無機−有機ハイブリッド粒子、及びその製造方法。
【課題】2種以上の成分から構成される有機材料が相分離した構造を有し、かつ相内に無機材料を含む無機−有機ハイブリッド粒子及び該無機−有機ハイブリッド粒子の製造方法を提供する。
【解決手段】2種以上の成分から構成される有機材料が相分離した構造を有し、かつ少なくとも1相に1種以上の無機材料を含む、無機−有機ハイブリッド粒子を、良溶媒に溶解した2種以上の成分から構成される有機材料を含む溶液中に、該良溶媒と相溶する該有機材料の貧溶媒を添加した後に、該良溶媒を蒸発させて、該有機材料が相分離した構造を有する有機粒子を得ること;該有機粒子及び該成分の少なくとも1種に配位し得る1種以上の無機材料の塩を混合して、無機イオン−有機ハイブリッド粒子を得ること;及び該無機イオン−有機ハイブリッド粒子を還元して無機−有機ハイブリッド粒子を得ることにより製造する。
【解決手段】2種以上の成分から構成される有機材料が相分離した構造を有し、かつ少なくとも1相に1種以上の無機材料を含む、無機−有機ハイブリッド粒子を、良溶媒に溶解した2種以上の成分から構成される有機材料を含む溶液中に、該良溶媒と相溶する該有機材料の貧溶媒を添加した後に、該良溶媒を蒸発させて、該有機材料が相分離した構造を有する有機粒子を得ること;該有機粒子及び該成分の少なくとも1種に配位し得る1種以上の無機材料の塩を混合して、無機イオン−有機ハイブリッド粒子を得ること;及び該無機イオン−有機ハイブリッド粒子を還元して無機−有機ハイブリッド粒子を得ることにより製造する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機−有機ハイブリッド粒子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
nm〜μmの領域の大きさを持った微粒子は、そのサイズにおいて材料が持つ本来の量子的な性質が顕著に現れること、体積に対する表面の比が平滑な基板などよりも非常に大きく、活性の高い表面状態を持っていること、などの理由から、光機能性、電子機能性、生体機能性などの機能を有する機能性材料として注目されている。
【0003】
特に、特性の異なる2種以上の成分から構成される材料を用いてナノサイズの微粒子を製造することができれば、1の微粒子に2以上の特性を付与することができ、その応用範囲をさらに広げることができると期待される。
【0004】
2種以上の成分から構成される材質からなる微粒子を製造する方法としては、微粒子を適当な基板上に塗布した後に、その上面にスパッタリング等を行って金属を塗布する、あるいはその上面に高分子ブラシを合成するなどして、非対称な微粒子(Janus微粒子)を調整する試み(非特許文献1)、エマルジョンを用いてシリカ粒子にポリスチレン微粒子を結合させ、ダンベル上の微粒子を調製した後、高分子ブラシを合成する試み(非特許文献2)がなされているが、いずれも多段階の工程を必要とし、かつ生産効率が低いという問題を有している。
【0005】
また、非対称な異形微粒子を形成する方法として、シード重合と呼ばれる方法が知られている(特許文献1)。しかし、この方法も煩雑な操作を必要とし、また使用される2種のポリマーのうちの一方が必ず微粒子の表面側に配置されることになり、微粒子におけるポリマー間の配向性が著しく制限されるという問題がある。
【0006】
前記の方法とは異なる原理に基づく高分子からなる微粒子の製造方法として、ホモポリマーやブロックコポリマーなどの単一の有機材料を用いて、良溶媒に溶解した有機材料溶液中に該良溶媒と相溶する前記材料の貧溶媒を添加して該材料の濃度を低下させることで、上記有機材料からなる微粒子を調製する方法が報告されている(特許文献2、非特許文献3)。さらに、2種以上の成分から構成される有機材料を用いる微粒子を製造する方法についても報告されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−226708
【特許文献2】特開2006−77076
【特許文献3】特開2007−332187
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】V. N. Paunovら、Advanced Materials、2004年、第16巻、第9号、788頁
【非特許文献2】Adeline Perroら、Chemical Communications、2005年、第44号、5542頁
【非特許文献3】Hiroshi Yabuら、Advanced Materials、2005年、第17巻、第17号、2062頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、キャパシタなどの電子デバイス、メタマテリアルなどの光学デバイス、及び電気泳動ディスプレイの表示画素などの表示デバイスなどに用いられる微粒子は金属などの無機材料を含むものであることが望ましい。ところが、これまでに、2種以上の成分から構成される有機材料が相分離した構造を有し、かつ相内に無機材料を含む無機−有機ハイブリッド粒子を製造する技術は知られていない。
【0010】
そこで本発明は、2種以上の成分から構成される有機材料が相分離した構造を有し、かつ相内に無機材料を含む無機−有機ハイブリッド粒子及び該無機−有機ハイブリッド粒子の製造方法を提供することを解決すべき課題とした。さらに本発明は、上記無機−有機ハイブリッド粒子を用いた各種デバイスを提供することを解決すべき課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、無機材料である金属と、この金属を配位することができる配位基を有する成分を含む有機材料であるブロックコポリマーとを用いることによって、一方の相に金属を含む金属イオン−有機ハイブリッド粒子を製造することに成功した。しかし、このような方法によって得られた粒子の金属部分はイオン状態であり、通電性のない不完全な金属イオン−有機ハイブリッド粒子であった。そこで本発明者らは、この粒子中の無機イオンを還元したところ、粒子中の無機部分が非イオン化された金属−有機ハイブリッド粒子を得ることに成功した。
【0012】
一方、本発明者らは、2種の成分から構成される第一のブロックコポリマーに金属イオンを配位して有機材料及び金属イオンの錯体を作製し、次いでこの錯体の金属イオンを還元して有機材料で被覆した金属を得て、次いでこの有機材料で被覆した金属と2種の成分から構成される第二のブロックコポリマーを用いることによって、一方の相に金属を含む金属−有機ハイブリッド粒子を製造することにも成功した。本発明はこれらの知見に基づいて完成された発明である。
【0013】
したがって、本発明によれば、2種以上の成分から構成される有機材料が相分離した構造を有し、かつ少なくとも1相に1種以上の無機材料を含む、無機−有機ハイブリッド粒子が提供される。
【0014】
好ましくは、粒径が、10nm〜100μmである。
好ましくは、無機材料が、0.5nm〜100nmの粒径の粒子である。
好ましくは、無機材料が、金属、金属化合物又は合金である。
好ましくは、無機材料を含む相を形成する有機材料の成分が、無機材料に対する配位基を有する。
【0015】
本発明の別の側面によれば、(1)良溶媒に溶解した2種以上の成分から構成される有機材料を含む溶液中に、該良溶媒と相溶する該有機材料の貧溶媒を添加した後に、該良溶媒を蒸発させて、該有機材料が相分離した構造を有する有機粒子を得ること;(2)該有機粒子及び該成分の少なくとも1種に配位し得る1種以上の無機材料の塩を混合して、無機イオン−有機ハイブリッド粒子を得ること;及び(3)該無機イオン−有機ハイブリッド粒子を還元して無機−有機ハイブリッド粒子を得ることを含む、無機−有機ハイブリッド粒子の製造方法が提供される。
【0016】
本発明の別の側面によれば、(1)2種以上の成分から構成される第一の有機材料及び該第一の有機材料の成分の少なくとも1種に配位し得る1種以上の無機材料の塩を該第一の有機材料に対する良溶媒に溶解して、該第一の有機材料及び該無機イオンのミセル錯体を得ること;(2)該ミセル錯体の無機イオンを還元し、有機材料で被覆した無機材料を得ること;及び(3)該有機材料で被覆した無機材料及び2種以上の成分から構成され、かつ少なくとも1種の成分は該第一の有機材料の成分と同じ成分である第二の有機材料を該第二の有機材料に対する良溶媒に溶解させた溶液中に、該良溶媒と相溶する該第二の有機材料の貧溶媒を添加した後に、該良溶媒を蒸発させて、無機−有機ハイブリッド粒子を得ることを含む、無機−有機ハイブリッド粒子の製造方法が提供される。
【0017】
好ましくは、無機−有機ハイブリッド粒子の粒径が10nm〜100μmである。
好ましくは、無機材料が0.5nm〜100nmの粒径の粒子である。
好ましくは、無機材料が、金属、金属化合物又は合金である。
好ましくは、2種以上の成分から構成される有機材料が、2種以上のモノポリマーである。
好ましくは、2種以上の成分から構成される有機材料が、2種以上の有機材料からなるブロックコポリマーである。
【0018】
本発明の別の側面によれば、本発明の製造方法により得られる無機−有機ハイブリッド粒子が提供される。
【0019】
本発明の別の側面によれば、本発明の無機−有機ハイブリッド粒子を用いた電子デバイスが提供される。
本発明の別の側面によれば、本発明の無機−有機ハイブリッド粒子を用いた光学デバイスが提供される。
本発明の別の側面によれば、本発明の無機−有機ハイブリッド粒子を表示画素とする表示デバイスが提供される。
【発明の効果】
【0020】
本発明の無機−有機ハイブリッド粒子は、1個の粒子に2種以上の成分(ポリマー)を互いに相分離した状態で含んでおり、さらに少なくとも1種の相に無機材料を含むことから、1個の粒子に無機相と非無機相が存在することによる異方的な(asymmetrical)機能を持つ多機能性粒子として利用され得る。例えば、無機材料が金属である場合は、本発明の無機−有機ハイブリッド粒子は、キャパシタなどの電子デバイス、メタマテリアルなどの光学デバイス、電気泳動ディスプレイの表示画素などの表示デバイスなどへ適用することができる。また、本発明の製造方法は、かかる多機能性粒子を、極めて少ない工程により、簡便、迅速かつ大量に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】銀、金又はパラジウムとpoly(styrene-b-4-vinylpyridine)とから製造された無機−有機ハイブリッド粒子のSTEM観察写真である。
【図2】ブロックコポリマーミセルの合成法と相分離構造を持つ有機−無機ハイブリッド粒子の作製手法の模式図である。
【図3】ポリスチレン被覆金ナノ粒子と、ポリスチレン及びポリイソプレンのブロックコポリマーとから製造されたラメラ状構造の無機−有機ハイブリッド粒子のTEM観察写真である。
【図4】ポリスチレン被覆金パラジウム粒子と、ポリスチレン及びポリイソプレンのブロックコポリマーとから製造されたタマネギ状構造の無機−有機ハイブリッド粒子のTEM観察写真である。
【図5】ポリスチレン被覆金ナノ粒子と、ポリスチレン及びポリイソプレンのホモポリマーとから製造された2つの半球構造の無機−有機ハイブリッド粒子のTEM観察写真である。
【図6】ポリスチレン被覆金ナノ粒子、ポリイソプレン被覆金ナノ粒子、及びポリスチレンとポリイソプレンとのブロックコポリマーとから製造されたタマネギ状構造の無機−有機ハイブリッド粒子のTEM観察写真である。
【図7】ポリスチレン被覆パラジウムナノ粒子、ポリイソプレン被覆金ナノ粒子、及びポリスチレンとポリイソプレンとのブロックコポリマーとから製造されたタマネギ状構造の無機−有機ハイブリッド粒子のTEM観察写真である。
【図8】ポリスチレン被覆金ナノ粒子と、ポリスチレン及びポリイソプレンのブロックコポリマーとから製造された無機−有機ハイブリッド粒子の光学特性を評価した結果を示した図である。
【図9】想定され得る無機−有機ハイブリッド粒子の模式図である。
【図10】無電解めっき法の概略を示した図である。
【図11】本発明の製造法の一実施態様の概要を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明の実施態様を詳細に説明する。
[1]無機−有機ハイブリッド粒子
本発明の無機−有機ハイブリッド粒子は、2種以上の成分から構成される有機材料が相分離した構造を有し、かつ少なくとも1相に1種以上の無機材料を含む。
【0023】
図9に、無機−有機ハイブリッド粒子の構成例を模式的に表す。図9において、各粒子は、2種の成分からなる有機材料によって形成される相、すなわち、第一の有機材料成分からなる相及び第二の有機材料成分からなる相を有し、これらの相のいずれか、又はこれらの相のそれぞれにおいて、第一の無機材料又は第二の無機材料を含む。有機材料成分からなる相は、好ましくは、有機ポリマーが集合又は凝集してなる相である。
【0024】
