説明

無線ネットワークにおいてノードのセットをロケーション特定するための方法

【課題】方法が、未知のロケーションを有するターゲットノードおよび既知のロケーションを有するアンカーノードのセットを含む無線ネットワーク内のノードのセットをロケーション特定する。
【解決手段】アンカーノードのセットはアンカーノードのサブセットに分割され、各サブセットは少なくとも3つのアンカーノードを有する。ターゲットノードから、各サブセット内のアンカーノードのそれぞれへの距離が測定され、ターゲットノードのとり得るロケーションが推定される。各推定されたロケーションに幾何学的制約を適用され、有効なロケーションが求められる。この有効なロケーションはフィルタリングされ、フィルタリングされたロケーションが求められる。フィルタリングされたロケーションが平均化され、ロケーションの初期推定値が求められる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包括的には、無線センサーネットワークに関し、より詳細には、センサーノードのロケーションを推定することに関する。
【背景技術】
【0002】
低コストの無線センサーネットワークが一般的になるのに伴い、ますます多くの用途において、そのようなネットワークの展開が実現可能になっている。無線検知および無線モニタリング、リソース追跡およびリソース管理、環境モニタリング、防御、並びにセキュリティに関連した用途は、無線センサーネットワークのための多岐にわたる市場を提供するほんのいくつかの分野にすぎない。
【0003】
多くの用途は、センサーデータを有意味なものにするために、センサーのロケーションを必要とする。センサーが非常に低コストのデバイスであることを踏まえると、センサーは通常、全地球位置測定システム(GPS:Global Positioning System)を含まない。さらに、多くのセンサーは、GPSが有効でも実現可能でもない場合があるエリア、たとえば建物内または都市環境において動作することがある。
【0004】
測距信号の到達の双方向時間(two−way time)を測定するための複数の方法が既知であり、この方法には、到達データ融合、到達データの時間差の融合、および到達データ角度の融合が含まれる。2Dロケーションの場合、少なくとも3つのセンサーが必要であり、3Dロケーションの場合は、さらに多くのセンサーが必要である。
【0005】
ノード間の距離rを用いて、このノードのロケーションを推定することができる。ターゲットノードtは、
【0006】
【数1】

【0007】
を解くことによって、既知のロケーションのアンカーノードnまでの距離を推定する。
【0008】
これらの式を解く一般的な方法は、過剰決定(over−determined)連立非線形方程式を用いる。Sayed他「Network−based wireless location:challenges faced in developing techniques for accurate wireless location information」(IEEE Signal Processing Magazine,vol.22,no.4,pp.24−40)を参照されたい。項を再配置し、ターゲットノード1が一般性を損なうことなく原点(x,y)=(0,0)にあると仮定すると、これらの式は、以下のような行列形式で表すことができる。
【0009】
【数2】

【0010】
ここで、
【0011】
【数3】

【0012】
である。
【0013】
図2に示すように、従来のデータ再構成ユニット240は、アンカーノードのロケーションの座標および測定範囲{210,220,230}をとり、Hおよびbを求める。次に、初期位置推定器250は、Hおよびbを用いて、
【0014】
【数4】

【0015】
を用いて初期ターゲットロケーションを求める。ここで、Tは転置演算子であり、「^」は推定値を示す。
【0016】
初期ロケーション推定値
【0017】
【数5】

