説明

無線タグおよびそれを使用した無線タグ読取り不具合検知システム

【課題】
無線タグが電波を受信できていない場合においても、物理的およびシステム的両面で無線タグの読取り不具合を早期に検知することを目的とする。
【解決手段】
無線タグと予備用の無線タグとを具備し、それぞれにデータ読取り時に無線タグに発生する電圧値を読取るセンサと発光素子とを具備する。予備用の無線タグに発生する電圧を無線タグの駆動電圧として取込むことで、電波を受信できていない場合においても、予備用の無線タグに発生する電圧を利用して無線タグの発光素子を発光させ、読取り不具合を物理的に検知する。また、リーダ/ライターとサーバとを具備し、無線タグおよび予備用の無線タグに発生する電圧値をリーダ/ライターおよびサーバに通知することにより、システム的にも読取り不具合を検知できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線周波数を使い、電池を持たない無線タグの読取り不具合検知に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無線周波数帯を使用する電池を持たない無線タグは、無線タグの故障、無線タグとリーダ/ライターとの距離が離れる、無線タグとリーダ/ライターとの向きが悪い、などの原因で無線タグからのデータが読めなくなる、読取り不具合が起こっていた。
しかし、読取り不具合がいつ発生するか分からないため、読取り不具合を早期に検知することができなかった。また複数の商品に無線タグが貼付されていた場合、どの商品に貼付された無線タグに読取り不具合が起こっているか検知することができなかった。
【0003】
また、無線タグ、その製造方法及びその配置方法(特許文献1)での発光するLEDを備えたことを特徴とする無線タグおよび非接触ICカード(特許文献2)での通信が行われている際に報知素子が動作することを特徴とする非接触ICカードが提案されているが、いずれも無線タグおよび非接触ICカードが電波を受信できている読取り正常時に発光素子を発光させ駆動可能状態を示すことは可能であるが、電波を受信できていない読取り不具合時に発光素子を発光させ、その不具合を検知することはできなかった。
【0004】
また発光素子を発光させる物理的な読取り不具合検知方法のみでなく、システム的にも読取り不具合を同時に検知できることはできなかった。
【0005】
【特許文献1】特開2000−332523号公報
【特許文献2】特開平9−114945号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、無線タグが電波を受信できていない場合読取り不具合を早期に検知することが難しかった無線タグに対して、読取り不具合を早期に検知するシステムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、アンテナと電源回路部と負荷回路部とを有する無線タグにおいて、データ読取り時に無線タグに発生する電圧値を読取るセンサと発光素子とを具備することを第1の特徴とする。
【0008】
更に本発明は、無線タグと予備用の無線タグとを具備し、予備用の無線タグに発生する電圧を無線タグの駆動電圧として取込み、無線タグに発生する電圧を予備用の無線タグの駆動電圧として取込むことで、データ読取り時に無線タグが電波を受信できていない場合においても、予備用の無線タグに発生する電圧を利用して無線タグの発光素子を発光させることにより、その読取り不具合を物理的に検知できることを第2の特徴とする。
【0009】
更に本発明は、無線タグ読取り不具合検知システムと無線タグのデータを読み書きするリーダ/ライターと無線タグからのデータを処理するサーバとを具備し、無線タグおよび予備用の無線タグに発生する電圧値をリーダ/ライターおよびサーバに通知することにより、物理的およびシステム的両面(ハードウエア、ソフトウエアの両方を用いた方法)で読取り不具合を検知できることを第3の特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の無線タグ読取り不具合検知システムにより、無線タグが電波を受信できていない場合においても、物理的およびシステム的両面で無線タグの読取り不具合を早期に検知することができる。
【0011】