なお、図9に示されるように、無機−有機ハイブリッド粒子において、相の数すなわち有機材料成分の種類の数には、2以上であれば他には特別の制限はない。また、非対称性の相構造を有する粒子も、対照的な相構造を有する粒子も、粒子の内外方向において相構造を有する粒子も、さらにはこれらの相構造を組み合わた相構造を有する粒子も、いずれも本発明の範囲に含まれるものである。
【0025】
無機−有機ハイブリッド粒子で利用可能な2種以上の成分から構成される有機材料について、その種類を選択し組み合わせる際に、特開2006−77076号公報の段落0016及び0017、並びに特開2007−332187号公報の段落0021から0026を参照することができる。
【0026】
2種以上の成分から構成される有機材料は、例えば、2種以上の成分が組み合わさって一分子として存在する態様や、2種以上の成分が互いに独立して存在する態様がある。2種以上の成分が組み合わさって一分子として存在する有機材料の具体例としては、2種以上のモノポリマー成分が共有結合して一分子として存在するブロックコポリマー(ブロック共重合体)がある。2種以上の成分が互いに独立して存在する有機材料の具体例としては、2種以上のモノポリマーがある。
【0027】
例えば、2種以上の成分から構成される有機材料がブロックコポリマー(ブロック共重合体)である場合は、特に限定されないが、相分離構造の形成が、それを構成している有機材料成分間の物性の相違、より具体的には有機材料成分間の斥力に基づくものである以上、ブロック共重合体を構成している有機材料成分間には相分離構造の形成力となる程度の物性の相違、或いは斥力が存在することになる。しかしながら上記の斥力は、球状若しくは擬球状の微細な粒子の中で、極めて近接した関係で働くものであるので、通常、上記の物性の相違或いは斥力がそれほど大きくなくても相分離構造の形成には問題がない。
【0028】
無機−有機ハイブリッド粒子で利用可能なブロック共重合体の具体例としては、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体等の芳香族炭化水素−脂肪族炭化水素ブロック共重合体、スチレン−アクリル酸ブロック共重合体、スチレン−アクリル酸ナトリウムブロック共重合体、スチレン−ポリエチレングリコール(PEG)ブロック共重合体、フルオレン−メタクリル酸メチル(MMA)ブロック共重合体等の芳香族炭化水素−脂肪族極性化合物ブロック共重合体、スチレン−ビニルピリジンブロック共重合体、スチレン−ポリアリルアミンブロック共重合体等の芳香族炭化水素−芳香族極性化合物ブロック共重合体等が挙げられる。これらのうち、例えば、スチレン−ブタジエンブロック共重合体やスチレン−イソプレンブロック共重合体は相分離構造を形成するために使用され、スチレン−ビニルピリジンブロック共重合体、スチレン−アクリル酸ブロック共重合体、スチレン−ポリアリルアミンブロック共重合体などは金属を錯化するために使用される。
【0029】
例えば、2種以上の成分から構成される有機材料が2種以上のモノポリマーである場合は、その選択と組み合わせにおいて、ポリマー間に所定の溶解度パラメータの差があれば、個々のポリマーの種類において特に制限はなく、水溶性ポリマー、非水溶性ポリマー、共重合体その他任意のポリマーを利用することができる。それらの非限定的な例を下記に示す。なお、( )内の数値は、各ポリマーの溶解度パラメータである。
【0030】
1)水溶性ポリマー;N−イソプロピルアクリルアミド(NIPAM、22.8)、ポリエチレングリコール(PEG、20.2)など。
2)非水溶性ポリマー;1,4−シス−イソプレン(16)、イソプレンエラストマー(17)、ポリスチレン(18)、ポリブタジエン(17.5)、ポリイソプレン(16〜17)、ポリメチルメタクリレート(PMMA、23)、ポリn−ブチルアクリレート(18)、ポリ塩化ビニル(19)、ポリアクリロニトリル(26)、ポリ乳酸(PLA、19)など。
3)共重合体;ブタジエン:スチレン=94:6の共重合体(16.45〜16.64)、ブタジエン:スチレン=90:10の共重合体(17.13)、ブタジエン:スチレン=85:15の共重合体(16.55)、スチレン含量が25以上のブタジエンとスチレンの共重合体(17.5)など。
【0031】
無機−有機ハイブリッド粒子を形成する2種以上のモノポリマーは、上記に列記されるようなポリマーの中から、ポリマー間の溶解度パラメータの差が0.1以上10以下となるように選択されるポリマーである。例えば、2相ポリマー粒子を形成するために選択される2種のポリマーAとポリマーBは、ポリマーAB間の溶解度パラメータの差が0.1以上10以下となる様な組み合わせとして選択される。また3相ポリマー粒子を形成するために選択される3種のポリマーA、ポリマーB及びポリマーCは、ポリマーABCの全ての組み合わせ、すなわちポリマーAB、ポリマーAC、ポリマーBCの組み合わせにかかる各ポリマー間の溶解度パラメータの差がいずれも0.1以上10以下となる様な組み合わせとして選択される。
【0032】
上記の溶解度パラメータ差の条件を満たす2種以上のモノポリマーの組み合わせ例としては、PEGとNIPAM、ポリスチレンとポリイソプレン、ポリスチレンとポリブタジエン、ポリスチレンとPLA、ポリスチレンとポリブチルアクリレート等を挙げることができるが、これらには限定されない。
【0033】
無機−有機ハイブリッド粒子において、無機材料の種類の数は、1以上であれば他には特別の制限はない。無機−有機ハイブリッド粒子において、無機材料は、有機材料成分によって形成される少なくとも1相に、非イオン化状態で含まれている。図9に示すように、1種の無機材料が1相に含まれてもよいし、2種の無機材料が2相に含まれてもよい。さらに実施例の例2に示すように、1種の無機材料が、大きさの異なる粒径によって、2相に含まれてもよい。無機材料が相に含まれる態様は、特に制限されないが、例えば、無機材料が有機材料成分の有する無機材料を配位(又は捕集、結合)することができる配位基を介して相に含まれる態様、無機材料が有機材料成分で被覆されて、この被覆を介して相に含まれる態様などがある。無機材料を配位(又は捕集、結合)することができる配位基は、特に限定されないが、例えば、ピリジン、アミン、カルボン酸などを用いることができる。
【0034】
無機−有機ハイブリッド粒子で利用可能な無機材料の種類は特に制限されないが、例えば、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、銅(Cu)などの金属;CdS、CeSe、CeTe、ZnSなどの金属化合物;Fe2O3などのフェリ磁性材料、Ag/Au、Au/Ptなどの合金などを挙げることができるが、無機−有機ハイブリッド粒子を電子デバイス、光学デバイス又は表示デバイスに利用する場合は、無機材料は金属、金属化合物、又は合金が好ましい。
【0035】
無機−有機ハイブリッド粒子の粒径は、特に限定されないが、材料が持つ本来の量子的な性質を顕著に現し、かつ体積に対する表面の比を大きくして担体上で活性の高い表面状態を持たせるために、1nm〜1000μmが好ましく、10nm〜100μmがより好ましく、100nm〜10μmがさらに好ましい。
【0036】
[2]無機−有機ハイブリッド粒子の製造方法(1)
本発明の無機−有機ハイブリッド粒子を製造する方法、及び該方法によって得られる無機−有機ハイブリッド粒子もまた、本発明に包含される。本発明の無機−有機ハイブリッド粒子の製造方法の一態様(以下、無機−有機ハイブリッド粒子の製造方法(1)ともいう)は、(1)良溶媒に溶解した2種以上の成分から構成される有機材料を含む溶液中に、該良溶媒と相溶する該有機材料の貧溶媒を添加した後に、該良溶媒を蒸発させて、該有機材料が相分離した構造を有する有機粒子を得ること;(2)該有機粒子及び該成分の少なくとも1種に配位し得る1種以上の無機材料の塩を混合して、無機イオン−有機ハイブリッド粒子を得ること;及び(3)該無機イオン−有機ハイブリッド粒子を還元して無機−有機ハイブリッド粒子を得ることを含む。
【0037】
無機−有機ハイブリッド粒子の製造方法(1)について、特開2006−77076号公報の段落0018〜0029、並びに特開2007−332187号公報の段落0028から0047を参照することができる。
【0038】
無機−有機ハイブリッド粒子の製造方法(1)において、2種以上の成分から構成される有機材料は、特に制限されないが、上記した2種以上の成分から構成される有機材料からなるブロックコポリマー又は2種以上のモノポリマーであることが好ましい。2種以上の有機材料からなるブロックコポリマー及び2種以上のモノポリマーは、上記[1]で記載したものを使用することができる。
【0039】
例えば、2種以上の有機材料がブロックコポリマー(ブロック共重合体)である場合は、特に限定されないが、ブロック共重合体の良溶媒は、ブロック共重合体の種類に依存して選択されるが、通常、各種の有機溶媒が使用される。ブロック共重合体の粒子を析出させるに際して使用される貧溶媒は、ブロック共重合体の良溶媒とは相溶するがブロック共重合体に対する溶解性は小さいという性質を有する。ブロック共重合体の貧溶媒は、ブロック共重合体の種類に依存するが、通常、極性の高い化合物から選択される。従って、ブロック共重合体の貧溶媒と相溶性であるブロック共重合体の良溶媒は、通常、適度に極性のある化合物から選択される。
【0040】
ブロック共重合体の良溶媒の具体例としては、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル類、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素、ベンゼンなどの芳香族類、n-ヘキサン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素類、エチルメチルケトン、アセトン等のケトン類、酢酸エチル等のエステル類、メタノール、エタノール等のアルコール類、アセトニトリル等のニトリル類等が挙げられる。
【0041】
ブロック共重合体の貧溶媒は、ブロック共重合体及びブロック共重合体の良溶媒の種類に依存して選択されるが、通常、極性の高い化合物が使用される。また、粒子を析出させるためのブロック共重合体の良溶媒の蒸発操作を良好に進行させるために、ブロック共重合体の貧溶媒は、ブロック共重合体の良溶媒よりも高沸点のものを使用するのが好ましい。
【0042】
ブロック共重合体の貧溶媒の具体例としては、最も一般的な水のほかに、n−ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素、ブチルアルコール、プロピルアルコール等のアルコール類、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミドやジメチルスルホキシド等の高極性有機溶媒、酢酸等の酸などが挙げられる。
【0043】
2種以上のポリマーを溶解した良溶媒溶液に相溶な貧溶媒が加えられ、良溶媒溶液が希釈されることで、急激な溶質(ポリマー)の過飽和状態が生じ、このときの溶液濃度の揺らぎによって核となる粒子が形成され、さらにそれが成長することで一定の大きさを持った粒子が調製される、というものと考えることができる。
【0044】
例えば、2種以上の有機材料が2種以上のモノポリマーである場合は、2種以上のモノポリマーを良溶媒に溶解した混合溶液を用いる。溶解度パラメータ差が0.1以上10以下となるような2種以上のモノポリマーを用い、この2種以上のモノポリマーの溶解度パラメータによって定めることのできる良溶媒と貧溶媒とを利用することで、2種以上のモノポリマーが互いに分離した相を形成しつつも、互いに別個独立の粒子を形成することなく、各モノポリマーよりなる複数の相を有する一種類のポリマー粒子を製造することができる。本発明の無機−有機ハイブリッド粒子は、この原理を応用して得られるものである。
【0045】
2種以上の有機材料が2種以上のモノポリマーである場合に用いられる良溶媒及び貧溶媒は、互いに相溶姓を示すが、2種以上のモノポリマーに対する溶解力が大きく異なる溶媒であり、これらの溶解力が高い/強い溶媒を良溶媒として、低い/弱い又はほとんど溶解力を持たない溶媒を貧溶媒として適宜選択、組み合わせて使用される。
【0046】
2種以上の有機材料が2種以上のモノポリマーである場合に用いられる良溶媒は、2種以上のモノポリマーそれぞれに対する溶解度パラメータとの差が5.0以下である溶解度パラメータを有する良溶媒の使用が好ましい。このような良溶媒の選択は、使用する2種以上のモノポリマーに応じて適宜決定することができる。また貧溶媒は、上記のように決定した良溶媒の溶解度パラメータとの差が30以下である貧溶媒を選択すればよい。
【0047】
