説明

無洗米の製造方法及び装置

【課題】 品質がよく、作業上、衛生上からも好ましい無洗米の製造方法及び装置を提供する。
【解決手段】 この無洗米の製造方法は、原料米にぬかを加え、冷却しながら混合する工程26と、混合工程により得られた無洗米とぬかとを分別する工程27とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、炊飯時の洗米が不要な無洗米の製造方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、炊飯を行う際には洗米する必要があり、作業の増大、あるいはとぎ汁による環境汚染等の不具合が生じていた。このようなことから、近年いわゆる「無洗米」が話題になってきている。この無洗米は、洗米することなく、水を加えるだけで炊飯できるものであり、所定条件下で水に浸漬したときの水の濁度が60ppm以下であるものを「無洗米」と認定している。
【0003】ここで、一般的な精米方法を述べると、まず、殻を取った玄米をブラシで機械的に研磨することで、上記濁度を150ppm程度まで低下させる1次精米を行なう。次に、同様な機械研磨による2次精米を行って濁度を80ppm程度まで低下させ、この状態で販売を行なう。消費者はこの米を洗米して炊飯を行なっている。
【0004】また、現在上市されている無洗米は、上記した2次精米後、米の表面にコーティングを行なうことで、水への米成分の流出を防止し、上記「無洗米」としての濁度基準(60ppm以下)を確保している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記した無洗米の場合、表面コーティングがしてあるものの、炊飯時に米の成分(油分等)が流出し、炊き上がった米に残留することが知られている。このため、ご飯に匂いが残ったり、炊飯後数日経ったご飯の品質が低下するという問題があった。
【0006】また、2次精米後の原料米にぬかを混ぜ合わせることにより、無洗米を製造する技術も開発されつつある。ところが、ぬかは酸化しやすく腐りやすいという問題がある。そのため、無洗米の品質低下を招く恐れがあるとともに、衛生上難点がある。さらには、いわゆるぬか臭いという匂いの問題がある。そして、ぬかを長期保存することができないので、作業性の点からも難点がある。
【0007】さらに、ぬかを用いて無洗米を製造する従来技術では、混合時に温度が上昇して米の水分が抜けやすくなり、これによっても得られた無洗米の品質低下を招いていた。
【0008】本発明は、上記した課題を解決し、品質がよく、作業上、衛生上からも好ましい無洗米の製造方法及び装置の提供を目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記した目的を達成するために、請求項1記載の無洗米の製造方法は、原料米にぬかを加え、冷却しながら混合する工程と、前記混合工程により得られた無洗米と前記ぬかとを分別する工程とを備えたことを特徴とする。前記混合工程において、混合物の温度が15℃以下となるよう冷却することが好ましい。前記混合工程において、加圧を行うことが好ましい。前記ぬかとして、脱脂した原料ぬかを加熱殺菌したものを用いることが好ましい。
【0010】本発明の無洗米の製造装置は、原料米にぬかを加え、冷却しながら混合するための混合装置と、得られた無洗米と前記ぬかとを分別する分別装置とを備えたことを特徴とする。前記無洗米の製造装置において、前記混合装置は、筒状をなし、その一の端部に流入口を設け、他の端部に流出口を設けてなる混合機と、前記混合機を冷却する冷却機と、前記混合機の中心軸を軸心として回転し、当該混合機内の混合物を攪拌する攪拌機と、前記中心軸方向に、かつ前記流出口を外側から規定圧力で閉塞するよう付勢される蓋とを備え、前記混合機内の混合物の圧力が前記規定圧力を超えると、前記蓋が開いて前記流出口から前記分別装置へ前記混合物が供給されることを特徴とする。前記無洗米の製造装置において、前記分別装置は、所定の径の網を水平方向に載置してなり、前記網を当該水平方向に揺動させることにより混合物を粒径に応じて分別することを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について、各図を参照して説明する。図1は、本発明の無洗米の製造装置の一実施の形態を示す図である。
【0012】この図において、無洗米の製造装置は、混合装置10と分別装置40とを備えている。混合装置10の上方には原料米の供給ホッパ100、ぬかの供給ホッパ110が設置され、これらのホッパから供給される原料米とぬかは、箱型の集合機120に合流した後、筒状の配管部30を介して混合装置10に導入され、混合される。そして、上記混合物は、装置10の出側から分別装置40に導入され、得られた無洗米が製品出口44から製品回収装置210へ回収され、分別されたぬかがぬか出口45からぬか回収装置200へ回収されるようになっている。
【0013】混合装置10は、混合機2、冷却機4、蓋6、攪拌機8、混合機の上側端部を常時閉塞する略ドーナツ状の上蓋9とを備える。混合機2は略円錐台状の筒になっていて、その中心軸方向を鉛直にして配置されている。そして、拡径する上側端部に流入口が設けられ、下側端部に流出口が設けられる。
