説明

無水フタル酸の製造方法

本発明は、無水フタル酸の製造において、o−キシレン及び/又はナフタレンの接触気相酸化は活性が増大する触媒の少なくとも3つの層を介して行われ、その際、この触媒系の最後の層だけがリンを含有し、かつ更にこの最後の層が触媒の活性材料に対してバナジウム(Vとして計算)少なくとも10質量%を有し、バナジウム(Vとして計算)対リンの割合は35よりも大きい無水フタル酸の製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定層中で、かつ少なくとも3つの層の形に積み重ねて配置され、かつガス入口側の層からガス出口側の層に向かって活性が増大し、かつ担体材料からなるコア上に触媒活性を有する金属酸化物からなる層が設けられている触媒を用いて、分子酸素を含有するガスを用いるキシレン及び/又はナフタレンの接触気相酸化による無水フタル酸の製造方法に関する。
【0002】
無水フタル酸は工業的に管束型反応器中でo−キシレン又はナフタレンの接触気相酸化により製造される。出発材料は分子酸素を含有するガス、例えば空気と、酸化すべきo−キシレン及び/又はナフタレンとからなる混合物である。この混合物は、反応器中に配置された多数の管(管束型反応器)に通され、その中に少なくとも1種の触媒の装填物が存在する。近年では、このために触媒装填物中に層状で移行する異なる活性の触媒を配置し、その際、一般に、ガス入口に向かって最上の最初の触媒層中でわずかな活性の触媒が存在し、かつガス出口に向かって最下の最後の触媒層中でより活性の触媒が存在する。これは、初めに、上層と下層との2つの積み重ねられた層で実現された(特にDE-A 40 13 051、DE-A 197 07 943、DE-A 25 46 268、US 4,469,878、EP-A 539 878、EP-A 286 448、EP-A 906 783)。数年来、主に、上層、中層及び下層の3つの積み重ねられた層からなる触媒系が用いられている。この手段を用いて、前記触媒系は反応器中でその活性について反応の経過に相応して適合させることができる。ガス出口に向かって配置された下層では、この場合、主に残りのo−キシレン又はナフタレン及び中間生成物、例えばo−トリルアルデヒド及びフタリドを無水フタル酸に反応させる。しかしながら、更に副生成物、例えばキノンも更に酸化される。
【0003】
活性を構造化する手段はこの場合極めて多様である。先行技術の次の構成において、最後の触媒層、特に最後の触媒層のリン含有量とバナジウム含有量及びそれらの相互の割合(V対Pとして計算)は特に注目される。先行技術においてこの変量ペアの多様なバリエーションにもかかわらず、最後の触媒層の活性及び選択性に関してなお最適化の必要性が存在している。
【0004】
DE-A 198 23 262は、3つの層の形に積み重ねて配置された外殻型触媒を用いた無水フタル酸の製造方法を記載していて、この場合、ガス入口側の層からガス出口側の層に向かって触媒活性は増大し、かつこの触媒活性は設けられた活性材料の量及びアルカリドーピングの量により制御されている。実施例中で、リンは第2の層と第3の層に使用されている。五酸化バナジウムは最後の層中で10質量%よりも少なく使用され、V対Pの割合は37である。
【0005】
EP-A 985 648は、触媒系を用いたo−キシレン及び/又はナフタレンの接触気相酸化による無水フタル酸の製造を記載しており、前記触媒系は構造化されていて、前記触媒の「気孔率」及び反応器入口から反応器出口に向かう活性は準連続的に増大している。この気孔率は、反応管中の装填物の被覆された成形体間の空間体積により定義される。実施例中では、活性の構造化は少なくとも3つの異なる触媒の直列配置により実現され、その際、最初の2つの層はリン不含であり、かつ下層はリン0.65〜0.87質量%と五酸化バナジウム15〜20質量%を、V対Pの割合17〜31で有している。この触媒活性成分のBET表面積は70〜160m/gである。
【0006】
WO 30/70680はマルチゾーン触媒系を記載している。活性の構造化は、担体上の活性材料の量、活性材料に添加されるアルカリ金属化合物の形のドーパントの量及び温度操作に関して行われている。最後の2つの層はリンを含有し、最後の層中では五酸化バナジウム6〜9質量%を含有し、かつV対Pの割合は12〜90であることが記載されている。
【0007】
EP-A 1063222中では、3層又はそれ以上の層の触媒を使用することが記載されている。個々の区域の活性は、活性材料のリンの量、担体リング上の活性材料の量、活性材料のアルカリドーピングの量及び反応管中に使用した触媒層の充填高さにより変えられている。実施例中では、全ての層中にリンを含有する触媒系が記載されていて、この最後の層はリン0.1〜0.4質量%、バナジウム(V換算)約5質量%及びV対Pの割合14〜40を有する。
【0008】
従って、この活性の増大は、上層(ガス入口)から下層(ガス出口)に向かって、次の手段又は組合せ:
(1) リン含有量の連続的な増大により、
(2) 活性材料含有量の連続的な増大により、
(3) アルカリ含有量の連続的な減少により、
(4) 個々の触媒間の空間の連続的な減少により、
(5) 不活性物質の含有量の連続的な減少により、又は
(6) 温度の連続的な上昇により
行うことができる
老化プロセスによって、全ての触媒は、寿命が延びると共に活性は失われる。このことは、主に主反応区域(上層)において生じる、それというのもそこでは最も高い温度負荷が行われるためである。この主反応区域は、この場合、触媒寿命の経過において触媒層の深部へ次第に移行する。このことから、中間生成物及び副生成物はもやは完全に反応することができなくなる、それというのも主反応区域が、より選択性が低くかつ活性が強い触媒区域中でも存在するようになるためである。製造された無水フタル酸の生産性は従って一段と悪化してしまう。反応の後退及びそれによる生産性の悪化に対して、例えば塩浴温度を高めることによる反応温度の上昇により対抗することができる。この温度上昇はもちろん無水フタル酸の収率の低下につながる。