また、この場合に用いられる良溶媒と貧溶媒は、互いに良く混和する溶媒の組み合わせが好ましいが、溶解度パラメータを基準とする上記の条件を満たすように決定された良溶媒及び貧溶媒は、互いに良く混和するものとなる。その結果、良溶媒溶液の希釈が短い時間に均等に行われることとなり、粒径分布の狭い、平均して均一な粒径を有する粒子を作製することができる。
【0048】
2種以上の有機材料が2種以上のモノポリマーである場合の良溶媒及び貧溶媒として用いられる溶媒としては、テトラヒドロフラン(THF、18.6)、ジメチルエーテル(DME、18.0)、ベンゼン(18.8)、トルエン(18.2)、クロロホルム(19.0)、アセトン(20.3)、メタノール(29.7)、エタノール(26)、水(47.9)、ジメチルホルムアミド(DMF、24.8)、ジメチルスルホキシド(DMSO、29.7)、ジオキサン(16.2)、アセトニトリル(24.3)、1−プロパノール(24.3)、イソプロパノール(23.5)などを例示することができる。なお、( )内の数値は各溶媒の溶解度パラメータ値を示す。
【0049】
2種以上の成分から構成される有機材料が2種類以上の成分から構成されるブロックコポリマーであっても、2種以上のモノポリマーであっても、無機−有機ハイブリッド粒子の製造方法に用いられる良溶媒と貧溶媒の組み合わせは、貧溶媒の沸点が良溶媒の沸点より高く、かつその差が20℃以内となるような組み合わせとすることが好ましい。この関係を満たせば、混和した良溶媒と貧溶媒から選択的かつ簡便に良溶媒を除去することが容易になる。
【0050】
上記に述べたような性質を有するものであれば、良溶媒及び貧溶媒は適宜選択され得るものである。その際、使用される2種以上の成分から構成される有機材料の各種溶媒に対する溶解度パラメータのデータ、溶媒間の相溶性データ、沸点等の既知のデータを収集又は確認し、これらを考慮することが望ましい。
【0051】
2種以上の成分から構成される有機材料とそれらに対する良溶媒と貧溶媒の組み合わせの例としては、PEG+NIPAM+水(良溶媒)+DMSO(貧溶媒)又は1−プロパノール、ポリイソプレン+ポリスチレン+THF(良溶媒)+水(貧溶媒)などを挙げることができるが、これらには限定されない。
【0052】
無機−有機ハイブリッド粒子の製造方法(1)では、良溶媒に溶解した2種以上の成分から構成される有機材料を含む溶液中に、該良溶媒と相溶する該有機材料の貧溶媒を添加した後に、該良溶媒を蒸発させて、第一の粒子分散液を得る。第一の粒子分散液は、2種以上の有機材料が相分離した構造を有する有機粒子を含む。良溶媒に溶解された2種以上の成分から構成される有機材料の濃度は、飽和濃度以下であれば特に限定されないが、例えば、飽和濃度から飽和濃度の1/100程度の濃度である。
【0053】
添加する貧溶媒の量は、2種以上の成分から構成される有機材料の種類、良溶媒及び貧溶媒の種類、並びに製造しようとする粒子の粒径などを考慮して、適宜選択されるが、一般的には、2種以上の成分から構成される有機材料を含む溶液の量に対して0.5〜10倍の量の貧溶媒を添加する。
【0054】
2種以上の有機材料を含む溶液への貧溶媒の添加速度は特に限定されず、通常の実験操作に従って添加すればよい。2種以上の成分から構成される有機材料を含む溶液における2種以上の有機材料成分の濃度にもよるが、(液体体積)×10/分以上の時間をかけることが望ましい。また、無機−有機ハイブリッド粒子の製造方法(1)を実施する際の温度は、使用する溶媒の沸点を考慮して定めればよいが、概ね0〜90℃の任意の温度で行うことができ、好ましくは室温で行うことができる。
【0055】
良溶媒を蒸発させる温度は、特に限定されないが、良溶媒と貧溶媒の沸点等を考慮すれば、例えば、0〜90℃の範囲の任意の温度で行うことができ、好ましくは室温で行うことができる。粒子の粒径は、2種以上のモノポリマーの良溶媒溶液における濃度、及び添加する貧溶媒の量(良溶媒の量に対する比率)を調整することによっても制御することができる。また、良溶媒溶液の希釈を短い時間に均等に行うことによって、粒径分布の狭い粒子を作製することができる。
【0056】
良溶媒の蒸発は、細かい粒径と均一な粒径分布を有する粒子を製造するために、減圧により実施することが好ましい。減圧の程度は、10−3Pa〜10kPa、好ましくは10Pa〜1kPaとすればよい。これは、例えばロータリーエバポレーターや減圧ポンプ、その他の一般的な減圧用機器を用いて再現できる条件である。従って、無機−有機ハイブリッド粒子の製造方法(1)は、超真空状態を維持するための大掛かりな設備などを特に必要とせず、実験室レベルにおいても、工業的生産レベルにおいても、容易に実施することができる。
【0057】
また、かかる減圧下での良溶媒の蒸発除去は、減圧開始から最長で3時間以内に終了させることが望ましい。具体的には、蒸発除去しようとする良溶媒の総容積100%について、毎秒0.01容積%以上の割合で良溶媒を蒸発除去することが望ましい。良溶媒の総体積が比較的小さい場合には、その蒸発除去は実質的に瞬時に終了することも可能である。また、良溶媒の総容積が大きいために、そのままでは1時間以内での蒸発除去が事実上困難であるような場合には、貧溶媒を加えた後の溶液を適当な量に分画して、それぞれの画分について溶媒除去を行なえばよい。
【0058】
この減圧下での良溶媒の蒸発除去を行うことにより、それを行わない場合に比べて、微粒子の粒径は10〜50%ほどさらに小さくなる。また、その粒子の粒度分布の標準偏差も10%程度小さくなり、より均一な粒径を有する粒子を製造することができる。また、無機−有機ハイブリッド粒子の製造方法(1)は、除去すべき溶媒の量にも依存するが、概ね数分から2、3時間で貧溶媒の添加によって希釈した良溶媒溶液から有機材料が2相以上に分離した構造を有する有機粒子を回収することができる。
【0059】
2種以上の成分から構成される有機材料が2種以上の有機材料成分からなるブロック共重合体である場合は、第一の粒子分散液に含まれる有機粒子の粒径は、良溶媒に溶解したブロック共重合体を含む溶液中の有機材料の濃度、及び添加する貧溶媒の量(良溶媒量に対する比率)を調整することによって制御することができる。良溶媒に溶解したブロック共重合体を含む溶液中のブロック共重合体の濃度が高ければ、粒子の粒径は大きくなり、該濃度が低ければ、粒子の粒径は小さくなる。また、添加する貧溶媒の量(良溶媒量に対する比率)が多くなれば、粒子の粒径は小さくなり、添加する貧溶媒の量(良溶媒量に対する比率)が少なくなれば、粒子の粒径は大きくなる。また、良溶媒と貧溶媒として互いによく混和する溶媒を選択し、溶液の希釈を短い時間に均等に行うことによって、粒径分布のより狭い微粒子を製造することができる。
【0060】
無機−有機ハイブリッド粒子の製造方法(1)では、第一の粒子分散液に、有機材料成分の少なくとも1種に配位し得る1種以上の無機材料の塩を添加(混合)して、第二の粒子分散液を得る。第二の粒子分散液には、2種以上の成分から構成される有機材料が相分離した構造を有し、かつ少なくとも1相に1種以上の無機材料の塩に由来する無機イオンを含む、無機イオン−有機ハイブリッド粒子が得られる。
【0061】
添加すべき無機材料の塩については、上記[1]で述べた無機材料の塩を用いることができる。無機材料の塩は、第一の粒子分散液へ、固体又は液体の形態で添加され得る。添加すべき無機材料の塩の濃度は、飽和濃度以下であれば特に限定されないが、例えば、飽和濃度から飽和濃度の1/100程度の濃度である。第一の粒子分散液に無機材料の塩を添加する手段は、特に制限されなく、通常知られている方法を制限なく利用することができ、添加後は適宜撹拌等をすることもできる。
【0062】
第二の粒子分散液に含まれる無機イオン−有機ハイブリッド粒子における無機部分は、イオン化した状態で存在する。そこで、無機−有機ハイブリッド粒子の製造方法(1)では、UV照射や還元剤などの通常知られる還元手段によって無機イオン−有機ハイブリッド粒子中の無機イオンを還元する。
【0063】
無機−有機ハイブリッド粒子の製造方法(1)において、第二の粒子分散液に還元剤及び触媒を添加して無機−有機ハイブリッド粒子を得るために、無電解めっき法を利用することができる。図10に無電解めっき法の概略を示す。無電解めっき法とは、還元剤と触媒(PtやPdなど)を使って金属イオンを還元し、触媒上に選択的に金属を析出させる方法であり、電極を要せず、溶液などの分散系でも利用可能なめっき法である。
【0064】
還元剤としては、特に制限されないが、例えば、ヒドラジン、尿素、二酸化硫黄、チオ硫酸ナトリウム(ハイポ)などが使用できる。触媒としては、特に制限されないが、例えば、Ag、Au、Niなどが使用できる。還元剤及び触媒は、第二の粒子分散液へ、固体又は液体の形態で添加され得る。添加すべき還元剤の濃度は、飽和濃度以下であれば特に限定されないが、例えば、飽和濃度から飽和濃度の1/100程度の濃度である。添加すべき触媒の濃度は、特に限定されないが、例えば、0.01〜1wt%である。第一の粒子分散液に還元剤及び触媒を添加する手段は、特に制限されなく、通常知られている方法を制限なく利用することができ、添加後は適宜撹拌等をすることもできる。
【0065】
無機−有機ハイブリッド粒子の製造方法(1)によって、有機材料成分が2相以上に分離した有機粒子から、該有機粒子の1相に無機イオンが配位した無機イオン−有機ハイブリッド粒子を経て、無機イオンが還元することによって、無機−有機ハイブリッド粒子を製造する方法を模式化したものを図11に示す。
【0066】
[3]無機−有機ハイブリッド粒子の製造方法(2)
本発明の無機−有機ハイブリッド粒子の製造方法(以下、無機−有機ハイブリッド粒子の製造方法(2)ともいう)の別の態様は、(1)2種以上の成分から構成される第一の有機材料及び該第一の有機材料の成分の少なくとも1種に配位し得る1種以上の無機材料の塩を該第一の有機材料に対する良溶媒に溶解して、該第一の有機材料及び該無機イオンのミセル錯体を得ること;(2)該ミセル錯体の無機イオンを還元し、有機材料で被覆した無機材料を得ること;及び(3)該有機材料で被覆した無機材料及び2種以上の成分から構成され、かつ少なくとも1種の成分は該第一の有機材料の成分と同じ成分である第二の有機材料を該第二の有機材料に対する良溶媒に溶解させた溶液中に、該良溶媒と相溶する該第二の有機材料の貧溶媒を添加した後に、該良溶媒を蒸発させて、無機−有機ハイブリッド粒子を得ることを含む。
【0067】
無機−有機ハイブリッド粒子の製造方法(2)において、第一の有機材料の成分は無機材料に対する配位基を有するものが含まれる。この配位基を介して、良溶媒に溶解した有機材料成分にイオン化した無機材料が配位すると、ミセル錯体が形成される。このミセル錯体の無機イオンを上記[2]に記載した方法などによって還元すると、有機材料で被覆した無機材料を得ることができる。次いで上記[2]で述べた方法などによって、有機材料で被覆した無機材料と、2種以上の成分から構成され、かつ少なくとも1種の成分は第一の有機材料の成分と同じ成分である第二の有機材料とを第二の有機材料に対する良溶媒に溶解して調製した溶液に、該良溶媒と相溶する第二の有機材料の貧溶媒を添加し、次いで良溶媒を蒸発させることによって、無機−有機ハイブリッド粒子を得ることができる。
【0068】
無機−有機ハイブリッド粒子の製造方法(2)において、有機材料で被覆した無機材料の製造方法は特に制限されないが、具体例として、以下の方法によって製造することができる。窒素雰囲気下で、配位基を有するブロック共重合体を該ブロック共重合体に対する良溶媒(例えば、トルエン)に溶解し、数時間〜数十時間撹拌してミセルを形成させる。次いで無機材料前駆体を加え、結脱気し、さらに窒素置換する。次いで数時間〜数十時間撹拌し、無機材料前駆体を配位基に配位させて錯体を形成させる。次いで窒素雰囲気下で、無機材料前駆体を還元剤(例えば、無水ヒドラジン)で還元する。得られた溶液を上記ブロック共重合体に対する貧溶媒(例えば、水)に加えることで塩を除去し、分離後上記良溶媒相を回収する。塩を完全に除去するため、遠心分離を行い、有機材料で被覆した無機材料を含有するミセルが分散した上記良溶媒分散液を得る。上記良溶媒をロータリーエバポレータなどによって蒸発除去した後、有機材料で被覆した無機材料を含有するミセル溶液を得ることができる。このようにして得られる溶液における有機材料で被覆した無機材料の濃度は特に制限されないが、例えば、0.01〜1g/Lであることが好ましい。
【0069】
無機−有機ハイブリッド粒子の製造方法(2)では、有機材料で被覆した無機材料は、無機−有機ハイブリッド粒子において、有機材料で被覆した無機材料(ミセル錯体)の最も外側の有機材料成分からなる相に含まれる。したがって、無機材料を被覆する有機材料の最外層の有機材料成分の種類を変えれば、所望の相に無機材料を含む無機−有機ハイブリッド粒子が得られる。
【0070】
無機−有機ハイブリッド粒子の製造方法(2)のその他の条件は、無機−有機ハイブリッド粒子の製造方法(1)に準じて実施することができる。
【0071】
[4]無機−有機ハイブリッド粒子の用途
