説明

無機粉の分離促進剤組成物

【課題】シリコン粉等の無機粉を含有する排液等から、無機粉と、無機粉が分散している分散媒体とを、簡易な方法によって、分離することができる、無機粉の分離促進剤組成物を提供すること。
【解決手段】アルキルグリコシド及び水を含有する無機粉の分離促進剤組成物。無機粉が、分散媒体に分散している分散液に、前記分離促進剤組成物を加え、撹拌混合した後、静置することで、分散媒体を主として含有する層(x)と無機粉を含有する層(y)に分離する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機粉の分離促進剤組成物及び当該分離促進剤組成物を用いた無機粉の分離方法に関する。本発明の分離促進剤組成物は、通常、無機粉が、分散媒体中に分散している分散液(懸濁液を含む)に適用される。
【背景技術】
【0002】
近年、産業の発展、多様化に伴い、各種の分野において、水や有機溶媒等の媒体中に無機粉を含有する排液が多数発生している。これら排液は、水や有機溶媒等の媒体から無機粉を分離することが困難であり、また無機粉を有することから蒸留が困難なため、廃棄されることが多い。一方、環境問題等から、排液中の水や油等の媒体と無機粉とは、分離して再利用することが望まれる。
【0003】
前記排液としては、例えば、シリコン粉を含有する排液があげられる。シリコン粉を含有する排液は、例えば、シリコン結晶インゴットをシリコンウエハにする場合、通常、スライス工程及び/又は研磨工程を含み、前記スライス工程由来の切削屑等としてシリコン粉が生じ、また、前記スライス工程で用いた潤滑油や前記研磨工程で用いた砥粒とともに、シリコン粉が洗浄剤により除去され、その結果として生じる。当該洗浄剤としては、主に灯油等の炭化水素系溶媒が用いられる。
【0004】
上記シリコン粉を含有する排液に対する処理方法としては、例えば、前記排水に、シリカゾル−水溶性金属塩よりなる無機凝集剤を所定濃度となるように含有させ、次いで、有機高分子凝集剤を添加する方法が提案されている(特許文献1)。
【0005】
【特許文献1】特開2007−185647号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の処理方法は、無機凝集剤を所定濃度となるように含有させ、さらに、有機高分子凝集剤を添加するため、複数の材料を用いることによって処理操作が煩雑であること、また、無機凝集剤の割合を所定濃度に設置することなどの処理操作が難しいなども問題がある。また、特許文献1の処理方法は、シリコン粉を含有する排水を処理対象にしているため、シリコンウエハ等のスライス工程後の洗浄剤として、炭化水素系溶媒が用いられている場合には、当該洗浄剤(炭化水素系溶媒)の排液に対しては、到底適用することができない。
【0007】
本発明は、シリコン粉等の無機粉を含有する排液等から、無機粉と、無機粉が分散している分散媒体とを、簡易な方法によって、分離することができる、無機粉の分離促進剤組成物を提供することを目的とする。
【0008】
また本発明は、前記分離促進剤組成物を用いて、無機粉を含有する排液から、無機粉と、無機粉が分散している分散媒体とを、分離する方法、を提供することを目的とする。さらには、無機粉を含有する排液から分散媒体を回収する方法、を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち、本発明は、アルキルグリコシド及び水を含有する無機粉の分離促進剤組成物、に関する。
【0010】
また本発明は、無機粉が、分散媒体に分散している分散液に、前記分離促進剤組成物を加え、撹拌混合した後、静置することで、分散媒体を主として含有する層(x)と無機粉を含有する層(y)に分離する、無機粉の分離方法、に関する。
【0011】
また本発明は、前記無機粉の分離方法により分離された分散媒体を主として含有する層(x)を回収する、分散媒体の回収方法、に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の分離促進剤組成物によれば、無機粉を含有する分散液等の排液に、当該分離促進剤組成物を加えて、撹拌混合した後、静置することによる、簡易な操作によって、容易に排液中の、無機粉と、分散媒体とを、分散媒体を主として含有する層(x)と無機粉を含有する層(y)に分離することができる。上記のように、分離された分散媒体を主として含有する層(x)は、回収して、再利用することができる。分散媒体を主として含有する層(x)は、無機粉を含有する層(y)から分離されていることから、蒸留等の操作により精製して、分散媒体を再利用することができる。
