説明

無線タグ通信装置

【課題】リーダを定置する設置面が金属製、非金属製の如何にかかわらず、無線タグとの無線通信に高い通信効率を確保する。
【解決手段】リーダ1は、底面3Aを所定の設置面Fに接して定置される筐体2と、底面から距離hだけ離して設けられ、無線タグに対し、無線通信により情報送受信を行うためのアンテナ13と、周波数fcの搬送波を生成する搬送波発生部132を含む高周波回路131とを有する。底面3Aを金属設置面に接して定置したときのアンテナの共振周波数をfm、非金属設置面に接して定置したときのアンテナの共振周波数をfoとしたとき、fo<fc<fmの関係を満たすように、搬送波発生部132による搬送波の周波数fcと、アンテナの底面からの離間距離hとを、互いに関連づけて設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部と通信可能な無線タグと、無線通信により情報送受信可能な無線タグ通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、無線通信では、その通信に用いられるアンテナの周波数特性に最も適する周波数(=共振周波数)を用いることで、信頼性を向上できることが知られている。これは特に、通信距離が長い場合に有効である。無線タグとの通信を行う無線タグ通信装置において、上記のような共振周波数に配慮したものとして、例えば特許文献1に記載のものがある。
【0003】
この従来技術では、無線タグ通信装置を無線タグに近接させて通信させるとき、無線タグ通信装置の装置アンテナのインダクタンスが、無線タグのタグアンテナとの間の相互誘導により増大することから、その増大分を予め見込んで予め装置アンテナの共振周波数を低めに設定している。
【特許文献1】特開2000−148932号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、無線タグの利用の拡大によってその用途は多種多様となっており、それらの用途に応じて無線タグと通信を行う無線タグ通信装置の使用態様も多様になっている。例えばオフィスや家庭などで、スチールデスク、パソコンラック、メタルラック・棚などの金属製の設置面に無線タグ通信装置を設置して使用したいというニーズが生じつつある。
【0005】
しかしながら、上記のような金属設置面に無線タグ通信装置を設けた場合には、装置アンテナの共振周波数が金属の影響を受けて変動する。逆に、非金属設置面に無線タグ通信装置を設けた場合には、そのような影響を受けないため共振周波数は変動しない。したがって、このような共振周波数の変動を前提としていずれの場合でも比較的良好な通信効率を得たい場合には、装置アンテナの本来の共振周波数の設定(無線タグ通信装置を金属設置面にも非金属設置面に置かない単体での設定)において何らかの工夫が必要になる。
【0006】
上記従来技術においては、このような金属設置面及び非金属設置面に係わる共振周波数の変動については特に配慮されていなかった。
【0007】
本発明の目的は、金属設置面及び非金属設置面のいずれに設置した場合でも、良好な通信特性を確保することができる、無線タグ通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、第1の発明は、機器外郭を構成し、底面を所定の設置面に接して定置される筐体と、前記底面に沿うようにかつ前記底面から距離hだけ離して設けられ、情報を記憶するIC回路部と情報の送受信を行うタグアンテナとを備えた無線タグに対し、無線通信により情報送受信を行うためのアンテナと、前記無線タグへの電力供給を行うための周波数fcの搬送波を生成する搬送波送信手段を含み、前記無線タグと情報の送受信を行う高周波回路とを有する無線タグ通信装置であって、前記底面を金属からなる前記設置面に接して定置したときの前記アンテナの共振周波数をfm、前記底面を非金属からなる前記設置面に接して定置するか、若しくは、前記底面を前記設置面から離間させ前記無線タグ通信装置単体の状態としたときの、前記アンテナの共振周波数をfo、としたとき、fo<fc<fmの関係を満たすように、前記高周波回路の搬送波送信手段による前記搬送波の周波数fcと、前記アンテナの前記底面からの離間距離hとを、互いに関連づけて設定したことを特徴とする。
【0009】
本願第1発明の無線タグ通信装置においては、高周波回路の搬送波送信手段で生成した搬送波を、アンテナより無線タグに送信して無線タグに電力を供給し、これによって無線タグと無線通信によって情報送受信を行う。
【0010】
