説明

無機質組成物、及びそれを用いた無機質成形体

【課題】成形性に優れた無機質組成物、及び該無機質組成物を用いた耐水性等に優れた成形体を提供する。
【解決手段】平均粒子径0.01〜5mmのガラス粒子100重量部に対し、石膏10〜200重量部、及び水ガラスを固形分として5〜150重量部含み、石膏と水ガラスの重量比が90:10〜40:60であることを特徴とする無機質組成物、及びそれを使用した成形体を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な無機質組成物、及びそれを用いた無機質成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、石膏ボード等の石膏成形体は、建築材料として広く使用されている。この石膏成形体は、石膏を水に分散した石膏スラリーを型枠等に充填、または基材の表面に塗付して所望の形に成形し、水和固化することによって得られる。このように石膏成形体は、成形性に優れるが、耐水性に劣るという問題点がある。耐水性を向上させる技術として、特許文献1には、石膏用耐水剤を混合することが記載されている。また、特許文献2には、石膏及びセメントを主成分とする混合物に、特定のアクリルエマルジョンを添加することが記載されている。しかし、特許文献1、2においても耐水性が十分でない場合がある。
【0003】
一方、石膏成形体以外の無機系の建築材料として、ガラス建材やタイル等のセラミック成形板等の建材が多く使用されている。このセラミック成形体は、陶石や長石、粘土材料等を混合し焼成することによって得られる。これらのセラミック成形体は、優れた耐水性を有するが、製造時の焼成温度が高温であり、成形板の収縮、反りや亀裂を生じるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−39752号公報
【特許文献2】特開平11−49551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような点に鑑みなされたものであり、成形性及び耐水性を有する新規な無機質材料を得ることを目的とするものであり、成形性に優れた無機質組成物、及び該無機質組成物を用いた耐水性等に優れた成形体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行なった結果、ガラス粒子、石膏及び水ガラスを必須成分とする無機質組成物に想到し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明の無機質組成物は、下記の特徴を有するものである。
【0007】
1.平均粒子径0.01〜5mmのガラス粒子100重量部に対し、石膏10〜200重量部、及び水ガラスを固形分として5〜150重量部含み、
石膏と水ガラスの重量比が90:10〜40:60であることを特徴とする無機質組成物。
2.平均粒子径0.01〜5mmのガラス粒子100重量部に対し、石膏10〜200重量部、及び水ガラスを固形分として5〜150重量部含み、
石膏と水ガラスの重量比が90:10〜40:60である無機質組成物を成形し、焼成してなる無機質成形体。
3.平均粒子径0.01〜5mmのガラス粒子100重量部に対し、石膏10〜200重量部、及び水ガラスを固形分として5〜150重量部含み、石膏と水ガラスの重量比が90:10〜40:60である無機質組成物を成形し、乾燥、焼成する工程を含むことを特徴とする無機質成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、ガラス粒子、石膏、及び水ガラスを必須成分とし、石膏と水ガラスを特定重量で含むことにより成形性に優れた無機質組成物を得ることができる。また、該無機質組成物を用いることにより、耐水性、強度等に優れた成形体を得ることができるものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0010】