本発明の無機−有機ハイブリッド粒子や本発明の製造方法によって得られる無機−有機ハイブリッド粒子は、例えば、電子デバイス、光学デバイス、表示デバイスなどの各種デバイスに利用でき、特にメタマテリアルやキャパシタへ利用できる可能性が高い。例えば実験1−1や2−1、−2で得られた有機無機ハイブリッド微粒子は誘電体と金属の多層構造であるため、金属部分に電荷をためることが可能となり、キャパシタの様な電子デバイスに利用できる。実験2−3で得られたヤヌス粒子は電場や磁場に対し向きを変えることが出来ると考えられ、電気泳動ディスプレイ等の表示素子に利用可能である。また、実験3で示された光学応答を用いることで、メタマテリアルなどの光学デバイスに利用できると考えられる。
【0072】
金属・誘導体のサンドイッチ構造のアレイを目標波長サイズ以下で作製された無機−有機ハイブリッド粒子は、「負の屈析率」を実現する分散媒体であるメタマテリアルとして利用され得る。メタマテリアルは、例えば、紫外光でソリグラフィーを行う場合に数nm〜数十nmのスケールで金属・誘電体層構造を有するレンズを作製する手法に応用できる。また、無機−有機ハイブリッド粒子はキャパシタにも応用できる。
【0073】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。
【実施例】
【0074】
例1.配位−還元による無機−有機ハイブリッド粒子の作製
金属配位部位を持つブロックコポリマーから作製した微粒子に無機イオンを配位させ、この無機イオンを還元することで無機−有機ハイブリッド粒子を作製することができた。無機イオンとしては、パラジウム、金、銀などが利用可能であった。以下に詳細を示す。
【0075】
(実験1−1)
poly(styrene-b-4-vinylpyridine)をテトラヒドロフラン(THF)に溶解させて溶液を調整した後、水を加え、常温でTHFを蒸発させて微粒子分散液を得た。硝酸銀、塩化パラジウム、又は塩化金酸について、それぞれの塩濃度が0.2mMの水溶液500μLを0.1mg/mL微粒子分散液500μLに加え、UV(360nm)ランプを照射して還元した。遠心分離により精製した後、走査型透過電子顕微鏡(STEM、日立製作所、HD-2000)で観察を行った。
【0076】
(結果1−1)
暗視野のSTEM像から金属が配位した相分離構造が微粒子内部に形成されている様子が観察された(図1を参照)。
【0077】
例2.金属ナノ粒子含有ブロックコポリマーミセルを用いた無機−有機ハイブリッド粒子の作製
ポリスチレンで被覆された金属ナノ粒子は以下の手法で合成した(図2を参照)。N2雰囲気下、poly(styrene-b-2-vinyl pyridine) 100 mg をトルエン 20 mlに調製し(5g/l)、5 h撹拌してミセルを形成させた後、無機物前駆体をpyridine基に対して0.5 当量加えた。凍結脱気し、N2置換後、一晩撹拌し、錯体形成させた。次いでN2雰囲気下で無水ヒドラジン0.1 ml により還元した。得られた溶液を水に加えることで塩を除去し、分離後トルエン相の回収した。塩を完全に除去するため、遠心分離 (3000 rpm、1h)を行い、無機物ナノ粒子含有ミセルが分散したトルエン分散液を得た。トルエンをロータリーエバポレータにより蒸発除去した後、無機物ナノ粒子含有ミセル溶液の溶媒をTHFに置換し、0.1 g/l で調製した。ポリイソプレンで被覆された無機ナノ粒子の場合もpoly(isoprene-b-2-vinylpyridine)を使用する以外は同様の方法で作製した。
【0078】
ブロックコポリマーのTHF溶液を0.1 g/lで調製し、無機物ナノ粒子含有ミセル分散液と混合して総量 1.0 ml とした。撹拌しながら 水を 1 ml/min で2 ml 加え、25℃で静置し、2日経過後、THFが蒸発することで微粒子が析出した。
【0079】
透過型電子顕微鏡(TEM, Hl-7650, HITACHI)を用いて作製した微粒子の内部を観察した。PI部位の染色のため、微粒子分散液 300 μl に同量の 0.2 wt% OsO4水溶液を加え、室温で2時間放置後、遠心分離(12000 rpm, 5℃, 15 min) により粒子を沈降し、純水で洗浄した。エラスチックカーボン支持膜(グリッドピッチ100 μm) に 1 μL滴下し、TEM用サンプルを作製した。その結果、相分離構造を持った微粒子中に無機物ナノ粒子がハイブリッドされた。また、相分離構造の異なる粒子、金属種の異なるナノ粒子、ポリマーブレンドの粒子、ブロックコポリマー粒子中に形成された相分離構造の両方に金属ナノ粒子をハイブリッドした。
【0080】
(実験2−1)
ポリスチレンで被覆された金ナノ粒子(AuNP@PS)とポリスチレンとポリイソプレンとのブロックコポリマー(PS−b−PI)をTHF中で混和し、水を加えた後THFを常温で蒸発させ、微粒子を得た。微粒子の構造は透過電子顕微鏡(TEM)により観察した(図3を参照)。
【0081】
(結果2−1)
図3に示すとおり、ポリスチレン相に金ナノ粒子(AuNP)がハイブリッドされている、一方向にスタックしたポリスチレン相(PS相)とポリイソプレン相(PI相)とがラメラ構造を形成して構成される無機−有機ハイブリッド粒子が確認された。
【0082】
(実験2−2)
ポリスチレンで被覆された金粒子(AuNP@PS)とポリスチレンとポリイソプレンとのブロックコポリマー(PS−b−PI)をTHF中で混和し、水を加えた後THFを常温で蒸発させ、無機−有機ハイブリッド粒子を得た。無機−有機ハイブリッド粒子の構造は透過電子顕微鏡(TEM)により観察した(図4を参照)。
【0083】
(結果2−2)
図4に示すとおり、ポリスチレン相(PS相)にパラジウムナノ粒子がハイブリッドされた、ポリスチレン相とポリイソプレン相(PI相)とがタマネギ状の相分離構造をした無機−有機ハイブリッド粒子が得られた。実験2−1と相分離構造が違う理由として、相分離構造の種類がラメラ構造であっても一軸ラメラ構造の場合とタマネギ状構造の2種を取り得るからと推測される。
【0084】
(実験2−3)
ポリスチレンで被覆された金ナノ粒子(AuNP@PS)と、ポリスチレン(PS)及びポリイソプレン(PI)の2種のホモポリマーをTHF中で混和し、水を加えた後THFを常温で蒸発させ、微粒子を得た。微粒子の構造は透過電子顕微鏡(TEM)により観察した(図5を参照)。
【0085】
(結果2−3)
図5に示す通り、半球がポリスチレン(PS相)、反対の半球がポリイソプレン(PI相)というヤヌス(双面)構造の無機−有機ハイブリッド粒子が得られ、ポリスチレン相に金ナノ粒子(AuNP)がハイブリッドされた。
【0086】
(実験2−4)
ポリスチレンで被覆された金ナノ粒子(AuNP@PS)、該金ナノ粒子と大きさの異なるポリイソプレン被覆金ナノ粒子(AuNP@PI)、及びポリスチレンとポリイソプレンとのブロックコポリマー(PS−b−PI)をTHF中で混和し、水を加えた後THFを常温で蒸発させ、微粒子を得た。微粒子の構造は透過電子顕微鏡(TEM)により観察した(図6を参照)。
【0087】
(結果2−4)
図6に示す通り、ポリイソプレン被覆金ナノ粒子(黒点大:AuNP@PI)はポリイソプレン相(PI相)に、ポリスチレン被覆金ナノ粒子(黒点小:AuNP@PS)はポリスチレン相(PS相)にハイブリッドされたタマネギ状の相分離構造を持つ微粒子が得られた。この結果から、被覆するポリマーを変えることで、金粒子の入る相を自在に制御できることが判明した。
【0088】
(実験2−5)
ポリスチレンで被覆されたパラジウムナノ粒子(PdNP@PS)、該パラジウムナノ粒子と大きさの異なるポリイソプレン被覆金ナノ粒子(AuNP@PI)、及びポリスチレンとポリイソプレンとのブロックコポリマー(PS−b−PI)をTHF中で混和し、水を加えた後THFを常温で蒸発させ、微粒子を得た。微粒子の構造は透過電子顕微鏡(TEM)により観察した(図7を参照)。
【0089】
(結果2−5)
図7に示す通り、ポリイソプレン被覆金ナノ粒子(黒点大:AuNP@PI)はポリイソプレン相(PI相)に、ポリスチレン被覆パラジウムナノ粒子(黒点小:PdNP@PS)はポリスチレン相(PS相)にハイブリッドされたタマネギ状の相分離構造を持つ微粒子が得られた。この結果から、被覆するポリマーと金属種を変えることで、2種の金属を異なる相に有するポリマー粒子を製造することができることが判明した。
【0090】
例3.無機−有機ハイブリッド粒子の光学測定
ポリマー粒子の光学特性を評価するために、ポリスチレン被覆金ナノ粒子と、ポリスチレン及びポリイソプレンのブロックコポリマーとから製造された無機−有機ハイブリッド粒子(ナノ粒子混和率50%(赤線)と70%(黒線))、ヤヌス構造を持ち、ポリスチレン被覆した金ナノ粒子がハイブリッドしたポリマーブレンド粒子(青線)、ポリスチレン被覆した金ナノ粒子ミセル(緑線)の可視吸収スペクトルを測定した(図8を参照)。
【0091】
図8に示す通り、金ナノ粒子単体では520nm付近に表面プラズモンに由来する吸収が観察された。この吸収はポリマーブレンド粒子においても観察された。通常金ナノ粒子が近接した状態にあると粒子間のプラズモンが共鳴することにより、吸収体が長波長シフトすることが知られている。このことはポリマーブレンド粒子内では金属ナノ粒子同士は相互作用していないことを示唆するものであった。
【0092】
一方ブロックコポリマーに金ナノ粒子をハイブリッドしたところ、吸収帯がブルーシフトし、480nm付近にピークが移動した。これは通常のプラズモン共鳴ではあり得ない光学応答であり、微粒子内に金属ナノ粒子が周期的に配置されたことによる新規な光学効果が得られたことを示した。
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機−有機ハイブリッド粒子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
nm〜μmの領域の大きさを持った微粒子は、そのサイズにおいて材料が持つ本来の量子的な性質が顕著に現れること、体積に対する表面の比が平滑な基板などよりも非常に大きく、活性の高い表面状態を持っていること、などの理由から、光機能性、電子機能性、生体機能性などの機能を有する機能性材料として注目されている。
【0003】
特に、特性の異なる2種以上の成分から構成される材料を用いてナノサイズの微粒子を製造することができれば、1の微粒子に2以上の特性を付与することができ、その応用範囲をさらに広げることができると期待される。
【0004】
2種以上の成分から構成される材質からなる微粒子を製造する方法としては、微粒子を適当な基板上に塗布した後に、その上面にスパッタリング等を行って金属を塗布する、あるいはその上面に高分子ブラシを合成するなどして、非対称な微粒子(Janus微粒子)を調整する試み(非特許文献1)、エマルジョンを用いてシリカ粒子にポリスチレン微粒子を結合させ、ダンベル上の微粒子を調製した後、高分子ブラシを合成する試み(非特許文献2)がなされているが、いずれも多段階の工程を必要とし、かつ生産効率が低いという問題を有している。
【0005】
また、非対称な異形微粒子を形成する方法として、シード重合と呼ばれる方法が知られている(特許文献1)。しかし、この方法も煩雑な操作を必要とし、また使用される2種のポリマーのうちの一方が必ず微粒子の表面側に配置されることになり、微粒子におけるポリマー間の配向性が著しく制限されるという問題がある。
【0006】
前記の方法とは異なる原理に基づく高分子からなる微粒子の製造方法として、ホモポリマーやブロックコポリマーなどの単一の有機材料を用いて、良溶媒に溶解した有機材料溶液中に該良溶媒と相溶する前記材料の貧溶媒を添加して該材料の濃度を低下させることで、上記有機材料からなる微粒子を調製する方法が報告されている(特許文献2、非特許文献3)。さらに、2種以上の成分から構成される有機材料を用いる微粒子を製造する方法についても報告されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−226708
【特許文献2】特開2006−77076
【特許文献3】特開2007−332187
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】V. N. Paunovら、Advanced Materials、2004年、第16巻、第9号、788頁
【非特許文献2】Adeline Perroら、Chemical Communications、2005年、第44号、5542頁
【非特許文献3】Hiroshi Yabuら、Advanced Materials、2005年、第17巻、第17号、2062頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、キャパシタなどの電子デバイス、メタマテリアルなどの光学デバイス、及び電気泳動ディスプレイの表示画素などの表示デバイスなどに用いられる微粒子は金属などの無機材料を含むものであることが望ましい。ところが、これまでに、2種以上の成分から構成される有機材料が相分離した構造を有し、かつ相内に無機材料を含む無機−有機ハイブリッド粒子を製造する技術は知られていない。