【0009】
中間生成物及び副生成物の存在が増大すればそれだけ、酸化すべき炭化水素による空気の更に負荷がより高くなる、それというのも高い負荷は主反応区域を触媒層のより深部への移行を強めてしまうためである。しかしながら、経済的な製造のために、60〜120g/Nmの高い負荷は望ましい。
【0010】
殊に高い負荷との関連で、老化の際に増大する副生成物は、フタリド(PHD)だけでなく、ことにアントラキノンジカルボン酸(ADCA)及びベンゾイルフタル酸無水物(ベンゾイル−PSA)を含有し、並びに未反応のo−キシレンを含有する。PHDの低下に関しては、改善を達成することができる(例えばDE-A-198 23 262)。一般的な副生成物形成に関して、もちろん、特にADCAに関して更に最適化する必要が生じる、それというのもこのような化合物の痕跡が無水フタル酸の黄変を引き起こすためである。これらの副生成物の低減は、更に粗製−無水フタル酸の後処理を簡素化することが想定される。
【0011】
従って、本発明の根底をなす課題は、高い負荷にもかかわらず、無水フタル酸を改善された生産性で、同程度の又は改善された収率で無水フタル酸を製造する方法を提供することである。同程度の又は改善された収率で、全体の副生成物含有量の低減の他に、殊に副生成物ADCAを減少させるのが好ましい。
【0012】
意外にも、前記課題は、固定層中で、かつ少なくとも3つの層の形に積み重ねて配置され、かつガス入口側の層からガス出口側の層に向かって活性が増大し、かつ担体材料からなるコア上に触媒活性を有する金属酸化物からなる層が設けられている触媒を用いて、分子酸素を含有するガスを用いたキシレン及び/又はナフタレンの接触気相酸化による無水フタル酸の製造方法において、最後の触媒層だけがリンを有し、この最後の層中には触媒の活性材料に対して少なくとも10質量%のバナジウム(Vとして計算)が存在し、かつバナジウム(Vとして計算)対リンの割合は35より大きな値を有することを特徴とする方法によって解決できることが見出された。
【0013】
上側の触媒層はリン不含である。有利に最後の、最下の触媒層は、触媒の活性材料に対して1質量%より少ない、有利に0.5質量%より少ない、殊に約0.05〜0.4質量%のリン含有量(Pとして計算)を有する。
【0014】
有利に、最後の触媒層の装填物長さは、全ての層の全触媒装填物長さの40%より短く、殊に最後の層の装填物長さは、全ての層の全装填物長さの30%より短く、特に有利に25%より短い。一般に、この層の最短の装填物長さは16%である。
【0015】
3層触媒系における最初の触媒層(上層)の装填物長さは、反応器中の全触媒充填高さの有利に27〜60%、殊に40〜55%である。中層の装填長さは、有利に全装填物長さの15〜55%、特に20〜40%である。4層触媒系の場合には、上層は有利に、反応器中の全装填物高さの27%〜55%、殊に32〜47%、上側の中層1は有利に5〜22%、特に8〜18%、下側の中層2は8〜35%、殊に12〜30%である。この触媒層は、場合により複数の反応器中に分配されていてもよい。典型的な反応器は、2.5〜3.4メートルの充填高さを有する。
【0016】
有利に、最後の、最下の触媒層は、触媒の活性材料に対して、バナジウム(Vとして計算)15質量%より多く、殊に18〜22質量%含有する。
【0017】
最後の触媒層中のバナジウム(Vとして計算)対リン(Pとして計算)の割合は、有利に約40及び40よりも大、殊に45〜100、特に有利に50〜70である。
【0018】
活性材料中のアルカリ含有量は、有利に最上の触媒層から中間の層に向かって減少する。最後の触媒層中では、有利にアルカリは含まれていない。最初の、最上の触媒層中では、アルカリ含有量は、触媒の活性材料に対して、有利に1.1質量%より少ないアルカリ(アルカリ金属として計算)であり、有利にアルカリ含有量はアルカリ0.1〜0.8質量%の範囲内にある。1つ又は複数の触媒層中に、アルカリの含有量は、触媒の活性材料に対して、有利に0.05〜0.6質量%(アルカリ金属として計算)、殊に0.05〜0.3質量%にある。アルカリとして、有利にセシウムが使用される。活性材料中のアルカリは、部分的にアルカリ土類、例えばバリウム、カルシウム又はマグネシウムによって置き換えられていてもよい。
【0019】
触媒の触媒活性成分のBET表面は、有利に5〜50m/g、有利に5〜30m/g、殊に9〜27m/gの範囲内にある。
【0020】
全触媒材料に対する活性成分の割合は3〜15質量%、殊に4〜12質量%である。
【0021】
ADCAの含有量は、キシレン80g/空気Nmの負荷の場合に、約113%の先行技術と同等の又は改善された収率(100%o−キシレンに対する質量%での得られた無水フタル酸)で、有利に100ppmより低く、殊に75ppmより低い。ベンゾイル−PSAの含有量は、20ppmより低く、殊に15ppmより低い。
【0022】
3層触媒系の有利な実施態様によると次のことが示される:
a) 無孔性及び/又は多孔性担体材料上の最も低い活性の触媒は、全触媒に対して活性材料を7〜10質量%有し、前記活性材料はV 6〜11質量%、Sb 0〜3質量%、P 0質量%、アルカリ(アルカリ金属として計算)0.1〜1.1質量%及び残りアナタース型のTiOを有する、
b) 無孔性及び/又は多孔性担体材料上の次に活性の触媒は、全触媒に対して活性材料を7〜12質量%有し、前記活性材料はV 5〜13質量%、Sb 0〜3質量%、P 0質量%、アルカリ(アルカリ金属として計算)0〜0.4質量%及び残りアナタース型のTiOを有する、
