説明

無線タグ読取装置

【課題】ミラーサブキャリア方式を用いて無線タグのデータを読み取る際の信頼度を高める。
【解決手段】2値化手段は、無線タグからの受信信号を2値化する。サンプリング手段(ST3〜ST6)は、2値化手段により2値化された受信信号を所定ビット単位毎にデータシンボルとしてサンプリングする。判定手段(ST7)は、サンプリング手段によりサンプリングされたデータシンボルの復号に関わる中心2ビットの正誤を判定する。修復手段(ST7)は、判定手段により誤りビットを検知すると、その誤りビットを反転させて修復する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミラーサブキャリア方式を用いて無線タグと無線通信を行うことにより、前記無線タグのデータを読み取る無線タグ読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、RFID(Radio Frequency Identification)システム等と称される自動認識システムが、流通、物流、セキュリティ等の様々な分野で利用されている。このシステムは、質問器等とも呼ばれる無線タグ読取装置と、応答器等とも呼ばれる無線タグとの間で無線通信を行うことにより、無線タグ、ひいてはこのタグが付された物品を自動的に認識するというものである。
【0003】
無線タグには、電池を内蔵したアクティブ型無線タグと、電池を持たないパッシブ型無線タグとがある。パッシブ型無線タグは、無線タグ読取装置から送られてくる搬送波の電力を利用して、データの送受信を行う。具体的には、パッシブ型無線タグは、受信した搬送波信号を反射または後方散乱することにより、無線タグ読取装置に応答する。このとき反射波は、タグにおいて生成される変調信号により変調される。無線タグ読取装置は、タグにて変調された反射波を受信すると、その変調信号を復調し、さらに2値化により復号して、無線タグのメモリに記憶されたタグID(識別情報)等を認識する。
【0004】
無線タグ読取装置が無線タグから受信したデータ信号を復調する方式としては、直交復調方式が一般的である。例えば従来、受信したデータ信号から、同相成分信号(In-phase信号:以下、I信号と称する)と直交成分信号(Quadrature-phase信号:以下、Q信号と称する)とを出力する復調器と、このI信号とQ信号とを結合する結合器とを有し、変調された後方散乱信号を復調するために、I信号またはQ信号のうちの1つに対して位相を90°シフトさせて結合する方式が既に知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
ところで、近年、無線タグ読取装置と無線タグとの間の無線通信方式として、無線タグからの反射波の周波数を無線タグ読取装置からの送信波の周波数とは異なる周波数にずらす方式、いわゆるミラーサブキャリア方式が注目されている。この方式は、他の無線タグ読取装置から放射される電波によって無線タグからの弱い電波がかき消されないので、同一エリア内に複数のRFIDシステムを稼動できるメリットがある。
【特許文献1】特開平10−209912号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、たとえミラーサブキャリア方式を用いることで電波の干渉を避け易くしたとしても、無線タグ読取装置が受信する信号には、ノイズが混入することにより歪が生じ、波形の振幅が変化してしまうおそれがある。受信信号の波形にこのような歪が生じると、データ信号を2値化する段階で論理判定を誤る可能性がある。論理判定を誤った場合には、復号結果にも誤りを生じるため、無線タグのデータを正しく読み取ることができない。
【0007】
本発明はこのような事情に基づいてなされたもので、その目的とするところは、ミラーサブキャリア方式を用いて無線タグのデータを読み取る際の信頼度を高め得た無線タグ読取装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ミラーサブキャリア方式を用いて無線タグと無線通信を行うことにより、無線タグのデータを読み取る無線タグ読取装置において、無線タグからの受信信号を2値化する2値化手段と、この2値化手段により2値化された受信信号を所定ビット単位毎にデータシンボルとしてサンプリングするサンプリング手段と、このサンプリング手段によりサンプリングされたデータシンボルの復号に関わる中心2ビットの正誤を判定する判定手段と、この判定手段により誤りビットを検知すると、その誤りビットを反転させて修復する修復手段とを備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
かかる手段を講じた本発明によれば、ミラーサブキャリア方式を用いて無線タグのデータを読み取る際の信頼度を高め得た無線タグ読取装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を用いて説明する。
なお、この実施の形態は、直交復調方式により無線タグから受信したデータ信号を復調する無線タグ読取装置に本発明を適用した場合である。
【0011】
図1は本実施の形態における無線タグ読取装置10の概略構成を示すブロック図である。無線タグ読取装置10は、制御部11、通信部12、送信系デジタル信号処理部13、送信部14、方向性結合器15、ローパスフィルタ16、アンテナ17、受信部18、受信系デジタル信号処理部19及びPLL(Phase Lock1ed Loop)部20を備えている。
【0012】
制御部11は、前記通信部12、送信系デジタル信号処理部13、受信系デジタル信号処理部19及びPLL部20を接続している。また制御部11は、CPU(Central Processing Unit)やメモリを含み、予め記憶されたプログラムに従って動作する。すなわち制御部11は、通信部12を介してパソコン等の上位機器と通信を行う。また、PLL部20を制御して、搬送波周波数と同じ周波数のローカル信号を出力させる。さらに、送信系デジタル信号処理部13及び受信系デジタル信号処理部19を介して無線タグ(不図示)と無線通信を行い、この無線タグのメモリに記憶されたタグデータを読み取る。
【0013】
制御部11は、無線タグへの送信データを送信系デジタル信号処理部13に出力する。送信系デジタル信号処理部13は、この送信データをデジタル信号処理してベースバンド信号を生成し、このベースバンド信号を送信部14に出力する。送信部14は、変調手段としての変調器を備えており、PLL部20から入力されるローカル信号の搬送波を、送信部14から入力されるベースバンド信号で振幅変調する。そして、振幅変調された変調信号を、方向性結合器15に出力する。
【0014】
