説明

無機中空微粒子

【課題】軽量であって静水圧下の浮揚残存率が高い無機中空微粒子を提供する。
【解決手段】平均粒径5〜200μmのシリカ質微粒子であって、該粒子の内部空間が隔壁によって区切られており、該内部空間が独立気泡によって形成されていることを特徴とする無機中空微粒子であり、好ましくは、8MPa静水圧浮揚残存率が50%以上であって、吸水率が3%以下であり、平均粒径が20〜100μm、容重が0.16〜0.35g/cm3であり、圧縮強度が15MPa以上である無機中空微粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立気泡からな内部空隙に隔壁を有する無機中空微粒子に関し、より詳しくは、粒子内部の独立気泡からなる空隙が隔壁によって区切られており、軽量でありながら、静水圧下の浮揚残存率が高い無機中空微粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
天然ガラス質岩石を原料として製造された中空軽量体としてパーライトが従来から知られている。パーライトは真珠岩や黒曜石などの粒子を900〜1300℃の高温で加熱し、含水分を発泡させて中空体にしたものであり、軽量骨材、建築材料、断熱材、土壌改良材などに広く用いられている。
【0003】
従来のパーライトは、結晶水の多い原料を用いると、表面が多孔質になるため吸水性が高くなり、軽量骨材には不向きになる問題がある。そこで、内部に形成された多数の気泡と、該気泡の開口孔を塞ぐ外装殻を備えた低吸水パーライトが開発されている(特許文献1:特開2008−19149号公報)。
【0004】
また、真珠岩や黒曜石などの原料岩石を加熱発泡させる際に、含水分の急激な発泡によって多数の開放気泡が形成されるのを避けるため、原料岩石の軟化点より低い温度で予備加熱を行った後に、高温で発発泡焼成して閉鎖型気孔を形成することによって吸水率を低下させた球状パーライトが知られている(特許文献2:特許第3528390号公報)。
【0005】
特許文献1の中空粒子(低吸水パーライト)は、気泡の開口を塞ぐ外殻を有するので吸水率が低く、浮水率は80%であると説明されている。この中空粒子は多数の内部気泡を有するので常圧下での浮水率は高いが、内部気泡は連通気泡であって独立気泡ではないので(内部空間に隔壁が存在するが、気泡は互いに連通しており、相互に独立したものではない)、外殻に亀裂が生じると、この連通気泡を通じて粒子内部全体に水が浸透する。このため、加圧水中下での浮揚率は大幅に低下すると云う問題がある。
【0006】
特許文献2の中空粒子(球状パーライト)は、内部気泡が粒子表面に開口していないので吸水率は低いが、多くの場合、粒子の内部空間が大きな単一気泡によって形成されており、内部空間が区切られていないので、圧壊強度が低く、粒子表面に亀裂が生じやすい。また、表面に亀裂が生じると粒子内部に水が充満しやすい。このため加圧水中下の浮揚率は格段に低下する。
【0007】
従来の中空微粒子を図3〜図4に示す。図示する例はイースファイアーズの商品名で市販されている中空微粒子であり、粒子内部は大きな単一気泡によって形成されており、内部空間に隔壁は存在しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−19149号公報
【特許文献2】特許第3528390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来の中空粒子(パーライト等)における上記問題を解決したものであり、軽量でありながら圧壊強度が大きく、加圧下での浮揚残存率が格段に高い、無機中空微粒子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下の構成によって上記課題を解決した無機中空微粒子に関する。
〔1〕平均粒径5〜200μmのシリカ質微粒子であって、粒子の内部空間が隔壁によって区切られており、該内部空間が複数の独立気泡によって形成されていることを特徴とする無機中空微粒子。
〔2〕8MPa静水圧浮揚残存率が50%以上であって、吸水率が3%以下である上記[1]に記載する無機中空微粒子。