c) 無孔性及び/又は多孔性担体材料上の最も活性の触媒は、全触媒に対して活性材料を8〜12質量%有し、前記活性材料はV 10〜30質量%、Sb 0〜3質量%、P 0〜0.43質量%、アルカリ(アルカリ金属として計算)0〜0.1質量%及び残りアナタース型のTiOを有する、
その際、アルカリ金属として、有利にセシウムが使用される。
【0023】
アナタース型の使用された二酸化チタンは、有利に5〜50m/g、殊に15〜30m/gのBET表面積を有する。異なるBET表面積を有するアナタース型の二酸化チタンの混合物も使用できるが、但し、生じたBET表面積は15〜30m/gの値を有する。個々の触媒層は、異なるBET表面積を有する二酸化チタンを有することができる。有利に、使用された二酸化チタンのBET表面積は上層a)から下層c)に向かって増大する。
【0024】
4層触媒系の有利な実施態様によると次のことが示される:
a) 無孔性及び/又は多孔性担体材料上の最も低い活性の触媒は、全触媒に対して活性材料を7〜10質量%有し、前記活性材料はV 6〜11質量%、Sb 0〜3質量%、P 0質量%、アルカリ(アルカリ金属として計算)0.1〜1.1質量%及び残りアナタース型のTiOを有する、
b1) 無孔性及び/又は多孔性担体材料上の次に活性の触媒は、全触媒に対して活性材料を7〜12質量%有し、前記活性材料はV 4〜15質量%、Sb 0〜3質量%、P 0質量%、アルカリ(アルカリ金属として計算)0.1〜1質量%及び残りアナタース型のTiOを有する、
b2) 無孔性及び/又は多孔性担体材料上の次に活性の触媒は、全触媒に対して活性材料を7〜12質量%有し、前記活性材料はV 5〜15質量%、Sb 0〜3質量%、P 0質量%、アルカリ(アルカリ金属として計算)0〜0.4質量%及び残りアナタース型のTiOを有する、
c) 無孔性及び/又は多孔性担体材料上の最も活性の触媒は、全触媒に対して活性材料を8〜12質量%有し、前記活性材料はV 10〜30質量%、Sb 0〜3質量%、P 0〜0.43質量%、アルカリ(アルカリ金属として計算)0〜0.1質量%及び残りアナタース型のTiOを有する、
その際、アルカリ金属として、有利にセシウムが使用される。
【0025】
3〜5層を使用するのが有利である。
【0026】
一般に、触媒層、例えばa)、b1)、b2)及び/又はc)は、これらの層がそれぞれ2つ又はそれ以上の層からなるように配置されていてもよい。この中間層は有利に中間的触媒組成を有する。
【0027】
異なる触媒の互いに境界付けされた層の代わりに、一つの層から次の層への移行時に相互に連続する触媒の混合を有する区域を生じさせることにより、層の準連続的な移行及び活性のほぼ均一な増加を生じさせることもできる。
【0028】
触媒として酸化担体触媒が適している。o−キシレン又はナフタレン又はこれらの混合物の気相酸化による無水フタル酸の製造のために、一般に、ケイ酸塩、炭化ケイ素、磁器、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、二酸化亜鉛、ルチル、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム(ステアタイト)、ケイ酸ジルコニウム又はケイ酸セリウム又はこれらの混合物からなる球状、リング状又は皿状の担体が使用される。特に、いわゆる外殻型触媒が挙げられ、この場合触媒活性材料は担体上に外殻状に設けられている。活性材料中には、二酸化チタンの他に触媒活性成分として有利に五酸化バナジウムが存在する。更に、この触媒活性材料中には、多数の他の酸化化合物が少量含まれていてもよく、この酸化化合物は助触媒として触媒の活性及び選択性に影響を及ぼし、例えばこの化合物は触媒の活性を低下させるか又は向上させる。この種の助触媒は、例えばアルカリ金属酸化物、酸化タリウム(I)、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化鉄、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化マグネシウム、酸化スズ、酸化銀、酸化銅、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化イリジウム、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化ヒ素、酸化アンチモン、酸化セリウム及び五酸化リンである。これらのアルカリ金属酸化物は、例えば活性を低下させかつ選択性を向上させる助触媒として作用する。更に、触媒活性材料は、有機結合剤、有利にコポリマーを、有利に酢酸ビニル/ラウリン酸ビニル、酢酸ビニル/アクリラート、スチレン/アクリラート、酢酸ビニル/マレアート、酢酸ビニル/エチレン並びにヒドロキシエチルセルロースの水性分散液の形で添加することができ、その際、活性材料成分の溶液の固体含有量に対して3〜20質量%の結合剤量を使用することができる(EP-A 744 214)。DE-A 198 24 532に記載されているような有機結合剤が有利に記載されている。触媒活性材料を有機結合剤なしで担体上に設ける場合に、被覆温度は150℃を上回るのが有利である。上記の結合剤を添加する場合に、使用可能な被覆温度はそれぞれ使用された結合剤に応じて50〜450℃(DE-A 21 06 796)である。塗布された結合剤は触媒の充填及び反応器の運転開始後に短時間に燃焼される。この結合剤の添加は、更に、活性材料を担体上に良好に付着させるため、触媒の輸送及び充填を容易にするという利点を有する。
【0029】
この触媒は、反応のために、管束型反応器の管中に層状に充填される。最も低い活性の触媒は、反応ガスが最初にこの触媒と接触し、次の層で初めて前記の最も低い活性の触媒に引き続き次に活性の触媒と接触するように、固定層の形で配置される。引き続き反応ガスは更により活性の触媒層と接触する。これらの異なる活性の触媒は、同じ又は異なる温度でサーモスタット制御されていてもよい。