サーキュレータ等と称される方向性結合器15は、送信部14からの信号をローパスフィルタ16を介してアンテナ17に出力する機能と、アンテナ17からローパスフィルタ16を介して入力された信号を受信部18に出力する機能とを有する。アンテナ17は、ローパスフィルタ16を通過した変調信号に基づいて電波を放射する。また、無線タグから送信されるバックスキャッタ変調波を受信すると、この変調波に基づいた受信信号をローパスフィルタ16に出力する。
【0015】
受信部18は、アンテナ17で受信され、ローパスフィルタ16を通過した受信信号を方向性結合器15を介して入力すると、この受信信号を、周知のダイレクトコンバージョン方式で受信処理する。すなわち受信部18は、第1、第2のミキサ、第1、第2の可変利得増幅器、第1、第2のアナログ・デジタルコンバータ(以下、ADCと称する)、及び、90度位相シフト器を主体に構成される。第1、第2のミキサには、それぞれ無線タグからの受信信号が入力される。また、第1のミキサには、PLL部20からのローカル信号が入力され、第2のミキサにはPLL部20からのローカル信号が90度位相シフト器によって90度位相がシフトされたローカル信号が入力される。
【0016】
第1のミキサは、受信信号とローカル信号を混合し、ローカル信号と同相成分のI信号を生成する。第2のミキサは、受信信号と90度位相をシフトしたローカル信号を混合し、ローカル信号と直交成分のQ信号を生成する。第1のミキサから出力されるI信号は、第1の可変利得増幅器にて増幅された後、第1のADCでデジタル信号Ihに変換されて受信系デジタル信号処理部19に出力される。同様に、第2のミキサから出力されるQ信号は、第2の可変利得増幅器にて増幅された後、第2のADCでデジタル信号Qhに変換されて受信系デジタル信号処理部19に出力される。
【0017】
第1,第2のADCのサンプリング時間間隔は、変調された受信信号からデータを確実に取り出すために、変調された受信信号のレベルが変化しない最短時間の2分の1より短い時間に設定する必要がある。ここでは、サンプリング時間間隔を変調された受信信号のレベルが変化しない最短時間の4分の1の時間としている。換言すれば、変調された受信タグデータ信号のレベルが変化しない最小周波数の4倍のサンプリング周波数に設定している。
【0018】
受信系デジタル信号処理部19は、図2に示すように、第1,第2のデジタルフィルタ31、32、I/Q信号合成部33、及び、第1〜第3の復調部34〜36を主体に構成される。第1のデジタルフィルタ31には、前記受信部18の第1のADCで変換されたデジタル信号Ihが入力される。第2のデジタルフィルタ32には、前記受信部18の第2のADCで変換されたデジタル信号Qhが入力される。第1のデジタルフィルタ31で帯域制限されたデジタル信号Iは、I/Q信号合成部33と第2の復調部35に出力される。第2のデジタルフィルタ32で帯域制限されたデジタル信号Qは、I/Q信号合成部33と第3の復調部36に出力される。
【0019】
I/Q信号合成部33は、デジタル信号Ihを2乗するI信号2乗部と、デジタル信号Qhを2乗するQ信号2乗部と、I信号2乗部の出力とQ信号2乗部35の出力とを加算してデジタル信号I+Qを生成し、第1の復調部34に出力する加算部と、加算部からのデジタル信号I+Qの振幅が所定の閾値より低いレベルのときには、前記受信部18の第1及び第2の可変利得増幅器の利得を高くするように制御するAGC(Auto Gain Control)回路とから構成される。
【0020】
第1〜第3の復調部34〜36は、第1の復調部34がデジタル信号I+Qを処理するのに対し、第2の復調部35がデジタル信号Iを処理し、第3の復調部36がデジタル信号Qを処理する点を除いて構成が同一であるので、本実施の形態では、第1の復調部34についてのみ説明する。
【0021】
第1の復調部34は、2値化部41、サンプリングクロック生成部42、プリアンブル検出部43、シフトレジスタ44、論理修復部45、復号部46及びCRC(Cyclic Redundancy Check)エラー検出部47を主体に構成される。
【0022】
2値化部41は、デジタル信号I+Qが所定の閾値以上となる期間だけハイレベルとなる信号を生成し、この信号の立ち上がり毎に信号レベルを反転させて2値化信号を生成する。この2値化部41で生成された2値化信号は、サンプリングクロック生成部42、プリアンブル検出部43、シフトレジスタ44、論理修復部45及び復号部46に入力される。
【0023】
サンプリングクロック生成部42は、2値化部41からの2値化信号と同期したクロック信号を生成し、生成したクロック信号を制御部11、プリアンブル検出部43、シフトレジスタ44、論理修復部45、復号部46、CRCエラー検出部47に供給する。
【0024】
プリアンブル検出部43は、サンプリングクロック生成部42で生成されたクロック信号により、デジタル信号I+Qに含まれている特定パターンのプリアンブルを、予め設定されているプリアンブルパターンと比較することで検出する。プリアンブル検出部43は、プリアンブルを検出すると、制御部11にプリアンブル検出信号を出力する。プリアンブル検出信号を受信した制御部11は、復号部46に復号開始の指令信号を与える。
【0025】
シフトレジスタ44は、サンプリングクロック生成部42から与えられるクロック信号に同期して、2値化部41からの2値化信号を1ビットずつシフトすることで、所定ビット単位毎にデータシンボルとしてサンプリングする。
【0026】
論理修復部45は、シフトレジスタ44に格納されたデータシンボルの所定ビットについて正誤を判定し、誤りビットを検知するとその誤りビットを反転させて修復する。
【0027】
復号部46は、シフトレジスタ44に格納されたデータシンボルを復号する。そして、復号したデータを制御部11に供給する。制御部11は、CRCエラー検出部47に復号したデータを与える。CRCエラー検出部47は、復号したデータのチェックコードからCRCエラーを検出する。
【0028】
受信系デジタル信号処理部19の要部における信号波形を図3に示す。同図において、信号S1は、第1のデジタルフィルタ31で帯域制限されたデジタル信号Iを示し、信号S2は、第2のデジタルフィルタ32で帯域制限されたデジタル信号Qを示し、信号S3は、I/Q信号合成部33で合成されたデジタル信号I+Qを示し、信号S4は、第1の復調部34の2値化部41において、所定の閾値T以上となる期間だけハイレベルとなる信号を示し、信号S5は、この信号S4の立ち上がり毎に信号レベルを反転させて生成された2値化信号を示している。
【0029】
このような構成の無線タグ読取装置10は、無線タグと通信を行う際には、先ず、無変調波を無線タグに送信して無線タグに電力を供給する。すなわち、PLL部20で生成したローカル信号を送信部14の変調器に供給するとともに、この変調器の振幅を最大レベルにする。そうすると、変調器からの信号が電力増幅器で電力増幅され、方向性結合器15からローパスフィルタ16を通過して不要な高周波成分が除去された後、アンテナ17に供給される。かくして、アンテナ17から無線タグに対して無変調波が電波として放射される。