ここで、アンテナには、それぞれ固有の共振周波数があり、上記無線通信時においては、その共振周波数と前述の搬送波の周波数とが一致するほど(近いほど)、通信効率が高くなる。また、上記アンテナの共振周波数は、無線タグ通信装置が金属の設置面に配置される等で金属に近い場合には、その金属による通信干渉の影響を受け共振周波数の値が変動し、金属のない場合に比べて金属がある場合には共振周波数が高くなる。また、そのときの変動幅(共振周波数が高くなる値)は、アンテナと金属との距離に応じて増減し、アンテナと金属とが近くなるほど共振周波数がより大きく変化する(高くなる)。
【0011】
そこで、本願第1発明においては、筐体の底面を設置面に接する形で用いられることを念頭に、アンテナを底面に沿うようにすることで底面からの距離(言い換えれば設置面からの距離、以下同様)をある程度の範囲内でなるべく一定にする。そしてさらに、アンテナを底面から距離hだけ離すことによって、設置面が金属であった場合であっても上記アンテナの共振周波数の変動幅(非金属設置面に定置したとき又は設置面から離間したときの共振周波数foと金属設置面に定置したときの共振周波数fmとの差、|fm−fo|)を一定の範囲内に抑制することができる。
【0012】
そして、このような距離hの設定によって、非金属設置面に定置したとき(又は設置面から離間したとき)の共振周波数foと、金属設置面に定置したときの共振周波数fmとの差を限られた範囲内に抑制した状態の中で、搬送波送信手段の搬送波fcの周波数を、その限られた範囲内、すなわち、fo<fc<fmとなるように設定する。
【0013】
このように設定することで、非金属設置面に定置したとき(又は設置面から離間したとき)における共振周波数foと搬送波周波数fcとの差を比較的小さくできると共に、金属設置面に定置したときの共振周波数fmと搬送波周波数fcとの差も比較的小さくできる。
【0014】
以上のようにして、本願第1発明においては、共振周波数の変動幅|fm−fo|)を規定するアンテナの離間距離hの設定と、その変動幅|fm−fo|の範囲内となるような搬送波周波数fcの設定とを互いに関連づけて行う。そして、このような設定により、非金属設置面に定置したとき(又は設置面から離間したとき)と金属設置面に定置したときのいずれの場合でも、共振周波数と搬送波周波数とを比較的近くすることができるので、高い通信効率を確保することができる。
【0015】
第2発明は、上記第1発明において、fc=(fo+fm)/2の関係を満たすように、前記搬送波の周波数fcと、前記アンテナの離間距離hとを、互いに関連づけて設定したことを特徴とする。
【0016】
搬送波周波数fcを、非金属設置面に定置したとき(又は設置面から離間したとき)の共振周波数foと金属設置面に定置したときの共振周波数fmの中間値(この例では平均値)に設定することにより、いずれの場合でも、搬送波周波数fcと共振周波数fo,fmとの差を確実に小さくすることができる。この結果、確実に高い通信効率を確保することができる。
【0017】
第3発明は、上記第1発明において、横軸に周波数、縦軸にアンテナゲインをとり表した線図において、前記底面を金属からなる前記設置面に接して定置したときの前記アンテナの共振周波数fmの特性を表す第1特性線と、前記底面を非金属からなる前記設置面に接して定置するか、若しくは、前記底面を前記設置面から離間させ前記無線タグ通信装置単体の状態としたときの、前記アンテナの共振周波数foの特性を表す第2特性線と、の交点の周波数が、前記搬送波の周波数fcと一致するように、前記搬送波の周波数fcと、前記アンテナの離間距離hとを、互いに関連づけて設定したことを特徴とする。
【0018】
これにより、非金属設置面に定置したとき(又は設置面から離間したとき)の搬送波周波数fcでのアンテナゲインの値と、金属設置面に定置したときの搬送波周波数fcでのアンテナゲインの値が一致する。すなわち、このような搬送波fcの値とすることで、上記いずれの場合でも同一のアンテナゲインを得ることができる。したがって、高い通信効率を、安定的に確保することができる。
【0019】
第4発明は、上記第1乃至第3発明のいずれかにおいて、前記アンテナの前記底面からの離間距離hを、8.5[mm]≦h≦15.8[mm]となるように構成したことを特徴とする。
【0020】
アンテナの離間距離hの最小値を8.5[mm]とすることにより、非金属設置面に定置したとき(又は設置面から離間したとき)の共振周波数foと、金属設置面に定置したときの共振周波数fmとの変動幅を、比較的小さな範囲内に確実に抑制することができる。また、アンテナの離間距離hの最大値を15.8[mm]とすることにより、装置の過度な大型化を防止することができる。
