説明

無線ネットワークの少なくとも1つのノードの送信電力を制御する方法及びシステム

無線通信ネットワークのノードによりパケット送信電力を制御する方法であって、本方法は、集めた多数のサンプルデータレートのそれぞれの値を決定する工程と、目標データレートを決定する工程と、目標データレートが前記それぞれの値の加重平均であり、現在のトラフィック状況及びチャネル状況における平均データレートと目標データレートとの比較の結果に基づきパケット送信電力を調整する工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、最大電力で得られる性能と等しい性能を得るよう、少なくとも1つのノードの送信用電力を制御する方法及びシステムに関する。本発明で利用する電力制御アルゴリズムはプラットフォームに依存せず、正確な測定又は冗長な信号メッセージのやり取りを必要としない。更に、本発明で利用する電力制御アルゴリズムは、上位のプロトコル層から提供されるフィードバックを利用し、低価格の無線機で簡単に実施することができる。電力制御の目的は、可能な最良のデータレートを保ちながらノードの送信用電力を可能な限り低下させることである。
【背景技術】
【0002】
近年、「アドホック」ネットワークとして知られているタイプの移動通信ネットワークが開発されている。このタイプのネットワークでは、移動ノードそれぞれが他の移動ノードの基地局又はルータとして動作できるので、基地局の固定されたインフラストラクチャが不要になる。
【0003】
更に精巧なアドホックネットワークも開発されており、このネットワークによって、従来のアドホックネットワークに見られるように移動ノード同士の通信が可能になることに加え、移動ノード群は、固定ネットワークにもアクセス可能になるので、他の移動ノード、例えば、公衆交換電話網(PSTN)の移動ノードやインターネットなどの他のネットワークの移動ノードなどとも通信可能になる。これらの進歩したタイプのアドホックネットワークの詳細は、特許文献1、特許文献2、特許文献3に記載されており、それぞれの内容全体は参照により本願に組み込まれている。
【0004】
セルラー電話の初期の頃から、電力制御は学界でも産業界でも研究者にとって重要な主題であった。電力制御の問題を解決する為の試みで利用された過去のアプローチ及び実装の方法論にはかなりばらつきがあるが、この過去の努力の目的は変わっていない。つまり、干渉を最小にし、ネットワーク容量を最大にし、エネルギーを節約することである。
【0005】
アドホックネットワークにおける電力制御の重大さは、マルチホップネットワークの容量に関する初期の研究から明らかになっていた。例えば、非特許文献1が導入した概念は、無線ネットワークの容量を最大にする為に、同時に複数の送信を発生させるというものである。
【0006】
研究者達は、干渉を最小にする為に、電力制御を達成する方式及びアルゴリズムを非常に多く提案してきた。例えば、非特許文献2が、ネットワークの2つのノード間の通信のエネルギーコストを最小にする為の、送信用電力を制御する電力制御アルゴリズムに関する。しかし、このアルゴリズムは、送信電力を低減した結果としてデータの送信レートが影響を受けて低減してしまうことを考慮していない。非特許文献3が、COMPOW(「共通電力(common power)」)プロトコルを開示しており、このプロトコルは、ネットワーク接続が維持されている間、ネットワークにノードのスループットごとに所与の最小の共通電力が存在することに基づいている。このプロトコルは、ネットワークのノードごとに最小の送信電力を決定しようとはしていない。非特許文献4が、電力制御MAC(PCM)方式に関し、この方式では、データが短い持続時間で周期的に最大の電力で送信され、残り時間で最低の電力で送信される。なおまた、特許文献4が、電力制御信号方式の明示的なやりとりを必要とする送信用電力制御の方法に関する。なおまた、特許文献5が、送信機が複数の無線デバイスに電力報告信号を送るよう要求して、受信した最も高い電力の報告信号に従い送信する電力制御技術を開示している。これらの方法に必要な信号方式は著しく複雑である。本明細書で引用した特許と特許出願と参考文献それぞれの内容全体は、参照により組み込まれる。
【特許文献1】米国特許出願第09/897,790号
【特許文献2】米国特許出願第09/815,157号
【特許文献3】米国特許出願第09/815,164号
【特許文献4】米国特許5、450、616号
【特許文献5】米国特許出願第10/793,581号
【特許文献6】米国特許出願第60/600,413号
【特許文献7】米国特許出願第60/582,497号
【非特許文献1】Guptaら、The Capacity Of Wireless Networks、IEEE Transactions on Information Theory、v.46、No.2(2000)
