説明

無機塩を含有する水系マッサージ剤

【課 題】温感又は温熱効果を有する水系マッサージ剤
【解決手段】水溶性無機塩及び、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、キサンタンガム、グアガム、可溶性デンプン、プルラン又はゼラチンから選ばれた少なくとも1種の水溶性高分子から選ばれた増粘剤からなる水系マッサージ剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用時にべたつかず温感、温熱効果に優れるマッサージ剤に関する。
また、本発明は、増粘剤を含み、かつ高塩濃度の水溶性無機塩を含有した水系マッサージ剤に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧料、特にマッサージ剤において、使用時に温感又は温熱感を高めるためには、多価アルコールやソルビットエーテル等の水への溶解熱により発熱するものや水和時に発熱する無機塩を使用し、必要時に水と接触させて発熱させるマッサージ剤を含む化粧料が提案されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
発熱化粧料としては、上述するようにアルコール等の溶解熱により発熱するものは知られており、例えばアルコール及びソルビットエーテルを含有し、水と混合したときに発熱する非水系のパック化粧料(特許文献1)、ポリエチレングリコールと水和時に発熱する塩化マグネシウムや塩化カルシウム等の無機塩からなる温熱効果を持つマッサージ剤(特許文献2)が提案されている。
しかし、これらの剤では、使用時に水が接触したときに発熱する有機物や無機塩粒子の溶解熱による発熱を利用するため、保存時のことを考えると、剤は非水系とせざるを得なかった。
【0004】
また、無機塩や有機塩の過冷却状態の溶液を含有し、使用時に当該塩の結晶が析出して発熱する発熱組成物(引用文献3)、多価アルコールと微粒子金属酸化物を含み実質的に水を含有しない温熱感を与える化粧料(引用文献4)、水と接触すると発熱する無機粉体、例えば塩化マグネシウムや塩化アルミニウム粉末とエタノールを含有する温熱持続効果のある化粧料(引用文献5)、ゼオライト、金属塩又は金属酸化物の無水物、多価アルコール等の水と接触して発熱性物質とアルキレンオキシド誘導体からなる発熱持続性のある化粧料(引用文献6)が知られている。
しかしながら、上記従来の発熱性化粧料では、発熱量の調整困難さや剤中での粒子の分散安定性等が問題となっており、温感がよく、温熱効果があり、さらに長期保存安定性のあるマッサージ剤は知られていない。
【0005】
【特許文献1】特開平06-80534号公報
【特許文献2】特開2001-122722号公報
【特許文献3】特開平11−49627号公報
【特許文献4】特開2000−38332号公報
【特許文献5】特開2001−139450号公報
【特許文献6】特開2005−126345号公報
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、基剤として増粘剤を使用した高濃度水溶性無機塩の水溶液を用いることで、身体塗布時に温感が得られるとともに希釈熱による穏やかな温熱効果を有するマッサージ剤の得られることを特徴とするものである。
本発明では、上記水溶性無機塩として、希釈熱が発熱である塩化マグネシウム、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウムを用いることができる。
また、本発明では、上記増粘剤としてポリビニルアルコール、メチルセルロース、キサンタンガム又はグアガム、水溶性デンプン、プルラン又はゼラチンから選ばれた少なくとも1種の水溶性高分子を使用することが必須である。
また、水溶性高分子を用いて基剤の粘度調整することで、非水系の剤と比べて、使用時のべたつきが少なく、使用感の良好なマッサージ剤を得ることができる。
さらに、本発明のマッサージ剤は水系の高粘稠液であるが、経時的な変化が少なく、固液の分離や粒子の沈降により均一性が失われることがない。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、耐塩性の水溶性高分子からなる基剤と高濃度水溶性無機塩溶液とを組み合わせることにより,水系であって、温感・温熱効果のあるマッサージ剤を作成することができ、マッサージ剤としての使用感を向上させることができる。
また、水溶性無機塩の高粘稠溶液は、大腸菌、黄色ブドウ球菌、緑膿菌などの人体に有害な菌に対し抗菌効果があり、肌に使用した場合、微生物に汚染された肌を清浄にすることができ、結果的に一般の化粧料等に使用されている防腐剤の使用を不使用にするか減量することができるため、人体に対して、より安全なマッサージ剤とすることができる。
