説明

無機質板の製造方法

【課題】 生産性を損なうことなく、目地間のピッチを調整することができる無機質板の製造方法を提供する。
【解決手段】 水硬性材料を含む無機質原板1をプレス用ベルトコンベア2でプレス機3に搬送する。プレス機3にて無機質原板1に複数の目地4をプレス成形した後、プレス成形後の無機質原板1をプレス機3からプレス用ベルトコンベア2にて搬送する無機質板の製造方法に関する。プレス成形前の無機質原板1をプレス用ベルトコンベア2に搬入するための搬入ベルトコンベア5と、プレス成形後の無機質原板1をプレス用ベルトコンベア2から搬出するための搬出ベルトコンベア6とを設ける。搬入ベルトコンベア5の無機質原板1の搬送スピードと搬出ベルトコンベア6の無機質原板1の搬送スピードに対してプレス用ベルトコンベア2の無機質原板1の搬送スピードを調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外装材などの建材として用いられる無機質板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、セメントなどの水硬性材料を含む無機質原板を抄造法により形成し、この無機質原板の表面にプレス成形によりタイル柄やレンガ調柄などの目地のある模様を付与し、この後、養生硬化させることにより無機質板を製造することが行なわれている(例えば、特許文献1参照)。このような無機質板は建材等として用いられており、上下左右に隣接して無機質板を貼り合わせることにより、外壁等を形成するようにしているが、隣接して貼り合わせた無機質板の境目で目地間のピッチが合致していないと、目地が歪んで見えて外壁等の外観が損なわれてしまう。そこで、目地間のピッチが無機質板毎にばらつかずに規格通りに一定となるように、プレス成形の工程で目地間のピッチを調整するようにしている。目地間のピッチを調整する方法としては、抄造後でプレス成形前の無機質原板の含水率(水分量)を調整する方法がある。この場合、プレス成形前の無機質原板の含水率を高くすれば、プレス成形後の目地間のピッチを伸ばして大きくすることができ、プレス成形前の無機質原板の含水率を低くすれば、プレス成形後の目地間のピッチを縮ませて小さくすることができる。このように無機質原板の含水率を調整するにあたっては、抄造の際のサクション圧や抄造スピードなどを調整するものであり、生産途中においても目地間のピッチを確認し、目地間のピッチが規格から外れていれば、無機質原板の含水率を調整作業を行なうものである。
【0003】
しかし、長尺の無機質原板を製造した場合、部分的に含水率が異なることがあり、これを調整するのは困難であった。また、含水率の調整による目地間のピッチの調整では応答が遅く、所望の含水率にするのは難しかった。さらに、一つの抄造ラインに対して複数のプレス成形ラインを使用した場合、個別のプレス成形ラインに対応して含水率を調整することが難しかった。また、抄造スピードを調整して含水率を調整する場合、抄造スピードを上下するために生産性に影響を与えることになり、抄造スピードを下げた場合は生産性が落ちることがあり、また、抄造スピードの調整範囲は±0.5m/分程度であり、大きく含水率を調整することができなかった。
【特許文献1】特開2002−321212号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、生産性を損なうことなく、目地間のピッチを調整することができる無機質板の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の無機質板の製造方法は、水硬性材料を含む無機質原板1をプレス用ベルトコンベア2でプレス機3に搬送し、プレス機3にて無機質原板1に複数の目地4をプレス成形した後、プレス成形後の無機質原板1をプレス機3からプレス用ベルトコンベア2にて搬送する無機質板の製造方法において、プレス成形前の無機質原板1をプレス用ベルトコンベア2に搬入するための搬入ベルトコンベア5と、プレス成形後の無機質原板1をプレス用ベルトコンベア2から搬出するための搬出ベルトコンベア6とを設け、搬入ベルトコンベア5の無機質原板1の搬送スピードと搬出ベルトコンベア6の無機質原板1の搬送スピードに対してプレス用ベルトコンベア2の無機質原板1の搬送スピードを調整することを特徴とするものである。
【0006】
本発明にあっては、プレス成形後の無機質原板1の目地4間のピッチLの測定結果に基づいて、プレス用ベルトコンベア2の無機質原板1の搬送スピードを調整することができる。
【0007】