本発明の無機質組成物のガラス粒子(A)(以下、「(A)成分」ともいう)としては、特に限定されず、例えば、ソーダ石灰ガラス、鉛ガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラス等のガラス粒子が挙げられる。(A)成分は、平均粒子径が0.01〜5mm、好ましくは0.02〜3mmのものを使用する。このような範囲の粒子径の場合、成形性に優れた無機質組成物を得ることができる。また、無機質組成物を成形し、焼成することにより、耐水性、強度等に優れた成形体を得ることができる。さらに、上記範囲内において平均粒子径の大きいガラス粒子を使用することによって、成形体に模様を付与することもできる。
なお、ここで言う平均粒子径とは、JIS Z8801−1:2000に規定される金属製網ふるいを用いてふるい分けを行い、その重量分布の平均値を算出することによって得られる値である。
【0011】
上記(A)成分は、予め成形されたガラスを粉砕することによって上記粒子径範囲に調整したもの、溶融したガラス材料から、直接、所定の粒子径のガラス粒子を成形したもの等を用いることができる。また、ガラス瓶等のガラス製品の廃棄物から回収された廃ガラスを粉砕したものも使用できる。
【0012】
また、(A)成分は、透明、不透明、または着色されたものであってもよく、これらを適宜混合して意匠性を付与することができる。例えば、着色ガラス粒子を用いた場合、成形体を任意に着色できる。また、複数の着色ガラス粒子を混合した場合、多様な意匠性を付与することができ、特に平均粒子径が大きい(1mm以上)着色ガラスを2種以上用いた場合、天然石調等の意匠を表現することもできる。
【0013】
本発明では(A)成分の融点が1000℃以下のものが好ましく、さらには950℃以下のものを使用することが好ましい。このような融点の場合、後述の石膏及び水ガラスと混合した無機質組成物を比較的低温で焼成した場合においても、強度に優れた無機質成形体を得ることができる。
【0014】
本発明の石膏(B)(以下「(B)」成分ともいう)としては、公知の石膏材料を使用することができる。例えば、天然石膏、化学石膏などの各種の半水石膏、無水石膏が挙げられる。化学石膏としては、燐酸石膏、チタン石膏、排脱石膏などがある。なお、半水石膏にはα型とβ型があり、いずれも使用できる。本発明の無機質組成物において(B)成分は、(A)成分100重量部に対して、10〜200重量部、好ましくは20〜150重量部である。このような範囲の場合、成形性に優れた無機質組成物を得ることができる。
本発明において(B)成分は、無機質組成物に優れた成形性を付与するとともに、無機質組成物を成形した後、乾燥及び焼成時の収縮を抑制する効果を有する。本発明において、(B)成分は、乾燥(水和硬化)時に殆ど収縮せず、また後述の焼成温度範囲では、焼成時の分解等も比較的少ないため、焼成後も成形体の収縮を抑制していると考えられる。
【0015】
本発明の水ガラス(C)(以下「(C)成分」ともいう)としては、一般式Na2 O・nSiO2
(n=2〜4)(場合によってはK2 O及び/またはLiOを含む)で表されるアルカリ珪酸塩の粉末または水溶液であり、SiO2
とNa2 Oの含有割合の違いによって、1号〜4号に区別されている。本発明ではいずれも使用可能であるが、特に相対的にアルカリ成分の少ない3号、4号等が耐水性の点で有利である。
【0016】
本発明の無機質組成物において(C)成分は、上記(A)成分、上記(B)成分の結合材として作用するものである。また、無機質組成物の焼成時に、(A)成分の融点を低下させることができるため、低温で焼成した場合でも優れた強度の成形体を形成することが可能となる。(C)成分は、(A)成分100重量部に対して、固形分として5〜150重量部、好ましくは10〜100重量部である。このような範囲の場合、成形性に優れた無機質組成物を得ることができる。また、無機質組成物の焼成時において、(C)成分が発泡することにより成形体の収縮を抑制する効果を有する。
【0017】
また、本発明の無機質組成物において、上記(B)成分と(C)成分は重量比が90:10〜40:60、好ましくは80:20〜50:50である。このような範囲である場合、成形性に優れた無機質組成物を得ることができる。また、成形体乾燥時において反りや収縮等を抑制でき、さらに焼成時において収縮、ひび割れ等を抑制することができる。例えば、(B)成分が多すぎる場合、焼成後の成形体の強度が低下するおそれがある。また、(C)成分が多すぎる場合、成形時に反りが生じやすく寸法安定性が悪くなるおそれがある。