【0030】
次に、無線タグにデータを送信するときには、無線タグ読取装置100は、PLL部20で生成したローカル信号を送信部14の変調器に供給した状態で、制御部11から送信系デジタル信号処理部13の符号化部に送信データを送信する。そうすると、送信データが、符号化部で例えばPIE符号により符号化され、DACでアナログ信号に変換され、LPFを介して変調器に入力される。これにより、変調器では、送信データに基づいてローカル信号が振幅変調され、振幅変調された信号が、電力増幅器、方向性結合器15、ローパスフィルタ16を介してアンテナ17から無線タグに無線送信される。
【0031】
無線タグは、無線タグ読取装置10からのデータを受信し終わると、続いて、無線タグ読取装置10からの無変調波の送信時にバックスキャッタにより振幅変調を行ってタグデータの応答信号を送信する。この応答信号は、例えば、シンボル同期をとるためのプリアンブルと、このプリアンブルの後に続くデータ部と、このデータ部の後に付されるCRCビット部とによって構成される。この際、無線タグは、ミラーサブキャリア方式に従い、無線タグ読取装置からの送信波の周波数とは異なる周波数でタグデータの応答信号を送信する。
【0032】
無線タグ読取装置のアンテナ17が無線タグからの応答信号を受信すると、この信号は、ローパスフィルタ16で不要な高周波成分が除去された後、方向性結合器15を介して受信部18に供給される。受信部18では、無線タグからの応答信号から、PLL部20からのローカル信号と同相成分のI信号と直交成分のQ信号とが生成される。
【0033】
受信部18で生成されたI信号とQ信号は、受信系デジタル信号処理部19に供給される。そして、I信号は、デジタルフィルタ31を介して、I/Q信号合成部33と第2の復調部35に入力される。Q信号は、デジタルフィルタ32を介して、I/Q信号合成部33と第3の復調部36に入力される。I/Q信号合成部33に入力されたI信号及びQ信号は、前述したようにそれぞれ2乗され、加算器にて加算された後、第1の復調部34に入力される。
【0034】
第1の復調部34では、二値化部41において、第1のデジタルフィルタ31で帯域制限されたデジタル信号I+Qが所定の閾値以上となる期間だけハイレベルとなる信号が生成され、さらに、この信号の立ち上がり毎に信号レベルが反転する2値化信号が生成される(2値化手段)。生成された2値化信号は、サンプリングクロック生成部42、プリアンブル検出部43、シフトレジスタ44、論理修復部45及び復号部46に入力される。
【0035】
サンプリングクロック生成部42では、2値化部41からの2値化信号と同期したクロック信号が生成される。生成されたクロック信号は、制御部11、プリアンブル検出部43、シフトレジスタ44、論理修復部45、復号部46、CRCエラー検出部47に供給される。
【0036】
プリアンブル検出部43では、サンプリングクロック信号に同期してデジタル信号I+Qからプリアンブルの検出が行われる。そして、プリアンブルが検出されると、シフトレジスタ44、論理修復部45及び復号部46において、ミラーサブキャリア方式による受信タグデータの復号が開始される。
以下、ミラーサブキャリア方式による受信タグデータの復号について説明する。
【0037】
図4は、無線タグから送信されるタグデータ応答信号D1,D2の一例である。タグデータ応答信号D1は、プリアンブルに続くデータシンボルd1,d2が “0”,“0”の場合であり、タグデータ応答信号D2は、プリアンブルに続くデータシンボルd1,d2が“0”,“1”の場合である。
【0038】
ミラーサブキャリア方式を用いる場合、無線タグ読取装置10は、無線タグに対してミラーサブキャリア信号の指数Mを指定する必要がある。この指数Mは、“2”,“4”,“8”というように“2”のべき乗の値をとる。指数Mの指定を受けた無線タグは、そのM個のサブキャリアで1つのデータシンボルを符号化する。こうすることにより、無線タグからの反射波の周波数は、無線タグ読取装置10からの送信波の周波数とは異なる。指数Mの値が大きければ大きいほど、周波数の変化量は大きい。
【0039】
サブキャリアの1周期は、図4中区間tで示すように、2ビット分である。すなわち、図4の例は、4つのサブキャリアで1つのデータシンボルd1,d2を符号化している。つまり、ミラーサブキャリア信号の指数Mが“4”の場合である。因みに、ミラーサブキャリア信号の指数Mが“8”の場合は、8個のサブキャリアで1つのデータシンボルを符号化する。
【0040】
ミラーサブキャリア方式で符号化されたデータシンボルd1,d2の復号としては、データシンボルd1,d2の中心の位相に注目する。データシンボルd1,d2の中心で位相変化がなければデータ“1”に復号し、位相変化があればデータ“0”に復号する。
【0041】
図5は、ミラーサブキャリア信号の指数Mが“4”の場合の復号結果を示す模式図である。サンプリングクロック生成部42では、サブキャリアの伝送速度に対して2倍のサンプリングクロック信号が生成される。シフトレジスタ44では、このサンプリングクロック信号に同期して、2値化部41で生成された2値化信号が1ビットずつシフトされてサンプリングされる。そして、8個のセルREG[7]〜REG[0]にそれぞれ1ビットずつサンプリングされると、この計8ビットのデータシンボルについて、復号部46で復号される。
【0042】
具体的には、データシンボルの復号に関わる中心の2ビット、つまりはセルREG[4]とセルREG[3]の隣接する2つのセルに格納された2ビットのデータが照合される。そして、“0”と“0”または“1”と“1”というように同値である場合には、位相変化がないので、“1”と復号される。これに対し、“0”と“1”または“1”と“0”というように同値でない場合には、位相変化があるので、“0”と復号される。
【0043】
ただし、無線タグ読取装置が受信する信号には、ノイズが混入することにより歪が生じ、波形の振幅が変化してしまうおそれがある。受信信号の波形にこのような歪が生じると、2値化部41でデータ信号を2値化する段階で論理判定を誤る可能性がある。論理判定を誤った場合には、復号結果にも誤りを生じる。そこで本実施の形態では、復号部46で復号を行う前に、論理修復部45において、シフトレジスタ44にサンプリングされたデータシンボルの復号に関わる中心2ビットの正誤を判定し(判定手段)、誤りビットを検知すると、その誤りビットを反転させて修復するようにしている(修復手段)。
【0044】
図6は、無線タグに対してミラーサブキャリア信号の指数Mを“4”と指定した場合の制御部11のタグデータ受信処理を示す流れ図である。なお、便宜上、第1の復調部34に対する制御部11の処理として説明しているが、第2の復調部35及び第3の復調部に対しても、取扱う信号がI信号あるいはQ信号と異なるだけで、その他は同一に処理される。従って、ここではその説明は省略する。