【非特許文献2】Agrawalら、Distributed Power Control In Ad‐Hoc Wireless Networks、IEEE International Symposium on Personal,Indoor,and Mobile Radio Communications、vol.2(2001)
【非特許文献3】Narayanaswamyら、Power Control In Ad‐Hoc Networks:Theory,Architecture,Algorithm And Implementation Of The COMPOW Protocol、European Wireless(2002)
【非特許文献4】Jungら、A Power Control MAC Protocol For Ad Hoc Networks、Mobicom(2002)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述の送信用電力制御機構はそれぞれ確かに、無線ネットワークの容量を増大させる手段を提供しているが、考慮していないことがたくさんある。第一に、通信装置の送信電力を低減させると、通信装置が、周波数利用効率の最も高い変調方式、即ち最も速いデータレートを使用する能力に影響が及ぶ。第2に、信号対雑音比などの物理層の正確なフィードバックに基づく予測方法は、このタイプの詳細なフィードバックがない又は信頼できないので、一般的には使用できない。物理層のフィードバックの信頼性のなさから当然導かれることは、たとえチャネルの特性が一定のままでも、適応性のあるデータレート選択機構が、一般的に不安定で、数多くの使用可能なデータレートの間で経時的に揺れ動くという事実である。
【0008】
よって、物理層の正確なフィードバックに頼ることなく、最大電力で得られる性能と等しい性能を得るよう、少なくとも1つのノードの送信用電力を調整する電力制御アルゴリズムを有する少なくとも1つのノードを備えたシステム及び方法が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、無線ネットワークのノードによってパケット送信電力を制御する方法を提供し、本方法は、その時のトラフィック状況及びチャネル状況に基づき目標データレートを決定する工程と、データレートの変動に基づき移行のしきい値を確立する工程と、現在のトラフィック状況及びチャネル状況における平均データレートと目標データレートとの比較の結果に基づきパケット送信電力を調整する工程とを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のこれらの目的及び他の目的、利点、新規な特質は、添付の図面を併用した以下の詳細な記述から更に容易に理解できる。
図1は、本発明の実施形態を用いているアドホックパケット交換無線通信ネットワーク100の例を図示するブロック図である。具体的には、ネットワーク100は、複数の移動無線ユーザ端末102‐1〜102‐n(一般にノード群102又は移動ノード群102と呼ぶ)を備えており、更に、固定ネットワーク104を備えることも可能だが必須ではなく、固定ネットワーク104は、ノード群102が固定ネットワーク104にアクセスできるよう、複数のアクセスポイント106‐1、106‐2、...106‐n(一般にノード群106又はアクセスポイント群106と呼ぶ)を有している。固定ネットワーク104は、ネットワークノード群が、他のアドホックネットワークや、公衆交換電話網(PSTN)や、インターネットなどの他のネットワークにアクセスできるよう、例えば、中核をなすローカルアクセスネットワーク(LAN)や、複数のサーバ及びゲートウェイルータなどを備えることも可能である。ネットワーク100は更に、複数の固定ルータ107‐1〜107‐n(一般にノード群107又は固定ルータ群107と呼ぶ)を備えることも可能であり、これにより他のノード群102、106、107の間でデータパケット群をルーティングできる。なお、本明細書での説明上、以上に論じたノードを、集合的に「ノード102、106、107」、又は単純に「ノード群」と呼ぶことがある。
【0011】
当業者には分かるとおり、上記の特許文献1、特許文献2、特許文献3で説明されているように、ノード102、106、107は、直接通信し合う、又は、ノード同士間でパケット群を送る為のルータ(単数又は複数)として動作している他のノード102、106、107のうちの1つ以上を介して通信し合うことができる。
【0012】