【0030】
このように準備された触媒装填物にわたり、反応ガスは一般に300〜450℃、有利に320〜420℃、特に有利に340〜400℃の温度で導通される。有利に、一般に0.1〜2.5bar、有利に0.3〜1.5barの過圧を使用するのが有利である。この空間速度は一般に750〜5000h−1である。
【0031】
触媒に供給される反応ガス(出発混合物)は、一般に、分子酸素を含むガス(このガスは酸素の他になお適当な反応調節剤、例えば窒素及び/又は希釈剤、例えば蒸気及び/又は二酸化炭素を含有することができる)を、酸化すべき芳香族炭化水素と混合することにより製造される。分子酸素を含有するガスは、一般に、酸素1〜100mol%、有利に2〜50mol%、特に有利に10〜30mol%、水蒸気0〜30mol%、有利に0〜10mol%、並びに二酸化炭素0〜50mol%、0〜1mol%、残り窒素を含有する。反応ガスの製造のために、分子酸素を含有するガスに一般に、ガスNm当たり30〜150g、特にNm当たり60〜120gの酸化すべき芳香族炭化水素が供給される。
【0032】
一般に、この反応は、反応ガス中に含まれるo−キシレン及び/又はナフタレンの大部分が最初の反応区域中で反応されるように行われる。
【0033】
最上層のホットスポット温度は、有利に400〜470℃であり、多層触媒系の1つ又は複数の中間層中では有利に420℃より低く、殊に410℃より低い。
【0034】
所望の場合に、無水フタル酸製造のために、なお後方に接続される仕上げ反応器(これは例えばDE-A 198 07 018又はDE-A 20 05 969に記載されている)が設けられていてもよい。触媒として、この場合に、最下層の触媒よりもなおより活性の触媒を使用するのが有利である。
【0035】
無水フタル酸は、本発明の場合に、o−キシレン及び/又はナフタレンの高い負荷でも、高い収率で、わずかな副生成物濃度で、殊にADCA及びベンゾイル−PSAの極めてわずかな量で製造される。
【0036】
実施例:
A. 触媒の製造
A.1 触媒1(3層触媒)の製造
上層(a)
アナタース(TiO−1、BET表面積9m/g)35.32g、アナタース(TiO−2、BET表面積20m/g)65.58g、五酸化バナジウム7.97g、酸化アンチモン2.65g、炭酸セシウム0.45gを、脱イオン水650ml中に懸濁させ、18時間撹拌し、均一な分配を達成した。この懸濁液に、酢酸ビニルとラウリン酸ビニルとからなるコポリマーからなる50質量%の水性分散液の形の有機結合剤50gを添加した。得られた懸濁液を、引き続き、リングの形(7×7×4mm、外径(AD)×長さ(L)×内径(ID))のステアタイト(ケイ酸マグネシウム)1200g上に吹き付け、乾燥させた。塗布された外殻の重量は、仕上がった触媒の全重量の8%であった。このように塗布された触媒活性材料、つまり触媒外殻は、450℃で1時間か焼した後に、バナジウム(Vとして計算)7.12質量%、アンチモン(Sbとして計算)2.37質量%、セシウム(Csとして計算)0.33質量%、二酸化チタン(TiO−1)31.54質量%及び二酸化チタン(TiO−2)58.56質量%を含有した。
【0037】
中層(b)
アナタース(TiO−1、BET表面積9m/g)24.16g、アナタース(TiO−2、BET表面積20m/g)72.48g、五酸化バナジウム7.74g、三酸化アンチモン2.57g、炭酸セシウム0.13gを、脱イオン水650ml中に懸濁させ、18時間撹拌し、均一な分配を達成した。この懸濁液に、酢酸ビニルとラウリン酸ビニルとからなるコポリマーからなる50質量%の水性分散液の形の有機結合剤60gを添加した。得られた懸濁液を、引き続き、リングの形(7×7×4mm、(AD)×(L)×(ID))のステアタイト(ケイ酸マグネシウム)1200g上に吹き付け、乾燥させた。塗布された外殻の重量は、仕上がった触媒の全重量の10%であった。このように塗布された触媒活性材料、つまり触媒外殻は、450℃で1時間か焼した後に、バナジウム(Vとして計算)7.12質量%、アンチモン(Sbとして計算)2.37質量%、セシウム(Csとして計算)0.10質量%、二酸化チタン(TiO−1)22.23質量%及び二酸化チタン(TiO−2)66.68質量%を含有した。
【0038】
下層(c)
アナタース(TiO−1、BET表面積9m/g)22.07g、アナタース(TiO−2、BET表面積27m/g)88.28g、五酸化バナジウム28.07g、リン酸二水素アンモニウム1.93gを、脱イオン水650ml中に懸濁させ、18時間撹拌し、均一な分配を達成した。この懸濁液に、酢酸ビニルとラウリン酸ビニルとからなるコポリマーからなる50質量%の水性分散液の形の有機結合剤50gを添加した。得られた懸濁液を、引き続き、リングの形(7×7×4mm、(AD)×(L)×(ID))のステアタイト(ケイ酸マグネシウム)1200g上に吹き付け、乾燥させた。塗布された外殻の重量は、仕上がった触媒の全重量の10%であった。このように塗布された触媒活性材料、つまり触媒外殻は、450℃で1時間か焼した後に、バナジウム(Vとして計算)20.0質量%、リン(Pとして計算)0.37質量%、二酸化チタン(TiO−1)15.73質量%及び二酸化チタン(TiO−2)62.90質量%を含有した。
【0039】
A.2. 触媒2の製造(4層触媒)
上層(a)