【0018】
本発明の無機質組成物は、上記(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の混合物(以下「(A)(B)(C)混合物」ともいう)に水を添加しスラリーとしたものである。水の添加量は、適宜設定すればよいが、通常(A)(B)(C)混合物100重量部(固形分)に対して10〜100重量部程度であることが好ましい。このような範囲である場合、成形性に優れた無機質組成物を得ることができる。また、成形体乾燥時において反りや収縮等を抑制でき、さらに焼成時において収縮、ひび割れ等を抑制することができる。
【0019】
本発明無機質組成物には、珪砂、溶融スラグ、フライアッシュ、カオリン、タルク、マイカ、ベントナイト、長石、陶石、ウォラストナイト、陶磁器粉砕物、ガラス繊維等から選ばれる1種以上の無機材料(D)(以下「(D)成分」ともいう)を添加することができる。ただし、上記(D)成分を添加する場合、(A)成分に対して400重量部以下とすることが好ましく、さらには300重量部以下とすることが好ましく、200重量部以下とすることが最も好ましい。また、これらの平均粒子径は好ましくは1mm以下、より好ましくは0.5mm以下とする。このような範囲であれば、成形性に優れた無機質組成物を得ることができる。また、無機質組成物を成形後、乾燥する際の反りや収縮等を抑制できる。さらに、焼成時において収縮、ひび割れ等を抑制することができ、優れた強度を有する成形体を得ることができる。
【0020】
さらに、本発明無機質組成物には、金属塩及び/または金属酸化物(E)(以下「(E)成分」ともいう)を添加することができる。(E)成分は、上記(A)成分と混合し、同時に焼成することで成形体を着色するものである。
さらに、本発明の効果を阻害しない限り、本発明無機質組成物には、分散剤、消泡剤、減水剤、硬化遅延剤、補強材、融剤等を添加しても良い。
【0021】
本発明の無機質成形体は、平均粒子径0.01〜5mmのガラス粒子(A)100重量部に対し、石膏(B)10〜200重量部、及び水ガラス(C)を固形分として5〜150重量部含み、石膏と水ガラスの重量比が90:10〜40:60である無機質組成物を成形し、焼成してなるものである。
【0022】
上記無機質成形体を成形する方法としては、
(1)無機質組成物を成形する工程、
(2)成形体を乾燥・硬化した後、脱型する工程、
(3)焼成する工程、
を含むものである。
上記(1)において、無機質組成物を成形する方法としては、特に限定されないが、例えば、型枠等を用いて成形することが挙げられる。使用する型枠としては、例えばシリコン樹脂製、ウレタン樹脂製、金属製等の型枠、あるいは離型紙を設けた型枠等が使用できる。型枠に無機質組成物を充填する方法としては、例えば、スプレー、ローラー、こて、刷毛塗り、レシプロ、コーター、流し込み等の手段を用いた方法を採用することができる。
【0023】
上記(2)において、成形体の乾燥は常温下で行うこともできるが、本発明では特に、加熱することが望ましい。加熱温度としては100℃を超えない程度とすることが好ましい。100℃を超えた場合、成形体の反りの原因となるおそれがある。また、脱型は成形体の形が保持される程度に硬化・乾燥した後に行えばよい。
【0024】
上記(3)において、成形体の焼成温度は、本発明のガラス粒子(A)の融点によって適宜設定すればよく、通常は900℃以下程度、好ましくは(A)成分の融点よりもやや低い温度(50〜100℃低い温度)に設定する。例えば、(A)成分の融点が900℃程度であれば、成形体の焼成温度は800〜850℃程度で焼成する。このような温度に設定した場合、(A)成分の表面を溶融させ、(B)成分及び(C)成分と結合させることができる。このため、成形時の熱収縮を抑制することができる。また、(A)成分の平均粒子径が1mm以上の場合、焼成後も粒子の境界が存在するため成形体に模様を付与することもできる。さらに、粘土鉱物等を焼成して得られるセラミック建材と比較した場合、比較的低い温度で焼成が可能であるため、エネルギー負荷も小さい。
【0025】