【0045】
先ず、制御部11は、ステップST1として受信したタグデータからプリアンブルが検出されるのを待機する。第1の復調部34のプリアンブル検出部43において、2値化されたデジタル信号I+Qからプリアンブルが検出されると、制御部11は、ステップST2として内部メモリのカウンタCを“0”にリセットする。
【0046】
次に、制御部11は、ステップST3としてサンプリングクロック信号に同期してシフトレジスタ44を上位にシフトして、最下位のセルREG[0]を空ける。そして、ステップST4としてプリアンブルに続いてサンプリングされたデータ信号の1ビットを、その空いた最下位のセルREG[0]に格納する。また、ステップST5として上記カウンタCを“1”だけカウントアップする。制御部11は、カウンタCが“8”に達するまで、上記ST3〜ST5の各処理を繰返し実行する(サンプリング手段)。
【0047】
ステップST6として、カウンタCが“8”に達したならば、制御部11は、ステップST7として論理修復部45に対して判定・修復処理を実行させる。判定・修復処理が終了すると、次に、制御部11は、ステップST8として復号部46に対して復号を指令する。復号が終了すると、次に、制御部11は、ステップST9として所定の数、例えば無線タグの識別情報に相当する数のデータシンボルについて復号を終えたか否かを判断する。復号を終えていない場合には、ステップST2の処理に戻って、ST2〜ST8の処理を再度実行する。所定の数のデータシンボルを復号したならば、この受信処理を終了する。
【0048】
図7は、論理修復部45において実行される判定・修復処理の手順を示す流れ図である。論理修復部45は、ミラーサブキャリア方式による符号化ではサブキャリアの中心で位相が反転するというミラーサブキャリア方式の特性を利用して、論理修復を行う。
【0049】
はじめに、シフトレジスタ44の各セルREG[7]〜[0]には、前記ステップST2〜ST6の処理によりそれぞれ1ビットのデータが格納されている。すなわち、8ビットからなるデータシンボルが格納されている。ミラーサブキャリア方式を用いた場合は、8ビットからなるデータシンボルの中心の2ビット、すなわち、セルREG[4]に格納されているビットと、セルREG[3]に格納されているビットとの間で位相変化が生じているか否かによって復号結果が異なる。
【0050】
そこで、論理修復部45においては、先ず、データシンボルの復号に関わる中心2ビットのうち上位のセルREG[4]に格納されたビットの正誤を、以下のステップST11〜ST14の手順で判定する。
【0051】
ステップST11では、このセルREG[4]に格納されたビットに対して、このビットに対してそれより外側(上位)に隣接するセルREG[5]に格納されたビットが反転しているか否かを判定する(第1の判定手段)。ビットが反転している場合には、論理修復部45は、セルREG[4]及びセルREG[5]に格納されたビットは正しいと判定する。これに対し、ビットが反転していない場合には、ステップST12の判定処理に進む。
【0052】
ステップST12では、上記ステップST11の判定処理で用いたセルREG[4]とセルREG[5]にそれぞれ格納された2ビットと、これら2ビットを挟む前後(上位と下位)のビット、つまりはセルREG[6]とセルREG[3]に格納された2ビットの計4ビットが何れも同値であるか否かを判定する。そして、これら4ビットがいずれも同値である場合には、ステップST21としてその中央の2ビット、すなわちセルREG[4]のビットとセルREG[5]のビットとのうち、データシンボルの復号に関わる中心の2ビットより外側(上位)に隣接するビット、すなわちセルREG[5]のビットを反転させる(第3の修復手段)。
【0053】
これに対し、少なくとも1つのビットが同値でない場合には、ステップST13の判定処理に進む。
【0054】
ステップST13では、上記ステップST11の判定処理で用いたセルREG[4]とセルREG[5]にそれぞれ格納された2ビットのうち上位のビット、すなわちセルREG[5]に格納されたビットと、その両側(上位と下位)に隣接するビット、すなわちセルREG[6]及びセルREG[4]にそれぞれ格納された2ビットの計3ビットが同値であるか否かを判定する。そして、これら3ビットがいずれも同値である場合には、ステップST22としてその中央のビット、すなわちセルREG[5]のビットを反転させる(第1の修復手段)。
【0055】
これに対し、少なくとも1つのビットが同値でない場合には、ステップST14の判定処理に進む。
【0056】
ステップST14では、上記ステップST11の判定処理で用いたセルREG[4]とセルREG[5]にそれぞれ格納された2ビットのうち下位のビット、すなわちセルREG[4]に格納されたビットと、その両側(上位と下位)に隣接するビット、すなわちセルREG[5]及びセルREG[3]にそれぞれ格納された2ビットの計3ビットが同値であるか否かを判定する。そして、これら3ビットがいずれも同値である場合には、ステップST23としてその中央のビット、すなわちセルREG[4]のビットを反転させる(第1の修復手段)。
【0057】
ステップST14にて、少なくとも1つのビットが同値でない場合には、論理修復部45は、セルREG[4]及びセルREG[5]に格納されたビットは正しいと判定する。
【0058】
こうして、ステップST11〜ST14の手順によりセルREG[4]及びセルREG[5]に格納されたビットは正しいと判定するか、ステップST21,ST22またはST23の手順によりセルREG[4]またはセルREG[5]に格納されたビットを修復したならば、次に、論理修復部45は、データシンボルの復号に関わる中心2ビットのうち下位のセルREG[3]に格納されたビットの正誤を、以下のステップST15〜ST18の手順で判定する。
【0059】
ステップST15では、このセルREG[3]に格納されたビットに対して、このビットに対してそれより外側(下位)に隣接するセルREG[2]に格納されたビットが反転しているか否かを判定する(第2の判定手段)。ビットが反転している場合には、論理修復部45は、セルREG[3]及びセルREG[2]に格納されたビットは正しいと判定する。これに対し、ビットが反転していない場合には、ステップST16の判定処理に進む。
【0060】
ステップST16では、上記ステップST15の判定処理で用いたセルREG[3]とセルREG[2]とにそれぞれ格納された2ビットと、これら2ビットを挟む前後(上位と下位)のビット、つまりはセルREG[4]とセルREG[1]とにそれぞれ格納された2ビットの計4ビットが、何れも同値であるか否かを判定する。そして、これら4ビットがいずれも同値である場合には、ステップST24としてその中央の2ビット、すなわちセルREG[3]のビットとセルREG[2]のビットとのうち、データシンボルの復号に関わる中心の2ビットより外側(下位)に隣接するビット、すなわちセルREG[2]のビットを反転させる(第4の修復手段)。