【0010】
そこで本発明は、2種以上の成分から構成される有機材料が相分離した構造を有し、かつ相内に無機材料を含む無機−有機ハイブリッド粒子及び該無機−有機ハイブリッド粒子の製造方法を提供することを解決すべき課題とした。さらに本発明は、上記無機−有機ハイブリッド粒子を用いた各種デバイスを提供することを解決すべき課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、無機材料である金属と、この金属を配位することができる配位基を有する成分を含む有機材料であるブロックコポリマーとを用いることによって、一方の相に金属を含む金属イオン−有機ハイブリッド粒子を製造することに成功した。しかし、このような方法によって得られた粒子の金属部分はイオン状態であり、通電性のない不完全な金属イオン−有機ハイブリッド粒子であった。そこで本発明者らは、この粒子中の無機イオンを還元したところ、粒子中の無機部分が非イオン化された金属−有機ハイブリッド粒子を得ることに成功した。
【0012】
一方、本発明者らは、2種の成分から構成される第一のブロックコポリマーに金属イオンを配位して有機材料及び金属イオンの錯体を作製し、次いでこの錯体の金属イオンを還元して有機材料で被覆した金属を得て、次いでこの有機材料で被覆した金属と2種の成分から構成される第二のブロックコポリマーを用いることによって、一方の相に金属を含む金属−有機ハイブリッド粒子を製造することにも成功した。本発明はこれらの知見に基づいて完成された発明である。
【0013】
したがって、本発明によれば、2種以上の成分から構成される有機材料が相分離した構造を有し、かつ少なくとも1相に1種以上の無機材料を含む、無機−有機ハイブリッド粒子が提供される。
【0014】
好ましくは、粒径が、10nm〜100μmである。
好ましくは、無機材料が、0.5nm〜100nmの粒径の粒子である。
好ましくは、無機材料が、金属、金属化合物又は合金である。
好ましくは、無機材料を含む相を形成する有機材料の成分が、無機材料に対する配位基を有する。
【0015】
本発明の別の側面によれば、(1)良溶媒に溶解した2種以上の成分から構成される有機材料を含む溶液中に、該良溶媒と相溶する該有機材料の貧溶媒を添加した後に、該良溶媒を蒸発させて、該有機材料が相分離した構造を有する有機粒子を得ること;(2)該有機粒子及び該成分の少なくとも1種に配位し得る1種以上の無機材料の塩を混合して、無機イオン−有機ハイブリッド粒子を得ること;及び(3)該無機イオン−有機ハイブリッド粒子を還元して無機−有機ハイブリッド粒子を得ることを含む、無機−有機ハイブリッド粒子の製造方法が提供される。
【0016】
本発明の別の側面によれば、(1)2種以上の成分から構成される第一の有機材料及び該第一の有機材料の成分の少なくとも1種に配位し得る1種以上の無機材料の塩を該第一の有機材料に対する良溶媒に溶解して、該第一の有機材料及び該無機イオンのミセル錯体を得ること;(2)該ミセル錯体の無機イオンを還元し、有機材料で被覆した無機材料を得ること;及び(3)該有機材料で被覆した無機材料及び2種以上の成分から構成され、かつ少なくとも1種の成分は該第一の有機材料の成分と同じ成分である第二の有機材料を該第二の有機材料に対する良溶媒に溶解させた溶液中に、該良溶媒と相溶する該第二の有機材料の貧溶媒を添加した後に、該良溶媒を蒸発させて、無機−有機ハイブリッド粒子を得ることを含む、無機−有機ハイブリッド粒子の製造方法が提供される。
【0017】
好ましくは、無機−有機ハイブリッド粒子の粒径が10nm〜100μmである。
好ましくは、無機材料が0.5nm〜100nmの粒径の粒子である。
好ましくは、無機材料が、金属、金属化合物又は合金である。
好ましくは、2種以上の成分から構成される有機材料が、2種以上のモノポリマーである。
好ましくは、2種以上の成分から構成される有機材料が、2種以上の有機材料からなるブロックコポリマーである。
【0018】
本発明の別の側面によれば、本発明の製造方法により得られる無機−有機ハイブリッド粒子が提供される。
【0019】
本発明の別の側面によれば、本発明の無機−有機ハイブリッド粒子を用いた電子デバイスが提供される。
本発明の別の側面によれば、本発明の無機−有機ハイブリッド粒子を用いた光学デバイスが提供される。
本発明の別の側面によれば、本発明の無機−有機ハイブリッド粒子を表示画素とする表示デバイスが提供される。
【発明の効果】
【0020】
本発明の無機−有機ハイブリッド粒子は、1個の粒子に2種以上の成分(ポリマー)を互いに相分離した状態で含んでおり、さらに少なくとも1種の相に無機材料を含むことから、1個の粒子に無機相と非無機相が存在することによる異方的な(asymmetrical)機能を持つ多機能性粒子として利用され得る。例えば、無機材料が金属である場合は、本発明の無機−有機ハイブリッド粒子は、キャパシタなどの電子デバイス、メタマテリアルなどの光学デバイス、電気泳動ディスプレイの表示画素などの表示デバイスなどへ適用することができる。また、本発明の製造方法は、かかる多機能性粒子を、極めて少ない工程により、簡便、迅速かつ大量に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】銀、金又はパラジウムとpoly(styrene-b-4-vinylpyridine)とから製造された無機−有機ハイブリッド粒子のSTEM観察写真である。
【図2】ブロックコポリマーミセルの合成法と相分離構造を持つ有機−無機ハイブリッド粒子の作製手法の模式図である。
【図3】ポリスチレン被覆金ナノ粒子と、ポリスチレン及びポリイソプレンのブロックコポリマーとから製造されたラメラ状構造の無機−有機ハイブリッド粒子のTEM観察写真である。
【図4】ポリスチレン被覆金パラジウム粒子と、ポリスチレン及びポリイソプレンのブロックコポリマーとから製造されたタマネギ状構造の無機−有機ハイブリッド粒子のTEM観察写真である。
【図5】ポリスチレン被覆金ナノ粒子と、ポリスチレン及びポリイソプレンのホモポリマーとから製造された2つの半球構造の無機−有機ハイブリッド粒子のTEM観察写真である。
【図6】ポリスチレン被覆金ナノ粒子、ポリイソプレン被覆金ナノ粒子、及びポリスチレンとポリイソプレンとのブロックコポリマーとから製造されたタマネギ状構造の無機−有機ハイブリッド粒子のTEM観察写真である。
【図7】ポリスチレン被覆パラジウムナノ粒子、ポリイソプレン被覆金ナノ粒子、及びポリスチレンとポリイソプレンとのブロックコポリマーとから製造されたタマネギ状構造の無機−有機ハイブリッド粒子のTEM観察写真である。
【図8】ポリスチレン被覆金ナノ粒子と、ポリスチレン及びポリイソプレンのブロックコポリマーとから製造された無機−有機ハイブリッド粒子の光学特性を評価した結果を示した図である。
【図9】想定され得る無機−有機ハイブリッド粒子の模式図である。
【図10】無電解めっき法の概略を示した図である。
【図11】本発明の製造法の一実施態様の概要を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明の実施態様を詳細に説明する。
[1]無機−有機ハイブリッド粒子
本発明の無機−有機ハイブリッド粒子は、2種以上の成分から構成される有機材料が相分離した構造を有し、かつ少なくとも1相に1種以上の無機材料を含む。
【0023】
図9に、無機−有機ハイブリッド粒子の構成例を模式的に表す。図9において、各粒子は、2種の成分からなる有機材料によって形成される相、すなわち、第一の有機材料成分からなる相及び第二の有機材料成分からなる相を有し、これらの相のいずれか、又はこれらの相のそれぞれにおいて、第一の無機材料又は第二の無機材料を含む。有機材料成分からなる相は、好ましくは、有機ポリマーが集合又は凝集してなる相である。
【0024】
なお、図9に示されるように、無機−有機ハイブリッド粒子において、相の数すなわち有機材料成分の種類の数には、2以上であれば他には特別の制限はない。また、非対称性の相構造を有する粒子も、対照的な相構造を有する粒子も、粒子の内外方向において相構造を有する粒子も、さらにはこれらの相構造を組み合わた相構造を有する粒子も、いずれも本発明の範囲に含まれるものである。
【0025】
無機−有機ハイブリッド粒子で利用可能な2種以上の成分から構成される有機材料について、その種類を選択し組み合わせる際に、特開2006−77076号公報の段落0016及び0017、並びに特開2007−332187号公報の段落0021から0026を参照することができる。
【0026】
2種以上の成分から構成される有機材料は、例えば、2種以上の成分が組み合わさって一分子として存在する態様や、2種以上の成分が互いに独立して存在する態様がある。2種以上の成分が組み合わさって一分子として存在する有機材料の具体例としては、2種以上のモノポリマー成分が共有結合して一分子として存在するブロックコポリマー(ブロック共重合体)がある。2種以上の成分が互いに独立して存在する有機材料の具体例としては、2種以上のモノポリマーがある。
【0027】
例えば、2種以上の成分から構成される有機材料がブロックコポリマー(ブロック共重合体)である場合は、特に限定されないが、相分離構造の形成が、それを構成している有機材料成分間の物性の相違、より具体的には有機材料成分間の斥力に基づくものである以上、ブロック共重合体を構成している有機材料成分間には相分離構造の形成力となる程度の物性の相違、或いは斥力が存在することになる。しかしながら上記の斥力は、球状若しくは擬球状の微細な粒子の中で、極めて近接した関係で働くものであるので、通常、上記の物性の相違或いは斥力がそれほど大きくなくても相分離構造の形成には問題がない。
【0028】
無機−有機ハイブリッド粒子で利用可能なブロック共重合体の具体例としては、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体等の芳香族炭化水素−脂肪族炭化水素ブロック共重合体、スチレン−アクリル酸ブロック共重合体、スチレン−アクリル酸ナトリウムブロック共重合体、スチレン−ポリエチレングリコール(PEG)ブロック共重合体、フルオレン−メタクリル酸メチル(MMA)ブロック共重合体等の芳香族炭化水素−脂肪族極性化合物ブロック共重合体、スチレン−ビニルピリジンブロック共重合体、スチレン−ポリアリルアミンブロック共重合体等の芳香族炭化水素−芳香族極性化合物ブロック共重合体等が挙げられる。これらのうち、例えば、スチレン−ブタジエンブロック共重合体やスチレン−イソプレンブロック共重合体は相分離構造を形成するために使用され、スチレン−ビニルピリジンブロック共重合体、スチレン−アクリル酸ブロック共重合体、スチレン−ポリアリルアミンブロック共重合体などは金属を錯化するために使用される。
【0029】
例えば、2種以上の成分から構成される有機材料が2種以上のモノポリマーである場合は、その選択と組み合わせにおいて、ポリマー間に所定の溶解度パラメータの差があれば、個々のポリマーの種類において特に制限はなく、水溶性ポリマー、非水溶性ポリマー、共重合体その他任意のポリマーを利用することができる。それらの非限定的な例を下記に示す。なお、( )内の数値は、各ポリマーの溶解度パラメータである。
【0030】
1)水溶性ポリマー;N−イソプロピルアクリルアミド(NIPAM、22.8)、ポリエチレングリコール(PEG、20.2)など。
2)非水溶性ポリマー;1,4−シス−イソプレン(16)、イソプレンエラストマー(17)、ポリスチレン(18)、ポリブタジエン(17.5)、ポリイソプレン(16〜17)、ポリメチルメタクリレート(PMMA、23)、ポリn−ブチルアクリレート(18)、ポリ塩化ビニル(19)、ポリアクリロニトリル(26)、ポリ乳酸(PLA、19)など。
3)共重合体;ブタジエン:スチレン=94:6の共重合体(16.45〜16.64)、ブタジエン:スチレン=90:10の共重合体(17.13)、ブタジエン:スチレン=85:15の共重合体(16.55)、スチレン含量が25以上のブタジエンとスチレンの共重合体(17.5)など。
【0031】
無機−有機ハイブリッド粒子を形成する2種以上のモノポリマーは、上記に列記されるようなポリマーの中から、ポリマー間の溶解度パラメータの差が0.1以上10以下となるように選択されるポリマーである。例えば、2相ポリマー粒子を形成するために選択される2種のポリマーAとポリマーBは、ポリマーAB間の溶解度パラメータの差が0.1以上10以下となる様な組み合わせとして選択される。また3相ポリマー粒子を形成するために選択される3種のポリマーA、ポリマーB及びポリマーCは、ポリマーABCの全ての組み合わせ、すなわちポリマーAB、ポリマーAC、ポリマーBCの組み合わせにかかる各ポリマー間の溶解度パラメータの差がいずれも0.1以上10以下となる様な組み合わせとして選択される。