【0013】
例えば、シリコンウエハ等のスライス工程後の洗浄剤として、炭化水素系溶媒(例えば灯油)を用いる場合には、当該洗浄剤(例えば灯油)の排液から、灯油を主として含有する層とシリコン粉を含有する層を分離して、灯油を主として含有する層から灯油を回収することができる。回収された灯油を含有する層は、精製して、燃料又は洗浄剤として再利用することができる。さらには、灯油による前記洗浄工程には、シリコン粉を希釈して除去していたため複数の洗浄槽を設ける必要であったが、灯油排液から、シリコン粉を容易に分離することができるため洗浄槽数を減らすことができ、さらには灯油の使用量を減らすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の分離促進剤組成物は、例えば、アルキルグリコシド及び水を含有する水溶液として用いることができる。本発明に用いられるアルキルグリコシドは、無機粉が分散している排液等の分散液に加えて、撹拌、静置することにより、排液中の無機粉と分散媒体の分離を促進することができる。
【0015】
本発明に用いられるアルキルグリコシドは、例えば、下記の一般式(1):
(OR(1)
〔式中、Rは直鎖又は分岐鎖の炭素数8〜18のアルキル基、アルケニル基、又はアルキルフェニル基を示し、Rは炭素数2〜4のアルキレン基を示し、Gは炭素数5〜6を有する還元糖に由来する残基を示し、x(平均値)は0〜5を、y(平均値)は1〜5を示す〕で表される。
【0016】
式中、xは、好ましくは0〜2、より好ましくは0である。yは、好ましくは1〜1.5、より好ましくは1〜1.4である。Rの炭素数は、好ましくは9〜16、さらに好ましくは10〜14である。Rは、好ましくはエチレン基である。Gは、その原料として使用される単糖類又は多糖類等の還元糖によってその構造が決定され、単糖類としては、グルコース、ガラクトース、キシロース、マンノース、リキソース、アラビノース、これらの混合物などが挙げられ、多糖類としては、マルトース、キシロビオース、イソマルトース、セロビオース、ゲンチビオース、ラクトース、スクロース、ニゲロース、ツラノース、ラフィノース、ゲンチアノース、メレジトース、これらの混合物などが挙げられる。これらのうち、単糖類としては、入手性及び低コストの点からグルコース又はフルクトースが好ましく、多糖類ではマルトース又はスクロースが好ましい。尚、x及びyはプロトン(H)NMRにより求める。
【0017】
アルキルグリコシドとしては、前記一般式(1)を満たすものであれば特に限定はないが、例えば、アルキルポリグルコシドが好ましく、中でも、デシルポリグルコシド、ドデシルポリグルコシド、ミリスチルポリグルコシドなどがより好ましい。
【0018】
ここで、アルキルポリグルコシドとは、前記一般式(1)において、Gがグルコース由来の残基であり、yが1以上であるアルキルグリコシドをいい、例えば、単糖類又は多糖類をその構造として含むものが挙げられる。
【0019】
本発明の分離促進剤組成物は、アルキルグリコシドに、水を配合することにより調製される。本発明の分離促進剤組成物は、当該組成物中のアルキルグリコシドと水の合計量に対する、アルキルグリコシドの割合が、通常、0.01〜50重量%になるように調製される。前記割合は、好ましくは0.05〜30重量%、さらに好ましくは0.1〜20重量%である。前記割合で、アルキルグリコシドを含有することにより、無機粉、特にシリコン粉の分離を促進することができる。
【0020】
本発明に用いられる水としては、特に限定はなく、イオン交換水、純水、脱イオン水などが挙げられ、イオン交換水が好ましい。
【0021】
本発明の分離促進剤組成物は、さらにグリセリルエーテルを含有することができる。グリセリルエーテルを含有することにより、さらに無機粉、特にシリコン粉の分離を促進することができ、その結果、灯油等の分散媒体の回収を容易にすることができる。
【0022】
本発明で用いられるグリセリルエーテルとしては、無機粉、特にシリコン粉に対する分離を促進することができ、分散媒体の回収を容易にできる観点から、例えば、炭素数4〜12の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を有するものが挙げられ、例えばn−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基などの炭素数4〜12のアルキル基を有するものが好ましく、炭素数5〜10、さらに炭素数5〜8のアルキル基を1又は2個、特に1個有するものがさらに好ましい。さらに本発明に用いるグリセリルエーテルとしては、無機粉、特にシリコン粉に対する分離を促進することができ、分散媒体の回収を容易にできる観点から、グリセリル基が2個以上、好ましくは2〜3個のグリセリル基がエーテル結合で繋がった、モノアルキルジグリセリルエーテル又はモノアルキルポリグリセリルエーテルを使用できる。