〔3〕平均粒径が20〜100μm、および容重が0.16〜0.35g/cm3であり、圧縮強度が15MPa以上である上記[1]または上記[2]に記載する無機中空微粒子。
〔4〕隔壁によって区切られた複数の独立気泡によって形成されている内部空間を有する粒子を100個中60個以上含む上記[1]〜上記[3]の何れかに記載する無機中空微粒子。
【発明の効果】
【0011】
本発明の無機中空微粒子は、適度な平均粒径と空隙率を有するので軽量であり、水中での浮揚率が高い。また、粒子の内部空間が隔壁によって区切られているので圧縮強度が大きく、加圧下でも亀裂が生じ難い。さらに、内部空間が隔壁によって区切られた複数の独立気泡によって形成されているので、部分的に亀裂が生じても水が浸透する範囲が限られる。従って、加圧後の水中での浮揚残存率が格段に高い。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の中空微粒子の走査型電子顕微鏡写真
【図2】本発明の中空微粒子の模式断面図
【図3】市販品中空微粒子の外観を示す顕微鏡写真
【図4】市販品中空微粒子の一部を切欠いた顕微鏡写真
【図5】静水圧の変化に応じた浮揚残存率の変化を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施形態に基づいて具体的に説明する。
本発明の中空微粒子は、平均粒径5〜200μmのシリカ質微粒子であって、粒子の内部空間が隔壁によって区切られており、該内部空間が独立気泡によって形成されており、好ましくは、8MPa静水圧浮揚残存率が50%以上であって、吸水率が3%以下である無機中空微粒子である。
【0014】
本発明に係る無機中空微粒子の顕微鏡写真を図1に示し、模式断面を図2に示す。図示するように、本発明の中空微粒子10は、粒子の内部空間11が隔壁12によって複数の空間11に区切られており、各内部空間11は隔壁12によって隔てられた互いに連通しない気泡(独立気泡と云う)によって形成されている。また、好ましくはこの独立気泡は粒子表面に開口を有しない気泡(密閉気泡と云う)である。
【0015】
本発明の中空微粒子は、粒子の内部空間が隔壁によって隔てられた互いに連通しない独立気泡によって形成されているので、部分的に亀裂が生じても水が浸透する範囲が限られ、また上記独立気泡は粒子表面に開口しない密閉気泡であるので、加圧下の静水圧浮揚残存率が高い。静水圧浮揚残存率とは、加圧を経ていない常圧下における水中浮揚率(浮水率)W1に対する静水圧で加圧した粒子の加圧後の常圧下における水中浮揚率W2の比率〔浮揚残存率=W2/W1×100(%)〕である。
【0016】
本発明の中空微粒子は、具体的には、例えば8MPa静水圧下での浮揚残存率が50%以上であり、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上である。浮揚残存率が50%を下回るものは粒子強度が低く、かつ粒子の内部空間が独立気泡によって形成されている割合が少ない。
【0017】
また、本発明の中空微粒子は、好ましくは上記独立気泡が粒子表面に開口しない密閉気泡であるので、吸水率が格段に小さい。具体的には、例えば、常圧下での吸水率が3%以下であり、好ましくは1.5%以下である。
【0018】
本発明の中空微粒子について、粒子の内部空間が密閉された独立気泡によって形成されているとは、例えば、8MPa静水圧下での浮揚残存率が50%以上であることを云い、好ましくはさらに吸水率3%以下であることを云う。
【0019】
本発明の無機中空微粒子において、内部空間の隔壁は2個以上あることが好ましい。複数の隔壁を有することによって、粒子の強度がさらに向上する。具体的には、例えば、圧縮強度15MPa以上である。従って、軽量モルタルを製造する場合、本発明の中空微粒子は強度が大きいのでモルタルと共に混合しても壊れることなくモルタルを軽量化することができ、モルタルの強度も低下しない。なお、軽量モルタルを製造する際に中空微粒子が壊れやすいものは、中空微粒子の使用量を多くしなければならず、また壊れた粒子やその破片によってワーカビリティー等が劣化することがある。
【0020】