また複数の商品に無線タグが貼付されていた場合、どの商品に貼付された無線タグに読取り不具合が起こっているかを早期に検知し特定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下本発明の一実施形態による無線タグおよびそれを使用した無線タグ読取り不具合検知システムについて、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1は本実施形態による無線タグ読取り不具合検知システムの構成を示す図である。図1において、12はリーダ/ライターと無線タグおよび無線タグ(予備用)との間の電波である。サーバ1から発行されたデータ読取りコマンド13をネットワーク2を介してリーダ/ライター3が受け、リーダ/ライター3から商品4に貼付された無線タグ5及び無線タグ(予備用)6にデータ読取り動作が行われる。無線タグ5は読取り時に発生する無線タグ5の電圧値を検知する無線タグのセンサ7および無線タグの発光素子9を備えている。
【0014】
無線タグ(予備用)6も読取り時に発生する無線タグ(予備用)の電圧値を検知する無線タグ(予備用)のセンサ8および無線タグ(予備用)の発光素子10を備えている。11は無線タグ読取り不具合時の発光素子による発光である。
【0015】
尚、サーバ1は、上述のデータ送受信や各種データ処理等を行うために必要なプログラムが実行されるコンピュータである。サーバ1は、上述のプログラムを実行するために必要なメモリやディスク等の記憶部、プロセッサ等の処理部、データ送受信に必要となる通信部などを備えている。
【0016】
図2は本実施形態による無線タグの回路構成を示す図である。
リーダ/ライター3からの電波12を無線タグのアンテナ51が受け、無線タグの電源回路52に電圧が発生し、電源が無線タグの論理回路53、無線タグのメモリ54に供給される。無線タグのメモリ54には、あらかじめ無線タグのID541が記憶されている。
【0017】
無線タグ5の回路構成は無線タグの電源回路部55および無線タグの負荷回路部56から構成される。無線タグの電源回路部55では、無線タグのカップリングコンデンサ551にチャージされた電荷相当の電圧が無線タグのダイオード552の入力信号に加算される。これにより、無線タグのダイオード552の出力として無線タグの電圧554が発生する。その他、553は無線タグの平滑コンデンサ、561は無線タグの負荷抵抗である。
【0018】
図3は本実施形態による無線タグ(予備用)の回路構成を示す図である。無線タグ(予備用)も無線タグと同様に無線タグ(予備用)の電圧654が発生する。図3において、61は無線タグ(予備用)のアンテナ、62は無線タグ(予備用)の電源回路、63は無線タグ(予備用)の論理回路、64は無線タグ(予備用)のメモリ、65は無線タグ(予備用)の電源回路部、66は無線タグ(予備用)の負荷回路部、651は無線タグ(予備用)のカップリングコンデンサ、652は無線タグ(予備用)のダイオード、653は無線タグ(予備用)の平滑コンデンサ、661は無線タグ(予備用)の負荷抵抗である。無線タグ(予備用)のメモリ64には、あらかじめ無線タグ(予備用)のID641が記憶されている。
【0019】
図4は本実施形態による無線タグ読取り時に無線タグに発生する電圧値を監視し、無線タグ読取り不具合をリーダ/ライター3およびサーバ1側でシステム的に検知し、同時に無線タグの発光素子で物理的に検知する方法を示す図である。図4において、71は無線タグのセンサのA/D変換器、72は無線タグのセンサのメモリ、73は無線タグのセンサのシフトレジスタ、91は無線タグの発光素子のLED、92は無線タグの発光素子のトランジスタである。
【0020】
図5は本実施形態による無線タグ5からリーダ/ライター3およびサーバ1に送られるデータ項目を示す図である。図5において、541は無線タグのID、542は無線タグの電圧値、543は無線タグ(予備用)の電圧値である。無線タグの電圧値542は無線タグの順方向電圧554に起因するもの、無線タグ(予備用)の電圧値543は図6における無線タグ(予備用)の順方向電圧654に起因するものである。
【0021】
図6は本実施形態による無線タグ(予備用)読取り時に無線タグ(予備用)に発生する電圧値を監視し、無線タグ(予備用)読取り不具合をリーダ/ライター3およびサーバ1側でシステム的に検知し、同時に無線タグ(予備用)の発光素子で物理的に検知する方法を示す図である。図6において、81は無線タグ(予備用)のセンサのA/D変換器、82は無線タグ(予備用)のセンサのメモリ、83は無線タグ(予備用)のセンサのシフトレジスタ、101は無線タグ(予備用)の発光素子のLED、102は無線タグ(予備用)の発光素子のトランジスタである。
【0022】
