の開口縁部に一端側が接続されており、閉塞部251を本体部211に取り付けた状態で、内部の流通路Aが他方の流通路Bと対向し、該流通路Aの中心線が内装した弁体10の回転軸線Lと直交するように設けられている。なお、該配管接続部252の他端部にも、配管を接続するためのフランジ253が設けられている。
【0046】
これにより、該ハウジング20は、メインフレーム210にサブフレーム250を取り付けることで、内部に弁体10を内装するための弁体収容室200を画定するようになっている。
【0047】
そして、本実施形態に係る無摺動バルブ1は、一方の流通路Aの内部側(弁体収容室200側)の開口周りに配設された環状のシート部材Sが回転軸線Lと直交する方向(弁体10に対して接離方向)に移動可能となっており、ハウジング20とシート部材Sとの間に該シート部材Sを弁体10側に付勢する付勢手段256が介装されるとともに、弁体10を回転させるときに非接触状態又は略非接触状態となる規定位置でシート部材Sを位置決めするストッパー257が設けられている。
【0048】
そして、上述の如く、シート部材Sを回転軸線Lに対して直交方向に移動可能に設けるべく、本実施形態に係るハウジング20(本実施形態においては、サブフレーム250の閉塞部251)には、一方の流通路Aの弁体収容室200(ハウジング20の内部)側の開口周りにシート部材Sを嵌めるための環状の装着部254が凹設されている。すなわち、サブフレーム250には、弁体収容室200側の端部の内径が他の部分よりも大径に設定された段付き穴が形成されており、その段付き穴の小径部分と該小径部分に対応して大径部分にまで延びる延長領域とで流通路Aが構成され、大径部分における延長領域を除いた環状の領域で装着部254が構成されている。該装着部254は、奥側に付勢手段256(本実施形態においては皿バネ256)を嵌め込み、該付勢手段256に隣接して開口側にシート部材Sを嵌め込むようになっている。
【0049】
そして、本実施形態においては、装着部254の奥部の面(環状の面)の内周縁部には、弁体収容室200側に延出した環状延出部255が形成されており、装着部254(大径部分)の内周面と環状延出部255との間に皿バネ256を嵌め込むようにしている。そして、環状延出部255は、装着部254に嵌め込んだシート部材Sの穴心方向の移動を許容できるように延出量が設定されている。
【0050】
前記ストッパー257は、ハウジング20に取り付けられており、装着部254の開放部分に延在するように設けられている。具体的には、ストッパー257は、外径が装着部254の外径よりも大径で、内径が装着部254の内径よりも小径に設定された円環状の板材で構成されており、内周端部が装着部254の開口端縁よりも中心側に延在するように取り付けられている。本実施形態において、ストッパー257は、サブフレーム250の閉塞部251の端面に対し、外周端部がネジ部材258によって螺着されており、装着部254の内周縁よりも中心側に延出した内周端部に対し、装着部254内のシート部材Sが付勢手段256による付勢で弁体10側に押されて接触するようになっている。これにより、弁体10を回転軸線L周りで回転させる際に、該弁体10とシート部材S(後述するシール部260)とが相対的な関係を一定の状態で維持できる位置(例えば、一定の間隔のあく位置、一定の接触状態となる位置)にシート部材Sが位置決めされるようになっている。本実施形態に係るストッパー257は、回転軸線L周りで回転する弁体10とシート部材Sが一定の間隔で維持することのできる規定位置にシート部材Sを位置決めできるように設けられている。
【0051】
装着部254は、内径がシート部材Sの外径よりもやや大きく、奥行き(ハウジングに取り付けられたストッパー257の端面から奥部の面までの流通路Aの穴芯方向の深さ)が、シート部材Sの厚みと皿バネ256の厚み(自然長)との合計寸法よりもやや小さく設定されている。これにより、常態において皿バネ256の付勢力がシート部材Sに対して弁体収容室200に向けて作用する一方、皿バネ256が弾性変形することで該皿バネ256の付勢方向とは反対方向へのシート部材Sの移動が許容されるようになっている。
【0052】