本発明の中空微粒子は、粒子内部に大きな空間を有するので軽量である。具体的には、例えば、容重が0.16〜0.35g/cm3である。容重が0.16g/cm3を下回ると、殻および隔壁の厚さが薄くなるため強度が弱くなり、0.35g/cm3を超えると、未発泡粒子が多いため好ましくない。
【0021】
本発明の中空微粒子は、平均粒径が5〜200μmの範囲が好ましく、20〜100μmがより好ましい。粒子の平均粒径が5μm未満では、粒子どうしが凝集しやすくなるので好ましくない。また、平均粒径が5μmより小さいと、内部空間に隔壁を有する粒子を製造するのが難しくなる。一方、粒子の平均粒径が200μmを上回ると、例えば、塗料などに混合使用した場合に塗料面の平滑性が低下する他、空間容積比率と隔壁数が概ね同じものでは比表面積減少に伴い脆弱になり易いので好ましくない。
【0022】
また、本発明の中空微粒子において、平均粒径の相違によって浮揚残存率(8MPa静水圧下)が異なる傾向がある。具体的には、実施例の表1に示すように、容重0.2g/cm3の中空微粒子A3、A4についてみると、A3(平均粒径98μm)の浮揚残存率は80%であるが、A4(平均粒径179μm)の浮揚残存は60%である。また、容重0.25g/cm3の中空微粒子A7、A8についてみると、A7(平均粒径101μm)の浮揚残存率は90%であるが、A8(平均粒径199μm)の浮揚残存率は55%である。このことから、本発明の中空微粒子は、容重0.16〜0.35g/cm3において、平均粒径は20〜100μmがより好ましいことが判る。
【0023】
本発明の中空微粒子はシラス、真珠岩、黒曜石、松脂岩などのシリカ質の天然ガラス質岩石、好ましくはシリカ含有量70質量%以上の天然ガラス質岩石を平均粒径150μm以下、より好ましくは100μm以下に粉砕し、該岩石微粒子を900℃〜1500℃に加熱して発泡させて中空微粒子にし、原料の岩石粉末の種類および成分などに応じて加熱発泡条件を調整することによって、内部空間が隔壁によって区切られたものを製造することができる。
【0024】
本発明の中空微粒子は、また、上記天然ガラス質岩石に限らず、岩石粉末に発泡原料を混合して造粒し、加熱発泡させることによって製造することができる。
【0025】
本発明の中空微粒子は、内部に大きな空間を有するシリカガラス質の粒子であるので、光学顕微鏡によって内部空間を観察することができ、内部空間に隔壁を有することを確認することができる。なお、このような内壁を有する粒子形状は球形もしくは球形に近い方が好ましい。また、本発明の中空微粒子は内部空間に隔壁を有するものが粒子100個中に60個以上、より好ましくは70個以上あれば良い。
【0026】
以上のように、本発明の中空微粒子は、粒子の内部空間が表面に開口のない密閉気泡によって形成されているので吸水率が低い。かつ大きな内部空間を有するので軽量であり、また内部空間に隔壁が存在するので粒子の強度が大きく、加圧下でも亀裂が生じ難い。さらに、この内部空間が隔壁によって隔てられた複数の独立気泡によって形成されているので、部分的に亀裂が生じても水が浸透する範囲が限られ、加圧水下での浮揚残存率が格段に高い。
【0027】
従って、本発明の中空微粒子は、例えばモルタルや溶媒などに混ぜて比較的大量に使用するときのポンプ圧送などに適し、ポンプ圧送しても中空粒子が破壊されない。また、本発明の中空微粒子は、粒子の内部空間に隔壁を有するので、隔壁のない単一空間からなる粒子に比較して粒子の強度が大きいので、骨材や断熱材、建築材料などに用いたときに部材の強度を高めることができ、また移動や運搬中による粒子の破壊が少なく、取扱いが容易である。さらに、スラリー等に混合したときに、中空状態を維持することができる。
【0028】
一方、従来のように、内部空間に隔壁が存在しても、内部の気泡が互いに連通しているものは、部分的に亀裂が生じると粒子内部全体に水が浸透するので、浮揚残存率が大幅に低く、さらに吸水率が高い。吸水率が高いものはモルタルの骨材などに使用したときに軽量化できない。また、ポンプ圧送する場合にスランプロスが発生し、圧送が困難となる。
【実施例】
【0029】