【0023】
アルキルグリコシド及び水とともに、グリセリルエーテルを併用する場合、分散媒体中の無機粉、特にシリコン粉を沈殿させ分離を促進する観点から、アルキルグリコシドと水の合計量100重量部に対して、グリセリルエーテルは好ましくは0.0001〜1000重量部であり、より好ましくは0.0005〜500重量部であり、更に好ましくは0.005〜100重量部である。
【0024】
前記アルキルグリコシド及びグリセリルエーテルの好ましい組み合わせとしては、アルキルグリコシドがデシルポリグルコシド及び/又はドデシルポリグルコシドであり、グリセリルエーテルが2−エチルヘキシルグリセリルエーテル及び/又はヘキシルグリセリルエーテルがあげられる。
【0025】
本発明の分離促進剤組成物は、さらに、本発明の効果を損なわない範囲で任意の添加剤を加えることができる。添加剤としては、有機酸又は無機酸、炭化水素、アルカリ剤、消泡剤、他の界面活性剤、防腐剤、防錆剤などを含有してもよい。
【0026】
本発明の無機粉の分離方法は、無機粉が、分散媒体に分散している分散液に、上記分離促進剤組成物を加え、撹拌混合した後、静置することで、分散媒体を主として含有する層(x)と無機粉を含有する層(y)に分離することにより行う。
【0027】
本発明の分離促進剤組成物の対象である、無機粉としては、例えば、シリコン粉、シリカ粉、炭化珪素粉、アルミナ、セリア等の金属粉又はこれらの金属酸化物粉、ベントナイト等の鉱物粉等が例示されるが、本発明の分離促進剤組成物は、これらのなかでもシリコン粉への適用が好適である。なお、無機粉は、通常、平均粒径が0.1〜10μmのものである。前記平均粒径は、実施例に記載した測定方法による。
【0028】
無機粉が分散している分散液の分散媒体としては、各種の溶媒があげられ、例えば、水、炭化水素、グリコールエーテル等の有機溶媒が例示される。
【0029】
無機粉が分散している分散液の分散媒体として用いられる炭化水素は、本発明の分離促進効果が好ましく発現する観点から、例えば、灯油、オレフィン系炭化水素及び/又はパラフィン系炭化水素が好ましく、灯油がより好ましい。オレフィン系炭化水素及びパラフィン系炭化水素としては、炭素数10〜18、好ましくは10〜14の化合物が好ましく、例えば、デカン、ドデカン、テトラデカン、ヘキサデカン、オクタデカン、デセン、ドデセン、テトラデセン、ヘキサデセン、オクタデセンなどの直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素;シクロデカン、シクロドデセンなどのシクロ化合物などの脂環式炭化水素などが挙げられる。
【0030】
上記以外の炭化水素としては、例えば、ノニルベンゼン、ドデシルベンゼンなどのアルキルベンゼン、メチルナフタレン、ジメチルナフタレンなどのナフタレン化合物などの芳香族炭化水素系溶媒があげられる。芳香族炭化水素系溶媒は、前記オレフィン系炭化水素及びパラフィン系炭化水素に加えて、使用することができる。
【0031】
前記分散液の具体例としては、例えば、シリコン結晶インゴットをシリコンウエハにする際にはスライス工程や、研磨工程の後に施される、洗浄剤による洗浄工程による排液があげられる。当該洗浄剤排液中には、洗浄剤(水系洗浄剤や、灯油が用いられる)中に無機粉としてシリコン粉を含有している他、潤滑油(加工油)、増粘剤、砥粒等を含有する。また、分散液の分散媒体としては、水、灯油等の炭化水素、グリコールエーテル等の有機溶媒等、好ましくは灯油等の炭化水素、より好ましくは灯油があげられる。
【0032】
本発明の無機粉の分離方法にあたり、処理対象である、無機粉を含有する分散液には、上記分離促進剤組成物が加えられるが、無機粉に対する分離を促進することができる観点から、分離促進剤組成物は、通常、分散液中の分散媒体100重量部に対して、分離促進剤組成物中のアルキルグリコシドが好ましくは0.0001〜1000重量部、より好ましくは0.001〜100重量部、さらに好ましくは0.001〜10重量部、さらに好ましくは0.001〜1重量部、さらに好ましくは0.001〜0.1重量部となるように配合するのが好ましい。