さらに、本実施形態に係る装着部254は、開口(弁体収容室)側ほど内径が拡大するように少なくとも開口側の内周面がテーパー状をなすテーパー部259が形成されている。本実施形態に係るテーパー部259は、開口端から奥部に向けてシート部材Sの厚みの略半分に相当する領域に形成されている。これにより、装着部254に対するシート部材Sの嵌め込みが容易となる上に、装着状態においてシート部材Sに対して弁体10が部分的に当接したときにシート部材Sの移動や変形を許容できるようになっている。
【0053】
前記シート部材Sは、当該無摺動バルブ1に流通させる流体の性状に応じて金属製(例えば、ステンレス)や樹脂製(例えば、テフロン)のものが採用され、本実施形態においては、金属製のシート部材Sを採用している。
【0054】
そして、シート部材Sは、当接させる弁体10が略球状に形成されているため、弁体10に対する不要な緩衝を防止した上で該弁体10の非貫通部分(球面部分)に密接できるように、弁体10側の内周縁部がテーパー面状に形成されるとともに、そのテーパー面の一部を突出させたシール部260が環状に形成されている。
【0055】
本実施形態に係るシート部材Sは、装着部254の内周面と微小な隙間を形成する外径に設定されており、外周に対して装着部254の内周面に密接させるOリング261が装着されている。そして、本実施形態において、前記シート部材Sは、穴心方向に移動可能とされているため、シート部材SとOリング261との相対的な配置を維持させるべく、シート部材Sの外周に対し、全周に亘ってOリング261を嵌め込むための溝262が形成されている。該溝262は、Oリング261の断面における外径よりも浅く設定されており、シート部材Sの外周面からOリング261の一部が突出するように形成されている。
【0056】
前記第一ステム30は、上述の如く、ハウジング20(第一ステム挿通部212)に挿通され、該ハウジング20内に位置する一端部に、弁体10の第一ステム挿入部110(一対の第一平面部110a,110a間:一対の第一平面部110a,110a及び一対の第二平面部110b,110bで包囲される領域)に挿入される接続部300が形成されている。
【0057】
該第一ステム30の接続部300は、図3(a)〜(c)に示す如く、前記一対の第一平面部110a,110aと対向するように、前記回転軸線Lと直交又は略直交方向に延びる一対の凸条部300a,300aが前記回転軸線Lを挟んで形成されるとともに、一対の凸条部300a,300aの延びる方向と直交又は略直交する方向に延び且つ前記回転軸線Lと平行又は略平行な一対の第三平面部300b,300bが前記回転軸線Lを挟んで形成されている。
【0058】
前記一対の凸条部300a,300aは、対向する第一平面部110a,110aに対して隙間があくように形成されている。すなわち、弁体10が傾動できるように一対の第一平面部110a,110aの間隔よりも一対の凸条部300a,300aの間隔が狭く設定されており、弁体10が傾動したときに各凸条部300a,300aが対向する各第一平面部110a,110aに対して線接触するように構成されている。
【0059】
前記第三平面部300b,300bは、対向する弁体10側の第二平面部110b,110bと面接触しており、第一ステム30を回転させたときのトルクが第二平面部110b,110bから第三平面部300b,300bに伝達できるように構成されるとともに、その接触面に沿った弁体10の移動(傾動)を許容できるように構成されている。
【0060】
そして、ハウジング20内に位置する第一ステム30の先端には、弁体10と点接触するように構成された凸部310が形成されている。この凸部310は、頂点(最も突出した部分)が第一ステム30(弁体10)の回転軸線L上に位置するように形成されており、本実施形態においては、外面が球面状をなすように形成されている。そして、該第一ステム30は、前記凸部310が弁体10の第一ステム挿入部110の奥部に形成される面(平面)に接触するように設けられる。すなわち、第一ステム30は、上方にある弁体10を支持できるように取り付けられる。
【0061】
第一ステム30は、ハンドル等を取り付けることで手動によって回転させることも可能であるが、本実施形態においては、第一ステム30の回転角度を任意に設定できるパルスモータ等の駆動モータ(図示しない)が他端側に接続され、該駆動モータによる駆動により、弁体10の回転軸線L周りで回転するようになっている。