【0014】冷却機4は、冷却水を流通させる蛇管からなり、混合機2の外周に配置されている。
【0015】攪拌機8は複数のスクリュー羽根からなり、混合機2の下に配置されたモータ36から混合機2の中心軸に沿って伸びる延長軸34を介して、前記中心軸を軸心として回転することにより、混合物を攪拌する。また、攪拌機8の上側にはこれと同軸にスクリュー8aが連結されている。このスクリュー8aは、上蓋9の中心開口部より外側の配管部30内に配置され、攪拌機8の回転に連動して回転することにより、配管部30内の混合物を混合機2に送り込む(搬送する)ようになっている。
【0016】蓋6は、前記流出口の外側に配置され、その下に配置された台枠32との間のばねにより、混合機2の中心軸方向に、かつ流出口を外側から規定圧力で閉塞するよう付勢される。そして、スクリュー8aにより混合機2に十分な量の混合物が送り込まれ、混合機2内の圧力が上昇して蓋6のばね付勢力を超えると蓋6が開き、混合機2の流出口、および排出口38を経て、混合物が分別装置40へ供給される。つまり、原料米とぬかの混合物は、混合機2の上方から導入され、圧力がかかった状態で十分に攪拌された後、混合機2の下方から流出するようになっている。
【0017】分別装置40は、所定の径の網(たとえば網の目が1.5mmのネット)40aを水平方向に載置してなり、網40aへ混合物を導入する導入口42、製品出口44、ぬか出口45、筐体であるぬか回収ホッパ48、および網40aに接続されてこの網を水平方向に揺動させることにより混合物を粒径に応じて分別する振動モータ46を備える。なお、通常、米として販売するものは通常1.5mmφ程度に規定されており、ぬかの粒度はこれより小さい(0、2〜0、5mmφ程度)ので、分別により網40aからぬかが落下し、無洗米は網の上に残る。
【0018】製品回収装置210は、所定の仕上げ回転ドラムを備え、分別された無洗米を攪拌してその表面に付着した微粉を除去し、さらに集塵機で仕上げを行う。
【0019】次に、図2を参照して、本発明の無洗米の製造方法について説明する。この図において、玄米を供給し(工程20)、1次精米を行なう(工程22)。1次精米は、米の表面を機械的に研磨するブラッシングにより行い、得られた米を所定の条件で水に浸漬したときの濁度が約150ppm程度になるまで行なう(濁度は所定の濁度(水道局などで使用するもの)を使用)。次に、2次精米を行なう(工程24)。2次精米は上記と同様機械的研磨し、濁度が約80ppm程度になるまで行なう。2次精米を過度に行なうと、米表面からうまみ成分が除去されて米の風味が落ちる一方、これ以上の濁度向上が図られないので好ましくない。この状態で米を出荷すると、従来の洗米が必要となる。
【0020】次に、ぬかを2次精米した米(原料米)と混合する(工程26)。通常、両者の混合比率(体積比)は1:1である。ぬかは脱脂しているので、2次精米で除去できなかった米表面の成分(油分等)を有効に除去(吸着)できる。その後、混合物をふるいにかけて無洗米とぬかを分別する。この場合、米として販売するものは通常1.5mmφ程度に規定されているので、ぬかの粒度を0、2〜0、5mmφ程度に予め選別しておけば、米との分別がしやすくなる。このようにして濁度60ppm以下の無洗米が製造される。
【0021】図3は、図2の詳細図である。まず、上記工程20〜24、および搬送工程24Aを経た後、ぬかと原料米の混合工程26へ移行する。混合工程では、混合物を攪拌した際の発熱で温度が上昇するのを防止するため、冷却が行われ、好ましくは混合物の温度が15℃以下となるよう冷却される。これにより、混合時に温度が上昇して米の水分が抜けて無洗米の品質(風味)が低下することが抑制される。特に、混合工程で失われる米の水分は、冷却しない場合は0.2〜0.4%であったのが、0.1〜0.2%に減少する。
【0022】さらに、混合を加圧下で行うと、米の成分(油分等)をぬかで除去する効果が向上するので好ましい。圧力は、例えば98〜196kPaとするとよい。例えば、加圧により、ぬかによる米の成分の除去効果が向上し、米の品質低下を招く油分が十分除去されるので、得られた無洗米の保存期間が従来の10〜30日に比べ、3ヶ月程度に向上する。
【0023】そして、分別工程27、得られた無洗米の搬送(工程28A)、製品回収装置210による無洗米の仕上げ工程28B、搬送工程28Cを経て、製品である無洗米を貯蔵タンクに貯蔵し(工程28D)、適宜袋詰して出荷する(工程28E、28F)。一方、工程27で分別されたぬかは適宜回収・再利用される(工程29)。なお、通常、回収ぬかの所定量(5%程度)を捨て、その分の新しいぬかを補充した後、再利用に供する。