アナタース(TiO−1、BET表面積9m/g)29.27g、アナタース(TiO−2、BET表面積21m/g)69.80g、五酸化バナジウム7.83g、酸化アンチモン2.61g、炭酸セシウム0.49gを、脱イオン水650ml中に懸濁させ、18時間撹拌し、均一な分配を達成した。この懸濁液に、酢酸ビニルとラウリン酸ビニルとからなるコポリマーからなる50質量%の水性分散液の形の有機結合剤50gを添加した。得られた懸濁液を、引き続き、リングの形(7×7×4mm、(AD)×(L)×(ID))のステアタイト(ケイ酸マグネシウム)1200g上に吹き付け、乾燥させた。塗布された外殻の重量は、仕上がった触媒の全重量の8%であった。このように塗布された触媒活性材料、つまり触媒外殻は、450℃で1時間か焼した後に、バナジウム(Vとして計算)7.12質量%、アンチモン(Sbとして計算)2.37質量%、セシウム(Csとして計算)0.36質量%、二酸化チタン(TiO−1)27.20質量%及び二酸化チタン(TiO−2)63.46質量%を含有した。
【0040】
中層1(b1)
アナタース(TiO−1、BET表面積9m/g)24.61g、アナタース(TiO−2、BET表面積21m/g)74.46g、五酸化バナジウム7.82g、酸化アンチモン2.60g、炭酸セシウム0.35gを、脱イオン水650ml中に懸濁させ、18時間撹拌し、均一な分配を達成した。この懸濁液に、酢酸ビニルとラウリン酸ビニルとからなるコポリマーからなる50質量%の水性分散液の形の有機結合剤50gを添加した。得られた懸濁液を、引き続き、リングの形(7×7×4mm、(AD)×(L)×(ID))のステアタイト(ケイ酸マグネシウム)1200g上に吹き付け、乾燥させた。塗布された外殻の重量は、仕上がった触媒の全重量の8%であった。このように塗布された触媒活性材料、つまり触媒外殻は、450℃で1時間か焼した後に、バナジウム(Vとして計算)7.12質量%、アンチモン(Sbとして計算)2.37質量%、セシウム(Csとして計算)0.26質量%、二酸化チタン(TiO−1)22.60質量%及び二酸化チタン(TiO−2)67.79質量%を含有した。
【0041】
中層2(b2)
アナタース(TiO−1、BET表面積9m/g)24.82g、アナタース(TiO−2、BET表面積21m/g)74.46g、五酸化バナジウム7.82g、酸化アンチモン2.60g、炭酸セシウム0.135gを、脱イオン水650ml中に懸濁させ、18時間撹拌し、均一な分配を達成した。この懸濁液に、酢酸ビニルとラウリン酸ビニルとからなるコポリマーからなる50質量%の水性分散液の形の有機結合剤50gを添加した。得られた懸濁液を、引き続き、リングの形(7×7×4mm、(AD)×(L)×(ID))のステアタイト(ケイ酸マグネシウム)1200g上に吹き付け、乾燥させた。塗布された外殻の重量は、仕上がった触媒の全重量の8%であった。このように塗布された触媒活性材料、つまり触媒外殻は、450℃で1時間か焼した後に、バナジウム(Vとして計算)7.12質量%、アンチモン(Sbとして計算)2.37質量%、セシウム(Csとして計算)0.10質量%、二酸化チタン(TiO−1)22.60質量%及び二酸化チタン(TiO−2)67.79質量%を含有した。
【0042】
下層(c)
アナタース(TiO−1、BET表面積9m/g)17.23g、アナタース(TiO−2、BET表面積27m/g)69.09g、五酸化バナジウム21.97g、リン酸二水素アンモニウム1.55gを、脱イオン水650ml中に懸濁させ、18時間撹拌し、均一な分配を達成した。この懸濁液に、酢酸ビニルとラウリン酸ビニルとからなるコポリマーからなる50質量%の水性分散液の形の有機結合剤50gを添加した。得られた懸濁液を、引き続き、リングの形(7×7×4mm、(AD)×(L)×(ID))のステアタイト(ケイ酸マグネシウム)1200g上に吹き付け、乾燥させた。塗布された外殻の重量は、仕上がった触媒の全重量の8%であった。このように塗布された触媒活性材料、つまり触媒外殻は、450℃で1時間か焼した後に、バナジウム(Vとして計算)20.0質量%、リン(Pとして計算)0.38質量%、二酸化チタン(TiO−1)15.73質量%及び二酸化チタン(TiO−3)62.90質量%を含有した。
【0043】
A.3. 触媒3の製造(Pドープした中層−3層触媒−比較例1)
上層(a)
アナタース(TiO−1、BET表面積9m/g)35.32g、アナタース(TiO−2、BET表面積20m/g)65.58g、五酸化バナジウム7.97g、酸化アンチモン2.65g、炭酸セシウム0.45gを、脱イオン水650ml中に懸濁させ、18時間撹拌し、均一な分配を達成した。この懸濁液に、酢酸ビニルとラウリン酸ビニルとからなるコポリマーからなる50質量%の水性分散液の形の有機結合剤50gを添加した。得られた懸濁液を、引き続き、リングの形(7×7×4mm、(AD)×(L)×(ID))のステアタイト(ケイ酸マグネシウム)1200g上に吹き付け、乾燥させた。塗布された外殻の重量は、仕上がった触媒の全重量の8%であった。このように塗布された触媒活性材料、つまり触媒外殻は、450℃で1時間か焼した後に、バナジウム(Vとして計算)7.12質量%、アンチモン(Sbとして計算)2.37質量%、セシウム(Csとして計算)0.33質量%、二酸化チタン(TiO−1)31.54質量%及び二酸化チタン(TiO−2)58.56質量%を含有した。
【0044】
中層(b)
アナタース(TiO−1、BET表面積9m/g)34.32g、アナタース(TiO−2、BET表面積20m/g)102.90g、五酸化バナジウム10.99g、酸化アンチモン3.66g、リン酸二水素アンモニウム2.30g、炭酸セシウム0.19gを、脱イオン水650ml中に懸濁させ、18時間撹拌し、均一な分配を達成した。この懸濁液に、酢酸ビニルとラウリン酸ビニルとからなるコポリマーからなる50質量%の水性分散液の形の有機結合剤52gを添加した。得られた懸濁液を、引き続き、リングの形(7×7×4mm、(AD)×(L)×(ID))のステアタイト(ケイ酸マグネシウム)1200g上に吹き付け、乾燥させた。塗布された外殻の重量は、仕上がった触媒の全重量の10%であった。このように塗布された触媒活性材料、つまり触媒外殻は、450℃で1時間か焼した後に、バナジウム(Vとして計算)7.12質量%、アンチモン(Sbとして計算)2.37質量%、リン(Pとして計算)0.40質量%、セシウム(Csとして計算)0.10質量%、二酸化チタン(TiO−1)22.23質量%及び二酸化チタン(TiO−2)66.68質量%を含有した。