また、本発明にあっては、搬入ベルトコンベア5の無機質原板1の搬送スピードと搬出ベルトコンベア6の無機質原板1の搬送スピードに対してプレス用ベルトコンベア2の無機質原板1の搬送スピードを±3m/分以内で調整することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明にあっては、無機質原板1を搬入ベルトコンベア5からプレス用ベルトコンベア2に搬入する際、及び無機質原板1をプレス用ベルトコンベア2から搬出ベルトコンベア6に搬出する際に、無機質原板1が搬送スピードの異なる搬入ベルトコンベア5とプレス用ベルトコンベア2との間及びプレス用ベルトコンベア2と搬出ベルトコンベア6との間に跨って配されることになり、このために、搬送方向と平行な方向において無機質原板1に応力を付与することができ、この応力により無機質原板1を伸縮させて目地4間のピッチLを調整することができるものである。この場合、無機質原板1の抄造スピードを遅くすることがないので、生産性を損なうことがないものである。
【0009】
また、プレス成形後の無機質原板1の目地4間のピッチLの測定結果に基づいて、プレス用ベルトコンベア2の無機質原板1の搬送スピードを調整することにより、目地4間のピッチLが規格通りになるように、プレス用ベルトコンベア2の搬送スピードを調整することができ、目地4間のピッチLを容易に調整することができるものである。
【0010】
また、搬入ベルトコンベア5の無機質原板1の搬送スピードと搬出ベルトコンベア6の無機質原板1の搬送スピードに対してプレス用ベルトコンベア2の無機質原板1の搬送スピードを±3m/分以内で調整することにより、大きな範囲で目地4間のピッチLを調整することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0012】
本発明の無機質板の製造方法は、まず、水硬性材料を含む無機質原板を抄造法により形成する。図2に本発明で用いる抄造装置Aの一例を示す。この抄造装置Aは、無端ループ状に形成された抄造ベルト10を備えており、多数個のローラ11により抄造ベルト10は一方向に進行自在に形成されている。抄造ベルト10には斜め上方に向かって進行する傾斜部12が形成されており、傾斜部12の上側には抄造ベルト10の傾斜部12にスラリーを供給するための供給機13が設けられている。また、抄造ベルト10には略水平に進行する水平部14が形成されており、水平部14の上側には無端ループ状に形成された押さえベルト15が配設されていると共に、水平部14の下側にはサクションボックス16が設けられている。また、抄造装置Aには、受取ベルトコンベア17、搬送ローラ18、送りベルトコンベア19が抄造ベルト10の水平部14と略同じ高さで設けられている。また、搬送ローラ18の位置には切断機20が設けられている。上記の抄造ベルト10、押さえベルト15、受取ベルトコンベア17、送りベルトコンベア19はコントローラ21により搬送スピードが調整可能に形成されている。
【0013】
図3には本発明で用いるプレス成形装置Bの一例を示す。このプレス成形装置Bは、複数個の送りベルトコンベア19を介して上記抄造装置Aと連設されているものであり、搬入ベルトコンベア5とプレス用ベルトコンベア2と搬出ベルトコンベア6及び複数の搬送ベルトコンベア25とを略水平に並べて形成されている。また、プレス用ベルトコンベア2にはプレス機3が設けられていると共に搬出ベルトコンベア6の直後に配置された搬送ベルトコンベア25の上方には目地間測定器22が配置されている。
【0014】
上記のような抄造装置A及びプレス成形装置Bからなる製造装置を用いて無機質板を製造するにあたっては、次のようにして行なう。まず、供給機13から抄造ベルト10の上にスラリーを供給する。スラリーは、セメントなどの水硬性材料、補強繊維、骨材などと水とを適宜配合して調製されるものであり、例えば、固形分の配合量をセメント40〜60質量部、骨材40〜60質量部、補強繊維0.5〜10質量部とし、固形分濃度が80〜100質量%とすることができるが、これに限定されるものではない。次に、抄造ベルト10上に供給されたスラリーは押さえベルト15により押さえられて板状に成形され、この後、サクションボックス16により吸引脱水される。このようにして所定の含水率(例えば、65〜72%程度)となった長尺の無機質原板1を連続的に形成する。
【0015】
次に、長尺の無機質原板1は抄造ベルト10から受取ベルトコンベア17に受け取られ、この後、搬送ローラ18に送られる。そして、搬送ローラ18上で切断機20により長尺の無機質原板1が所定の大きさに切断される。
【0016】