【0032】
上記の溶解度パラメータ差の条件を満たす2種以上のモノポリマーの組み合わせ例としては、PEGとNIPAM、ポリスチレンとポリイソプレン、ポリスチレンとポリブタジエン、ポリスチレンとPLA、ポリスチレンとポリブチルアクリレート等を挙げることができるが、これらには限定されない。
【0033】
無機−有機ハイブリッド粒子において、無機材料の種類の数は、1以上であれば他には特別の制限はない。無機−有機ハイブリッド粒子において、無機材料は、有機材料成分によって形成される少なくとも1相に、非イオン化状態で含まれている。図9に示すように、1種の無機材料が1相に含まれてもよいし、2種の無機材料が2相に含まれてもよい。さらに実施例の例2に示すように、1種の無機材料が、大きさの異なる粒径によって、2相に含まれてもよい。無機材料が相に含まれる態様は、特に制限されないが、例えば、無機材料が有機材料成分の有する無機材料を配位(又は捕集、結合)することができる配位基を介して相に含まれる態様、無機材料が有機材料成分で被覆されて、この被覆を介して相に含まれる態様などがある。無機材料を配位(又は捕集、結合)することができる配位基は、特に限定されないが、例えば、ピリジン、アミン、カルボン酸などを用いることができる。
【0034】
無機−有機ハイブリッド粒子で利用可能な無機材料の種類は特に制限されないが、例えば、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、銅(Cu)などの金属;CdS、CeSe、CeTe、ZnSなどの金属化合物;Fe2O3などのフェリ磁性材料、Ag/Au、Au/Ptなどの合金などを挙げることができるが、無機−有機ハイブリッド粒子を電子デバイス、光学デバイス又は表示デバイスに利用する場合は、無機材料は金属、金属化合物、又は合金が好ましい。
【0035】
無機−有機ハイブリッド粒子の粒径は、特に限定されないが、材料が持つ本来の量子的な性質を顕著に現し、かつ体積に対する表面の比を大きくして担体上で活性の高い表面状態を持たせるために、1nm〜1000μmが好ましく、10nm〜100μmがより好ましく、100nm〜10μmがさらに好ましい。
【0036】
[2]無機−有機ハイブリッド粒子の製造方法(1)
本発明の無機−有機ハイブリッド粒子を製造する方法、及び該方法によって得られる無機−有機ハイブリッド粒子もまた、本発明に包含される。本発明の無機−有機ハイブリッド粒子の製造方法の一態様(以下、無機−有機ハイブリッド粒子の製造方法(1)ともいう)は、(1)良溶媒に溶解した2種以上の成分から構成される有機材料を含む溶液中に、該良溶媒と相溶する該有機材料の貧溶媒を添加した後に、該良溶媒を蒸発させて、該有機材料が相分離した構造を有する有機粒子を得ること;(2)該有機粒子及び該成分の少なくとも1種に配位し得る1種以上の無機材料の塩を混合して、無機イオン−有機ハイブリッド粒子を得ること;及び(3)該無機イオン−有機ハイブリッド粒子を還元して無機−有機ハイブリッド粒子を得ることを含む。
【0037】
無機−有機ハイブリッド粒子の製造方法(1)について、特開2006−77076号公報の段落0018〜0029、並びに特開2007−332187号公報の段落0028から0047を参照することができる。
【0038】
無機−有機ハイブリッド粒子の製造方法(1)において、2種以上の成分から構成される有機材料は、特に制限されないが、上記した2種以上の成分から構成される有機材料からなるブロックコポリマー又は2種以上のモノポリマーであることが好ましい。2種以上の有機材料からなるブロックコポリマー及び2種以上のモノポリマーは、上記[1]で記載したものを使用することができる。
【0039】
例えば、2種以上の有機材料がブロックコポリマー(ブロック共重合体)である場合は、特に限定されないが、ブロック共重合体の良溶媒は、ブロック共重合体の種類に依存して選択されるが、通常、各種の有機溶媒が使用される。ブロック共重合体の粒子を析出させるに際して使用される貧溶媒は、ブロック共重合体の良溶媒とは相溶するがブロック共重合体に対する溶解性は小さいという性質を有する。ブロック共重合体の貧溶媒は、ブロック共重合体の種類に依存するが、通常、極性の高い化合物から選択される。従って、ブロック共重合体の貧溶媒と相溶性であるブロック共重合体の良溶媒は、通常、適度に極性のある化合物から選択される。
【0040】
ブロック共重合体の良溶媒の具体例としては、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル類、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素、ベンゼンなどの芳香族類、n-ヘキサン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素類、エチルメチルケトン、アセトン等のケトン類、酢酸エチル等のエステル類、メタノール、エタノール等のアルコール類、アセトニトリル等のニトリル類等が挙げられる。
【0041】
ブロック共重合体の貧溶媒は、ブロック共重合体及びブロック共重合体の良溶媒の種類に依存して選択されるが、通常、極性の高い化合物が使用される。また、粒子を析出させるためのブロック共重合体の良溶媒の蒸発操作を良好に進行させるために、ブロック共重合体の貧溶媒は、ブロック共重合体の良溶媒よりも高沸点のものを使用するのが好ましい。
【0042】
ブロック共重合体の貧溶媒の具体例としては、最も一般的な水のほかに、n−ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素、ブチルアルコール、プロピルアルコール等のアルコール類、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミドやジメチルスルホキシド等の高極性有機溶媒、酢酸等の酸などが挙げられる。
【0043】
2種以上のポリマーを溶解した良溶媒溶液に相溶な貧溶媒が加えられ、良溶媒溶液が希釈されることで、急激な溶質(ポリマー)の過飽和状態が生じ、このときの溶液濃度の揺らぎによって核となる粒子が形成され、さらにそれが成長することで一定の大きさを持った粒子が調製される、というものと考えることができる。
【0044】
例えば、2種以上の有機材料が2種以上のモノポリマーである場合は、2種以上のモノポリマーを良溶媒に溶解した混合溶液を用いる。溶解度パラメータ差が0.1以上10以下となるような2種以上のモノポリマーを用い、この2種以上のモノポリマーの溶解度パラメータによって定めることのできる良溶媒と貧溶媒とを利用することで、2種以上のモノポリマーが互いに分離した相を形成しつつも、互いに別個独立の粒子を形成することなく、各モノポリマーよりなる複数の相を有する一種類のポリマー粒子を製造することができる。本発明の無機−有機ハイブリッド粒子は、この原理を応用して得られるものである。
【0045】
2種以上の有機材料が2種以上のモノポリマーである場合に用いられる良溶媒及び貧溶媒は、互いに相溶姓を示すが、2種以上のモノポリマーに対する溶解力が大きく異なる溶媒であり、これらの溶解力が高い/強い溶媒を良溶媒として、低い/弱い又はほとんど溶解力を持たない溶媒を貧溶媒として適宜選択、組み合わせて使用される。
【0046】
2種以上の有機材料が2種以上のモノポリマーである場合に用いられる良溶媒は、2種以上のモノポリマーそれぞれに対する溶解度パラメータとの差が5.0以下である溶解度パラメータを有する良溶媒の使用が好ましい。このような良溶媒の選択は、使用する2種以上のモノポリマーに応じて適宜決定することができる。また貧溶媒は、上記のように決定した良溶媒の溶解度パラメータとの差が30以下である貧溶媒を選択すればよい。
【0047】
また、この場合に用いられる良溶媒と貧溶媒は、互いに良く混和する溶媒の組み合わせが好ましいが、溶解度パラメータを基準とする上記の条件を満たすように決定された良溶媒及び貧溶媒は、互いに良く混和するものとなる。その結果、良溶媒溶液の希釈が短い時間に均等に行われることとなり、粒径分布の狭い、平均して均一な粒径を有する粒子を作製することができる。
【0048】
2種以上の有機材料が2種以上のモノポリマーである場合の良溶媒及び貧溶媒として用いられる溶媒としては、テトラヒドロフラン(THF、18.6)、ジメチルエーテル(DME、18.0)、ベンゼン(18.8)、トルエン(18.2)、クロロホルム(19.0)、アセトン(20.3)、メタノール(29.7)、エタノール(26)、水(47.9)、ジメチルホルムアミド(DMF、24.8)、ジメチルスルホキシド(DMSO、29.7)、ジオキサン(16.2)、アセトニトリル(24.3)、1−プロパノール(24.3)、イソプロパノール(23.5)などを例示することができる。なお、( )内の数値は各溶媒の溶解度パラメータ値を示す。
【0049】
2種以上の成分から構成される有機材料が2種類以上の成分から構成されるブロックコポリマーであっても、2種以上のモノポリマーであっても、無機−有機ハイブリッド粒子の製造方法に用いられる良溶媒と貧溶媒の組み合わせは、貧溶媒の沸点が良溶媒の沸点より高く、かつその差が20℃以内となるような組み合わせとすることが好ましい。この関係を満たせば、混和した良溶媒と貧溶媒から選択的かつ簡便に良溶媒を除去することが容易になる。
【0050】
上記に述べたような性質を有するものであれば、良溶媒及び貧溶媒は適宜選択され得るものである。その際、使用される2種以上の成分から構成される有機材料の各種溶媒に対する溶解度パラメータのデータ、溶媒間の相溶性データ、沸点等の既知のデータを収集又は確認し、これらを考慮することが望ましい。
【0051】
2種以上の成分から構成される有機材料とそれらに対する良溶媒と貧溶媒の組み合わせの例としては、PEG+NIPAM+水(良溶媒)+DMSO(貧溶媒)又は1−プロパノール、ポリイソプレン+ポリスチレン+THF(良溶媒)+水(貧溶媒)などを挙げることができるが、これらには限定されない。
【0052】
無機−有機ハイブリッド粒子の製造方法(1)では、良溶媒に溶解した2種以上の成分から構成される有機材料を含む溶液中に、該良溶媒と相溶する該有機材料の貧溶媒を添加した後に、該良溶媒を蒸発させて、第一の粒子分散液を得る。第一の粒子分散液は、2種以上の有機材料が相分離した構造を有する有機粒子を含む。良溶媒に溶解された2種以上の成分から構成される有機材料の濃度は、飽和濃度以下であれば特に限定されないが、例えば、飽和濃度から飽和濃度の1/100程度の濃度である。
【0053】
添加する貧溶媒の量は、2種以上の成分から構成される有機材料の種類、良溶媒及び貧溶媒の種類、並びに製造しようとする粒子の粒径などを考慮して、適宜選択されるが、一般的には、2種以上の成分から構成される有機材料を含む溶液の量に対して0.5〜10倍の量の貧溶媒を添加する。
【0054】
2種以上の有機材料を含む溶液への貧溶媒の添加速度は特に限定されず、通常の実験操作に従って添加すればよい。2種以上の成分から構成される有機材料を含む溶液における2種以上の有機材料成分の濃度にもよるが、(液体体積)×10/分以上の時間をかけることが望ましい。また、無機−有機ハイブリッド粒子の製造方法(1)を実施する際の温度は、使用する溶媒の沸点を考慮して定めればよいが、概ね0〜90℃の任意の温度で行うことができ、好ましくは室温で行うことができる。
【0055】
良溶媒を蒸発させる温度は、特に限定されないが、良溶媒と貧溶媒の沸点等を考慮すれば、例えば、0〜90℃の範囲の任意の温度で行うことができ、好ましくは室温で行うことができる。粒子の粒径は、2種以上のモノポリマーの良溶媒溶液における濃度、及び添加する貧溶媒の量(良溶媒の量に対する比率)を調整することによっても制御することができる。また、良溶媒溶液の希釈を短い時間に均等に行うことによって、粒径分布の狭い粒子を作製することができる。
【0056】
良溶媒の蒸発は、細かい粒径と均一な粒径分布を有する粒子を製造するために、減圧により実施することが好ましい。減圧の程度は、10−3Pa〜10kPa、好ましくは10Pa〜1kPaとすればよい。これは、例えばロータリーエバポレーターや減圧ポンプ、その他の一般的な減圧用機器を用いて再現できる条件である。従って、無機−有機ハイブリッド粒子の製造方法(1)は、超真空状態を維持するための大掛かりな設備などを特に必要とせず、実験室レベルにおいても、工業的生産レベルにおいても、容易に実施することができる。
【0057】