【0021】
第5発明は、上記第1乃至第4発明のいずれかにおいて、前記搬送波周波数fc、前記共振周波数fm、及び前記共振周波数foが、fc=13.56[MHz]fm=13.65[MHz]fo=13.10[MHz]となるように構成したことを特徴とする。
【0022】
これにより、非金属設置面に定置したとき(又は設置面から離間したとき)の共振周波数foと金属設置面に定置したときの共振周波数fmとの変動幅を0.55[MHz]と小さくすることができる。そして、RFIDの分野で一般的である汎用の搬送波周波数fc=13.56[MHz]を用いつつ、その搬送波周波数fcと共振周波数foとの差を0.46[MHz]、搬送波周波数fcと共振周波数fmとの差を0.09[MHz]、といずれも小さくすることで、確実に高い通信効率を確保することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、金属設置面及び非金属設置面のいずれに設置した場合でも、良好な通信特性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0025】
図1に、本実施形態の無線タグ通信装置であるリーダ1の外観構造を示す。また図2に、リーダ1の蓋4を取り外した状態を示し(煩雑防止のため図2ではケーブル6の図示を省略している)、図3にさらに図2中のIII−III断面を示す。これら図1、図2、及び図3に示すように、リーダ1は、機器外郭を構成する小型の筐体2を備え、使用者が適宜の設置面に設置(定置)して使用可能に構成されている(設置面に載置した状態で筐体2を手で把持して使用することも可能)。筺体2の前部(図1、図2中上側)には、電源用・信号送受用のケーブル6を筺体2内に引き込むための開口部5が設けられている。
【0026】
筐体2は、前端側が幅方向に開口した長方形の浅い皿状の下ケース3と、この下ケース3上に取り付けられる長方形の平板状の蓋4とを備えている。下ケース3は、リーダ1を上記設置面に載置する際に設置面に接触する底面3A(筐体の底面)を備えており、この例では蓋4に対し後端側が上昇する向きに傾斜している。蓋4の前部には、下方向に湾曲して下ケース3の前端の上記開口を塞ぐ鍔部4aが形成されている。
【0027】
ケーブル6を筐体2内に引き込む上記開口部5は、鍔部4aの下部の幅方向右側(図1参照)に設けられている。下ケース3の前端の開口内側の幅方向中央には、蓋4の鍔部4aを挿通したクリップ7を装着するための取付部4bが設けられている。クリップ7は、鍔部4aに倣った湾曲形状を備えており、蓋4の上面部に延びるように取付部4bに装着される。なお、クリップ7は、上下を反転して取り付けることにより、下ケース3の下面側に位置させることができる(図示省略)。
【0028】
下ケース3の底部には、下ケース3の前部左側隅部を除く隅部、すなわち前部右側隅部、後部右側隅部、後部左側隅部に、蓋4をねじ止めするための円柱状の第1ボス部8a、第2ボス部8b、第3ボス部8cがそれぞれ設けられている。蓋4を下ケース3に被せ、下ケース3のボス部8a〜8cに対応する蓋4のボス部を重ね合わせ、下ケース3のボス部8a〜8cに設けられた貫通孔9に下ケース3の下面から図示しないねじを挿入して、ねじを蓋4のボス部に設けられたねじ孔に螺合することにより、蓋4が下ケース3に取り付けられる。
【0029】
また、筐体2内には、制御基板12と、制御基板12に電気的に接続されたアンテナ13とが設けられている。制御基板12は、高周波回路131(後述の図4参照)等の電子回路を実装した四角形状の電子回路基板である。この制御基板12は、下ケース3の上記取付部4bに接触する位置から下ケース3の中央部近くにわたり、下ケース3の底部寄りの位置に蓋4の上面部と平行に設置されている。また、制御基板12は、この例では、その右側(図1、図2中右側)の前端近くを下ケース3の上記第1ボス部8aの側面に接触させて、下ケース3の左側(図1、図2中右側)の左壁部3b側に寄せて配置されている。この結果、制御基板12と下ケース3の右壁部3aとの間には、上記ケーブル6を敷設する空間14が形成されている。
【0030】
アンテナ13は、アンテナ導体13aが矩形状のループコイルをなすように設けられた長方形状の板体で、制御基板12よりも上方の高さ位置に制御基板12と平行に設置されている(図3参照)。この結果、アンテナ13は、下ケース3の底面3Aに対し(この例ではやや傾きながら)沿うような位置関係となり、底面3Aまでの距離hが所定の範囲(h1≦h≦h2;後述の図5参照)となる。また、このアンテナ13は、制御基板12の中央部上方から、下ケース3の後壁部3c近くの第2ボス部8b、第3ボス部8cに接触する位置にわたって、配置されている。