以下、本発明を実施例によって具体的に示す。なお、粒子の平均粒径、隔壁粒子の割合、容重、一軸圧縮強度、静水圧浮揚残存率、浮水率、吸水率は以下の方法によって測定した。
【0030】
〔平均粒径〕
レーザー回折粒度分布測定装置を用い、日機装社製測定器(マイクロトラック)によって測定した。
〔隔壁粒子の割合〕
プレパラート上に試料粒子を少量置き、そこにエタノールを滴下して粒子を分散させ、均一にならして乾燥させる。これを光透過型の顕微鏡で観察し、発泡粒子100個に対して隔壁が目視で見られた粒子の個数をカウントした。
【0031】
〔一軸圧縮強度〕
一軸圧縮強度は、内径15mm、高さ100mmのステンレス製シリンダに、シリンダ内径よりわずかに小さい高さ60mmの円柱状ステンレス冶具をシリンダ下部にセットし、その上から振動を加えて試料を充填させ、高さ約20mmとなるようにする。その上から同じ円柱状のステンレス製冶具を乗せて、一軸圧縮試験機にて圧縮させる。圧縮前の試料高さから50%体積減少した時点の圧縮圧力を常温で測定し、一軸圧縮強度とした。
【0032】
〔浮水率〕
浮水率は、試料粒子を水に浸漬したときに、水面上に浮いた粒子の全試料粒子に占める体積割合であり、加圧しない常圧下の浮揚率である。約10gの試料を200mlメスシリンダーに入れて水を浸し、十分に攪拌した後に静置し、水の濁りがなくなるまで静置し、浮いた試料Vaと沈んだ試料の容積Vbを測定し、Va/(Va+Va)×100の式に基づいて浮水率を算出した。
【0033】
〔容重〕
一定容積S(cm3)の容重枡に試料を充填し、開口からはみ出た部分をすり切り、全体の重量G1を測定し、これから容器の重量G2を差し引いて粉末重量G3(g)を求め、上記容積Sに対する粉末重量G3〔G3/S〕g/cm3を容重とした。
【0034】
〔吸水率〕
約200g試料を十分な量の水中に入れ、24時間放置する。これを5種Aの濾紙で自然濾過させる。これを時計皿に薄く均一に延ばして風乾させ、試料を採取し、吸水試料質量maを測定する。これを105℃の乾燥機で恒量になるまで乾燥し、乾燥試料質量mbを測定する。(ma−mb)/mb×100の式から吸水率を算出した。
【0035】
〔静水圧浮揚残存率〕
試料を試料容器と共に水で満たされた加圧容器内へ入れ、1、3、4、6、8、10MPaで1分間加圧する。加圧後、加圧した試料の全量を大気圧下で取り出してメスシリンダー入れ、水200mlを加えて静置する。静置後、水の濁りが無くなってきたら、上記浮水率測定方法に準じた方法で、浮いた試料粒子の体積を計測し、所定加圧下での加圧浮揚率(浮水率)W2とする。加圧試料と同量の試料粒子について、加圧せずに常圧下とした以外は同様の測定方法で測定し、非加圧下の浮揚率(浮水率)W1とする。加圧試料浮揚率W2/非加圧浮揚率W1×100の式に基づいて静水圧浮揚残存率(%)を算出した。
【0036】
〔実施試料A1〜A9〕
真珠岩〔化学成分含有率(質量%)SiO2 74%、Al2O3 13%、Fe2O3 1%、CaO1%、MgO 0.1%、Na2O 3.5%、K2O 4.4%、ig.loss 2.2%〕を粉砕し、平均粒径10〜150μmに調整し、1000℃〜1100℃で焼成し、加熱発泡させて中空微粒子を製造した。この中空微粒子を光学顕微鏡によって観察し、内部空間に隔壁を有し、容重0.16〜0.35g/cm3、平均粒径約10〜200μmのものを選択し、その静水圧浮揚残存率を測定した。また、隔壁粒子の割合、吸水率、圧縮強度、浮水率を測定した。これらの結果を表1に示した(試料A1〜試料A9)。また、A2、A3、A7について浮揚残存率の推移を図5に示した。
【0037】
〔比較例1〕
実施例と同様の方法で隔壁のある中空微粒子を製造し、平均粒径約3μmの粒子(B1)と平均粒径約305μmの粒子(B2)を選択し、その静水圧浮揚残存率を測定した。また、隔壁粒子の割合、吸水率、圧縮強度、浮水率を測定した。これらの結果を表2に示した。また、浮揚残存率の推移を図5に示した。
【0038】
〔比較例2〕
市販品のパーライト(真珠岩系加熱発泡粒)の容重0.21g/cm3、平均粒径210μmの試料C1、容重0.21g/cm3、平均粒径179μmの試料C2について、隔壁粒子の割合、浮揚残存率、吸水率、圧縮強度、浮水率を測定した。この結果を表3に示した。また、市販のソーダライム系ガラスビーズ(表面に開口が無く、内部に隔壁のない単一気泡を有し、空隙率が85容積%)C3について、同様の測定を行い、その結果を表3に示した。