図2に示されているように、ノード102、106、107はそれぞれ、アンテナ110に結合されたトランシーバ又はモデム108を備えており、コントローラ112の制御下で、パケット化された信号などの信号をノード102や106や107などとの間で送受信できる。パケット化されたデータ信号には、例えば、音声情報や、データ情報や、マルチメディア情報や、ノード更新情報などのパケット化された制御信号がある。
【0013】
ノード102、106、107のそれぞれには更に、ランダムアクセスメモリ(RAM)などのメモリ114が備えられており、このメモリは、そのノード自身に関する情報及びネットワーク100の他のノード群に関する情報を保存できる上、特筆すべきは、これらの情報をルーティングできる。図2に更に詳しく示されているとおり、特定のノード、特に移動ノード群102は、ホスト116を備えることもでき、ホスト116は、ノート型コンピュータ端末や、移動電話ユニットや、移動データユニットや、その他の好適な装置などの、任意の数の装置から構成されたものでよい。ノード102、106、107のそれぞれには更に、インターネットプロトコル(IP)及びアドレス解決プロトコル(ARP)を機能させる為の適切なハードウェア及びソフトウェアが備えられており、これらの目的は当業者には容易に分かる。伝送制御プロトコル(TCP)及びユーザデータグラムプロトコル(UDP)を機能させる為の適切なハードウェア及びソフトウェアを備えていてもよい。
【0014】
図3は、本発明の実施形態に係る、ノードにより行われる電力制御の動作又はプロシージャの例を示す。これに関して、表1には、図3で用いられる電力制御の変数の幾つかが定義されている。好ましくは、この値のそれぞれが単一の隣接ノードにのみ関連する。
【0015】
【表1】

【0016】
表2には、図3で用いられる他の電力制御の変数が定義されている。好ましくは、これらの値はシステムインテグレータにより設定され、これらを用いて隣接ノードそれぞれに達するのに必要な送信用電力を決定する。
【0017】
【表2】

【0018】
好ましくは、電力制御アルゴリズムの第1の状態は、図3のフローチャートに示されているように、「目標データレート収集」である。集めたデータレートの数がサンプルの必要数に達し次第、リンク適応アルゴリズムは電力制御アルゴリズムの第2の状態に切り換えられ、これが以下で更に詳細に論じる「電力調整」である。電力制御アルゴリズムのそれぞれの状態を以下で個別に論じる。
状態1:「目標データレート収集」
「目標データレート収集」状態の間、データパケットが送られてくるたびに、図3に示す電力制御アルゴリズムを実行する。工程1000では、繰り返しカウンタkを増やす。工程1010では、アルゴリズムは任意の好適なやり方でデータレートrの通知を受け取れる。好ましくは、アルゴリズムは、データパケット用のトランザクションサマリを用いて少なくとも1つのノードにより選択されたデータレートを通知され、これは特許文献6で説明されているとおりであり、この内容全体は参照により本願に組み込まれている。なおまた、電力制御アルゴリズムは、内容全体を参照により本願に組み込む特許文献7に記載された装置を併用した利用に適切であるが、任意の好適な異なるデータレート選択アルゴリズムの実施をシステムインテグレータが選ぶこともできる。これに関しては、電力制御アルゴリズムは好ましくは依然としてトランザクションサマリのデータレートのフィードバックに基づくやり方で動作する。送信に向け選択したデータレートrごとに、工程1030でリンク適応アルゴリズムは関連するレートカウンタを1つずつ増やす(α=α+1)。工程1020に図示のように、集めたサンプルの数がK´未満の場合、レートカウンタは更新されない。これによって、特にデータレートの選択が受信信号強度(送信用電力の変化の影響を常に受ける)に基づいている場合は、送信用電力の変化後にデータレート選択アルゴリズムは収束する時間を確実に持つことになる。集めたサンプルkの数がサンプルの最大値Kに達し次第(工程1040)、リンク適応アルゴリズムは、「電力調整」状態に切り換える前に、工程1050と工程1060とを実行する。その次に送られてきたデータパケットについては、アルゴリズムは工程1100から「電力調整」状態で始まる。しかし、この状態に入る前に、工程1050でリンク適応アルゴリズムは好ましくは、各データレートに関連する調整値(S)を決定する。この調整値群は、データレートそれぞれの値(r、単位Kbps)と目標データレート(r、単位Kbps)とに依存する。
【0019】
目標データレートは選択したレートすべての加重平均である。
【0020】
【数1】

【0021】
使用可能なデータレートはそれぞれ正規化されたデータレートの相違に関連しており、この相違はデータレートと目標レートの差を目標データレートで割ったものである。
【0022】
【数2】

【0023】