【0061】
これに対し、少なくとも1つのビットが同値でない場合には、ステップST17の判定処理に進む。
【0062】
ステップST17では、上記ステップST15の判定処理で用いたセルREG[3]とセルREG[2]にそれぞれ格納された2ビットのうち一方(上位)のビット、すなわちセルREG[3]に格納されたビットと、その両側(上位と下位)に隣接するビット、すなわちセルREG[4]及びセルREG[2]にそれぞれ格納された2ビットの計3ビットが同値であるか否かを判定する。そして、これら3ビットがいずれも同値である場合には、ステップST25としてその中央のビット、すなわちセルREG[3]のビットを反転させる(第2の修復手段)。
【0063】
これに対し、少なくとも1つのビットが同値でない場合には、ステップST18の判定処理に進む。
【0064】
ステップST18では、上記ステップST15の判定処理で用いたセルREG[3]とセルREG[2]にそれぞれ格納された2ビットのうち他方(下位)のビット、すなわちセルREG[2]に格納されたビットと、その両側(上位と下位)に隣接するビット、すなわちセルREG[3]及びセルREG[1]にそれぞれ格納された2ビットの計3ビットが同値であるか否かを判定する。そして、これら3ビットがいずれも同値である場合には、ステップST26としてその中央のビット、すなわちセルREG[2]のビットを反転させる(第2の修復手段)。
【0065】
ステップST18にて、少なくとも1つのビットが同値でない場合には、論理修復部45は、セルREG[3]及びセルREG[2]に格納されたビットは正しいと判定する。
【0066】
こうして、ステップST15〜ST18の手順によりセルREG[3]及びセルREG[2]に格納されたビットは正しいと判定するか、ステップST24,ST25またはST26の手順によりセルREG[3]またはセルREG[2]に格納されたビットを修復したならば、論理修復部45は、判定・修復処理の終了を制御部11に通知する。
【0067】
図8は、復号部46において実行される復号処理の手順を示す流れ図である。復号部46は、ステップST31として、データシンボルの復号に関わる中心2ビット、すなわちセルREG[4]とセルREG[3]とにそれぞれ格納された2ビットをチェックする。そして、両ビットが同値でない場合には、ステップST32としてシフトレジスタ44に格納されたデータシンボルをデータ“0”と復号する。これに対し、同値の場合には、ステップST33としてシフトレジスタ44に格納されたデータシンボルをデータ“1”と復号する。
【0068】
図9は、上述したタグデータ受信処理に関わる主要なデータ信号の一例を示す波形図である。同図において、(a)は、受信タグデータのデータシンボルを示している。(b)は、(a)のデータシンボルに対応したタグデータ応答信号(変調信号)を示している。(c)は、(b)のタグデータ応答信号に対応した第1の復調部34への入力信号を示している。(d)は、(c)の入力信号を閾値Tで2値化する2値化部41の出力信号を示している。(e)は、(d)の2値化信号の図中丸印で示されるタイミングでサンプリングされたデータが格納されるシフトレジスタ44のセルREG[7]〜REG[0]を示している。
【0069】
また、(f)は、シフトレジスタ44の各セルREG[7]〜REG[0]に(c)のサンプリングデータが格納されたときの従来の論理判定結果を示しており、(g)は、従来の論理判定結果に対する復号結果を示している。
【0070】
一方、(h)は、シフトレジスタ44の各セルREG[7]〜REG[0]に(c)のサンプリングデータが格納されたときの本実施の形態の論理判定結果を示しており、(i)は、本実施の形態の論理判定結果に対する復号結果を示している。
【0071】
はじめに、本実施の形態では、2値化信号をサンプリングしてシフトレジスタ44に格納した1データシンボルに相当する8ビットデータについて、論理修復部45で判定・修復処理を実行する。このため、論理判定結果を得るまでには1データシンボル分(区間t0〜t1)の遅延が生じる。
【0072】
区間t1〜t2では、第1の復調部34への入力信号において、図中矢印X1で示すような歪が生じている。このため、シフトレジスタ44に格納された1データシンボルの8ビットデータは“01000101”となる。この場合、従来は、中心の2ビットが“00”であるため、復号結果は[1]となる(区間t1〜t2を参照)。
【0073】
これに対し、本実施の形態では、論理修復部45で実行される判定・修復処理のステップST14,ST23の処理により、セルREG[4]のビットデータが“0”から“1”に反転される。これにより、復号結果は[0]となる(区間t2〜t3を参照)。
【0074】
また、区間t3〜t4では、第1の復調部34への入力信号において、図中矢印X2で示すような歪が生じている。このため、シフトレジスタ44に格納された1データシンボルの8ビットデータは“10100001”となる。この場合、従来は、中心の2ビットが“00”であるため、復号結果は[1]となる(区間t1〜t2を参照)。
【0075】
これに対し、本実施の形態では、論理修復部45で実行される判定・修復処理のステップST16,ST24の処理により、セルREG[2]のビットデータが“0”から“1”に反転される。これにより、復号結果は[1]となる(区間t4〜を参照)。
【0076】
すなわち、無線タグデータ“0011”に対する受信信号に歪X1,X2が生じていた場合、従来の論理判定結果では“0111”となって誤りが生じ、無線タグデータを正しく読み取れなかったが、本実施の形態では、判定・修復処理の実行により論理判定結果は“0011”となり、無線タグデータを正しく読み取ることができる。
【0077】
このように、ミラーサブキャリア方式を用いて無線タグのデータを読み取る際に、受信信号に歪が生じていたためにこの信号を2値化する段階で1ビットの誤りが生じたとしても、本実施の形態によれば、そのビットの誤りを自動的に修復して復号を行うので、信頼性の高い無線タグ読取装置を提供することができる。
【0078】
なお、上記実施の形態では、無線タグに対してミラーサブキャリア信号の指数Mを“4”と指定した場合の処理について説明したが、本発明を適用できる指数Mは、“4”に限定されるものではなく、“4”以上であれば適用できるものである。
【0079】
そこで次に、無線タグに対してミラーサブキャリア信号の指数Mを“4”と指定した場合について、図10〜図12を用いて説明する。
【0080】
図10は、無線タグに対してミラーサブキャリア信号の指数Mを“8”と指定した場合の制御部11のタグデータ受信処理を示す流れ図である。なお、この場合も、第1の復調部34に対する制御部11の処理として説明する。