【0045】
下層(c)
アナタース(TiO−1、BET表面積9m/g)22.07g、アナタース(TiO−3、BET表面積27m/g)88.28g、五酸化バナジウム28.07g、リン酸二水素アンモニウム1.93gを、脱イオン水650ml中に懸濁させ、18時間撹拌し、均一な分配を達成した。この懸濁液に、酢酸ビニルとラウリン酸ビニルとからなるコポリマーからなる50質量%の水性分散液の形の有機結合剤50gを添加した。得られた懸濁液を、引き続き、リングの形(7×7×4mm、(AD)×(L)×(ID))のステアタイト(ケイ酸マグネシウム)1200g上に吹き付け、乾燥させた。塗布された外殻の重量は、仕上がった触媒の全重量の10%であった。このように塗布された触媒活性材料、つまり触媒外殻は、450℃で1時間か焼した後に、バナジウム(Vとして計算)20.0質量%、リン(Pとして計算)0.37質量%、二酸化チタン(TiO−1)15.73質量%及び二酸化チタン(TiO−3)62.90質量%を含有した。
【0046】
A.4. 触媒4の製造(Pドープした上層及び中層−3層触媒−比較例2)
上層(a)
アナタース(TiO−1、BET表面積9m/g)35.32g、アナタース(TiO−2、BET表面積20m/g)67.96g、五酸化バナジウム8.26g、酸化アンチモン2.75g、リン酸二水素アンモニウム1.29g、炭酸セシウム0.47gを、脱イオン水650ml中に懸濁させ、18時間撹拌し、均一な分配を達成した。この懸濁液に、酢酸ビニルとラウリン酸ビニルとからなるコポリマーからなる50質量%の水性分散液の形の有機結合剤50gを添加した。得られた懸濁液を、引き続き、リングの形(7×7×4mm、(AD)×(L)×(ID))のステアタイト(ケイ酸マグネシウム)1200g上に吹き付け、乾燥させた。塗布された外殻の重量は、仕上がった触媒の全重量の8%であった。このように塗布された触媒活性材料、つまり触媒外殻は、450℃で1時間か焼した後に、バナジウム(Vとして計算)7.12質量%、アンチモン(Sbとして計算)2.37質量%、リン(Pとして計算)0.30質量%、セシウム(Csとして計算)0.33質量%、二酸化チタン(TiO−1)31.54質量%及び二酸化チタン(TiO−2)58.56質量%を含有した。
【0047】
中層(b)
アナタース(TiO−1、BET表面積9m/g)34.32g、アナタース(TiO−2、BET表面積20m/g)102.90g、五酸化バナジウム10.99g、酸化アンチモン3.66g、リン酸二水素アンモニウム2.30g、炭酸セシウム0.19gを、脱イオン水650ml中に懸濁させ、18時間撹拌し、均一な分配を達成した。この懸濁液に、酢酸ビニルとラウリン酸ビニルとからなるコポリマーからなる50質量%の水性分散液の形の有機結合剤52gを添加した。得られた懸濁液を、引き続き、リングの形(7×7×4mm、(AD)×(L)×(ID))のステアタイト(ケイ酸マグネシウム)1200g上に吹き付け、乾燥させた。塗布された外殻の重量は、仕上がった触媒の全重量の10%であった。このように塗布された触媒活性材料、つまり触媒外殻は、450℃で1時間か焼した後に、バナジウム(Vとして計算)7.12質量%、アンチモン(Sbとして計算)2.37質量%、リン(Pとして計算)0.40質量%、セシウム(Csとして計算)0.10質量%、二酸化チタン(TiO−1)22.23質量%及び二酸化チタン(TiO−2)66.68質量%を含有した。
【0048】
下層(c)
アナタース(TiO−1、BET表面積9m/g)22.07g、アナタース(TiO−3、BET表面積27m/g)88.28g、五酸化バナジウム28.07g、リン酸二水素アンモニウム1.93gを、脱イオン水650ml中に懸濁させ、18時間撹拌し、均一な分配を達成した。この懸濁液に、酢酸ビニルとラウリン酸ビニルとからなるコポリマーからなる50質量%の水性分散液の形の有機結合剤50gを添加した。得られた懸濁液を、引き続き、リングの形(7×7×4mm、(AD)×(L)×(ID))のステアタイト(ケイ酸マグネシウム)1200g上に吹き付け、乾燥させた。塗布された外殻の重量は、仕上がった触媒の全重量の10%であった。このように塗布された触媒活性材料、つまり触媒外殻は、450℃で1時間か焼した後に、バナジウム(Vとして計算)20.0質量%、リン(Pとして計算)0.37質量%、二酸化チタン(TiO−1)15.73質量%及び二酸化チタン(TiO−3)62.90質量%を含有した。
【0049】
A.5. 触媒5の製造(層(c)中でV 7.12質量%、V/P=19.2−3層触媒−比較例3)
上層(a)
アナタース(TiO−1、BET表面積9m/g)35.32g、アナタース(TiO−2、BET表面積20m/g)65.58g、五酸化バナジウム7.97g、酸化アンチモン2.65g、炭酸セシウム0.45gを、脱イオン水650ml中に懸濁させ、18時間撹拌し、均一な分配を達成した。この懸濁液に、酢酸ビニルとラウリン酸ビニルとからなるコポリマーからなる50質量%の水性分散液の形の有機結合剤50gを添加した。得られた懸濁液を、引き続き、リングの形(7×7×4mm、(AD)×(L)×(ID))のステアタイト(ケイ酸マグネシウム)1200g上に吹き付け、乾燥させた。塗布された外殻の重量は、仕上がった触媒の全重量の8%であった。このように塗布された触媒活性材料、つまり触媒外殻は、450℃で1時間か焼した後に、バナジウム(Vとして計算)7.12質量%、アンチモン(Sbとして計算)2.37質量%、セシウム(Csとして計算)0.33質量%、二酸化チタン(TiO−1)31.54質量%及び二酸化チタン(TiO−2)58.56質量%を含有した。