すべてのデータレートについて正規化されたデータレートの相違Sが決定された(工程1050)後で、リンク適応アルゴリズムは、好ましくは送信用電力指数Pを低下させ、サンプルカウンタと移行カウンタとを初期化する(工程1060)。その後、このアルゴリズムは電力制御アルゴリズムの「電力調整」状態に入る。
状態2:「電力調整」
電力は好ましくは以下のルールに従って調整される。
・平均データレートが目標データレートを下回っている場合(工程1160)、電力を増大させ(工程1170)、目標はそのままである。
・平均データレートが、公差±zの範囲内で目標データレートと同一である場合(工程1190)、電力を減少させ(工程1200)、目標はそのままである。代案として、公差は非対称、つまり、+zhigh、−zlowであってもよい。
・平均データレートが目標データレートを上回っている場合(工程1130)、電力を増大させ(工程1140)、目標データレートを取得し直す。
【0024】
データパケットが送られてくるたびに、リンク適応アルゴリズムはサンプルインデックスカウンタkを更新し(工程1100)、データレートrを選択し(工程1110)、データレートrに対応する正規化されたデータレートの相違Sの分だけ移行カウンタTCを増やす(工程1120)。
【0025】
データレートが目標データレートに対して高いか低いか等しいかを決定する為に、移行カウンタを2つのしきい値すなわちTlow(工程1160)及びThigh(工程1130)と比較し、サンプルインデックスカウンタを最大値Nと比較する(工程1190)。図4ではあるシナリオが描写されており、このシナリオでは、移行カウンタTCが高いほうのしきい値Thighより大きくなっており(即ち、「レートが高すぎる」)、この場合は、平均データレートは(1+z)×rより高い。同様に、移行カウンタTCが低いほうのしきい値Tlowを下回っている(即ち、「レートが低すぎる」)場合は、平均データレートは(1−z)×rを下回っている。リンク適応アルゴリズムによれば、zは非対称でもよい。つまり、必要ならば高いデータレートの公差は低いデータレートの公差を上回ってよい。移行カウンタのしきい値Thigh及びTlowはz及びNから導かれる。移行カウンタが、サンプルを厳密にN個採った後で、Thigh又はTlowに達したら、平均データレートがデータレートの公差(1±z)×rの限界だということである。移行カウンタが表しているのは、正規化されたデータレートの相違Sを蓄積することによる、平均データレートと目標データレートとの間の相違である。従って、電力制御アルゴリズムは実際には平均データレートを計算しない。つまり、これによって、移行カウンタを、一か所に固定されたマイクロプロセッサ又は集積回路で実施可能になる。また、これによって、移行カウンタの実装が、広範囲のデータレートを利用するシステム(1Mbps及び54Mbpsのデータレートを使用する802.11gなど)に特に適した実装になる。つまり、電力制御アルゴリズムはデータレートの相違にのみ対処するので、データレートの桁は関係ない。以下の式は、移行カウンタと、データレートの公差と、平均データレートと、目標データレートと、サンプルの最大数との関係を定義する。
【0026】
【数3】

【0027】
従って移行カウンタのしきい値は以下の式に等しい。
【0028】
【数4】

【0029】
最後に、サンプルの数がNに達し(工程1190)、移行カウンタTCがThigh、又はTlowに達しなかった(即ち、「レートが保たれている」)場合、平均データレートは目標データレートrに近い。
【0030】
平均データレートが目標データレートを上回っている場合(工程1130)、電力を増大させる(工程1140)。これによって、電力制御アルゴリズムは、送信用電力がもっと高い新しい目標データレートを取得できるようになる。実際、電力が低減されたらデータレートは増大しえないので、チャネル状況は間違いなく変化しており、アルゴリズムはサンプルカウンタkとデータレートカウンタαとを初期化し(工程1150)、「目標データレート収集」状態に戻る必要がある。
【0031】
平均データレートが目標データレートを下回っている場合(工程1160)、電力を増大させる(工程1170)。通例これによって示されるのは、送信用電力は低くなっており、最良のデータレートをもう達成しえないということである。代案として、チャネルの条件が悪化した場合には、アルゴリズムは再び最大電力に達し(工程1180)、サンプルカウンタkとデータレートカウンタαとを初期化(工程1150)した後で、新しい目標データレートを決定する必要がある。それから、アルゴリズムは「目標データレート収集」状態に戻る。最大電力に達していない場合、アルゴリズムは「電力調整」状態のままであり、サンプルインデックスカウンタと移行カウンタとを初期化する(工程1210)。