【0062】
図1及び図2に戻り、本実施形態に係る傾動手段40には、ハウジング20(第二ステム挿通部213)に挿通され、ハウジング20内に位置する一端部の外周の少なくとも一部に径方向外方に突出した押圧部400が設けられた前記第二ステム(付勢用のステム)が採用されている。
【0063】
第二ステム40について具体的に説明すると、該第二ステム40は、ハウジング20に挿通されるステム本体401と、該ステム本体401の外周に対して部分的に突設された前記押圧部400とで構成されている。該押圧部400は、湾曲した外周面に対する曲率中心がステム本体401の軸心に対して偏心した偏心カムであり、弁体10の非貫通部分がシート部材Sに対向した状態で、第二ステム40を回転軸線L周りで回転させると、弁体10の第一被押圧部120に接触乃至押圧するようになっている。
【0064】
また、本実施形態に係る押圧部400は、弁体10の非貫通部分がシート部材Sに対向した状態で、第二ステム40を回転軸線L周りで逆回転(押圧部400に第一被押圧部120を押圧させるとき回転方向とは逆方向に回転)させることで、第二被押圧部121に対しても押圧できるようになっており、シート部材S側に傾動(変位)した弁体10(非貫通部分)をシート部材Sから強制的に離間させることもできるようになっている。
【0065】
上記構成の第二ステム40は、第一ステム30と同様に、ハンドル等を取り付けることで手動によって回転させることも可能であるが、本実施形態においては、第二ステム40の回転角度を任意に設定できるパルスモータ等の駆動モータ(図示しない)が他端側に接続されている。すなわち、本実施形態に係る無摺動バルブ1は、回転角度を任意に設定できるパルスモータ等の駆動モータで第二ステム40を回転させることにより、弁体10を傾動させるに際して押圧部(偏心カム)400による弁体10に対する押圧力が所定の押圧力となるよう構成されている。
【0066】
これにより、押圧部400が摩耗して弁体10に対する押圧力が所定の押圧力よりも小さくなったとき、第二ステム40の回転角度を大きくすることで押圧部400(第二ステム40)を交換することなく、既存の押圧部400で弁体10に対して所定の押圧力を作用させることができるようになっている。なお、駆動モータ(第二ステム40)の回転角度の設定は、手動であってもよいが、例えば、第二ステム40のトルクを測定するトルクセンサを設け、そのトルクセンサの検知結果が所定値(押圧部400による押圧力が所定の押圧力となるトルク値)になるように駆動モータの回転角度を自動的に変更するように制御しても勿論よい。
【0067】
本実施形態に係る無摺動バルブ1は、以上の構成からなり、次に、本実施形態に係る無摺動バルブ1の作動について説明する。
【0068】
まず、図1に示す如く、二つの流通路A,Bが弁体10の連通穴100を介して連通すると流体の流通が許容される。この状態において、二つの流通路A,Bと弁体10の連通穴100とが同心又は略同心をなし、弁体10がシート部材Sに対して非接触状態又は略非接触状態になっており、押圧部400が弁体10の第一被押圧部120及び第二被押圧部121の何れに対しても押圧していない状態となっている。ここで「弁体10がシート部材Sに対して非接触状態」とは、弁体10がシート部材Sから完全に離間して間隙を形成した状態をいい、「弁体10がシート部材Sに対して略非接触状態」とは、弁体10がシート部材Sに対して若干接触、すなわち、シート部材Sを摩耗させるような(流通路A,Bを遮断するときのような)面圧を作用させずに弁体10がシート部材Sの少なくとも一部に接触している状態をいう。なお、本実施形態においては、シート部材Sが前記規定位置に位置決めされることで、弁体10はシート部材Sに対して非接触状態になっている。
【0069】
そして、このように流体の流通を許容した状態から流通路A,Bを遮断するには、第二ステム40をそのままの状態で維持させつつ第一ステム30のみを90°回転させる。そうすると、第一ステム30の回転力が第三平面部300b,300bを介して弁体10の第二平面部110b,110bに伝達され、弁体10も90°回転することになる。このとき、第二平面部110b,110bと第三平面部300b,300bとは面接触した状態を維持し、第一ステム30のトルクが作用しても、第一ステム30(凸条部300a,300a、第三平面部300b,300b)と弁体10(第一平面部110a,110a、第二平面部110b,110b)とが片当たり(部分的に接触)することなく、第一ステム30からのトルクが弁体10に伝達されることになる。