【0050】
中層(b)
アナタース(TiO−1、BET表面積9m/g)24.16g、アナタース(TiO−2、BET表面積20m/g)72.48g、五酸化バナジウム7.74g、三酸化アンチモン2.57g、炭酸セシウム0.13gを、脱イオン水650ml中に懸濁させ、18時間撹拌し、均一な分配を達成した。この懸濁液に、酢酸ビニルとラウリン酸ビニルとからなるコポリマーからなる50質量%の水性分散液の形の有機結合剤60gを添加した。得られた懸濁液を、引き続き、リングの形(7×7×4mm、(AD)×(L)×(ID))のステアタイト(ケイ酸マグネシウム)1200g上に吹き付け、乾燥させた。塗布された外殻の重量は、仕上がった触媒の全重量の10%であった。このように塗布された触媒活性材料、つまり触媒外殻は、450℃で1時間か焼した後に、バナジウム(Vとして計算)7.12質量%、アンチモン(Sbとして計算)2.37質量%、セシウム(Csとして計算)0.10質量%、二酸化チタン(TiO−1)22.23質量%及び二酸化チタン(TiO−2)66.68質量%を含有した。
【0051】
下層(c)
アナタース(TiO−1、BET表面積9m/g)40.15g、アナタース(TiO−3、BET表面積27m/g)88.28g、五酸化バナジウム9.99g、リン酸二水素アンモニウム1.93gを、脱イオン水650ml中に懸濁させ、18時間撹拌し、均一な分配を達成した。この懸濁液に、酢酸ビニルとラウリン酸ビニルとからなるコポリマーからなる50質量%の水性分散液の形の有機結合剤50gを添加した。得られた懸濁液を、引き続き、リングの形(7×7×4mm、(AD)×(L)×(ID))のステアタイト(ケイ酸マグネシウム)1200g上に吹き付け、乾燥させた。塗布された外殻の重量は、仕上がった触媒の全重量の10%であった。このように塗布された触媒活性材料、つまり触媒外殻は、450℃で1時間か焼した後に、バナジウム(Vとして計算)7.12質量%、リン(Pとして計算)0.37質量%、二酸化チタン(TiO−1)15.73質量%及び二酸化チタン(TiO−3)62.90質量%を含有した。
【0052】
A.6 触媒6の製造(層(c)中でV 11.5質量%、V/P=31.1−3層触媒−比較例4)
上層(a)
アナタース(TiO−1、BET表面積9m/g)35.32g、アナタース(TiO−2、BET表面積20m/g)65.58g、五酸化バナジウム7.97g、酸化アンチモン2.65g、炭酸セシウム0.45gを、脱イオン水650ml中に懸濁させ、18時間撹拌し、均一な分配を達成した。この懸濁液に、酢酸ビニルとラウリン酸ビニルとからなるコポリマーからなる50質量%の水性分散液の形の有機結合剤50gを添加した。得られた懸濁液を、引き続き、リングの形(7×7×4mm、(AD)×(L)×(ID))のステアタイト(ケイ酸マグネシウム)1200g上に吹き付け、乾燥させた。塗布された外殻の重量は、仕上がった触媒の全重量の8%であった。このように塗布された触媒活性材料、つまり触媒外殻は、450℃で1時間か焼した後に、バナジウム(Vとして計算)7.12質量%、アンチモン(Sbとして計算)2.37質量%、セシウム(Csとして計算)0.33質量%、二酸化チタン(TiO−1)31.54質量%及び二酸化チタン(TiO−2)58.56質量%を含有した。
【0053】
中層(b)
アナタース(TiO−1、BET表面積9m/g)24.16g、アナタース(TiO−2、BET表面積20m/g)72.48g、五酸化バナジウム7.74g、三酸化アンチモン2.57g、炭酸セシウム0.13gを、脱イオン水650ml中に懸濁させ、18時間撹拌し、均一な分配を達成した。この懸濁液に、酢酸ビニルとラウリン酸ビニルとからなるコポリマーからなる50質量%の水性分散液の形の有機結合剤60gを添加した。得られた懸濁液を、引き続き、リングの形(7×7×4mm、(AD)×(L)×(ID))のステアタイト(ケイ酸マグネシウム)1200g上に吹き付け、乾燥させた。塗布された外殻の重量は、仕上がった触媒の全重量の10%であった。このように塗布された触媒活性材料、つまり触媒外殻は、450℃で1時間か焼した後に、バナジウム(Vとして計算)7.12質量%、アンチモン(Sbとして計算)2.37質量%、セシウム(Csとして計算)0.10質量%、二酸化チタン(TiO−1)22.23質量%及び二酸化チタン(TiO−2)66.68質量%を含有した。
【0054】
下層(c)
アナタース(TiO−1、BET表面積9m/g)34.00g、アナタース(TiO−3、BET表面積27m/g)88.28g、五酸化バナジウム16.14g、リン酸二水素アンモニウム1.93gを、脱イオン水650ml中に懸濁させ、18時間撹拌し、均一な分配を達成した。この懸濁液に、酢酸ビニルとラウリン酸ビニルとからなるコポリマーからなる50質量%の水性分散液の形の有機結合剤50gを添加した。得られた懸濁液を、引き続き、リングの形(7×7×4mm、(AD)×(L)×(ID))のステアタイト(ケイ酸マグネシウム)1200g上に吹き付け、乾燥させた。塗布された外殻の重量は、仕上がった触媒の全重量の10%であった。このように塗布された触媒活性材料、つまり触媒外殻は、450℃で1時間か焼した後に、バナジウム(Vとして計算)11.50質量%、リン(Pとして計算)0.37質量%、二酸化チタン(TiO−1)15.73質量%及び二酸化チタン(TiO−3)62.90質量%を含有した。
【0055】
B o−キシレンのPSAへの酸化
B.1 3層触媒