しかしながら、高粘稠溶液に含まれる水溶性無機塩量が4重量%以下の場合、高粘稠液に雑菌が繁殖するので、水溶性無機塩量は少なくとも4重量%以上であることが必要である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、水溶性無機塩及び増粘剤からなる、温感又は温熱効果を有する水系マッサージ剤であることを特徴とするものであり、増粘剤として、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、キサンタンガム又はグアガム、可溶性デンプン、プルラン又はゼラチンから選ばれた少なくとも1種の水溶性高分子を使用し、水溶性無機塩として、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム又は硝酸マグネシウムから選ばれたすくなくとも1種の無機塩を4重量%〜飽和水溶液濃度を含有するものである。
高粘稠液に含まれる水溶性無機塩濃度が4重量%以下の場合には、上述するように菌に対する抗菌効果が期待できず、抗菌効果を発現させるためには、水溶性無機塩濃度はより高濃度であることが好ましい。
なお、用いる水溶性塩類は、水和物として市販されているものが多く、塩化マグネシウムとしては、6水和物、塩化カルシウムとしては2水和物、硫酸マグネシウムとしては7水和物、硝酸マグネシウムとして6水和物が市販されているので、本発明でも、通常、水和物を使用する(なお、水溶液濃度は、無水和物濃度で示す)。
【0009】
さらに、希釈熱による発熱は、希釈前の塩濃度が小さい程発熱量が小さい。そのため、より大きな温感効果を得るためには、塩濃度は無水物として25重量%以上にすることが好ましい。
しかしながら、高粘稠液における水溶性塩類の飽和濃度があり,高濃度とするには上限がある。25℃における飽和溶解度は,塩化マグネシウムは35.3重量%、塩化カルシウムは45.3重量%、硫酸マグネシウムは26.7重量%、硝酸マグネシウムは42.1%であり、上記それぞれの飽和水溶液濃度以上の組成にした場合には、気温の低下により結晶の析出がおこってしまうため、これ以上の高濃度において安定状態で使用することはできない。
上述するように、水溶性無機塩の水に対する溶解度に限界があり、本件の水溶性無機塩の高粘稠液における使用量の上限は、飽和溶液濃度である。
なお、高粘稠液に含まれる水溶性無機塩の下限値は、雑菌の発生しない、4重量%である。
【0010】
本発明のマッサージ剤は、使用時に扱いやすい粘度とするため、増粘剤を添加するが、このような増粘剤としては、塩に耐性を有するメチルセルロース、ポリビニルアルコールやキサンタンガム、グアガム、可溶性デンプン、プルラン又はゼラチンを使用する必要がある。
このほかの一般に用いられている種々の水溶性高分子は、塩に対する耐性が無いために、水溶性高分子の水溶液に塩を加えると、塩析により水溶性無機塩溶液と高分子が分離してしまう等の問題があり、使用できない。
また、上記増粘剤を用いても、無機塩に硫酸マグネシウム等の多価の陰イオンを持つ無機塩を用いると、メチルセルロース、ポリビニルアルコールやキサンタンガム、グアガムを用いた場合には,高分子が凝集してしまうため,塩化マグネシウム,塩化カルシウム又は硝酸マグネシウムを用いることが好ましい。
さらに、温熱効果を付与するためには、希釈熱の最も大きい塩化マグネシウムを用いることが望ましい。
【0011】
上記の塩に耐性を有するメチルセルロース、ポリビニルアルコールやキサンタンガム、グアガム、可溶性デンプン、プルラン又はゼラチンを用いた場合、材によってその濃度が異なるが、8重量%以上の濃度の場合には、粘度が高くなり、肌に塗布した場合に剤ののびが悪くなるなど使用感が悪くなる。また、1重量%以下の場合には、粘度が低すぎるため、肌に塗布した場合に液だれするなど、ハンドリングが悪くなる。
したがって、本発明のマッサージ剤における上記高分子系の増粘剤の使用量は、1〜8重量%、好ましくは4〜6重量%である。
【0012】
なお、本発明のマッサージ剤には、無機塩、増粘剤のほかに一般の化粧料等に用いられる、防腐剤や界面活性剤を添加しても差し支えない。
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0013】
〔実施例1〕
塩化マグネシウム6水和物、塩化カルシウム2水和物又は硝酸マグネシウム6水和物を水道水に溶解し、それぞれ塩化マグネシウム、塩化カルシウム又は硝酸マグネシウムの30重量%水溶液を調製した。
得られた溶液に対してポリビニルアルコール5gを添加して、均一な水溶性無機塩−増粘剤粘稠液を得た。
得られた溶液を身体に塗布したところ感触も良く、マッサージ剤として好適なものであり、温熱感も長時間持続した。
また、同様に塩化マグネシウムについて7重量%濃度に変化させて上記ポリビニルアルコール増粘剤を添加した場合にも同様の効果が得られた。
一方、ポリビニルアルコールに代えて同量のメチルセルロース、グアガム、キサンタンガム、可溶性デンプン、プルラン又はゼラチンを使用した場合にも同様の効果が得られた。
結果を表1に示す。
【0014】
〔実施例2〕
硫酸マグネシウム7水和物を水道水に溶解し、25重量%水溶液を調製した。