【0081】
制御部11は、ステップST41として受信したタグデータからプリアンブルが検出されるのを待機する。第1の復調部34のプリアンブル検出部43において、2値化されたデジタル信号I+Qからプリアンブルが検出されると、制御部11は、ステップST42として内部メモリのカウンタCを“0”にリセットする。
【0082】
次に、制御部11は、ステップST43としてサンプリングクロック信号に同期してシフトレジスタ44を上位にシフトして、最下位のセルREG[0]を空ける。そして、ステップST44としてプリアンブルに続いてサンプリングされたデータ信号の1ビットを、その空いた最下位のセルREG[0]に格納する。また、ステップST45として上記カウンタCを“1”だけカウントアップする。
【0083】
ここで、前述したように、ミラーサブキャリア信号の指数Mが“8”の場合は、8個のサブキャリアで1つのデータシンボルを符号化する。サブキャリアの1周期は、2ビット分である。したがって、指数Mを“8”と指定した場合には、カウンタCが“16”を計数するまで、ステップST43〜ST45の処理を繰り返す。
【0084】
ステップST46として、カウンタCが“16”に達したならば、制御部11は、ステップST47として論理修復部45に対して判定・修復処理を実行させる。判定・修復処理が終了すると、次に、制御部11は、ステップST48として復号部46に対して復号を指令する。復号が終了すると、次に、制御部11は、ステップST49として所定の数、例えば無線タグの識別情報に相当する数のデータシンボルについて復号を終えたか否かを判断する。復号を終えていない場合には、ステップST42の処理に戻って、ST42〜ST48の処理を再度実行する。所定の数のデータシンボルを復号したならば、この受信処理を終了する。
【0085】
図11は、論理修復部45において実行される判定・修復処理の手順を示す流れ図である。
【0086】
はじめに、シフトレジスタ44の各セルREG[14]〜[0]には、前記ステップST42〜ST46の処理によりそれぞれ1ビットのデータが格納されている。すなわち、16ビットからなるデータシンボルが格納されている。ミラーサブキャリア方式を用いた場合は、16ビットからなるデータシンボルの中心の2ビット、すなわち、セルREG[8]に格納されているビットと、セルREG[7]に格納されているビットとの間で位相変化が生じているか否かによって復号結果が異なる。
【0087】
そこで、論理修復部45においては、先ず、データシンボルの復号に関わる中心2ビットのうち上位のセルREG[8]に格納されたビットの正誤を、以下のステップST51〜ST54の手順で判定する。
【0088】
ステップST51では、このセルREG[8]に格納されたビットに対して、このビットに対してそれより外側(上位)に隣接するセルREG[9]に格納されたビットが反転しているか否かを判定する(第1の判定手段)。ビットが反転している場合には、論理修復部45は、セルREG[8]及びセルREG[9]に格納されたビットは正しいと判定する。これに対し、ビットが反転していない場合には、ステップST52の判定処理に進む。
【0089】
ステップST52では、上記ステップST51の判定処理で用いたセルREG[8]とセルREG[9]にそれぞれ格納された2ビットと、これら2ビットを挟む前後(上位と下位)のビット、つまりはセルREG[10]とセルREG[7]に格納された2ビットの計4ビットが何れも同値であるか否かを判定する。そして、これら4ビットがいずれも同値である場合には、ステップST61としてその中央の2ビット、すなわちセルREG[8]のビットとセルREG[9]のビットとのうち、データシンボルの復号に関わる中心の2ビットより外側(上位)に隣接するビット、すなわちセルREG[9]のビットを反転させる(第3の修復手段)。
【0090】
これに対し、少なくとも1つのビットが同値でない場合には、ステップST53の判定処理に進む。
【0091】
ステップST53では、上記ステップST51の判定処理で用いたセルREG[8]とセルREG[9]にそれぞれ格納された2ビットのうち上位のビット、すなわちセルREG[9]に格納されたビットと、その両側(上位と下位)に隣接するビット、すなわちセルREG[10]及びセルREG[8]にそれぞれ格納された2ビットの計3ビットが同値であるか否かを判定する。そして、これら3ビットがいずれも同値である場合には、ステップST62としてその中央のビット、すなわちセルREG[9]のビットを反転させる(第1の修復手段)。
【0092】
これに対し、少なくとも1つのビットが同値でない場合には、ステップST54の判定処理に進む。
【0093】
ステップST54では、上記ステップST51の判定処理で用いたセルREG[8]とセルREG[9]にそれぞれ格納された2ビットのうち下位のビット、すなわちセルREG[8]に格納されたビットと、その両側(上位と下位)に隣接するビット、すなわちセルREG[9]及びセルREG[7]にそれぞれ格納された2ビットの計3ビットが同値であるか否かを判定する。そして、これら3ビットがいずれも同値である場合には、ステップST63としてその中央のビット、すなわちセルREG[8]のビットを反転させる(第1の修復手段)。
【0094】
ステップST54にて、少なくとも1つのビットが同値でない場合には、論理修復部45は、セルREG[8]及びセルREG[9]に格納されたビットは正しいと判定する。
【0095】
こうして、ステップST51〜ST54の手順によりセルREG[8]及びセルREG[9]に格納されたビットは正しいと判定するか、ステップST61,ST62またはST63の手順によりセルREG[8]またはセルREG[9]に格納されたビットを修復したならば、次に、論理修復部45は、データシンボルの復号に関わる中心2ビットのうち下位のセルREG[7]に格納されたビットの正誤を、以下のステップST55〜ST58の手順で判定する。
【0096】
ステップST55では、このセルREG[7]に格納されたビットに対して、このビットに対してそれより外側(下位)に隣接するセルREG[6]に格納されたビットが反転しているか否かを判定する(第2の判定手段)。ビットが反転している場合には、論理修復部45は、セルREG[7]及びセルREG[6]に格納されたビットは正しいと判定する。これに対し、ビットが反転していない場合には、ステップST56の判定処理に進む。
【0097】
ステップST56では、上記ステップST55の判定処理で用いたセルREG[7]とセルREG[6]とにそれぞれ格納された2ビットと、これら2ビットを挟む前後(上位と下位)のビット、つまりはセルREG[8]とセルREG[5]とにそれぞれ格納された2ビットの計4ビットが、何れも同値であるか否かを判定する。そして、これら4ビットがいずれも同値である場合には、ステップST64としてその中央の2ビット、すなわちセルREG[7]のビットとセルREG[6]のビットとのうち、データシンボルの復号に関わる中心の2ビットより外側(下位)に隣接するビット、すなわちセルREG[6]のビットを反転させる(第4の修復手段)。