【0070】
このように第二ステム40を回転させることなく弁体10を回転させるとき、押圧部400(カム)は、第一被押圧部120及び第二被押圧部121の何れも押圧しない状態(弁体10を傾動させるような付勢を作用させない状態)で維持し、弁体10はシート部材Sに対して非接触状態を維持しつつ所定の回転軸線L周りで回転する結果、弁体10の非貫通部分が一方の流通路A(シート部材S)に対して隙間をあけた状態で対向することになる。また、第一ステム30のトルクを伝達した弁体10側の第二平面部110b,110bと第一ステム30の第三平面部300b,300bとが、弁体10を傾動させる方向に沿った状態(流通路A,Bの穴心と平行又は略平行になった状態)になり、第二平面部110b,110bと第三平面部300b,300bとが接触していても弁体10の傾動が許容された状態となる。
【0071】
そして、第二ステム40を回転させると、押圧部400が第一被押圧部120(弁体10の上部側)を押圧して弁体10をシート部材S側に付勢し、その付勢で弁体10が傾動しようとする。このとき、第一ステム30の先端(弁体10を支持した支持点)を傾動支点にして弁体10が傾動することになる。本実施形態においては、弁状を弁体10の下部が(第一ステム30の接続部300と弁体10の第一ステム挿入部110とが)回転軸線Lと直交する方向に線接触するとともに、体10の第二ステム挿入部130の奥部が第一ステム30の円弧面状をなす先端に点接触しつつ弁体10が傾動することになる。
【0072】
そうすると、最初に傾動支点からの距離が遠い回転軸線Lの他端側(ハウジング20の上部側)で弁体10がシート部材Sに当接し、弁体10が引き続き傾動することになるため、シート部材Sの上部側が弁体10に押さえ込まれることになる。本実施形態に係る無摺動バルブ1は、上述の如く、シート部材Sが移動可能に構成されるとともに、付勢手段(皿バネ)256に付勢されているため、皿バネ256の弾性力に抗してシート部材Sの上部が弁体10に押さえ込まれ、移動することになる。これにより、シート部材Sに対して強引な押し込み(押圧)が作用することなく、押し込みによって変形した皿バネ256の付勢力の作用でシート部材S(シール部260)が弁体10に押し付けられることになる。
【0073】
そして、弁体10の傾動が進み、図2に示す如く、弁体10の非貫通部分がシート部材Sの全周に亘って付勢手段(皿バネ256)の付勢で面圧を作用させつつ密接(圧接)し、一方の流通路A(二つの流通路A,B間)が遮断され、流体の流通が停止することになる。
【0074】
そして、この状態から流体を流通させる状態に切り換えるには、第二ステム40を逆回転(弁体10をシート部材S側に変位させる場合とは反対側に回転)させると、第一被押圧部120に対する押圧部400の当接が解除される一方、該押圧部400が第二被押圧部121を押圧することになり、第二被押圧部121に対する押圧部400の押圧作用で、弁体10がシート部材Sから離間する方向に傾動する。この際、シート部材Sは、付勢手段(皿バネ)256の付勢により、弁体10側に移動することになるが、ストッパー257との当接によって、規定位置で位置決め(位置規制)されることになる。
【0075】
その結果、弁体10が基の位置に復帰する一方で、シート部材Sが規定位置で位置決めされ、弁体10とシート部材Sとが非接触状態(略一定の間隔)に戻ることになる。そして、第二ステム40を回転させることなく第一ステム30を逆回転(弁体10の非貫通部分をシート部材Sと対向させる場合とは反対側に回転)させると、弁体10がシート部材Sに対して非接触状態で回転し、図1に示す如く、二つの流通路A,Bが弁体10の連通穴100を介して連通して流体の流通を許容した状態に戻ることになる。
【0076】