【0031】
下ケース3の前端の右側部には、蓋4の鍔部4aの下部右側の上記開口部5に位置する1対のガイド突起16が設けられている(図2参照)。パソコン等の外部の電気機器130(後述の図4参照)に連結された上記ケーブル6は、ガイド突起16の間を通って筐体2内に引き込まれている。そしてケーブル6は、下ケース3の底部を制御基板12の右辺部及び後辺部に沿って這うように敷設され、ケーブル6の先端に設けられたコネクタ15(後述の図4参照)及び制御基板12の後辺部左側の位置に設けられた基板側コネクタ135(後述の図4参照)を介して、制御基板12に接続されている。
【0032】
図4に、上記リーダ1の機能的構成を示す。リーダ1は、筺体2内に、上記制御基板12と、通信対象である無線タグ回路素子To(例えば無線タグラベルや無線タグカード等からなる無線タグ(図示省略)に備えられている)との間で無線通信により情報の送受を行う上記アンテナ13とを備えている。制御基板12には、上記アンテナ13により、上記無線タグ回路素子Toのタグアンテナ151を介しIC回路部150へ無線通信によりアクセスすると共に、その無線タグ回路素子Toから読み出された信号を処理する高周波回路131と、高周波回路131を含むリーダ1全体の制御を行う制御回路133と、情報が記憶されるメモリ134と、上記基板側コネクタ135とを有している。高周波回路131には、無線タグ回路素子Toへの電力供給を行うための周波数fcの搬送波を生成する搬送波発生部132(搬送波送信手段)が備えられている。なお、ケーブル6の他端はこの例ではパソコン130に接続され、リーダ1はケーブル6を介しパソコン130から電源供給される。
【0033】
図5に、リーダ1の使用時の状態を示す。リーダ1は、図5に示すように、主として、筐体2の下ケース3の底面3Aを設置面F上に接触させつつ設置面Fに定置して使用される。本実施形態のリーダ1では、このように定置して使用する際、筐体2の底面が接する設置面Fが金属製であるか、非金属製であるかにかかわらず、無線タグ回路素子Toとの無線通信に高い通信効率を確保できるようにしている。そのために、アンテナ13の底面3Aからの離間距離h(前述の理由により、最大値h=h1、最小値h=h2、すなわちh1≦h≦h2となる)と、搬送波発生部132により生成される搬送波の周波数fcとを、互いに関係付けて設定している。以下、その詳細を説明する。
【0034】
図6に、アンテナ13の等価回路を示す。アンテナ13は、制御基板12からの給電端子18,18間に接続されたアンテナコイル13a(インダクタンス値L)に線路損失としての抵抗13b(抵抗値R)、共振用のコンデンサ13c(キャパシタンスC)を直列接続した形で表される。この場合アンテナ13の共振周波数fは、
f=1/2π√(LC)
と数式化される。したがって、アンテナ13には、上記アンテナコイル13aのインダクタンスL、コンデンサ13cのキャパシタンスCにより定まる固有の共振周波数がある。
【0035】
上記無線通信時においては、このアンテナ13の共振周波数fと前述の搬送波の周波数fcとが一致するほど(近いほど)、通信効率が高くなる。また、アンテナの共振周波数fは、リーダ1が金属の設置面Fに配置される場合には、その金属による通信干渉の影響を受け共振周波数fの値が変動し、(金属のない場合に比べて)共振周波数fが高くなる。また、そのときの変動幅(共振周波数fが高くなる値)は、アンテナ13と金属の設置面Fとの距離に応じて増減し、アンテナ13と設置面Fとが近くなるほど共振周波数fがより大きく変化する(高くなる)。
【0036】
そこで、本実施形態では、リーダ1が底面3Aを設置面Fに接する形で用いられることを念頭に、アンテナ13の底面3Aからの離間距離h(言い換えれば設置面Fからの距離)をある程度の範囲内(この例ではh1≦h≦h2)で一定にする。これにより、リーダ1を非金属の設置面Fに定置したとき(又は設置面Fから十分に離間したとき)の共振周波数foと、リーダ1を金属の設置面Fに定置したときの共振周波数fmとの差|fm−fo|が一定の範囲内となるようにする。そして、このようなアンテナ13の離間距離hの設定に対応して、高周波回路132で生成されアンテナ13から発射される搬送波の周波数fcを、fo<fc<fmの範囲で設定する。
【0037】