【0033】
処理対象の分散液に分離促進剤組成物を加えた後には、撹拌槽にて撹拌混合を施す。撹拌の手段は、通常の手段を採用でき、例えば、ホモミキサー、ラインミキサー等により行うことができる。例えば、後述の上層と下層に分離した後に、これら各層中の成分の回収を考慮すれば、ロート機能が付属している撹拌槽を用いるのが好ましい。撹拌は、目視により、十分に前記分散液と分離促進剤組成物が混合されたことが確認できれば終了することができる。通常、撹拌時間は、1〜120分間が好ましく、更に好ましくは30〜60分間である。なお、撹拌混合の際の温度は、通常、25〜60℃が好ましく、さらに好ましくは25〜40℃である。
【0034】
前記撹拌の終了の後には、撹拌された混合物を静置する。静置によって、当該混合物は分散媒体を主として含有する層(x)と無機粉を含有する層(y)に分離する。分離された、前記層(x)は、分散液の分散媒体(S)を主に含有する。一方、前記層(y)には、分離促進剤組成物を主な媒体として、無機粉が分散又は凝集した状態で含有されていると考えられる。従って、層(x)と層(y)が、上層または下層のいずれに分離されるかは、分散液の分散媒体と分離促進剤組成物の比重を指標とすることができる。例えば、分離促進剤組成物の比重が分散媒体の比重より大きい場合には、下層の無機粉を含有する層(y)と、上層の分散媒体を主として含有する層(x)とを分離することができる。一方、分散媒体の比重が分離促進剤組成物の比重より大きい場合には、上層の無機粉を含有する層(y)と、下層の分散媒体を主として含有する層(x)とを分離することができる。なお、前記層(x)において「主として」とは、層(x)では分散媒体に関わる層と、層(y)では無機粉に関わる層とが分離されていることが、肉眼により区別できる状態であればよいことを示しており、層(x)では媒体中の分散媒体の濃度が好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上、更に好ましくは95重量%以上であり、層(y)では媒体中の分離促進剤組成物の濃度が好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上、更に好ましくは95重量%以上である。通常、層(x)は、通常、肉眼で透明であればよく、微量の無機粉を含有していてもよく、一方、層(y)は無機粉が分散媒体を含有した状態で分離されていてもよい。静置は長時間になればなるほど、上層と下層の分離が進行する。静置時間は、前記分散液中の無機粉、その他不純物の濃度や、分離促進剤組成物中の成分濃度にもよるが、例えば、洗浄剤排液(洗浄剤が灯油で、シリコン粉を含み、かつ潤滑油等を約20重量%含有している排液)の場合には、通常は、1〜6時間で、分散媒体の約20〜80重量%を回収することができる。
【0035】
上記静置によって分離された、上層または下層の分散媒体を主として含有する層(x)と下層または上層の無機粉を含有する層(y)の各成分の回収は、前記分離を確認できれば、上層と下層が完全に分離していなくても行うことができる。完全に分離していない層に対しては、当該層を回収して、さらに、本発明の分離方法を施すことができる。また、前記分離操作にあたっては、遠心分離等を採用することができ、遠心分離等により各成分の回収を容易に行うことができる。
【0036】
例えば、前記分散媒体を主として含有する層(x)が上層として分離される場合には、前記分離した上層を、上から抜き出すことで分散媒体を主として含有する層(x)を回収することができる。また分液ロートを用いて前記分離を行った場合は、無機粉を含有する下層を、分液ロートの下側から抜き出すことで、上層の分散媒体を主として含有する層(x)を回収することができる。前記分散媒体を主として含有する層(x)が下層として分離される場合には、分液ロートの下側から抜き出すことで、下層の分散媒体を回収することができる。
【実施例】
【0037】
実施例1
アルキルポリグルコシド(一般式(1)においてR=平均炭素数11.3の直鎖アルキル基,x=0,y=1.3,G=グルコース残基)、2‐エチルへキシルグリセリルエーテル及び水を、順に、各成分の重量が、0.31g、0.09g、及び19.61gになるように混合して分離促進剤組成物を調製した。
【0038】
なお、表1中、アルキルグリコシドはAGと略す。表1に、分離促進剤組成物における各成分の配合量(g)、AGと水の合計量に対するAGの割合(表1中、[AG/(AG+水)]×100(%)で表記)、AGと水の合計量100重量部に対するグリセリルエーテルの割合(重量部)を表1に示す。