【0018】
251を用いて、目的関数270
【0019】
【数6】

【0020】
を初期化する。ここで、関数maxは最大値を返し、σitはターゲットノードとアンカーノードとの間の複数の距離測定値の分散である。
【0021】
ターゲットロケーションの初期推定値を得た後、数値探索法、たとえば勾配降下法、またはガウス−ニュートン近似法を用いることができる。探索手順260は、コスト関数270の大域的最小値を探索し、xを推定する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
信頼性のない距離によって、ロケーション推定値の正確度が低下する場合がある。なぜなら、これらの測定値は、bに埋め込まれるためである。したがって、信頼性のない距離を排除する必要がある。加えて、アンカーの数が3より大きいとき、式(3)においてHの逆行列を計算する際の計算複雑度が高くなる。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の実施の形態は、無線センサーネットワークにおいて、ノードのロケーションを正確に推定するための方法を提供する。本発明は、2Dロケーション推定の場合3つのノードからなる初期セット、または3Dロケーション推定の場合4つのノードからなる初期セットを用いる。ノードは、このノードのロケーションを推定した後、アンカーノードとして指定される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態を用いる無線ネットワークの概略図である。
【図2】ノードのロケーションを推定するための従来の方法のブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態による初期ターゲットロケーション推定のブロック図である。
【図4】本発明の実施の形態によるセットデータ再構成ユニットのブロック図である。
【図5】本発明の実施の形態による幾何学的試験ユニットのブロック図である。
【図6】本発明の実施の形態による初期ロケーションの推定および精緻化のためのプロセスのブロック図である。
【図7】本発明の実施の形態による、ターゲットノードをアンカーノードに変換するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施の形態は、無線ネットワークにおいてノードのロケーションを推定するための方法を提供する。1つの実施の形態では、ノードはセンサーである。推定値は、ノードによって送信される測距信号に基づく。実施の形態は、ターゲットノードのロケーションを推定すること、ターゲットノードをアンカーノードに変換すること、および全てのターゲットノードがアンカーノードに変換された後にロケーション推定値を精緻化することを含む。
【0026】
図1に示すように、ターゲットノード(センサー)100は、既知のロケーション(x,y)111、121、131、141、および151のN個のアンカーノード{110,120,130,140,150}の通信範囲内にある。距離を用いて、ターゲットノードの未知のロケーション(x,y)101を推定する。
【0027】
ターゲットノードのロケーションの推定
図1に示すように、ターゲットノードtの通信範囲内の既知のロケーションにN個のアンカーノードが存在し、ターゲットの座標は知られていない。ターゲットノードは、N個のアンカーのそれぞれと距離測定を行うことができる。3つ組
【0028】
【数7】

【0029】
{301〜303}を検討する。変数xおよびyは、それぞれ、アンカーiの座標およびターゲットtとアンカーiとの間の測定された距離である。
【0030】
アンカーサブセット生成ユニット310は、3つ組から、各サブセットが3つのアンカーの座標と、これらのアンカーとターゲットとの間の対応する距離とを含むような一意のアンカーサブセット311を形成する。アンカーサブセットの数は、
【0031】
【数8】

【0032】
であり、ここでN=3以上である。
【0033】
アンカーi、c、cのアンカーサブセット
【0034】
【数9】

【0035】
311が、サブセットmについて{H,b}{321〜323}を求めるアンカーサブセットデータ再構成ユニット320に入力される。次に、
【0036】
【数10】

【0037】
に従って、アンカーサブセットmを用いることによってターゲットの初期ロケーション330を推定する。ここで、図4に示すように、
【0038】
【数11】

【0039】
および
【0040】
【数12】

【0041】
である。明らかに、本発明者らの{H,b}の定式化は、式(2)の従来技術とは大きく異なる。
【0042】
結果として、単一のターゲットについて
【0043】
【数13】

【0044】
個のロケーション推定値が得られる。
【0045】
測距距離に基づいて、推定ロケーションに幾何学的制約が適用され、有効なロケーションが求められる。幾何学的制約の適用340が図5に示されている。
【0046】
初期ターゲットロケーションおよびサブセットmにおいて用いられるアンカーのロケーションから、ターゲット100対複数のアンカーの間の角度500は、
【0047】
【数14】

【0048】
【数15】

【0049】
および
【0050】
【数16】

【0051】
である。ここで、
【0052】
【数17】

【0053】
である。角度試験510は、角度500のそれぞれを所定の閾値と比較する。
【0054】
いずれかの角度が閾値γよりも小さい場合、ターゲットおよびアンカーは、ロケーション推定に関して信頼性がないジオメトリを形成する。この場合、サブセット決定ユニット520は、ターゲットロケーション推定から対応するサブセットデータを除外し、有効なロケーションのみがさらに処理される。角度が所定の閾値よりも大きい場合、ロケーションは有効である。
【0055】
角度試験に合格した有効なターゲットロケーション推定値が非線形フィルター350に入力され、フィルタリングされたロケーションが求められる。非線形フィルターは、中央値フィルタリングを含む様々な形態で実施することができる。非線形フィルター350の目的は、特異なロケーション推定値を排除することである。
【0056】
フィルタリングされた有効なロケーション推定値は、平均化され(360)、ターゲットノードの初期ロケーション推定値
【0057】
【数18】

【0058】
361が得られる。ロケーションの座標は独立して平均化されることに留意されたい。
【0059】
図6に示すように、初期ロケーション推定値361は、目的関数610
【0060】
【数19】

【0061】
を最小化する際に、開始点として用いられる。
【0062】
探索手順600を用いて、目的関数610の大域的最小値を用いてターゲットnの座標620が求められる。得られるターゲット座標は、ターゲットノードのロケーションの推定値
【0063】
【数20】