図7に、アンテナの周波数対利得の特性曲線を示す。図7の横軸はアンテナ13の共振周波数を示し、図7の縦軸はアンテナ13から発射される搬送波の利得(アンテナゲイン)を示す。破線で表した曲線k1(第1特性線)は、リーダ1の底面3Aを金属の設置面Fに接して定置したとき(以下適宜、単に「金属設置面への定置時」という)のアンテナ13の共振周波数fmの特性を表している。実線で表した曲線k2(第2特性線)は、リーダ1の底面3Aを非金属の設置面Fに接して定置したとき(若しくは底面3Aを設置面Fから十分に離間させたリーダ1単体の状態としたとき。(以下適宜、これらを総称して単に「非金属設置面への定置時」という))の、アンテナの共振周波数foの特性を表している(第2特性線)。なお、このときのアンテナ13の離間距離hは、h1=8.5mm、h2=15.8mmとし、アンテナ13の搬送波周波数fcは、fc=13.56[MHz](ピーク値)に設定している。
【0038】
図7に示すように、アンテナ13の金属設置面への定置時の共振周波数fm=13.65[MHz](ピーク値)、非金属設置面への定置時の共振周波数fo=13.10[MHz](ピーク値)となっている。前述のように搬送波周波数fc=13.56[MHz]であるから、前述のfo<fc<fmの関係となっていることがわかる。
【0039】
以上説明したように、本実施形態においては、リーダ1の非金属設置面への定置時のアンテナ13の共振周波数foと、金属設置面への定置時のアンテナ13の共振周波数fmとの差を限られた範囲(上記の例では0.55[MHz])内に抑制するとともに、その状態で、搬送波周波数fcを共振周波数foと共振周波数fmとの間の周波数に設定する。これにより、リーダ1を非金属の設置面Fに定置したとき(又は設置面Fから十分に離間させたとき)における共振周波数foと搬送波周波数fcとの差を比較的小さくできる(上記の例では0.46[MHz])とともに、リーダ1を金属の設置面Fに定置したときの共振周波数fmと搬送波周波数fcとの差も比較的小さくできる(上記の例では0.09[MHz])。これにより、設置面Fが金属の場合も非金属の場合も確実に高い通信効率を確保することができる。
【0040】
また、本実施形態では特に、搬送波周波数fcとして、fc=13.56[MHz]を用いている。これにより、RFIDの分野で一般的である汎用の搬送波周波数を用いつつ、その搬送波周波数fcと共振周波数fo,fmとの差をいずれも小さくすることができる。
【0041】
また本実施形態では特に、アンテナ13の離間距離hの最小値h1を8.5[mm]とすることで、共振周波数fo〜fmの変動幅小さな範囲内に抑制できるとともに、最大値h2を15.8[mm]とすることにより、リーダ1の過度な大型化を防止することができる。
【0042】
なお、以上の実施形態では、アンテナ13の離間距離hと搬送波周波数fcとを、互いに関係付けて設定し、搬送波周波数fc=13.56[MHz]に対し、金属設置面への定置時の共振周波数fm=13.65[MHz]、非金属設置面への定置時の共振周波数fo=13.10[MHz]とした。しかし、本発明はこれに限られず、アンテナ13の搬送波周波数fcが金属設置面の共振周波数fmと非金属設置面の共振周波数foとの中間値(算術平均)となるよう、すなわちfc=(fo+fm)/2の関係を満たすように、アンテナ13の離間距離hを、搬送波周波数fcに対して関係付けて設定するようにしてもよい(参考までに、図7に示すfm=13.65[MHz]、fo=13.10[MHz]の条件では、搬送波周波数fcの値は、13.375[MHz]となる。図7参照)。
【0043】
この場合においても、前述のfo<fc<fmの関係が成立していることから、実施形態と同様、金属設置面への定置時及び非金属設置面への定置時のいずれの場合でも、搬送波周波数fcと共振周波数fo,fmとの差を小さくでき、確実に高い通信効率を確保することができる。
【0044】
さらには、上記図7の周波数対利得の特性曲線において、前述の第1特性線k1と第2特性線k2との交点Pの周波数が、搬送波周波数fcと一致するように、アンテナ13の離間距離hを、搬送波周波数fcに対して関連づけて設定するようにしてもよい(参考までに、図7に示すfm=13.65[MHz]、fo=13.10[MHz]の条件では、搬送波周波数fcの値は、13.38[MHz]となる。図7参照)。
【0045】