図7は本実施形態による無線タグ(予備用)6からリーダ/ライター3およびサーバ1に送られるデータ項目を示す図である。図7において、641は無線タグ(予備用)のID、642は無線タグ(予備用)の電圧値、643は無線タグの電圧値である。無線タグ(予備用)の電圧値642は無線タグ(予備用)の順方向電圧654に起因するものであり、図5における無線タグ(予備用)の電圧値543と同じデータである。無線タグの電圧値643は無線タグの順方向電圧554に起因するものであり、図5における無線タグの電圧値542と同じデータである。
【0023】
図4を用いて、本実施形態による無線タグ5に発生する無線タグの電圧554を監視する方法を説明する。
無線タグ5で発生する無線タグの電圧554を無線タグのセンサ7に取り込む。無線タグのセンサ7に取り込んだ無線タグの電圧554を、無線タグのセンサのA/D変換器71に通し、無線タグのセンサのメモリ72に記憶させる。無線タグのセンサのメモリ72に記憶させた無線タグの電圧554を、無線タグのセンサのシフトレジスタ73に通し、シリアルデータとして無線タグ5に送り出し無線タグのメモリ54に記憶させる。同様の方法で取り出した無線タグ(予備用)の電圧値654も無線タグのメモリ54に記憶させることで、無線タグのメモリ54の内容には少なくとも図5のデータ項目((無線タグのID541)+(無線タグの電圧値542)+(無線タグ(予備用)の電圧値543))が含まれ、このデータがリーダ/ライター3およびサーバ1に送られる。
【0024】
図4を用いて、本実施形態によるデータ読取り時に無線タグが電波を受信できず、無線タグの電圧値が低くなり読取り不具合が発生した場合に、リーダ/ライター3およびサーバ1側で無線タグ読取り不具合をシステム的に検知する方法を説明する。
【0025】
無線タグ5で読取り不具合が発生した場合(無線タグの電圧554がある閾値以下)、無線タグ5自体が動作できない状態なので、
(ア)リーダ/ライター3およびサーバ1側に、無線タグ5からのデータ(図5)
( (無線タグのID541)+(無線タグの電圧値542)+(無線タグ(予備用)の電圧値543))
が来ない。
【0026】
(イ)リーダ/ライター3およびサーバ1側で、無線タグ(予備用)6からのデータ(図7)
( (無線タグ(予備用)のID641) +(無線タグ(予備用)の電圧値642)+(無線タグの電圧値643) )
を確認し、無線タグの電圧値643がある閾値以下になっている。
【0027】
以上のことから、無線タグ5で読取り不具合が発生していることがリーダ/ライター3およびサーバ1側でシステム的に検知できる。この場合、サーバ側でアラームを画面表示させる。
【0028】
図4を用いて、本実施形態による無線タグ5で読取り不具合が発生した場合(無線タグの電圧554がある閾値以下) 、無線タグの発光素子9を発光させ、無線タグ読取り不具合を物理的に検知する方法を説明する。
【0029】
無線タグ5で発生する電圧(無線タグの電圧554)を無線タグの発光素子9に取り込む。
【0030】
無線タグ(予備用)6から無線タグ(予備用)の電圧654を基準電圧として無線タグの発光素子9に取り込み、無線タグの電圧値554と無線タグ(予備用)の電圧値654を比較し、(無線タグの電圧値554−無線タグ(予備用)の電圧値654)がある閾値以上になったら無線タグの発光素子のLED91を発光させる回路としておく。
【0031】
このように本実施例の無線タグ読取り不具合検知システムにより、無線タグが電波を受信できていない場合においても、物理的およびシステム的両面(ハードウエア、ソフトウエアの両方を用いた方法)で無線タグの読取り不具合を早期に検知することができる。
【0032】
また複数の商品に無線タグが貼付されていた場合、どの商品に貼付された無線タグに読取り不具合が起こっているかを早期に検知し特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施形態による無線タグ読取り不具合検知システムの構成を示す図
【図2】本発明の一実施形態による無線タグの回路構成を示す図
【図3】本発明の一実施形態による無線タグ(予備用)の回路構成を示す図
【図4】本発明の一実施形態による無線タグ読取り時に無線タグに発生する電圧値を監視し、無線タグ読取り不具合をリーダ/ライターおよびサーバ側でシステム的に検知し、同時に無線タグの発光素子で物理的に検知する方法を示す図
【図5】本発明の一実施形態による無線タグからリーダ/ライターおよびサーバに送られるデータ項目を示す図