【0064】
101である。
【0065】
アンカーノードへの変換
ロケーション
【0066】
【数21】

【0067】
がターゲット100とN個のアンカーとの間の測定された距離の条件を満たすことを保証する、このロケーションの正確度
【0068】
【数22】

【0069】
を測定する。
【0070】
所望の数のアンカーの範囲内に複数のターゲットノードがある場合、ターゲットの全てを暫定的にロケーション特定し、次いで、最小正確度スコアを有するターゲットを選択する。
【0071】
図7に示すように、ターゲットノードの正確度スコア{710,720,730}が比較される(740)。最小正確度スコアを有するターゲットの識別情報741がアンカー変換決定ユニット750に渡され、このターゲットがアンカーに変換される。換言すれば、式(10)を満たすターゲットnは、
【0072】
【数23】

【0073】
に従って変換される。ここで、minは最小値を返す関数である。
【0074】
他の全てのターゲットノードの推定値が破棄される。ターゲットをアンカーに変換するのに成功した後、ノードnは、他のノードをロケーション特定するためのアンカーとして用いることができる。
【0075】
次のノードが少なくとも3つの隣接するアンカーノードを有する場合、このノードを変換のために選択することができる。ロケーション特定情報は、全てのノードがアンカーノードに変換されるまで、ネットワークにわたって伝播される。ターゲットノードをロケーション特定するとき、可能な限り多くのアンカーを用いる。アンカーの数を増やすことによって、推定されるロケーションの正確度が改善する。
【0076】
ロケーション推定値の精緻化
ネットワーク内の全てのノードがロケーション特定され、アンカーに変換された後、ロケーション特定の別のラウンドで全てのノードのロケーションを用いることによって、ロケーションを最終ロケーション推定値に精緻化することができる。このプロセスは、終了条件、たとえば、ロケーションが不変のままである、または所定の反復回数、が満たされるまで繰り返され、ネットワークを、効率が最も重要であり、正確度についてはいくらかの許容範囲を有する用途、および一方で、正確性が非常に望ましく、効率性の制約についてはいくらか緩和される用途に適応すると共に同様に適したものとすることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
未知のロケーションを有するターゲットノードおよび既知のロケーションを有するアンカーノードのセットを含む無線ネットワーク内のノードのセットをロケーション特定するための方法であって、前記ターゲットノードにおいて前記方法のステップを実行するためのプロセッサを備え、前記ステップは、
前記アンカーノードのセットをアンカーノードのサブセットに分割するステップであって、各前記サブセットは、少なくとも3つのアンカーノードを有する、分割するステップと、
前記ターゲットノードから、各前記サブセット内の前記アンカーノードのそれぞれへの距離を測定するステップと、
前記サブセット毎に、前記サブセット内の前記アンカーノードへの前記距離に基づいて、前記ターゲットノードの推定ロケーションを推定するステップと、
各前記推定ロケーションに幾何学的制約を適用するステップであって、有効なロケーションを求める、適用するステップと、
前記有効なロケーションにフィルターを適用するステップであって、フィルタリングされたロケーションを求める、適用するステップと、および
前記フィルタリングされたロケーションを平均化するステップであって、前記ロケーションの初期推定値を求める、平均化するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記幾何学的制約は、各前記アンカーノードへの角度が所定の閾値よりも大きいことである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記フィルターは、非線形フィルターである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記フィルタリングされたロケーションの座標は、独立して平均化される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ターゲットノードのセットが存在し、前記方法のステップは、各前記ターゲットノードにおいて独立して実行され、前記方法は、
前記初期推定値が取得される場合、各前記ターゲットノードを前記アンカーノードのうちの1つに変換するステップ、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ロケーションの前記初期推定値に目的関数を適用するステップであって、対応する最終ロケーションを求める、適用するステップ、
をさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ステップを終了条件が満たされるまで反復するステップであって、精緻化されたロケーションを得る、反復するステップ、
をさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記ターゲットノードと各アンカーノードiとの間の距離はritであり、前記推定ロケーションは、Hx=bであり、ここで、
【数1】

であり、ここで、上付き文字および下付き文字は推定ロケーションを示し、
【数2】

および
【数3】

である、請求項1に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2012−517583(P2012−517583A)
【公表日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−547347(P2011−547347)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【国際出願番号】PCT/JP2010/055499
【国際公開番号】WO2010/113829
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(597067574)ミツビシ・エレクトリック・リサーチ・ラボラトリーズ・インコーポレイテッド (484)
【住所又は居所原語表記】201 BROADWAY, CAMBRIDGE, MASSACHUSETTS 02139, U.S.A.
【Fターム(参考)】