【0032】
平均データレートが目標データレートに近い場合(工程1190)、電力を低減する(工程1200)。アルゴリズムは「電力調整」状態のままであり、サンプルインデックスカウンタと移行カウンタとを初期化する(工程1210)。
【0033】
表3には、すべてのノードに共通の定数(表2参照)の最小値と、最大値と、推奨値とを、システム性能においてそれぞれが意味するところの説明と共に示す。本明細書で提示した電力制御アルゴリズムは、無線機のアーキテクチャや精度や測定能力や厳密な電力制御に従来関連していた他の要素などに関わらず、異なるタイプの無線機で動作するよう設計されている。しかし、無線機が安定しているほうが、データレート選択アルゴリズムの収束レートは速く、電力制御アルゴリズムは安定しており速い。
【0034】
【表3】

【0035】
同調
どのリンク適応パラメータの値も、802.11準拠の無線機などの安価な無線機用のものである。しかし、異なるハードウェアプラットフォームでは別の値が要求される可能性が高い。
データレートの公差
データレートの公差は、電力制御アルゴリズムが許容する、データレートの割合である。平均データレートが目標データレートの所定の割合の範囲内である限り、送信用電力は低減される。データレートの公差が低すぎる場合は、リンク適応アルゴリズムは、データレートを保つことを決定するので、送信用電力を下げることはない。好ましくは、公差はレート収集時間に反比例している。つまり、データレートの取得が短時間の場合、予想される変動は大きくなるので、公差は大きくなる。データレートの公差は一般的に10%〜30%に設定されている。
処理しないデータ点
環境が変化し、データレート選択アルゴリズムがゆっくりと収束した場合、選択が収束した後で、目標データレート取得機構が実際の平均レートを高く又は低く見積もってしまう恐れがある。従って、リンク適応アルゴリズムは適正な送信用電力を高く又は低く見積もってしまう場合がある。この問題は、処理しないデータ点の数を増加させることで克服できる。
レート収集時間
この値は目標データレート収集時間を操作できる。これに関しては、リンク適応アルゴリズムが収集状態の際のみ意味がある。つまり、この時間を増加させても、必ずしも安定性が増すとは限らない。値が小さすぎると、目標データレートは経時的に変動することになる。
レート推定時間
この値は電力制御の収束時間を操作できる。これに関しては、値が非常に低いと不安定になる一方、値が非常に大きいと収束レートが落ちる。正確な電力制御と収束時間との間にはトレードオフがある。
【0036】
少数の模範的な本発明の実施形態のみを詳細に以上に記載したが、当業者には、本発明の新規な教示及び利点を実質的に逸脱することなくこれら模範的な実施形態をさまざまに修正可能であることが容易に分かる。従って、このような修正すべてについて、以下の請求項に定義された本発明の範囲に含むことを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施形態に係るシステム及び方法を用いた複数のノードを備えたアドホック無線通信ネットワークの例のブロック図。
【図2】図1で示したネットワークで使われている移動ノードの例を図示するブロック図。
【図3】本発明の実施形態に係る電力制御アルゴリズムを有する少なくとも1つのノードにより行われる動作の例を示すフローチャート。
【図4】本発明の実施形態に係る、移行カウンタ(TC)と、少なくとも1つのノードが利用する電力制御アルゴリズムの電力調整判定との関係を描写するグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信ネットワークのノードによりパケット送信電力を制御する方法であって、
集めた多数のサンプルデータレートのそれぞれの値を決定する工程と、
前記それぞれの値を加重平均して、目標データレートを決定する工程と、
平均データレートと前記目標データレートとの比較の結果に基づきパケット送信電力を調整する工程と、
からなる方法。
【請求項2】
前記加重平均が前記目標データレートに等しい場合にパケット送信電力を減少させる工程を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記平均データレートが前記目標データレートを下回っている場合にパケット送信電力を増加させる工程を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記平均データレートが前記目標データレートを上回っている場合にパケット送信電力を増加させて、目標データレートを調整する工程を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記平均データレートと前記目標データレートとの前