次に、切断された無機質原板1は複数の送りベルトコンベア19によりプレス成形装置の搬入ベルトコンベア5に送られる。次に、無機質原板1は搬入ベルトコンベア5からプレス用ベルトコンベア2に送られて搬入され、ここで、プレス機3により上下に挟まれてプレス成形され、無機質原板1の表面に縦横の溝状の目地4が複数本形成されると共に無機質原板1の含水率がさらに低下させられる(例えば、38〜42%程度)。次に、プレス成形後の無機質原板1はプレス用ベルトコンベア2から搬出ベルトコンベア6に送られて搬出され、この後、搬出ベルトコンベア6から搬送ベルトコンベア25に送られる。次に、搬送ベルトコンベア25上で目地間測定器22により目地4間のピッチLが自動的に測定される。目地4間のピッチLは、図4に示すように、無機質原板1の長手方向(搬送方向)における複数の目地4の間隔のことであり、製品サイズにより異なるが、目地4間のピッチLは約2300〜2700mmにすることができる。そして、この後、目地4間のピッチLが測定された無機質原板1は養生硬化工程に送られて、養生硬化される。このようにして無機質板を製造することができる。
【0017】
上記のような無機質板の製造工程において、目地間測定器22により目地4間のピッチLが規定値より外れている場合、搬入ベルトコンベア5の無機質原板1の搬送スピード及び搬出ベルトコンベア6の無機質原板1の搬送スピードに対してプレス用ベルトコンベア2の無機質原板1の搬送スピードを調整する。つまり、目地4間のピッチLの測定値が規定値より短い場合は、搬入ベルトコンベア5の無機質原板1の搬送スピード及び搬出ベルトコンベア6の無機質原板1の搬送スピードに対してプレス用ベルトコンベア2の無機質原板1の搬送スピードを遅くし、目地4間のピッチLの測定値が規定値より長い場合は、搬入ベルトコンベア5の無機質原板1の搬送スピード及び搬出ベルトコンベア6の無機質原板1の搬送スピードに対してプレス用ベルトコンベア2の無機質原板1の搬送スピードを速くする。
【0018】
具体的には、搬入ベルトコンベア5の無機質原板1の搬送スピード及び搬出ベルトコンベア6の無機質原板1の搬送スピードが120m/分であって、目地4間のピッチLの測定値が規定値より短い場合は、プレス用ベルトコンベア2の無機質原板1の搬送スピードを119m/分とし、搬入ベルトコンベア5の無機質原板1の搬送スピード及び搬出ベルトコンベア6の無機質原板1の搬送スピードに対して−1.0m/分とする。この場合、図1に示すように、搬入ベルトコンベア5からプレス用ベルトコンベア2に無機質原板1が移送される際に、無機質原板1が搬送スピードの異なる搬入ベルトコンベア5とプレス用ベルトコンベア2との間に跨って配されることになり、このために無機質原板1は搬送方向と逆向きの応力を受けて収縮する。次に、収縮した無機質原板1はプレス成形されて複数本の目地4が形成された後、プレス用ベルトコンベア2から搬出ベルトコンベア6に移送されるが、この時に無機質原板1が搬送スピードの異なるプレス用ベルトコンベア2と搬出ベルトコンベア6との間に跨って配されることになり、このために無機質原板1は搬送方向と同向きの応力を受けて伸長し、この結果、目地4間のピッチLも伸長される。従って、規定値より短い目地4間のピッチLが伸長されて規定値に近づくように補正されるのである。
【0019】
また、搬入ベルトコンベア5の無機質原板1の搬送スピード及び搬出ベルトコンベア6の無機質原板1の搬送スピードが120m/分であって、目地4間のピッチLの測定値が規定値より長い場合は、プレス用ベルトコンベア2の無機質原板1の搬送スピードを121m/分とし、搬入ベルトコンベア5の無機質原板1の搬送スピード及び搬出ベルトコンベア6の無機質原板1の搬送スピードに対して+1.0m/分とする。この場合、図1に示すように、搬入ベルトコンベア5からプレス用ベルトコンベア2に無機質原板1が移送される際に、無機質原板1が搬送スピードの異なる搬入ベルトコンベア5とプレス用ベルトコンベア2との間に跨って配されることになり、このために無機質原板1は搬送方向と同向きの応力を受けて伸長する。次に、伸長した無機質原板1はプレス成形されて複数本の目地4が形成された後、プレス用ベルトコンベア2から搬出ベルトコンベア6に移送されるが、この時に無機質原板1が搬送スピードの異なるプレス用ベルトコンベア2と搬出ベルトコンベア6との間に跨って配されることになり、このために無機質原板1は搬送方向と逆向きの応力を受けて収縮し、この結果、目地4間のピッチLも収縮される。従って、規定値より長い目地4間のピッチLが収縮されて規定値に近づくように補正されるのである。
【0020】