【0024】本発明に用いるぬかは、例えば次のようにして製造される。まず原料ぬか(脱脂ぬか)を準備する。脱脂ぬかは、通常、米ぬかを脱脂して油分を除去したものである(油分残留率2〜3%程度)。次に、原料ぬかを適宜微粉選別してぬかの粒度を調整し、加熱攪拌釜へ搬送する。加熱攪拌釜では原料ぬかを炒り、加熱殺菌を行なう。加熱条件は、例えば加熱温度60〜100℃、加熱時間2〜5分程度とするとよい。加熱条件がこれらの値未満であると、十分な加熱殺菌ができず、これらの値を越えると、ぬかが焦げたりするので不都合が生じる。また、得られたぬかの含水率を実質的に0%にすると原料米との混合時に米に含まれる成分(油分等)をより吸着するので好ましい。
【0025】このようにして得られた精米用ぬかは加熱殺菌されているので、酸化や腐敗がしにくく、長期保存が容易であるとともに、衛生的である。また、いわゆるぬか臭さがないので、原料米と混合して無洗米を製造する際に無洗米に匂いが付着することがない。これらに加え、無洗米の製造後に米に付着したまま残っても無害である。
【0026】さらに、含水率が上記範囲以下である場合、乾燥しているので取り扱い時に器具等にぬかが付着することが少なく、取り扱いしやすいという特徴がある。また、乾燥しているので、原料米と混合して無洗米を製造した後、得られた米から精米用ぬかを容易に分別できる。さらには、無洗米製造時において原料米からの成分除去がより促進され、品質のよい無洗米の製造に寄与する。
【0027】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、原料米とぬかとを冷却しながら混合するので、混合時に温度が上昇して米の水分が抜けることが抑制され、、得られた無洗米の品質(風味)が向上する。例えば、混合工程で失われる米の水分は、冷却しない場合は0.2〜0.4%であったのが、0.1〜0.2%に減少する。
【0028】さらに、混合を加圧下で行うと、米の成分(油分等)をぬかで除去する効果が向上し、米の品質低下を招く油分が十分除去されるので、得られた無洗米の保存期間が長くなる。例えば、保存期間は従来の10〜30日に比べ、3ヶ月程度に向上する。
【0029】これらに加え、加熱殺菌されたぬかを用いると、衛生的であるとともに、いわゆるぬか臭さがないので、得られた無洗米に匂いが付着することがない。また、無洗米の製造後に米にぬかが付着したまま残っても無害である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の無洗米の製造装置を示す図である。
【図2】 無洗米を製造する方法を示す工程図である。
【図3】 図3の詳細図である。
【符号の説明】
2 混合機
4 冷却機
6 蓋
8 攪拌機
10 混合装置
26 混合工程
27 分別工程
40 分別装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】 原料米にぬかを加え、冷却しながら混合する工程と、前記混合工程により得られた無洗米と前記ぬかとを分別する工程とを備えたことを特徴とする無洗米の製造方法。
【請求項2】 前記混合工程において、混合物の温度が15℃以下となるよう冷却することを特徴とする請求項1に記載の無洗米の製造方法。
【請求項3】 前記混合工程において、加圧を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の無洗米の製造方法。
【請求項4】 前記ぬかとして、脱脂した原料ぬかを加熱殺菌したものを用いることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の無洗米の製造方法。
【請求項5】 原料米にぬかを加え、冷却しながら混合するための混合装置と、得られた無洗米と前記ぬかとを分別する分別装置とを備えたことを特徴とする無洗米の製造装置。
【請求項6】 前記混合装置は、筒状をなし、その一の端部に流入口を設け、他の端部に流出口を設けてなる混合機と、前記混合機を冷却する冷却機と、前記混合機の中心軸を軸心として回転し、当該混合機内の混合物を攪拌する攪拌機と、前記中心軸方向に、かつ前記流出口を外側から規定圧力で閉塞するよう付勢される蓋とを備え、前記混合機内の混合物の圧力が前記規定圧力を超えると、前記蓋が開いて前記流出口から前記分別装置へ前記混合物が供給されることを特徴とする請求項5に記載の無洗米の製造装置。
【請求項7】 前記分別装置は、所定の径の網を水平方向に載置してなり、前記網を当該水平方向に揺動させることにより混合物を粒径に応じて分別することを特徴とする請求項5又は6に記載の無洗米の製造装置。

【図2】
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【図1】
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【図3】
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【公開番号】特開2002−248359(P2002−248359A)
【公開日】平成14年9月3日(2002.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−47119(P2001−47119)
【出願日】平成13年2月22日(2001.2.22)
【出願人】(501073747)
【Fターム(参考)】