得られた溶液に対して可溶性デンプンを添加して、均一な水溶性無機塩−増粘剤粘稠液を得た。なお、硫酸マグネシウムの飽和水溶液は25℃において26.7重量%である。
得られた溶液を身体に塗布したところ感触も良く、マッサージ剤として好適なものであり、温熱感も長時間持続した。
可溶性デンプンに代えて同量のプルラン又はゼラチンを使用した場合にも同様の効果が得られた。
また、同様に硫酸マグネシウムについて7重量%濃度に変化させて上記ポリビニルアルコール増粘剤を添加した場合にも同様の効果が得られた。
一方、メチルセルロース又はグアガム又はキサンタンガムを用いた場合には、均一な水溶性無機塩−増粘剤粘稠液は得られなかった。
結果を表1に示す。
【0015】
〔比較例1〕
塩化マグネシウム、塩化カルシウム又は硝酸マグネシウムの30重量%水溶液,および、硫酸マグネシウム25%溶液それぞれに、増粘剤としてカラギーナン、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレンオキシド、セルロースガム又はアルギン酸ナトリウム5%をそれぞれ別個に添加して同様の操作をしたが、いずれの場合も水溶性高分子が溶解せず、均一な粘稠液を得ることはできず,マッサージ剤として好適なものでは無かった。
結果を表1に示す。
【0016】
【表1】

上記表1の結果にあるように、無機塩としては、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム又は硝酸マグネシウムを用い、高粘度化するための水溶性高分子として、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、グアガム、キサンタンガム、可溶性デンプン、プルラン又はゼラチンをそれぞれ組み合わせた場合に、本発明の所期の効果、すなわち、温感効果があり、使用感の優れたマッサージ剤を得ることができる。
【0017】
〔実施例3〕
同様に塩化マグネシウム、塩化カルシウム又は硝酸マグネシウムのそれぞれの35重量%水溶液を調製し、ポリビニルアルコール5gを混合し、塩化マグネシウム−ポリビニルアルコール粘稠液を得た。
得られた溶液を身体に塗布したところ感触も良く、マッサージ剤として好適なものであった。
また、同様に7重量%濃度に変化させて上記ポリビニルアルコール増粘剤を添加した場合にも同様の粘稠液を得た。
【0018】
〔実施例4〕
同様に塩化マグネシウム、塩化カルシウム、硝酸マグネシウム又は硫酸マグネシウムのそれぞれの25重量%水溶液を調製し、ポリビニルアルコール5gを混合し、塩化マグネシウム−ポリビニルアルコール粘稠液を得た。
得られた溶液を身体に塗布したところ感触も良く、マッサージ剤として好適なものであった。
また、同様に7重量%濃度に変化させて上記ポリビニルアルコール増粘剤を添加した場合にも同様の粘稠液を得た。
【0019】
〔実施例5〕
塩化マグネシウム、塩化カルシウム、硝酸マグネシウム又は硫酸マグネシウムのそれぞれの20重量%水溶液を調製し、ポリビニルアルコール5gを混合し、塩化マグネシウム−ポリビニルアルコール粘稠液を得た。
得られた溶液を身体に塗布したところ感触も良く、マッサージ剤として好適なものであった。
また、同様に7重量%濃度に変化させて上記ポリビニルアルコール増粘剤を添加した場合にも同様の粘稠液を得た。
【0020】
〔使用試験〕
実施例1,3,4,5の溶液をマッサージ剤として、肌に塗布し、温熱感が得られるか官能試験を行った。
その結果を表2に示す。
塩化マグネシウムの場合がもっとも温熱効果があるものの、どの塩を用いてもほぼ濃度25重量%以上で温感効果がある。
【0021】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性無機塩及び増粘剤からなることを特徴とする温感又は温熱効果を有する水系マッサージ剤。
【請求項2】
増粘剤が、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、キサンタンガム又はグアガム、可溶性デンプン、プルラン又はゼラチンから選ばれた少なくとも1種の水溶性高分子であることを特徴とする請求項1の水系マッサージ剤。
【請求項3】
水溶性無機塩が、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウムである請求項1又は2に記載の水系マッサージ剤
【請求項4】
塩化マグネシウムを4%〜35重量%含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の水系マッサージ剤


【公開番号】特開2010−132570(P2010−132570A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−307344(P2008−307344)
【出願日】平成20年12月2日(2008.12.2)
【出願人】(592015802)赤穂化成株式会社 (29)
【Fターム(参考)】