このようにプレス成形後の無機質原板1の目地4間のピッチLの測定結果に基づいて、プレス用ベルトコンベア2の無機質原板1の搬送スピードを調整することにより、目地4間のピッチLが規格通りになるように、プレス用ベルトコンベア2の搬送スピードを調整することができ、目地4間のピッチLを容易に調整することができるものである。また、目地4間のピッチLの測定結果を直ちにフィードバックしてプレス用ベルトコンベア2の搬送スピードを調整することにより、応答性よく目地4間のピッチLを安定させることができる(図5において実線矢印はプレス用ベルトコンベア2に目地4間のピッチLの測定結果をフィードバックすることを示す)。また、無機質原板1の抄造スピードを低下させないので、生産性を損なうことがないものである。さらに、図5に示すように、一つの抄造装置Aに対して二つのプレス成形装置Bを配置した場合、各プレス成形装置Bで個別に目地4間のピッチLを調整することができるものである。
【0021】
本発明において、搬入ベルトコンベア5の無機質原板1の搬送スピードと搬出ベルトコンベア6の無機質原板1の搬送スピードに対してプレス用ベルトコンベア2の無機質原板1の搬送スピードを±3m/分以内で調整するのが好ましく、大きな範囲で目地4間のピッチLを調整することができるものである。この範囲より逸脱すると、無機質原板1が搬入ベルトコンベア5とプレス用ベルトコンベア2との間及びプレス用ベルトコンベア2と搬出ベルトコンベア6との間に跨って配された時に滑って、無機質原板1に付与する応力が小さくなって本発明の効果を得ることが難しくなる恐れがある。
【0022】
尚、目地4間のピッチLの規定値が約2300〜2700mmの場合には、例えば、規定値から測定値が±1.0mm程度外れた時にプレス用ベルトコンベア2の搬送スピードを調整するようにすることができる。また、目地4間のピッチLの測定結果に基づいて無機質原板1の抄造時の含水率を調整しても良く、プレス用ベルトコンベア2の搬送スピードの調整との相乗効果により、さらに目地4間のピッチLの調整幅を広げることができる(図5において点線矢印は抄造ベルト10に目地4間のピッチLの測定結果をフィードバックすることを示す)。
【0023】
そして、本発明により製造された無機質板は、目地4間のピッチLが大きく外れることがなく、複数枚の無機質板を施工時に隣接させて貼り合わせても目地4を合致させることができ、外観を損なわないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示す概略図である。
【図2】同上の抄造装置を示す概略の斜視図である。
【図3】同上のプレス成形装置を示す概略の斜視図である。
【図4】同上のプレス成形後の無機質原板を示す平面図である。
【図5】同上の他の実施の形態の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0025】
1 無機質原板
2 プレス用ベルトコンベア
3 プレス機
4 目地
5 搬入ベルトコンベア
6 搬出ベルトコンベア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水硬性材料を含む無機質原板をプレス用ベルトコンベアでプレス機に搬送し、プレス機にて無機質原板に複数の目地をプレス成形した後、プレス成形後の無機質原板をプレス機からプレス用ベルトコンベアにて搬送する無機質板の製造方法において、プレス成形前の無機質原板をプレス用ベルトコンベアに搬入するための搬入ベルトコンベアと、プレス成形後の無機質原板をプレス用ベルトコンベアから搬出するための搬出ベルトコンベアとを設け、搬入ベルトコンベアの無機質原板の搬送スピードと搬出ベルトコンベアの無機質原板の搬送スピードに対してプレス用ベルトコンベアの無機質原板の搬送スピードを調整することを特徴とする無機質板の製造方法。
【請求項2】
プレス成形後の無機質原板の目地間のピッチの測定結果に基づいて、プレス用ベルトコンベアの無機質原板の搬送スピードを調整することを特徴とする請求項1に記載の無機質板の製造方法。
【請求項3】
搬入ベルトコンベアの無機質原板の搬送スピードと搬出ベルトコンベアの無機質原板の搬送スピードに対してプレス用ベルトコンベアの無機質原板の搬送スピードを±3m/分以内で調整することを特徴とする請求項1又は2に記載の無機質板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−35651(P2006−35651A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−219084(P2004−219084)
【出願日】平成16年7月27日(2004.7.27)
【出願人】(503367376)クボタ松下電工外装株式会社 (467)
【Fターム(参考)】