また、かかる減圧下での良溶媒の蒸発除去は、減圧開始から最長で3時間以内に終了させることが望ましい。具体的には、蒸発除去しようとする良溶媒の総容積100%について、毎秒0.01容積%以上の割合で良溶媒を蒸発除去することが望ましい。良溶媒の総体積が比較的小さい場合には、その蒸発除去は実質的に瞬時に終了することも可能である。また、良溶媒の総容積が大きいために、そのままでは1時間以内での蒸発除去が事実上困難であるような場合には、貧溶媒を加えた後の溶液を適当な量に分画して、それぞれの画分について溶媒除去を行なえばよい。
【0058】
この減圧下での良溶媒の蒸発除去を行うことにより、それを行わない場合に比べて、微粒子の粒径は10〜50%ほどさらに小さくなる。また、その粒子の粒度分布の標準偏差も10%程度小さくなり、より均一な粒径を有する粒子を製造することができる。また、無機−有機ハイブリッド粒子の製造方法(1)は、除去すべき溶媒の量にも依存するが、概ね数分から2、3時間で貧溶媒の添加によって希釈した良溶媒溶液から有機材料が2相以上に分離した構造を有する有機粒子を回収することができる。
【0059】
2種以上の成分から構成される有機材料が2種以上の有機材料成分からなるブロック共重合体である場合は、第一の粒子分散液に含まれる有機粒子の粒径は、良溶媒に溶解したブロック共重合体を含む溶液中の有機材料の濃度、及び添加する貧溶媒の量(良溶媒量に対する比率)を調整することによって制御することができる。良溶媒に溶解したブロック共重合体を含む溶液中のブロック共重合体の濃度が高ければ、粒子の粒径は大きくなり、該濃度が低ければ、粒子の粒径は小さくなる。また、添加する貧溶媒の量(良溶媒量に対する比率)が多くなれば、粒子の粒径は小さくなり、添加する貧溶媒の量(良溶媒量に対する比率)が少なくなれば、粒子の粒径は大きくなる。また、良溶媒と貧溶媒として互いによく混和する溶媒を選択し、溶液の希釈を短い時間に均等に行うことによって、粒径分布のより狭い微粒子を製造することができる。
【0060】
無機−有機ハイブリッド粒子の製造方法(1)では、第一の粒子分散液に、有機材料成分の少なくとも1種に配位し得る1種以上の無機材料の塩を添加(混合)して、第二の粒子分散液を得る。第二の粒子分散液には、2種以上の成分から構成される有機材料が相分離した構造を有し、かつ少なくとも1相に1種以上の無機材料の塩に由来する無機イオンを含む、無機イオン−有機ハイブリッド粒子が得られる。
【0061】
添加すべき無機材料の塩については、上記[1]で述べた無機材料の塩を用いることができる。無機材料の塩は、第一の粒子分散液へ、固体又は液体の形態で添加され得る。添加すべき無機材料の塩の濃度は、飽和濃度以下であれば特に限定されないが、例えば、飽和濃度から飽和濃度の1/100程度の濃度である。第一の粒子分散液に無機材料の塩を添加する手段は、特に制限されなく、通常知られている方法を制限なく利用することができ、添加後は適宜撹拌等をすることもできる。
【0062】
第二の粒子分散液に含まれる無機イオン−有機ハイブリッド粒子における無機部分は、イオン化した状態で存在する。そこで、無機−有機ハイブリッド粒子の製造方法(1)では、UV照射や還元剤などの通常知られる還元手段によって無機イオン−有機ハイブリッド粒子中の無機イオンを還元する。
【0063】
無機−有機ハイブリッド粒子の製造方法(1)において、第二の粒子分散液に還元剤及び触媒を添加して無機−有機ハイブリッド粒子を得るために、無電解めっき法を利用することができる。図10に無電解めっき法の概略を示す。無電解めっき法とは、還元剤と触媒(PtやPdなど)を使って金属イオンを還元し、触媒上に選択的に金属を析出させる方法であり、電極を要せず、溶液などの分散系でも利用可能なめっき法である。
【0064】
還元剤としては、特に制限されないが、例えば、ヒドラジン、尿素、二酸化硫黄、チオ硫酸ナトリウム(ハイポ)などが使用できる。触媒としては、特に制限されないが、例えば、Ag、Au、Niなどが使用できる。還元剤及び触媒は、第二の粒子分散液へ、固体又は液体の形態で添加され得る。添加すべき還元剤の濃度は、飽和濃度以下であれば特に限定されないが、例えば、飽和濃度から飽和濃度の1/100程度の濃度である。添加すべき触媒の濃度は、特に限定されないが、例えば、0.01〜1wt%である。第一の粒子分散液に還元剤及び触媒を添加する手段は、特に制限されなく、通常知られている方法を制限なく利用することができ、添加後は適宜撹拌等をすることもできる。
【0065】
無機−有機ハイブリッド粒子の製造方法(1)によって、有機材料成分が2相以上に分離した有機粒子から、該有機粒子の1相に無機イオンが配位した無機イオン−有機ハイブリッド粒子を経て、無機イオンが還元することによって、無機−有機ハイブリッド粒子を製造する方法を模式化したものを図11に示す。
【0066】
[3]無機−有機ハイブリッド粒子の製造方法(2)
本発明の無機−有機ハイブリッド粒子の製造方法(以下、無機−有機ハイブリッド粒子の製造方法(2)ともいう)の別の態様は、(1)2種以上の成分から構成される第一の有機材料及び該第一の有機材料の成分の少なくとも1種に配位し得る1種以上の無機材料の塩を該第一の有機材料に対する良溶媒に溶解して、該第一の有機材料及び該無機イオンのミセル錯体を得ること;(2)該ミセル錯体の無機イオンを還元し、有機材料で被覆した無機材料を得ること;及び(3)該有機材料で被覆した無機材料及び2種以上の成分から構成され、かつ少なくとも1種の成分は該第一の有機材料の成分と同じ成分である第二の有機材料を該第二の有機材料に対する良溶媒に溶解させた溶液中に、該良溶媒と相溶する該第二の有機材料の貧溶媒を添加した後に、該良溶媒を蒸発させて、無機−有機ハイブリッド粒子を得ることを含む。
【0067】
無機−有機ハイブリッド粒子の製造方法(2)において、第一の有機材料の成分は無機材料に対する配位基を有するものが含まれる。この配位基を介して、良溶媒に溶解した有機材料成分にイオン化した無機材料が配位すると、ミセル錯体が形成される。このミセル錯体の無機イオンを上記[2]に記載した方法などによって還元すると、有機材料で被覆した無機材料を得ることができる。次いで上記[2]で述べた方法などによって、有機材料で被覆した無機材料と、2種以上の成分から構成され、かつ少なくとも1種の成分は第一の有機材料の成分と同じ成分である第二の有機材料とを第二の有機材料に対する良溶媒に溶解して調製した溶液に、該良溶媒と相溶する第二の有機材料の貧溶媒を添加し、次いで良溶媒を蒸発させることによって、無機−有機ハイブリッド粒子を得ることができる。
【0068】
無機−有機ハイブリッド粒子の製造方法(2)において、有機材料で被覆した無機材料の製造方法は特に制限されないが、具体例として、以下の方法によって製造することができる。窒素雰囲気下で、配位基を有するブロック共重合体を該ブロック共重合体に対する良溶媒(例えば、トルエン)に溶解し、数時間〜数十時間撹拌してミセルを形成させる。次いで無機材料前駆体を加え、結脱気し、さらに窒素置換する。次いで数時間〜数十時間撹拌し、無機材料前駆体を配位基に配位させて錯体を形成させる。次いで窒素雰囲気下で、無機材料前駆体を還元剤(例えば、無水ヒドラジン)で還元する。得られた溶液を上記ブロック共重合体に対する貧溶媒(例えば、水)に加えることで塩を除去し、分離後上記良溶媒相を回収する。塩を完全に除去するため、遠心分離を行い、有機材料で被覆した無機材料を含有するミセルが分散した上記良溶媒分散液を得る。上記良溶媒をロータリーエバポレータなどによって蒸発除去した後、有機材料で被覆した無機材料を含有するミセル溶液を得ることができる。このようにして得られる溶液における有機材料で被覆した無機材料の濃度は特に制限されないが、例えば、0.01〜1g/Lであることが好ましい。
【0069】
無機−有機ハイブリッド粒子の製造方法(2)では、有機材料で被覆した無機材料は、無機−有機ハイブリッド粒子において、有機材料で被覆した無機材料(ミセル錯体)の最も外側の有機材料成分からなる相に含まれる。したがって、無機材料を被覆する有機材料の最外層の有機材料成分の種類を変えれば、所望の相に無機材料を含む無機−有機ハイブリッド粒子が得られる。
【0070】
無機−有機ハイブリッド粒子の製造方法(2)のその他の条件は、無機−有機ハイブリッド粒子の製造方法(1)に準じて実施することができる。
【0071】
[4]無機−有機ハイブリッド粒子の用途
本発明の無機−有機ハイブリッド粒子や本発明の製造方法によって得られる無機−有機ハイブリッド粒子は、例えば、電子デバイス、光学デバイス、表示デバイスなどの各種デバイスに利用でき、特にメタマテリアルやキャパシタへ利用できる可能性が高い。例えば実験1−1や2−1、−2で得られた有機無機ハイブリッド微粒子は誘電体と金属の多層構造であるため、金属部分に電荷をためることが可能となり、キャパシタの様な電子デバイスに利用できる。実験2−3で得られたヤヌス粒子は電場や磁場に対し向きを変えることが出来ると考えられ、電気泳動ディスプレイ等の表示素子に利用可能である。また、実験3で示された光学応答を用いることで、メタマテリアルなどの光学デバイスに利用できると考えられる。
【0072】
金属・誘導体のサンドイッチ構造のアレイを目標波長サイズ以下で作製された無機−有機ハイブリッド粒子は、「負の屈析率」を実現する分散媒体であるメタマテリアルとして利用され得る。メタマテリアルは、例えば、紫外光でソリグラフィーを行う場合に数nm〜数十nmのスケールで金属・誘電体層構造を有するレンズを作製する手法に応用できる。また、無機−有機ハイブリッド粒子はキャパシタにも応用できる。
【0073】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。
【実施例】
【0074】
例1.配位−還元による無機−有機ハイブリッド粒子の作製
金属配位部位を持つブロックコポリマーから作製した微粒子に無機イオンを配位させ、この無機イオンを還元することで無機−有機ハイブリッド粒子を作製することができた。無機イオンとしては、パラジウム、金、銀などが利用可能であった。以下に詳細を示す。
【0075】
(実験1−1)
poly(styrene-b-4-vinylpyridine)をテトラヒドロフラン(THF)に溶解させて溶液を調整した後、水を加え、常温でTHFを蒸発させて微粒子分散液を得た。硝酸銀、塩化パラジウム、又は塩化金酸について、それぞれの塩濃度が0.2mMの水溶液500μLを0.1mg/mL微粒子分散液500μLに加え、UV(360nm)ランプを照射して還元した。遠心分離により精製した後、走査型透過電子顕微鏡(STEM、日立製作所、HD-2000)で観察を行った。
【0076】
(結果1−1)
暗視野のSTEM像から金属が配位した相分離構造が微粒子内部に形成されている様子が観察された(図1を参照)。
【0077】
例2.金属ナノ粒子含有ブロックコポリマーミセルを用いた無機−有機ハイブリッド粒子の作製
ポリスチレンで被覆された金属ナノ粒子は以下の手法で合成した(図2を参照)。N2雰囲気下、poly(styrene-b-2-vinyl pyridine) 100 mg をトルエン 20 mlに調製し(5g/l)、5 h撹拌してミセルを形成させた後、無機物前駆体をpyridine基に対して0.5 当量加えた。凍結脱気し、N2置換後、一晩撹拌し、錯体形成させた。次いでN2雰囲気下で無水ヒドラジン0.1 ml により還元した。得られた溶液を水に加えることで塩を除去し、分離後トルエン相の回収した。塩を完全に除去するため、遠心分離 (3000 rpm、1h)を行い、無機物ナノ粒子含有ミセルが分散したトルエン分散液を得た。トルエンをロータリーエバポレータにより蒸発除去した後、無機物ナノ粒子含有ミセル溶液の溶媒をTHFに置換し、0.1 g/l で調製した。ポリイソプレンで被覆された無機ナノ粒子の場合もpoly(isoprene-b-2-vinylpyridine)を使用する以外は同様の方法で作製した。
【0078】
ブロックコポリマーのTHF溶液を0.1 g/lで調製し、無機物ナノ粒子含有ミセル分散液と混合して総量 1.0 ml とした。撹拌しながら 水を 1 ml/min で2 ml 加え、25℃で静置し、2日経過後、THFが蒸発することで微粒子が析出した。
【0079】
透過型電子顕微鏡(TEM, Hl-7650, HITACHI)を用いて作製した微粒子の内部を観察した。PI部位の染色のため、微粒子分散液 300 μl に同量の 0.2 wt% OsO4水溶液を加え、室温で2時間放置後、遠心分離(12000 rpm, 5℃, 15 min) により粒子を沈降し、純水で洗浄した。エラスチックカーボン支持膜(グリッドピッチ100 μm) に 1 μL滴下し、TEM用サンプルを作製した。その結果、相分離構造を持った微粒子中に無機物ナノ粒子がハイブリッドされた。また、相分離構造の異なる粒子、金属種の異なるナノ粒子、ポリマーブレンドの粒子、ブロックコポリマー粒子中に形成された相分離構造の両方に金属ナノ粒子をハイブリッドした。
【0080】
(実験2−1)
ポリスチレンで被覆された金ナノ粒子(AuNP@PS)とポリスチレンとポリイソプレンとのブロックコポリマー(PS−b−PI)をTHF中で混和し、水を加えた後THFを常温で蒸発させ、微粒子を得た。微粒子の構造は透過電子顕微鏡(TEM)により観察した(図3を参照)。