この変形例によれば、搬送波周波数fcでのアンテナ13のアンテナゲインの値が、リーダ1の非金属設置面への定置時と、金属設置面への定置時とで一致する(同一の値Xとなる。図7参照)。すなわち、このような搬送波周波数fcの値とすることで、リーダ1を非金属の設置面Fに定置したときと金属の設置面Fに定置したときのいずれの場合でも、同一のアンテナゲインを得ることができる。したがって、高い通信効率を、安定的に確保することができる。
【0046】
以上、本発明の実施形態を説明した。その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の一実施形態に係るリーダを示す平面図である。
【図2】リーダの蓋を取り外した状態の平面図である。
【図3】図2中のIII−III断面によるリーダの縦断面図である。
【図4】リーダの機能的構成を示すブロック図である。
【図5】リーダの使用を示す縦断面図である。
【図6】リーダに設けられたアンテナの等価回路図である。
【図7】アンテナの周波数対利得の特性曲線を示すグラフである。
【符号の説明】
【0048】
1 リーダ(無線タグ通信装置)
2 筐体
6 ケーブル
12 制御基板
13 アンテナ
131 高周波回路
132 搬送波発生部(搬送波送信手段)
150 IC回路部
151 タグアンテナ
To 無線タグ回路素子
F 設置面
fc 搬送波周波数
fm アンテナの共振周波数
fo アンテナの共振周波数
h アンテナの離間距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器外郭を構成し、底面を所定の設置面に接して定置される筐体と、
前記底面に沿うようにかつ前記底面から距離hだけ離して設けられ、情報を記憶するIC回路部と情報の送受信を行うタグアンテナとを備えた無線タグに対し、無線通信により情報送受信を行うためのアンテナと、
前記無線タグへの電力供給を行うための周波数fcの搬送波を生成する搬送波送信手段を含み、前記無線タグと情報の送受信を行う高周波回路と
を有する無線タグ通信装置であって、
前記底面を金属からなる前記設置面に接して定置したときの前記アンテナの共振周波数をfm、
前記底面を非金属からなる前記設置面に接して定置するか、若しくは、前記底面を前記設置面から離間させ前記無線タグ通信装置単体の状態としたときの、前記アンテナの共振周波数をfo、
としたとき、
fo<fc<fm
の関係を満たすように、
前記高周波回路の搬送波送信手段による前記搬送波の周波数fcと、
前記アンテナの前記底面からの離間距離hとを、互いに関連づけて設定した
ことを特徴とする無線タグ通信装置。
【請求項2】
請求項1記載の無線タグ通信装置において、
fc=(fo+fm)/2
の関係を満たすように、
前記搬送波の周波数fcと、前記アンテナの離間距離hとを、互いに関連づけて設定した
ことを特徴とする無線タグ通信装置。
【請求項3】
請求項1記載の無線タグ通信装置において、
横軸に周波数、縦軸にアンテナゲインをとり表した線図において、
前記底面を金属からなる前記設置面に接して定置したときの前記アンテナの共振周波数fmの特性を表す第1特性線と、前記底面を非金属からなる前記設置面に接して定置するか、若しくは、前記底面を前記設置面から離間させ前記無線タグ通信装置単体の状態としたときの、前記アンテナの共振周波数foの特性を表す第2特性線と、の交点の周波数が、前記搬送波の周波数fcと一致するように、
前記搬送波の周波数fcと、前記アンテナの離間距離hとを、互いに関連づけて設定した
ことを特徴とする無線タグ通信装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の無線タグ通信装置において、
前記アンテナの前記底面からの離間距離hを、
8.5[mm]≦h≦15.8[mm]
となるように構成した
ことを特徴とする無線タグ通信装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の無線タグ通信装置において、
前記搬送波周波数fc、前記共振周波数fm、及び前記共振周波数foが、
fc=13.56[MHz]
fm=13.65[MHz]
fo=13.10[MHz]
となるように構成したことを特徴とする無線タグ通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−290251(P2009−290251A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−137404(P2008−137404)
【出願日】平成20年5月27日(2008.5.27)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】