また、本発明の効果を阻害しない限り、例えば、補強材(セラミックペーパー、ガラスクロス、メッシュ等)を焼成前後に、無機質成形体内に積層することもできる。
さらに、本発明の効果を著しく阻害しない範囲内であれば、焼成後に、表面保護性、表面撥水性、意匠性等を高める目的で、上塗層を積層することもできる。このような上塗層としては、公知の水性型あるいは溶剤型塗料の塗付によって形成することができる。これらの塗装は、公知の塗装方法によれば良く、スプレー、ローラー、刷毛等の塗装器具を使用することができる。また、上記の上塗層の他に、意匠性を高める目的で、装飾層を積層することもできる。このような装飾層としては、釉薬の塗付によって形成したり、ガラス層を積層したりすることにより形成することができる。
【実施例】
【0026】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
【0027】
(試験例1)
表1に示す配合に従い、各原料を常法により混合・攪拌することによって無機質組成物を製造し、100×70mm(深さ13mm)の離型性を有する型枠に充填し、常温下(25℃)で6時間乾燥させた後、50℃下で12時間乾燥させて成形体(1−1)を得た。
なお、原料としては以下のものを使用した。
(A−1)無アルカリガラス(無色)
融点:900℃、粒子径0.125〜0.3mm
(A−2)無アルカリガラス(無色)
融点:900℃、粒子径0.045〜0.125mm
(A−3)ソーダ石灰ガラス(無色)
融点:800℃、粒子径0.045〜0.125mm
(A−4)ソーダ石灰ガラス(褐色)
融点:800℃、粒子径0.045〜0.125mm
(B):半水石膏 α型
(C):珪酸ソーダ 3号規格、粉末状
(D):珪砂 粒子径0.106〜0.212mm
【0028】
(評価1:反り)
成形体(1−1)について、成形品を平らな面に置き、1辺を平滑面に押し当て、対角の辺が平滑面から浮きの有無により反りを測定した。その結果、成形体(1−1)は、浮きは認められず、反りのないものであった。表1に結果を示す。
○:反りなし
×:反りあり
【0029】
(評価2:乾燥収縮)
成形体(1−1)について、各辺の長さを測定し、型枠のサイズと比較した結果、型枠のサイズが保持されており、乾燥による収縮は見られなかった。表1に結果を示す。
◎:収縮なし
○:僅かに収縮(1%未満)
×:収縮あり
【0030】
次いで、成形体(1−1)を850℃で30分間焼成し、成形体(1−2)を得た。
(評価3:加熱収縮)
成形体(1−2)について、各辺の長さを測定し、型枠のサイズと比較した結果、型枠のサイズが保持されており、焼成による収縮は見られなかった。表1に結果を示す。
◎:収縮なし
○:僅かに収縮(1%未満)
×:収縮あり
【0031】
(評価4:耐水性)
成形体(1−2)について、水に24時間浸漬後し、成形体の状態を評価した。
◎:変化なし
○:ほぼ変化なし
△:水浸漬後、脆くなる
×:水浸漬中に徐々に崩れる
【0032】
(試験例2〜14)
表1に示す配合にて、試験例1と同様に、無機質組成物を成形し乾燥後、各温度で焼成し成形体を作製し同様の試験を行った。結果を表1に示す。
【0033】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径0.01〜5mmのガラス粒子100重量部に対し、石膏10〜200重量部、及び水ガラスを固形分として5〜150重量部含み、
石膏と水ガラスの重量比が90:10〜40:60であることを特徴とする無機質組成物。

【請求項2】
平均粒子径0.01〜5mmのガラス粒子100重量部に対し、石膏10〜200重量部、及び水ガラスを固形分として5〜150重量部含み、
石膏と水ガラスの重量比が90:10〜40:60である無機質組成物を成形し、焼成してなる無機質成形体。





【公開番号】特開2011−79702(P2011−79702A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−233276(P2009−233276)
【出願日】平成21年10月7日(2009.10.7)
【出願人】(510114125)株式会社エフコンサルタント (32)
【Fターム(参考)】