【0081】
(結果2−1)
図3に示すとおり、ポリスチレン相に金ナノ粒子(AuNP)がハイブリッドされている、一方向にスタックしたポリスチレン相(PS相)とポリイソプレン相(PI相)とがラメラ構造を形成して構成される無機−有機ハイブリッド粒子が確認された。
【0082】
(実験2−2)
ポリスチレンで被覆された金粒子(AuNP@PS)とポリスチレンとポリイソプレンとのブロックコポリマー(PS−b−PI)をTHF中で混和し、水を加えた後THFを常温で蒸発させ、無機−有機ハイブリッド粒子を得た。無機−有機ハイブリッド粒子の構造は透過電子顕微鏡(TEM)により観察した(図4を参照)。
【0083】
(結果2−2)
図4に示すとおり、ポリスチレン相(PS相)にパラジウムナノ粒子がハイブリッドされた、ポリスチレン相とポリイソプレン相(PI相)とがタマネギ状の相分離構造をした無機−有機ハイブリッド粒子が得られた。実験2−1と相分離構造が違う理由として、相分離構造の種類がラメラ構造であっても一軸ラメラ構造の場合とタマネギ状構造の2種を取り得るからと推測される。
【0084】
(実験2−3)
ポリスチレンで被覆された金ナノ粒子(AuNP@PS)と、ポリスチレン(PS)及びポリイソプレン(PI)の2種のホモポリマーをTHF中で混和し、水を加えた後THFを常温で蒸発させ、微粒子を得た。微粒子の構造は透過電子顕微鏡(TEM)により観察した(図5を参照)。
【0085】
(結果2−3)
図5に示す通り、半球がポリスチレン(PS相)、反対の半球がポリイソプレン(PI相)というヤヌス(双面)構造の無機−有機ハイブリッド粒子が得られ、ポリスチレン相に金ナノ粒子(AuNP)がハイブリッドされた。
【0086】
(実験2−4)
ポリスチレンで被覆された金ナノ粒子(AuNP@PS)、該金ナノ粒子と大きさの異なるポリイソプレン被覆金ナノ粒子(AuNP@PI)、及びポリスチレンとポリイソプレンとのブロックコポリマー(PS−b−PI)をTHF中で混和し、水を加えた後THFを常温で蒸発させ、微粒子を得た。微粒子の構造は透過電子顕微鏡(TEM)により観察した(図6を参照)。
【0087】
(結果2−4)
図6に示す通り、ポリイソプレン被覆金ナノ粒子(黒点大:AuNP@PI)はポリイソプレン相(PI相)に、ポリスチレン被覆金ナノ粒子(黒点小:AuNP@PS)はポリスチレン相(PS相)にハイブリッドされたタマネギ状の相分離構造を持つ微粒子が得られた。この結果から、被覆するポリマーを変えることで、金粒子の入る相を自在に制御できることが判明した。
【0088】
(実験2−5)
ポリスチレンで被覆されたパラジウムナノ粒子(PdNP@PS)、該パラジウムナノ粒子と大きさの異なるポリイソプレン被覆金ナノ粒子(AuNP@PI)、及びポリスチレンとポリイソプレンとのブロックコポリマー(PS−b−PI)をTHF中で混和し、水を加えた後THFを常温で蒸発させ、微粒子を得た。微粒子の構造は透過電子顕微鏡(TEM)により観察した(図7を参照)。
【0089】
(結果2−5)
図7に示す通り、ポリイソプレン被覆金ナノ粒子(黒点大:AuNP@PI)はポリイソプレン相(PI相)に、ポリスチレン被覆パラジウムナノ粒子(黒点小:PdNP@PS)はポリスチレン相(PS相)にハイブリッドされたタマネギ状の相分離構造を持つ微粒子が得られた。この結果から、被覆するポリマーと金属種を変えることで、2種の金属を異なる相に有するポリマー粒子を製造することができることが判明した。
【0090】
例3.無機−有機ハイブリッド粒子の光学測定
ポリマー粒子の光学特性を評価するために、ポリスチレン被覆金ナノ粒子と、ポリスチレン及びポリイソプレンのブロックコポリマーとから製造された無機−有機ハイブリッド粒子(ナノ粒子混和率50%(赤線)と70%(黒線))、ヤヌス構造を持ち、ポリスチレン被覆した金ナノ粒子がハイブリッドしたポリマーブレンド粒子(青線)、ポリスチレン被覆した金ナノ粒子ミセル(緑線)の可視吸収スペクトルを測定した(図8を参照)。
【0091】
図8に示す通り、金ナノ粒子単体では520nm付近に表面プラズモンに由来する吸収が観察された。この吸収はポリマーブレンド粒子においても観察された。通常金ナノ粒子が近接した状態にあると粒子間のプラズモンが共鳴することにより、吸収体が長波長シフトすることが知られている。このことはポリマーブレンド粒子内では金属ナノ粒子同士は相互作用していないことを示唆するものであった。
【0092】
一方ブロックコポリマーに金ナノ粒子をハイブリッドしたところ、吸収帯がブルーシフトし、480nm付近にピークが移動した。これは通常のプラズモン共鳴ではあり得ない光学応答であり、微粒子内に金属ナノ粒子が周期的に配置されたことによる新規な光学効果が得られたことを示した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種以上の成分から構成される有機材料が相分離した構造を有し、かつ少なくとも1相に1種以上の無機材料を含む、無機−有機ハイブリッド粒子。
【請求項2】
粒径が、10nm〜100μmである、請求項1に記載の無機−有機ハイブリッド粒子。
【請求項3】
無機材料が、0.5nm〜100nmの粒径の微粒子である、請求項1又は2に記載の無機−有機ハイブリッド粒子。
【請求項4】
無機材料が、金属、金属化合物又は合金である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の無機−有機ハイブリッド粒子。
【請求項5】
無機材料を含む相を形成する有機材料の成分が、無機材料に対する配位基を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の無機−有機ハイブリッド粒子。
【請求項6】
(1)良溶媒に溶解した2種以上の成分から構成される有機材料を含む溶液中に、該良溶媒と相溶する該有機材料の貧溶媒を添加した後に、該良溶媒を蒸発させて、該有機材料が相分離した構造を有する有機粒子を得ること;(2)該有機粒子及び該成分の少なくとも1種に配位し得る1種以上の無機材料の塩を混合して、無機イオン−有機ハイブリッド粒子を得ること;及び(3)該無機イオン−有機ハイブリッド粒子を還元して無機−有機ハイブリッド粒子を得ることを含む、無機−有機ハイブリッド粒子の製造方法。
【請求項7】
(1)2種以上の成分から構成される第一の有機材料及び該第一の有機材料の成分の少なくとも1種に配位し得る1種以上の無機材料の塩を該第一の有機材料に対する良溶媒に溶解して、該第一の有機材料及び該無機イオンのミセル錯体を得ること;(2)該ミセル錯体の無機イオンを還元し、有機材料で被覆した無機材料を得ること;及び(3)該有機材料で被覆した無機材料及び2種以上の成分から構成され、かつ少なくとも1種の成分は該第一の有機材料の成分と同じ成分である第二の有機材料を該第二の有機材料に対する良溶媒に溶解させた溶液中に、該良溶媒と相溶する該第二の有機材料の貧溶媒を添加した後に、該良溶媒を蒸発させて、無機−有機ハイブリッド粒子を得ることを含む、無機−有機ハイブリッド粒子の製造方法。
【請求項8】
無機−有機ハイブリッド粒子の粒径が10nm〜100μmである、請求項6又は7に記載の製造方法。
【請求項9】
無機材料が0.5nm〜100nmの粒径の微粒子である、請求項6〜8のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
無機材料が、金属、金属化合物又は合金である、請求項6〜9のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
2種以上の成分から構成される有機材料が、2種以上のモノポリマーである、請求項6〜10のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項12】
2種以上の成分から構成される有機材料が、2種以上の有機材料からなるブロックコポリマーである、請求項6〜10のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項13】
請求項6〜12のいずれか1項に記載の製造方法により得られる無機−有機ハイブリッド粒子。
【請求項14】
請求項1〜5及び13のいずれか1項に記載の無機−有機ハイブリッド粒子を用いた電子デバイス。
【請求項15】
請求項1〜5及び13のいずれか1項に記載の無機−有機ハイブリッド粒子を用いた光学デバイス。
【請求項16】
請求項1〜5及び13のいずれか1項に記載の無機−有機ハイブリッド粒子を表示画素とする表示デバイス。
【請求項1】
2種以上の成分から構成される有機材料が相分離した構造を有し、かつ少なくとも1相に1種以上の無機材料を含む、無機−有機ハイブリッド粒子。
【請求項2】
粒径が、10nm〜100μmである、請求項1に記載の無機−有機ハイブリッド粒子。
【請求項3】
無機材料が、0.5nm〜100nmの粒径の微粒子である、請求項1又は2に記載の無機−有機ハイブリッド粒子。
【請求項4】
無機材料が、金属、金属化合物又は合金である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の無機−有機ハイブリッド粒子。
【請求項5】
無機材料を含む相を形成する有機材料の成分が、無機材料に対する配位基を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の無機−有機ハイブリッド粒子。
【請求項6】
(1)良溶媒に溶解した2種以上の成分から構成される有機材料を含む溶液中に、該良溶媒と相溶する該有機材料の貧溶媒を添加した後に、該良溶媒を蒸発させて、該有機材料が相分離した構造を有する有機粒子を得ること;(2)該有機粒子及び該成分の少なくとも1種に配位し得る1種以上の無機材料の塩を混合して、無機イオン−有機ハイブリッド粒子を得ること;及び(3)該無機イオン−有機ハイブリッド粒子を還元して無機−有機ハイブリッド粒子を得ることを含む、無機−有機ハイブリッド粒子の製造方法。
【請求項7】
(1)2種以上の成分から構成される第一の有機材料及び該第一の有機材料の成分の少なくとも1種に配位し得る1種以上の無機材料の塩を該第一の有機材料に対する良溶媒に溶解して、該第一の有機材料及び該無機イオンのミセル錯体を得ること;(2)該ミセル錯体の無機イオンを還元し、有機材料で被覆した無機材料を得ること;及び(3)該有機材料で被覆した無機材料及び2種以上の成分から構成され、かつ少なくとも1種の成分は該第一の有機材料の成分と同じ成分である第二の有機材料を該第二の有機材料に対する良溶媒に溶解させた溶液中に、該良溶媒と相溶する該第二の有機材料の貧溶媒を添加した後に、該良溶媒を蒸発させて、無機−有機ハイブリッド粒子を得ることを含む、無機−有機ハイブリッド粒子の製造方法。
【請求項8】
無機−有機ハイブリッド粒子の粒径が10nm〜100μmである、請求項6又は7に記載の製造方法。
【請求項9】
無機材料が0.5nm〜100nmの粒径の微粒子である、請求項6〜8のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
無機材料が、金属、金属化合物又は合金である、請求項6〜9のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
2種以上の成分から構成される有機材料が、2種以上のモノポリマーである、請求項6〜10のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項12】
2種以上の成分から構成される有機材料が、2種以上の有機材料からなるブロックコポリマーである、請求項6〜10のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項13】
請求項6〜12のいずれか1項に記載の製造方法により得られる無機−有機ハイブリッド粒子。
【請求項14】
請求項1〜5及び13のいずれか1項に記載の無機−有機ハイブリッド粒子を用いた電子デバイス。
【請求項15】
請求項1〜5及び13のいずれか1項に記載の無機−有機ハイブリッド粒子を用いた光学デバイス。
【請求項16】
請求項1〜5及び13のいずれか1項に記載の無機−有機ハイブリッド粒子を表示画素とする表示デバイス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−185023(P2010−185023A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−30628(P2009−30628)
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【Fターム(参考)】
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