記比較が、移行カウンタ値と最大及び最小の移行カウンタのしきい値との比較からなる請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記移行カウンタ値が前記最小の移行カウンタのしきい値を下回る、又は、前記最大の移行カウンタのしきい値を上回るより早く、所定の数のサンプルを集め終わった際には、前記平均データレートが前記目標データレートに等しいと決定される請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記移行カウンタ値が前記最小の移行カウンタのしきい値を下回っている際に前記平均データレートが前記目標データレートを下回っていると決定される請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記移行カウンタ値が最小の移行カウンタのしきい値を上回っている際に前記平均データレートが前記目標データレートを上回っていると決定される請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記移行カウンタが、前記サンプルデータレート群と前記目標データレートとの間の前記正規化されたデータレートの相違の合計により決定される請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記最大及び最小の移行カウンタのしきい値が、所定の数のサンプルデータレート群とデータレート変動公差値との積である請求項5に記載の方法。
【請求項11】
無線通信ネットワークでの使用に適合したノードであって、前記ノードが前記ノード自身のパケット送信電力を制御するよう適合しており、前記ノードが、
集めた多数のサンプルデータレートのそれぞれの値を決定し目標データレートを決定するよう適合したコントローラを備え、前記目標データレートが前記それぞれの値の加重平均であり、平均データレートと前記目標データレートとの比較の結果に基づきパケット送信電力を調整する、
ノード。
【請求項12】
前記ノードが、前記加重平均が前記目標データレートに実質的に等しい場合にパケット送信電力を減少させることができる請求項11に記載のノード。
【請求項13】
前記ノードが、前記平均データレートが前記目標データレートを下回っている場合にパケット送信電力を増加させることができる請求項11に記載のノード。
【請求項14】
前記ノードが、前記平均データレートが前記目標データレートを上回っている場合にパケット送信電力を増加させ、前記目標データレートを調整することができる請求項11に記載のノード。
【請求項15】
前記平均データレートと前記目標データレートとの比較が、移行カウンタ値と最大及び最小の移行カウンタのしきい値との比較からなる請求項11に記載のノード。
【請求項16】
前記移行カウンタ値が前記最小の移行カウンタのしきい値を下回る、又は、前記最大の移行カウンタのしきい値を上回るより早く、所定の数のサンプルを集め終わった際には、前記平均データレートが前記目標データレートに等しいと決定される請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記移行カウンタ値が前記最小の移行カウンタのしきい値を下回っている際に前記平均データレートが前記目標データレートを下回っていると決定される、請求項15に記載のノード。
【請求項18】
前記移行カウンタ値が最小の移行カウンタのしきい値を上回っている際に前記平均データレートが前記目標データレートを上回っていると決定される請求項15に記載のノード。
【請求項19】
前記移行カウンタが、前記サンプルデータレート群と前記目標データレートとの間の前記正規化されたデータレートの相違の合計により決定される請求項15に記載のノード。
【請求項20】
前記最大及び最小の移行カウンタのしきい値が、所定の数のサンプルデータレート群とデータレート変動公差値との積である請求項15に記載のノード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−541577(P2008−541577A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−510332(P2008−510332)
【出願日】平成18年5月12日(2006.5.12)
【国際出願番号】PCT/US2006/018712
【国際公開番号】WO2006/127314
【国際公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(505448981)メッシュネットワークス インコーポレイテッド (24)
【氏名又は名称原語表記】MESHNETWORKS,INC.
【Fターム(参考)】