【0039】
実施例2〜4
実施例1において、各成分の配合割合を表1に示すように変えたこと以外は実施例1と同様にして分離促進剤組成物を調製した。
【0040】
実施例で得られた分離促進剤組成物について下記評価を行った。結果を表1に示す。なお、比較例1として、分離促進剤組成物を用いていない場合について示す。評価結果を、表1に示す。
【0041】
<処理対象物:分散液>
切削砥粒であるSiC(平均粒径が5〜15μmの範囲にある)25重量%とシリコン粉(平均粒径が0.1〜1μmの範囲にある)20重量%を含む油溶性切削油を準備した。さらに、灯油100重量部(67g)に対して、当該油溶性切削油組成物(5重量部,10重量部,又は20重量部)を加えて、分散液を準備した。
【0042】
なお、切削砥粒であるSiC及び無機粉であるシリコン粉の平均粒径は、光学顕微鏡で倍率2000倍、50μm×50μmの一の視野におけるSiCの粒子投影断面からランダムに配向させた球状鋳物砂粒子の長軸径(μm)と短軸径(μm)を測定して(長軸径+短軸径)/2を求める。前記視野中から任意の10個、他の視野中から任意の10個の計20個のSiCにつき、それぞれ得られた値を平均して平均粒径(μm)とする。長軸径と短軸径は、以下のように定義される。粒子を平面上に安定させ、その粒子の平面上への投影像を2本の平行線ではさんだとき、その平行線の間隔が最小となる粒子の幅を短軸径といい、一方、この平行線に直角な方向の2本の平行線で粒子をはさむときの距離を長軸径という。他の無機粉の場合も同様とする。但し、本実施例では、前記視野中に認められるSiCの平均粒径は5〜15μmに入り、シリコン粉の平均粒径は、0.1〜1μmに入ることを目視で簡易に確認した。
【0043】
<分散液の分離>
前記分散液中の灯油基準(これを100重量部とする)に対して、実施例に記載の分離促進剤組成物(前記灯油基準100重量部に対し、重量基準で30重量部)を加えて、十分に撹拌してこれらを混合した後、100mlの試験管に移し、6時間静置した。なお、表1には、灯油100重量部に対する分離促進剤組成物中のAGの割合を示す。静置後に上層に透明に分離する灯油層の容積(ml)を調べた。また、下層については、最下層に沈殿した砥粒の層上のシリコン粉の分散層の有無を確認した。一方、比較例1のように分離促進剤組成物を添加しなかった場合、シリコン粉は分散液中に分散したままで分散層は確認できなかった。
【0044】
<分散媒体の回収>
前記分散液の分散媒体である灯油は、各実施例において、前記した透明に分離した灯油層を上から抜き出すことで透明な灯油を回収することができた。
【0045】
【表1】

【0046】
実施例では、処理対象物の分散液に、分離促進剤組成物を添加した結果、上層として、透明の灯油層を分離し、回収することができた。特に、実施例1乃至3のように、分離促進剤組成物としてアルキルグリコシドとともに、グリセリルエーテルを用いている場合には、分離促進効果が大きい。一方、比較例1のように、分離促進剤組成物の代わりに、灯油のみを用いた場合には、分散液が希釈されたのみで、シリコン粉は分散液中に分散したまま沈降しない結果となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキルグリコシド及び水を含有する無機粉の分離促進剤組成物。
【請求項2】
更に、グリセリルエーテルを含有する請求項1記載の無機粉の分離促進剤組成物。
【請求項3】
無機粉が、シリコン粉である請求項1又は2記載の無機粉の分離促進剤組成物。
【請求項4】
無機粉が分散媒体に分散している分散液に、請求項1〜3のいずれかに記載の分離促進剤組成物を加え、撹拌混合した後、静置することで、分散媒体を主として含有する層(x)と無機粉を含有する層(y)に分離する、無機粉の分離方法。
【請求項5】
分散媒体が、炭化水素系溶媒である、請求項4記載の、無機粉の分離方法。
【請求項6】
請求項4または5記載の無機粉の分離方法により分離された分散媒体を主として含有する層(x)を回収する、分散媒体の回収方法。

【公開番号】特開2009−291715(P2009−291715A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−148393(P2008−148393)
【出願日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】