以上のように、本実施形態に係る無摺動バルブ1は、ハウジング20に対して弁体に対する接離方向に移動可能にシート部材Sが設けられ、ハウジング20とシート部材Sとの間に該シート部材Sを弁体10側に付勢する付勢手段256が介装されるとともに、弁体10を回転させるときに非接触状態となる規定位置でシート部材Sを位置規制するストッパー257が設けられているので、シート部材Sが付勢手段256によって弁体10側に付勢されていてもストッパー257によって規定位置で位置決めされる。これにより、シート部材Sに対して非接触状態で弁体10を回転軸線L周りで回転させることができ、弁体10の回転によるシート部材Sの摩耗を防止することができる。
【0077】
そして、流通路A,Bを遮断すべく回転軸線Lの一端側(本実施形態においては第一ステム30の突部310との接触点)を傾動支点にして弁体10を傾動させたとき、その傾動支点からより離れた位置からシート部材Sに当接することになるが、本実施形態の無摺動バルブ1は、シート部材Sが回転軸心Lと直交する方向に移動可能であり、さらに、付勢手段256によって弁体10側に付勢されているため、弁体10に押されたシート部材Sが付勢手段256による付勢に抗してその付勢方向とは反対側に押されて移動することになる。これにより、シート部材Sの傾動支点側に至るまで(シート部材Sの全周に対して)弁体10が当接した状態で、そのシート部材Sには全周に亘って付勢手段256による付勢力のみが作用し、その付勢力によるシート部材Sと弁体10との密接でシールが図られることになる。
【0078】
これにより、シート部材Sに対して部分的に偏った力が作用しなくなり、シート部材S及び弁体10の部分的な摩耗が抑制される結果、流通路A,Bの開閉を繰り返し行っても長期に亘って安定した流通路A,Bの遮断を行うことができる。また、従来のように弁体10を傾動させるのにシート部材Sとの当接で過剰な力が作用すると、その反力が弁体10を傾動させるカム状の押圧部400にも作用する結果、押圧部400の摩耗も激しくなるが、本実施形態に係る無摺動バルブ1は、上述のようにシート部材Sを移動可能に構成するとともに付勢手段256でシート部材Sを付勢することで、シート部材S及び弁体10に過剰な力が作用しなくなるので、押圧部200に作用する反力も小さくなり、押圧部400の摩耗等も抑制することができる。
【0079】
また、ハウジング20は、流通路Bの弁体収容室200側の開口周縁部にシート部材Sを嵌める環状の装着部254が凹設され、前記シート部材Sの外周に対し、装着部254の内周面に密接させるOリング261が装着されているので、シート部材Sの移動を許容しつつもハウジング20とシート部材Sとの間のシールを図ることができる。
【0080】
さらに、前記装着部254は、開口側ほど内径が拡大するように少なくとも開口側の内周面がテーパー状をなすテーパー部259が形成されているため、テーパー部259によって形成される隙間によってシート部材Sの移動又は変形が許容される。これにより、弁体10が回転軸線L方向の他端側でシート部材Sを付勢したときに、該シート部材Sが弁体10の当接状態に応じた態様になり易く、シート部材Sを強引に付勢してしまうのをさらに抑制することができる。
【0081】
そして、前記付勢手段256を皿バネで構成したので、シート部材Sの全周を均一な力で付勢することができる結果、良好なシールを得ることができる。
【0082】
尚、本発明の無摺動バルブは、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0083】
上記実施形態において、シート部材Sを付勢する付勢手段256として皿バネを採用したが、これに限定されるものではなく、例えば、付勢手段256として複数のコイルバネをシート部材Sの周方向に連続して又は間隔をあけて配置するようにしてもよい。すなわち、シート部材Sを付勢する付勢手段256は、シート部材Sの全周に亘って連続的又は断続的に付勢できるように構成されればよい。
【0084】
上記実施形態において、弁体10をシート部材Sに対して非接触状態で回転できるように構成したが、これに限定されるものではなく、例えば、弁体10をシート部材Sに対して略非接触状態で回転できるように構成してもよい。すなわち、弁体10がシート部材Sに接触しつつも相互に押し合う力(面圧)を作用させていない状態(シート部材と弁体との間がシールされていない状態)で回転できるように構成してもよい。具体的には、傾動前の弁体10(回転軸線L周りで回転する弁体10)に面圧を作用させることなく接触する規定位置でシート部材Sを位置決めするようにストッパー257を設けたり、常態において、シート部材Sを弁体10側に付勢することのないように、皿バネ等の付勢手段256を自然長の状態で配設し、付勢手段256及び弁体10の両者に接触させるようにシート部材Sを配置するようにしたりしてもよい。