【図6】本発明の一実施形態による無線タグ(予備用)読取り時に無線タグ(予備用)に発生する電圧値を監視し、無線タグ(予備用)読取り不具合をリーダ/ライターおよびサーバ側でシステム的に検知し、同時に無線タグ(予備用)の発光素子で物理的に検知する方法を示す図
【図7】本発明の一実施形態による無線タグ(予備用)からリーダ/ライターおよびサーバに送られるデータ項目を示す図
【符号の説明】
【0034】
1:サーバ
2:ネットワーク
3:リーダ/ライター
4:商品
5:無線タグ
6:無線タグ(予備用)
7:無線タグのセンサ
8:無線タグ(予備用)のセンサ
9:無線タグの発光素子
10:無線タグ(予備用)の発光素子
11:読取り不具合時の発光素子による発光
12:リーダ/ライターと無線タグおよび無線タグ(予備用)との間の電波
13:サーバからのデータ読取りコマンド
14:リーダ/ライターからサーバに送られる無線タグおよび無線タグ(予備用)のID、
電圧値データ
15:読取り不具合を検知した場合のサーバのアラーム画面表示
51:無線タグのアンテナ
52:無線タグの電源回路
53:無線タグの論理回路
54:無線タグのメモリ
55:無線タグの電源回路部
56:無線タグの負荷回路部
551:無線タグのカップリングコンデンサ
552:無線タグのダイオード
553:無線タグの平滑コンデンサ
554:無線タグの順方向電圧
561:無線タグの負荷抵抗
61:無線タグ(予備用)のアンテナ
62:無線タグ(予備用)の電源回路
63:無線タグ(予備用)の論理回路
64:無線タグ(予備用)のメモリ
65:無線タグ(予備用)の電源回路部
66:無線タグ(予備用)の負荷回路部
651:無線タグ(予備用)のカップリングコンデンサ
652:無線タグ(予備用)のダイオード
653:無線タグ(予備用)の平滑コンデンサ
654:無線タグ(予備用)の順方向電圧
661:無線タグ(予備用)の負荷抵抗
71:無線タグのセンサのA/D変換器
72:無線タグのセンサのメモリ
73:無線タグのセンサのシフトレジスタ
91:無線タグの発光素子のLED
92:無線タグの発光素子のトランジスタ
541:無線タグのID
542:無線タグの電圧値
543:無線タグ(予備用)の電圧値
81:無線タグ(予備用)のセンサのA/D変換器
82:無線タグ(予備用)のセンサのメモリ
83:無線タグ(予備用)のセンサのシフトレジスタ
101:無線タグ(予備用)の発光素子のLED
102:無線タグ(予備用)の発光素子のトランジスタ
641:無線タグ(予備用)のID
642:無線タグ(予備用)の電圧値
643:無線タグの電圧値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナと電源回路部と負荷回路部とを有する無線タグにおいて、
データ読取り時に無線タグに発生する電圧値を読取るセンサと発光素子とを具備することを特徴とする無線タグ。
【請求項2】
無線タグを用いた読取り不具合検知システムであって、
前記無線タグは、アンテナと電源回路部と負荷回路部とデータ読取り時に発生する電圧値を読取るセンサと発光素子とを具備し、
前記無線タグと予備用の前記無線タグとを具備し、
予備用の前記無線タグに発生する電圧を前記無線タグの駆動電圧として取込み、
前記無線タグに発生する電圧を予備用の前記無線タグの駆動電圧として取込むことで、データ読取り時に前記無線タグが電波を受信できていない場合においても、予備用の前記無線タグに発生する電圧を利用して前記無線タグの発光素子を発光させることにより、その読取り不具合を検知することを特徴とする無線タグを用いた読取り不具合検知システム。
【請求項3】
請求項2記載の無線タグを用いた読取り不具合検知システムにおいて、
無線タグのデータを読み書きするリーダ/ライターと無線タグからのデータを処理するサーバとを具備し、
前記無線タグおよび予備用の前記無線タグに発生する電圧値をリーダ/ライターおよびサーバに通知することにより、物理的およびシステム的両面で読取り不具合を検知することを特徴とする請求項2記載の無線タグを用いた読取り不具合検知システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−18543(P2006−18543A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−195126(P2004−195126)
【出願日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】