【0098】
これに対し、少なくとも1つのビットが同値でない場合には、ステップST57の判定処理に進む。
【0099】
ステップST57では、上記ステップST55の判定処理で用いたセルREG[7]とセルREG[6]にそれぞれ格納された2ビットのうち一方(上位)のビット、すなわちセルREG[7]に格納されたビットと、その両側(上位と下位)に隣接するビット、すなわちセルREG[8]及びセルREG[6]にそれぞれ格納された2ビットの計3ビットが同値であるか否かを判定する。そして、これら3ビットがいずれも同値である場合には、ステップST65としてその中央のビット、すなわちセルREG[7]のビットを反転させる(第2の修復手段)。
【0100】
これに対し、少なくとも1つのビットが同値でない場合には、ステップST58の判定処理に進む。
【0101】
ステップST58では、上記ステップST55の判定処理で用いたセルREG[7]とセルREG[6]にそれぞれ格納された2ビットのうち他方(下位)のビット、すなわちセルREG[6]に格納されたビットと、その両側(上位と下位)に隣接するビット、すなわちセルREG[7]及びセルREG[5]にそれぞれ格納された2ビットの計3ビットが同値であるか否かを判定する。そして、これら3ビットがいずれも同値である場合には、ステップST66としてその中央のビット、すなわちセルREG[6]のビットを反転させる(第2の修復手段)。
【0102】
ステップST58にて、少なくとも1つのビットが同値でない場合には、論理修復部45は、セルREG[7]及びセルREG[6]に格納されたビットは正しいと判定する。
【0103】
こうして、ステップST55〜ST58の手順によりセルREG[7]及びセルREG[6]に格納されたビットは正しいと判定するか、ステップST64,ST65またはST66の手順によりセルREG[7]またはセルREG[6]に格納されたビットを修復したならば、論理修復部45は、判定・修復処理の終了を制御部11に通知する。
【0104】
図12は、復号部46において実行される復号処理の手順を示す流れ図である。復号部46は、ステップST71として、データシンボルの復号に関わる中心2ビット、すなわちセルREG[8]とセルREG[7]とにそれぞれ格納された2ビットをチェックする。そして、両ビットが同値でない場合には、ステップST72としてシフトレジスタ44に格納されたデータシンボルをデータ“0”と復号する。これに対し、同値の場合には、ステップST73としてシフトレジスタ44に格納されたデータシンボルをデータ“1”と復号する。
【0105】
図13は、上述したタグデータ受信処理に関わる主要なデータ信号の一例を示す波形図である。同図において、(a)は、受信タグデータのデータシンボルを示している。(b)は、(a)のデータシンボルに対応したタグデータ応答信号(変調信号)を示している。(c)は、(b)のタグデータ応答信号に対応した第1の復調部34への入力信号を示している。(d)は、(c)の入力信号を閾値Tで2値化する2値化部41の出力信号を示している。(e)は、(d)の2値化信号の図中丸印で示されるタイミングでサンプリングされたデータが格納されるシフトレジスタ44のセルREG[15]〜REG[0]を示している。
【0106】
また、(f)は、シフトレジスタ44の各セルREG[15]〜REG[0]に(c)のサンプリングデータが格納されたときの従来の論理判定結果を示しており、(g)は、従来の論理判定結果に対する復号結果を示している。
【0107】
一方、(h)は、シフトレジスタ44の各セルREG[15]〜REG[0]に(c)のサンプリングデータが格納されたときの本実施の形態の論理判定結果を示しており、(i)は、本実施の形態の論理判定結果に対する復号結果を示している。
【0108】
はじめに、本実施の形態では、2値化信号をサンプリングしてシフトレジスタ44に格納した1データシンボルに相当する16ビットデータについて、論理修復部45で判定・修復処理を実行する。このため、論理判定結果を得るまでには1データシンボル分(区間t0〜t1)の遅延が生じる。
【0109】
区間t1〜t2では、第1の復調部34への入力信号において、図中矢印Y1で示すような歪が生じている。このため、シフトレジスタ44に格納された1データシンボルの16ビットデータは“0101010001010101”となる。この場合、従来は、中心の2ビットが“00”であるため、復号結果は[1]となる(区間t1〜t2を参照)。
【0110】
これに対し、本実施の形態では、論理修復部45で実行される判定・修復処理のステップST54,ST63の処理により、セルREG[8]のビットデータが“0”から“1”に反転される。これにより、復号結果は[0]となる(区間t2〜t3を参照)。
【0111】
また、区間t3〜t4では、第1の復調部34への入力信号において、図中矢印Y2で示すような歪が生じている。このため、シフトレジスタ44に格納された1データシンボルの16ビットデータは“1010101000010101”となる。この場合、従来は、中心の2ビットが“00”であるため、復号結果は[1]となる(区間t1〜t2を参照)。
【0112】
これに対し、本実施の形態では、論理修復部45で実行される判定・修復処理のステップST56,ST64の処理により、セルREG[6]のビットデータが“0”から“1”に反転される。これにより、復号結果は[1]となる(区間t4〜を参照)。
【0113】
すなわち、無線タグデータ“0011”に対する受信信号に歪Y1,Y2が生じていた場合、従来の論理判定結果では“0111”となって誤りが生じ、無線タグデータを正しく読み取れなかったが、本実施の形態では、判定・修復処理の実行により論理判定結果は“0011”となり、無線タグデータを正しく読み取ることができる。
【0114】
なお、この発明は前記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。
【0115】
例えば、前記実施の形態では、受信系デジタル信号処理部19において、I/Q信号合成部33で合成されたデジタル信号I+Q(図3の信号S3)から、第1の復調部34の2値化部41において、所定の閾値T以上となる期間だけハイレベルとなる信号S4を生成し、さらに、この信号S4の立ち上がり毎に信号レベルを反転させて2値化信号S5を生成したが、信号S4が閾値T以下から閾値Tより大きくなる立ち上がりで信号レベルを反転させる処理を行って、復調のための信号S5を生成してもよい。
【0116】