下から上に向かってそれぞれ、下層(c)の触媒0.70m、中層(b)の触媒0.60m及び上層(a)の触媒1.50mを、3.85mの長さ及び内径25mmの鉄管中に充填した。この鉄管を温度調節のために塩浴で取り囲み、組込型のテンションエレメントを備えた2mmのサーモスリーブを触媒温度測定のために利用した。この管を通すように、上から下へ向かって毎時4Nmの空気を、98.5質量%のo−キシレン0〜100g/Nmの負荷で案内した。10〜14日の運転時間の後に、o−キシレン供給を中断し、触媒を72時間の期間にわたり次の条件にさらした:塩浴温度(SBT)410℃、空気2Nm/h。この場合、o−キシレン60〜100g/Nmで、表1及び2にまとめられた結果が得られた(「PSA収率」は、100%のo−キシレンに対して含まれるPSAを質量%で表す)。
【0056】
B.2 4層触媒
下から上に向かってそれぞれ、下層(c)の触媒0.70m、中層2(b2)の触媒0.70m、中層1(b1)0.50m及び上層(a)の触媒1.30mを、3.85mの長さ及び内径25mmの鉄管中に充填した。その他の点では、B.1に記載されたと同様の方法を実施した。
【0057】
活性化後の試験結果を表1及び2中にまとめた。
【0058】
次の省略形を使用した:
HST ホットスポット温度
OS 上層
MS 中層
US 下層
ROG 反応出口ガス
SBT 塩浴温度
PHD フタリド
PSA 無水フタル酸
ベンゾイル−PSA 4−ベンゾイルフタル酸無水物
ADCA アントラキノンジカルボン酸無水物
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】

【0061】
【表3】

【0062】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定層中で、かつ少なくとも3つの層の形に積み重ねて配置され、かつガス入口側の層からガス出口側の層に向かって活性が増大し、かつ担体材料からなるコア上に触媒活性を有する金属酸化物からなる層が設けられている触媒を用いて、分子酸素を含有するガスを用いたキシレン及び/又はナフタレンの接触気相酸化による無水フタル酸の製造方法において、最後の触媒層だけがリンを有し、この最後の層中には触媒の活性材料に対して少なくとも10質量%のバナジウム(Vとして計算)が存在し、かつバナジウム(Vとして計算)対リンの割合は35より大きな値を有することを特徴とする無水フタル酸の製造方法。
【請求項2】
最後の触媒層の装填物長さは、長くても全ての層の全装填物長さの40%であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
最後の触媒層の装填物長さは、長くても全ての層の全装填物長さの25%であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
最後の触媒層中のバナジウム(Vとして計算)対リンの割合は、40〜100の値を有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
最後の触媒層は、触媒の活性材料に対して少なくとも15質量%のバナジウム(Vとして計算)を有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
最後の触媒層は、触媒の活性材料に対して18〜22質量%のバナジウム(Vとして計算)を有することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
最初の触媒層は、触媒の活性材料に対して1.1質量%より少ないアルカリ(アルカリ金属として計算)を有することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
最初の触媒層は、活性材料に対してアルカリ(アルカリ金属として計算)0.1〜0.8質量%のアルカリ含有量を有し、1つ又は複数の中間の触媒層は、0.05〜0.6質量%のアルカリ含有量(アルカリ金属として計算)を有することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
アルカリ金属添加物としてセシウムを使用することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
最後の触媒層は、1質量%より少ないリンを有することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
活性材料のBET表面積は5〜50m/gの値を有することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
触媒の全質量に対する活性材料の割合は3〜15質量%であることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
生成物の無水フタル酸中のアントラキノンジカルボン酸の含有量が75ppmを下回ることを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。

【公表番号】特表2007−501262(P2007−501262A)
【公表日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−529839(P2006−529839)
【出願日】平成16年5月15日(2004.5.15)
【国際出願番号】PCT/EP2004/005246
【国際公開番号】WO2004/103944
【国際公開日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【氏名又は名称原語表記】BASF Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】