【0085】
このようにすれば、常態においてシート部材Sが弁体10に圧接するように付勢されることなく、弁体10に接触しているだけである。これにより、弁体10を回転軸線L周りで回転させてもシート部材Sが摩耗することを抑制することができる。特に、弁体10とシート部材Sとを略非接触状態にすると、無摺動バルブ1に流通させる対象が粉体等である場合には弁体10とシート部材Sとの間に粉体等が入り込まなくなるため、弁体10の円滑な回転を確保することができ有効である。
【0086】
また、この場合においても、弁体10の非貫通部分がシート部材Sと対向した状態で弁体10を傾動させたときに、該弁体10にシート部材Sが押されることで付勢手段256の付勢力が作用し、その付勢力の作用によってシート部材Sが弁体10に押し付けられ、シート部材Sと弁体10との間をシールすることができる。なお、付勢手段256を自然長で配設する場合には、必ずしもストッパー257を設ける必要はないが、シート部材Sの不必要な移動を確実に規制するには、付勢手段256を自然長で配置する場合であっても弁体10がシート部材Sと略非接触となる規定位置でシート部材Sを位置決めするようにストッパー257を設けることが好ましい。
【0087】
上記実施形態において、ストッパー257を円環状に形成したが、これに限定されるものではなく、例えば、ハウジング20内における流通路Bの開口周方向に間隔をあけて複数にストッパーを設け、各ストッパーが開口周縁から中心側に延出するようにしてもよい。このようにしてもシート部材Sをストッパーに当接させて規定位置で位置決めすることができる。
【0088】
上記実施形態において、前記弁体10に一対の第二平面部110b,110bを形成するとともに、第一ステム30の接続部300に前記第二平面部110b,110bと接触させる一対の第三平面部300b,300bを形成することで、第一ステム30のトルクを弁体10に伝達できるようにしたが、これに限定されるものではなく、例えば、図4(a)、及び図4(b)に示す如く、弁体10又は第一ステム30の何れか一方に、前記回転軸線Lと直交又は略直交する方向に延びる一対の凸条110b,300bを、回転軸線Lを挟んで形成するとともに、他方に対して前記回転軸線Lと直交又は略直交する方向に延びて前記凸条110b,300bと接触する一対の平面部110b、300bを、回転軸線Lを挟んで形成したものであってもよい。
【0089】
また、図4(c)に示す如く、弁体10及び第一ステム30のそれぞれに、回転軸線Lを挟んで該回転軸線Lと直交又は略直交する方向に延びる一対の凸条110b,300bを形成し、互いの凸条110b,300b同士を接触させたものであってもよい。さらに、図4(d)に示す如く、弁体10に対し、前記回転軸線Lと直交又は略直交する方向に延びる一対のピン体P,P(110b,110b)を、前記回転軸線Lを挟んで配設するとともに、第一ステム30の接続部300に前記回転軸線Lと直交又は略直交する方向に延びて前記ピン体P,Pと接触する一対の平面部300b、300bを、回転軸線Lを挟んで形成したものであってもよい。
【0090】
上記実施形態において、第二ステム40を回転軸線L周りで回転させることで、弁体10をシート部材S側に付勢するようにしたが、例えば、図5(a)及び図5(b)に示す如く、第二ステム40を回転軸線L方向に移動可能に構成するとともに、該第二ステム40のハウジング20内の端部に該第二ステム40を回転軸線L方向に移動させることで弁体10の第一被押圧部120を押圧できる傾斜面410,410(押圧部400)を形成したものであってもよい。
【0091】
上記実施形態において、弁体10を回転させるステム(第一ステム)30をハウジング20の下部に挿通して設けたが、これに限定されるものではなく、例えば、第一ステム30をハウジング20の上部に挿通したものであっても勿論よい。すなわち、上記実施形態と天地逆転させた構成のものであってもよい。