また、前記実施の形態では、2値化部41において、予め設定された閾値Tを使用して2値化を行ったが、閾値Tを、2値化する時間以前のデータを利用して作成してもよい。例えば、2値化する時間の5サンプリング前のデータから2値化するサンプリングデータまでの連続する6サンプリングデータを平均した値から閾値Tを算出し、この閾値Tを使用して2値化をしてもよい。
【0117】
また、前記実施の形態では、受信部18における第1,第2のADCのサンプリング周波数を、変調された受信タグデータ信号のレベルが変化しない最小周波数の4倍としたが、サンプリング周波数をこれより高くしてもよい。サンプリング周波数を高くすることにより、変調された受信タグデータ信号の周波数成分とサンプリング周波数の周波数差を広げることができるため、アンチエイリアシングフィルタの構成が簡易になる。
【0118】
この他、前記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を組合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】本発明の一実施の形態における無線タグ読取装置10の概略構成を示すブロック図。
【図2】同実施の形態における受信系デジタル信号処理部の要部構成を示すブロック図。
【図3】同実施の形態の受信系デジタル信号処理部において、主要な信号波形を示すタイミング図。
【図4】同実施の形態において、無線タグから送信されるタグデータ応答信号の一例を示すタイミング図。
【図5】同実施の形態において、ミラーサブキャリア信号の指数Mが“4”の場合の復号結果を示す模式図。
【図6】同実施の形態において、無線タグに対してミラーサブキャリア信号の指数Mを“4”と指定した場合の制御部のタグデータ受信処理を示す流れ図。
【図7】図6の場合において、論理修復部において実行される判定・修復処理の手順を示す流れ図。
【図8】図6の場合において、復号部において実行される復号処理の手順を示す流れ図。
【図9】図6の場合において、タグデータ受信処理に関わる主要なデータ信号波形の一例を示すタイミング図
【図10】同実施の形態において、無線タグに対してミラーサブキャリア信号の指数Mを“8”と指定した場合の制御部のタグデータ受信処理を示す流れ図。
【図11】図10の場合において、論理修復部において実行される判定・修復処理の手順を示す流れ図。
【図12】図10の場合において、復号部において実行される復号処理の手順を示す流れ図。
【図13】図10の場合において、タグデータ受信処理に関わる主要なデータ信号波形の一例を示すタイミング図
【符号の説明】
【0120】
10…無線タグ読取装置、11…制御部、12…通信部、13…送信系デジタル信号処理部、14…送信部、15…方向性結合器、16…ローパスフィルタ、17…アンテナ、18…受信部、19…受信系デジタル信号処理部、20…PLL部、31,32…デジタルフィルタ、33…I/Q信号結合部、34,35,36…第1〜第3の復調部、41…2値化部、42…サンプリングクロック生成部、43…プリアンブル検出部、44…シフトレジスタ、45…論理修復部、46…復号部46、47…CRCエラー検出部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミラーサブキャリア方式を用いて無線タグと無線通信を行うことにより、前記無線タグのデータを読み取る無線タグ読取装置において、
前記無線タグからの受信信号を2値化する2値化手段と、
この2値化手段により2値化された受信信号を所定ビット単位毎にデータシンボルとしてサンプリングするサンプリング手段と、
このサンプリング手段によりサンプリングされたデータシンボルの復号に関わる中心2ビットの正誤を判定する判定手段と、
この判定手段により誤りビットを検知すると、その誤りビットを反転させて修復する修復手段と、
を具備したことを特徴とする無線タグ読取装置。
【請求項2】
前記判定手段は、
前記サンプリング手段によりサンプリングされたデータシンボルの復号に関わる中心2ビットの一方のビットに対して、それより外側に隣接するビットが反転しているか否かを判定する第1の判定手段と、前記サンプリング手段によりサンプリングされたデータシンボルの復号に関わる中心2ビットの他方のビットに対して、それより外側に隣接するビットが反転しているか否かを判定する第2の判定手段とを備え、
前記修復手段は、
前記第1の判定手段により互いに隣接する2ビットが反転していないと判定されると、これら2ビットについて、それぞれその両側に隣接するビットを含む3ビットが同値であるか否かを判定し、同値であればその中央のビットを反転させる第1の修復手段と、前記第2の判定手段により互いに隣接する2ビットが反転していないと判定されると、これら2ビットについて、それぞれその両側に隣接するビットを含む3ビットが同値であるか否かを判定し、同値であればその中央のビットを反転させる第2の修復手段とを備えたことを特徴とする請求項1記載の無線タグ読取装置。
【請求項3】
前記修復手段は、前記第1の判定手段により互いに隣接する2ビットが反転していないと判定されると、これら2ビットと、これら2ビットを挟む前後のビットとからなる計4ビットが同値であるか否かを判定し、同値であればその中央の2ビットのうち前記データシンボルの復号に関わる中心2ビットより外側に隣接するビットを反転させる第3の修復手段と、前記第2の判定手段により互いに隣接する2ビットが反転していないと判定されると、これら2ビットと、これら2ビットを挟む前後のビットとからなる計4ビットが同値であるか否かを判定し、同値であればその中央の2ビットのうち前記データシンボルの復号に関わる中心2ビットより外側に隣接するビットを反転させる第4の修復手段とをさらに備えたことを特徴とする請求項2記載の無線タグ読取装置。
【請求項4】
前記修復手段は、
前記第1の修復手段と前記第3の修復手段とに関しては、先ず第3の修復手段を実施し、この第3の修復手段においてビットを修復しない場合に限り前記第1の修復手段を実施し、
前記第2の修復手段と前記第4の修復手段とに関しては、先ず第4の修復手段を実施し、この第4の修復手段においてビットを修復しない場合に限り前記第2の修復手段を実施することを特徴とする請求項3記載の無線タグ読取装置。
【請求項5】
前記ミラーサブキャリア方式で用いるミラーサブキャリア信号の指数は、4以上であることを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか1に記載の無線タグ読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−135581(P2009−135581A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−307706(P2007−307706)
【出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】