【0039】
また、市販品のパーライト中空微粒子を回転電気炉で1000℃に再加熱し、表面を溶融させて特許文献1に記載されている中空微粒子(内部気泡が連通している)に相当するものを製造した(C4)。この表面溶融試料C4について、容重、平均粒径、隔壁粒子の割合、浮揚残存率、浮水率、吸水率、圧縮強度を表3に示した。試料C1およびC4について、浮揚残存率の推移を図5に示した。
【0040】
表1に示すように、内部空間が隔壁によって仕切られた独立気泡によって形成されている、平均粒径10〜199μm、容重0.16〜0.35g/cm3の本発明品の中空粒子は、試料A8を除き、静水圧8MPa下の浮揚残存率が60%以上であり、また静水圧1MPa〜6MPaの低圧下における浮揚残存率の低下が少なく、静水圧6MPa〜8MPaの高圧下でも高い浮揚率を示す。
【0041】
一方、表2に示すように、平均粒径が200μmを超える試料B1は、静水圧1MPa〜2MPa下の浮揚残存率は高いが、静水圧4MPa以上の浮揚残存率は急激に低下し、静水圧8MPa下の静水圧浮揚残存率は25%と大幅に低い。また、平均粒径が3μmの試料B2は浮水率が大幅に低く、発泡していない粒子が多いことを示している。さらに試料B2は、隔壁粒子数の割合が少ないため、殻が一部破損すると内部全体に水が浸入するため、静水圧1MPa〜4MPaの低圧下においても浮揚残存率が急激に低下する。
【0042】
表3に示すように、従来のパーライト市販品C1〜C2は何れも静水圧2MPa以上の浮揚残存率が急激に低下しており、これは、従来のパーラート市販品は粒子の内部空間が単一の気泡によって形成されているので、僅かな亀裂でも粒子内部全体に水が浸透しやすいことを示している。特に隔壁粒子が全くない試料C3の静水圧8MPa下の浮揚残存率は1%であり、大部分の粒子は浮揚しない。
【0043】
また、粒子表面を再溶融して表面開口を塞いだ試料C4も、静水圧4MPa以上の浮揚残存率が急激に低下する。これは、内部気泡が連通しているため、粒子表面が部分的に破損すると連通気泡を通じて粒子内部全体に水が浸入するためであり、静水圧6MPa以上では試料C1と同程度の低い浮揚残存率である。
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】

【0046】
【表3】

【符号の説明】
【0047】
10−中空微粒子、11−内部空間、12−隔壁、13−外殻

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒径5〜200μmのシリカ質微粒子であって、該粒子の内部空間が隔壁によって区切られており、該内部空間が複数の独立気泡によって形成されていることを特徴とする無機中空微粒子。
【請求項2】
8MPa静水圧浮揚残存率が50%以上であって、吸水率が3%以下である請求項1に記載する無機中空微粒子。
【請求項3】
平均粒径が20〜100μm、容重が0.16〜0.35g/cm3であり、圧縮強度が15MPa以上である請求項1または請求項2に記載する無機中空微粒子。
【請求項4】
隔壁によって区切られた複数の独立気泡によって形成されている内部空間を有する粒子を10個中60個以上含む請求項1〜請求項3の何れかに記載する無機中空微粒子。

【図2】
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【図5】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−53029(P2010−53029A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−177675(P2009−177675)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(501173461)太平洋マテリアル株式会社 (307)
【Fターム(参考)】