【0092】
上記実施形態において、弁体10を回転させる第一ステム30と、弁体10を付勢するための第二ステム40とを別個独立に設けるようにしたが、これに限定されるものではなく、例えば、従来技術で説明した図6に示すような無摺動バルブであってもよい。すなわち、弁体10の回転中心となる回転軸線Lと直交又は略直交する方向に軸心が延びるように前記回転軸線Lを挟んで対向する一対のピン体501,501が前記弁体500に設けられ、ステム520に対して、ピン体501,501の軸心と平行又な略平行をなす一対の支持面521,521が形成された接続部522と、前記支持面521,521に対して連続した傾斜面523’,523’の形成された押圧部523とが形成され、接続部523が弁体500にトルクを伝達して弁体500を回転させた後、該ステム520を回転軸線L方向に移動させることで押圧部523が弁体500を押圧(付勢)し、その押圧で弁体500をシート部材S側に傾動させてシート部材Sに弁体500の非貫通部分を密接させるようになった無摺動バルブであってもよい。なお、従来技術を説明するための図6を引用しているため図示していなが、この場合においても、上記実施形態と同様のシート部材S、付勢手段256、ストッパー257を設けることは勿論のことである。
【0093】
上記実施形態において、第一ステム30の端部に外面が球面状をなす凸部310を設け、その凸部310で弁体10を支持するようにしたが、これに限定されるものではなく、上記実施形態のように弁体10を支持するには、例えば、弁体10の第二ステム挿入部130の奥部の面に第一ステム30側に突出した凸部を設け、該凸部310を第一ステム30の端面に当接させることで弁体10を支持するようにしたり、第二ステム挿入部130の奥部の面及び第一ステム30の端面の両方に凸部を設け、両凸部同士を当接させることで弁体10を支持するようにしたりしてもよい。
【0094】
このようにしても、弁体10を第一ステム30に点接触させた状態で該弁体10を支持することができる。そして、かかる凸部310は外面が球面状をなしたものに限定されるものではなく、例えば、凸部310を円錐状や多角錐状に形成したもの等種々変更可能である。但し、弁体10の傾動を考慮すれば、凸部310は外面が球面状をなしたものが好ましいことは言うまでもない。
【0095】
上記実施形態において、二方弁について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、ハウジング20に三つの流通路が回転軸線L周りに90°間隔で形成されるとともに、弁体10に三つの流通路のうち二つと連通する略直角に屈曲した連通穴と、残りの流通路に対して対向する非貫通部分とが形成され、弁体10を90°正逆回転させることで連通穴を介して連通する流通路が切り替わる三方弁であってもよい。
【0096】
上記実施形態において、第一ステム30の端部(凸部310)で弁体10を支持するようにしたが、これに限定されるものではなく、例えば、第一ステム30を段付き棒状に形成し、その小径側をハウジング20側にして大径部分で弁体10を支持できるようにしても勿論よい。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の一実施形態に係る無摺動バルブの縦断面図であって、弁体の連通穴を介してハウジングの流通路が連通した状態を示す。
【図2】同実施形態に係る無摺動バルブの縦断面図であって、弁体の非貫通部分がシート部材に密接し、ハウジングの流通路を遮断した状態を示す。
【図3】同実施形態に係る無摺動バルブの部分拡大断面図であって、(a)は、ハウジング部分を仮想線で示した図1のI−I拡大断面図、(b)は、(a)のII−II拡大断面図、(c)は、(a)のIII−III拡大断面図を示す。
【図4】本発明の他実施形態に係る無摺動バルブの弁体と第一ステムとの接続部分の部分拡大断面図であって、(a)は、弁体に平面部を形成するとともに第一ステムに凸条を形成した無摺動バルブの部分拡大断面図、(b)は、弁体に凸条を形成するとともに第一ステムに平面部を形成した無摺動バルブの部分拡大断面図、(c)は、弁体に凸条を形成するとともに第一ステムに凸条を形成した無摺動バルブの部分拡大断面図、(d)は、弁体にピン体を設けるとともに第一ステムに平面部を形成した無摺動バルブの部分拡大断面図を示す。
【図5】本発明の別の実施形態に係る無摺動バルブの付勢手段(弁体と第二ステムとの接続部分)の部分拡大断面図であって、(a)は、弁体を回転軸線周りで回転させる状態の部分拡大断面図を示し、(b)は、押圧部が弁体(被押圧部)を押圧し、弁体の非貫通部分をシート部材に密接させた状態の部分拡大断面図を示す。
【図6】従来の無摺動バルブの縦断面図を示す。
【図7】従来の別の無摺動バルブの縦断面図を示す。
【符号の説明】
【0098】
1…無摺動バルブ、10…弁体、20…ハウジング、30…第一ステム、40…第二ステム(傾動手段)、100…連通穴、110…第一ステム挿入部、110a…第一平面部、110b…第二平面部、120…第一被押圧部、121…第二被押圧部、130…第二ステム挿入部、200…弁体収容室、210…メインフレーム、211…本体部、212…第一ステム挿通部、213…第二ステム挿通部、214…配管接続部、215…嵌入口、216…第一ステム挿通穴、217…第一押圧部材、217a…押圧部、217b…鍔部、218a…フランジ部、218b…フランジ部、219…第二ステム挿通穴、220…第二押圧部材、220a…押圧部、220b…鍔部、221…フランジ、250…サブフレーム、251…閉塞部、251a…環状部、251b…環状筒部、252…配管接続部、253…フランジ、254…装着部、255…環状延出部、256…皿バネ(付勢手段)、257…ストッパー、258…ネジ部材、259…テーパー部、260…シール部、261…リング、262…溝、300…接続部、300a…凸条部、300b…第三平面部、310…凸部、400…押圧部、401…ステム本体、A,B…流通路、G…ガスケット、L…回転軸線、S…シート部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通した連通穴が設けられた弁体と、該弁体が内装される弁体収容室が形成されるとともに、弁体収容室内の弁体の連通穴を介して互いに連通する少なくとも二つの流通路が形成されたハウジングとを備え、該ハウジングは、少なくとも何れか一つの流通路の弁体収容室側の開口周りに環状のシート部材が配設され、前記弁体は、シート部材に対して非接触状態又は略非接触状態で、前記連通穴に対して直交方向に延びる回転軸線周りで回転可能に設けられるとともに、非貫通部分がシート部材と対向した状態で回転軸線方向の何れか一端側を支点にしてシート部材側に傾動可能に設けられ、該弁体がシート部材側に傾動することによって非貫通部分がシート部材に圧接して流通路を遮断するように構成された無摺動バルブにおいて、シート部材は、回転軸線に対して直交方向に移動可能に設けられ、ハウジングとシート部材との間に該シート部材を弁体側に付勢可能な付勢手段が介装され、前記弁体がシート部材側に傾動した状態で付勢手段による付勢でシート部材が弁体に押し付けられるように構成されていることを特徴とする無摺動バルブ。
【請求項2】
回転軸線周りで回転する弁体に非接触状態又は略非接触状態となる規定位置でシート部材を位置決めするストッパーが設けられている請求項1記載の無摺動バルブ。
【請求項3】
前記ハウジングは、流通路の弁体収容室側の開口周りにシート部材を嵌める環状の装着部が凹設され、前記シート部材は、装着部の内周面に密接させるOリングが外周に装着されている請求項1又は2記載の無摺動バルブ。
【請求項4】
前記装着部は、内径が弁体収容室側ほど拡大するように、弁体収容室側の少なくとも一部の内周面がテーパー状に形成されている請求項3記載の無摺動バルブ。
【請求項5】
前記付勢手段は、皿バネで構成されている請求項1乃至4の何れか1項に記載の無摺動バルブ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−85244(P2009−85244A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−252280(P2007−252280)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000152480)株式会社日阪製作所 (60)
【Fターム(参考)】